(資料1)

第7回研究会における主な議論の概要
( 未定稿 )


(研修について)

 (埼玉県では)年間を通じておおむね月1回の研修を行う。昨年は3回行ったが、参加した市職員が4月に3分の2くらい異動した。児童相談所へ1年間の長期派遣をしてもらえればよい。任用資格があれば児童福祉司を発令して職員として働いてもらうなどできるか今検討している。

 (三重県では)初めて児童相談に携わる人について、年7回にわけて研修を行っている。児童福祉司任用資格を持っている人には、大学教授に来ていただき、ハイレベルな研修を行っている。今年から研修を企画・調整する児童センターができたので、そこが中心となって全県的に展開している。

 (横須賀市では)今年が初めてだが、児童家庭相談にあたる職員を1人4日ずつ児童相談所で研修させている。ケース会議への出席や、ワーカーの家庭訪問へ同行など、実際に児童相談所の中での動きを見せてもらっている。普段経験できないし、視点の違いがあり、とても良い勉強になる。
 ただ、4日間職場を空けるのは非常に大変であり、受け入れる児童相談所にとっても重荷になるので、体制をきちんとする必要がある。

 (相模原市では)県と市で多くの部署が人事交流している。その中で2年間職員が児童相談所で研修をした。現在は、児童相談所の援助方針会議に職員が1人ずつ参加させてもらっている。

 (青森県では)今年は4月から7月にかけて、各児童相談所で、それぞれ担当職員を集めて研修に取り組んでいる。具体的な事例について、市町村に出向いて助言をすることに特に力を入れている。

(課題)

 児童相談所と市とで、具体的な事例のやり取りについて、ぎくしゃくしていることを聞いている。お互い従来の方法をどう変えていいか分からない。

(水巻町の取組)

 児童少年相談センターは平成13年から設置し、13年5月から受付を開始して、13年度は68件ほどの相談がある。14年度は家族、学校教育機関からの相談が多い。当センターはもともと教育委員会の中の生涯学習課の中に設置され、常々校長会など学校関係の機関会議に参加しており、日頃からいろいろな先生との連携をとっているので当初から学校教育機関からの相談が多い。
 15年度は家族からの相談が年間33件ほどで伸びている。16年度は家族からは28件の相談があった。家族からの直接の相談が増えてきている傾向があり、学校からの連携もかなりとれている。

 虐待の恐れ、不登校、引きこもりも、平均して60件台だったのが、16年度には76件とかなり増えている。

 「その他」の件数が増えているが、その中身は保護者の情緒障害で、かなり気軽に相談できる体制になりつつある。

(児童虐待防止ネットワークについて)

 (相模原市では)11月に要保護児童対策協議会を立ち上げる調整を行っている。要保護児童ということでどこまで取り扱うのかが大きな問題となった。今までは虐待防止ネットワークで、単純に虐待に絞っていて、個人情報の取り扱いについて、緊急的な対応が必要である場合に特例として個人情報のやり取りをするとしていたが、障害や非行に緊急性があるのか疑問。
 障害について、親が積極的に子どもに関わっていこうという気持ちがあるのに、障害というだけで要保護児童の中で対応していく必要があるのか、既存の対応で十分ではないかと議論があった。
 非行は重篤な非行について経験がないので、どこまでの非行を取り扱うのか、軽微な非行まですべて含めるのか、まだ未整理。

 虐待ネットワークであれば、みんな集まって情報を共有して、やりましょうとしやすいが、要保護児童地域対策協議会になったときに、どこまで行うのか、具体的に整理するのは難しい。

 児童相談窓口でいろいろな相談が受けられることと、要保護児童地域対策協議会との兼ね合いが混乱している。児童家庭相談の役割と、要保護児童地域対策協議会とは違うのではないか。

 協議会がどの役割を果たし、市町村はどこをやるのかというモデルを示す必要がある。そのモデルに基づいて、市町村が実情に合うように変えていけばよい。

 子どもは行動でいろいろな問題として表現する。非行や不登校は発達上のひずみがどんな形で表現されるかということ。その形と機能がある。相談窓口は、相談を受付け、調査し、診断・見立てし、支援を決め、再度見直し、結果が良ければ終結するという機能がある。その機能の流れでいくと、障害は市の場合では保健所が一番強い。それぞれの力の強い所が受け付けて見立てをする。それで情報交換をするのが要保護児童地域対策協議会の場ではないか。形と相談を続けて支援をしていき、終結するまでの流れの中で、どんな機能をどこが担えるのかという整理を行い、形を明確にしていくことで各市町村の実情に応じて組み立てていくことがよい。

(必要な職員体制の確保と専門性の向上について)

