障害程度区分判定等試行事業の実施結果
(速報)

平成17年10月5日


I  障害程度区分関係


 1  経緯

 ○  平成16年度、障害者の介護ニーズを判定する指標に関する調査研究として、介護保険の要介護認定基準の有効性の評価を行ったところ

 現行の要介護認定基準は、「介護給付」に相当するサービスの必要度を測定する上では、障害者においても有効と考えられた。

 ただし、障害者に対する支援は、機能訓練や生活訓練、就労支援等も重要であり、これらの支援の必要度の判定には、「介護給付」に相当するサービスの判定に用いられるロジックとは別のロジックが必要と考えられた。


 ○  平成17年度は、こうした研究結果を踏まえ、厚生労働科学研究事業「新たな障害程度区分の開発と評価等に関する研究」の一環として、介護保険における要介護認定の認定調査項目(79項目)に、(1)多動やこだわりなど行動面に関する項目、(2)話がまとまらない、働きかけに応じず動かないでいるなど精神面に関する項目及び(3)調理や買い物ができるかどうかなど日常生活面に関する項目(計27項目)を追加した106項目の調査項目を設定し、試行事業を実施


 2  事業の内容

 (1) 実施市町村
 全国60市町村(各都道府県1カ所(熊本県を除く)及び指定都市)

 (2) 調査対象者
(1)  調査対象者は、現在既に居宅サービスを利用している身体障害者・知的障害者・精神障害者各10名、合計30名
(2)  調査対象者の選定
 居宅サービス利用者の中から、無作為抽出により選定
 選定は、障害種別ごとに、
 (1)ホームヘルプサービス利用者
 (2)ショートステイ利用者
 (3)グループホーム利用者
 (4)通所施設利用者
という優先順位で合計10ケースになるまで選定

 (3) 実施内容
(1)  要介護認定の認定調査項目(79項目)によって一次判定(コンピューター判定)を実施
(2)  審査会(有識者5名程度で構成)で二次判定を実施
 (1)新たに追加された27項目、(2)106項目の調査項目に特記された事項(特記事項)、(3)医師の意見書を基に、介護の必要性に関する障害程度について、介護保険の要介護状態区分(要支援〜要介護5)で判定


 3  結果

 (1) 調査対象者の基本属性

 全国60市町村の対象者(1790人)における障害種別の人数は、約1/3づつとなっている。
 年齢分布をみると、40歳以上から65歳未満が全体の約6割を占めており、65歳以上の高齢者は4.5%であった。

障害種別
身体障害者 知的障害者 精神障害者
1790人 600人 593人 597人

年齢
20歳未満 20歳以上
40歳未満
40歳以上
65歳未満
65歳以上
1790人
100.0%
46人
2.6%
612人
34.2%
1052人
58.8%
80人
4.5%

 (2) 判定結果

 最終結果においては、全障害合わせて約96%の者が要支援以上の判定となっていた。障害種別にみると、知的障害で97.6%、身体障害で96.8%、精神障害で94.6%となっていた。
 2次判定での変更は1790ケース中903ケースで、変更率は50.4%だった。
 なお、1次判定結果と比較すると、最終結果で要支援以上と判定されている者の割合が約81%から約96%へと増加していた。

最終結果
  要介護5 要介護4 要介護3 要介護2 要介護1 要支援 非該当
全障害者 1790
100.0%
239
13.4%
139
7.8%
197
11.0%
258
14.4%
478
26.7%
414
23.1%
65
3.6%
  身体障害者 600
100.0%
170
28.3%
69
11.5%
57
9.5%
70
11.7%
110
18.3%
105
17.5%
19
3.2%
知的障害者 593
100.0%
69
11.6%
64
10.8%
110
18.5%
98
16.5%
133
22.4%
105
17.7%
14
2.4%
精神障害者 597
100.0%
0
0.0%
6
1.0%
30
5.0%
90
15.1%
235
39.4%
204
34.2%
32
5.4%

