資料5


第5回協議会 生活保護関係資料


−目次−


I  生活保護法における資産調査について

II  被保護者の不正受給への対応について

III  自立支援について
 現状と見直しの方向性
 自立支援プログラムの基本方針
 福祉事務所における組織的対応のイメージ
 保護世帯の状況と自立のための支援策
 個別支援プログラムの例(日常生活自立・社会生活自立に資するもの)
 個別支援プログラムの例(就労自立に資するもの)



I  生活保護法における資産調査について

 1  保護申請の流れ
保護申請の流れの図

 2  資産等に関する調査について

 生活保護法第29条に基づき保護の実施機関が金融機関等関係先に対して行う資産の保有状況等に関する照会(報告要求)は、被保護者の同意を要件としていないが、金融機関等からは、照会に際し、被保護者が照会に同意する旨を記した書面(同意書)の提出を求められることが一般的である。
 そこで、国の通知において、以下のように規定。
(1)  同意書を申請者等から提出させること。
(2)  同意書の提出がないために資産の保有状況等が把握できない場合には、適切な保護の決定を行うことが困難となるため、保護申請を却下することができること。

  (参考) 資産等に関する調査における主な照会内容と照会先
   ○ 預貯金 口座の有無、預貯金の有無及び金額等[調査先:銀行・郵便局等]
   ○ 生命保険 保険加入の有無、保険種類、加入期間、保険料及び解約返戻金[調査先:生命保険会社等]
   ○ 公的年金等 公的年金等の受給の有無、受給資格の有無等[調査先:社会保険事務所等]
   ○ 不動産等 土地及び家屋の有無、物件概要等[調査先:各自治体固定資産課・各陸運局等]
   ○ 就労収入等 就労収入等の有無、収入額等(必要に応じ事業主へ照会)[調査先:各自治体税務課・事業主等]


II  被保護者の不正受給への対応について

【不正受給処理の流れ(例)】
発見
事実確認




 被保護者からの聴取
 課税調査(所得額把握)
 金融機関等への照会
所内会議による検討
















 当該事案につき63条処理(費用返還)とするか78条処理(費用徴収)とするか決定
 不正受給の処分に際して、法63条を適用するか法78条を適用するかについては、個々の事案の内容を勘案し、保護の実施機関が判断する。一般的には、被保護者に不正受給の意図があったかどうかによって判断される。
 法63条による処分に際しては、保護の実施機関の裁量により返還額の全額又は一部免除が可能であるのに対して、法78条による処分に際しては、返還額免除は不可。
 返還額及び納付方法(一括・分割)の決定
 告発及び被害届の提出を行うかどうか決定
 法78条が適用される処分のうち、特に悪質なケースについては法85条等の罰則規定の適用も可能。
 告発についての判断基準を独自で設けている自治体もある。
返還処分決定

 被保護者への通知
返還金徴収
 被保護者は一括もしくは分割により返還

生活保護法における規定>

第78条(費用の徴収)
 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。

第85条(罰則)
 不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治40年法律第45号)に正条があるときは、刑法による。

参考)
第63条(費用返還義務)
 被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。


III  自立支援について
 1  現状と見直しの方向性
現状 問題点 見直しの方向性
∧被保護者∨
被保護世帯が抱える問題は多様

 精神疾患、高齢者等の傷病(社会的入院を含む)
 DV、虐待
 若年無業者(NEET)、多重債務、元ホームレス等

 高齢者世帯(特に単身世帯)の増加
平成7年度の世帯数を100とした割合(平成15年度)
 高齢者世帯 171.4 高齢者単身世帯 170.3

 社会的きずなが希薄
相談に乗ってくれる人がいない 38.3% (平成15年)
∧地方自治体の運用∨
実施体制上の問題

担当職員の配置数・その経験の不足
 − 生活保護担当職員の配置状況(平成16年度)
 全国 11,944人(1,198人不足)
(参考) 生活保護担当職員の不足数の年次推移
H12 H13 H14 H15 H16
354人 576人 858人 1,089人 1,198人
 − 指導監督担当職員のうち、担当職員経験がない者
 全国平均 23.8%(平成16年度)
図 図
自立支援プログラム
の導入


 自立支援プログラムの基本方針

 自立支援プログラムの策定
 (1)  管内の被保護世帯全体の状況を把握

 (2)  被保護者の状況や自立阻害要因を類型化し、それぞれの類型ごとに対応する個別の支援プログラムを策定
(例1)  高齢者→傷病や閉じこもりを防止し、健康的な自立生活を維持するプログラム
(例2)  精神障害者・高齢者→長期入院を防止・解消し、居宅生活の復帰・維持を目指すプログラム
(例3)  稼働能力を有する者→就労に向けた具体的取組を支援し、就労を実現するプログラム

