第19回厚生科学審議会
医薬品販売制度改正検討部会
平成17年10月12日
委員 安田 博


医薬品販売に従事する者の資質等について


1 資質について


(論点1) 各業態における資質確認方法の違いと今後の在り方

  現在、一般用医薬品の販売に専門的知識をもって従事する者に関しては、薬剤師は別にしても、薬種商販売業及び配置販売業の従事者について各々別個に規定され、求められる資質の内容も各々異なっている。
 こうした現状については、今後、医薬品のリスクに応じた適切な情報提供や相談体制の整備に当たって、改めていく必要があるのではないか。


   薬局、一般販売業については、開設者(許可申請者)の資質に関わる要件は特になく、薬剤師の設置が義務付けられるという仕組みであるのに対し、薬種商販売業、配置販売業については、開設者(許可申請者)が必要な資質を備えることを確認する仕組みになっている。
 消費者への的確な情報を伝え、相談に応じる体制とするためには、薬種商販売業、配置販売業についても、開設者(許可申請者)の要件を審査するのではなく、適切な情報提供及び相談に携わる者として一定の資質を備えた者が設置されていることを確認する仕組みとするべきではないか。

 (1) 医薬品は、副作用等のリスクを伴う生命関連商品であり、期待される効能・効果を得るには、消費者に対して、医薬品のリスクに応じた「適切な情報提供」を行い、十分な理解のうえ、適正に使用してもらうとともに、消費者からの疑問等に対する「適切な相談対応」が重要であると考えている。

 (2) したがって、消費者への的確な情報提供や相談対応するには、専門的知識を持って販売に従事する者が、個別に対面で対応できる体制を整えておく必要があると考えている。
 この体制が整備されている限りにおいては、原則として、同一の資質レベルを持っている者については、同一のリスクの品目を扱えるようにすべきであると考えている。

 (3) 開設者(許可申請者)には、販売に従事する者よりも店舗(薬剤)管理や従業員教育など業全体を管理することが求められることから、実務経験(研修)が必要と考えられるが、消費者に対する適切な情報提供や相談対応を行うには、一定の資質を備えた者が設置されていることを確認する仕組みの方が適切であると考える。


(論点2) 一般用医薬品の販売に当たって求められる資質の内容

  現在、薬種商販売業許可を取得するに当たって、申請者に試験が課されているが、その内容をどのように考えるか。 特に一般用医薬品の販売に際して適切な情報提供及び相談対応を行うための資質を確保するという観点から、改善すべき点はあるか。

 (1) 副作用等のリスクを伴う医薬品を取り扱う専門家には、消費者に対する適切な情報提供や相談対応が求められることから、薬種商販売業だけでなく、医薬品の販売に携わる者については、一定の資質が必要と考えており、その確認を行うため、試験が課されることは止むを得ないと思っている。

 (2) 現在の薬種商販売業の認定試験内容について、配置販売業者である我々が意見を差し挟む立場にないが、一定の資質の確認にあたっては、都道府県が行うにしても全国で同一レベル、内容で行われるべきでないかと考えている。

 (3) 一方、配置販売業界では、全国配置家庭薬協会(以下「全配協」という。)において、統一研修テキストを作成し、昭和55年度から定期的に研修を実施してきている。また、平成9年4月からは、同協会の自主的な資格認定試験による「資格認定制度」を開始し、これまで、約6割にあたる16,524名が合格している。(平成16年末の配置従事者数:28,808名)

 (4) この資格認定試験は、「薬理学」、「解剖生理学」、「保健環境衛生学」、「一般教養」、「薬品各論」、「薬事法」の6分野から出題(出題例:別紙参照)されており、試験内容については、基礎化学と実地試験を除き、現在、各都道府県で行われている薬種商販売業の認定試験とほぼ同等なレベルと考えている。

 (5) なお、配置販売は、経時変化が起こりにくい安定性の高い医薬品を各家庭に常備する形態であり、薬剤管理を必要としないことから、上記試験では基礎化学と実地試験については行っていないが、この試験により資格認定された者については、消費者への情報提供に必要とされる薬の安全性などの基礎知識は、薬種商販売業とほぼ同等のものを取得していると考えている。


(論点3) 資質確認の具体的方法

  現在薬剤師になるためには国家試験に合格する必要があるが、他の薬種商販売業及び配置販売業の専門家たる従事者についても、適切な情報提供や相談対応のために必要な資質を備えていることを確認する必要があると考えられる。
 仮に、薬局を除き、業態に関わらない共通の一定の資質確認の仕組みを設ける場合、試験による確認が必要であるか、または講習会受講のみでよいか。この場合、現在配置販売業者について扱える品目が限られていることについて、どう考えるか。

