05/10/07 労働政策審議会雇用均等分科会第52回議事録            第52回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成17年10月7日(金) 14:00〜16:00 2 場所: 厚生労働省労働基準局第1・第2会議室 3 出席者:    労側委員:吉宮委員、篠原委員、片岡委員    使側委員:川本委員、前田委員、山崎委員、渡邊委員    公益委員:横溝会長、樋口委員、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員、林委員 ○横溝分科会長  ただ今から、「第52回労働政策審議会雇用均等分科会」を開催いたします。本日 は、岡本委員、佐藤孝司委員、吉川委員が欠席です。  早速議事に入ります。本日の議題は、男女雇用機会均等対策についてです。まず、 「間接差別の禁止」について、ご議論をいただきたいと思います。続いて、「男女雇用 機会均等の実効性の確保」について議論をいただきたいと思います。それでは、間接差 別の禁止について、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○石井雇用均等政策課長  資料の説明をいたします。本日は2種類の資料を提出しております。資料No.1−1 をご覧ください。間接差別については、その予測可能性というのが1つの論点になって いたところです。そこでこれまでの議論などを踏まえ、予測可能性を高める方法として 考えられ得るものをリストアップしてみたものです。資料NO.1−1の最初の囲みは、 当分科会で共通の理解が得られた間接差別の概念について、お示しをいたしておりま す。その上で、この間接差別の概念は3つの要素から成り立っており、それぞれについ て取り上げております。  (1)は、外見上は性中立的な規定、基準、慣行等の内容を明確化することにより、 予測可能性を高めるということです。外見上性中立的な基準等について具体的にどのよ うなものが対象として考えられるかです。最初の1ポツは、そういうような形で問題に なり得るものについて明示する方法というのであります。例えば、法律のイメージで言 えば、指針のような形で示すというようなことが想定されると思います。そして2つ目 と3つ目ですが、この分科会においてもポジティブリスト方式、あるいはネガティブリ スト方式といったようなご発言もあったと思います。ここに記載のように、間接差別の 対象から除外をする基準等を列挙する方法、あるいは、逆に対象となる基準等を列挙す る方法も考えられるところであります。この資料には記載しておりませんが、これまで の議論の過程の中でも、例えばアメリカにおいては、間接差別法理は先任権制度により 生じた雇用条件の差異については適用しない、という扱いになっているところですし、 また、同一賃金法上是認される賃金の男女間格差も対象にならないという扱いになって おります。  (2)は、相当程度の不利益の有無の判断基準を明確化することにより、予測可能性 を高めるということです。これまでの議論の中で、あまりこれについて具体的なご意見 はなかったと思いますので、研究会報告にありますアメリカの例を参考までにお付けて おります。これはEEOC(雇用機会均等委員会)のガイドラインで示されているもの です。現在間接差別を導入しているアメリカにおいては、いわゆる5分の4ルールとい うメルクマールを有しております。その他には、このような具体的なメルクマールを持 っている例は承知していないところです。考え方としては、この囲みの中そのものです が、分かりやすい例で言えば、例えば募集・採用条件で、身長、体重で一定の要件を必 要としたとします。男性については応募者全員がその基準をクリアできる。一方女性の 応募者は、そのうちの60%の者しか仮にクリアできなかったとします。その場合には、 男性の100%を基礎として見れば、5分の4は80%に当たります。それを下回っており ます女性のクリア率60%、これは相当程度の不利益があったと判断するということにな ります。  アメリカはガイドラインでこのような考え方が示されており、一応これは裁判所の判 断にも実際影響を与えておりますが、必ずしも拘束性はないということです。  (3)は、合理性・正当性の有無の判断基準を明確化することにより、予測可能性を 高めるということです。これも国によって若干違いがあり、これまでの議論の中で特段 ご発言がなかったと思いましたので、研究会報告からアメリカとイギリスの例を2つ並 べております。アメリカの例はご覧いただくとお分かりのとおり、職務の関連性や業務 上の必要性に合致しているかどうかという考えを示しているところです。一方イギリス については、四角の囲みにありますが、当該規定、基準、慣行が性別に関係なく正当で あることとしておりますが、実際上の判断は雇用審判所が行うこととされており、使用 者の必要性と差別的効果の程度のバランスで判断される傾向があるということです。し たがいまして、その不利益の度合いが高ければ、より多くの必要性が求められるという 関係で、実際上運用されているのがイギリスです。  2頁、3頁は均等研報告書で示された7つの事例を参考までに付けておりますが、説 明は省略いたします。  引き続き、資料No.1−2をご覧ください。この論点においては、コース別雇用管理 制度についても度々議論がなされているところです。昨年度、全国の雇用均等室で実施 したコース別雇用管理制度を導入している企業に対する指導状況結果を、去る8月8日 に記者発表しており、この議論に関係すると思い概要を紹介するものです。均等室で は、均等法の施行のため法第25条に基づき企業に対して報告聴収を実施し、問題があれ ば是正指導などを行っているところです。平成15年度に引き続き、平成16年度、そして 今年度もそうですが、その対象に一定数、コース別雇用管理制度を導入している企業を 含めて実施いたしており、その指導等の状況を取りまとめたものです。  概要の欄をご覧ください。今回調査の対象となった企業において、コース別雇用管理 制度がどのようなものであるかというのは、上の方に書かれております。例えば入社後 にコースを決定する企業割合が14.4%、コース転換制度を導入している企業割合が82.2 %、総合職に占める女性割合は5.1%、採用予定者に占める女性割合は12.0%。あるい は、総合職について転勤を要件としつつ、10年間転勤実績がない企業割合は13.3%とな っております。他の調査などを見ても大体似たような傾向です。指導等の状況がその次 に示されておりますが、均等法に違反するとして指導した企業の割合は5.0%です。コ ース別雇用管理については、「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」を作 成し、これに基づいて助言、指導等を行っておりますが、この留意事項に基づく助言企 業割合は87.8%でした。ここの部分についてはお手元の資料5頁をご覧ください。その 中身を細かく紹介しております。  上の方に均等法違反として指導した企業、主な違反事項として(1)(2)(3)と 分けて記載しております。男性のみ、または女性のみのコースを設定し募集・採用した のが2.8%とか、あるいは(2)の配置ですが、総合職を男性のみとするなどの運用が あったというのが2.2%等々といったようなケースがあり、指導を行ったものです。ま た、下の留意事項に基づく助言ですが、助言を行った企業は、今回調査を行った企業の うちの87.8%です。助言件数は、1つの企業で複数助言をする場合がありますから、調 査対象企業数よりも多い762件でした。主な助言事項は記載のとおりですが、一番多か ったのは、総合職について女性が事実上満たしにくい全国転勤を要件としているが、そ の必要性が十分検討されていないというのが40.0%、あるいは転換制度が柔軟に設定さ れていないというのが33.3%等々の状況であったところです。  資料1については以上です。 ○横溝分科会長  それでは議論をお願いいたします。 ○吉宮委員  重要な間接差別をテーマにした今日の分科会ですが、これまでの議論をまとめてみま すと、間接差別の禁止を立法化してほしいということを前回までで申し述べましたが、 改めて間接差別の法制化の検討の必要性について、お互いここで合意できればと思いま した。前回の改正時において国会からの要請がありますし、国連の女子差別撤廃委員会 からの指摘もありますし、また欧米をはじめとする諸外国での立法例もあります。事務 局から示されませんでしたが、私どもの得た情報ですと、韓国でも雇用平等法というの があり、その中の第2条に間接差別法理を明記するという情報も得ております。いずれ にしろ、諸外国でも立法化が進んでいるということを、お互い確認しなければまずいか なと思います。  中間取りまとめでは定義の合意ができた、というのが私の認識です。これでいいので しょうかということですが、研究会報告をもとにして、間接差別とは何かというのが合 意できたと思います。その上で、さらに次のことも合意できたのではないかと思いま す。間接差別の概念と他の概念との比較で3つあります。直接差別との違い、結果の平 等との違い、ポジティブ・アクションとの違い、この3つの概念との違いも整理できた のではないかと思っています。  そこで今後の検討ですが、今日事務局から示された、間接差別の予測可能性を高める 方法についてということが、残された課題として今後議論していくことかなと思いま す。そこでもう一度、間接差別の必要性の背景というのでしょうか、3月11日の分科会 で奥山委員が言われたことは、私などは全くそうだなと思っています。そこでは3つ挙 げております。1つは、女性対男性の個人間の直接差別はこれまで対応してきたが、さ らに女性が雇用分野に非常に増えてきて、女性対男性という、いわばグループ間の問題 が惹起してきている。それはまさに、これまでの制度、慣行をそのまま適用することに よって、一方の性というか、女性のグループに対して不利益が生じているということも あって間接差別問題が出てきたという認識が1つあります。  2つ目は、間接差別禁止という目的は実質的な男女平等を実現することを目的として いる、ということを言われており、まさに私も、そういうことが1つの大きな目的かな と考えます。つまり、直接差別だけでは不十分、男女平等は確保できない、実際に男女 平等を確保するには間接差別の問題がきちんと整備されなければならないということで す。  その上で3つ目に、その裏返しとして平等とは何かということも、この間接差別問題 はいっているのだと思います。今までは合理的な理由でもっていたものが、まさに格差 をもたらす原因である基準、あるいは慣行等が不合理になってきているということが言 えるのであって、それをなくさないと平等は生まれないのだという認識を言っていたわ けです。そういうことを考えますと、今持っている均等法という仕組みをさらに発展さ せて、実質的な男女平等を確保するためには、間接差別禁止は避けて通れないという認 識を奥山委員は言われましたが、私もそう思います。そのことで皆さんが一致できるか どうかということです。  