 (3)  これに基づき個々の被保護者に必要な支援を組織的に実施

 実施体制の充実
 ○  他法他施策や関係機関(保健所、ハローワーク、精神保健福祉センター等)の積極的活用

 ○  民生委員、社会福祉協議会、社会福祉法人、民間事業者等への外部委託(アウトソーシング)の推進や非常勤職員の積極的活用

 ○  セーフティネット支援対策等事業費補助金や生業扶助の積極的活用


 3  福祉事務所における組織的対応のイメージ

現在〜CWは被保護者に係る全ての事務を個人で担当
SV 査察指導員
  CW 現業員
図

組織的対応〜ハローワーク等関係機関や専門家等を活用した組織的・横断的対応
図


 4  保護世帯の状況と自立のための支援策

保護世帯の状況
 
支援の方向性
 
自立のための支援策
 
入院している

障害・傷病がある

社会的きずなが薄い

扶養義務者からの援助が得られない

住まいの場が確保できない

稼働能力を活用できない

→
病院(施設)から在宅へ

↓

在宅において自立して
生活する(日常生活自立)
グループホーム、福祉ホーム(介 護保険、障害者支援)
精神障害者退院促進事業
他法他施策

社会資源の活用
ホームヘルプサービス、デイサー ビス(介護保険、障害者支援)
保健師、管理栄養士等による生 活指導、服薬指導
↓    
社会との関わりをもって
生活する(社会生活自立)
介護予防事業の活用(介護保険)
ボランティア活動の紹介
生涯学習機会の紹介
↓    
福祉から就労へ
(就労自立)
授産施設、作業所
ホームレス自立支援事業
ハローワーク、職業訓練施設
シルバー人材センター
        ※生活保護では就労支援策として生活保護受給者等就労支援事業の実施やセーフティーネット支援対策等事業費補助金を活用し就労支援員等を配置  


 5  個別支援プログラムの例(日常生活自立・社会生活自立に資するもの)

「精神障害者退院促進支援事業」活用プログラム
【対象者】 精神科病院に入院している精神障害者のうち、症状が安定しており、受入条件が整えば退院可能である者
【支援例】
(1) 都道府県又は指定都市が実施する精神障害者退院促進支援事業(精神障害者地域生活支援センターが中心となる退院促進支援協議会において、協力施設等における訓練(精神障害者通所授産施設における授産活動、グループホームにおける体験入居等)を調整・実施)を活用し、退院のための訓練を行う。
(2) 担当ケースワーカーは、当該事業の自立支援員の協力を得て、退院先の確保等を行う。
現在、障害者自立支援法案が国会に提出されているところであり、同法の施行等により、サービス体系等の見直しが実施されることに留意する。

日常生活意欲向上プログラム
【対象者】 「ひきこもり」の回復途上、うつ等により、日常生活における自立意欲に欠ける者等
【支援例】
(1) 福祉事務所において、精神保健福祉士等を精神障害者等自立支援員として雇用し、カウンセリングを実施する。
(2) 保健所等を通じて、精神科デイケア、精神障害者地域生活支援センター、当事者グループが実施するグループカウンセリング等の紹介を受け、参加させる。

社会参加活動プログラム
【対象者】
(1) 稼働能力を有せず、近隣、親族等との交流が希薄で、地域社会との交流が必要と考えられる者
(2) 遊興場等に頻繁に通い浪費の傾向がみられる等、日常生活が乱れ、生活の維持、向上等の義務を果たしていないと考えられる者
(3) 稼働能力を有するが、昼夜逆転等日常生活の乱れがあり、直ちに就労することが困難と判断される者
【支援例】
(1) 社会福祉協議会を通じ、地域貢献活動を受け入れる社会福祉施設、公園清掃等を実施する公園管理者等に依頼し、福祉、環境等の地域貢献活動に参加させる。
(2) 社会福祉協議会が自ら実施する地域貢献活動の事業に参加させる。

高齢者健康維持・向上プログラム
【対象者】  高齢者であって、心身の健康を損ないつつある、社会とのつながりが欠ける等と考えられる者
【支援例】
(1) 民生委員、社会福祉協議会を通じたボランティア等による定期的な家庭訪問により、必要な見守りを実施する。
(2) 担当ケースワーカーの家庭訪問に、保健師、管理栄養士等を同行させ、生活指導、栄養指導等を行う。
(3) 社会福祉協議会を通じた地域貢献活動の紹介、社会教育担当部局を通じた生涯学習の機会の紹介等により、社会とのつながりの維持、向上を図る。
(4) 介護予防事業の活用

生活習慣病患者健康管理プログラム
【対象者】  生活習慣病にり患し、医療扶助を受けている者であって、生活習慣の改善が必要と考えられる者
【支援例】
(1) 担当ケースワーカーの家庭訪問に、保健師、管理栄養士等を同行させ、生活指導、服薬指導、運動指導、栄養指導等を行う。
(2) 服薬、食事、運動等の記録をつけさせ、報告を求める。

