薬食発第0421003号
平成17年4月21日

 (社) 日本医師会会長
 (社) 日本薬剤師会会長
 (社) 日本看護協会会長
 (社) 日本病院会会長
 (社) 全日本病院協会会長
 (社) 全国自治体病院協議会会長
 (社) 日本病院薬剤師会会長
 (社) 日本臨床衛生検査技師会会長






│殿




厚生労働省医薬食品局長


 採血時の欧州滞在歴に関する問診の強化及び血液製剤の適正使用の推進について


 血液事業の推進については、日頃から格別の御高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 厚生労働省では、これまで、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)感染の理論的リスクに鑑み、献血受入れ時の問診に当たって一定の条件に該当する外国滞在歴を有する者からの採血を見合わせることとし、日本赤十字社においてこの措置を実施してきたところですが、本年2月に国内においてvCJDの発生が確認されたことを受け、今後の献血の受入れについては、別添(写)の記の1のとおりとし、今般、日本赤十字社に対し通知しました。
 今回の措置は、新たな安全性に関する情報が得られるまでの当分の間、予防的な措置を講じる観点から実施するものですが、これに伴い、国民の医療に必要な血液製剤の供給に支障を来すおそれがあることが指摘されております。
 このため、厚生労働省では、大臣を本部長として献血推進本部を設置し、献血による血液の確保、血液製剤の適正使用等の対策の一層の推進を図ることとしました。
 ついては、貴職におかれても、こうした状況を御理解の上、下記について、特段の御配慮を賜りますよう、貴会会員に対し周知方よろしくお願いいたします。
 なお、下記の内容については、日本輸血学会等において問い合わせを受け付けますので、御不明の点は別紙連絡先へ照会いただきますよう、併せて周知願います。


 輸血療法委員会の設置、定期的な開催、適正使用推進への取組(院内の輸血療法の現状把握、問題点の解析及び改革のための院内使用指針の策定、活用を含む。)

 血液製剤の適正使用に係る各種指針等の活用(血液製剤の平均的使用量など他施設の使用状況を参考に使用量削減に取り組むことを含む。)

 輸血部門の責任医師の配置、同部門による輸血関連業務の一元化



(別紙)

<照会先>

橋孝喜
東京大学医学部附属病院輸血部教授
 (薬事・食品衛生審議会血液事業部会適正使用調査会座長、日本輸血学会総務幹事)
電話 03−3815−5411(内線3516)
FAX 03−3816−2516

高松純樹
名古屋大学医学部附属病院輸血部教授(日本輸血学会会長)
電話 052−744−2653
FAX 052−744−2656

半田 誠
慶應義塾大学医学部輸血・細胞療法部長 助教授
電話 03−3353−1211(代表)
FAX 03−3353−9706

大戸 斉
福島県立医科大学医学部附属病院輸血・移植免疫部教授
電話 024−547−1536
FAX 024−549−3126

佐川公矯
久留米大学医学部附属病院副院長
臨床検査部 教授 部長
電話 0942−31−7650(輸血部門)
FAX 0942−31−7731(輸血部門)



薬食血発第0606001号
平成17年6月6日


都道府県衛生主管部(局)長 殿


厚生労働省医薬食品局血液対策課長


血液製剤の適正使用推進に係る先進事例等調査結果及び具体的強化方策の提示等について


 貴職におかれては、「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」に基づく「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針(平成15年5月19日厚生労働省告示第207号)」等を踏まえて、血液製剤の適正使用に係る院内体制の整備等について医療機関に働き掛けていただいていることと存じます。
 厚生労働省は、適正使用推進の一環として、「血液製剤の平均的使用量について」の発出(平成16年12月)等、各種取組を行っているところですが、院内体制の整備に係る取組を強化する手法として、標記調査を行ってきたところです。
 標記については、平成17年2月から3月にかけて、平成11年と平成15年の新鮮凍結血漿の使用量削減割合の多い県及び少ない県について、該当する県、血液センター及び医療機関の協力のもとにヒアリング調査を実施し、別添のとおり、その調査結果を取りまとめましたので、貴都道府県の適正使用の推進において参考にするよう情報提供いたします。
 また、当該調査結果を踏まえて、下記に具体的強化方策を提示しましたので、貴管下医療機関に周知徹底するとともに、貴職が中心となり血液センター及び輸血医療を行う医療機関と調整しながら、積極的に活用するよう願います。
 なお、レセプト審査等における使用指針の活用については、既に保険局医療課長等から地方社会保険事務局長等へ通知しており、また、医学教育の中での血液製剤の適正使用に係る医学教育の充実については、文部科学省高等教育局医学教育課長から全国医科大学及び医学部へ通知しましたので御了知願います(別紙)。