予測可能性を高める方法についてということで、ここに書いています一番上の3つの 課題、外見上は性中立的な規定、基準、慣行等という問題と、一方の性に相当程度の不 利益を与えること、基準等が職務と関連性や合理性を持っているかという3つの問題 で、使用者側委員の皆さんからは、この間接差別を適用した時に際限なく広がるのでは ないかというご意見がありました。樋口委員からは、ネガティブリストというのでしょ うか、ここでいう、分科会における議論を踏まえた明確化の方法の例の最後の、間接差 別の対象となる基準等を限定することを提案されました。性中立的な規定、基準、慣行 等ということですからこの物差しからいうと、私は無制限に広がるという心配はあまり 出てこないと思います。そういう意味では、この規定、基準、慣行は時代とともに変化 しますから、今の段階では、こうだというのをきちんと決めつけることはできないので はないかと思います。  そういう意味で、この分科会における議論を踏まえた明確化の方法の例からします と、最初のポツ、間接差別の対象となる基準等について、具体的にどのようなものが問 題になりうるかについて明示する方法というのが妥当だと思いますが、これはあくまで も例示であって、これでなければならない、あるいは、これ以外はないのだという問題 ではないと思います。相当程度の不利益を与えるということは、私の理解は、他の性の 構成員と比較して一方の性の構成員について見るべきですから、割合という理解でいい と思いますが、その割合がアメリカのEEOCの場合は5分の4を示している。この方 法がいいかどうかは十分検討しなければなりません。アメリカの5分の4というのはど ういう根拠で5分の4を示しているのか、裁判所ではあくまでもガイドラインを参考に しているということですが、5分の4はどういう基準で示されているのかが分かると議 論としては参考にしやすいと思います。  合理性・正当性という問題は、多分この間の議論では、格差があるから全部間接差別 だということではなく、まさに基準が職務との関連でどうかということがなければまず いわけですが、まさにケース・バイ・ケースだと思うのです。ただ研究会が示している 7つの例示というのは、樋口委員からは、これ以外駄目なのか、どういう意味で7つ挙 げたのかというご指摘も前にあったのですが、今日における間接差別はこの7つなのか なということを研究会は言っているのだという奥山委員からの発言があったと思いま す。私も今考えられる間接差別の問題は、この7つなのかなと思っています。  アメリカの場合は、賃金は同一賃金法で対応していくということであるし、樋口委員 から先任権という問題は年功賃金制に当たるのだから、そこをどう考えるか、除くのか 除かないのかという発言があったと思います。そこは今後の議論だと思います。私ども としては、今現在検討すべき事項は7つぐらいかなとみて議論しています。だからとい ってそれ以外ないかというと、冒頭に申し上げましたように、規定、基準、慣行という 制度全体をいうわけでして、1つの例として議論していけばいいのかなと思います。 ○横溝分科会長  他にいかがでしょうか。 ○樋口委員  先ほどご説明のあった、資料No.1−2のコース別雇用管理制度の実施・指導状況で は、180社をヒアリングの対象としたとあります。この180社というのはアットランダム に選んでやっていると思いますが、それでいいのでしょうか。  その上で、ご説明のあった5頁の所で、均等法違反企業が9社、5.0%ということで すが、この5.0%というのは、180社のうち9社が違反していたと、それで5.0%という ことですから、これは日本全体の平均が5.0%、均等法違反していますよと見ていいの でしょうか。調査の趣旨がわからないので、教えていただけたらと思います。 ○石井雇用均等政策課長  180社の選び方ですが、各雇用均等室の規模に応じて大体何社程度、コース別雇用管 理を導入している企業を対象に調査するということで、各室が実情を見ながら選定をし た結果、集まったのが180社であったということです。全く問題がないと最初から分か っている所には行きませんので、ちょっとどうだろうか、というところも加味しながら 選定をしていると思われます。  180社のうちの9社で均等法違反が見つかったわけですが、これが平均的な姿と見て いいかどうかというお尋ねについて言えば、実は同様の指導を平成15年度にも実施して おりまして、その時の違反率は5.5%でした。全体の5%という見方ですが、やや怪し いのではないかと思うところを見て、選定した結果、昨年度も一昨年度も5%前後の違 反が見つかったということになるのではないかと思っております。 ○樋口委員  5%の違反率はかなり高い数字ですが、そうでもないのですか。これを高いと見るべ きなのか、低いと見るべきなのかというのは、どう読めばよろしいのでしょうか。 ○石井雇用均等政策課長  バイアスがある程度、振れているとご理解いただいた上で、決して低くはないという ことかなと思います。 ○佐藤(博)委員  日本の企業全体でコース別雇用管理のある所をとれば、当然5%より低くなると考え ていいわけですね。いろいろな情報で問題がありそうだという所を180社選んだわけで すから、多分5%か、どの程度かわかりませんが、実態は低いということですね。 ○石井雇用均等政策課長  まさに、そのように見ております。 ○樋口委員  これはどういう趣旨で出てきたのでしょうか。怪しい所だけだとすれば高くなるだろ うというのが今の解釈ですね。怪しい所に当たったのだから高いだろうということです か。 ○石井雇用均等政策課長  間接差別の予測可能性を高める方法、資料No.1−1の2〜3頁に7つの事例を取り 挙げております。その中で、いわゆるコース別雇用管理の中でも全国転勤要件といった ものも事例の中に載っているわけです。実は前回、前々回、妊娠・出産等の問題を取り 上げた時も、この分科会にまだご紹介していなかった新しい情報を提供しており、それ と同様な考えに立ち、今回もコース別といいますとやはり転勤要件を付しているケース が多いこともありまして、新しい情報ということで、今回の議論の参考に供しようとい うことで、ご紹介申し上げたところです。したがいまして、転勤の状況などについて先 ほどご紹介しましたのも、そういう趣旨です。 ○横溝分科会長  樋口委員、よろしいでしょうか。 ○樋口委員  日本全体をアットランダムにやって違反するのが何パーセントありましたと、したが って、それに基づいて議論してくださいというのなら分かるのです。最初から怪しい所 へ行って、それで5%ありましたという情報はどういう意味を持つのかなと思ったので す。 ○鈴木均等業務指導室長  差別事象はどういうのが問題なのか、数が少ないからこれは影響ないのだというもの ではなく、どういうところが問題になるのだということをとらまえて、そこを解消する ためにはどう法制を組んだらいいかという話だと思いますので、その事案をお示しして いると思っていただければと思います。ですから、パーセントというよりも、こういう 事案が少なからずありますよと。それはバイアスがかかっているかもしれませんが、事 例のご紹介というふうにご理解いただければと思います。 ○佐藤(博)委員  上の方の5%は現行の均等法で直接差別になるわけですね。ただ下の方、例えば(2) の全国転勤要件、職務関連性は十分議論されていない。実際にそうであるとすると、間 接差別という法理ができると、これはその対象になり得ると。助言で今やっている所に ついてというようなことは、間接差別として、もし法制の対応ができたら、こういうと ころは取り上げられる可能性はあり得る。職務関連性がないとすればですね。これを見 ると曖昧なのがありそうだということです。 ○横溝分科会長  もう少し補足が要りますか。 ○樋口委員  いや、いいです。 ○横溝分科会長  他にはいかがでしょうか。 ○片岡委員  先ほど吉宮委員から間接差別議論の必要性、国会の付帯決議や国際的な指摘、あるい は新たに韓国の動きなどが紹介されましたが、それを踏まえて具体的に議論に入る必要 性が改めてあると思っています。それに加えて国内的に見た場合、男女共同参画社会基 本法が要請するものの中にも、積極的に間接差別に関わることが触れられているように 理解しています。厚生労働省がまとめられた賃金格差研究会の指摘の中でも、各論にな る点、あるいは事例に関わる議論になると思いますが、1つの指摘としてはコース別を 導入している企業の方が非導入企業よりも男女間の格差が大きいという推計結果が得ら れたこととか、手当も賃金格差に影響を与えているなどの指摘があります。さらにその 中には労使への提言ということで、生活手当の見直しが必要だということを触れている ことや、コース別雇用そのものも問題があると私は認識しています。  コースを決定する方法も点検が必要と言われていて、先ほどご紹介いただいた調査を 見ると、8割の企業が募集採用の時点でコースを決定している。これは果たして本人選 択という、これから社会に出てその会社で精一杯頑張ろうという人たちが、少なくとも その時点で自分の将来のライフスタイルであるとか、一番典型例として多いのは、全国 転勤ができるか、できないか、というようなことを、その時点で問われていくことは、 本来、問題として考えるという点でも、その8割の実態などを考えると、こういった事 柄をどうしていくかという議論に間接差別の問題が非常に有効と思っています。  国内的な点からも、あるいは、もう1つ、この間もいろいろと紹介がありましたが、 この間、性差別の問題として間接差別に該当するような事柄に関する裁判がいくつか行 われているわけです。そういう裁判の結果なども踏まえ、もちろん勧告も含めてです が、国内的な状況からも積極的に間接差別の概念を受け止めて、具体的な議論を進める 必要があると思います。個別の事例については意見がありますが、追加で申し上げたい と思います。 ○今田委員  質問ですが、事務局が議論の整理のために用意してくださった資料No.1−1の規定、 基準、慣行についての所に3つの方法が示されております。分かったような感じもした のですが、これは規定を明確化する3つの方法があり、具体的にはこの3つの方法を使 って規定するという議論の整理なのか、3つがそれぞれあって、どれかでいきましょ う、どれかでいきますよということの提示なのか、よくわからないのです。  なぜそんなことを言うかというと、今吉宮委員は1番がいいようなことを言われて、 見たら2番がいいので、3番の議論につながっていく可能性もあるのであえて言いたい のです。1番は事例を規定するものですし、3番は、これはいけませんと、2番は但書 きのような感じがする、但しこういう場合は違反ではないですよという言い方は、単独 では説明にならないように思います。この3つは違います。事務局として3つ提示した 意図ですが、こういう3つの方法を駆使しながら、事例も出し、ネガティブも出し、ポ ジティブも出して全体を縛っていくという考えなのか、その辺はどういうお考えなのか 説明していただきたいのです。 ○石井雇用均等政策課長  この3つの方法というのは、これまでの議論の中でヒントとしていただいたものを整 理したということです。特にそれ自体何か意図を持って資料を作ったというものではあ りません。