元ホームレス等居宅生活支援プログラム
【対象者】
(1) 元ホームレスであって、居宅生活の維持・継続に不安がある者
(2) 精神病院を退院した元長期入院患者や、精神病院への入退院を繰り返す者で、居宅生活の維持・継続に不安がある者
【支援例】
(1) 民生委員、社会福祉協議会を通じたボランティア等による定期的な家庭訪問により、必要な見守りを実施する。
(2) 担当ケースワーカーの家庭訪問に、保健師、管理栄養士等を同行させ、生活指導、服薬指導、栄養指導等を行う。
(3) 救護施設のショートステイ事業の活用により、一時的に不安定になった精神状態を安定させる。
(4) 救護施設通所事業、通所授産施設、小規模作業所等に通わせる。
現在、障害者自立支援法案が国会に提出されているところであり、同法の施行等により、サービス体系等の見直しが実施されることに留意する。

多重債務者等対策プログラム
【対象者】 多重債務者であって、債務整理が終わっていない者や、金銭管理能力に問題があり借金を繰り返す者
【支援例】
(1) 法律扶助協会、無料法律相談等の活用による、早期債務整理の相談助言
(2) 金銭管理能力の修得のための家計簿記帳の指導
(3) ギャンブル依存症等精神的な問題が借金の原因である場合には、保健所等を通じて、精神科デイケア、当事者グループが実施するグループカウンセリング等の紹介を受け、参加させる


 6  個別支援プログラムの例(就労自立に資するもの)

「生活保護受給者等就労支援事業」活用プログラム
平成17年度新規事業。平成17年6月より(1)〜(3)を順次開始。
(福祉事務所1,229カ所のうち669カ所で開始。平成17年9月末現在)

【対象者】  稼働能力、就労意欲を有し、就労の開始又は継続を阻害する家庭環境上の要因等がなく、就労が可能な者
【支援内容】
 (1)  支援対象者を福祉事務所がハローワークに支援要請(随時)
(実施状況)  3,042人を支援要請(平成17年6月〜8月)
 (2)  福祉事務所とハローワークで「就労支援チーム」を編成し、支援対象者と面接を実施
(実施状況)  2,067人の面接終了(平成17年6月〜8月)
 (3)  面接の結果をもとに、就労支援メニューを選定し、就労支援を実施
 就職支援ナビゲーターによる個別支援
 トライアル雇用の活用
 公共職業訓練等のあっせん
 生業扶助等の活用
 一般の職業相談・紹介の実施
(実施状況)  支援の結果、就職381人(うち一般198人、パート183人。平成17年6月〜8月)

実施状況は速報値のため、今後変動する場合がある。

福祉事務所における就労支援プログラム
【対象者】 「生活保護受給者等就労支援事業」活用プログラムの要件の一部を満たさない者等
(例えば、就労経験がなく自信がない等のため、就労意欲が十分でない者)
【支援例】
(1) 担当ケースワーカー、査察指導員、福祉事務所に配置した就労支援のための専任の職員(非常勤で雇用した職業相談の経験者、カウンセラー経験者等)等により、継続的かつきめ細やかな就労相談、就労意欲の喚起、公共職業安定所への同行訪問による適職探し等を実施。
平成17年度専任配置数 247人(137自治体)・・・セーフティネット支援対策等事業費補助金の活用
(2) 協力事業所による職場訓練により、就労経験を積ませるとともに、就労意欲の維持、向上を図る。
(3) 生業扶助の活用により民間教育訓練(ビジネスマナー、パソコン講習等を含む。)を受講させる。

福祉事務所における若年者就労支援プログラム
【対象者】 「生活保護受給者等就労支援事業」活用プログラムの要件の一部を満たさない者のうち、中学卒、高等学校中退等の若年者(15歳から18歳まで)
【支援例】
(1) 担当ケースワーカー、査察指導員、福祉事務所に配置した就労支援のための専任の職員(非常勤で雇用した職業相談の経験者、カウンセラー経験者等)等により、継続的かつきめ細やかな進路相談、就労相談、就労意欲の喚起等を実施。
(2) ジョブカフェ等専門機関の利用を助言、指導(必要に応じ同行)。
(3) 生業扶助の活用により高等学校、専修学校へ進学させる。

精神障害者就労支援プログラム
【対象者】 精神障害等により直ちには通常の就労が困難と考えられる在宅の精神障害者
【支援例】
(1) 精神障害者授産施設、精神障害者小規模作業所、精神障害者社会適応訓練事業等の活用により、必要な訓練を行う。
(2) 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が設置する地域障害者職業センターを通じ、職業準備訓練の活用、ジョブコーチ(職場適応援助者)の支援を受け、通常雇用に移行する。
(3) 公共職業安定所との連携を通じ、試行雇用(トライアル雇用)の活用により、雇用の確保を図る。
現在、障害者自立支援法案、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案等が国会に提出されているところであり、同法の施行等により、施設体系等の見直しが実施されることに留意する。

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