05/10/04 労働政策審議会労働条件分科会 第42回議事録            第42回労働政策審議会労働条件分科会                    日時  平成17年10月4日(火)                        10:00〜                    場所  厚生労働省17階専用第21会議室 ○西村分科会長  ただいまから「第42回労働政策審議会労働条件分科会」を開催したいと思います。本 日は荒木委員、廣見委員、渡辺章委員、島田委員、平山委員、渡邊佳英委員が欠席で す。本日の議題に入る前に、委員及び事務局の異動がありましたので、事務局から説明 します。 ○大西監督課長  それでは、前回の労働条件分科会以降、新たに労働政策審議会労働条件分科会の臨時 委員に就任された皆様を御紹介いたします。  9月28日付けにて佐藤雅是委員、佐藤みどり委員が辞任され、本日は欠席ですが後任 として、同日付けにてUIゼンセン同盟書記長の島田尚信様が労働者代表の臨時委員 に、また、日本ゼネラル・エレクトリック株式会社取締役人事本部長の山下美砂様が、 使用者代表の臨時委員に御就任されましたので、御紹介します。 ○山下委員  いま御紹介に預かりました日本ゼネラル・エレクトリックの人事を担当しております 山下と申します。アメリカにありますGEという会社の日本支社での人事を担当してお ります。今回はこのような場に呼んでいただきましてありがとうございました。微力な がら頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。 ○大西監督課長  続きまして、当分科会の事務局で異動になった者について紹介します。労働基準局総 務課長の熊谷です。 ○熊谷総務課長  熊谷です。よろしくお願いします。 ○大西監督課長  私は労働基準局監督課長の大西です。どうぞよろしくお願いします。 ○西村分科会長  それでは、本日の議題に入ります。本日の議題は「労働安全衛生法等の一部を改正す る法律案の取扱いについて」と「今後の労働契約法制の在り方について」です。まず、 前者の「労働安全衛生法等の一部を改正する法律案の取扱い」について事務局から報告 をお願いします。 ○坂本企画課長  勤労者生活部企画課長の坂本です。よろしくお願いします。  労働安全衛生法等の一部を改正する法律案の件ですが、その中に含まれている労働時 間の短縮の促進に関する臨時措置法の改正につきまして、昨年の12月17日の第38回労働 条件分科会において、今後の労働時間対策について報告書がとりまとめられまして、そ の後本年2月22日、同法を含めた労働安全衛生法等の一部を改正する法律案要綱につい て労働政策審議会で諮問を行い、同月24日に同審議会の答申が行われたところです。  その後労働安全衛生法等の一部を改正する法律案につきましては、本年の3月4日の 閣議決定を経て、同日国会に提出されたところです。5月17日には衆議院の本会議にお いて趣旨説明、質疑が行われ、また7月27日、29日には、衆議院の厚生労働委員会で質 疑が行われたところですが、8月8日の衆議院の解散に伴い、廃案ということになりま した。しかしながらこの法律案につきましては、労働者の生命や生活に関わる問題の深 刻化に対処するものでありまして、早期に国会に再提出する必要があることから、先月 30日の閣議決定を経て国会に再提出させていただいたところでありますので、これを御 報告させていただきます。  なお、今回再提出された法律案については、通常国会に提出された法案と全く同一の 内容でありまして、変更点等はありません。厚生労働省としては、今後速やかな法案成 立に向けて努力してまいりたいと考えていますが、本法案の成立後本分科会におきまし て、改めて労働時間等設定改善指針の策定などを御審議いただくこととなっていますの で、今後ともよろしくお願いしたいと思います。以上です。 ○西村分科会長  ただいま事務局から報告をいただいた事項につきまして、何か御質問があればお願い したいと思います。 ○岩出委員  この間ホームページで修正案が出ていたと思うのですが、今回の再提出の場合には、 野党の修正案なのですか。ちょっとホームページだけではわかりませんので、政府の修 正案なのかなと。 ○坂本企画課長  野党提出の修正案自体の採決は行われておりませんので、今回再提出したものは政府 案のままです。 ○岩出委員  わかりました。 ○西村分科会長  ほかに何かございませんか。質問がないようですので、次の議題の「今後の労働契約 法制の在り方について」に移りたいと思います。これについては9月28日付けで、厚生 労働大臣から労働政策審議会会長宛に今後の労働契約法制の在り方について調査、審議 を求める内容の諮問が行われています。今後本分科会において検討を行って、これに対 する結論を出す必要があります。まず、事務局から資料の説明をお願いします。時間が 限られていますので、なるべく要領よく説明してください。 ○大西監督課長  お手元の資料No.4〜資料No.12まで説明します。まず、資料No.4は今後の労働契約 法制の在り方について諮問ということで、9月28日に厚生労働大臣尾辻秀久から労働政 策審議会会長菅野和夫宛に出された諮問文の写しです。  続いて資料No.5ですが、これまでの労働契約法制に関する指摘等をまとめたもので す。1頁1番労働契約法制につきましては、労働政策審議会の建議、平成14年12月26日 において労働条件の変更、出向、転籍、配置転換等の労働契約の展開を含め、労働契約 に係る制度全般の在り方について、今後引き続き検討をしていくことが適当であるとい う建議をいただきました。  また、労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議としまして、平成15年6 月4日衆議院厚生労働委員会において労働条件の変更、出向、転籍など労働契約につい て包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進 め、その結果に基づき法令上の措置を含め、必要な措置を講ずることという附帯決議が あります。同じく、平成15年6月26日に参議院厚生労働委員会におきましても、同趣旨 の附帯決議がなされたところです。  続きまして、有期労働契約関係の御指摘です。労働政策審議会の建議、平成14年12月 26日におきましては2点ありますが、有期労働契約の期間の上限を延長した場合におい て、トラブルの発生について状況を把握し、当分科会に報告することとされたい。その 他ですが、有期労働契約の果たす役割など、有期労働契約の在り方については、上記 (1)の把握状況を踏まえ、雇用形態の在り方が就業構造全体に及ぼす影響を考慮しつ つ、引き続き検討していくことが適当であるという建議をいただきました。また、労働 基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議として、平成15年6月4日衆議院厚生 労働委員会においても、同趣旨の附帯決議をいただいているところです。  3頁ですが、平成15年6月26日、参議院厚生労働委員会においても、同趣旨の附帯決 議をいただいたところです。また、労働基準法の一部を改正する法律、平成15年法律第 104号におきましては、附則の第3条において、政府はこの法律の施行後3年を経過し た場合において、この法律による改正後の労働基準法第14条の規定について、その施行 の状況を勘案しつつ検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすると いう法律上の条文が加えられたところです。労働基準法第14条というのは、有期労働契 約の上限を定めた条文です。  4頁の解雇の金銭解決については、規制改革・民間解放推進3か年計画、平成17年3 月25日閣議決定において、平成17年度中に検討という項目の中で、労働基準法の改正に より、解雇については判例上確立した解雇権濫用法理が法文上明文化されたところであ るが、解雇をめぐる紛争の救済手段として、金銭賠償方式の導入を認めることに関して も、引き続き検討を行うという閣議決定がなされています。  資料No.6は、労働契約法制に関する労使団体の御提言等です。本日御参集いただい ている委員の方々が加盟している団体、あるいはその他の所からいただいた御提言を、 事務局で整理させていただいたものですので、御参考にしていただければ幸いかと思い ます。資料No.7〜資料No.11までは、今後の労働契約法制の在り方に関する研究会の報 告書で、資料No.7が報告書本文、資料No.8、No.9がポイント、資料No.10が概要、資 料No.11が開催要綱等ということで、本日は初回ですので、資料No.7の報告書の本文に 従いまして、御説明をさせていただきます。  まず報告書の1頁「はじめに」と書いてある中ほどの所ですが、この研究会におきま しては、昨年4月以降28回にわたって検討をしてきました。その間にヒアリングの実 施、あるいは広く国民からの意見を募って、これに対しては557件の意見が寄せられま した。このようなことを参考に検討を行い、最終報告書をとりまとめるに至ったという 経緯が、ここに書いてあります。  続きまして報告書の2頁〜6頁にかけましては「序論」ということで、労働契約法制 を構想するに当たっての基本的な考え方が、4点まとめられています。第1点は3頁の 労使自治の尊重と実質的な対等性の確保という観点です。第2点は4頁の労働関係にお ける公正さの確保という点で、第3点は就業形態への多様化への対応という観点、第4 点は紛争の予防と紛争が発生した場合の対応という内容です。  7頁〜19頁までは、第1の「総論」が書かれています。7頁においては、まず労働契 約法制の必要性ということで、(1)でこれまでの労働関係の中で労働基準法の役割、 労働組合法の役割に触れています。(2)で近年の労働契約をめぐる労働状況の変化と いう所においては、アの労働条件の個別的・迅速な決定・変更の必要性が増えていると いうこと。下から3行目ですが、労働者ごとに個別に労働条件が決定・変更される場合 が増えており、それに伴う紛争も増えているということです。  8頁の真ん中のイ、紛争当事者の自主的な決定と公正かつ透明なルールの必要性が、 ここで述べられています。下から2行目に「公正かつ透明なルールの設定は、紛争を迅 速かつ適正に解決するためにも重要な社会的意義を有している。」とあります。  9頁の現在の労働契約に関するルールの問題点としては、(ア)判例法理の限界、 (イ)労働契約に関するルールを既存の法律に定めることの限界というものです。下か ら3行目では、労働契約法制の必要性ということが触れられています。アの労働契約法 制の必要性としては、最後の行からですが、「労働関係が公正で透明なルールによって 運営されるようにするため、労働基準法とは別に労働契約の分野において民法の特別法 となる労働契約法を制定し、労使当事者がその実情に応じて、対等な立場で自主的に労 働条件を決定することができ、かつ労働契約の内容が適正なものとなるような労働契約 に関する基本的なルールを示すことが必要である。」と述べられています。ここに触れ られている労働契約法制の基本的性格と内容については、11頁の大きな2番の所で述べ られています。  労働契約法制の基本的性格と内容ですが、(1)のアに民事法規としての性格、労働 契約に関する民法の特別法として位置付けられるということが述べられています。イに 労働基準法との関係がありますが、「労働契約法制を制定するに当たっては、解雇権濫 用法理や当事者の合意の推定規定、任意規定が罰則や監督指導になじまないことが明ら かなように、その基本的性格及び役割が、これら労働基準法令とは異なることを明確に するため、労働基準法とは別の法律として定めることが適当と考えられる。」とありま す。  12頁の上から5行目に「労働契約法制は、紛争が生じた場合に最終的には民事裁判を 通して当事者がその権利を実現し紛争を解決することを目的とするものである」という 性格が述べられています。12頁の(2)は内容について述べられていますが、これにつ いては19頁以降で具体的に触れていますので、そちらで説明します。  13頁の労働契約法制の内容として、総則規定の必要性があります。「労働契約法制を 制定するに当たっては、その基本理念などを定めた総則規定が必要となる。」と。「労 働契約に関する基本理念としては、例えば、労働契約は労使当事者が対等の立場で締結 すべきことを定めることが適当である。」と。「また、労使当事者は信義誠実の原則に 従って権利を行使し、義務を履行しなければならないことや、雇用関係の特質にかんが み労働契約上の権利を濫用してはならないことについても定めることが適当である。さ らに、労働契約においては、雇用形態にかかわらず、その就業の実態に応じた均等対遇 が図られるべきことを明らかにすることが適当である。」と述べられています。13頁の 下のほうの(4)は、労働契約法制における指針の意義が述べられています。「労働契 約法制の制定に当たって、労使当事者間の基本的な権利義務関係を明確にするための規 定は法律で定めるべきであるが、具体的な規範は社会状況の変化等に応じて変化するこ とが多いことから、むしろ労使当事者の参考となるガイドラインとして指針を定めるこ とが、規範が適切に運用されることとなり意義があると考えられる。」