その上で、それぞれこれが独立をしている考えなのか、それとも併用がある のかと言えば併用はあり得ると思います。例えば1番目、具体的にどのようなものが問 題になり得るか明示したとしても、一方でこういう基準等については予め間接差別の俎 上に乗せないよ、というものとして取りおくというのは、一応制度のあり方として両立 し得るものではないかと思います。そういう意味で、1と2がいわば排他的な関係にあ るかというと、そういうものではないと思います。  ただ、今話を聞いている中で、これ全体を通して、これは差別、これは差別ではない というように受け止められていたように理解してしまったのですが、ここで資料として 提出しておりますのは、規定、基準、慣行等として取り上げる基準等について、特にど ういう規定があり得るかというものを示すのが1番目の考え方です。2番目は、基準等 として考えられるものから、予め、これは除きますよという考えであります。3つ目 は、予め対象とする基準等、例えば7つの事例で言いますと、身長、体重、体力、ある いは転勤要件といった形で列挙していく、というようなことをイメージとして抱きなが ら、この資料を作成しております。 ○今田委員  ありがとうございます。 ○吉宮委員  これは法律条文の議論ではなく指針レベルでしょう。予測可能性ですから法律に抵触 した場合に、どういうことが相当するのですか、という意味でこの議論をしておかない と。今までの議論ですと、労使は何が間接差別かがわからないという意味で議論した方 がいいと理解しているのですが、そういう理解でいいのでしょうか。法律にこの議論が 最終的にはまってくるというものではないと思うのです。 ○鈴木均等業務指導室長  明確化の議論は純粋にいくとそうなのです。前回の樋口委員のご発言を誤解している かもしれませんが、確かあの時は、合理性・正当性を議論する時に、ものによって合理 性・正当性の判断が分かれてくると。そうなると、合理性・正当性を明確にするために は、その基となる基準をある程度限定できるネガティブ方式というご提案だったと思い ます。限定列挙をして、それで合理性のところの明確化を図るべきではないかと。そう なると、間接差別の対象になるのはすべて無限定でやっておいて、それを指針などで明 らかにする方法と、ある程度、これとこれとこれだけは今回の改正で対象にし、その中 で明確化をさらに図っていくという2つの方法があるかと思います。  その後者であるとすると、法律の中身に反映される形になろうかと思います。どれを 取るかというのは、ここでご議論をいただこうということで、これを出させていただい ているという状況です。 ○横溝分科会長  この段階では、法の条文になり得る部分と指針になり得る部分を分けているわけでは ないのですよね。これで一応合意ができたら、その振り分けはどうするかというのはま た一歩先の話だと思います。 ○川本委員  この間接差別問題については、私どもの考えは、特に42回と46回の時にかなり発言を させていただいたと思います。その中で、一応私どもとしては間接差別概念というの は、非常に予測可能性がないし、現場に非常に混乱をもたらすし、等々で反対をしてき たということです。資料No.1−1の一番上にあります枠組みを研究会報告書から引用 しておりますが、この間接差別の定義について結果の平等との混同があるのではないか ということで、これについても相当議論をさせていただいた上で、ここに書いてあると おりの研究会報告の内容の定義ということで、公労使ともに確認をし合ったということ で、この間の中間取りまとめに文章を入れさせていただいたという段階です。したがい まして、あくまでも定義を確認し合ったという段階であります。定義を確認したから私 どもは間接差別の導入はOKですと言った覚えは全然ありませんし、これは非常に難し い問題だと考えているということです。  その上で、いくつかいろいろな意見を言った中の1つに、まだ難しい段階において は、例えばポジティブ・アクションの中でやっていく方法、前向きに取り組んでいく方 法もあるのではないかということも言ったわけです。併せてその時に、今の資料No.1 −1の2〜3頁に7つありますが、これは研究会報告のそのままの並びですが、そうい う中で、確か(1)〜(4)のような内容であればポジティブアクションで取り組んでいくの に向くのではなかろうかと。(5)、(6)、(7)のように、内容に処遇の問題が入ってくる のは納得し難いと。また(6)、(7)等の問題については、パート労働法等もあるというよ うなことで、(1)、(2)、(3)、(4)辺り、中身の細かな話はともかくとして、ポジティブ ・アクション的な方法で考えられないかという発言をしたわけです。  ただ、その時奥山委員だったと思いますが、その場合はポジティブ・アクションのや り方というのは、今のままというわけにはいかないのではなかろうかというご発言があ りました。これは全部仮定の論議になりますが、もしもそういう取り上げ方であれば、 どんなポジティブ・アクションのやり方に変えていくといいますか、あの時「強化」と 言われたと思いますが、強化をしていったらいいかというようなことの考えがありまし たら、後ほどお聞かせ願えればというのが1つです。  今の資料No.1−1ということで申し上げれば、今議論になっておりましたポツが3 つありますけれども、これは私の方からは非常に分かりにくい、予見可能性がない。場 合によっては年功賃金だって当たるし、退職金もそうなる可能性がある。非常に難しい 問題をはらんでいるということです。その時に、確か樋口委員から、そうであれば、ま ず明確にこの場で合意ができるようなもので、限定的に書いていって、その方が間接差 別の問題について一歩進むのではないか、というようなご発言があって、それを事務局 がいろいろ言ったものを整理して3つにまとめられたのかな、という認識でこのペーパ ーを読んでいるということです。  (2)に相当程度の不利益問題で判断基準があります。先ほど石井課長からご説明が あったとおりですが、改めて申し上げておきたいのは、この研究会報告の後ろの方に海 外比較が載っておりまして、確かにアメリカは5分の4ルールによると。EUであれ ば、具体的な判断は各国の裁判所が行うと。イギリスであれば、具体的な判断は雇用審 判所が行う、差別的効果の有無については定まった判断基準はない、実際に起こって審 判所が判断をする時のものでやっているとか、ドイツであれば、具体的な判断は労働裁 判所で行う。当該措置の対象となるすべてのものについて不利益を受ける、グループに おける一方の性の比率が不利益を受けないグループないしは全対象者における、その性 の比率よりはるかに高い場合という定義があるということです。たまたまペーパーにア メリカの例だけ載っておりますが、他の国は、実はそういう実態にあるということを確 認しておきたいと思って発言をさせていただきました。 ○奥山委員  先ほどから私の名前がよく出ていますので一言、何か触れた方がいいかなと思ってい ます。間接差別に関する法理については研究会でもかなり重くうけ止めて、諸外国、特 にこういう差別禁止法理が発展したのは、ご承知のとおりアメリカ、イギリスでしたか ら判例も多いところで、そういうところを中心に調べた上で日本の理解を深めるという ことで、基本的なところを報告書の中に盛り込ませていただいたということです。  個別の問題については、先ほど吉宮委員が私の名前を挙げて言われましたが、私個人 としては、そういうような考え方を持っているということで、ほぼ間違いありません。 今の川本委員のお話を聞いたところで2点ほど、これは別に反対ということではなく て、自分の中で整理する部分です。1つは、コース別雇用管理制度の問題だけを典型的 に取り上げますと、誤解という言葉を使いたくないのですが、これは皆さん、私も含め てそういうことかもしれませんが、間接差別の法理というのは、コース別雇用管理制度 が間接差別の概念に当たるとか、それは禁止の対象になるということではないのです。 問題は、各企業でコース別雇用管理をやっている時の、その制度の運用の問題なので す。ですから、ある企業ではコース別雇用管理は全然間接差別の問題にならないという こともあります。  もう1つは、コース別雇用管理を動かす時に、どういう基準、要件を立てているか。 その要件が男女に、結果的に著しい不利益を一方に与えるような形になった時に、コー ス別雇用管理の具体的な運用が間接という形で、女性なら女性、男性なら男性に不利益 な効果を発生させているから、合理的な理由がない限り、それは駄目なのですよという 理由なのです。だからコース別が悪いということではない。そういう点では法律本体か 省令かわかりませんが、これは当たります、これは当たりませんから抜きますという議 論はできないし、また、そういう書き方は無理です。  極端なことを言うと、ある会社の中で行われている雇用管理上の区分が、一方の性に 著しい不利益を与えているような基準で立てていたら、その基準については、やはり職 務に必要な基準なのだ、業務上の必要性があるのだとか、あるいはイギリス流でいうよ うな、そういうものを置かないと他の代替的な措置では、会社にとって非常に大きな、 経済上とか、その他の不利益を課すから、やむを得ない1つの措置なのだという格好で 考えるわけです。  私は少し理屈で考えているところがありますから、現実的に合わなければ教えていた だきたいのですが、極端な言い方をしますと、雇用の中で行われている管理制度という のは、こういうようなものになり得るのです。そうなりますと委員の皆さんが言われて いるように、防止をしていくとか、それを正していこうとする時に一体何が間接差別の 概念に入るのか非常に予測がし難い。これは先ほどから言われるとおり経営管理上非常 に難しい問題を問われることがあり得るわけです。それは私も十分承知しております。  ただ、そのために間接差別の概念に当たり得るような、予め当たる可能性が高いか ら、こういう基準は少し変えていこうということをどうやって見極めるのかが、多分、 この予測可能性を高めるということだろうと思うのです。その時にどういう方法がある かは、いろいろ検討していかなければいけないだろうと思っています。もともとアメリ カでもイギリスでも、こういう議論は裁判所のケース・バイ・ケースの個別処理の中で つくられてきておりますから。それに対して日本の場合の均等法というのは、いろいろ 議論がありましょうけれど、むしろ行政指導を中心にやってきた法律ですから、ある程 度こういう法律を活かすためにも、一方で行政指導の基準になるような、予測が労使に とってつけられるような基準がないと、なかなか指導しにくい部分もあるだろうと思う のです。  その意味からも、予測可能性に役に立つようなものを皆さんで知恵を絞って、出して いくことが間接差別の法理というものが我が国の労使関係の中で、ある程度機能してい くための必要な議論ではないかと思っています。  もう1点、先ほど川本委員はポジティブ・アクションの問題と。たまたま研究会報告 で出した(1)〜(7)までの議論のうち、(1)〜(4)までは間接差別の法理の問題ではなく て、ポジティブ・アクションでやった方が、あるいは、それでやるべきかという点で す。