 合同輸血療法委員会の設置(平成16年3月時点で18都府県のみ設置)
 各医療機関の輸血責任医師、担当の臨床検査技師、薬剤師、輸血療法委員会委員長、管理者が参画し、他医療機関と血液製剤の使用量・状況を比較・評価するなどして、適正使用を推進する上での課題を明確化し、解消を図る。
 (1)  主催者
 都道府県(ただし、血液センター、医療機関の協力が不可欠)
 (2)  参画委員
 輸血医療について指導的立場のとれる医療機関(5〜10医療機関程度)の輸血責任医師、担当の臨床検査技師、薬剤師、輸血療法委員会委員長等
 なお、上述の委員会の開催でも一定以上の効果がみられない場合は、別途、医療機関管理者が集まる場を設けることにより、適正使用に係る各種取組が一層強化された県も存在するので参考にされたい。
 例えば、血液センターからの供給量の70%になる上位機関。
 (3)  討議されるべき議題
 医療機関ごとの血液製剤(主として、赤血球製剤、新鮮凍結血漿、アルブミン製剤、血小板製剤)の使用量・状況の比較検討及び使用指針に基づいた評価
 各種指針等を用いた適正使用に関する勉強会
 各医療機関における課題の整理・検討(近況報告を含む)
 輸血医療に関する相互査察の実施
 ※  日本輸血学会のI&A委員会の協力も念頭に置くこと。
 県内及び他県の使用状況と全国的な傾向の把握(血液センターや県の情報提供)
 (4)  開催頻度
 数回/年

 各医療機関における輸血療法委員会の設置及び定期的開催の推進
 (1)  委員長
 医療機関管理者又は外科系医師(麻酔科医を含む)が望ましい。
 ただし、外科系医師の場合は、議事内容を管理者出席の委員会等で報告すること。
 ※  委員長は現時点では、血液内科医や臨床検査医である場合が多いが、医療機関管理者(院長又は副院長)や輸血が必要な症例及び使用量の多い外科医又は術中管理者である麻酔科医が委員長になることにより適応外使用量、廃棄量が減少した医療機関が多くみられた。
 (2)  参画委員
 輸血が必要な症例の多い診療科の責任者は必ず参画させること(代理でも差し支えないこと)。
 (3)  討議されるべき議題
 血液製剤(主として赤血球製剤、新鮮凍結血漿、アルブミン製剤、血小板製剤)の使用状況について診療科ごとの比較を行うこと。また管理者の指示のもと、毎月、診療科ごとの発注量、使用量、廃棄量等を各診療科の長に配布し、診療科内に掲示すること(診療科ごとが難しい場合は、病棟ごとで実施)
 製剤ごとに月次、年次の使用量の比較・分析を行うとともに、「血液製剤の平均的使用量について」(平成16年12月27日付け薬食発第1227001号貴職あて厚生労働省医薬食品局長通知)を活用するなどし、他医療機関と比較検討及び評価すること
 各種指針の遵守状況について、各科から報告・検討するとともに、当該医療機関での解決が難しい場合は、合同輸血療法委員会又は「採血時の欧州滞在歴に関する問診の強化及び血液製剤の適正使用の推進について」(平成17年4月21日付け薬食発第0421003号(社)日本医師会長等あて厚生労働省医薬食品局長通知)における別紙連絡先に照会すること
 輸血実施症例の検討と使用指針に基づいた評価を行うこと
 必要に応じて、保険診療での査定状況も症例ごとに検討すること
 (4)  開催頻度
 1〜2回/2ヵ月 程度

