05/10/12 今後の労働時間制度に関する研究会 第10回議事録           第10回今後の労働時間制度に関する研究会                       日時 平成17年10月12日(水)                          10:00〜                       場所 厚生労働省専用第21会議室 ○座長  皆様おはようございます。ただ今から「第10回今後の労働時間制度に関する研究会を 開催します。お忙しい中をご参集いただきまして、大変ありがとうございます。本日の 出欠ですが、荒木委員からは欠席とのご連絡をいただいています。  議事に入る前に、事務局に人事異動があったようですので、ご紹介をお願いします。 ○小林調査官  10月1日付で、監督課監察官に安藤が就任しています。 ○安藤監察官  安藤です。よろしくお願いします。 ○座長  では、議事に入ります。本日の議題は、「裁量労働制のあり方について」です。前 回、当研究会として、企業・労働者を取り巻く現状について及び今後の労働時間制度そ のものをどのようにしていくかという点について、大体の共通認識を確認していただい たわけですが、その上で、裁量労働制のあり方について議論する際の導入として、その あり方についての論点及び各論点ごとの考え方のたたき台の一部についてご意見をいた だきました。そこで、今回は前回いただきましたご発言等を基にしまして、事務局で関 係資料の修正・追加をしていただきました。そこで、最初にそれらについて事務局から ご説明をお願いします。 ○小林調査官  資料1は前回、「労働時間制度を見直すに当たっての視点」ということで、案として お示ししたところですが、その中で山川委員からご指摘を受けまして、現行制度ででき るものと制度の改正をするものということで、選択的な表現になっていましたが、現行 制度の中で見直せるものについては見直し、その中で解決できないものについてはそれ らの方策を講じるということですので、それは適宜両方を睨みながら、できる範囲でそ れぞれ段階で行っていくということですので、資料1にありますように下線部分はそれ ぞれそのようなスタンスで表現を変えているところです。  資料2の「労働時間制度のあり方に関する論点」の「裁量労働制について」というこ とで、大きな項目を4つほど掲げていますが、この4つの項目自体は特段の変更があり ませんでしたので、前回お配りした資料のままです。 ○座長  以上の点はよろしいですか。次に、「各論点ごとの考え方のたたき台(その1)(案 )<改訂版>」並びに「各論点ごとの考え方のたたき台(その2)(案)」にまいりた いと思います。(その1)については、前回皆様にいただきましたご意見を踏まえて、 事務局が修正・追加したものです。また、(その2)については裁量労働制の残りの論 点について、同様の考え方に沿って事務局に準備してもらったものです。併せて説明を お願いします。 ○小林調査官  資料3「各論点ごとの考え方のたたき台(その1)(案)<改訂版>」について、ご 説明します。前回に案ということでお示ししていますが、その後の変更として下線部分 が前回と変わった点です。その点を中心にしながら、たたき台(その1)について説明 させていただきます。  1「対象となる業務及び労働者」の(1)専門業務型裁量労働制についてですが、現 行のままで良いのではないかということと併せまして、(2)の対象業務を広げるべきか の点について、具体的に・として新たに設けています。中身としては、労使ともに現行 制度でよいとする意見がアンケートでは多いということで、個別の業務についての要望 も特にみられないことから、拡大は不要ではないかということで、意見を追加させてい ただいています。(2)企画業務型裁量労働制についてです。(1)の現行のままで良い のではないかという点について、2つ目の・を追加しました。対象業務の範囲が狭すぎ るとの意見がアンケートでは多いので、企業の実態を踏まえた何らかの対応が必要なの ではないかという点を追加しました。(3)は、対象業務を労使の決定にゆだねるべきで はないかという点です。新たに3つ目の・を設けました。現行の企画業務型裁量労働制 においても、適用労働者の裁量性が確保されているとは言い難いケースがある中で、健 康・福祉確保措置や苦情処理措置の実効性が労使自治により十分担保されていない実態 も踏まえると、対象業務を労使の決定により広げることを可能にすることは不適当では ないかという点を追加しました。  新たに考え方として、(4)の「狭めるべきではないか」という点を追加しました。具 体的には、真に裁量性のある自律的な働き方をする労働者に限定して適用すべきではな いか。また、現在対象とされている業務について裁量性の有無を精査し、真に裁量性が あると認められる業務以外は、通常の労働時間制度の対象として再整理すべきではない かという点です。  2「法的効果等」の点です。(1)の専門業務型裁量労働制について、特に(2)の運 用上の工夫により適正化を図るべきではないかという点について、例えば、使用者が講 じることとされている健康・福祉確保措置の具体的内容について、指針等で明らかにす ることが考えられないかという点を追加しました。(2)の企画裁量型労働制について は、次の頁の冒頭の・に追加しています。企画業務型裁量労働制は、事業場外みなしと 異なり、みなし労働時間とは関係なく、労働者が自己の裁量に基づき働くための制度で あり、みなし労働時間と実労働時間の乖離を問題視しなければならないような労働者が 対象となる運用を改める必要があるのではないか。  (2)は最後の・を追加しています。労働時間の配分について、真に裁量性のある業務 に限定するとともに、健康・福祉確保措置を講じる前提としての出退勤時刻の把握が不 要となるような措置を講じるべきではないかという点です。  選択肢として適用除外の表現ですが、若干趣旨を明確にするということで、柱書きに 趣旨を書きました。具体的には(3)の創造的・専門的能力を真に発揮するために、昼夜 の区別なく働くことを希望する労働者を分離しても良いのではないかという点の表現を 若干修正しています。以上が、(その1)の修正です。  (その2)として、各論点ごとの考え方のたたき台というところで、資料4でお示し ているのが今回新たに出させていただいたたたき台です。中身としては1「健康で文化 的な生活を保障するために担保すべき事項」、2「その他」という項目にしています。  健康で文化的な生活を保障するために担保すべき事項として、(1)健康・福祉確保 措置についてという点です。制度の趣旨について説明するのが理解を深めるために必要 と思いますので、若干現行制度について説明します。現行制度においては、専門業務型 裁量労働制において、「対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働 者の健康及び福祉を確保するための措置を当該協定で定めることにより使用者が講ずる こと」とされています。また具体的内容については、通達において、企画業務型裁量労 働制における同措置の内容と同等のものとすることが望ましいとしています。  企画業務型裁量労働制においては、「対象業務に従事する労働者の範囲に属する労働 者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該決 議で定めるところにより使用者が講ずること」とされています。具体的には指針で定め られていまして、勤務状況の把握方法及び措置の内容について、決議の中で明らかにす べき旨を規定しています。  把握方法としまして、対象事業場の実態に応じて適当なものを明らかにすることにな っていまして、具体的な方法としては指針の中で、いかなる時間帯に、どの程度の時間 在社し、労務提供をし得る状態にあったか等を明らかにし得る出退勤時刻または入退室 時刻の記録等によるものであると明らかにしています。また措置の中身として、対象労 働者の勤務状況に応じて、いかなる健康・福祉確保措置をどのように講ずるかについて 明確にするように、指針で明記しています。具体的な措置の中身として、指針で書いて いますが、「対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じた代償休日または特別な休 暇の付与」、「年次有給休暇の連続取得の促進」、「相談窓口の設置」等を例示してい ます。  この制度を踏まえまして、アンケート等で明らかになった問題点を論点として書き下 しています。(1)実効性を確保するため、何らかの制度上の措置を講ずるべきではない か。決議・協定に盛り込まれた措置を実際に実施した事業場の割合が低くなっているも のが、アンケートで明らかになっています。また、決議・協定に盛り込まれた措置を確 実に実施させるための方策には、具体的にどういうものがあるのか。決議・協定に盛り 込まれた措置が実施されていないことを労働基準監督署長が確認したときには、当該決 議・協定を将来に向かって効力がないものとして、裁量労働制の適用を認めないことと してはどうか。上記の措置を取った場合に、労使の自治を侵害するおそれがあるのかな いのかという点についても、留意すべき点として挙げています。  (2)運用上の措置により、実効性を確保すべきではないかということの具体的な例と して、好事例を指針で示して関係者に周知・徹底を図ることによって、自主的に取組の 促進を図るべきではないか。また、裁量労働制の対象者のうちで、「休日・休暇を組み 合わせた連続休暇制度の導入」、「年次有給休暇の連続取得を含む取得促進措置」や 「一定時間以上の勤務が行われた場合の特別休暇付与」等を望む労働者が多いというこ とがアンケートで明らかになっていまして、これらの具体的な措置について決議として 義務づけることとしてはどうかという点を挙げています。  2「その他」として、苦情処理措置について、また労働時間管理対象者と裁量労働者 とが混在した場合の取扱いについてという点を論点として(1)、(2)で挙げていま す。(1)苦情処理措置についてです。(1)実効性を担保するため、何らかの制度上の 措置を講ずるべきではないか。