この前のことは私も覚えているのですが、そういう議論を川本委員からいただきま した。それで私が発言したことは、仮にそういうことであるならばポジティブ・アクシ ョンというのが、今の制度の下で、企業の自主的な取組みを行政がバックアップする、 助言や情報提供をしていくという形で書いてありますが、それだけだとこういう問題に ついて、いわばポジティブ・アクションの施策からすると、必ずしも十分といえないの ではないかということを私はお話をしただけでして、間接差別の法理はここではいらな いから、その代わりポジティブ・アクションでもいいよということを言ったわけではな いのです。それは誤解されていないと思いますが、そういう視点であったということだ けをもう1度、話をさせていただきます。 ○横溝分科会長  他にいかがですか。 ○林委員  ちょっとお尋ねします。資料No.1−1で、予測可能性の点で(1)(2)(3)と 分かれております。イギリスの審判所でなされるやり方などを考えると、(2)の相当 程度の不利益の判断基準と、(3)の合理性・正当性の有無の判断基準が相関関係にあ る形の運用がなされているのではないかと理解しているのです。そういう意味で(1) (2)(3)とあるのも、例えば(1)と(3)は当然なのですが、(2)は独立した 判断基準として明確化されるものなのか、それとも併用という形でもあり得るのか。こ れは今後の議論になるのではないかと思いますが、その辺りはどうなのでしょうか。3 つに分けて議論されたのかどうか私自身も明確ではないものですから、その点ご説明い ただければと思います。 ○石井雇用均等政策課長  この辺り、間接差別の定義としては、これは海外で発展した概念ですが、この3つの 柱からなっていることは間違いないところで、運用によって、また時代によって若干違 いがあると承知しております。アメリカにおいては3つ、かなり明確に分けており、相 当程度の不利益がないとなったら、そこで終わりです。合理性の話に至らないというこ とで、かなり独立して処理がなされている傾向にあるやに承知しております。  一方イギリスは、当初は相当程度の不利益のところで、裁判所によって数値上かなり 逆転しても、片方の事案が○、逆に数字の差が少なくても相当程度の不利益ありと判断 したというものはあります。切り分けて判断したものもあったわけですが、最近の雇用 審判所の運用の傾向としては、いみじくも今林委員が言われたように、(2)と(3) がセットになったような形。運用上の世界では変わってきているという捉え方がされて いるところです。 ○横溝分科会長  他にはいかがでしょうか。 ○山崎委員  パブリックコメントをいただき目を通させていただきました。どの程度中小企業の声 がそこに出てきているかは分からないのですが、いずれにしても皆さん深刻なご意見 で、かなりご苦労されているなというのが分かりました。差別的なことは当然悪いとい うことで改善していかなければならないわけです。特に日本の古い雇用慣行のようなも のは直して、新しい雇用システムに合ったような仕組みづくりをすることが大事だと思 っています。  特に中小企業においては労使一体になって仕事をしているわけですが、やはり中小、 特に小さい所はもっと意識を高めさせる必要があろうと思います。知らない場合が多い わけですから、いろいろなものを周知していくことは当然必要であるということからみ ますと、かなり前向きに、積極的に捉えて、中小企業に対しては何か手を打つ必要があ ろうかと思います。  ただ、これは悪い、あれは悪いというようなことでありますと、人間関係、そうでな くても労使一体としてうまくやっているところに、あまりペーパー的に、これは悪い、 あれは悪いということになりますと、お互いに労使関係がぎくしゃくしますので、そこ は弾力的に、実効性のあるものは実質的な解決が一番だと思いますので、そういう余地 を残すようなものであれば、間接差別はある程度新たな枠組みとして入れて、そこで柔 軟に対応するようなものが考えられれば、ある程度そこに歩み寄りを示す必要があるの ではないかと思います。ただ、これは大手のきちんとしている企業と違いますので、や はり中小企業、それも中堅ではなく中小の小の方ですから、ここは同じ均等法でも同じ に対応するのはなかなか難しいところもあろうかと思うのです。そこはうまく、柔軟に 対応するような何か方策を残していただければ中小企業にとっては、かなりそれを目標 に何かをやるということにもなりますので、そこは歩み寄ることもできるのではないか という気はします。  ただ、均等法そのものはかなりシンプルな法律であると聞いていますので、あまり複 雑になってしまうと困るなという懸念はあります。いずれにしても中小企業の小の方 は、ある程度引き上げていくようなアクションを起こすべき時にきているのではないか と。国際的な流れもそうですから、そんな気がします。 ○吉宮委員  何が合意できていて、何が合意できてなくて、もう1回ちょっと。定義はいいわけで すね。川本委員も言われたように、中間取りまとめで。 ○横溝分科会長  そうですね。 ○吉宮委員  問題は定義を受けて、予測可能性を高めなければいけないということは、法案では私 どもはOKだし、関係労使がやる時に、何が間接差別なのと言われた時に、参考を示さ ないとまずいでしょうということで、これは議論しましょうと。間接差別の3つの要件 というのは、ここで言われている基準というのはどのように整理しているのかとか、相 当程度の不利益というのは、どういう判断でいくのかというのはまだ議論が残っていま すよと。どこまで合意できているのか、ちょっと議論のしようがないのですけれども。 ○佐藤(博)委員  川本委員にお伺いしたいのですが、定義自体は、それはそれとして合意できた。た だ、そのことと立法化することに賛成するかは全然別で、1つは予測可能性の問題でい ろいろな問題があるので、今経営者側としてはすぐ立法化はできない。それでポジティ ブアクションというお話をされたと思うのですが。  吉宮委員は、立法化することを決めた上で議論をすべきだということで、そこにはか なりの距離がある。川本委員に伺わなければなりませんが、全部議論して予測可能性の ところまで納得できたら、立法化について、もしかしたら議論にのれるかもしれない。 出発点で立法化するというのは、そこからは議論できないというご趣旨かなというふう に伺っていて、全部セットで、予測可能性のところまである程度合意できた時に初めて 立法化の議論にものり得る可能性、そこで最後はどうなるかは分かりませんけれど、そ ういうように受け止めたのですけれども。 ○川本委員  今佐藤(博)委員から今までの経緯を整理していただいたという感じだろうかと思い ますが、私どもとしては難しさの中身についてご意見を申し上げたというのが1つある わけです。したがってその難しさの部分、予測可能性の部分について、例えばこういう ことだったらあり得るのではないかと。だから、それはそれで。私は今日意見交換をし ているわけではありませんので、いろいろご意見を伺いながら、それを踏まえて、持ち 帰り検討させていただきたいというスタンスです。その検討の結果、これを導入するこ とについてイエスなのかノーなのかということは、逐次検討していただくというスタン スになろうかと思います。 ○吉宮委員  私はシンプルに考えています。まずものの発生です。どこで問題を発見するかという と、男女の比較で格差がありますねと。それで、格差はどういうふうに生まれているの でしょうかと。どうも規定が格差を生み出していると言って労使のどちらかが言いま す。それで格差の原因を説明する。女性労働者が不利益を被ると言われて、それを言わ れた使用者側は、企業はこういう理由で設けているのだと。というのは先ほど言った職 務の関連性とかいうのを当然説明します。差別するために設けているという意図はない わけですから。間接差別というこういう規定がありますねと、弁解の機会があるわけで しょう、労働者が証明する機会と、こういう理由だという使用者側の抗弁、これは分配 しているわけです。  格差イコール差別だと私は言っているのではなくて、いわば、さまざまな原因みたい なものを証明する機会があるわけですから、先ほど奥山委員が言われたようにコース別 雇用管理がすべて駄目というのではなくて、ある企業は、こういう理由で合理性を持っ ているかもしれない、ある企業は持っていないかもしれない。それはケース・バイ・ケ ースだと思うのです。したがって、最大公約数的にこういう例が、多分、こういう抗弁 はこの基準で、ある意味では合理性を持つのではないかというのは例を示すことができ るけれど。それとて企業によって違うかもしれません。そういうものと理解しているの ですけれど、それでよろしいのでしょうか。まさに業務上例示であって、典型的なもの を議論するしかないような感じがしますが、それでも違う場合もあるということだと思 うのです。 ○奥山委員  吉宮委員が言われた後半の部分について、ある程度合意は先にしたい。できるのかど うかわかりませんが、そこの議論をある程度、相当程度の不利益というのはどのぐらい か。例えば対象についても、配偶者手当などというのは、正直言ってこれはあの制度は いろいろ問題があると思うのです。間接差別の対象になるような形でやっていくのがい いのかどうかということは、議論はすごく分かれると思うのです。そういうところにつ いては、除くというのはあり得るかもしれない。私は除いた方がいいという意味ではな いですよ。そういうことがあり得る。例えば年功賃金という議論もありますね。  ですから、そういうものまでかなりオープンにやってしまうと、混乱があるのではな いかというのが、たぶん使用者側のご主張だと思うので、少しここを詰めていってか ら、ある程度運用上も予測可能性が高いというものができるのであれば、もしかしたら 間接差別についても立法化の議論が進むかもしれない。ただ、初めから間接差別の法理 が必要だから、その運用の仕方を議論しようというのではなかなか議論しにくいと言わ れているのだと思うのです。ですから、議論できるところはあるのだと思うのです。こ の運用のあり方、予測可能性を高めるにはどうするかについては議論しましょうと言っ ていただいているのだと、私は理解しています。 ○横溝分科会長  そうですね。1つ詰めて、それが詰まらなければ次に行かないということでなくて、 全体的にみてということだと思いますので、進行としてどうしましょう。 ○樋口委員  質問をお願いします。(2)でアメリカの例が出ているのですが、今ここでコース別 雇用管理の話が代表的な問題として上がっているので、それに当てはめてこの(2)を どのように適用するのか、と思って聞いていたのです。これは個別企業によってコース 別雇用管理をとっているところで、運用上の問題だということがありましたね。運用上 で、まず2行目に「成功率」という言葉があるのです。比率である以上は、分母・分子 に何かあるのだろう。何を分母にとって、何を分子にとるのか。例えばコース別で考え れば、総合職といったものを例にとった時に、総合職に受けてきた人、これが分母で す。分子の方は、そのうちで合格した人です。ですから、成功率というのは合格率だと いうようになった時に、男性と女性、それぞれの合格率を見て5分の4という話なの か、今の間接差別の問題はそうではなくて、最初から総合職とやったら女性が受けてこ ない。