と述べられてい ます。  14頁の上から3行目は先ほど申し上げた指針ですが、「労働契約法制における指針 は、それ自体では法的拘束力はないものの、労使当事者の行為規範としての意味はある と考えられる。また、上記のような指針は、合理的な内容のものとして裁判所において 斟酌されることが期待される。」とあります。  3番の労働契約法制の履行確保措置については3行ぐらいあとになりますが、「この 履行は、最終的には民事裁判によって確保されるが、履行に係る行政の関与について も、労使当事者間の労働契約をめぐる紛争が生じ、かつ、労使当事者が行政の指導・助 言等を求めた場合に行うことを原則とする。」さらに3行あとですが、労働契約法制の 履行に係る行政の関与は、同制度と書いてあるのは直上にある個別労働紛争解決制度で すが、この個別労働紛争解決制度に従って行い、監督指導は行わないことが適当である と考えられると述べられています。  4番の労働契約法制の対象とする者の範囲ですが、(1)労働契約・労働者の範囲と しては下から4行目に、「労働契約法制の対象とする者の範囲には、少なくとも労働基 準法上の労働者は含まれると考えられる。」となっています。次の頁に労働基準法の労 働者以外の者についても労働契約法制の対象とすることを検討する必要があると。その 具体的な要件として、15頁の下から3分の1ぐらいの所に(1)〜(5)で述べられていま す。  16頁では、労働者代表制度について述べられています。労働者代表制度については、 現行の労働者代表、労使委員会制度において、労働基準法においては過半数組合、また はこれがない場合には過半数代表者との書面による協定、労使協定を要件として、その 協定の定めるところによって労働をさせても、労働基準法に違反しないという効果を与 えているという点が1点。企画業務型裁量労働制の導入には、労使委員会の決議が要件 とされているということが、現状として述べられています。  (2)として、現行制度の問題点の分析がなされています。いま申し上げた過半数代 表制度のうち、過半数組合がない場合には1人の代表者が当該事業場の全労働者を代表 することとなるが、こうした1人の代表者が当該事業場全体の労働者の利益を代表する ことは困難になってきているとあります。  17頁の(3)は、労働契約法制における労使委員会制度の活用についてです。ア、労 使委員会制度の法制化ですが、「労働者と使用者との間にある情報の質及び量の格差や 交渉力の格差を是正して、労働者と使用者が実質的に対等な立場で決定を行うことを確 保するためには、労働者が集団として使用者との交渉、協議等を行うことができる場が 存在することが必要である。労働組合が存在する場合には、当然、当該労働組合がその ような役割を果たすものであるが、労働組合が存在しない場合においても、労働者の交 渉力をより高めるための方策を検討する必要がある。」ということです。その際常設的 な労働委員会は、当該事業場における労働条件について、さまざまな機能を担うことが できるとあります。また、下から3分の1の所に「このため」とありますが、「常設的 な労使委員会の活用は、当該事業場内において労使当事者が実質的に対等な立場で自主 的な決定を行うことができるようにすることに資すると考えられる。そこで、労働契約 法制において、このような労使委員会が設置され、当該委員会において使用者が労働条 件の決定・変更について協議を行うことが促進されるようにすることが適当である。」 と。2行下においては、「過半数組合が存在する場合にも、その機能を阻害しない形で 労使委員会の設置は認めてよいと考えられる」と。  「なお、労働契約法制の一定の規定について、当該規定と異なる取扱いを認めるため の要件として労使委員会の決議を要求することも考えられ、この場面でも労使委員会の 活用が期待されるとの意見があった。」とも述べられています。  この労使委員会の在り方につきましては、18頁のイで、「労使委員会が当該事業場の 多様な労働者の利益を公正に代表できる仕組みとする必要がある。また、労使当事者が 実質的に対等な立場で交渉ができるような仕組みも必要となる。そこで、労使委員会の 在り方としては、委員の半数以上が当該事業場の労働者を代表する者であることのほ か、労使委員会の委員の選出手続を、現在の過半数代表者の選出手続に比してより明確 なものとすべきである。また、多様な労働者の利益をできる限り公正に代表できるよう な委員の選出方法とすべきと考えられる。そのような選出方法としては、例えば、当該 事業場の全労働者が直接複数の労働者委員を選出することが考えられる。」と述べられ ています。  労使委員会制度の活用については、18頁のウで述べていますが、下から4行目の、 「例えば、就業規則の変更の際に、労働者の意見を適正に集約した上で労使委員会の委 員の5分の4以上の多数により変更を認める決議がある場合に変更の合理性を推定する ことが考えられる。」この点につきましては、29頁以下で、もう一度出てきています。  19頁の1行目、「さらに、労使委員会の活用の仕方としては、これに事前協議や苦情 処理の機能を持たせ、労使委員会における事前協議や苦情処理等が適正に行われた場合 には、そのことが配置転換、出向、解雇等の権利濫用の判断において考慮要素となり得 ることを指針等で明らかにすることが考えられる。」、この点についても、後ほどそれ ぞれの点で触れられています。19頁の真ん中のパラグラフで「また」と書いてあります が、「労使委員会の活用方法を検討するに当たっては、労使委員会が労働組合の団体交 渉を阻害することや、その決議が労働協約の機能を阻害することがないような仕組みと する必要がある。」と。「さらに、労使委員会の決議は、団体交渉を経て締結された労 働協約とは異なり、当然に個々の労働者を拘束したり、それ単独で権利義務を設定した りするものではないことに留意する必要がある。」と述べられています。以上が総論で す。  続いて19頁の下の第2「労働関係の成立」のところで採用内定、試用期間、労働条件 の明示とありますが、まず採用内定に関しましては、就労開始前の労働契約の成立を採 用内定とこの報告書では呼んでいますが、その点に関して20頁の下から7行目の最後 に、「採用内定期間中については労働基準法第20条の適用を除外し、採用内定者が少し でも早い時期から求職活動ができるようにすることが適当である。」と書かれていま す。労働基準法の20条というのは、解雇予告の条文です。  21頁は、採用内定の取消しのことについて触れられていますが、これについては上か ら3分の1の所に「そこで」があります。「採用内定取消について、一般的な解雇権と は別個の留保解約権が認められるには、それを行使する事由が採用内定者に対して書面 で明示されていることが必要とすべきである。すなわち、採用内定に際して留保解約権 の存在とその事由が書面で明示されている場合には、当該留保解約事由が解約権留保の 趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当と認められるときに限 り、その事由に基づきなされた留保解約権の行使は、権利の濫用には当たらず有効であ ることを法律で明らかにすることが適当である。」と。「これにより、採用内定者及び 使用者に対して、客観的に合理的と認められ社会通念上相当と認められない事由に基づ く採用内定取消は権利の濫用として無効となることが周知され、恣意的な採用内定取消 が少なくなるというメリットがある。」と述べられています。22頁の上から3分の1ぐ らいに「さらに」とありますが、「採用内定当時に使用者が知っていた事由又は知るこ とができた事由による採用内定取消は、無効とすることが適当である。」とあります。  続いて22頁〜23頁にかけては、試用期間についてです。23頁の上から4分の1の所で すが、「試用期間については、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認めら れることから、著しく長い試用期間を定めることは労働者を長期間不安定な地位のまま に置くこと、また、その間は、本採用後よりも賃金その他の労働条件が低い水準である 傾向が強いことから、労働契約において試用期間を設ける場合の上限を定めることが適 当」とされています。23頁の下から3分の1の所に、「また、このような試用期間の適 用を受けるか否かが労働者に対し明らかになっていることが必要と考えられることか ら、試用期間であることが労働者に対して書面で明らかにされていなければ、通常の解 雇よりも広い範囲における解雇の自由は認められないとすることが適当である。」とも 述べられています。  23頁の下から24頁にかけては、労働条件の明示です。ここにつきましては、24頁の上 から6行目に「そこで」という部分がありますが、「実際に適用される労働条件が、労 働契約の締結時に労働者に明示された労働条件に達しない場合には、労働者は、明示さ れた労働条件の適用を使用者に対して主張できることを明確にすることが適当である。 」と述べられています。  24頁のいちばん下の行ですが、第3ということで「労働関係の展開」になっていま す。25頁からは約10頁にわたり、就業規則について述べられています。(1) 労働基 準法上の就業規則の作成手続、これは現行制度の説明ですが、その作成・変更の際には 過半数組合又は過半数代表者の意見を聴取することが労働基準法上義務づけられている と。その2行あとで、一人の労働者代表が当該事業場全体の労働者の利益を代表するこ とは困難になってきていることから、25頁の真ん中より少し上の「そこで」と始まる段 落で、「就業規則の作成に当たっては、現行の過半数組合又は過半数代表者からの意見 聴取のほか、労使委員会が当該事業場の全労働者の利益を公正に代表できるような仕組 みを確保した上で、過半数代表者からの意見聴取に代えて労使委員会の労働者委員から の意見聴取によることを可能とすることや、意見聴取の手続に関する指針を定めること が適当である。」と述べられています。  25頁の下のほうからは、就業規則と労働契約の関係が述べられています。アでは、就 業規則の最低基準効についてです。この最低基準効というのは、労働基準法第93条は就 業規則で定める基準に達しない労働条件は、就業規則で定める基準によるべきこと、こ れを最低基準効と呼んでいます。この条文については26頁にありますが、労働基準法か ら労働契約法制の体系に移すことが適当であると述べられています。  26頁イ、就業規則について労働契約の内容となる効力について述べられています。ま ず、26頁の真ん中の辺りですが、「その後の累次の最高裁判決においても同様の判示が なされており、就業規則の内容が合理的である限り、労使当事者に労働条件は就業規則 によるとの意思があるとして、労働者が就業規則の個別の規定を現実に知っていると否 とにかかわらず、就業規則の内容が労働契約の内容になるということは確立した判例で あり、また、実際にも労働条件は就業規則によって定められているという事実は労使当 事者にも広く認識されているものと考えられる。したがって、この法理を法律で明らか にすることが適当である。」と述べられています。下から5行目では、「そこで、就業 規則の内容が合理性を欠く場合を除き、労働者と使用者との間に、労働条件は就業規則 の定めるところによるとの合意があったものと推定するという趣旨の規定を設けること が適当である。この場合、この推定は反証を挙げて覆すことができる。」と述べられて います。  27頁は、就業規則について労働条件を変更する効力についてです。(ア)は、判例法 理の整理・明確化です。上から3分の1より少し下に、この就業規則による労働条件の 変更が合理的なものであれば、それに同意しないことを理由として、労働者がその適用 を拒否することはできないという就業規則の不利益変更に関する判例法理が確立してお り、これを法律で明らかにすることが適当であると述べられています。27頁の下のほう から案(1)と、28頁の真ん中辺りに案(2)がありますが、その判例法理を明らかにする場 合の具体的方策について検討が加えられているところです。  29頁(イ)就業規則の変更による労働条件の不利益変更についてですが、これについ ては29頁で判例の紹介がなされています。30頁の上から6行目に「そこで」とあります が、「一部の労働者のみに対して大きな不利益を与える変更の場合を除き、労働者の意 見を適正に集約した上で、過半数組合が合意をした場合又は労使委員会の委員の5分の 4以上の多数により変更を認める決議があった場合には、変更後の就業規則の合理性が 推定されるとすることが適当である。」ということです。  31頁の下から9行目の「さらに」の所では、「過半数組合の合意を推定の要件とする ことに関しては、少数組合の意見が反映されなくなるという懸念もあり得るが、過半数 組合が全労働者の意見を適正に集約することが推定の前提となっており、また、別途少 数組合には独自の団体交渉権の行使として意見表明の機会が保障されている。」という ことです。  32頁の下半分から34頁にかけましては、就業規則の効力の発生に必要な要件について です。