人事担当部署や労働組合等に相談窓口を設置している事 業場が多いわけですが、実際に苦情を申出た事業場が非常に少ないことがアンケートで 明らかになっています。苦情に対する会社の対応についても、なかったという労働者が 多いという指摘もあります。苦情に対して事業主が取るべき対応について、労使協定や 労使委員会の決議対象とすべきではないか。苦情処理措置の実施状況についての労働基 準監督署への報告を義務づけるとともに、決議・協定に盛り込まれた措置が実際に実施 されないことを労働基準監督署長が確認したときは、当該決議・協定を将来に向かって 効力がないものとして、裁量労働制の適用を認めないこととしてはどうか。上記措置を 取った場合、労使自治を侵害するおそれがないかについて、留意すべきではないかとい う点を付しています。  運用上の措置により、実効性を確保するべきではないかという考え方は、苦情処理の 体制や苦情に対して事業主が取るべき対応については、好事例等を指針で示しながら、 関係者に周知・徹底を図ることによって、自主的に取組を促進することにすべきではな いかという点を挙げています。  (2)裁量労働制適用労働者と通常の労働時間管理対象者が混在した場合の取扱いに ついてです。この問題を提起した背景として、2つほど・を付けています。1つ目は、 共同作業等において、作業チーム全員による打ち合わせが必要な場合には、裁量労働制 の適用労働者であっても、その打ち合わせが行われる時間帯については仕事に従事せざ るを得ないことから、実態として真の「裁量労働」を徹底することができなくなるとい う問題が生じること。2つ目は、共同作業等において、裁量労働制の適用労働者が効率 重視の働き方をする場合に、その職場環境によっては、裁量労働制の適用を受けない他 の労働者が、結果として長時間労働をせざるを得なくなるという問題が生じている点が 背景としてあります。  では、この背景を踏まえて、どういう解決策があるかということで、(1)と(2)で具体 的な解決方法を提示しています。(1)は、混在の状況は多様であることから、各企業に おける実態を踏まえて、各企業にその対応を任せるべきではないかという考え方。(2) は、混在による悪影響を防ぐために、何らかの措置を講じるべきではないか。具体的に は、同一の作業チームにおいて、裁量労働制適用労働者と通常の労働時間管理対象者の 混在は認めないとするべきか。また、混在を認めた上で、例えば、以下のような措置を 裁量労働制の導入要件(労使委員会の決議事項)とすること、または義務づけることと してはどうか。具体的な要件としては、@管理監督者は、通常の労働時間管理対象者の 時間外労働の状況を労使委員会に報告すること。A作業チーム全員に対し、どの労働者 が通常の労働時間管理対象者であるかを周知すること。B作業チーム内の役割分担につ いて、あらかじめ明確にしておくこと。C通常の労働時間管理対象者に対して、法定労 働時間内であっても所定外労働となれば、割増賃金を支払うことという要件が考えられ ます。事務局からは以上です。 ○座長  ありがとうございました。案が(その1)、(その2)と分かれていますので、まず は(その1)についてご議論をしていただき、そのあとで(その2)に入りたいと思い ます。(その1)は前回の延長線上で、ご覧のとおり下線が引かれたところが今回、前 回の議論を受けて付け加わった部分ですが、これらについてご意見をいただきたいと思 います。あるいは、ご質問がありましたらお願いします。いかがでしょうか。 ○水町様  とりあえず1点だけです。(その1)の3枚目の(2)の最後の・で、「労働時間の配 分については、真に裁量性のある業務に限定するとともに、健康・福祉確保措置を講じ る前提としての出退勤時刻の把握が不要となるような措置を講じるべきではないか」と いうことですが、私の理解が正しいとすると、出退勤時刻の把握をしないやり方で健康 確保を図るという措置を講じる。もう少し具体的に言うと、どういうイメージになるの でしょうか。 ○小林調査官  裁量労働者については、労働時間管理の責任がないものですから、そういう意味で具 体的に何時から何時まで勤務したかについては把握することができないということで、 在社時間等で健康管理上の把握をしてくださいという方法については指針で書いていま す。ただし、具体的に健康確保措置については、実際上、裁量労働制は労働時間の配分 等についても、本来の真の裁量労働制であれば時間配分自体も自由にできるはずですの で、そういう意味で本人の実践に任せたものに転換すべきではないかということで、あ くまでも公権的に使用者が在社時間等で管理するよりも、自らが健康管理等を行うよう な真の裁用労働者を適用労働者にすべきではないかということで書いたわけです。 ○水町様  健康確保と労働安全衛生との関係で、何時間働いたかということを把握する全体の総 労働時間の把握はするけれども、何時に出てきて何時に帰ったかについては特に申告を させないということですか。今日12時間働いたけれども、何時に来て何時に帰ったかは 別に言わなくていいということですか。それで健康確保措置を講じることができるとい うことでしょうか。 ○松井審議官  まず、ここに・を入れた趣旨は、前回に荒木委員が裁量労働制は本来、みなし時間と 実態を乖離させた制度として導入したものであって、労働時間を把握するような運用を していることが原因となって、いわばみなし時間と実際の労働時間の乖離があるのは問 題ではないかとか、それを近付けるようにすべきではないかという議論があるのは、制 度の趣旨を十分に理解していない、解釈誤りではないかというご趣旨の発言がありまし た。考えますと、先生のご指摘のように現行裁量労働制は時間の把握をダイレクトにや ることは法律上はやっていないのです。ところが法律上、健康・福祉確保措置という命 題の下に運用、つまり指針で出退勤時間をみるという考え方をしていて、それが徹底さ れている中で実際労働時間を把握していることになり、そういう誤解があるだろうとい うことではないかと判断しましたので、ここにあるように健康確保措置として出退勤の 把握ということをやらなくてもいいのではないか。そうすると、何が健康確保措置かと いうことになるわけですが、現行の指針で健康確保措置としては、時間把握そのものを ある程度やることを前提としながらも、それ以上に例えばしっかりと休ませる措置を取 るといったようなことを中心に、それが確実に取れれば健康確保につながるといった例 示もしていますから、その把握がなくなることで直ちに健康・福祉確保措置が全面的に なくなるものではないと判断して書いたということです。 ○水町様  労働時間レベルで裁量労働という場合には、労働時間は基本的に何時間働いても、配 分については労働者の裁量にゆだねるという意味で、労働時間については細かい規制と か、そういうことはしないことはわかりますが、健康確保措置という観点からどういう ふうに実効性ある健康確保措置を講じるかというレベルの問題になると、例えば休日を 与えればいいのか、それとも総労働時間を見るべきなのか。総労働時間を把握するため には、在社時間も言わせないと、今日15時間働いた、12時間働いたと言うだけで、本当 にその時間は働いたかを把握できるかという問題があって、そこはどういうレベルの話 なのか。どちらにしても、(その2)の健康確保措置を実効的にできるかにうまくつな がっていけばいい話だと思うので、本当に出退勤時間を外していいのか、それとも総労 働時間の話なのか、休みの時間を完全に与えることでできるかというところで、うまく これがつながっていけばいいと思います。 ○松井審議官  おっしゃるとおりで、その問題意識を明確にしたくてやりました。24時間のうちの総 労働時間の方で把握するのか、裏返しですから休み時間をしっかり取るということでや ればいいという頭の整理をするかが大きなポイントだと思います。それが何よりもでき るのは裁量労働制というものの基本概念が、労働時間の配分は労働者本人にゆだねる。 つまり、仕事時間と休み時間の配分は本人にゆだねたということですから、ゆだねたこ と自体をチェックするのはゆだねたことにならない。そうすると、トータルで年間休日 はこれだけ。これをどう使うかだけだから、全体の休日を把握しておきましょうという 関連でもいいかなというぐらいです。そうすると、それがあまりに安易に運用されて、 配分の力のない労働者の方々にそういう命題を与えると、自らの健康を害していくこと が心配なので、もう一遍念のために今は総労働時間なりをチェックする、ある意味では おせっかい的なことをやっている状況かと思います。ところが、それがあるがために逆 に真に裁量性を発揮したい方にとっては、どうも障害になっているというご意見もある ので、どうしようかという問題だと思います。そこの解決をしない限り、この制度の特 性が生かせないという問題が今はあるのではないかと思います。 ○水町様  出退勤時刻の把握は(その2)の議論でやって、そのあとにこの文言をどうするか と。 ○座長  今の水町委員からのご意見で、松井審議官が時間を把握するとみなしでもそうです が、例えば9時間とすると6時間で帰るのは心理的に非常に難しくするわけです。何時 間申告というと、みんなが10とか12と言っている中で、自分だけが5と言えなくなる。 そうすると現実に、裁量的になかなか動かなくなる。つまり、こういうリファクトの弊 害をどう対応していくかという問題がかかっています。前回、そういう議論が少し出ま した。 ○山川様  今、座長の言われたこととほぼ同じ趣旨を発言しようと思っていましたが、若干追加 しますと、今、審議官の言われたように、健康確保措置というのはいろいろなものがあ って、出退勤時刻はその中の1つということで、私も荒木委員と同じような意見を前回 に申し上げましたが、その中でこの文章の前半のこともかなり申し上げたような気がし ます。つまり、真に裁量性のあるものを確保することがある意味では前提である。出退 勤時刻を指定するような制度を作るということはそもそも趣旨に反していて、自由に時 間を使えることが実現されるとともにという趣旨であるということだと思います。 ○佐藤様  資料というか読み方の確認です。