全国転勤か何か理由があるのかどうかわかりませんが、分母自身が小さくなって いるというところが実は問題になっているわけです。  そういった時にこの基準を適用するというのは、たぶんアメリカの方は例えば解雇の 事由などといったところで適用してくるので、分母というのはわりとはっきりしていま すね。既に雇われている人が分母にきて、そのうち何パーセントが解雇されたか、残っ た人が何パーセントかということで成功率という形なのですが、採用などといったとこ ろにこれを当てはめようと思った時に、これですっきりいくのですかね。今の例で言え ば、何を考えたらいいのだろうかということなのですが。 ○奥山委員  一般的に成功率5分の4ルール、80%条項と言うのですが、この場合の成功率、つま りそういう基準をクリアする男女の割合、あるいは黒人と白人系の人たちの人種間の割 合という形で出るのです。実は分母にどういうものを置くかなどというのは、アメリカ の裁判所でもものすごい苦労しているわけです。 ○樋口委員  そうですね。 ○奥山委員  例えば女性差別のローリンソンというケースがあって、日本流に言うと、刑務所の看 守に応募したのです。それまでは凶悪犯罪者を収監している所だから、身長・体重が一 定以上の屈強な人でないと、非常にハードな仕事だから駄目だということを言っていた のです。それで、身長・体重要件に対して、女性がクレームをつけたのです。その時に 成功率というのを、距離的にもそこの刑務所に勤める可能性、そういう者の中から分母 を統計で使うのかというようなことと、もっと全国レベルで使うのか。それも1つのケ ースでずっと、要するに混乱というか、議論があるのです。 ○樋口委員  そうなのですが、いまの例では受けてきた人ですね。 ○奥山委員  はい。それで、アメリカの場合には、むしろこういう間接差別の例は、今樋口委員が おっしゃった解雇という問題にはほとんど出てこないのです。基本的には募集・採用の 要件、昇進の要件、教育訓練の対象を絞る時の要件、配置転換の要件、配転する場合に ついては、例えばコースのディプロマがないといけない、あるいはもう1つ高いレベル に上がるには、会社で予定した試験に通らなければいけないと、こういう基準を引くの です。ですから、解雇の場合はほとんど出てこない。 ○樋口委員  採用の場合は、何が分母に来るのですか。 ○奥山委員  要するに学歴ではないですか。その学歴は、例えば昔の言い方をすると、黒人の人た ちは差別されているわけだから、もうドロップアウトが多いと。こういう学歴を必要と するようなものを入れたら、当然、黒人の人たちのそこをクリアしていく割合が減りま すよね。それから、学歴等を踏まえて、教養試験などを一緒に組み合わせるとすると、 そういう学歴もないし、勉強する機会がないわけですから、黒人の人たちは結果的にそ ういう試験にクリアする率が圧倒的に少なくなりますよね。そういう形でこれ。 ○樋口委員  ということは、人口比率ですね。 ○奥山委員  はい。ですから、その比率を人口比率にするか、州の中の比率にするか、その幅をど こにやるか、ものすごい議論しなければいけない。 ○樋口委員  ただ、受けてきた人ではないわけですよね。 ○奥山委員  受けてきた人だけでやる場合もあります。ただ、そこはもうこれは様々です。それは 裁判所が判断する。 ○樋口委員  結果の平等を求めることになるのではないかという気がするのですが…。 ○奥山委員  それは結局、この5分の4ルールというのは、アメリカのそういう状況の中で発達さ せてきたルールですから、これが直ちに日本の中でも通用するかどうかは別です。別に 議論しなければいけない。 ○樋口委員  むしろ日本に適した相当程度の不利益とは何か、ということを議論しないといけない ということなのですね。 ○奥山委員  そういうことを判断する、日本の中で適当な基準があれば、もちろんそれは望ましい ことだと思います。これは、たまたまアメリカではそういう形でやっている。5分の 4、80%というのはある意味で高いですよね。それをクリアできなければ不利益効果が あると。そう言えるのかどうかもやはり突き詰めていったら、すごい議論しなければい けないですよね。ですから、あくまでもここで出している5分の4という事務局などが 言っている、研究会報告などでも出しているものは、アメリカではこのような指標でや るのだというだけですから、決してそれがすべてここに活きるなどということではない のです。 ○樋口委員  そこで提案なのですが、日本流のこの相当程度の不利益とは何かということについて 議論してほしいということなのですが。 ○横溝分科会長  この予測可能性を高めるのに3つありますよね。「基準」と「相当程度の不利益」と 「合理性・正当性」、この(2)、(3)は外国でも判例の積み重ねのような、先ほど 林委員がおっしゃったように、バランスの問題があって、最終的には合意となると思い ますが、規定・基準・慣行等についての明確化の方法というのを、まず議論できるの か。それから、「相当程度の不利益」、「合理性・正当性」というので、順を追って議 論して、先ほど吉宮委員がおっしゃったように、この場で順々に合意点に達していくこ とが可能なのかどうか。(1)の「基準」というのは割合にできそうな気がしますが、 先ほど吉宮委員は限定列挙に賛成とおっしゃいましたか。「基準」の所は、そうおっし ゃったわけではないのですか。 ○吉宮委員  いいえ、反対です。 ○横溝分科会長  そうすると、一番上、例示がいいとおっしゃったのですか。 ○吉宮委員  はい。ガイドラインで示すという意味で、つまり、ケース・バイ・ケースだから言っ ているのです。 ○佐藤(博)委員  ですから、たぶん今田委員が言われた組合わせもあり得て、一番上のものもやって、 例えば2番目の除外、先ほどの家族手当や年功賃金みたいなものを除外するというのは あり得ると思うのです。組合がどう考えるか別ですが、ある程度書いて、これは難しい というと変ですが、載りやすいけれども間接差別ではないものを初めから挙げてしま う、というようなやり方はあり得るかもしれない。 ○樋口委員  (2)、(3)について、何かアイディアがあったら具体的に出してもらった方が、 今のはあくまでも借りてきたものがここに置いてあるわけで、これでやろうというわけ ではないわけですから、何か具体的なものがないと(2)、(3)は空文化してしまう ことを懸念するわけですね。どういうことを考えたらいいのでしょうね。 ○佐藤(博)委員  一応、(3)は例示があるわけですね。 ○横溝分科会長  そうなのです。「合理性・正当性」は裏に7つ書いてある。 ○吉宮委員  先ほどアメリカの5分の4というのはどういう根拠か、わかれば教えてほしいと言っ たのですけれども。 ○奥山委員  すみません。どこかの論文を読んでいて書いてあった記憶はあるのですが、今それが ちょっと出てこなくて、調べてもしわかりましたら次回でも報告します。たぶん事務局 の方も調べてくださると思います。 ○石井雇用政策均等政策課長  研究会ではここは多少議論して、他にアメリカの労働法にお詳しい先生もおられまし たが、その時点では明確な根拠は出てこなかったという経過があります。アメリカの労 働省の方にお伺いしたのですが、直ちには出てこなかったということです。 ○吉宮委員  イギリスは逆に実態で判断しているのでしょう。別に1つの基準をとらずに。 ○奥山委員  イギリスの場合も一応、基準としては一番上に書いてありますように、間接差別に当 たるかどうかの概念として、これはどこの国でも基本的にこういう概念を立てるわけで す。問題はそういう概念の下で、個々のケースをどういう基準で当てはめるかという時 に、(2)、(3)のこういう基準が要るわけです。いくら中立的で格差をもたらして も、その格差が大きくなければ、それは間接差別の問題として扱わないで、もちろん別 の形で議論することはあり得ると思います。それから、(3)は裁判上の言葉を使う と、仮に格差があったとしても、そういう中立的な基準を立てることで、その企業にお いて、その仕事をするためにこういう基準が要るのだということを立証できるというこ との要件なのです。 ○吉宮委員  格差が大きい、小さいというのは、金額ではないでしょう。女性と男性の割合でしょ う。 ○奥山委員  はい、そうです。割合です。その時に、イギリスの場合もこの(2)のような基準は 一応立てるのです。ただし、最終的に間接差別を認める時にどこに比重を置くかとする と、私の理解するところではイギリスの場合、(2)と(3)というのはある程度一体 化されて、格差が大きくても正当性が強ければ、あるいはそういうことによって会社に 与える利益が、代替的な措置を使うよりもはるかにコストがかかるならば、それはやむ を得ないでしょうみたいな判断をするわけです。それで、逆の場合もあるわけです。格 差が小さくても駄目だという場合もあるのです。だから、その辺は(2)と(3)の要 件なら要件を見ると、かなり一体化させているところがある。  アメリカはそこをもう少し区別している。(2)と(3)の要件をそれぞれちょっと 独立させているような形で判断するのです。ただし、(2)の5分の4ルールも、短所 はあくまでもEEOCという行政機関がガイドラインの中で出された指標ですから、法 的な効力みたいなものはないわけです。ただし、アメリカは裁判所がそれを尊重して、 ある程度当てはめていっています。だけど、ケースによっては、先ほど事務局もおっし ゃったように、5分の4というのは確立した基準ではなくて、それは変動しても認める 場合はあり得るのです。だから、1つのある程度みんなが納得できるであろう、了解で きるであろうという、要するに成功率というか、基準の形で機能しているのです。そう いう違いだろうと思います。 ○樋口委員  その上で研究会として、日本にふさわしい(2)の基準というのは何かというのは議 論があったのでしょう。 ○奥山委員  研究会でいただいた課題は、間接差別の概念を明確にするということだから、それ以 上にはちょっと突っ込んで議論は個別には議論しましたが、報告の中では明確にしてい ません。 ○横溝分科会長  概念については川本委員も確認をしたとおっしゃっているので、確認ですね。 ○川本委員  1頁目の一番上の4行ですね。ここというよりは、中間報告の取りまとめに入ったと おりです。 ○横溝分科会長  次の段階の基準について、(2)と(3)は今日というのは難しいでしょうから、 (1)についていかがでしょうか。ご意見があればお願いします。 ○吉宮委員  ここで不利益というのは、特段なルールを作らずに、つまり5.5対4.5ということもあ り得るし、9対1というのもあり得るし、という理解でいいのですかね。 ○奥山委員  私ばかりお話してもしょうがないのですが、何度も言うように、こういう間接差別の 法理というのは、イギリスにしてもアメリカにしても、もともとは裁判所の判例法理の 中で、こういう問題について一つひとつ潰しながら、いわば先例拘束みたいなものがあ って、その上で蓄積されているわけです。だから、ここで上がっている概念というの は、あくまでも裁判所が司法判断を下す時のいわば基準とか要件みたいなところがある のです。