まずアの就業規則の最低基準効の効力発生要件につきましては、実質的な周知が 必要であるとすることが適当であると述べられています。33頁のイで、労働契約の内容 となる効力の発生に必要な要件につきましては、下から3分の1の所で労働基準法106 条1項に定める方法による周知を必要とすることが適当であると考えられると書いてあ ります。また、下から4分の1の「そこで」から始まるパラグラフですが、「現行の労 働基準法上必要とされている過半数組合等からの意見聴取を、拘束力が発生するために 必要とすることが適当である。これについては、常時10人以上の労働者を使用しない小 規模事業場においても妥当するので、労働基準法上の義務の有無とは無関係に、過半数 組合等からの意見聴取を就業規則の拘束力が発生するために必要とすることが適当であ る。なお、労働者に対する意見聴取の手続としては、個々の労働者に対して就業規則の 内容を周知した上で意見を募集する措置を講ずることも認めて差し支えないと考える。 」と述べられています。34頁の上から8行目辺りでは、行政官庁への届出を就業規則の 拘束力が発生するために必要な要件とすることが適当であるとも述べられています。  34頁から38頁にかけましては、2番で雇用継続型契約変更制度について検討が加えら れています。(1)問題の所在ですが、労働契約の個別化に伴い、個別契約において労 働者の職務内容や勤務地が特定される場合が増えていることと、集団的な就業規則の変 更法理では対応できないため、使用者は、当該労働者に労働条件の変更を提案し、労働 者がこれに同意しない場合には、解雇することがあるということです。こうした問題の 所在に引き続きまして、35頁(2)検討の方向という所では、下から8行目に「そこで 」とありますが、「このような労働契約の変更の必要が生じた場合に、労働者が雇用を 維持した上で労働契約の変更の合理性を争うことを可能にするような制度、雇用継続型 契約変更制度を設けることが適当である。」と述べられています。  36頁と37頁では、案(1)と案(2)ということですが、これがどういう制度なのかという のが2つの案で示されています。案(1)は、「労働契約の変更の必要が生じた場合には、 使用者が労働者に対して、一定の手続にのっとって労働契約の変更を申し込んで協議す ることとし、協議が整わない場合の対応として、使用者が労働契約の変更の申入れと一 定期間内において労働者がこれに応じない場合に効力が生ずることとなる解雇の通告を 同時に行い、労働者は労働契約の変更について異議をとどめて承諾しつつ、雇用を維持 したまま当該変更の効力を争うことを可能にするような制度を設ける。」というもので す。案(1)におきましては、労働者が異議をとどめて承諾した場合には、解雇の通告は 効力を生じないこととするということも、併せて述べられています。  案(2)は案(1)と異なりまして、「労働契約の変更の必要が生じた場合には、変更が経 営上の合理的な事情に基づき、かつ、変更の内容が合理的であるときは、使用者に労働 契約の変更を認める制度を設ける。」というものです。  38頁、配置転換についてです。38頁の下から3行目で、特に転居を伴う配置転換が労 働者に大きな影響を与えることと、配置転換は使用者の経営上の必要性等に基づき様々 な態様で柔軟に行う必要があることの両方を考慮すると、人事権を過度に制約せず、こ れとの調整を図る手法として、「雇用関係における権利濫用法理を一般的に法律で規定 しつつ、具体的な使用者の講ずべき措置は指針で対応することが、最も適当である。」 と述べられています。  出向につきましては、39頁のいちばん下の行から42頁にかけて述べられています。出 向命令の効力については、40頁の真ん中より少し下に「そこで」がありますが、「使用 者が労働者に出向を命ずるためには、少なくとも、個別の合意、就業規則又は労働協約 に基づくことが必要であることを法律で明らかにすることが適当である。」と考えてい ます。41頁(2)で、出向をめぐる法律関係につきましては、次の行で、「出向につい ては、出向労働者と出向元・出向先との間の権利義務関係が不明確となりがちであるこ とから、これら三者が何も合意していない場合に適用されるルールを定めることが紛争 の未然防止の観点から有益であるとの意見があった。」とあります。また、下から3分 の1の「そこで」という所には、「出向労働者と出向元・出向先との間の権利義務関係 を明確にするため、出向労働者と出向元との間の別段の合意がない限り、出向期間中の 賃金は、出向を命じる直前の賃金水準をもって、出向元及び出向先が連帯して当該出向 労働者に支払う義務を負うとの任意規定を設けることが適当である。」とあります。  42頁の真ん中からは、転籍について触れられています。転籍は出向と異なり、転籍元 と転籍先との合意により、労働者と転籍元との労働関係を終了させて、新たに転籍先と の間で労働関係を成立させるものですが、これについては42頁の下から3分の1の所に 「そこで」とありますように、「転籍については、労働者の実質的な同意を確保する観 点から、使用者は、労働者を転籍させようとする際には、転籍先の名称等々の労働条件 について書面を交付することにより労働者に説明した上で労働者の同意を得なければな らないこととし、書面交付による説明がなかった場合や転籍後に説明内容と現実とが異 なることが明らかになった場合には転籍を無効とすることが適当である。」とありま す。  43頁の6では、休職について述べられています。休職については44頁のいちばん上の 行から、労働基準法89条に定める就業規則の必要記載事項にも追加することが適当であ るとありますが、同趣旨の記述が出向または配置転換の所にもあります。  44頁〜46頁にかけては、服務規律と懲戒についてです。(1)懲戒の効力発生要件の 所の最後の2行ですが、「そこで、使用者が労働者に懲戒を行う場合には、個別の合 意、就業規則又は労働協約に基づいて行わなければならないとすることが適当である。 」とあります。また(2)の懲戒及び服務規律の内容につきましては、45頁の上から4 行目で、「少なくとも恣意的な懲戒が行われないようにするためには、雇用関係におけ る権利濫用法理を一般的に法律で定めることが適当である。」とあります。(3)懲戒 の手続ですが、下から8行目辺りに、懲戒解雇、停職、減給のような労働者に与える不 利益が大きい懲戒処分については、労働者の氏名や懲戒事由等を書面で労働者に通知さ せることとし、これを使用者が行わなかった場合には、懲戒を無効とすることが適当で あると述べられています。  46頁の8で昇進、昇格、降格について述べています。具体的には47頁の上から2行目 ですが、「昇進、昇格、降格については、一般に、使用者の広範な裁量権が認められる とされているが、人事権の濫用は許されないことを明確にすることが適当である。」と されています。さらに職能資格の引下げとしての降格については、就業規則の規定等の 明確な根拠が必要であるとすることが適当であるとも述べられています。  9番は、労働契約に伴う権利義務関係についてです。(1)の就労請求権について は、下から7行目から始まる所ですが、いずれにしても就労請求権については法律で規 定することは、その解釈をめぐって新たな紛争を生じかねず、適当ではないと考えられ るとあります。  労働者の付随的義務については、アで兼業禁止義務、イで競業避止義務、ウで秘密保 持義務について述べられています。48頁アの兼業禁止義務につきましては、真ん中より も少し下の所に、「労働者の兼業を禁止したり許可制とする就業規則の規定や個別の合 意については、やむを得ない事由がある場合を除き、無効とすることが適当である。」 とあります。また49頁イの競業避止義務については、ちょうど真ん中辺りに「そこで」 とありますが、「労働者の在職中の競業避止義務については、民法の一般原則に委ね、 特段の規定を設けないことが適当である。」とあります。50頁の上から6行目の退職後 の競業避止義務については、「まず、労働者に退職後も競業避止義務を負わせる場合に は、労使当事者間の書面による個別の合意、就業規則又は労働協約による根拠が必要で あることを法律で明らかにすることが適当である。」と述べられており、さらに内容に ついては、その下のパラグラフで、具体的な検討が加えられています。  50頁下から3行目のウで秘密保持義務に関して検討が加えられています。51頁の下か ら3分の1ぐらいのパラグラフですが、「不正競争防止法の保護する範囲以上に労働者 に退職後も秘密保持義務を負わせる場合には、労使当事者間の書面による個別の合意、 就業規則又は労働協約による根拠が必要であることを法律で明らかにすることが適当で ある。」とあります。さらに具体的な中身について、それに引き継いで検討が加えられ ています。  52頁の使用者の付随的義務としまして、安全配慮義務、職場環境配慮義務、個人情報 保護義務の3点が触れられています。使用者の安全配慮義務については、「安全配慮義 務は、その保護法益が重要であることから、これを法律で明らかにすることが適当であ る。」とあります。職場環境配慮義務については慎重に検討をする必要があると述べら れております。53頁ウの個人情報保護義務については、真ん中より少し上に、どのよう な規模の企業も労働者の個人情報を適正に管理しなければならないことを法律で明らか にすることが適当であると考えられています。  53頁、10の労働者の損害賠償責任については、(1)で労働者の損害賠償責任につい て検討が加えられ、54頁(2)ですが、留学・研修費用の返還について触れられていま す。これについてはちょうど真ん中辺りに「そこで」がありますが、「労働基準法第16 条の趣旨に留意しつつ、企業が留学・研修制度を設ける意欲を阻害しないよう、業務と は明確に区別された留学・研修費用に係る金銭消費貸借契約は、労働基準法第16条の禁 止する違約金の定めに当たらないことを明らかにすることが適当である。」とありま す。  55頁からは「労働関係の終了」について述べられています。(1)が解雇権濫用法理 についてです。「労働基準法第18条の2として法制化された解雇権濫用法理について は、予測可能性を高める観点から要件をより具体化すべきであるとの意見が出された。 」とあります。これに対して56頁の1行目からですが、「法律で解雇要件を詳細に具体 化することは現実的に困難であるが、客観的に合理的な理由となる解雇事由を分類しそ の基本的な類型を明らかにすることは、解雇の有効性の判断の予測可能性を向上させ、 紛争を予防・早期解決するために必要である。そこで、解雇は、労働者側に原因がある 理由によるもの、企業の経営上の必要性によるもの又はユニオン・ショップ協定等の労 働協約の定めによるものでなければならないことを法律で明らかにすることが適当であ る。」とあります。下から3分の1の所ですが、「上記のとおり解雇事由の基本的な類 型を示すことのほか、解雇に当たり使用者が講ずべき措置を指針等により示すことが適 当である。」とも述べられています。  58頁では整理解雇について検討が加えられています。まず整理解雇の四要件があると いうことで、真ん中辺りで、整理解雇の四要素説があるということが触れられていま す。研究会の報告では、59頁の真ん中より少し上の「そこで」という所で、「解雇権濫 用の判断の予測可能性を向上させて紛争を予防・早期解決をするために、整理解雇につ いて労働基準法第18条の2にいう解雇権濫用の有無を判断するに当たって考慮に入れる べき事項として、人員削減の必要性、解雇回避措置、解雇対象者の選定方法、解雇に至 る手続等を法律で示すことが必要である。」とあります。具体的には59頁の下のほうの (1)〜(4)で整理されています。  60頁は、解雇の金銭解決制度についてです。これについては下から3分の1ぐらい で、「本研究会においては、解雇紛争の救済手段の選択肢を広げる観点から、仮に解雇 の金銭解決制度を導入する場合に、実効性があり、かつ、濫用が行われないような制度 設計が可能であるかどうかについて法理論上の検討を行うものである。」とあります。  61頁の(1)労働者からの金銭解決の申立てについての検討で、真ん中辺りにアがあ りますが、一回的解決に係る理論的考え方です。2つ目のパラグラフで、「例えば、従 業員たる地位の確認を求める訴えと、その訴えを認容する判決が確定した場合において 当該確定の時点以後になす本人の辞職の申出を引換えとする解決金の給付を求める訴え とを同時に行うものと整理することも考えられるので、紛争の一回的解決に向け、同一 裁判所での解決の手法について検討を深めるべきである。」とあります。イの解決金の 額の基準につきましては、62頁の上から3行目ですが、「各個別企業においては、事前 に労使間で集団的に希望退職制度を取り決め、退職金の割増率等を定める事例が多くあ ること等にかんがみ、解雇の金銭解決の申立てを、解決金の額の基準について個別企業 における事前の集団的な労使合意がなされていた場合に限って認めることとし、その基 準をもって解決金の額を決定するなどの工夫をすることも可能であると思われる。」と あります。  続きまして(2)の使用者からの金銭解決の申立て、です。