たたき台(その1)の1頁の企画裁量の(1)現行の ままで良いか、(2)一部拡大すべきか、(3)労使の決定にゆだねるべきか、(4)狭めるべ きかという考え方に沿って整理されていて、その中がいくつかのアンケート結果や労使 の声、そういうニーズを踏まえて方向を示している考え方になっていると理解します。 ほかは大体なんとなくわかりますが、(1)で企画裁量について現行のままで良いのでは ないかとし、その下線部分を見ると対象業務の範囲が狭すぎるのでということになって くると、現行のままで良いという話に合致しないところがあるかと思いますが、この辺 はどう理解したらよろしいのでしょうか。小さなことで申し訳ないのですが。 ○小林調査官  これは、選択肢として現行のままで良いか拡大すべきかということで、一応考え方を 整理した上で、具体的にそのアンケートを見ると専門裁量の方はほとんど現行制度でい いが6割、一方で企画裁量は7割弱の方が対象範囲が狭すぎるというデータがありまし たので、選択肢としては置いていますが、実際に見ると狭いという方が多いというデー タを踏まえてどう考えるかということで、本日はデータを付したところです。 ○佐藤様  そうすると、これを踏まえて例えば、狭すぎるという意見なので少し拡大すべきでは ないかという声として見てもいいぐらいのことですか。あまり、そこは拘らなくてもい いのですか。 ○松井審議官  これは、最終報告に向けての頭の体操のつもりで書いていまして、専門型と企画型は 現行のままで良いかという想定に対して、どうも専門型は現行でいいという意見が多か ったので、それ以上何か捻って意見を出すのは変だなということでこれにしています。 企画の方は先走っていますが、次の頁に狭めるべきではないかという意見を入れたりし たのと、先ほどの真に労働配分時間について裁量というのと絡みますが、そうすると逆 にアンチ・テーゼとして広げるという意見をきちんと出しておいて、本当にどっちにす べきかを吟味していただきたくて書きました。だから、意見を切っていいですかと。例 えば、削って(4)にいっていいでしょうかということを問いたくてやっているということ です。 ○佐藤様  それとの関連で確認ですが、1つはそういうアンケートやヒアリングをやって論点整 理としていますから、アンケートもあえていうと賛否両論みたいなものがあるので、こ れはこれから精査していく1つの項目として理解しておくということですね。 ○松井審議官  この研究会としてアンケートを採用するか、蹴飛ばすかを是非やっていただきたいと いうことです。 ○山川様  今回の修正部分ではないのですが、質問になるかもしれません。先ほど、真に裁量性 があるか否かということとの関連で、出退勤時間の自由を拘束するような制度を仮に設 けた場合の私法上の効力というか、協定では配分を労働者にゆだねることとすると書い てあるので、にもかかわらず拘束的な制度を作った場合にその効果がどうなるのかとい う点です。それから、2枚目に書いてある具体的な指示ということですが、指示といっ てもこれをやってくれないかという拘束性のないものまでできないとすると、それでは 仕事になりませんので、拘束してはいけないということだと思いますが、仮にそういう ことをした場合、つまり拘束する指示をなしうるという制度を設けた場合に、そのよう な協定に反する制度が私法上、無効になるのかどうかという問題がありそうな気がしま す。制度全体が運用上、裁量性を失われていたら、裁量労働制自体の基盤がなくなっ て、実労働計算に戻ることになりそうな感じもしますが、そうではなくて個別的に拘束 したような場合、協定違反ということになったら、法律上はどういう効果が発生するの でしょうか。 ○小林調査官  最初の点は、もともと裁量性のない業務を指定した場合は、適用については通常の労 働時間が適用されますので、そういう決議をしてもそれ自体の効力は発生しません。  そのあとに、個別の具体的な指示をした場合、それをもってどう法的に評価するか は、協定に違反したからといって協定自体を取り消すとか、そういうことについては法 律では特段していないので、特に裁量性を歪めたというか、全く趣旨をはき違えたよう な形であれば、解釈としてもともとその後どうなのかという法的な評価として議論され るかと思います。 ○山川様  自分でも特に見解を持っているわけではないのですが、そういう問題がしばしば生ず ることになりますと、検討する必要がある感じがします。 ○大西監督課長  法的効果で、無効というところまで書き切ると、多くの人がこういう違法な実態があ る場合には無効にしてほしいと、世の中一般にそう思っているという事実がないと、な かなかそこまでは書き切れないということで、労働基準法の関係法令の中でも無効とま で書き切っているところと、そうでないところというのは書き分けられているのではな いかと思います。今回の場合、委員のご指摘をいただいた点については調査官からもご 説明させていただきましたように、実態判断ですね。多分、対象者全員についてガチガ チにしましょうという方はあまりいないと思いますので、個別の判断で認定していくこ とにならざるを得ないのかという具合に考えています。 ○座長  これは、確かに1つの重要な論点ですね。ここではすぐに答えは出ないということで しょうから、どなたかお持ちだったら是非ご意見をいただきたいです。そうでなけれ ば、別の論点に移りたいと思いますので、お願いします。 ○水町様  前回出ていなかったので、もし前回の議論を踏まえてこうなっているとすれば、その ことも併せてよろしければ説明していただきたいのですが、全体の専門業務型と企画業 務型と、3枚目の(3)の創造的・専門的能力のこれからの議論の方向というか、棲み分 けの話をお伺いしたいのです。今日のご説明を聞いていると、専門業務型は概ね現状維 持。企画業務型は、真に裁量性のあるものについては企画業務型から外して、(3)の創 造的・専門的能力に当てはまるようなものとして適用除外にしていく。適用除外にする ときにも厳しいというか一定の要件を課して、本当に裁量的でかつそれを確認できるよ うなものにして、そちら側を少し新しい制度として作っていく。その分、企画業務型で 今の企画業務型の趣旨に合わないものは狭めていくような形で、こういう構成になった のでしょうか。 ○松井審議官  後半のところは読み方にもよりますが、確かに専門型の裁量については客観的にこの 定義のように、対象業務が限定されるという運用をされていますから、それなりの労働 時間配分について裁量をやりながら、なんとかいっている雰囲気であることは掴めまし た。ところが企画型については法令上、企画・立案・調査及び分析の業務であって、時 間配分が難しいと非常に抽象概念を駆使した業務限定になって外形標準型になっていな いために、その決定が労使委員会決定になっている事実まではわかる。そこで、先ほど 言ったように問題が起こったのは、みなし時間と実労働の問題が出たりして、そのずれ があるからどうしようかという議論になった。結果として、専門型の方は実労働とみな し、あまり乖離がないからということもあって問題意識なく現状でいい。ところが、企 画の方は多少ずれがあるからという問題意識と、そういうふうに捉えるのではなくて、 労働時間に捉われない働き方をすべき裁量労働に関わる労働時間との関連で、いいか悪 いかという議論をすることになるのだったらばということで、むしろ今の制度の中で、 純粋に時間配分の裁量でいけるような方に絞り込むための何か手当をすべきではないか と。それで真に役立つようにしてはという議論が前半にあったと認識しています。  その上に(3)の方は、今の裁量労働制そのものは、時間配分について裁量性があると しながら、すべての労働時間についての時間配分の裁量を与えていないのではないかと いうのが、さらに問題意識としてあります。そこは深夜業、休日について割増賃金や深 夜時間帯の割増しといった賃金加算制度は残しています。それを残しながら特化すると いうご議論もありますが、さらにその部分を取り外して本当に労働時間管理をなくして もいい方もいるのではないか、という展開で整理しています。だから企画裁量で今の制 度の真髄を貫くような運用をやりながら、それでもしカバーしきれない人があると、も う1つ労働時間を適用しない方々を認めるという整理もないだろうかとしていることも あります。 ○水町様  そこは、今後の議論次第でしょうが、イメージとして今の企画裁量の中で真に裁量的 なものを抜き出したか選び出して、あまり裁量的なものではないものについては企画裁 量の中の概念から外すことになるのでしょうが、真に裁量的なものに純化していったも のを企画裁量としてその制度の中に残しておくのか、それとも真に裁量的なものについ ては(3)の創造的・専門的というところで新たな制度で対応するのかの2つの選択肢が あると思います。比較法的に見た場合に、専門業務型のような制度を取っているのがあ ります。業務自体をかなり客観的に見られる。だから企画業務型のような制度というの は、比較法的に見てもあまりなくて、こういう複雑な制度は実態と乖離して運用があま りうまくいっていないというのがあるので、もし純粋な裁量労働できちんと要件をかけ て、濫用的なものにならないとすれば、今の企画業務型を大きく見直して新しい制度と するのも政策の方向制の1つの選択肢だと思います。それをまた企画業務型という箱の 中で今までの制度を微調整して残すのか、それとも新しい制度でより実態に合って、か つきちんと濫用的なものにならないような枠を付けられるような新しい制度にするか。 ここだと、どちらかがわからなかったのです。 ○松井審議官  そういう意味では、まさにそこをご議論いただきたいと思います。どちらでも読める ようなつもりで。ただ、一番広くは企画裁量を特化して残すということもやりながら、 それでカバーしきれない、よりピュアな裁量。それを同じ裁量で使うと概念矛盾を起こ すので、あえて横串で創造的・専門的能力を発揮という視点からその集団を掴まえて、 それすら適用しないグループを作るという整理もないだろうか。そうするとその場合 は、今の企画型裁量に関わる導入要件よりも、もっと厳しい要件を付加して適用除外と いう手法が考えられるのではないかという整理をしてみたわけです。 ○水町様  かつ深夜業を外すという効果を新しく見直すと。 ○松井審議官  今言われたように、企画裁量そのものを衣更えする方がシンプルだし、わかりやすい という議論もあるかと。ただ、それはものすごく今適用されている方々に対しての影響 度も大きいかなということもありまして、段階的な整理としてどうかと考えています。 ○座長  今のやり取りも、非常に重要なポイントだろうと思います。この点はよろしいです か。では、ほかの点でどうぞ、ご意見をいただきたいと思います。 ○佐藤様  これも確認ですが、今の点を深めていく過程では、(その2)の中での健康・福祉確 保措置に当然関わってくると思いますが、それはそちらでやってもいいということです か。 ○座長  それでは、必要に応じて(その1)にも戻るということにしましょう。便宜上分けて いるだけであって、現実には相互に絡み合っていますから、(その2)も含めてご意見 をいただきたいと思います。 ○佐藤様  今の水町委員と審議官のやり取りは、非常に重要だと思いました。前回から、裁量で いわゆる偽物、本物という議論が出てきましたが、趣旨としては、当然偽物を本物に近 付けていく努力が1つの方向性として出てくるだろう。そのときに、いくつかの考え方 があるということだと思います。今の企画に関していうと、現行では法律できちんと規 制していますが、実はヒアリングやアンケートの中ではいろいろな意見があって、それ をもう少し本当は本物に近付けた仕様をしたいと思っているけれどもというもので、そ れは議論に非常に乗っていきやすいと思いますが、もう1つ困ったことに、何と言った らいいのかが言いづらいけれども、そういうふうに乗っていかないタイプの本当の意味 での偽物というか、そういう趣旨に乗っていかないタイプのものがどうもある。趣旨に 乗っていかないタイプのものは、実は案外大事で、そこをどう論点の中でフォローして いくのかというときに整理したい気持があって、自分の中できちんと整理できているわ けではありませんが、その辺の議論は先ほどの純粋企画裁量で混濁して使い勝手が悪い から、もう少し本当の意味で使いたいタイプでニュータイプの(3)が出てきていると思 いますが、その(3)の中で扱われるような話になっていくのか、それとも別途もう1つ 箱を作った方がいいのかという辺りのところです。 ○座長  もう1つの議論すべき点はまた次にやるとしまして、今日そこに関わりながら裁量労 働制のところで論じた方がよければ、踏み込んでご議論をいただいてかまいませんか ら、よろしければご意見をいただきたいと思います。非常に重要なことをおっしゃられ たと思います。偽物というか、なかなか従来の裁量労働制にはありとあらゆる観点から はのっていないけれども、しかし裁量的にといいますか、時間に関してもう少し緩やか にしてほしいという見解をどう処理していくか。 ○守島様  今のこととの関連で、正直に言うと創造的・専門的な能力を真に発揮するための仕事 で、具体的なものではなくて、コンセプトとしての専門業務型というところに入らない ものというのは、いったい何があるのだろうかと考えていくと、実はこういう議論をし ていくと、企業の本物、偽物の議論があったとしても、最終的にはカテゴリーとして は、具体例ではなく専門業務型というもののコンセプトというか、なんとなくそこの部 分に吸収されてしまうような気がします。私は、最初の法律の意図というのは完全には 把握していませんが、企画業務型というものが出てきた1つの背景というのは、ある意 味では専門性であるとか創造性であるとか、そういうものをリクワイアしないけれど も、仕事の内容としてみると裁量的に扱うことが望ましいものというところをカバーし ていくことがあったのではないかという気がします。逆にいうと、そういうことをやっ ていく必要があるように思いますので、そういう意味では3タイプにするのか2タイプ にするのかという議論がありますが、あまり最後のところを大きくしてしまって、専門 業務型と創造型にしてしまうと、本来企画業務型が狙っているべき意図みたいなものが 失われてしまうような危惧があります。  企業の中の仕事をみた場合に、必ずしも専門性・創造性という括りではないけれど も、裁量的に働く場面は例えば管理職ではないけれども、グループリーダーみたいなこ とをやっているよねということが割合とあるように思いますので、それがどれだけ恒久 的かという問題はありますが、そういうところをカバーしていくための1つのメカニズ ムは残しておいた方がよろしいように思います。 ○山川様  どうも裁量労働制そのものの問題よりも、適用除外等の関係といったようなお話にな ってしまうのですが、今、守島委員の言われたことがかなり重要で、要はなぜ企画業務 型というものについて、みなしという制度を採用したのかがポイントになるのではなか ろうか。専門業務型は仕事の性質というか、職種的にも裁量的にならざるを得ない。条 文上も具体的な指示をすることが困難であると書いてあるものですが、企画業務型は趣 旨は共通した部分があるにせよ、具体的な指示をしないこととすると書いてあって、趣 旨としてはともかく、性質上困難であるという要件は必ずしも文言上は組み込まれてい ない。そういうものについて、みなしというテクニックを取ったのは、そもそもどうい うことによるのか。もし専門業務型とかなり色彩が違うものであれば、別の制度の方が 本来はスッキリしているのかもしれない。専門・創造というよりも自律という言葉の方 がキーワードになる感じがします。以上が、棲み分けの1つの考え方なのですが、もし ほかのファクターを考えるとすれば、要保護性というか年収みたいなことも書かれてい て、その年収がどういう意味を持つのかは2つあるような気がします。自律性の代理指 標として捉えることと、ほぼ現在の適用除外に近いような経営者に比較的近い立場にあ ることの代理指標として捉えるのかといろいろな考え方があって、もし新たな視点を入 れていくとしたら、そういうことを取り入れることも考えられるかと思います。 ○座長  少し次の議論に入ってきてしまいましたが、その点でもう少しご意見があればいただ きたいと思います。よろしいですか。それでは別のテーマでも結構です。 ○西川様  資料1の視点にも関連するのかもしれませんが、主にはたたき台の(その2)のとこ ろで、健康で文化的な生活を保障するために確保すべき事項ということですが、前にも 申し上げましたが、ここで主に裁量労働制で前回の会議で取り上げられた社会経済環境 の変化でグローバル化というのが出てきましたが、もう1つ我々が直面している環境上 の変化としては少子高齢化があると思います。労働時間というのは何の指標と取れるか というと、1つには労働へのコミットメントの指標と取ることができると思いますが、 従来型の働き方とすると男性の労働時間が長くて女性が短いという役割分担がはっきり できていまして、男性が労働にコミットをして女性はどちらかというと家庭の方にコミ ットする。働くとしても、パートで働くであるとか子育て期であるとか、あるいは高齢 の親の介護であるとか、そういうときはそういう働き方を選んで、なんとかやってきた というのがあると思います。こういった生活との関連における労働時間の視点というの が必要なのではないかということです。  先ほどから裁量労働制の問題で、専門職の方は自律性が高い、自律性が1つのキーワ ードだと山川委員からのご発言もありましたが、この前に申し上げたときに荒木委員か らご意見をいただきまして、本来は裁量労働制というのはそういうことも可能にするよ うな制度であるべきだというお話で、それは非常にそうだなと思いました。先ほどの自 律性というキーワードからすると、専門職の場合はそういう面を補完するような形にな っているかもしれない。確かに、我々のような研究職であるとか大学の教員であるとか は、裁量労働制の対象になっているわけですが、子育てが比較的にしやすいような、あ るいは親の介護がしやすいような環境にあるわけです。一方で企画の方の裁量労働の方 は果たして自律性というキーワードから見た場合に、それを補完するのか、それと摩擦 を起こしていくのか。そういうところを考えていかなければいけないのではないかとい う気がします。グローバル化への対応や生産性向上であるとか、そういうところで労働 時間の裁量性を高める方向がある一方で、我々の生活との関連における労働時間と、そ れがどううまく調和していけるのか、あるいは摩擦していくのか。その辺のご議論も必 要ではないかという気がします。 ○座長  ありがとうございます。ワークライフバランスからも非常に重要な論点を提起してい ただきました。 ○守島様  今の西川委員のお話とも多少関連するかもしれませんが、今回業務というか仕事の内 容をある程度限定していこう、もしくは広げていこうというときの考え方は、まさに西 川先生がおっしゃるように専門性というか、生産性であるとか成果であるとか、そうい うのをキーワードで掲げられたのだろう。我々が考えるときに、それだけでは考えられ ませんねというのが今のご発言の趣旨で、大変正しいことだと思います。そのときに1 つ考えなければいけないのは、ここで比較的にマイナス的なイメージで書かれている労 使の自治というか、労使が自分たちで決めるというプロセスに関して、これをどう捉え ていくかの認識がもう1つマイナス面の方に傾きすぎている気がします。というのは、 例えば女性の問題を扱う場合に、確かに女性の問題は重要だということは1つの大きな 現象としてあるのですが、それが特に特定の企業であるとか業種の中で際立ってくるこ とが多分あると思いますので、大きな法律的な枠組みの中でそれを捉えられない場合 に、労使の自治というところに任せていかざるを得ない場面はあるように思います。で すから、もちろん法的なもので大きく括っていくのは確かにあると思いますが、それ以 降の部分で現場のというか企業というか、業種の状況を反映していくためには、労使の 自治ということをある程度盛り込んだ形にしておかないと、様々な環境要因の変化は、 これからいろいろ起こってくるわけなので、それに対応しきれないようになってしまう のではないかという気がします。 ○山川様  これは裁量労働にも関わるし、適用除外というか新たに自律的な労働時間のあり方を 考える場合にもそうなるかと思いますが、本当に100%自律的な働き方が可能であれば、 その他の問題は自己管理に任せることも理論上はあり得なくはないのですが、特に日本 のような雇用システムや労働市場を前提にするとなかなか難しいという観点からは、こ こで書かれた健康・福祉やその他職業と家庭の両立など、いろいろなことを考えていく ということがセットになるかと思います。その場合、守島委員が言われたことですが、 あまり具体的な言葉で義務づけるのは企業の実態に合わないことになるのではないか。 労使自治でどう見るかはともかくとして、現実にはなかなかワークしない可能性も出て くるのではないかという気がします。ではどうするかということも成案がまだあるわけ ではないのですが、趣旨からすると、1つは、裁量労働制にとって労使委員会というも のが過半数代表とはかなり違った色彩をもつものと本来的に位置づけられるのではなか ろうかと思います。条文の話ばかりで恐縮ですが、事業場における労働条件に関する事 項を調査・審議して事業主に対して意見を述べることを目的とする委員会というような 位置づけで、協定を締結するだけの過半数代表とはちょっと違っている。労働契約法と 関わるかもしれませんが、労働条件に関する事項を調査・審議することを、もっと実質 化するような道があるのではないかという感じがします。それは苦情処理の所とも共通 していて、なかなか日本の現実で個々の苦情を上げていくことや取扱い方も難しいので すが、要はこの苦情は、ひょっとしたら制度の歪みの現れかもしれないということがあ るわけで、個々の苦情も大事でしょうが、制度全般の運用を調査・審議するような形 が、抽象的なレベルなのですが、何かあり得ないかなと、発想として感じます。 ○今田様  ちょっと漠然とした言い方なのですが、裁量労働の枠組みとして、健康で文化的な生 活を担保するための措置というのがどうしてもしっくりこない。健康で文化的と言うに は、具体的には働きすぎて健康を害してとか、長時間労働というような(その2)の四 角の中にありますように、対象労働者の勤務状態をその健康状態に応じてなどという説 明というか記述になる。この健康と文化的な生活というのは、まさにワークライフバラ ンスが重要なのであって、体がクタクタでとか不健康というよりも、もっと広い概念で あるべきだと思います。そこをもっと強調しない。クタクタになったら助けてもらえま すというのではない。休日をとって創造的な仕事をするために労働時間や全体をアレン ジする、そういう自律的な働き方をするのが裁量労働なのではないですか。その辺につ いて今後の議論で、座長と審議官はワークライフバランスの重要性を打ち上げて世の中 をあっと言わせたコンビなのですから、是非その辺をもう少し拡大すると言うか、何か すぐ健康状態というような話に持って行かないで、広げてほしい。そうすると、西川委 員がおっしゃったようなそういう視点もこの議論に取り込んでいけるのでは。違和感ば かり言って恐縮ですが、何か今回そういう工夫をして、健康で文化的な生活を担保する ための措置という面で、もう少し知恵を出してみてはいかがでしようか。 ○松井審議官  全体構想にどう影響するかは、ちょっと自分もまだ皆さんのご議論を聞いて整理しな ければと思っていますが、健康で文化的な生活、仕事と生活の調和を図るという大目的 は、労働時間制度全般を活用して、実現すべきテーマかなという整理だと思うのです。 個の裁量労働制を使ってそれに応えるかとなると、今までの議論を整理しても業務型の 裁量労働制は、今言われたような命題の仕事と生活の調和に利用しやすいシステムとい う評価があってもいいかなと。  ところが企画業務型裁量労働制は、まさに指摘されたように、専門能力発揮などをや ると結局業務型の方に行ってしまうので、今の話に自律という言葉、言葉に戻れば、企 画・立案・調査及び分析ですから、総合性発揮などと言ってもいいかわからないのです が、いわゆるゼネラリスト的なもの、特にそれで優れた能力というのではなくて、全体 を調整するという調整業務的なものでその業務にしっかりフィットして、その中の配分 は自らが自律的にやる、そのようなものをもう少し抽出したものにすると、もう少し整 理できるかなというように今思ったのです。それは申し訳ないですが、ひょっとすると 生活と調和を目指す人の中で、バリバリ仕事をやる人の道具になってもいいのではない かと思うのです。本当に調和を目指すのは、裁量ではない通常な働き方をする方々のと ころに、より強く家庭とのバランスを取れるような運用ができるように配慮をすること の方が、トータルでは仕事と生活のバランスという働く側の強い需要と、いわゆる生産 性を高めて効率的な社会、あるいは能力主義的なものを加味するという使う側の要請に も、ある程度バランスがとれるのではないかと思うのです。そういう意味で、使う道具 をもう少し多様化すると言いますか、そういった気持で整理していただけると、違うの ではないかという気がします。 ○座長  クタクタにならないと助けてあげないという部分には、2つの側面があると思いま す。本当にクタクタになった場合には、やはり誰かが助けてあげなければいけない。ま た最低限の部分では、しっかりと保護をしていくことが基準法の趣旨ですから、まずそ こを押さえなければいけない。ではそこでとどまっていいかというと、今、今田委員と 松井審議官がお話されたように、その先にもう少し行かなければいけないということが あると思います。  クタクタになったら初めて何かするという考え方でいきますと、これは制度を主導し ていく哲学にならないのです。こういうものを哲学にしてしまうと、かなり悲惨な哲学 になってしまうのです。だから哲学的なものではワークライフバランスなど、何かもう 少し一般性のある理念でないとよくないのではないかという感じが、私もしています。 ○佐藤様  今のことで若干感想を言うのですが、今までのご議論は重要だと思っています。もう 一方ではこれまで聞いてきた企業の方と組合の方のヒアリングで、それぞれの立場から の議論があって、それぞれがそれなりに意味があると思っているのです。1つ気になっ ているのが、例えば裁量労働制についてややもう少し広げるということについて、ネガ ティブな考え方に立っている方々のご意見を聞くと、今仕事量が多いとか、労働時間の 残業が長いなど、本来今の労働時間の仕組みの中できちんとやればすむような部分があ るわけです。年休も本来は100%取るという要請になっていますので、本来やるべきこ とを、しかも既に制度があるものがきちんとできていれば、かなりその部分の不満が軽 減するだろうなというところが実は軽減していない。その部分が、今度は裁量の拡大に 尾を引いてくる形になっているような気がします。そこできちんとした本来の残業、あ るいは計画年休の問題等を引きずる形で裁量の問題に入ってくる。  他方で、使用者のご意見を聞くと、比較などの趣旨は大いに議論すべきだと思うので すが、使い勝手の悪さの中には企業の仕事の実態の流れに合わない部分があって、それ はちゃんと本当にやろうと思うのですが、あまりにも事前に職務を具体的に書き込みす ぎていて、実は日進月歩でどんどん変わっていく業務の中で、それに合わせているとど うも追いついていかないというもどかしさがある。その背後には、書面で具体的にきち んと細かく書いていくことの中で、使用者側の言い方からすると、使い勝手をそのよう な形で健康で文化的な生活、働きすぎチェックの部分に効かせているような嫌いがない わけでもない。本来はそれも本当はきちんと明確にして、透明なものとしてやっていけ ばこのようにしなくていいものが、どうも業務の範囲を細かくすることで、いわゆる働 きすぎの問題に尾を引きずっているような部分がニュアンスとしてないわけではないと 感じます。そういう意味で本来の趣旨に近づけてみたときに、本当にその原点に返った ときにどうなのかという筋からの整理が必要な気がしまして、その中で今いろいろ尾を 引きずっているものが、整理されていくといいのかなと、これは単なる感想です。 ○守島様  今回のヒアリングをした結果、1つは成果主義が入ってきたことが、企業の裁量的な 働き方へのニーズを高めているという認識が、たぶん中で形成されたと思うのです。た だ、成果主義の導入というのは、まだ10年の話で、東大の先生はいろいろなことを言っ ていますが、たぶんなくならないだろうと。そうすると、これからの10年は企業も成果 主義の運用に慣れてくるだろうし、同時に働く人たちの意識も、かなり成果主義になっ ていくのかなと思っています。そうなってくると企業が、必ずしも時間管理ということ に関して、今までどおりの考え方ができなくなってくる局面が出てくるのではないかと いう気がします。ですから、今回のものがそれにどう反映されるかというのはわかりま せんが、1つの認識として、成果主義が今まで企業を変えてきた。でもこれからは個人 を変えていく1つのきっかけとなるのかなというところも踏まえた上で、労働時間の変 化、労働時間制度の管理制度の変化ということを考えていった方がいいと思います。非 常に漠然とした意見で申し訳ないですが、そのように考えます。 ○水町様  (その2)についての具体的な意見が2つと、1つ感想があります。先ほど松井審議 官がみんなをゼネラリストとして統括したり総括するような人はバリバリ働く人で、そ れ以外についてはワークバランスを考える、必ずしもそのようなラベルを貼ることはよ くなくて、例えば役所の実際の働き方を見てみると、課長とか局長になったら早目に帰 るが、その下の補佐、係長、係員の方は夜遅くまでずっと働いていて、逆転現象を起こ しているようなところもいっぱいあり、それは企業や業態によっていろいろだと思うの です。健康やワークライフバランスの問題など、いろいろなものを含めてどう調整する かというのは、やはり自治に任せるしかないところになってきて、法律で最低限のこと を加えることについては、実際上か山川委員が先ほどおっしゃったように、労使委員会 の議論をもう少し実質化していって、その中でうまく調整できるようなシステムを作っ ていくことが中長期的な課題だと思います。  (その2)についてですが、1つが健康・福祉確保措置についても苦情処理措置につ いても、労働基準監督署長が確認したときには、当該決議・協定を将来に向かって効力 がないものとするところがありますが、これについて私がどうかなと思うのは、将来に 向かって効力がないものとするというようにしてしまうと、ほとんど実効性がないので はないか。労働基準監督署がやって来て、「じゃあやってしまおう」と言ってやり始め たら、ほとんど効き目がない。サンクションとして実効性が本当に発揮できるのかが問 題です。  もう1つ、労働基準監督署長の確認ですが、今全国を見て、労働基準監督官がこんな に不足していて十分な監督ができないときに、労働基準監督官、監督署長に、過大な負 担や過大な期待を課すような法政策で本当にいいのかと。これは単純に、こういうこと をしてはいけませんよというように書いておいて、労働審判なり裁判所に行って、ちゃ んとなかったということが認定されれば、そもそも普通の労働時間管理に戻るというシ ステムにしておけばいいのではないかなと私は思いました。  もう1つは、(その2)の最後の所で、混在した場合の特に悪影響を防ぐため、何ら かの措置を講じるべきではないかという所の最後のポツに@、A、B、Cとあります が、果たしてこのような裁量労働制の導入要件とする、または義務づけることとしては どうかというので、これは今でも非常に複雑な制度の上にさらに複雑さを増して、使い 勝手が悪いものになるのではないか。この4つのうちの2番目ぐらいは、まだ誰が普通 の労働時間なのか、誰が裁量労働なのかという名札を付けておけば、この人がそうです というぐらいまでは分かるのですが、果たして@やBの役割分担や、Cの法定労働時間 内でやっても所定外労働とするというようなことまで、要件として課したり義務づける ということになると、企業としては実態に合わなくなったり、非常に使い勝手の悪くな るものになるかなという気が、私はしました。 ○座長  これも重要なご指摘だと思います。先ほどの非常に問題のある裁量制の運用がされて いるときに、これを是正させるときの方法はオール・オア・ナッシングではなくて、い わばサッカーで言えばイエローカードを出して、それで何度かうまくいかなければレッ ドカードになるというメカニズムや、カードを切るのを誰にするか、審判は誰がやる か、この辺のところは水町委員がおっしゃるとおり、少し工夫の余地があるだろうと思 います。  複雑すぎる制度は本当にうまくいかなくて、結局は何のために延々とみんなが苦労し て議論をしたかということにもなりかねませんから、その辺のところも確かに重要だと 思います。今日の(その2)というのは、そういう意味でもずいぶん複雑で、細かいこ とにもいっぱい踏み込んでいるだけに、これ以外のところでもご指摘をいただければと 思います。 ○松井審議官  苦情処理の署長確認案について、ご意見は全く尊重するのですが、前提としての現行 制度の説明を少し加えた上で、ご理解を深めていただければということでやりたいので すが、この苦情処理措置は現行の企画型の裁量労働制では、委員会で苦情処理の措置に ついて決定しますという事項にはなっています。  もう1つ同じような類でやるのは、健康確保措置の2つを比較して、健康確保措置に は決定した状況を、行政官庁に毎年定期に報告するというように、こちらだけ役所への 届出という義務を課しています。ところが苦情処理は、意図的にかけていないのです が、それは再びここで義務づけと書いてありますが、委員が言われたようにこういった 制度を以前は、両方とも届出をやっていた時期があるのです。ところが、規制緩和の流 れの中で、両方ではちょっと大変だからということで、ギリギリ絞って片方だけにした のです。それによってどういう効果が起こるかというと、決議したことを実施している かどうかは、今の企画型裁量労働制は、労使自治の名において、委員会が全部判断する のです。そして自分たちが適正と判断すれば問題はなし。もし委員会として決議を守っ ていないと、先ほど山川委員の言われた決議とのズレがある。それが重大な瑕疵であれ ば、当然法律が適用されないと解釈されて、ひどい場合はたぶんみなし効果がないと、 訴訟で争えばそうなるでしょう。途中の取消しという措置がなく、つまり行政官庁がこ れについて認可、認定するという手続はなく、裸でみなしが働くようになっていますの で、そういう意味では判例の法理を待たなければいけないかなという状況があります。 苦情処理について、もししっかりしたものにするならば、間に行政を噛ませることで、 行政が途中でこれは問題だというような言い方もできるのではないかというつもりで書 いたのです。  あと体制の問題については、今でも健康確保措置を定期的に署に報告しますから、そ れを見て問題があれば行くということで、全部の事業所に乗り込んでというイメージで はないということぐらいまでは考えています。それに、今言われたようにそうであった としても、むしろ判例や審判などの労使自治を重視しながら、その中で対応してもいい のではないかというご意見も、十分あるとは思っています。 ○水町様  大きな改正のときの選択肢としては、それはもう司法に任せてしまうのか、それとも これまでどおり行政官庁として、労働基準監督署長としてやるのか。 ○松井審議官  そのような選択肢もあるということで、吟味していただきたいということです。 ○水町様  あと同時に、個別の労働者の同意というものについても、これがない場合はどのよう になるのかという私法上の効果というのは、国会答弁と学説の中の見解が分かれていま す。だからそれが明らかにならないまま今に至っているので、その点についてももし制 度改正をするのであれば、法律の中でちゃんとわかるようにするか、それともいろいろ な所でこういう効果を持ったものですと明らかにするのか、それを整理した方が運用上 戸惑いがなくなることがあるかと思います。 ○松井審議官  戸惑いの整理は最後に書いています。労使自治を侵害しないようにという気持で、意 図的にぼやかしているようなところもあるのです。だからこのやり方は本当にいいのだ ろうかということも、今まさに言われたように整理をしていただくと、少し違うと思い ます。 ○山川様  私も今の水町委員の意見に概ね賛成で、あまり細かいことを定めていくのはどうかな という感じがします。労使自治にゆだねると、どれだけ実質化できるかがまた課題にな ります。そもそも労使自治で決めたことの効果自体が、あまりはっきりしない面が今言 われたようにあると思いますので、それをもう少し何か明確化できないか。法律で対応 することかどうかはちょっとわからないのですが、例えば健康確保措置というものを決 議した場合に、それが安全配慮義務や健康配慮義務との関係がどうなるのか。別に書か なくても、おそらく健康確保措置を労使委員会で決議して、それが守られないために過 労死が生じたといったら、裁判所はその決議に違反したことをかなり重要視するのでは ないかと推測しますが、その辺の整理、つまり労使で決めたことが今の同意の扱いも含 めて、どういう法的意味を持つのか。あるいは、先ほどの指示への違反というようなこ とも含めて、その辺りはここでの問題かどうかはさておき、検討してもいいのではない か。特に成案がなくて申し訳ないですが、中長期的に見れば個人が権利主張をする際の 基礎になるような感じがします。 ○座長  それはもう少し考えると、労働協約でも就業規則でもないような労使の合意、約束事 の法的効果をどう処理するかという、実は裁量労働だけにとどまらない非常に重要な問 題になります。それは、労働契約法制の研究会でも提言されているものとつながってい く。そこがはっきりしないままですと、どうしても協定で、何を決めてもそれの違反を どう処理するかというのがオール・オア・ナッシング的にはやれるかもしれませんが、 個々的に私法上の効果をどう考えるべきかというのは、なかなか難しい。したがって権 利濫用論や配慮義務のないようには潜り込ませることはできますが、直ちにどういう法 的効果があるかというのが、テクニカルに言うと問題です。 ○松井審議官  現状の法律が、必ずしもがっちりできていないという説明にしかならないと思いま す。相場ということで申し上げますと、先ほど言われたように委員会は、まさに裁量労 働制を調査・審議する委員会で、調査・審議に権限があります。ところが、一部決定と いう行為を前提に、みなしという法的効果を与えていると、ここがたぶん問題のポイン トだと思います。  もう1つは、この委員会というものは、いわゆる団結権、団交権を持った組合と使用 者がいる労使協議で合意した事項を破るということまでは、全然考えていないのです。 全く事務手続上構成された組織です。そうすると、表だけの整理からいきますと、委員 会で調査・審議し現場の問題をわかって、それを踏まえて労使が協議して、いろいろな ものを職場で決定するという流れが本筋なのですが、そうは言いながら、このみなし規 定だけについて決議をすると、いきなり法的効果を与える。そこのいろいろな法律論 を、はっきり言って整理しきれないまま法条文化されているので、今言った問題が起こ っていると思います。  裁判所は、たぶんこの調査・審議した決議事項について、それが企業内で労使協議で も問題なくやれば定着して、事業場のルールとして是認されるということがあるでしょ うが、例えばいわゆる健康確保措置が、労使が合意したと言いながら、全く予想外です が、安衛法などの法体系に違反する合意をしたとすると、その責任を労使に追及できる かという変な問題も起こって、これはそこまで詰めない方がいいとなって、表の位置づ けの議論ができていないということがあります。今のところは何となくファジーな組織 なものですから、もう少し位置づけをはっきりするためには、ひょっとすると委員会の 構成や選出手続などの外形標準的なことをもう少し固めないと、位置づけがはっきりし ないのではないか。単に名前をぶらさげて、何となく労使としてやっていけばいいとい うところに問題があるのかなという気もしていて、そうした問題をもう少しやらない と。それは、過半数代表制も全く同じ性質なのだと思っています。 ○水町様  その点で、一方では労使委員会制度全体のこれからの帰趨に結び付いている点が1つ あると思うのですが、もう一方で考えると、それぞれの労基法上の条文の解釈の問題と しても十分に対応できる問題です。例えば36協定については、36協定に反するよう な時間外労働をさせた場合には36協定違反で、それは32条違反になりますね。だか ら条文でどのように書いているかによって、労使委員会の決議に反するようなものは、 そもそも通常の労働時間になるというような書き方をすれば、その36協定と同じよう な書き方は理論的には可能です。ただそこの労使委員会だけが、38条の3と4だけが ポッと変なものになるのも問題があるので1個目の問題に戻ります。  今のような条文の書き方ですと、どちらにいくのかそれだけではわからないのです。 だからそれを全体との考え方をしながらもう少しわかるような条文というか構成に法令 上しなければいけないのではないかというのが、私の考え方です。 ○座長  少しテクニカルな議論に入り込みましたが、これ以外のところでもご指摘をいただき たいと思います。 ○西川様  2点ありまして、1点目は先ほどの松井審議官のご発言の、企画型はバリバリ働く人 の道具としてあっていいのではないかというところで、ずっと考えていたのです。それ 以外は、そうではない人はそれなりに配慮するシステムがあってもいいのではないかと いうご発言だったのですが、企画型というのは、おそらくはマネージメント層のルート になっていると思うのです。ちょっと変な言い方ですが、ずっとバリバリ働いている人 たちがマネージメントの方へ登っていくというよりも、テンポラリーに例えば子どもが できた、あるいは親の介護などでテンポラリーにバリバリ働けない人がここから排除さ れてしまうというリスクもあります。その場合に企業のコアの部分として、働いていく ルートが閉ざされてしまうことはあり得ないのかなと。バリバリ働いているというのは 固定的にずっとバリバリ働いている、あるいはそうしない人というのではなく、キャリ アステージ、あるいはライフステージ上で今はバリバリ働けないが、将来的にはバリバ リ働きたいというところにどう対応していくのかなということを感じていました。  2点目は全然話は変わりますが、たたき台(その2)の2番の(2)裁量労働制適用 労働者と通常の労働時間管理対象者が混在した場合の取扱いについてというのがありま すが、ここに書いてあること、ヒアリングからの印象としては、ここに書いてあること のベースは、基本的には裁量労働制適用者が行っている仕事と、それ以外の時間管理対 象者が行っている仕事は違うものなのですという前提に立って書いてあるのですが、実 際はなぜ通常の時間管理の人から不満が上がっているかというと、どちらかというとあ まり仕事内容に差がない。その労働時間管理を埋めるような差というのが、多少はある のでしょうがおそらく実態としてないのではないかと。だからこういった不満、不平が 起きているのではないかという問題があると思うのです。その辺が指摘されていない。 もしそのように完全にセグレゲーションというか、この人の仕事は私たちとは全然違う 仕事なのだというような認識がなされていたら、おそらくはそれほど不満というのは上 がってこないと思うのです。ここはそういうところから起こっている問題であって、そ の辺をきちんとここで変えた方がよろしいのではないかという気がしています。 ○佐藤様  今のことに関連するかもしれないのですが、その他になるのか、企業の裁量労働制に は現在でもルールがあるし、そのルールに則って導入していることがあるわけですが、 その目的の結果を見ると、成果主義人事の導入の一環と労働者の創造的能力を高め発揮 するという2つの理由が、非常に突出しているわけです。そういうことから考えていく と、現状で労働者と企業で立場の考え方の違いがあるのが当然なのですが、企業の側か ら見たときに、本来はいろいろな環境変化の中で人事管理もいろいろ変えていきたいと 考えている。ついてはそういう流れの中で、時間制度もそれに合ったようにしていきた いという気持は、率直な話あると思いますので、調査結果にもはっきり出ているわけで す。  労働時間制度をどういうものにするかということは、法律ではもちろん規制があるの ですが、なるべく人事管理の中で、有機的な連携性を持たせた形で導入していきたいと いうように願うだろうと。そのときにはまさに西川委員がおっしゃったように、法律の 今の現行は職務の性質上に入っていますから、職務の性質上から見てどうだという話 と、ちょっと距離があるのは否めないと思います。例えば採用してから配置してキャリ ア形成をやり、処遇をどうするかという一連の流れの中で人事管理をやっていますし、 その中に1つの時間管理のタイプがあるだろうと考えます。そのときに断面的にある一 断面であるときは裁量労働、あるときはそうでないというように切り替わっていくよう な仕組みは、なかなか実際にできそうでできないという悩ましさがある。  ヒアリングにもあったように、裁量労働制を1つの処遇タイプとして見るようなもの も実はもう出てきているわけで、そういう場合には管理職ではないですが、ある意味で はそれに近いような働き方をしている。そういう人たちについてはそういう処遇をし て、そういう場合にはこういう時間管理をしていくような1つのセットの中で考えてい るという現状が、既にあります。その辺りの問題と関わっているような気がしてならな いので、その問題に踏み込んでいかないとライフファミリーバランスの問題も十分に議 論できないのではないかという気がしているわけです。その他の中に苦情処理と混在し ている場合に加えて、そういう人事管理との関連という観点からの論点もあっていいの かなと思います。 ○守島様  先ほどの議論に戻してしまって申し訳ないのですが、私は苦情処理措置についてとい う項が、何となく先ほどから違和感があって、なぜかというと、皆様方の議論を聞いて いて明らかになったのは、苦情処理の制度は、もともとたぶんうまくはいかないので す。労働組合の苦情処理の制度を入れたところで、ほとんどうまくいくケースではその ような報告は聞いたことありません。1つの議論としては、苦情処理制度というか裁量 労働の対象になっている従業員から不満や苦情が入ったときに、それにどう対応してい くかという大きな1つの議論があってしかるべきだろうと。それが、たぶんここに書か れていることなのです。  労使委員会をどうするかという議論は、先ほどの話を伺っていると全く別物で、それ が私が多少違和感を覚えていた1つの理由だということは明らかになりました。そうい う意味でいうと、今回どこまで取り上げられるかはちょっとわかりませんが、もう少し 労使委員会というものをトータルな意味で、裁量労働制の中にどう位置づけるかという ような議論が多少あった方が、先ほど言った職務の範囲の決定ということも含めてとい うことになってくるかもしれませんが、あるように思いました。そのような感想です。 ○水町様  苦情処理がもともとうまくいかないというのは、日本の話ですか、アメリカや世界の ことですか。 ○守島様  いや、僕はわからないです。正直に言うと米国を見ても、ほとんど。本当にガチガチ で労働協約が決まっている、それこそ自動車などは苦悩している面はあると思います が、例えばサービス産業のようなところでは、割合と労働教育の歴史がないとか、仕事 が明確になっていないようなところでは、努力はそれぞれの立場からされているようで すが、あまり効果があるというようには、私は認識はしていないです。 ○水町様  アメリカでも、組合などの集団的なバックボーンがあるものについては、20世紀の始 めから中盤ぐらいまではうまく機能しましたが、集団的なバックボーンがなくなってし まうと、苦情処理というシステムを形式的に作っても、あまりうまくはいかないです。 ○守島様  個別の労使関係の中での苦情処理というメカニズムは、マッチしない部分があるのだ ろうと思うのです。 ○山川様  その点では、個人の問題を取り扱うというと、確かになかなか難しいので、先ほど言 ったことの繰り返しになりますが、ある意味で使用者主導になってしまうのかもしれま せんが、制度の問題点を探り出す1つのルートとして使うということでは、個別的には うまくいっているという例も上げられているのです。 ○座長  制度のどこに問題があるかという、制度そのものの議論をするということですね。  それでは、まだ詰めますといろいろな問題がありますし、今日も論点として上がった まま十分にまだ議論が展開していない部分もありますが、少し全体との関係で、裁量労 働に関する議論は、今日はこの辺にさせていただきます。今後他の議題について皆様に 議論をしていただく中で、またお気づきの点などをその都度ご指摘をいただきたい。と りわけ我々がこの間議論してきたものの相互関係のようなことはそのように取り扱わせ ていただくことにしまして、必要な追加や修正を、今後とも加えていくということにし たいと思います。そうしますと、我々の研究会のテーマが、労働時間制度の見直し全体 に関わってくるわけですので、次回以降は残りの検討すべき論点は何であるかなどとい うことについて、事務局で資料を用意しています。これをご説明していただいた上で、 また少し皆様のご意見をお伺いしたいと思いますので、事務局から説明をお願いしま す。 ○小林調査官  お手元にお配りした資料5について説明します。表題は「残りの検討すべき論点につ いて(案)」です。項目としては4つほど掲げています。  1「労働時間規制の適用除外の在り方」ということで、今回もいろいろとご議論して いただきましたが、我が国において、創造的・専門的能力を発揮できる自律的な働き方 を実現するために、現行の労働時間制度のほかに、労働時間規制の適用除外をする制度 を創設することが考えられるかどうか。その際対象者の範囲、要件及び効果、健康・福 祉確保等のための措置、苦情処理その他の措置についてどう併せて考えるかという論点 を挙げています。  2「年次有給休暇の取得促進」では、2つほど挙げています。1つ目は、年次有給休 暇の取得日数の減少及び取得率の低下傾向が続く中で、取得方法や計画的年休の在り方 を含めた年次有給休暇の取得促進のための効果的かつ具体的な方策についてどう考える か。