 各医療機関における輸血部門の設置、一元管理の徹底、担当技師の配置等の推進
 (1)  医療機関管理者は、少なくとも200床以上の医療機関においては、臨床検査科(部)を中心とした輸血部門を設置するとともに、担当技師を専任※とし、極力複数名配置するよう努めること。
 なお、専門性を考慮し、責任医師、輸血療法委員会委員長及び担当技師の異動は最小限とすること。
 専任とは、検査技師数を純増するということではなく、業務の専門性に鑑み、輸血部門について統一して管理できる者を配置するという趣旨であって、現在ローテーションや兼任で対応している場合は、院内にいる検査技師の業務分担を見直すことが望まれるものであること。
 (2)  責任医師及び担当技師は、日本輸血学会の輸血認定医又は認定輸血検査技師の資格取得のほか、それに代わるものとして関連図書※の熟読や講習会の参加など輸血医療の適正な実施に係る学習及び研究に励み、専門的な知識の修得のほか、輸血を必要とする症例の多い診療科の医師等と日頃から話し合い、理解し合うよう努めること。
 この際、各種指針等を用いた勉強会(講師の招聘を含む)の活用も効果的であること。
 「改訂版 日本輸血学会 認定医制度指定カリキュラム」等
 (3)  医療機関管理者は、当該部門の責任医師及び担当技師が科学的な根拠に基づいて指摘する輸血医療に関する発言等を尊重するよう、院内でのコンセンサスの確保に努めること。
 なお、担当技師等については、院内の症例検討会にも必ず出席させ、発言の機会を設けること。
 (4)  少なくとも300床以上の医療機関又は救急救命センターを有する医療機関にあっては、専任の担当技師を少なくとも複数名配置するとともに、輸血部門の業務時間を延長し、できるだけ24時間体制とし、緊急時に適正な量を提供するよう努めること
 (5)  担当技師は、手術室、病棟、ICU等からの血液発注量が各種指針に準拠せず、多かった場合などは、責任医師及び輸血療法委員会委員長(必要に応じて技師長)と協議すること。その結果を踏まえ、責任医師又は担当技師は、主治医に使用量が多いことを指摘し、十分な協議のもと理解し合うとともに、改善を促すこと。
 なお、緊急時等血液製剤の迅速な提供が必要な場合は、事後に行うこと。
 (6)  アルブミン製剤等血漿分画製剤の管理も輸血部門で行うことが望ましいが、やむを得ず薬剤部門で管理する場合は使用状況等を輸血療法委員会に報告し、輸血療法委員会が評価するとともに、使用者への指摘やデータ管理は輸血部門と共有すること。

 輸血業務の効率的実施の推進
 血液を無駄にせず、また、輸血業務を効率的に行う手法として、「輸血療法の実施に関する指針」に記載してある血液型不規則抗体スクリーニング法(T&S:タイプアンドスクリーン)及び最大手術血液準備量を積極的に採用すること。
 ※  なお、T&Sについては、待機的手術だけでなく、すべての輸血例を対象としている医療機関もあるので参考にすること(高松純樹:輸血管理.日輸血会誌,Vol.44No.4:532-535,1998.)。



(別添)

 平成11年と15年の新鮮凍結血漿の使用削減量を比較して削減率の高い県及び低い(又は増加している)県について、県、血液センター及び代表的な医療機関におけるヒアリング調査を行い、削減率の高い県について(1)血液製剤の使用量削減が推進した理由、(2)先進事例等を中心に以下にとりまとめるとともに、削減率の低い(又は増加している)県の問題点を列挙したので参考にして下さい。
 なお、削減率の高い県においては、合同輸血療法委員会を活用して参加医療機関のアンケート調査を行い、集計したのであわせて参考にして下さい。

新潟県の場合

 血液製剤の使用量削減が推進した理由
 (1)  前々代の血液センター所長(元新潟大学輸血部助教授)が、頻繁に県内各医療機関を回り、臨床医(外科医も含む)を対象とした院内説明会を行ってきた。現在は、MRがその業務を引き継ぎ、各医療機関を回り頻繁に説明会を開催するなど(40回程度/年)、適正使用の推進については、県の協力のもと日本赤十字社が中心に行っている状況。