これについては62頁のい ちばん下のアで「違法な解雇が金銭で有効となる」、「解雇を誘発する」等の批判につ いて述べられておりまして、これについては63頁の上から4行目ですが、「使用者から の金銭解決の申立てについては、例えば、労働者からの申立ての場合と同様、解雇が無 効であると認定できる場合に、労働者の従業員たる地位が存続していることを前提とし て、解決金を支払うことによりその後の労働契約関係を解消することができる仕組みと して、違法な解雇が金銭により有効となるものではないこととすることが適当である。 」と述べられております。  また、次のパラグラフですが、いかなる解雇についてもこの申立てを可能にするもの ではなく、人種、国籍、信条、性別等を理由とする差別的解雇などについては、こうし た金銭解決の申立ては認めないこととすることが適当であるとあり、「金銭さえ払えば 解雇ができるという制度ではないことが明確になる。」と述べられております。また、 「これらの工夫により、安易な解雇を誘発するおそれはなくなるものと考えられる。」 とも述べられております。  イで、使用者による解雇の金銭解決制度の濫用の懸念については、「そもそも使用者 の申立ての前提として、個別企業における事前の集団的な労使合意がなされていること を要件とすることが考えられる。これにより、労使対等の立場であらかじめ合意した内 容に沿った申立てのみが可能となるため、多くの懸念が払拭できるものと考えられる。 」と述べられております。  ウの解決金の額の基準については、64頁の1行目ですが、「個別企業において労使間 で集団的に解決金の額の基準の合意があらかじめなされていた場合にのみ申立てができ る」こととすると述べられております。8行目の「また」のところでは、「解決金の額 が不当に低いものになることを避けるため、使用者から申し立てる金銭解決の場合に、 その最低基準を設けることも考えられる。」とも述べられております。  (3)の双方の申立ての関係については、「しかし」というところで、「労働者から の金銭解決の申立てを認めないにもかかわらず使用者からの金銭解決の申立てを認める ことは、著しく労使間の均衡を欠くものと考えられるため、許されないこととすべきで ある。」とも述べられております。  64頁のいちばん下の行から、合意解約、辞職についてです。65頁の1行目の(1)使 用者の働きかけに応じてなされた労働者の退職の申出等については、その次の7行目か らですが、労働者が合意解約の申込みや辞職の意思表示を行った場合であっても、それ が使用者の働きかけに応じたものであるときは、一定期間その効力を生じないことと し、その間は労働者が撤回することができるようにすることが適当であって、その期間 の長さについてはクーリングオフの期間を参考にして検討すべきであると述べられてお ります。続いて65頁の下から3行目は、書面による退職の意思表示等ですが、これにつ いては66頁で、慎重に検討すべきであると述べられております。  66頁の真ん中からは、「有期労働契約」について述べられております。(1)で、有 期労働契約の効果と労働基準法第14条の関係ですが、労働基準法第14条が立法趣旨とし た長期の労働契約における人身拘束の弊害を排除するものであるという認識の下、67頁 の真ん中辺りの(2)の見直しの考え方においては、労働基準法第14条の規定は、労働 者の退職の制限に対する規制であることを明確にすることが考えられる。ただ、次のパ ラグラフの下のほうで、雇止めの効果については、有期労働契約の手続と併せて検討す ることが適当であると述べられております。  続いて68頁の有期労働契約に関する手続です。(1)で、契約期間の書面による明示 ですが、「労働契約の期間に関する事項は、労働基準法第15条により使用者が労働契約 の締結に際し書面で明示しなければならないこととされている。ここで、使用者が契約 期間を書面で明示しなかったときの労働契約の法的性質については、これを期間の定め のない契約であるとみなすことが適当である。」と述べられております。  また、最後の行の(2)では、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準に ついてです。69頁の上から6行目の真ん中、「そこで、労働契約法制の観点からもこの ような更新の可能性の有無や更新の基準の明示の手続を法律上必要とすることとし、使 用者がこれを履行したことを雇止めの有効性の判断に当たっての考慮要素とすることが 適当である。この基準に定める手続を求めることによって、労働者が更新の可能性を予 測しやすくなり、判例法理が働くトラブルが少なくなり、より安定的に有期労働契約が 利用されることにつながることが期待される。」と述べられております。  なお、69頁の下から3分の1のところですが、「契約を更新することがあり得る旨が 明示されていた場合には、人種、国籍、信条、性別等を理由とする差別的な雇止めや、 有期契約労働者が年次有給休暇を取得するなどの正当な権利を行使したことを理由とす る雇止めはできないこととすることが適当である。」とも述べられております。  続いて70頁では、下から3分の1、有期労働契約に関する留意点として、(1)試行 雇用契約について述べられています。71頁の上から2つ目のパラグラフ、「これについ ては」で始まるところですが、「試行雇用契約と試用期間との区別を明確にするため、 有期労働契約が試用の目的を有する場合には、契約期間満了後に本採用としての期間の 定めのない契約の締結がない限り、契約期間の満了によって労働契約が終了することを 明示するなど、一定の要件を満たしていなければ試用期間とみなすことが適当である。 」と述べられております。  続いて72頁で、(3)の解雇ですが、これは有期契約労働者の解雇について述べられ ているところで、「有期契約労働者の契約期間中における解雇については、民法第628 条に基づきやむを得ない事由が必要であるが、」その後6行ほど飛ばして、「同条に基 づき労働者が使用者に対して損害賠償請求をする場合の、使用者の過失についての立証 責任を転換することが適当である。」と述べられております。  73頁は、第6として「仲裁合意」について記述されていて、1番で、仲裁法附則第4 条の立法経緯が述べられており、2番で、検討の方向ですが、「将来において生ずる個 別労働関係紛争を対象とする仲裁合意の効力については、個別労働紛争解決制度や労働 審判制度の活用状況、労働市場の国際化等の動向、個別労働関係紛争についての仲裁の ニーズ」等々を考慮して、「労働契約上の問題として引き続き検討すべきであり、この ことを法律上明確にすることが適当である。」と述べられております。  最後の第7が、「労働時間法制の見直しとの関連」で最後の頁、最後のパラグラフ で、「仮に労働者の創造的・専門的能力を発揮できる自律的な働き方に対応した労働時 間法制の見直しを行うとすれば、労使当事者が業務内容や労働時間を含めた労働契約の 内容を実質的に対等な立場で自主的に決定できるようにする必要があり、これを担保す る労働契約法制を定めることは不可欠となるものである。」と述べられております。  続いて最後の資料No.12、「労働条件分科会の今後の審議の進め方について(案)」 ですが、1番、平成18年7月頃に中間答申をとりまとめることを目途に議論を進める。 その後法案提出に向けて更に議論を深める。2番、平成17年10月上旬から、月2回程度 のペースで審議会を開く。3番、議論の進め方としては、労働契約法制の在り方に係る 問題について、議論を一巡させ、その後に関連する問題も含めて更に議論を深める。更 に労働契約法制の在り方に係る問題を議論するに当たっては、労働関係の成立・展開・ 終了の各段階での検討項目、各段階に共通する検討項目として、どのようなものが考え られるかについて、本分科会として確認し、確認された検討項目ごとに分科会としての 意見の集約を図るように努めるというものでございます。以上で御説明を終らせていた だきます。 ○西村分科会長  ただいまNo.4からNo.7を中心にして、事務局から説明をいただいたわけですが、資 料の8、9、10は概要です。ちょっと省かれましたね。いまの点について、何か御質問 があれば出していただきたいと思います。No.12については、調査、審議を進める上で 重要なものですので、さまざまな御意見があろうかと思います。御自由に御発言をお願 いいたします。 ○須賀委員  いま本文に基づいて、詳細な説明がなされたわけですが、非常に広範にわたっており まして、是非この内容について、私ども労働側からいろいろな質問をさせていただきた いと思いますので、十分な時間をとっていただくようにお願いしたいと思います。その 上で各委員のほうから質問をさせていただきたいと思います。  それでは口火を切るということで、報告書の中の至る所に、「指針で示すことが有効 である」とされているわけですが、基本的に労働にかかわる法律というのは、いろいろ な意味で、この場もそうなのですが、公労使三者による審議会等で議論をして、その上 で必要な法律を立法させていくという意味で、国会での議論にそれを委ねていくという プロセスで、労働分野の法律は成り立っているという認識をもっていますが、この指針 で、そうしたことがきちんと担保できるのかどうかということに少し疑問をもっており ます。この指針そのものも、そういうプロセスを経ないということが一般的で、本当の 意味での内容の適切性があるのかどうかということも、疑問が残るところです。  この研究会で、この法律と指針の関係、法的な効果ということだけではなくて、具体 的に策定されるまでのプロセスの違いというようなことについても、話し合ったのかど うか、この点について説明いただけないかと思います。 ○秋山調査官  プロセスの違いという点、御質問がちょっとよくわかりにくかったのですが、研究会 の議論の中では、労働契約法制の労働関係の成立から展開、終了と、さまざまな項目が ありますので、基本的な民事的な契約の要件と効果、これは法律で定めるべきだろう と。ただ、例えば整理解雇の四要件、四要素をとっても、具体的にどういったことを意 味するかということは、やはり法律ではあまり必ずしも書き得ないところがあるだろ う。そういうものは指針に一部委ねるところがあっても仕方がないのではないかという ことで、別に、至るところに指針が出てきているわけではないと思います。  プロセスということになれば、当然それは法律であれば、最終的に国会の議決をいた だくわけですが、指針は通常は行政庁が決定いたします。そこはまた今後この審議会で ご議論いただいて、どういった労働契約法制が必要かということを議論いただく上で、 もし必要な事項があれば、指針に入れるということもお決めいただければと存じます。 ○松井審議官  指針をどのように作るかについては、報告書では触れておりません。学者先生に議論 していただいておりますので、13頁にありますように、指針の意義は、ここに書いてあ るとおりで、具体的な規範は社会情勢の変化等に応じて変化することが多いことから、 むしろ労使当事者の参考となるガイドラインとして指針を定めるという意義づけがされ ておりまして、手続的にどうするかというのは、全く議論の対象になっておりません。 ○須賀委員  そうした場合、この指針の法的な効果というのは、どういう位置づけになるのでしょ うか。 ○松井審議官  研究会の報告書への質問でしょうか。ここでの御意見でしょうか。どちらですか。 ○須賀委員  いえいえ。 ○松井審議官  法的効果については、言及しております。つまり参考になるということですね。 ○大西監督課長  すみません。14頁の3行目で、労働契約法制における指針は、それ自体で法的拘束力 はないものの、労使当事者の行為規範としては意味のあるものと考えられる。指針を合 理的な内容のものとして、裁判所において斟酌されることが期待されると、報告書では 述べられております。 ○紀陸委員  資料12に、今後の本分科会における審議の進め方、というものがありますが、審議の 進め方について、冒頭に確認させていただきたいと思います。ここでの論議が、契約法 制の在り方を考えるということですが、私どもとしては、ここにある研究会報告書の内 容を、いま須賀委員が言われたように、この頁で何を言っているかとか、そういうこと を確認するためにやるのではなくて、ここでは、特に総論だとか目次の部分、各論部分 にいろいろな項目がございますが、このそれぞれの大きなアイテムについて論議をす る。総論は、またこれは基本の精神の話だから別だと思うのですが、各論部分の以降、 これはこういう項目について論議をする際の参考の資料であると、そういう認識を私ど もはもっているのですが、その場合に、論議の材料として、この中で、報告書ではこう いう論議がされているなという位置づけにすべきであると考えているのですが、そうい うことでよろしいのかどうか。  その場合に、各論の項目について、こういう内容でよいのかどうかとか、本当は最初 にそれがあって、その順序はいろいろあるのでしょうけれども、そういうことをまず確 認した上で、論議に入るというのが筋かと思うのです。ここの資料の12では、各論的な もののアイテムが前提になっているようですが、本当はそこのところを確認した上で、 論議に入るというのが手順ではないかと思っているのですが、その辺はいかがでしょう か。 ○西村分科会長  労働側、この点についていかがですか。 ○小山委員  最初に、いま研究会の報告をいただきましたから、その疑問点なり、議論された経過 を、私は承知していないものですから、そのことをまず御質問させていただきたいとい うのが前提の話で、これからの進め方をどうするかというのは、その上でご議論をいた だいたほうがいいのではないかと思うのです。 ○須賀委員  もう一度念を押すのではないのですが、一応研究会の報告そのものが、大変ボリュー ムも大きくて、それぞれのいろいろな提起がされている中身、率直にいって読んだだけ ではわからない部分がたくさんあります。あくまでもこれは研究会の報告でございます という位置づけになるのかもしれませんが、これをどのように位置づけていくかについ ては、別段意見をもっているわけですが、まずこの報告そのものの中身について、どう いう議論があったのか、あるいは、このことに関して、具体的な内容で私どもが理解で きない部分もありますので、そういう内容について、まず理解させていただきたいとい う意味で、報告書をよく理解するという意味で、最初に質問を継続させていただきたい と思っているのですが、いかがでしょうか。 ○西村分科会長  最初の会ですので、また事務局からこの報告書について、かなり詳細な報告をいただ きました。それをよく理解するという点では、まず最初に、質問があれば質問をお受け したいと思います。紀陸委員のおっしゃる、今後の進め方というのは非常に大事な点 で、質問が一応一巡した段階で今後の審議の進め方に入りたいと思いますが、いかがで しょうか。 ○紀陸委員  質問はどのくらいあるのですか。たくさんあるのでしょう。何回くらい。 ○須賀委員  際限がないくらいたくさんあります。 ○紀陸委員  だから、それをやっていても。よくわかりませんけれども、それに時間というかです ね。 ○新田委員  紀陸委員がおっしゃったように、私が考えているのは、まず報告書があって、報告書 から読み取れること、全然読み取れないこと、何を考えてここに来ているのかとか、あ るいは、報告書の中間報告のところでも、希望を言ったのですが、いろいろな事例を並 べて示してくださいよというようなこともあまりないし、どうなのかなというのは、い ろいろなことがあるのです。  その上で申し上げれば、これは先ほどおっしゃったのと一緒なのですが、この報告書 がベースで、労働契約法の議論をするということではないということを、まず私は考え ていますし、そうでなければならない。その上で、それにしても、これだけのことが研 究会で出されたわけですから、まずそこから、その出されたものをもう一度しっかりと 受け止めていきたい。だから質問をしたい。それで質問のところを過ぎたところで、例 えば資料12で出されているようなところを確認し合えばいいのではないかと考えており ます。なぞるようなことですけれども。 ○西村分科会長  どうぞ質問していただいて。 ○小山委員  たくさんある中で、労使委員会についてですが、この報告書の中で読み取れないの は、労使委員会は、どういう場合に、誰が設置するのかということです。使用者が設置 するものなのか、あるいは労働者側が求めて設置するものなのか。あるいは法的な義務 として設置するものなのか。ちょっとそこのところが明確に理解できなかったところが 1つあります。  2つ目は、この中で、「労働者側委員」という言い方をしているわけですが、その場 合の労働者というのはどの範囲を指すのかということなのですが、いわゆる管理職とい われる人たちも労働者ですし、これは、そういう管理職も含めて労働者という認識で、 労働者委員というふうに見られるのか、使用者側というのはどこまでを使用者側という のかというのも、あまり明確にされていないのではないかということです。  あまり一遍にやってもアレなので、ちょっとその2つについてお願いします。 ○大西監督課長  報告書の内容について、記述について御説明させていただきます。まず第1点目の、 誰が設置するのかについては、明確な結論は書かれていないように読み取れますが、18 頁のウで、労使委員会制度の活用について「このような労使委員会について、使用者が これを設置するとともに」という表現がありますので、ここに書かれているところくら いかなというのが、この報告書の中身でございます。 ○小山委員  使用者が設置する。 ○大西監督課長  「設置するとともに」という表現があるので、多分小山委員がおっしゃっているよう な、誰が設置するというところについては、明確な記述はございません。ここに参考に なるような記述があるという理解でございます。  2点目の、義務づけかどうかについては、義務であるということについては一言も触 れていないということでございます。  労働者の代表とはいかなるものか、使用者の代表とはいかなるものかについても、詳 細に触れているところはございません。当該事業場の労働者を代表する者とか、労働者 の意見を適正に集約した上でとか、そういうような点が記載されているのにとどまりま す。 ○新田委員  関連していいですか。設置のところですが、いまお話があったように、18頁に書かれ ているだけだということですが、その設置、例えば義務、法律で作りなさいというよう なことも含めて、委員会ではどんな議論があったのですか。なかったですか。 ○秋山調査官  18頁のウの最初のパラグラフですが、使用者が労使委員会を設置するとともに、労働 条件の決定・変更に関する協議を行うことを促進するためには、ということで、義務づ けではなくて、やはり民事法上のインセンティブを与えて、設置を促進して労働条件の 決定について話合いを進めていくことが適当だろうと、基本的にそういう方向でのご議 論がございました。 ○新田委員  委員会の方向性はそういうことだということですか。 ○秋山調査官  研究会でのご議論です。 ○小山委員  労使委員会の関係ですが、労使委員会の協議が適正でなかったり、その決定等につい て、労働者が問題であるということで訴える、訴訟を起こすという場合、普通は会社に 対する訴訟があるのですが、この場合は、労使委員会に対する訴訟ということについ て、あるいはその委員個人に対する訴訟ということについて検討されたのか、検討され たとすれば、どんなご議論があったのか教えていただきたいと思います。 ○秋山調査官  特にそのような検討はございませんでした。 ○小山委員  全く話はない。 ○秋山調査官  特段そのような、訴訟の相手方ということに関しては検討は特にございませんでし た。 ○新田委員  この考え方を具体的に動かしていく基本に、労使委員会がありますね。この研究会の 報告では、現場で具体的に動かすのは労使委員会ですね。法律で決められることを盛り 込みながらということですが、そうすると、私は労働組合しか経験がありませんが、労 使委員会にかける案件、就業規則の変更など、意見を聞くというときに、例えば研究会 ではどのように具体的にイメージして議論されたのかを聞きたいのです。例えば労働 者、働いている人たちの意見を聞きましょうというときに、労側も使用者側の委員も並 んで、労使委員会のメンバーが一緒に聞くのですか、どうするのですか。労働組合は経 営側の提案を受けて、組合員に説明して、どうだ、こういうことだと言って、団体交渉 しますね。どういうイメージで労使委員会を具体的にイメージされて、現場で動かして いこうという議論があったのですか。ここは全然受け取れないのです。わかりますか。 ○大西監督課長  報告書の記述でお答えさせていただきたいと思いますが、1箇所、25頁で、就業規則 の作成手続のところではありますが、過半数代表者からの意見聴取に代えて、労使委員 会の労働者委員からの意見聴取によることを可能とするということだということで。 ○新田委員  ちょっと大きく。 ○大西監督課長  25頁のちょうど真ん中のところですね。ここで、就業規則の作成で、過半数代表者の 意見を聞けというのが基準法にありますが、この部分については、労働者委員からの意 見聴取によることだということで、新田委員からの話では、ここは労働者委員から聞け ということが書いてございます。そのほかの所には、労使委員会の決議というような整 理がなされておりますので、そのほかの場面では、労使が並んで座って聞くというか、 議論をすることを前提に検討が進められ、このような報告書になったものと考えられま す。ここの部分だけ違っています。 ○石塚委員  関連していいですか。例えば労使委員会が選ばれて委員が出てきました。それである 案件を議論しました。その案件について、労働者側、従業員が必ずしも一致した意見で ない、意見が分かれているケースは、容易に想定されますが、そのときに、労働組合で あれば、意見の不一致を、いろいろ議論を重ねていって一致するように努力するわけで す。それで最終的に、これでいいですねということで、形式的には過半数の議決になり ますが、かなり職場に対して、こういう理由でこういう案件があるからこういうふうに したいと思うけれども、どうでございましょうかということで、調整をしているわけで す。  労働組合のプロセスというのは大体そういうふうになっていますが、労使委員会は全 く違うのです。代表が出てきました、代表の担保の問題は別にして、意見の食い違いが あったときに、単に労使委員会で過半数をとればそれでOKだというのは、少し乱暴す ぎないかなということがあって、そのイメージでいいのかどうか。その辺のところを、 具体的にお聞かせ願いたいのですが。これは研究会としてどのような議論をしたかとい うことです。 ○大西監督課長  研究会のご議論の内容ですが、決議要件は一応5分の4となっているものが1点と、 労使委員会の意見の集約プロセスについては、ところどころで研究会の報告の中で、 「全労働者の意見を適正に集約した上で」というフレーズが出てきておりますが、石塚 委員がおっしゃったような、具体的にどのようにして労使委員会の中で意見が集約され るか、労使委員会の労働側、あるいは労使委員会で意見が集約されるかについては、特 段触れていません。 ○石塚委員  触れていないですよね。ただ、研究会としても、そこまで議論はしていないという理 解でよろしいですか。 ○大西監督課長  はい。 ○石塚委員  関連して、労使委員の選出手続の話ですが、18頁目を見ますと、選出方法として、例 えば例示がありますが、「当該事業場の全労働者が直接複数の労働者委員を選出するこ とが考えられる」と、例示で述べられているわけですが、この選挙のプロセス自体、ど ういうふうに公正性を担保するのかという問題が多分あると思うのです。つまり、どの ようにして、まあ選挙をするのはいいのですが、選挙のやり方が公正であるということ を、どのようにして担保するのかという、問題点が初歩的な議論としてあるような気が するのです。研究会では、どのような議論をされたのでしょうか。 ○秋山調査官  選挙の公正性をどう確保するかについては、それ以上具体的な議論はなかったと承知 しております。 ○石塚委員  単に選挙ということだけですか。 ○秋山調査官  例示しております。 ○石塚委員  「例えば」として例示は付けられてありますが、その例えば以外の議論に至る経過と いうのは、何かあったのですか。 ○秋山調査官  いいえ、これはこの例示として、このように考えられるということだけでございま す。 ○石塚委員  だけですか。 ○田島委員  いわゆる公平に選ぶのが労使委員会では根本だと思うのですが、いまの労働組合法で は、やはり不当労働行為、組合の役員選挙に使用者側が介入すれば不当労働行為になる のですが、この労使委員会の労働者代表が、本当に労働者だけで、いわゆる公平に、あ るいは透明性をもって選ばれるか。そこに使用者側が介入した場合に、この法律の根幹 は、罰則は伴いません、監督指導を行わない法律ですというときに、労組法でいう不当 労働行為にかかわったことをした場合に、どう、公平性、透明性を担保するものがある のか。監督指導を行わない、あるいは強行法規的な要素をもたないといった場合に、本 当に労使委員会の労働者代表が公平なのかという問題。  それと、調査官のほうから、これも合理性の問題で、5分の4と言いましたが、前回 の分科会で私が発言したのですが、5分の4というのは、労働者側委員でいえば、5分 の3の賛成でいいではないか。5分の5の使用者側委員が賛成すれば、あとの5分の 3、ということは6割ですよね。労組法の17条の「一般的拘束力」では4分の3あれ ば、いわゆるほかのものに拘束力があるというのが、6割で拘束力をもつという問題も 出てきはしないか。  その辺に関連して、19頁に、例えば、労働協約と違って、それは単独で権利義務を設 定したり、個々の労働者を拘束したりするものではない、というふうに言っています が、一方でその上の行で、例えば配転とか解雇とか権利濫用の判断における考慮要素と なり得ることが考えられる。考慮要素、あるいは推定規定を兼ね合わせると、個々の労 働者を、やはり拘束する要素をもつのではないか。それを反証するということで、ある いは合理性は使用者側の立証責任から、あるいは異議を申し立てる労働者側に立証責任 が転嫁される恐れはないのかという問題とか、さまざまなことがあると思うのですが、 その点については議論されたのかどうなのか、お聞かせ願いたいと思います。 ○大西監督課長  田島委員が御指摘の中で、十分に議論されていない点はありますが、議論された点だ けを申し上げさせていただきますと、まず1点目の、「不当な介入誘導」とか、そうい うことについては32頁の2行目で、「要件のうち労使委員会の決議については労働者委 員に対する使用者からの支配介入の余地があるため、変更の合理性を担保する組織とし ては問題があるとの指摘があるということについて、これについては決議の効力は合理 性の推定にとどまるものであるし、さらに労使委員会について法令に規定する委員の選 出方法、意思決定方法とかが遵守されている場合に限って、推定が働く。ただし、使用 者からの不当な介入や誘導があった場合は除くこととするということで対処できると考 えられる」、と述べられておりますが、これを踏み越えて、労働組合法との関係につい ての議論はなされていなかったというのが第1点です。  第2点の、決議要件が過半数でいいのかという話ですが、これについては、これも直 接触れているところではないのですが、例えば委員から御指摘いただいた19頁ですが、 19頁の上から3分の1くらいの所に「過半数組合や過半数代表者」の後、「これらは労 働者の過半数を代表していればよく、その全員を代表する必要はない」という具合に書 いておりますので、これとの関係で文脈を整理すると、過半数、いわゆる5分の4要件 について議論はされました。田島委員が御指摘のような点については、4分の3との関 係については、これ以上の検討はされていないということでございます。 ○石塚委員  17頁の下からのところで、「また」以下ですが、過半数組合がある事業場であって も、というケースで、全く労働組合がない事業場のケースで、労使委員会をつくる場合 の問題と、ある場合と、2つに大きく分かれると思うのですが、ある場合に、労使が対 等の立場で云々ということから、その労働組合の機能を阻害しない形で、労使委員会の 設置は認めてもよいと考えられるという、これが基本的な立場で言われていますね。そ の際、よい悪いの問題は別にして、過半数組合があって機能している。そこに労使委員 会をつくってもいいよというときに、労働組合と労使委員会とのどういう役割分担、機 能分担を、どのようなイメージで考えられているか、よく伝わってこないのです。労働 組合が全くない場合に、労働組合の組織率が落ちてきたから、なかなか集団的な議論も できないので、そのプロセスをきちっとしなければいけないという趣旨から、労使委員 会というのは1つの筋としてあるのでしょうけれども、労働組合がある所においてもこ れを認めていいというときに、明らかに労働組合の機能と労使委員会の機能について、 多分議論されたと思うのですが、そのイメージ、どうなるのかということの議論経過 を、研究会としての議論経過を御説明いただきたいのと、これは私の類推ですが、一般 的に、このモデルとしている労使委員会というのは、ドイツにおける労働組合と事業場 委員会ですか、一般的にそういうふうに言われているわけですが、それとの対比で考え られているのか、もう少し違うことを考えているのか、その辺の議論経過、労働組合と 労使委員会との機能の役割分担について、どのような議論をされたか。労働組合にとっ て、極めて関心のあるところですので、是非とも議論の経過を教えていただきたい。 ○大西監督課長  議論の経過ですが、私の聞いたところによりますと、まずやはり、過半数組合、過半 数代表について、どうするのかという議論が問題点のところでもありまして、過半数代 表者が1人では事業場の労働者を代表できないのではないかという問題の提起から始ま ってきておりまして、まず最初に、過半数組合がない所の在り方ということで、労使委 員会が出てきて、その後に、過半数組合がある事業場で、労使委員会を設置してはいけ ないということではないでしょうというような議論の経過を踏まえて、こういう文脈、 「過半数組合がある事業場であっても、過半数組合の機能を阻害しない形での労使委員 会の設置を認めてよいと考えられる」というような議論があったと聞いております。 ○石塚委員  そうすると、その場合の労使委員会の機能というのは何になるのですか。労働組合の 機能を阻害しない形で、労使委員会を認めるという場合の労使委員会というのは、どん な機能が期待されるのでしょうか。 ○秋山調査官  その点については、まさに17頁に、委員が御指摘以上のことは、具体的な議論はない と思います。ただ、研究会の資料としてお示ししたものの中に、例えば労使コミュニケ ーション調査とかを見ますと、労働組合があっても、並行して労使協議会みたいなもの があって、そこでいろいろなことについて話し合うことは現実にあるということから、 課長が申し上げたとおり、過半数組合がある所では、労使委員会の設置は認めないのだ ということまでは必要ないのではないか。設置は認めて、あとは機能を阻害しない形で どのようにして設置するかについては、今後政策的な議論をしてもよいのではないかと いうことだったように考えております。 ○石塚委員  そうすると、日本の労働組合の果たしている機能はたくさんあるのですが、団体交渉 機能はもちろんあります。それ以外にも、労使間で経営のさまざまな諸課題、あるいは さまざまな問題について、日常的に労使協議を行っているわけです。つまりこれは、労 働組合の交渉ではないけれども、労使の自由な話合いの場として、協議の場が一般的に 設けられているのです。  そうすると、そういう労働組合の機能があるということと付加して、労使委員会を設 置するという意味合いが、いまの議論からすると、あまりそこは深く議論されていない というふうに受け止めてよろしいですか。そこはどうでしょうか。 ○大西監督課長  そういう印象をお持ちということであれば、そういうことではないかと。一応議論し たことは、ここに書いてあることだということ以上のことは。 ○石塚委員  わかりました。後ほどの、最初の私の質問との関係からいくと、ドイツの制度がイメ ージされていると私は思っているのですが、ドイツの場合の労働協約の締結機能という のは、企業を越えて、いわば協約の世界において、ある意味では1つの規範として労働 協約が成り立っていて、それで個別企業内における問題というのは、この事業所委員会 において、まさに労使、企業の中における自由な協議としてあるわけです。  そうすると、ドイツのモデルからいくと、交渉というのは、ある意味では企業横断的 にやって、その上で、さまざまな企業内における諸事項に関しては、事業所委員会でや っているという構造になります。ここで提起されている労使委員会というのは、果たさ れる、期待できるというのは、そのモデルではないということですね。違うということ ですか。 ○大西監督課長  そこの事実関係だけですが、諸外国の状況については検討したという具合に聞いてお りますが、例えばドイツを例にしたとかですね、そこについては、具体的に、例にした ともしていないとも、議論の経緯を踏まえると、どちらともちょっと判断できない状況 ではなかったのかなと考えております。 ○石塚委員  わかりました。 ○山口委員  19頁の下段のほうで、「労働契約法制における労使委員会の決議は、必要な要件を課 した上で云々」とありますが、ここで、課せられるべき必要な要件というのがちょっと 読み取れないのですが、研究会ではどのような議論をなさったのでしょうか。どのよう な想定をされているのでしょうか。 ○秋山調査官  例えば現在の労働基準法の企画業務型裁量労働制ですと、決議をした場合に、議事録 を周知するとか、そういう要件もございますので、そういったことを念頭に置いての記 述であると理解しております。 ○奥谷委員  いまの労使委員会のことで、要するに、就業形態とか価値観がかなり多様化して、い ままでの労働組合だけでは協議できない部分の別な部分で発生した形での労使委員会と いうのができているのだと思うのです。ですから、労働組合が上か、労使委員会が下か とか、その中にインクルードされるのかということは、全く別の問題だと思うのです が、そういった捉え方というのではないのでしょうか。 ○大西監督課長  研究会の中では、委員がおっしゃったような、労働組合との関係というよりは、いわ ゆる過半数代表者が1人でやる過半数代表者の関係で、労使委員会が議論になったとい うふうに理解されておりますので、労働組合との関係については、まさに権能を阻害し ない範囲で、つくってもいいよというところに集約されているという具合に、この報告 書の議論のプロセスではそうなっていたと理解しております。 ○新田委員  そうすると、その議論の過程で、権能を阻害しないということについていえば、議論 課題というか、項目というか、そういうことは、例えば就業規則とかやるわけですが、 労働組合と労使委員会と、どんな区別をしながら議論されたのですか。そこがしっかり わからないと、どんどん研究会報告書に入っていけなくなるのです。  先生たちは、基本的に労働組合をどんなふうに考えながら、労使委員会を置かれて議 論されたのかということが、ものすごくわかりにくくなっているのです。 ○松井審議官  17頁を見ていただけますか。アのところで、法制化のところの大前提、ここに書いて あるとおりですから、読むだけですけれども、この労働組合の組織率低下の云々から、 3行目ですね。「労働者と使用者が実質的に対等の立場で決定を行うことを確保するた めには」ここですね、「交渉・協議等を行うことができる場が存在することが必要」。 労働組合が存在する場合には、組合が、存在しない場合においても交渉力を高める方 策。ですから、労働組合がない場合を想定して、ずっと展開したということで考えてい ただければ。ですから、さらに下のほうに下りて、ずっと考えていった中で、ただそう は言っても、過半数組合があっても、多分任意設置ということを前提にしていますか ら、もし調整して組合の機能を阻害しない形で置くというのであれば、いいのではない かということを、この17頁の下の2つのパラグラフで展開し、次の頁を見ていただく と、それでは労使委員会、諸外国と比較してどこまでかということは、ちょっと明確に はなっていないのですが、ウの上のパラグラフ2つあたりで、社会経済情勢の変化に対 応するためには、決議の有効期間を定めるとか、委員の任期等々の手続をしっかりす る。開催も委員会自体で決議、ですから、あくまでも組合のないところですが、そうい うイメージで書いたものです。  さらに、組合との関係で典型的なところでは、なお書きにあるように、選出方法、運 営に要する費用も、組合は自主的な団体ですから、当然労働者が全部出す、使用者は出 さないということで、あえて費用に還元するということは、使用者が設置するという委 員会だから、費用負担について、使用者がどうするのだろうということも含め、それか ら次の「多様な労働者の利益を公正に代表」ということですから、いろいろな方をみん な代表して選べるようにというようなことから、引き続き考えていこうと。  ですから、結論を出しきっているわけではなくて、こういう観点から議論が必要だと いうことを提示しているわけでして、クローズドに、物事を解決しきった案にはなって いないということを、まずわかっていただきたいということです。それ以上のことは言 えません。これ以上書いてない、議論していないということを頭に置いて、それを素材 に、皆さんで議論していただきたいということでお願いしております。決めきっており ません。 ○小山委員  もっと理屈的な話をお聞きしたいのですが、労使委員会について、現在労働基準法の 中で定められている労使委員会がありますが、これは、労働基準法はもともと罰則や臨 検等の監督指導を背景として定められている中での労使委員会ですね。これはあくまで も契約法は、先ほど言った民法の特別法としてのところで、いわばそういう罰則や臨検 には関係ない分野でのルールとして定められているわけですが、その労使委員会と、何 かごちゃごちゃに、同じような機能のような書き方がされていたり。そこが区別されて いるのか、どういうふうに区別されたのかということと、それが、例えば先ほどの、私 がちょっと申し上げた労働者側委員の範囲の問題で、労働時間の場合には、労働時間の 管理が適用除外される人たちは、労働者側には多分ならないですね。これでいくと、な り得るわけです。労働者といった場合は、いわゆる通常企業の中の管理職も労働者とし ての雇用関係、労働契約の関係だろうと思うのです。こういう2点の側面からいって、 労働基準法上の現在の労使委員会と、ここで提起される労使委員会の位置づけというの が、どのように整理されて議論されたのかということをお聞きしたいのです。 ○大西監督課長  具体的にこうあるべきだという議論はなされなかったと聞いております。  労働者の範囲についても、先ほどちょっとお答えさせていただいたように、詳しくこ の報告書では触れられていないわけですし、企画業務型裁量労働制の労使委員会との関 係については、19頁の下から9行目くらいに、必要な要件を課した上で企画業務型裁量 労働制における労使委員会の決議に代替することができるとすることなどが考えられよ う、という具合に書いておりまして、何らかの整理が必要だという認識はあったと思う のですが、これ以上のご議論はなかったと承知しております。  