2つ目は、労働時間規制の適用除外制度を導入するのであれば、その適用労働者の 「健康で文化的な生活」を保障するために、年次有給休暇の完全取得ができるような環 境整備が必要ではないかという問題提起をしています。  3「所定外労働の削減」では、一般労働者を中心に所定外労働が増加している中で、 労働者の健康保持を図る観点から、時間外労働の法定割増率の引上げや36協定におけ る特別条項の在り方の見直し等を行うべきではないか。2つ目としては、更なる取組と して、労使当事者間で締結された労働契約により決定された所定労働時間を超えた場合 にも、割増賃金の支払いを義務づけるといったような措置を講じることとし、本来例外 的に行うべき所定外労働時間の削減を促進することが必要ではないかという点です。  最後の4「その他」としては、労働時間規制の適用除外制度を導入するのであれば、 同じく適用除外を現在受けている管理監督者の範囲等についても、見直しをする必要が あるのではないか。事業場外みなしの在り方についても、この際見直す必要があるのか ないのか。労働者の自律的な働き方に対応した労働時間規制についての見直しについて ですが、労使当事者が業務内容や労働時間を含めた労働契約の内容を、対等な立場で自 主的に決定できるようにする必要があり、労働契約法制と一体的に検討すべき課題では ないかということを書いてあります。以上です。 ○座長  それでは、これらの残りの検討すべき論点ということですが、皆様からご質問やご意 見がありましたら、ご自由にお願いしたいと思います。 ○佐藤様  重要な論点ばかりだというように認識しています。特に1番は、非常に重要な論点だ と了解します。しかし、残りの2、3の問題をどのように考えるのかということと、実 は関わっていると思いますので、セットで議論すべき問題だと思いますので、この案に ついては基本的に論点の構成としましては賛成です。  ただ、このことの議論と、(その1)、(その2)でやった裁量の議論のウエイト付 けになってきますと、これはそれぞれがまた1個1個裁量に勝るとも劣らない重要な論 点を含んでいるので、その気持の中での論点のウエイト付けのようなものは、少し考え た方がいいのかなということです。確認ですが、基本的には今までの(その1)、(そ の2)がコアというよりも、軸足を置きながら、この1、2、3について関連するもの なので触れるという理解なのか、それともあまねくこれらについて議論するということ なのかというと、あまねくの方で理解するということですか。 ○水町様  2つありまして、1つは座長と審議官の去年まとめられたこととまた矛盾するかもし れませんが、個人的な意見として、3の2番目の○の所定労働時間を超えた場合には割 増賃金の支払いを義務づけるということに関しては、比較法的にこういうことをやった 例はほとんどないですし、所定労働時間を今は7時間なのに8時間に上げてしまおうと いうようなインセンティブが働くことになるので、私は個人的にはこれはなかなか難し いし、理論的に考えてもちょっと難しいかなという気がします。  もう1つ、その他の1番目の○について、現行の管理監督者の範囲等について見直す ということですが、確かにこれが行政解釈についても、裁判例についても非常に曖昧な 形になっていて、実態と法の間の乖離が乱れているので、これを見直し作業をする上で は、少なくともこれまでの裁判例を整理して、これまでの裁判例どおりの基準にする必 要はないかもしれませんが、それを参考にしながら基準をより明確な形で、少なくとも この3つの要件を明確に満たしていれば管理監督者になるという形で整理をしていくこ とが、有用ではないかと、私は思います。 ○守島様  先ほど言ったことと全く繰り返しになってしまって申し訳ないのですが、このペーパ ーの最初と最後に自律的という言葉が出てきまして、上は限定的な創造的・専門的努力 を発揮できる自律的な働き方となっていて、下の方は自律的という言葉だけがあるので す。先ほどからの議論を聞いていますと、たぶんあまり限定的にそこのところをしない 方が、逆に言うと我々のように前広に考える研究会ではいいのかなと。先ほどおっしゃ っていた長期的な意味でのワークライフバランスのようなことや、働き方の長期的なキ ャリアの裁量性のようなものも含めていくと、必ずしも上の方で限定的に創造的云々と いう話には、ある意味ではここは適用除外の話ですから必要なのかもしれませんが、我 々の認識として自律的という言葉を使うときに、この限定が必ず付いてくるというの は、ちょっと気になるところではあります。 ○山川様  細かいことではあるのですが、水町委員とのお話との関係で、管理監督者の範囲につ いては、スタッフ管理職の取扱いをどうするか。通達が出されたのが、企画業務型裁量 労働制のできる前の段階ですから、その整理を結論はともかく視野に置いた方がいいの かなと思います。  もう1つは、1の○で労働時間規制の適用除外制度を創設するとありますが、今現に 適用除外制度があり、創設する制度はそれを単純に拡張するという趣旨ではないという ことだと思いますので、いわば新たなタイプの適用除外制度として、つまり効果も場合 によって違うかもしれないということで、これまでの適用除外とはちょっとイメージが 違うということは、もし検討する場合には、もう少し明確にした方がいいのではないか と思います。 ○今田様  深く読み込む能力がないので、大雑把な話になるのですが、1の労働時間の適用除外 のあり方という論点で、自律的な働き方の前に創造的・専門的というものを付けること に深い意味があると理解していいのですか。つまり自律的な働き方ということがキーコ ンセプトになり、これを基に労働時間制度の適用除外というものを創設するというよう な戦略ですが、創造的・専門的能力という修飾を入れるのはそれなりに大きな意味があ るのか。ただ、自律的なということでは駄目なのですか。 ○松井審議官  議論の仕方ですが、ここは、究極は新たなタイプのという気持で考えていけないかな ということなのです。新たなタイプというときに、今ある適用除外やみなしと違った切 口で何を目指すかと。ここは、ある意味で今から提起を与えていただくべきところかな という感じがします。先ほど言ったように、総合的な能力を例えば発揮するための新た な時間が必要だという方もあるかもしれないし、それは要件などを一応考えた上で、タ イトルを付けるというぐらいの操作をするということです。  もう1つは今の企画裁量型を全く組み替えてやるというのであれば、企画・立案・調 整云々といったそのものを達成するために、新たなものに組み替えるという整理なので す。それを残しながらまた違う概念で作るというのも、ここにどういうワードリング、 どういう概念を付けるかということで、まだここは仮置きなので、そんな気持を込めて 議論していただけないかということです。 ○水町様  一般的に比較法的に諸外国でどういう人が適用除外になっているかということを大体 想像してみると、去年山川委員と荒木委員がまとめられた報告書の中にも書かれている のですが、職位が責任ある地位で高いというのが1つの要件で、職種が専門的であった り独立的であったりして、職位が高いということは指揮・命令を受けないので、職種が 専門的であったり独立して、自分の裁量で働けるというのが2番目の要件です。3番目 が報酬のあり方が労働時間に左右されていなくて、ある一定以上の高い報酬をもらって いたり、労働時間や労働日数に比例しない形で報酬をもらっているという3つが大体要 件になって、管理監督者が定義づけられています。その3つを考えた場合に、漢字3文 字で表すと何かなというと、自律的に合っているのかもしれないですし、ただ自律的と いう言葉を使って、それが一人歩きして変な方向に行ってしまうといけないとすれば、 もう少し今のような具体性のあるようなこととして、きちんと書いた方がいいかもしれ ません。自律的という言葉でその3つを創設して、そんなに誤解はないと思いますの で、それを表現の仕方として今後どうしていくかというのは、ちょっと工夫が必要かも しれないです。 ○今田様  それと、やはり創造的・専門的能力というのとはかなり違いますね。 ○水町様  企画業務型との違いをどう表すかという意味で、そういうものが入ってきているの で、そこをどう整理するかが次のいちばんの課題だと思います。 ○今田様  そうですね。 ○座長  ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。  それでは、これはいわば予告編ですが、今後この順番でプログラムが進んでいくとい うことですので、またお気付きの点がありましたら、重要な論点が落ちていたというこ とであればまた付け加えるなりして加除があり得るだろうと思います。そこで、本日の ところは大体時間になりましたので、この辺で会合を閉じたいと思います。次回は本日 活発に、重要な論点を多々出していただきましたので、こうしたご意見を踏まえて、残 りの検討すべき論点の中から論点を取り上げ、本日と同様にたたき台を準備した上で、 議論を継続していただくということにさせていただきたいと思います。  今後の予定ですが、事務局と相談して、現在のところは次回を含め3回程度に分け て、残りの論点をご議論していただければと思っています。それが終わったあとにこれ とは別途に報告書の素案の検討をする、このような手順で進めさせていただければと思 いますが、いかがでしょうか。一応このような手順にさせていただくことにしまして、 進行具合については適宜、必要に応じて見直しということにさせていただきたいと思い ます。  では、事務局から次回の会合についてのご連絡をお願いしたいと思います。 ○小林調査官  次回の会合は、10月27日木曜日の14時から16時まで開催したいと思いますので、お集 まりいただきますようにお願いします。以上です。 ○座長  本日の会合は、以上をもって終了させていただきたいと思います。お忙しい中をご参 集いただきまして、大変活発なご議論をありがとうございました。                    照会先:厚生労働省労働基準局監督課調整係                    電話 :03-5253-1111(内線5522)