(参考)一次判定結果
  要介護5 要介護4 要介護3 要介護2 要介護1 要支援 非該当
全障害者 1790
100.0%
176
9.8%
109
6.1%
116
6.5%
147
8.2%
456
25.5%
445
24.9%
341
19.1%
  身体障害者 600
100.0%
135
22.5%
78
13.0%
59
9.8%
47
7.8%
130
21.7%
75
12.5%
76
12.7%
知的障害者 593
100.0%
41
6.9%
31
5.2%
57
9.6%
91
15.3%
167
28.2%
139
23.4%
67
11.3%
精神障害者 597
100.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
9
1.5%
159
26.6%
231
38.7%
198
33.2%

 (3) 認定調査員・審査会委員の状況

 認定調査員の職種をみると、行政職員の割合が高く(約7割)、次いで相談支援事業者等が約3割となっていた。
 審査会委員の職種をみると、医師の割合(26.3%)と高く、次いで施設・サービス事業者等関係者、学識経験者の順となっていた。

認定調査員の職種
(1)行政職員 548 66.8%
(2)相談支援事業者等 248 30.3%
(3)サービス事業者等 23 2.8%
(無回答) 1 0.1%
合計 820 100.0%
  審査会委員の職種
医師 82 26.3%
社会福祉士 29 9.3%
精神保健福祉士 23 7.4%
理学療法士 13 4.2%
臨床心理士・心理判定員 11 3.5%
その他の施設・サービス事業者等関係者 61 19.6%
学識経験者 33 10.6%
福祉司等行政関係者 26 8.3%
その他 34 10.8%
職種合計 312 100.0%


 4  今後の検討について

 (1) 障害程度区分の開発に当たっての基本的考え方

(1)  障害程度区分の開発に当たっては、透明で公平な支給決定を実現する観点から、以下の点を踏まえて行う。
(ア)  身体障害・知的障害・精神障害の特性を反映できるよう配慮しつつ、3障害共通の基準とする。
(イ)  調査者や判定者の主観によって左右されにくい客観的な基準とする。
(ウ)  判定プロセスと判定に当たっての考慮事項を明確化する。

(2)  介護給付、訓練等給付でそれぞれサービス内容が異なることから、それぞれの給付ごとに設定する。
(ア)  介護給付
 介護の必要度に応じ区分
(イ)  訓練等給付の障害程度区分
 訓練等給付については、支給決定時の優先度の判定に用いるスコア(点数)を設定

(参考)
 1  障害程度区分は、障害福祉サービスの必要性を明らかにするため障害者の心身の状態を総合的に示す区分

 2  新制度における支給決定は、障害者の福祉サービスの必要性を総合的に判定するため、(1)障害者の心身の状態(障害程度区分)に加えて、(2)社会活動や介護者、居住等の状況、(3)サービスの利用意向、(4)訓練、就労に関する評価といった諸事項を総合的に勘案して行われることとなっている

 (2) 今後の検討の進め方と検討課題

 今後、以下の検討課題について、試行事業の結果の分析とあわせて、有識者、関係者からのヒアリングを実施し、検討を進める。

(1)  介護給付に係る障害程度区分について

 要介護認定の調査項目(79項目)以外の項目を一次判定(コンピューター判定)でどのような形で反映するか

 審査会における二次判定の判定基準をどうするか など

(2)  訓練等給付に係る障害程度区分について

 支給決定時の優先度の判定に用いるスコア(点数)をどうするか など

(3)  認定調査や市町村審査会の運営のあり方について


介護給付における障害程度区分のプロセス

介護給付における障害程度区分のプロセスの図


認定調査票(基本調査)の106項目 その1

認定調査票(基本調査)の106項目 その1の表
※ ○=要介護認定基準の認定調査項目以外の項目(27項目)


認定調査票(基本調査)の106項目 その2

認定調査票(基本調査)の106項目 その2の表
※ ○=要介護認定基準の認定調査項目以外の項目(27項目)


II  支給決定プロセス調査関係

1. 調査の目的
障害程度区分判定等試行事業における支給決定プロセスにおいて、
(1)ケアマネジメントの手法を用いた相談支援が行われたか
(2)支給決定案やサービス利用計画を作成する際に、どのような調整が行われたか
などについて把握する。