 (2)  医療機関内では技師中心で推進。輸血専任技師が複数存在し(1施設における認定技師が数名)、輸血体制に対する意識が高く、医師にものが言える体制が整っている(新潟県は全国的に認定技師が多い)。また、臨床医の生の声を定期的に聞くようにしている。
<実施例>
 ◎  使用量が多い時には、担当技師が臨床医に言うようにしている。
 ◎  担当技師が輸血使用状況を作成し、使用しすぎる臨床医に言う。今後は、平均的使用量のデータをもとに臨床医へさらに説得を行う予定。
 ◎  顔が知れているので、コミニュケーションが充実し、担当技師から臨床医に対して物が言える体制が整っている。
 ◎  輸血療法委員会で適正使用に係る方向付けができている。
 ◎  アルブミン製剤は薬局が管理しているが、薬局から輸血部に使用状況報告書を出してもらっており、輸血療法委員会でアルブミン製剤も検討しており、診療科ごとに使用量を出して、医局に張り出すようにしている。あわせて、注意・呼びかけを行う。
 ◎  輸血部が出来てから、担当技師の発言力が高まり、臨床医への理解を求める意識改善の指導を行った。
 ◎  輸血療法委員会に参加した看護師は、同委員会で検討された事案を看護師会で検討して、同委員会にフィードバックする体制がとられている。
 ◎  血液製剤の依頼・指示票に関連する検査データを記載している。伝票に使用目的を書いてもらっている。
 輸血依頼伝票ができてきたら患者データを確認し、輸血適用について確認する。PCならpH、FFPなら凝固、MAPならHb測定がなければ検査してもらうよう依頼する。
 ◎  PPFの指示箇所がまちまち(いろんな所に指示)であったが、共通な書き方へ変更した。
 ◎  担当技師が医局で直近のHb値と使用目的を示して、10→8にした場合の削減使用量と患者の健康状況を提示する予定。
 ◎  担当技師は複数名いるが、まだ直接臨床医にものを言える状況ではないので、輸血療法委員会で起案する形をとっている。

 (3)  県技師会で、臨床医や県医師会への説明の仕方も含めて検討・説明を行っている。

 (4)  医療保険に関しても、血液センターから審査委員に対して適正使用に係る情報を適宜提供している。

 その他、医療機関での効果的な事例(先進事例を含む)
 ◎  輸血療法委員会委員長は血液内科医であったが、大学から派遣されており、頻繁に異動するので、指示が一定していなかったが、外科医になってから、うまく回っている。
 ◎  新入者へ輸血のリスク等に関するオリエンテーションを複数回行う。
 ◎  1度や2度説明されたくらいでは忘れてしまうので、院内での決まりごとを書いた書類中に、輸血の決まりごとを収載して医師に配布。
 ◎  臨床の現場において不明な点があった場合は、輸血部にすぐ電話するような体制が整っている。
 ◎  輸血業務の24時間体制が確立している。
 ◎  血液製剤発注の一元管理を実施している。
外科はほとんどがT&Sを実施し、必要な時に必要なだけ使う体制が確立している。
 ◎  輸血通信を1回以上/月発行している。
 ◎  T&S及びMSBOSを推進している。
術前準備血にT&Sを積極的に導入し、MSBOSを見直してもらう過程でFFPの依頼量が減少した。
 ◎  患者への説明書の中に適応を列挙して、主治医がチェックを入れるようにした。これにより適応外使用が減っている(アルブミン製剤)。
 ◎  FFPについては、凝固因子製剤であるということを、新人研修医の教育を通して徹底している。
 ◎  委員会において、廃棄血の削減のため、廃棄症例は主治医にその理由を確認することにした。


山梨県の場合

 血液製剤の使用量削減が推進した理由
 (1)  県内には肝炎患者が多く、数十年前から肝炎研究の権威であった山梨医科大学第一内科教授(元学長)が中心となり、輸血の安全性に関する取組を推進してきた。現在の山梨輸血研究会はこの当時から設置されたものもある。

 (2)  平成6年頃から、血液センターが中心となり、院内輸血療法委員会の設置を働きかけ、さらに輸血療法委員会の活性化のための情報提供や資料提供も行ってきた。
 また、平成11年の指針の改訂を受けて、FFPの適正使用を医療機関に呼び掛け、各医療機関の実施状況と評価を行っている。
 さらに、全国レベルの情報提供のために、インターネットでの先進事例の入手や、学術論文の紹介等の情報提供を行っている。また、改善のみられない医療機関には医療監視の場を活用するなど県の協力も得て個別指導も行っている。

 (3) 医師も技師も輸血学会等の県外の輸血関連の勉強会に積極的に参加している。

 (4) 輸血部門で、臨床医からの血液注文伝票の内容(輸血の目的,検査値等)をみて適正使用かどうかをチェックしている医療機関が多い。
<実施例>
 ◎  FFP依頼時凝固検査の結果をチェックしたうえで依頼医師に適正使用(使用指針)とコピーした用紙を配布し理解を得ている。
 ◎  手術準備血が多すぎると思われた場合、依頼医に問い合わせ再検討していただいたこともある。
 ◎  委員会において、個々の使用例に対し不適切と思われるものを個別に主治医へ指導する。