 市町村には予防的な関わりが期待されている。周産期の部分に力を注ぎ、充実した関わりをしていく必要がある。母子保健の分野で、市町村の保健師の配置をみると、年齢が非常に若くなっている。介護保険などに中堅以上の保健師がどんどん配置されるので、母子保健は若い人だけが残り、非常に力が弱まっている。母子保健の人材をきちんと確保する提言がされるとうれしい。

 親の精神保健の問題や子どもの見立てを含めて、多くの関係者がそれに巻き込まれていく。関わる職員に対してのケアを期待したい。

 役場レベルの相談は、児童相談所のように総合的に診断する機能がないので信頼関係を深めることが重要。相談のあり方や職員をどのように育てていくか大きな課題。

 相談に来られると、虐待を受けた子どもやそれを疑われる子どもの気持ちが中心となり、家族や加害者と思われる人に批判的な気持ちになる。そういう相談を受ける人の気持ちのありようも含めて研修を体制の中に組み込んでいくことが必要。
 また、相談を受けて、見立てをするには、かなりのソーシャルワーク的な観点が必要。そういう相談能力やソーシャルワーク機能に窓口できちんと対応できる職員の養成が必要。

 相談支援の活動は、一カ所で完結するのが基本。一定の中で受付から終結までが完結するような専門家の配置は必要。

 児童相談所をモデルにすると、児童相談所は見立てができる構造を持っているので、これを市町村へ持って行ったときにかなり難しいことになるのではないか。

 相談室などのハード面での議論が必要ではないか。

(児童家庭支援センターについて)

 児童家庭支援センターは全国で51カ所、絶対的な数が少ないので、活動が地域に限定されてしまう。ある程度地域を限定した中で、一時保護機能を持ちながら相談に対応できることは非常に意味がある。数が増えてくれば、その地域の核、有力な施設になるのではないか。

 設置されている市との関係、立地している市との関係は非常に強まっている。周辺の市といろんな機能と契約していないことが多く、契約がなければ仕事がしずらく、そこが非常に難しい。

(子育て支援サービス活用について)

 (相模原市では)公民館が市内に23カ所あり、そこに児童館機能と児童クラブ機能を併せた子どもセンターを設置している。そこで、毎月1回「ふれあい親子サロン」を行っている。保健師、地区の保育士、主任児童委員などがいて、気軽に親子で参加する。虐待の早期発見・予防という点でかなり有効な位置づけで意味を持っている。

 (横須賀市では)主任児童委員が中心となって「子育てサロン」をいろいろな地域で行っている。行政が公民館など広場を提供し、主任児童委員が地域で行ってくれている。
 お母さんたちが求めているのは、子育て支援センターやつどいの広場のように、特にプログラムがなく集まって、そこでも相談ができるという所。非常に行きやすい。

 相談には、来た人に対して何か返してそれで終わりというものと、来た人に対して、何か返さなくても、追いかけてでも決着をつける必要のあるものがある。
 つどいの広場や地域子育て支援センターは、抱えている問題をうまく捕まえる役割として非常に重要。
 追いかけて決着をつける相談に対しては、育児支援家庭訪問事業は非常に大切な事業。

 研修については、専門職の人がより有効に動けるような研修、いくつかのたくさんのメニューが必要。

 児童相談所の児童福祉司がバーンアウトされていくのは、初期対応ばかりが仕事のほとんどになり、そこでの非常なストレスの中でバーンアウトされる。初期対応の後に分離なりの在宅ケアにしたときに、後のケアの指針や指導に関わっていられるとバーンアウトは随分と違ってくる。今の2倍でも初期対応で精一杯。そこで児童福祉司を今の3倍と明確にするべき。

 ケアそのものにほぼ関わりができていない。非行問題で18歳未満の子供が家裁へ行った後に住むところがないから、少年院送致するか悩むことがあるが、この事案に児童相談所はまったく関与していない。家裁へ送ったら家裁に任せっぱなし。

 外国ではケース数あたりの人数割り。人口当たりで計算しているのは非常に少ない。人員配置は、業務量に見合ったものが必要。業務量を計るにはケース数で計るべき。

 一時保護所で今保護されている子供たちの状況はどうなのか、何を必要としているのかという観点から一時保護の意味や重要性をもう一度問い直して、一時保護所のあり方を提言していくべき。児童養護施設に準ずるという状況ではない。改めて一時保護の役割と各地の現状を踏まえて一時保護のあり方を議論すべき。

(児童相談所と関係機関・専門職種との連携強化について)

 保健サイドで、新生児訪問や妊娠中の母子手帳交付のときから母親や家族と出会っているので、子育てを支援する役割を保健センターや保健所が担っている。そこから早期発見や重症化しないという役割は大きい。保健所と保健センターでやっている母子保健の部分で果たす役割は大きい。そこと児童相談所がどう連携していくかはとても大きい。

