資料2

「第4回協議会厚生労働省提出資料」に対する意見

高知市長  岡ア 誠也

 「級地の指定など地域における生活保護基準設定に関し、地方自治体の裁量・責任の在り方」について

生活保護制度は、憲法第25条の理念に基づき、国民の最低限度の生活保障を目的とする制度であり、生活保護基準は公平・平等でなければならない。したがって、その基準は客観的データを基に、全国的整合性をもって定められるべきものである。その際には、地域の実態を反映させる必要があるが、それについても客観的データによるべきものであり、地方の裁量に委ねることは、生活保護制度の理念に反する。

 ○  国は、生活保護基準について、審議会報告書で見直しが指摘されている課題のうち、未だに着手していない級地制度全般についての見直し、単身世帯基準の設定について早急に対応するとともに、多人数世帯基準の是正等について、更に見直しを進めるべきである。


 「医療扶助の給付における福祉事務所の役割・責任」について

 福祉事務所の役割は、生活保護の実施機関として、国が定める法律や政令等に基づき、医療扶助に係る事務を実施することである。福祉事務所においては、医療扶助の適正化のため、被保護者等に対する重複・頻回受診の是正指導、レセプト点検による診療報酬の過誤調整を行うなど、医療扶助に係る事務を適切に実施している。
 今後とも、こうした福祉事務所の役割・責任については維持すべきである。


 「我が国の医療は国民皆保険制度を基本にしており、被保護者もその中で対応するという考え方もあり得る」について

 生活保護制度は、憲法第25条の理念に基づき、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度であり、医療扶助は生活保護制度の枢軸である。
 医療扶助は、保険制度には馴染まない。

 ○  疾病が貧困の原因であり、また貧困が疾病を生みやすいということから、生活保護制度の創設以来、医療扶助は、生活扶助と並んで生活保護制度の枢軸となっているものである。
 国民健康保険制度もそれを前提として、成り立っているものであり、合理的理由もなく、被保護者の医療扶助を国民健康保険で対応するという考え方もあり得るとすることは理解しがたい。

 ○  被保護者の医療扶助を国民健康保険で対応させることは、高齢者や無職者が集中するという構造的な問題を抱え、極めて厳しい財政状況にある国民健康保険に国の負担を転嫁するものである。

 ○  国の責任で行うべき法定受託事務である生活保護の医療扶助を、自治事務である国民健康保険に組み入れることは、地方自治の基本的理念、生活保護の基本的理念からも問題である。


 「住宅扶助基準の設定及び実施について、地方自治体の裁量・責任の在り方」について

 地方自治体の裁量・責任で住宅扶助基準を設定することとなれば、憲法第25条に基づく生存にかかわるナショナルミニマムについて、公平・平等が確保されなくなり、生活保護制度の理念に反することとなる。
 住宅扶助基準の設定は、地方自治体の裁量に委ねるべきではない。

 ○  地方自治体の裁量・責任で住宅扶助基準を設定することとなれば、全国レベルでの均衡が損なわれ、被保護者の転入・転出という事態も起こり得る。

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