 (5)  輸血部門の技師の意識が高く、知識も多い。

(1)  山梨輸血研究会
 主要医療機関の臨床医と血液センターが幹事となった県内の輸血関係者の自発的な輸血研究会。
 血液センターが事務局となり。活動資金は会費とセンターからの補助金。輸血情報誌の定期的な発行と講演会の開催などを行う(会員は医師、検査技師、薬剤師等)。
(2)  輸血療法委員会懇談会
 各医療機関の輸血療法委員会委員長が対象。年2回開催。輸血研究会の下部組織として設置した。目的は輸血療法委員会委員長への最新情報の提供と県内委員長同士の情報交換。各医療機関の到達目標の設置。医師と技師それぞれの立場で同じ認識を持ってもらうために開催。
(3)  輸血用血液管理部門担当者の連絡会議
 輸血部門担当者が対象。年2回開催。主催は血液センター。適正使用、廃棄血削減等輸血部門担当者の問題点について最新の情報提供と県内担当者の情報交換の場を提供。
(4)  山梨県臨床検査技師会輸血検査研究班研修会
 県内輸血担当検査技師の勉強会。血液センターが積極的に参加し、技師の輸血教育と情報提供を行っている。

 その他、医療機関での効果的な事例(先進事例を含む)
 ◎  輸血部での一元管理。
 ◎  輸血部門に専任の技師を配置すること(入って1,2年目では難しい)。
 責任を持って対処するという人がいればよい。輸血で臨床医と話のできる人。
 ◎  T&Sの徹底。
 ◎  使用指針を臨床医にアピールする(頻繁にささやく)。
 ◎  術中管理している麻酔科医に輸血療法委員会に入っていただく。
 ◎  O型を備蓄するようになって使用量削減となった(緊急の場合はO型を使用している。)。
 ◎  使用状況については、輸血療法委員会、管理会議、主任医長会を経て各科の医長に伝達している。
 ◎  輸血部の24時間体制をとっている。
 ◎  臨床科の垣根が大きくない。
 ◎  使用又は廃棄した金額の開示。
 ◎  術式ごとの使用量の検討。
 ◎  輸血部長(外科出身)の強力なリーダーシップが効果的であった。


富山県の場合

 血液製剤の使用量削減が推進した理由
 (1)  昭和62年から血液センター主催で3,4回/年、担当技師又は担当医師を対象とした連絡会、講演会等を開催してきている(平成7年には輸血療法委員会、責任医師の設置を呼びかける。)。

 (2)  富山医科薬科大学において卒前教育(「正しい輸血の在り方」に関する医学生への講義)が充実しており、また、卒後においても、輸血部において以下の取組がなされている(きっかけは、日本輸血学会のI&Aを受検して、相互査察が行われたこと。)。
 ◎  研修医の教育として、オリエンテーションをはじめ、ことあるごとに輸血学の講義で適正使用について話し、使う人が正しい認識を持って行うことができるように教育している。輸血の流れの説明、緊急輸血のオーダーの仕方等の実習を行い、献血も実施(血液型と交差適合試験及び適正使用についてのレクチャーも行う)。
 ◎  一元管理の徹底(アルブミン製剤については薬剤部が管理しているが、報告をもらって、急に増えたりしたら確認している)。
 ◎  オーダーのレベルで不適切かどうかを確認している。
 ◎  責任医師が臨床医とよく話して意識を変えるようにしている。
 ◎  24時間体制は無理でも、輸血部を午後9時半まで延長している、

 (3)  医療保険での査定が厳しいため、必要以外は使用しない体制が整っている。
 ヒアリングした医師の多くが「血液製剤の使用指針」における製剤投与時の各種検査値を認識していた。

 その他、医療機関での効果的な事例(先進事例を含む)
 ◎  輸血療法委員会から医局に上がるので、医局会の時に使用量が多い特定科を指摘して指導する。
 ◎  病院機能評価を受審して改善した。
 ◎  手術前の予約受付を禁止した。
 ◎  輸血療法委員会委員長を胸部外科医とし、全血の使用を禁止した。
 ◎  血液製剤を使用する場合は医師の立ち会いを条件とした。
 ◎  麻酔科には、主治医に了承を受けてから輸血するように指示した。
 ◎  一般病棟で輸血するケースを削減した。
 ◎  T&S及びMSBOSを実施(血液センターに近い医療機関(備蓄をおかなくてすむ環境にある)は、T&Sを全例に実施している)。
 ◎  適正使用が推進しないのは、輸血部の責任医師(供給側)と、使用者の連絡がうまくいっていないからである。使用者は、「ない」と不安になるので、副作用の恐さを徹底し、安易な輸血がなくなるように、若い医師にこまめに説明し、彼らから年輩の医師に指導していくよう働きかける。
 ◎  担当技師に使用前後のHb値等をチェックしてもらっている。
 ◎  手術用準備血は、使用しなかった場合は翌日午前中に返品するよう依頼した。
 ◎  手術前に使用するかどうかわからないときに、多量に注文することを控えてもらう。