でも、先ほど言いましたように、労働立法というのもあるでしょうけれども、 日本の均等法というのは、むしろそういう裁判規範で直接訴えて、5条から8条まで規 範ですが、それ以外にも解決の手立てとしては行政とか当事者がお互い了解しながらや っていくということを基本の解決の手立てにしているわけではないですか。そういうと ころに間接差別の概念を持ち込もうとした時に、むしろその裁判所に行く前の段階で、 こういう間接差別をめぐるようなトラブルについて、やはりこれは駄目ですよ、これは 間接差別に当たる可能性が高いですという事前の予測があった方が労使は混乱もしない し、むしろ経営側についても自分の所でやっている雇用管理の基準や要件が均等法に定 められた間接差別の概念について抵触している可能性が高いから、これはやめておこう とか、是正しようということになるわけです。その時の目安というと言葉が軽いかもし れませんが、基準をここで立てられたらということだと思うのです。だから、吉宮委員 がおっしゃっている話は、ある意味であくまでも裁判上での法律上の要件論みたいなも の、判断基準論みたいですが、川本委員はむしろそこへ行く前に、もっと事前の雇用管 理上のいわば予測を立てられるような枠組みと基準みたいなものがほしいと。なければ なかなか難しいところがあるのではないかなと、たぶんそういう観点でおっしゃってい るのだと思うのです。だから、そこの詰めをまずしておいて、その上で、手立てとして もしそういうことができるのであれば、議論することは大事かなという感じを持ちます けれども。 ○横溝分科会長  そうですね。この際、均等法の改正という場で制度上どこまで紛争解決のメルクマー ルとして機能するものを作れるかということですから。これは事務局にお聞きしたいの ですが、基準の方でこの3つは並列というのではなくて、どれかにするわけでしょう。 例示にするのか、除外にするのか、限定列挙にするのか。 ○石井雇用均等政策課長  それは先ほど今田委員、奥山委員からご発言があったように、場合によって(1)と (2)などは合わせるのではないかというやり方もあると思います。 ○横溝分科会長  例示しておいて除外を入れるというようなですか。 ○石井雇用均等政策課長  除外するけれども例示をするというような感じでしょうか。 ○横溝分科会長  限定列挙というのが一番わかりいいのですが、そうするとまたいろいろ問題があるで しょうから。 ○片岡委員  今更で申し訳ないのですが、定義を確認したということは率直にそれをベースに均等 法の実効性を高めていく方策として、先ほど吉宮委員がおっしゃったように立法化とい うことを照準において、具体的な予見可能性を高めるという組立てで、これを議論し て、議論した結果、定義はわかるのですが、法律には盛り込まないという意見はあるだ ろうと思うのですが、去年の9月からやってきたことはそういう進め方なのですかとい うように、自分はそう思うわけです。  それは仕方がないのですが、これから議論に参加するなら、もちろん異論はたくさん あるにせよ、予見可能性についての議論を高めた結果としてはきちんと法律に定義を盛 り込んで、間接性差別を禁止していく。禁止をするということが明らかになれば、それ に基づいて企業の雇用管理というのは事前にさまざまな検証が行われ、もちろんそれは 法律がどう施行していくかということにも関係していくと思うのですが、間接差別の内 容に入っていくと、場合によっては労働組合も十分検証すべき考え方、制度に対する要 求などがあるわけなのです。ですから、少しお互いが事前にこれに基づいて準備する期 間は必要だと思うのですが、言いたかったことは定義を確認して法律に規定していくと いう方向で、(1)、(2)、(3)という議論に参加したいと思っています。  その上で、今議論にあった(1)については、公益委員のご意見を伺っていて、ポツ 1とポツ2は2つ混在することがあり得るのかと思いましたが、ポツ3の限定列挙する 方法というのは、この間の議論でそれが1つの進め方としては意見の内容を理解できた わけですが、そもそも間接差別を禁止していくということとの関係で言えば、限定列挙 するということ自体は固定してしまう、それに限るみたいな意味合いが理解としてはあ るので、むしろ間接性差別というのは、一番初めに吉宮委員が発言をされたように、ど んどん差別というものが形態を変えて変化をしていく差別を、きちんと法的手段でそれ を差別として認定させて、基準を変えさせるということですから、常に出てくる可能性 はあると思うのです。その点で限定列挙するということは、それをむしろこの時点では この範囲というように固定化してしまうから、それは間接差別を禁止するということか らはあり得ないというか、そういう点で3つ目の黒ポツはこれを採るという方法にはな らないのではないかというように私は思います。  もう1つ、(3)の合理性・正当性の判断基準を明確にすることで予見可能性を高め ることは、大変重要だと思っていますし、合理性が認められれば、先ほどのお話のよう に仮に比率がアメリカのルールのような結果であっても、そうでないということはあり 得るのだという理解に立っています。その上で、例示で示されている合理性・正当性の 抗弁の例と書かれている内容を見ていくと、どうしてもそれが例として取り上げられる ことに納得が十分できないものがいくつか入っています。例えば総合職の募集・採用に 当たって、全国転勤を要件とする場合、黒ポツが3つあるわけですが、組織運営上人事 ローテーションを行うことが必要であるということ。これが合理性だと言われてしまう と、人事ローテーション上必要だと言われたことに対して、それが他に方法があるでは ないかと思ったものは、どうやってこれに対してそれを納得できるのかというと、私は 組織運営上の人事ローテーション上必要だと言われても納得ができない。例えば他に方 法があるのではないかと思いますし、同様に(4)は○の2つ目に同じようなことが書かれ ていることに加えて、「企業内のモラルを維持することが必要」というように、企業内 のモラルを維持するということを例として挙げていますが、これも果たして企業内のモ ラルという時のモラルというのはどういうことを言うのかという疑問もありますが、そ もそもそれを客観的なもので表して、なるほど、それだったら到底、私が言っているこ とは私の側に非があるというようには思える判断材料にはならないと思います。  (6)と(7)はいわゆる正社員とパートタイム労働にかかわる事柄で、これはパート法の 議論にまた戻ってしまいますが、「正当性・合理性」という例の中に職務に少し着目す べきということはわかるのですが、労働側は人材活用の仕組み、運用が実質的に異なる というのは、そもそもパート法の均衡処遇をめぐっての議論でも、これを合理性がある というようには認めがたいという意見を申し上げてきた経緯などもありますので、これ 自体、「合理性・正当性」の例の中に取り上げられている今申し上げた点などは、それ について合理性がある、あるいは正当性があるというようには思えないというように意 見として持っています。そういう個々の意見をこれから申し上げていくことになるのか と思ったのですが。 ○佐藤(博)委員  吉宮委員や片岡委員のお話を伺っていて、法律で定義の一番上にあることだけを決め て、あとの合理性判断等は裁判所に任せるのだ。だから、細かいことは詰めなくていい というのが、たぶん強いのだと思うのです。そうした場合、今の職務関連性について も、2頁、3頁についても、これは研究会で議論されて挙げていることについて、たと えがおかしいと言われているわけです。そうした場合、企業や組合としても、現行の人 事管理の仕組みが事前にどうかわからないわけです。裁判にならないとわからないとい うことになりかねない。たぶんそういうことを問題にされているのだと思うのです。  つまり、今のことについても、現状でも、相当、合理性について、意見は分かれてい るのです。これは一応研究会で議論して、そこには企業の方は入っていましたか。入っ ていなかったですか。研究者がいろいろ集まって議論した。それについても片岡委員は おかしいと言われているわけです。ですから、職務合理性についても意見が分かれてい る現状があります。  そういう時に、これだけを法律に謳って、あとは何もないということについては、今 の均等法の枠組みで言うと、ある程度企業も事前に今うちでやっていることが、間接差 別ができた時に法律違反なのかどうかと考えた時にわからない。これがいいのかどうか について非常に議論が分かれているというのでは人事管理上困るのではないか、とたぶ ん川本委員が考えられているのだと思うのです。そういう意味で、そこは分かれていて も裁判所に任せればいいのだということはあるのだと思うのですが、今の枠組みで言う と、やはりある程度そこについては事前の予測可能性が必要だとすると、少しこちらに ついても議論の合意がなければいけないということなのではないかということなのです けれども。 ○吉宮委員  私は別に条文だけあったらいらないと言っているわけではなくて、それを落としてガ イドライン的なものは必要でしょうと。今の均等法だって、何が差別かと事案を挙げて いるではないですか。ああいうのが必要ですと言っているのです。だから、ガイドライ ンを作る時に研究会報告をそのままガイドラインにするというのではなくて、議論をし ましょうと言っているわけで、2つのそういう立場で今言っているわけです。研究会報 告書がOKでガイドラインにしましょうというのではなくて、今後詰める議論は残って いますねというのが前提で、今言っているのです。だから、佐藤委員が言う条文があれ ばいらないとは言っていません。 ○佐藤(博)委員  議論はするわけですね。 ○吉宮委員  はい。 ○川本委員  何度も申し訳ないのですが私どもは定義については確認しましたが、間接差別概念の 導入についてはとにかく反対なのですよ。ただ、反対をしているのですが、その時に一 番心配なのはいろいろな議論を踏まえている中で、何かすごく結果の平等を求めるよう なご意見が多かったということ、あるいは予見可能性がなくて、いろいろな範疇に及ぶ 可能性があるということ。そういう中で、今の段階で非常に難しいのではないかとお話 を申し上げたところ、予見可能性を高めるために、例えば限定列挙をして、今の段階で はこういうものについてやっていくという考え方もあると。たまたまこの資料に載って おりますが、研究会報告にもこういう事例も出ている、というご意見も出された。要は 使用者側委員も少しそういう意見もあるということを踏まえて検討してもらいたいと、 そういう趣旨で私どもはご意見をいただいたのだというように受け取っているというこ とです。  ただ、そうは言ったって、限定列挙で例えば7つというイメージであるならば、それ はそれなりに先ほど言ったとおりです。全部が納得しているわけではないし、併せて今 の合理性・正当性の中でも、いや、これでは駄目なのではないかと言って、合理性・正 当性と書いているこの研究会報告の例の中身についても、これがより解釈の仕方が狭ま るのか、あるいは広がるのか、ものによってあるのでしょうけれども、それによっても 非常に企業の対応、あるいは準備、あるいは現場で起きてくるトラブル、または人事 権、要員管理の問題等にも全部影響してくるわけですので、非常に苦慮している話と。 