事実としてそうだったということでございます。 ○石塚委員  関連した質問で、19頁目の効力の問題ですが、これは、ベースがまず、労働組合がな いケースで、労使委員会の機能というのを考えられて、研究会で議論されて出てきた。 過半数代表制の問題から多分始まっているのでしょうけれども、そのときに、労働組合 との関係はどういうふうなのかということは、後から覆いかぶさっているような感じが しますね。その経過から、結果的にいいますと、この労働組合の機能を阻害することの ないようにと書かれているけれども、その姿がよくわからないのです。例えば19頁の、 労働関係の成立のすぐ上の「また」以降のこれは三六協定の話ですよね。そうすると、 労働契約法制における労使委員会の決議に、労働基準法第36条の労使協定等に代わる効 力を与えることも考えられるという場合には、労働組合がないケースで、労使委員会で 議論して、三六協定の、過半数代表者に代わって、労使委員会での決議という、それは 1つのストーリーとしてはあり得るのだろうと思いますが、ここでいっているのは、労 働組合があるときに、三六協定を結んでいるわけですね。それに代わる効力を付与する というときには、端的に言えば、労働組合における協約よりも、労使委員会における決 議のほうが上に立つのかというイメージまで受け取られるのだけれども、その辺の議論 経過はどうなのですか。 ○大西監督課長  いま御指摘の点については、その直上の「また」に書いてあるとおり、ここの5行、 繰り返しになるので読みませんが、労働組合よりも上に労使委員会が立つということ は、そういう議論はなかったということです。あくまでも補完するものだというストー リーで議論は進められたと考えておりますが、確かに委員御指摘のように、ここの2行 だけを読むと、少し不明確、それはどっちになっているか、この2行には表れていない ですが、その前後を読むと、議論の経過としては、上に立つというような議論は行われ ておりませんでした。 ○石塚委員  そうすると、理解としては、従来からやっている就業規則と労働協約との関係、これ は変わらないということを前提の上で、その辺を補完する格好で、労使委員会における 決議を続けたいということですね。 ○大西監督課長  基本的に。 ○石塚委員  多分研究会ではそういう議論が行われたと思いますが、そこら辺でよくわからないの は、それでは就業規則の変更の機能を労使委員会に与えているということで議論されて いるようなのですが、そのとき、労使委員会自体が過半数代表でいいじゃないかという ときにも、労働組合がないケースで、そこでいうと、いろいろな理解がある中で、就業 規則というのはどちらかというと、ここに書いてあるように、統一的、集団的なのだと 思うのです。いろいろな労働者の利害関係があるときに、過半数代表、5分の3という のは、就業規則の変更OKよという形で与えてしまうのは、ちょっと乱暴な感じがする のですが、それなりの議論経過は、何かありましたか。 ○大西監督課長  いまの御質問の当否は、お答えする立場にないのですが、就業規則のところに関して は、全労働者の意見を適正に集約した上で、そういう、という具合に書いてある、気持 はあったわけですが、具体的にそれがどういうプロセスなら全労働者の意見を適正に集 約したかというところまでのご議論は、詳細にはなかったと承知しております。 ○松井審議官  現行の基準法第90条は、就業規則の作成手続については、作成変更について、過半数 の組合がある場合にはその組合の、組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者 の意見を聞かなければならない、という現行規定があるのです。そこで、組合がない所 で協議をする場を設けるという提案をして、その際の前提条件として、この委員会が労 働組合の団体交渉を阻害したり、その決議が協約の機能を阻害したりすることがないよ うにいまから考えてくださいねと言っているだけで、どのように考えたかは、考えてく ださいと言っても考えていないわけです。ただ、命題は与えているというように見てく ださい。これ以上議論するのなら、皆様方がどうすべきかということをやっていただく べく土台づくりをしたと考えていただければ。もう一度言いますけれども、いまの基準 法では過半数の意見を聞けば、就業規則について意見を聞いたことになっているので す。そのことも考慮しながら、組合の権能を阻害しないように恒常的な話し合いの場を どう設けるかを考えてはどうかと、そこまでしか研究会報告では書いていないのです。 ○田島委員  いまの就業規則問題ですが、意見を聞いただけであって、やはり使用者側では、専権 事項は一切変わっていないですね。いわゆる労働者側の同意とか決議の同意などは謳っ ていないし、反対だよという意見も意見ですから。しかし、監督署は、それは法に反し てなければ受理しましょうということですから、結局は使用者側の専権事項の就業規則 に今回の報告書はちょっと権能を高めているのではないかという危惧があるのですが、 そういう意味では、労使委員会を作る意味合いと就業規則の問題が整理されていないな という印象なのですが、その点はどうですか。 ○松井審議官  そこについては18頁の下の段をこのとおりに解釈して。全部書いてあることですから よく読んでいただきたいのですけれども、就業規則の変更について、例えば今度提案し た委員会の意見を聞いたとすると、その決議によって変更がある場合は、合理性を推定 する。聞いていないと逆に合理性が推定されないものとして仕組んではどうかと書いて ある。いまの基準法は一切そんなことは何も書いてない。意見を聞けとしか。今度は聞 けば合理性を推定するというように法律を書きませんかという所を少し踏み込んで。 ○田島委員  だから、そこがいちばん問題なのです。 ○松井審議官  問題というか、そのように書いてあるということしかありませんから、それをどう議 論するかは皆さんの評価です。 ○田島委員  合理性を推定した場合には、反証する場合、反証する側に立証責任が移るのではない かというのを私たちはいろいろと聞いているのです。何も書かれてなければ、合理性は 使用者のほうが立証しなければいけない。ところが、その立証責任は、使用者側から労 働者側に、推定することによって移るのではないかという危惧があるのですけれども、 その点は議論されたのですか。推定問題は極めて重要だと思っているのです。折角これ だけいい先生が集まっているのですから。 ○松井審議官  報告書ですべてが完結していないということはご覧のとおりです。ですから、それに ついてどういうようなものに仕立てていくかについては、研究会としての提案でありま して、もしやるとすればどういうようにするということを議論して。 ○大西監督課長  ちょっと一部言及しているところが30頁にありまして、そこの真ん中の3分の1ぐら いに、ここでどのような事項を合理性の推定の要件にするかについて、労働者にとって 負担が大きすぎるという指摘があり得るとかいうようなことについて、8行ぐらいにわ たって書いてありますが、例えば、これについては使用者が変更後の就業規則の合理性 について推定を受けるためには、一部の労働者のみに対して大きな不利益を与える変更 ではないことを立証しなければならないとか、立証責任が一定限度で課されていると か、あるいはまた、使用者は過半数組合や、労使委員会の労働者委員が労働者の意見を 適正に集約したという事実を立証しなければならないとか、いくつか御指摘があって、 使用者も変更内容の合理性の問題から解放されるわけではない、という具合に議論が行 われたということです。 ○新田委員  先ほど審議官がおっしゃったように、研究会報告はそこまで提示している。その上 で、労使委員会でいろいろと心配事なり懸念なりあるならば、労使委員会の運営規則で も作ればいいではないか、というようなこととして受け取ることなのですかね。その辺 は5分の4とか、大原則は書いていますよね。決定されることとか、あるいは、合理性 とか推定推論するとか、いろいろ書いているけれども、その辺のことは議論されている のですか。例えば労働組合は、先ほど話したように、提案があったら、説明して意見を まとめて、やりますね。この委員会は、どのようなイメージで動かそうというのは。決 めろと言っているのですか。ここからはちょっと受け取れないのですが。 ○松井審議官  この研究会は、先生方のお勉強の成果ですから、詳細にわたって決めているというも のではないというのはまずおわかりいただけたと思います。ただ、方向性として1つの 案を提示していただいてそれをどのように咀嚼するかは、もちろん皆さんのご議論、制 度を議論する方のための叩き台ということで作っていますので、それを頭に置いていた だきたい。あくまで、この協議を行うことのできる場の存在が必要という、その道具と して、例えば委員会を考えてみてくださいと。その枠組みに大きなポジショニングを与 えて、組合との関係とか、いまの過半数代表制との関係とかを指摘し、言われた訴訟に おける証明責任、そんなものについても影響を与えますよというところまで言っており まして、どうしろとは言ってないと聞いています。委員会について議論いただくかどう かは、皆さんの場で、委員会というものを導入するかどうかということを議論する中 で、議論していただくべき素材だと思います。まさに事務局に聞くより、この場でどう するかを議論していただくべき課題ではないかと思います。 ○小山委員  いま、ずっと労使委員会の話ばかりでしたので、ちょっと違うこともお聞きしたいの ですが、解雇の金銭解決についてですが、この金銭解決のここでいう使用者側の申立て による金銭解決の解決金、労働者側でも同じく、解決金の性格というのは一体どういう 位置づけで言われているのか。何か支払能力みたいなことも書かれていたり。これは慰 謝料的なものなのか損害賠償的なものなのか、あるいは逸失利益に対するものなのか、 そこはどういうことで議論されたのでしょうか。 ○秋山調査官  ヒアリングを行ったときに、支払能力というのは、まさに中小企業だと支払能力に差 があるので、うまく一律には決められないということがあって、労使で事前に集団的に 決めてあればいいのではないかというような提案になっていると一応理解しています。  もう1つ、解決金の性格ですが、一応60頁から61頁にかけて、60頁のいちばん下の行 ですが、ここに記述があります。解決金の性質については、雇用関係を解消する代償で あって、和解金とか損害賠償とは完全には一致しないと考えられる。研究会ではこうい う結論です。 ○大西監督課長  もう1つ、明確には出ていないのですが、いわゆるこの金銭解決制度について、結局 違法な解雇を有効にするものではないという議論がありますので、ここの金銭解決制度 と、いわゆる無効な解雇の場合に支払われるべき賃金債権の部分については別のものと いう具合に考えられていたのではないかと推測されます。 ○小山委員  ただ、雇用関係を解消する代償という、この表現だけだということですね。そこで議 論されるのは。1つの結論は。 ○大西監督課長  はい。 ○石塚委員  34頁に、雇用継続型契約変更制度という長いタイトルが付いていますけれども、これ は最終報告では、ドイツのいわゆる「変更解約告知」という表現のこの「変更解約告知 」というのは、ドイツのというように落ちていますよね。中間報告段階においては解説 として入っていたと思うのですが。これは評価をめぐって随分いろいろな議論があるよ うに承っています。仮にこの、変更解約告知と呼ばれるが、というのがドイツの変更解 約告知であるとすれば、研究会の議論としては、これはドイツにおいて極めて有効に役 立っているという認識でたぶんされているのだろうと思うのですが、一方において、実 際かなりそう言うけれども、使われていないという説明もあったりして、立場によっ て、同じ学者であっても、この変更解約告知のドイツにおける機能発揮の問題について は、意見が分かれているように承っているのですけれども、その辺の評価については、 研究会ではどのような議論をされたのでしょうか。一方的に入れるべきだという感じの 議論だったのでしょうか。 ○秋山調査官  確かにドイツで、いわゆる変更解約告知と言われるような制度がありますが、別にド イツの制度を模倣してそれを持ってこようということではなくて、ここは、例えば裁判 例なんかでも、一応変更解約告知という概念が日本でも登場しておりますし、ここで は、ドイツみたいな制度はあるけれども、ドイツの場合は、最初にいきなり解雇か、も しくは新条件の契約を結ぶかという、二者選択を迫るわけですが、一応ここで提案され ている雇用継続型契約変更制度というのは、まず第一段階として、労働者に対して十分 期間を取った上で、その必要性などを説明して協議をしてくれと。協議をしてそれが整 わなかったら、第二段階で変更を受け入れるか、もしくは拒絶して解雇か、留保付承諾 をするかということで、ドイツの制度とは必ずしも同じではない。それをもうちょっと 労働者に保護を与えるように、一応工夫された提案がなされていると理解しています。 ○石塚委員  とすると、ドイツにおける評価についてはあまり議論されなかったということで承っ てよろしいですかね。 ○秋山調査官  統一的にドイツで評価がどうだったということはなかったと思います。 ○石塚委員  そうなりますと、日本において変更解約告知を使った判例として、まだ少ないです よ。たしか一例か二例、二例ぐらいでしたっけね、判例として出てくるものは。かなり 日本においても、判例というものをベースにして、それを法的に表現していくというの は、もっと土台からすると、まだその判例自体が必ずしも、変更解約告知されたものが 固まってないように思っているのですけれども、これはあえて、かなり前面に出てきて いる。この議論の経過というのはどこなのですか。判例はあるのだけれども、むしろこ れは日本において入れなければ駄目なのだという強い意思のもとに研究会において報告 されたのか、それとも、判例が出てきたから、それをつかまえて、これを民法の特別法 に持っていこうと議論されたのか、その辺の議論経過はどうなのでしょう。 ○大西監督課長  この点については、確かにどういう問題意識だったかというと、やはり解雇という社 会的コストを避けるために、この妥当な解決策というのは何かないのかというような議 論からスタートしたという具合に聞いております。検討の方向についても、いわゆる判 例、他の所で判例がこうだから、こういう判例法理を書きましょうという結論のところ が多いわけですが、ここの部分については、案(1)、案(2)というように、いわゆる2案 提示されたということです。強い意思かどうかについては委員の先生方のお気持ですけ れども、いわゆる研究会として何か提示していこうというご議論があったという具合に 承知しております。 ○田島委員  いまの点は本当に、いま職場で起きていることをきちんと把握してこんな形で出てき たのかという疑問があるのですけれども、その辺の議論で、例えばいまメンタルヘルス が問題になっていますし、いわゆるうつの問題とかが問題になっています。あるいは、 私たち、労働相談をやっていると、何というか、やはり職場のいじめとかね、異議をと どめて就労しましょうと。いまでさえいろいろな形でのいじめとか。あるいは、いわゆ るメンタルヘルス問題が出ている中で、異議をとどめて働き続けている状況が、本当に 職場環境があるのかという問題、それを解決するために、こういう形で制度化すればい いのか、そうではないのかという問題が、本当にいまの職場の現状を踏まえて議論され たのか、あるいは、いま職場で起きている問題について、どういう形で議論されたの か、ちょっとお聞かせ願えればと。私たちの職場の感覚からすると、ちょっと異質だな という感じなのです。これだと結局は自主退社、解雇ではないけれども自分から辞めざ るを得ない形に追い込まれていってしまうのではないかというように思うのですけれど も。 ○秋山調査官  研究会の過程で大体1年半ぐらいご議論いただきましたけれども、一応関係者の方か らもヒアリングを行いまして、例えば労働組合の方で現場で労働相談を行っておられる 方からの意見も、この変更制度についてということではありませんが、労働契約の在り 方、法制の在り方についてご議論をいただきまして、先ほどの御指摘のような実態があ るというお話は研究会としても承っており、その上で個別の論点について提案がされた と理解しています。この変更制度については、研究会の議論としては、いまでは別にそ れを使用者が変更が必要な場合に、変更か、従わなければ解雇かと。それは別に規制す るものはありませんので、変更か解雇かといって、解雇されてしまって争うよりは、こ ういった留保つき承諾をして第三の道を取って職場にとどまった上で争うという選択肢 を設けたほうが、労働者のほうにも資するのではないかということで議論がなされたも のと理解しています。 ○田島委員  いいですか。労働契約というのは対等ですよね。対等というのは労働者の同意が前提 ですよと。変更か解雇かというのを前提にするのではなくて、やはり変更する場合には 労働者の同意が必要ですと何で謳えなかったのかという疑問があって。これは事務局を 責めてもしょうがないのですが、契約というのはそういうものでしょうと。民法の原則 というのは。 ○松井審議官  あくまで研究会の成果ですから、言われた認識、35頁のパラグラフの2つ目に書いて ありますが、実際に使用者が経営上の必要から労働契約の変更を求めることは日常的に 行っている。これは坦々と書いてありますけれども、その裏として、初め言われたよう なことがあるのかもしれない。これに応じない労働者に対して、解雇がなされた事例も 多い。このような現状に対しては、何らかの有効適切な方策を検討することが、解雇と いう社会的コスト低減の観点から必要だと。問題意識はここに出ている。それを、さら に細かい詳しい実情まで先生方の頭にあったかどうかは直接出ておりませんけれども、 問題意識としてはここにありですね。その解決方策として検討の方向性としてこういう ものを提案されているということをまず捉えていただきたいのです。これを、こういう 必要性があるかどうか。さらにその手段として例えば、こんなものが研究会において出 ておりますから、この分科会の中でそういったものを取り上げて処理するかしないかと いう、早くそういう議論に入っていただくように。いま言われたようなことをまさにこ の場で議論いただくということになるのではないかと思います。それ以上事務局に聞か れても、たぶんお答えできない部分が多いと思いますので、よろしくお願いします。 ○岩出委員  私ども、変更解約告知の問題に関しては、異議をとどめた承諾の一言でわかるのです けれども、ただ、1点だけ、36頁の案(1)ですけれども、最近判例で、通常労働側の対 応として異議をとどめる、例えば出向とか配転を拒否して、異議をとどめて行くという 場合があるわけですね。それで大体通っていたのですが、最近の裁判例の中では異議を とどめていくのは不安定な地位に使用者をおくから解雇を認めるという判断が出てしま ったのですね。そういう判例を踏まえるとこういう案というのは逆に必要で出てきたの かなという気がいましますので、そこだけ説明いたします。 ○小山委員  金銭解決のところで、64頁の上の1行目のところからですが、個別企業において労使 間で集団的に解決金の額の基準の合意があらかじめなされた場合にのみ申立てができる こととし、その基準によって解決金の額を決定する。その下のほうにいきますと、解決 金の基準を事前に労使で集団的に決定するとすれば、不当に低い金額になるとは考えら れずということで、しかし額の最低基準を法律で定めることも考えられるという記述に なっているのですが、ちょっと理解できないのは、労使間であらかじめ解決金の額の基 準を合意しておくというのは、どの場面で何をしておくことなのか。就業規則に書いて おくわけでもないだろうし、あるいは何か案件が起こったときにそこでやることでもな いだろうし、何をイメージされているのかがよくわからないのですが、ちょっと教えて ください。 ○大西監督課長  これは議論の過程でですが、御指摘のようにどの時点までに決めるとか決めないとか いうことについては詳細な議論は行われなかったという具合に承知しております。その イメージとしては、いわゆる退職金を上積みするという制度が一般的に行われているの で、それを参考にこういうことをしていればいいのではないかというのが、62頁のとこ ろに書いてあります。個別企業については事前に労使間で集団的に希望退職制度につい て取り決め、退職金の割増率等を定める事例が多くあるから、ということで、こういう のを念頭に置きながら事前に決めておけばいいのではないかという議論がなされたとい うように承知しております。 ○小山委員  ということは、あらかじめ解雇されたらこういう金銭解決があるのですよ、というこ とを労使で決めておけばいいのではないかとこれはいっているのですか。 ○大西監督課長  議論の流れとしてはそういうことだったと思います。 ○田島委員  1点だけ。最後の所なのですが、73頁、74頁、ここに労働時間法制の見直しであまり にも唐突にホワイトカラーエグゼンプションが出ていて、例えばちょうど真ん中辺に、 「したがって労働契約に関する包括的なルールの整備を行う際には、併せて労働者の働 き方の多様化に応じた労働時間制度の在り方についても検討を行う必要がある」と、あ まりにも唐突に出ている感じがするのですけれども、これは何らかの意図があって74頁 に、労働時間法制、エグゼンプションが入ってきたのですか。これは連合のトップセミ ナーでも菅野さんが講師をしていて、御質問したのですけれども、なぜ入ったのかちょ っとよくわからなかったのです。あまりにも唐突に入ってきているという感じがするの ですけれども。 ○秋山調査官  別に必ずしも唐突だということはなかったと思うのですが、ただ一部、場所的には最 後の所にありますが、例えば総論の10頁ぐらいのところに、内容的には基本的に同じよ うな趣旨ですけれども、総論の10頁のイの「労働契約法制の必要性」というところで、 労働基準法と労働契約法制のそれぞれの役割ということで、役割分担しながら時代に合 ったこうした見直しは要るのではないか、労働契約法制の検討の背景となっているよう なことについては、同様の背景から、労働時間の制度についても見直しが必要となって いるということで。ここの労働時間というのは労働契約の基本的な、賃金と並んだ重要 な要素ですので、労働時間についても見直しは当然必要だろうと。ただ、そこは別途閣 議決定もありますし、別途の研究会で同時に検討が行われていることもあって、一応こ の研究会では、併せて労働契約の重要な要素という観点から関連があるということで、 関連性について指摘しているということでとどまっています。 ○田島委員  言葉尻を捉えるわけではありませんが、いま調査官が、賃金と並んで重要な要素と言 っている。では、重要な要素の賃金のほうを全く触れてないのはなぜですか。 ○秋山調査官  最低賃金制度については、現在審議会で検討されていることを承知しておりますし、 研究会では、特段それ以外、賃金についてこういう見直しが必要ではないかというのは なかったと承知しております。 ○小山委員  いまの問題ですが、契約法と労働時間だけなぜここでリンクしてくるのかというのが よくわからない。おそらく賃金は最賃だけではなくて、いろいろ、各企業ごとの賃金制 度の問題もあるし、だから、契約法はあくまでも契約法で、労働時間や、基準法は基準 法という区分けのはずなのですが、何でここだけピョンと出てくるのかが。これは先生 方がどういう意図でご議論されたのかがよくわからないので。 ○松井審議官  ここにあるように、労働基準法と労働契約法制の役割を考える中で、現行法規での規 制の在り方とか、いわゆるルールというものを考えていた中で、たぶんこの契約法制の 中でしっかり議論できたのは、採用から辞めるまでのいろいろな労働条件の設定の仕方 であり、それで先生方の議論が進んでいる。ところが、労働時間のほうについては、法 律で所定労働時間とか書いてありますし、いまの枠組みがありますから、そこまではこ の中では十分議論していないからということです。ただ、これは労働条件の大きな要素 であるから、そういうものが出れば、それと一緒に契約法制を考えてくれという整理を されている。賃金に関しては、もともと労使がどういう対償を与えるかというのは、労 使それぞれ決めるべきものですから、例えば水準をどうしろというような議論が契約法 制で出てくるわけがないということだと思いますし、それから、最低賃金というのは契 約の外側で社会的に最低限というようなこともありましょうから、いま言われた最低賃 金については、ここでは契約法制の問題として考えていなかったと。ただ、これらを相 関してどういう賃金設定水準にされるかは出来上がった後の皆さんの運用というぐらい で、契約法制、契約の枠組みの問題としては、労働時間設定の部分が欠けているなとい うことを意思表明されたと思っています。だから、どうするかは、また言いますけれど も、皆様方で議論していただく以外にないということを申し上げたい。 ○西村分科会長  まだまだご議論は尽きないようですが、本日は時間の都合もありますので、今日の議 論を踏まえ、また次回の分科会で議論を続けていきたいと思います。もちろん質問があ ればしていただいて結構です。ただ、この資料No.12で紀陸委員が最初になされたよう に、今後の審議の進め方についても議論をする必要があるだろうと思います。したがっ て、各委員の御意見をお聞きしたい。この資料No.12について、どのように進めたらい いのか、各委員の御意見を是非お聞きしたいと思います。 ○須賀委員  ということは、この資料No.12は案のままでという意味ですね。 ○西村分科会長  いまのところはそうですね。 ○大西監督課長  今後のスケジュールについて御説明申し上げます。次回の労働条件分科会は、10月21 日(金)、午後5時から7時までで、場所は厚生労働省16階の労働基準局第1、第2会 議室で開催する予定です。 ○西村分科会長  それでは本日の分科会はこれで終了したいと思います。本日の議事録の署名委員は、 須賀委員と紀陸委員です。本日はお忙しい中どうもありがとうございました。                    (照会先)                     労働基準局監督課企画係(内線5423)