資料10

第10回検討会において「看護記録」について出された主な意見

【看護記録を法律に位置づける必要性】

 看護記録は患者の状態とともに、看護職員の看護行為の目的や必要性の判断、実施した内容を表したものである。医療、看護の継続性を図ること、診療情報を医療従事者と患者との間で共有すること、看護の内容を評価する指標として法的に整備していくことが重要であると考える。

 看護記録は重要な裁判資料として扱われている。患者の立場から言えば、正確な医療記録があることが重要で、その医療記録の中で患者がどういう状態においてどのような処置を受け、どのような投薬をされたのかといったことが正確にわかる必要がある。医療の事後的な評価においても絶対に必要である。記録が全て法律に根拠づけられていなければ、全ての医療機関に行きわたらせることはできない。

 看護師が判断をし、実施したことをきちんと看護記録の中に残していくということが専門職として重要である。それは医療の安全につながり、専門職として自らを確立していくことにつながっていくと思う。そのような観点で、専門職としての看護師は、医師や薬剤師と同じようにきちんと記録を書き、それを後で評価していくことに意味があると思う。

 看護記録はどこに基準を置いて書くものか、大変不明確な状況になっている。勤務場所に限らず、看護師が何か実施したときに、どのように記録するのかを明確に法的に義務づけることが必要である。

 いままでは医療に不信感がある人が記録を手にしたいというものだったのが、現在は、自分がどのように看護師に捉えられていたかを客観的に知るために記録を入手したいというように、患者側のニーズにも変化がある。開示に耐えうる看護記録が、看護の質を高めることになるのではないか。

 医師の指示によって行った行為の記録というのは、絶対に書くべきである。看護師が実施したことや、そばで見た患者の状態を書くということを義務づけないと、患者は大変なリスクを抱えることになる。医師がきちんと処方箋に書くということを言われているならば、看護師も実施した人がその人の責任で記録するべきである。

 診療に対する諸記録というのは、当然、看護記録も入っていると思う。チーム医療が行われている現状において、看護記録を法制化するのであれば、他のコメディカルの記録もすべて法制化しなければならないのではないか。診療記録に当然看護記録も、他のコメディカルの記録も含まれるという解釈で十分に対応できるのではないか。


【法制化した場合の課題】

 医師法における診療録の記載事項は、非常に大まかな書き方になっている。看護記録の様式は病院によって異なるということはあるが、書かれるべき内容については、ある程度統一したもので合意はできると思う。

 看護記録は、要領よく、必要なことを書くということが必要である。内容を指導することが一番大事である。法制化をして、細かいことを法の中に書いていくことでは、全てのことが良い方向に向かわないと思う。法制化するのであれば、簡潔な内容にすべきであると思う。

 法制化する場合には必要最低限、業務上、ここだけは絶対必要というところだけに抑えて、あとはガイドラインに記述すればいいと思う。

 最終的に看護記録を法制化するときは、記録すべき必要最低限の内容について規 定するという形にせざるを得ないと思う。現行法上、一般病院、地域医療支援病院、特定機能病院で、診療記録の取り扱いが違っているという問題がある。記録の保存期間についても2年、3年とばらつきがあり、その辺りはすぐに直せるのではないかと思う。

 記録作成の効率化は看護の分野でも長年の課題である。現実的に、現場では大変な努力をして、なるべくベッドサイドに行けるように、記録や申し送りの改善は相当なされている。記録に要する時間も相当短縮を図っていると認識している。

 患者にとってはもっと看護師にそばにいて欲しいとか、話を聴いて欲しいというニーズがある。ベッドサイドにいくよりも書くことを重視するという現状が、本当にそれで患者のニーズに合うのか疑問である。

 看護記録に時間がとられ過ぎているのではないかということは問題になっており、できるだけ簡潔に、効率よく書くことが必要である。効率よく、ポイントをおさえて短時間に書く判断力や文章力などを身につけるためには、基礎教育や新人研修でも、きちんと判断できるように教育や研修を充実していくことが重要になってくると考えている。

 書き方の方法はどうあれ、どのように看護師が判断したのかについて、その判断したところを具体的に記録に書くことが非常に重要である。細かな看護記録があることで、24時間3交替で大切な情報がつながっていくということもある。


【外来、病院以外の施設における看護記録について】

 外来の記録、その他の社会福祉施設等の記録がどういう状態かということについて看護協会でも把握してない。大病院では、外来でも侵襲性の高い行為を行ったり、保健指導等を行った場合には、記録に残していると思うので、全く記録を作成していないということはないと思う。法制化ということを考える場合には、その辺がどのようになっているのか、把握する必要があると思う。

 外来の記録が、いま大変問題になっている。患者が言ったことを看護師が聞いていたにも関わらず、情報として記録に残っていないため、誰が責任をとるのかという問題が生じている。看護師は看護師としていろいろなことを実施しているが、それらを記録に残さないと、患者について集約された記録にはならない。保健指導もそうであるが、外来記録も看護師が関わってケアをしたことを記録してないと、看護師が何をやっているのかわからない。

 救急センターにおいては、家族のケアも含めていろいろ行っているが、実際には医師が行ったことしか書かれておらず、患者にとって大変不利益なことである。看護師が観察した状況を看護記録として記述する必要がある。

 基本的には、看護師である以上、記録を書かなくてはいけないのではないか。現在、看護記録にはかなりのばらつきがあるということを危惧する。外来における看護のあり方というものを、看護全体としてきちんと議論をしていただきたい。福祉施設等では病院における看護師の役割とはまた違った役割を求められており、何をどう書くかという点では少し違いがあってもいいのではないか。

 保健師助産師看護師法で書き込むとすれば、入院部門は看護記録を書くが、外来部門は書かない、という話にはならない。

 社会福祉施設等で看護記録がどのようになっているのかわからない。これを機会に調査する必要がある。

 患者やその家族が相談の中で、不信感として訴えることとして、看護師に言ったはずなのに、それが医師に伝わっていない、というようなことがよくある。一定レベルの基準が決まり、そういうことがなくなることは、患者にとってはものすごくありがたいことだ。しかし、今の外来は患者30人に対して看護師1人の配置をするということすら十分でなく、看護師は忙しく走り回っている中で、ほんとうに記録を書く時間ができるのだろうか。

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