ただ、そういう中で、こういうことであれば経営側としても考えてくれないかというご 意見を、かなりいろいろ頂戴しているのだという判断で今お聞きしているというように は申し上げておきたいと思います。 ○奥山委員  ちょっと話が先走ってしまうのかもしれませんが、先ほど片岡委員がおっしゃった合 理性・正当性の判断の所ですが、それだけ独立させて議論するのもどうかと思いつつ、 弁明でもないのですが、合理性の基準にして考えますと、コース別雇用管理における合 理性を検討して、人事ローテーションということがありました。これは例えば訴訟にな って会社側が話をした時に、私どもは全国転勤というものを人事ローテーションの中に 組み込んでいますと言ったから、直ちにそれが正当性を持つわけではないのです。つま り、一番最初の見出しにも書いてあるように、合理性・正当性を会社側が抗弁として出 す例として挙げているだけですから、これが全くどんな場合でも、これさえ言っておけ ば錦の御旗みたいに正当性があるのだということではなくて、人事ローテーションが例 えば裁判所の土俵に上がった時には、本当にそれは実際にそのような形で運用されてい るのですかというように言葉でも、やはり証明の中身に入ってくるのです。  それから、一番上のポツでも、次の方でも構わないのですが、これは私どもも反省し ているところで、例えば一番上の「身長・体重・体力要件」の所で、正当性・合理性の 抗弁として2つ挙げてあるではないですか。1つは皆さんある程度ご理解いただけると 思うのですが、2つ目の所で、「他の方法によって身長・体重または体力を補うことが 困難で」云々と書いてあります。訴訟法で言うと、どちらが積極的にやらなければいけ ない抗弁なのかということがあるわけです。だから、たぶん日本の裁判所でこれまでの こういう差別に関する法理からすると、まず上の方のポツは使用者側・会社側の積極的 抗弁だろうと思うのです。必ず使用者の方で積極的に言わなければいけない。原告側の 方は、これで格差が出ているのだと言っておけば、一応それは差別の推定を受けるだろ うと思います。それを覆すためには、この仕事をするためには身長・体重が絶対必要な のだということを、むしろ会社側が言わなければいけない。  その時に、真ん中を抜いてしまったのですが、それに対する抗弁として、いや、そう ではないと。同じような目的を持つのに他の方法があるではないか。もっと差別の割合 が少なかったり、なかったり、コスト的にも軽減されるものがあるではないか。つま り、代替手段の可能性を、今度はそれに対するいわば反論とします。そういう流れで言 うと、その反論に対して2番目のポツは、むしろ逆に使用者側の再抗弁ですね。だか ら、そういう訴訟上の証明責任の展開がありますから、そこを抜いて書いたものですか ら、誤解があったかと思っているのです。そういうことを考えますと、ここに書いてあ ることで、例えば人事ローテーションとかモラルが下がるということは、それだけで正 当性が全然証明なしに立証されているということではないので、ちょっと誤解を与えて しまったかということを反省しつつ、説明をしておきたいと思います。 ○樋口委員  今の奥山委員のご指摘を受けて、先ほどの(1)の3つのポツがありましたが、この うちの2番目は事実上起こり得るのかどうか。これはやってもいいと列挙するというの は、この2番目ですね。これは最初からあり得ない選択肢ではないかと。これをやって いる分には法律には罰しません、という書き方をする法律というのは考えられないわけ です。選択肢にこれは除いてほしいと私は思います。 ○今田委員  ただしなどという場合ではないですか。一般論で何かこうこうこうで、ただし、この 場合には必ずしも間接差別とは言えないぐらいの感じで、(2)だけ独立させたらおか しいですよね。 ○樋口委員  いや、対象から除外する基準を明記するというのはね。 ○吉宮委員  間接差別に当たらないという書き方ではなくて、別の法律でやりますということでし ょう。 ○今田委員  これは当たりませんよということでしょう。 ○吉宮委員  あるいはEUでも均等待遇指令があるということで。 ○奥山委員  だから、そもそも何が間接差別に当たるかどうかの議論の対象から、こういう問題に ついては特別法規や別の手立てでやりましょうと言って抜くわけですよ。 ○樋口委員  それはわかりますが、これは当たらないというのはおかしい。 ○石井均等雇用政策課長  資料の作り方についてもう一度思い起こしていただきたいのですが、「規定・基準・ 慣行等」、その対象として、いわば俎上に乗せるものとして除外するという方法につい ても提案があったということで出しているもので、これがイコール間接差別ではない、 という結論までいっているものではないのです。そもそも俎上に乗せるものから、これ を除外して、その理由としては同一賃金法で別途規定がある、あるいは先任権制度につ いてはアメリカの労使関係、雇用慣行に非常に大きな影響を与えるから、これは影響が 大きすぎるから直接差別だけ見ておこうということのようだったようです。そういう一 応の理由があって、俎上に乗せるものから除外をするというだけです。間接差別ではな いということではないのです。 ○樋口委員  これは無限にあり得るわけです。列挙はできないと思います。 ○横溝分科会長  それはいろいろご意見をいただいて、またまとめましょう。先ほど片岡委員が、限定 列挙にしてということで始めたのではないのですかなどとおっしゃいましたが、この委 員会は男女が均等に平等に働くために、少しでも進んだ改正に向けてやっているわけで す。ただ、いろいろな立場から、いろいろなご意見は言うけれども、それに向けて労使 ・公益委員もやっているわけですから、あまりそのように悲観的なことはおっしゃらず にやっていきましょう。 ○篠原委員  そうすると、時間的な問題も出てくると思います。非常にタイトなスケジュールでこ れから議論をしていかないといけないというところがあると思うのですが、例えば間接 差別をこれから入れるか入れないかも含めて、全体的に討論しようという時間がとれる かどうかというところはどうなのでしょうか。 ○横溝分科会長  やはり合意点に達するまでやるということですね。それは皆さんにやり繰りしていた だいて、やっていきましょう。それで時間的制約だから駄目です、投げるというわけに いきませんから、それはご議論いただいて、やり繰りしてやっていくということ。今日 はもう1つのテーマがあるので、皆さんそれぞれお持ち帰りになって、よくお考えいた だいてということで、とりあえずそちらに入りますか。「男女雇用機会均等の実効性の 確保」について議論に入りたいと思いますので、事務局から資料の説明をお願いいたし ます。 ○石井雇用均等政策課長  資料の説明をいたします。資料No.2−1「均等法における実効性の確保の仕組み」 です。現行均等法は、労働者に対する差別の禁止とともに、セクシュアルハラスメント にかかる配慮義務、母性健康管理措置義務というのも規定しているところですが、その 実効性確保を図る手段として、報告聴収を別として、行政指導と個別紛争解決と2つの サイドから、実効性の確保を図っているという構造になっております。それぞれの仕組 みの適用が事項によって若干異なっており、この分科会でも時折そのことに言及された 発言がありましたので、今回念のため整理をした資料の用意をしたということです。  事項別に見ると、性差別の禁止の関係では大体どれも○ですが、1つ「募集・採用」 の所だけが他と若干扱いが異なっております。個別紛争解決の所で、募集・採用につい てはまだ雇用関係に入っていない、労働関係が成立している労働者と使用者の問題では ないということで、均等法の11条で自主的な解決として事業主に求めている部分につい て、適用から除外をされているということです。また、募集・採用、特に採用について は仮に調停にかけても雇入れというような形での解決はなかなか図られにくいというこ とで、実効的な勧告などは難しいのではないかということで、調停の対象から除外をし ております。ただ、その上にある労働局長の援助の対象にはなっており、現実問題これ まで運用してきている中で、実際に例えば募集の中で男女差別的なものがあった時に、 その募集条件を是正した上で、再度、応募の機会を与える、あるいはポジティブアクシ ョンを実施する、謝罪、場合によっては金銭解決といったような解決の事例が図られた ケースも出てきているところではあります。  セクシュアルハラスメントと母性健康管理措置について、これはパラレルな形での適 用になっておりますが、この場でも議論がありましたように、行政指導の助言・指導・ 勧告の対象とはなりますが、企業名公表の対象にはなっておりません。また、個別紛争 解決の対象からも除外をされているところです。資料No.2−1については以上です。  資料No.2−2については、5月24日の第44回雇用均等分科会に一度提出をした資料 のリバイズ版です。性差別に係る主な個別労働関係紛争の解決手続の概要で、その後、 若干進展したところについて改訂を加えたというのが今回提出をした趣旨です。変更し ているのは右から2番目の「労働審判手続」です。労働審判法の施行期日が定まり、平 成18年4月1日、労働審判員の任免に関する規定はこの10月1日に施行されているとい うことで、前回提出した時は、まだここは定まっておりませんでした。また、2枚目の 下2つの欄ですが、件数、平均的な処理期間を取り上げております。前回提出した時は 平成14年度と平成15年度の件数だけでしたが、新たに平成16年度の件数を追加しており ます。変更点の主なものは以上です。 ○横溝分科会長  これについて、ご質問はありますか。 ○奥山委員  不勉強で教えてください。実効性確保の仕組みですが、セクシュアルハラスメントの 配慮義務のところで行政指導のところにかかわるのですが、個別紛争解決で×、×、× で対象にしていないのは、どういう理由でしたか。個別紛争解決で、こちらの法律の適 用ということではなかったのでしたか。 ○鈴木均等業務指導室長  これは個別紛争法というのではなく、均等法の中の調停などについての資料ですの で。 ○奥山委員  わかりました。私がちょっと勘違いしていました。 ○横溝分科会長  ご意見があればご議論をお願いします。 ○佐藤(博)委員  今奥山委員が言われた資料No.2−1の所で、セクシュアルハラスメントと母性健康 管理について、個別紛争解決に載せるというのも必要ではないかと思います。もう1つ ご説明いただきたいのですが、資料No.2−2で、これは書かれていないだけなのか、 あるいはないのかということです。裁判外紛争解決手続の所を見ると、民間の紛争解決 業者として認証されれば、そこで紛争手続等に移行すれば時効の中断や、合意された場 合、訴訟手続の中止というのも入っていますが、これは個別紛争の方などにはない。こ の辺はないのか、あるのですが書いていないだけなのかということなのですが。 ○石井雇用均等政策課長  均等法において、時効の中断、あるいは訴訟手続の中止という規定があるかどうかと いうと、これは規定はありません。