 (1) これまでの薬種商販売業や配置販売業の業態に関わらず共通の一定の資質確認の仕組みを設けた場合、同等の資質レベルが求められることから、現在、薬種商販売業において認定試験による資質確認が行われていることを踏まえると、配置販売業界としても、全体として資質レベルを引き上げ、試験による資質確認を行わざるをえないと考えている。

 (2) さらに、その試験レベルとしては、前述のとおり、消費者への情報提供に必要とされる基礎知識内容を確認することができる全配協の自主的資格認定試験が一つの目安となるのではないかと考えている。

 (3) 配置販売業は、現在、厚生労働大臣が定めた配置販売品目指定基準に基づく範囲内の品目を取り扱っているが、現在、全配協が自主的に行っている資格認定試験に合格するレベルまで配置従事者全員の資質を高めれば、取り扱う品目についても、薬剤師が取り扱わなければならない医薬品以外のもの(例えば、リスク分類B〜D)は、取り扱えるようにすべきであると考えている。


(論点3) 資質確認の具体的方法

  資質の確認に当たって、実務経験はどのように評価されるべきか。

 (1) このたびの検討会では、医薬品のリスク等の程度に応じた「適切な情報提供」や「相談対応」等を行うための実効性のある販売制度の在り方をテーマにしてきており、一般用医薬品の販売に専門的知識をもって従事する者に求められる資質(医薬品のリスクに応じた適切な情報提供や相談対応等)としては、薬理学、生理学のほか、各医薬品に関する相互作用や副作用、適応方法等、医薬品のリスクに応じた知識が求められるべきと考えている。

 (2) これらの知識については、実務経験を通じ一層深まっていくものではあるが、情報提供に必要とされる基礎知識については、座学のみでも十分習得できるものではないかと考えている。

 (3) また、現行法における薬種商販売業者や配置販売業者に対する実務経験については、論点1で述べたように、医薬品を取り扱う専門家の資質という面より、販売業の許可に関する業全体の管理面に関連して規定されていると考えている。









 (4) なお、仮に、資質確認に当たり、実務経験が求められるとした場合、配置販売は、
(1) 懸場帳に基づき、特定の消費者を定期的に訪問し、各家庭とは信頼関係が確立されていることや、消費者に対して、販売時の説明をはじめ、事後相談や市販後の副作用の発生等への対応など、医薬品販売に関するいろいろな状況に応じて、能動的な対応が行えることから、密度の濃い研修が行えること。
(2) 配置箱に薬を預けるシステムであることから、取り扱う医薬品の種類については、店舗における販売よりも限定した品目数の取扱いになること。
などの配置の販売形態から考えると、店舗販売に比べて、実務経験の期間は短くても差し支えないのでないかと考えている。










(論点3) 資質確認の具体的方法

  販売に際しての適切な情報提供や相談対応を行うために資質の確認が必要であるとしても、それ以上に、例えば医師、薬剤師のように、いわゆる身分法を特別に設けた上で、資質の名称を定め、資質を備えていない者の名称使用制限などを行っていくことまで必要か。

 (1) 試験により資質確認が行われることになった場合、少なくとも薬事法の中で明確に規定していただきたいと考えている。


(論点4) 円滑な移行措置

  一定の資質確保のための仕組みを設けるとした場合、現在既に薬種商販売業及び配置販売業に従事している者について、円滑な移行措置が必要ではないか。

 (1) 一定の資質確保のための仕組みを設けた場合、特に、試験確認による資質認定の仕組みが導入された場合、既存の配置従事者で直ちには合格できない者が出ることが想定される。

 (2) また、法人の配置販売業者では、配置に従事する者の転職等が多く、資質認定の仕組みが導入された場合、従事者の確保が非常に困難になることが想定され、ひいては、不回り家庭の増加により、消費者への不利益が生じる可能性も懸念される。

 (3) このような配置販売を取り巻く特別な事情を踏まえうえで、既存の配置従事者が新しい制度で求められる資質レベルに達するまでの十分な準備期間を設けるなど、円滑な移行措置をお願いしたいと思っている。



2 関与の在り方について


(論点5) 専門家の関与の在り方

   消費者への情報提供にあたって、リスクが特に高いものを除き、リスクの程度に応じ、専門家の関与の下で従業員が行っても差し支えないものを考える場合、どのような条件が考えられるか。

   リスクの程度にかかわらず、消費者から相談があった場合には専門家が直接対応すべきでないか。

 (1) 消費者への情報提供は、専門家が消費者に個別に対面で行うことができる体制を整えておくことが大切であると考えている。

 (2) また、ご指摘のとおり、消費者側からの相談があった場合には、リスクの程度に関わらず、専門家が直接、自ら有する知見に基づき、的確、誠実に対応する必要があると考えている。




出題例 (PDF:175KB)



医薬品販売に係る専門家の資質について 〜薬剤師教育の視点から〜

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