 精神保健の部分で、児童相談所が直接的に関わるよりも、精神保健相談とか精神科のドクターとのつながりを保健所が持っているので、それを有効に家族の支援に使っていくことが一つの連携ではないか。

 児童相談は保健師などの専門職のいる場所というイメージがある。福祉のセクションは人が変わっていくが、保健のセクションはあまり人が変わらないので、ケースを長期的に見ていく場合に連携するキーになる。ネグレクトは長い期間の視野が必要。そのケースが分かっている保健師さんのいる所との連携が大きなポイントとなる。

 精神を扱っている保健師は、児童虐待の場合、母親は子供といることが安定するから一緒にしてほしいという考えがあって、児童福祉法の立場からは、分離しないと子供の命が大事という考えで、見方によって随分違う。この辺をうまく保健師と連携したい。

 福祉と保健が同じ土俵に立てない。同じ書式を使うといい。各地域で同じものを使ってケースをアセスメントしていくことは大事。情報共有もしやすい。

 周産期からの母子保健的な育児支援をするなかで、虐待への移行を早期把握・予防し、虐待が起きたら児童相談所へつなげるという、ハイリスクから虐待への移行をきちっと関われる職種は母子保健の保健師。周産期からのハイリスクのなかから乳児期早期に死亡が起きている。母子保健の部分できっちりと虐待のハイリスクをみて、援助して予防し、危ないときは児童相談所へつなげる。その予防の部分が大事。

 保健師はみんなにとって身近。しかし児童相談所はどこにあり、何をしているか知らない。医師会全体でも知らない人が多い。そうすると医療と児童相談所、福祉をつなげる役割として、保健を位置づけることに意味がある。

 保健師はスクリーニングして問題を把握するだけでなく、援助する人。虐待の援助では、親の精神疾患を含め虐待の子供および在宅している家族の健康的な問題に関しての相談援助をするという役割を明確にすべき。母子保健は予防だが、実際は予防に関わった子供が児童相談所が関わって在宅になったりしても援助関係の続きが大事になる。保健からの援助が必要なのでしているが、明確に位置づけられていないので現場は悩んでいる。

 保健が虐待に取り組みきれない要素の一つとして、保健所と保健センターの役割が明確でない。

 保健と福祉は違うべき。違うからよい。保健としての専門性を生かした関わり方をどうしていくのか位置づける必要がある。保健の役割を明確に持ったなかで、児童福祉はそこと対等の連携をとる。

 今後、市町村が相談受付窓口になり、そこからネットワークを作ることになる。そのネットワークに児童相談所としてどう関わっていくのかという専門性の強化が必要。

 医療関係との連携について、医療ソーシャルワーカーの配置や保健師の配置に検討が望まれる。

 里親は土俵下のこと。フォローがない。里親を行政は均等に同じ土俵に上げてもらい、里親が困らないよう配慮してほしい。

 里親が困ったときの相談体制が不十分。実際、里親が困ったときに実務的に力になれるかというと、里親との付き合いと経験の蓄積をかなり持っているワーカーでないと難しい。今児童相談所としてできるのは、専門家とのつながりができつつあるので、相談について子供に詳しい医療機関を相談するとか、弁護士に相談に乗ってもらえるとか、里親への相談援助の枠組みが当面要るのではないか。

 里親は委託費では賄いきれない費用がある。チャイルドシートも自分で買う必要がある。必要な経費はちゃんと見てあげれるようにする必要がある。里親の位置づけをどうしていくかは大きなテーマ。

 通告することが目的になってきている。通告することにより、他の機関と一緒になって家族支援をすることが本来の目的である。通告は手段。一次的な通告先が市町村になっていくと、そのあたりのシステムも考える必要がある。

 児童記録表の内容が子供中心の記録になっている。センターに相談にくるのは母親の問題が多い。様式の問題がある。

 児童相談所の処遇会議に市の職員を派遣したり、どんな後方支援をしてもらうか今これから詰めていくところ。児童相談所に通告が入ったものについて、市がどんな役割を担っていくかという細かい部分は、それぞれのレベルで再度一つずつ積み上げていかざるをえない状況。

 通常のケースの連携で、アドバイスをしたり一緒に動いたりするのも後方支援となる。県の児童相談所の中に、実際にケースをやりながら支援していく部分と、研修とか市町村のニーズに基づいた企画をするような別の部署が一時的にいるのではないか。

 児童相談所から講師として来てもらうのもいいが、児童相談所の中に入ってその仕事を知るのも児童相談所と市町村が連携する上でとても大きい。

 自治体のトップに働きかけることはとても重要。できたらその専従組織がほしい。

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