ADR法は新しい法律で、ここにあるようにまだ施 行前ですが、法律自体はもう成立をしているものです。ということで、今後、民間の紛 争解決事業者であっても、一定の認証を受けた場合には、民間事業者が行う調停といっ た和解の仲介の業務については時効の中断、あるいは訴訟手続の中止といった法的な特 別の効果が与えられることになるわけです。当然、行政のADRである均等法の調停に ついても、同様の取扱いが確保されるよう、規定の整備をする必要があるのではないか と思っているところです。ADR法を検討していた司法制度改革推進本部のADR検討 会において、ADR法の施行までの間に行政のADR機関についても必要な措置を整備 することが期待され、その必要性について認識をされていたという経過があります。 ○佐藤(博)委員  では、均等法には今はないわけですね。 ○石井雇用均等政策課長  はい。 ○佐藤(博)委員  そうすると、横並び、バランスでも当然あっておかしくないということですね。 ○石井雇用均等政策課長  はい。 ○吉宮委員  行政の指導・助言・勧告という場合の基準というのがないではないかと、付帯決議で 国会で言われていましたね。指導・助言・勧告の基準は、現状はどうなっているのです か。 ○石井雇用均等政策課長  国会の付帯決議でそのようなことを言われていたかどうか、そこは定かでは…。 ○吉宮委員  今あるのですか。 ○石井雇用均等政策課長  考え方として、指導・助言・勧告については一応峻別をして、法律の運用をしており ます。まず、均等法の違反が明確にある、あるいはありそうな場合に助言から入りま す。それで、是正を求めるわけですが、是正が認められなくて、なおかつ均等法違反で あった場合には書面で指導書というのを交付して是正を促します。一定期間置いて、そ れでも従わない場合においては今度は勧告書というものを、もちろん書面で是正の期限 を付して、是正を求めています。それでも、なおかつ一定期間内に是正が認められない 場合は、今度は労働局長ではなくて、大臣の方に上がって大臣名で勧告を行う。それで もなおかつ是正が図られない場合、これはまだ適用した例はありませんが、企業名公表 ということもあるわけで、もしこれを対象とする場合には、取扱いの中では当分科会に も諮った上でそういう措置を講ずるというように、手続は明確に定めているところで す。 ○吉宮委員  それがないというのは誤解ですか。指導・助言・勧告の基準がないというのは、ある ということですか。 ○鈴木均等業務指導室長  基準というのは、要はこれは法違反があった場合に、助言なり指導なり勧告を行いま すので、やるケースというのは法違反の場合です。それは極めて明確なのです。それ で、どこまでやるかというところで、今説明申し上げたのですが、改善するまでという 形で。 ○吉宮委員  改善する。 ○鈴木均等業務指導室長  法違反はあってはいけませんので、そのアイテムとして、助言で改善したら助言で終 わるし、指導まで行って改善しなければ指導をやるし、さらに勧告までやるケースもあ ります。放置していい基準というのはあり得ませんから、そこは基準は作れないと思い ます。 ○吉宮委員  作れないですか。 ○鈴木均等業務指導室長  作れないというか、明確に法違反は、助言なり指導なり勧告をやって改善させるとい うのが、ある意味では基準でして、それ以上明確なものはないと思います。 ○奥山委員  13条にいう助言・指導・勧告というのは、あくまでも均等法違反があるという前提で やるのです。たぶん吉宮委員がイメージされているのは、そういう違反とか何とかなる 前にちょっと問題であると。問題であるから、少し改善しましょうということも助言と いうことでご認識されているから、法の解釈のところとちょっと隙間があるのではない ですか。だから、そういう点では当然法違反という客観的な事実があって、その事実の 上で柔らかく強くという格好で動いていく。それはケース・バイ・ケースで是正の状況 を見ながら、どのような程度でやるかは、内部でたぶんそういう指針的なものはあって 運用されていると思いますが、最初のところは法違反があるかないかの前提で、ちょっ と違っているかと思います。 ○吉宮委員  そこで、ちょっと意見ですが、資料No.2−1のところの公表でセクハラとか母性健 康管理は×になっていますが、これは○になるように少し仕組み、現行法を変えていく 必要があると思います。その前に、使用者側の皆さんからは、いろいろな紛争解決の制 度があるから、それを利用すればいいというご意見がこの間ありました。したがって、 現行法を変える必要はないというご意見でしたよね。確かに、いろいろな制度はありま す。これは別に否定しません。いろいろな制度があって、それを利用すればいいと思い ます。ただ、どうなのでしょうか。性差別という事柄からすると、専門的に扱う均等法 があって、その均等法にかかる実効性確保のためのさまざまな措置を、むしろ強化する ということが私はあるべき姿ではないのかと。いろいろな制度があるからいいのではな いかというようにはならないのではないかと思います。その上で、他の制度、例えば裁 判にかかわる制度と、裁判だけど調停的なものという仕組みはあるわけですが、実際、 強制力といったらバラバラですよね。勧告・命令を含むことなどを、もっと仕組みとし て導入する必要があるのではないかというのが1つです。  もう1つ、間接差別もそうなのですが、差別をした場合の差別をしていないという責 任は、今まで被害を受けている労働者がやっているわけです。私は使用者がやるという のが、当然あっていいと思うのです。立証責任の転換と言っていますが、この間の裁判 の苦労を散見しますと、まず差別のいろいろなデータを集めるのにものすごい苦労され る。加えて、最近は個人情報保護法ができて、個人で集めることについてはいわば障壁 も強まってくるのではないかと思うのです。  そうすると、ますますそういう差別事案を考える際に、事業主が訴えられたら、差別 していないと言うわけだから、いろいろなデータを基にしてやることを事業主にちゃん と課すということが私は自然ではないかと思うのです。もしそういう仕組みを導入する のに、均等法で何が障壁なのかというのがあればお聞きしたいということです。間接差 別の法律が出来上がれば、事業主が抗弁するというのは当然ととられて、それは特有の 差別案件だと。他の差別案件は違うから、訴えた側が証明しなさいというようになるの か。私はそこが理解できないので、そういう意味では一貫性を持つ必要があるのではな いかということがあります。  それから、前から言っている人権擁護法がなかなか出てこないのですが、あれは均等 法より前へ進んでいて、調査権はありますよね。加えて、調査で得た資料を基にして、 裁判を起こした被害者が訴えた場合に、行政が応援するというか、そういう仕組みも人 権擁護法にはあるのです。そういうのを均等法に持たせるということもあっていいし、 いくら立派な法律を作っても、確保の仕組みが強化されないと。だから、案件が少ない というのはいろいろ言われていますが、訴えてもなかなか効果がないのではないかとい うことも、もしかしたらあるかもしれませんので、そのことを少し考えるべきではない かということで申し上げておきます。 ○横溝分科会長  実効性の確保について、前からもかなりのご意見をいただいておりまして、資料No. 2−1の確保の仕組みについても、これは新しくというか、×の所を○に対応できる ような仕組みにするということでご意見をいただきましたが、他にありませんか。 ○吉宮委員  使用者側の皆さん、私は前回このテーマで議論に参加していないので、事業内で自主 的な解決が基本だと言って、私もそうだと思うのです。そうだとすれば、今の均等法は 事業所内で自主的に図りなさいというか、そういう規制は今努力義務なのですか。もう 少し強めの仕組みを使用者もおっしゃっているわけだから、できれば事業所内で解決す る仕組みをご努力いただくというか、そういうようなところは、前回の議論を見ると、 それは逆に言うと合意が取れるのかと思って読んだのですが、それも現行でいいという ことなのでしょうかね。 ○佐藤(博)委員  資料No.2−2の2頁の横の比較でした時に、労働審判法の所の場合は、「呼出しを 受けた関係人が正当な理由なく出頭しない時は、過料の制裁がある」と書いてあります が、これは均等法の方はどうなっているのでしょうか。 ○石井雇用均等政策課長  出頭を求めることができるということについては手続規定として省令の中に定めてお りますが、実際に出頭に応じなかった場合に、今おっしゃられた労働審判手続のような 過料とか、そういうものの裏付けを持っているものではありません。 ○佐藤(博)委員  実態として、出頭を求めても来ないようなケースというのはあるのかどうか。 ○石井雇用均等政策課長  比較的最近起こった事例として、どうしても出頭に応じないということで、こちらか ら出向かざるを得なかったケースがありました。 ○川本委員  資料No.2−1ですが、行政指導の公表で左から3つ目の所に○があります。その公 表の実績というのは、過去にありますか。 ○石井雇用均等政策課長  公表に至るまでには労働大臣の勧告という手続を経ることになります。しかし、これ まで労働局長の勧告の実績はあるのですが、厚生労働大臣の勧告の実績はありません で、その前提までまだ行っていない。ということで、企業名公表の実績はありません。 しかし、やはりこれは当初想定しておりましたように、こういったものが付いたことに よって、幸い労働局長の勧告が非常に効いておりまして、労働局長の勧告によって是正 が図られているという状況であります。 ○林委員  資料No.2−2の2頁の件数を見ると、14、15、16年度に、11件、2件、3件という 受理件数ですが、前にいただいた資料などを見ると、セクハラについて相談などは非常 に多いという実情があります。これが調停に乗ってきていないということは、折角調停 の制度がありながら、もったいないような気がいたしますので、相談件数が非常に多い ということから見ると、調停になった場合、かなりの案件が見込まれるのかもしれない のです。その辺の行政が対応できる体制というものも含めて、それは私どもがあれする ことではありませんけれども、前向きに考えていただければと思います。母性健康管理 の関係も同じです。 ○横溝分科会長  よろしいでしょうか。本日はこれで終了させていただきますが、署名委員は篠原委員 と前田委員にお願いいたします。次回の開催については、事務局から予定をお知らせく ださい。 ○石井雇用均等政策課長  その前に次回の開催のご案内の前に1点、前回私が申し上げたことで訂正をさせてい ただきます。前回、ジェンダーエンパワーメント指数の日本の順位についてご質問があ って、私が記憶で確か38位と申し上げたのですが、これは2004年調査の数字で、あとで 確認したところ最新の数字、2005年調査では43位と5位ほど下がっておりました。ここ で訂正をさせていただきたいと思います。  次回の開催の予定ですが、日時、場所とも調整中で、決まり次第ご連絡をさせていた だきたいと存じます。 ○横溝分科会長  それでは、本日はありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)