三重県の場合

 血液製剤の使用量削減が推進した理由
 (1)  福岡県で行っている合同輸血療法委員会を参考に平成11年度から県主催の「三重県輸血療法委員会連絡協議会」を定期的に開催し、講習会や研修会開催のほか、適正使用に係る医療機関の体制整備や使用状況等に係るアンケートも実施・評価している。
 行政が中心に実施していることから、参加者も多く、適正使用に係る体制も整ってきた。
 技師、医師、県、血液センター等が参加するので、縦の線だけではなく、横の線が作られ、技師等の現場の意見が医師等の上の者にも通じるようになる(県と一体となってマニュアルの作成、同意書のマニュアルを作成)。
 各医療機関が独自で他医療機関の使用実態を調査し、他医療機関と比較しており、適正使用が進んできた。
 同委員会でI&Aの三重県版を作成し、すでに複数の医療機関を査察中。程度に応じて5段階にランク分けし、ランク5を輸血認定施設相当とし、同委員会ではランク1〜4の付与について実施(具体的には、I&Aの認定基準を緩やかにして、三重県の基準を作成)。

 (2)  県と血液センターが各医療機関を回り、使用指針等を配り、活用を促した。

 (3)  技師の教育に力を入れている。

 適正使用推進のための必要事項(提案)
 (1)  輸血業務の一元管理の実施
 (2)  輸血管理者への教育(臨床医への啓蒙、データチェック等)
 (3)  臨床医への適正使用に係る啓蒙(EBMの提示)
 (4)  院内輸血療法委員会活動の活性化
 (5)  レセプトチェックの強化
 赤血球はヘモグロビン数を記入してくれないと出さないようになり、先生たちへの圧力になっている。
 (6)  NSTの稼働(アルブミン製剤の適正使用)
 (7)  三重県のように行政、医療機関及び血液センターが連携して適正使用、一元管理、安全な輸血医療の推進を行う。
 講演会及び講習会の実施、I&Aの実施、輸血認定医及び認定技師の養成等

 その他、医療機関での効果的な事例(先進事例を含む)
 ◎  輸血療法委員会委員長が副院長(外科医)。
 ◎  アルブミン製剤は薬剤部が管理しているが、アルブミンのデータ調査を行っている。チェックも行う(データを療法委員会に出してもらうようにするのがよい)。
 ◎  管理職の協力は現在はあまりなく、技師が主導となって行っている。技師会のみの勉強会があり、その他研修医の指導も行っている。
 ◎  T&Sを100%実施しているところが増えてきている。


 なお、適正使用の図られていない地域においては、総じて以下のことが指摘されましたので、情報提供いたします。該当する医療機関については、貴職から改善してもらうよう指導方願います。
 ただし、今回調査に御協力いただいた県は、適正使用に理解があり、現状を改善するために、当該調査を受け入れていただいているものであり、なかには、当該調査を断った県もあることに留意する必要があります。

現行の輸血医療に対する医療機関(特に臨床医)の問題意識が不十分なこと
 貴重で善意の献血からなる製剤である一方、感染性を有することの認識や他県及び他医療機関と比較し使用量が多いことを問題視する意識が不足していること
県及び血液センターが適正使用推進の役割について認識不足であること
医療機関における適正使用の責務の無自覚及び現状把握が不徹底であること
 院内での診療科別血液製剤使用状況を把握しえていないこと(月・年次)
輸血業務の一元管理体制の未整備
輸血部門と臨床医とのコミュニケーションの不足していること
医療機関管理者の輸血部門に対する理解不足、院内での輸血に関する責任体制が確立していないこと、輸血部門の適正輸血への関心が低いこと
輸血療法委員会の形骸化
輸血療法委員会でアルブミン製剤等の血漿分画製剤の適正使用が議題に取り上げられていないこと

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