H17.10.19

生活保護制度・児童扶養手当制度の見直しの方向について

石川県知事 谷本 正憲

I  生活保護制度について
 基本認識
(1)  保護費の上昇や保護率の地域間較差の原因は、共同作業における科学的な分析により、実施機関の体制によるものではなく、失業や高齢化、離婚といった経済的・社会的な要因によるもの

(2)  就労の可能性が極めて低い、高齢者や傷病・障害者世帯が全体の8割を超えている現状においては、就労自立支援の効果は極めて限定的。

 生活保護制度の見直しの方向
(1)  生活保護制度は、憲法第25条の国民の生存権を確保する、最後のセーフティーネットであり、経済的・社会的な様々な要因によって、大きく影響を受けるものであることから、我が国の社会制度全体の在り方を踏まえて議論すべきであり、保護費削減に矮小化して議論すべきものではない。

(2)  我が国の生活保護を含めた低所得者対策を実効あるものとするためには、医療・介護・障害者施策・ホームレス施策等といった社会保障制度全体を見通した幅広い分野にわたるきめ細かでバランスの取れた対応が不可欠であり、社会保障審議会において、しっかりとした専門的な議論が必要。

(3)  とりわけ、高齢者の所得政策として年金制度は最も重要な政策である。現状の加入状況は、極めて憂慮すべき状況にあり、国において加入促進や収納率の向上といった対策に全力を挙げて取り組むべき。

II  児童扶養手当について
 児童扶養手当の認定基準は、実質的に収入のみであり、かつ現金給付のみであることから、地方自治体の裁量はない。法定受託事務としての現行の国・地方の役割分担は堅持すべき。

III  三位一体の改革の推進
 法定受託事務たる生活保護費・児童扶養手当の国庫負担率の引き下げは、「三位一体の改革」に名を借りた地方への負担転嫁であり、この制度に照らして、断固として 受け入れられない。

 地方6団体は7月に「国庫補助負担金に関する改革案(2)」を策定し、総額1兆円の平成18年移譲対象補助金一覧を策定し、小泉総理に手交したところである。国においては、制度の趣旨に反する無理までして、地方に裁量権を与えようとするかのような制度改正や地方への負担転嫁以外の何者でもない国庫負担率の引き下げを行うのではなく、この提案を真摯に受け止め、三位一体の改革を着実に実行すべき。
以上

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