2. 調査の対象
試行事業において新たに支給決定を行ったか、支給決定の変更を行った者。
*調査対象市町村:18市町村

3. 調査方法
方法: 対象者を有する自治体に対して、個々の事例について、支給決定前後に行われた相談支援の具体的状況を記入する「調査票」を送付して回答を得た。

  この調査結果は、平成17年度厚生労働科学研究補助金事業「障害者のケアマネジメントに関する総合的研究」(主任研究者:坂本洋一和洋女子大学教授)に基づいたものである。



調査結果の概要

1. 対象者の状況

回答のあった事例
55事例

障害種別
身体障害:30事例 ・知的障害:20事例 ・精神障害:17事例
(*内12事例は重複障害)

性別
男性:30事例(54.5%) 女性:25事例(45.5%)

新規、継続の別
新規事例:25事例(45%) ・継続事例:30事例(65%)

相談支援の実施主体
市町村が実施:49事例(89%)
相談支援事業者が実施:4事例(7%)
市町村が支給決定までを担当し、相談支援事業者等がサービス利用計画を実施:2事例(4%)


2. 支給決定プロセスごとの状況

【アセスメント・利用意向の聴取】

アセスメントの場所
アセスメントの場所のグラフ
  アセスメント実施者の属性(延人数)
アセスメント実施者の属性(延人数)のグラフ

  アセスメントが実施された場所は、本人の自宅が44例(80%)、本人が利用中の施設が10例(18%)であった。

  アセスメントの実施者は市町村の事務職員が最も多く、続いて保健師、社会福祉主事となっている。

  アセスメント時に、機能回復訓練の可能性、補装具の適応、就労可能性等の特別なアセスメントを要する事例も把握され、実際に依頼を行っている事例も見られる。

  アセスメントや利用意向の聴取は、本人以外に家族、施設職員、病院職員、介護支援専門員などからも行われていた。

  利用意向の聴取は、46例(88%)がアセスメントと同時に実施されている。また、多くの場合、給付の対象となるサービス以外のニーズについても併せて聴取されている。

【支給決定案の作成】

支給決定案の作成方法
支給決定案の作成方法のグラフ
  支給決定基準の説明の有無
支給決定基準の説明の有無のグラフ

  支給決定案作成に当たっては、サービス提供者等が同席の上、ケアの基本方針やサービスの具体的内容などを確認しながら作成している事例(7例:13%)が見られた。

  支給決定基準の説明は、口頭のみで行っている事例が39例(71%)、書面を用いて説明を行っている事例が5例(9%)見られた。

【サービス利用計画の作成】

サービス利用計画作成件数
サービス利用計画作成件数のグラフ
  サービス利用計画の作成者
サービス利用計画の作成者のグラフ

  全体の78%(43例)がサービス利用計画を作成していた。また、計画作成に当たっては、スケジュールの管理に加え、今後のケア方針、サービス実施の際の留意事項なども決定している事例が見られた。

  7事例では、計画作成に加え、サービス利用契約締結の支援やサービス提供事業者に対する支援目標や役割の説明、サービス利用に消極的な家族への介入等、サービス利用に関する調整を行っていた。

  計画の作成者は、市町村が37例(86%)であり、相談支援事業者は6例(14%)であった。

  利用計画作成に当たっては、本人と個別相談によるものが主だが、家族、事業者を含めた形で行っているものも3割ほど見られた。


3. 利用者からの意見
 
最初の相談からサービスが利用できるまでの時間について
最初の相談からサービスが利用できるまでの時間についてのグラフ
     
サービスを受けるまでの流れについて、説明について
サービスを受けるまでの流れについて、説明についてのグラフ
 
サービス利用の意向聴取について
サービス利用の意向聴取についてのグラフ
     
利用できるサービスや制度についての説明のわかりやすさについて
利用できるサービスや制度についての説明のわかりやすさについてのグラフ
 
調査をうけた大変さについて
調査をうけた大変さについてのグラフ



【参考資料1】

障害程度区分判定等試行事業の概要

 支給決定に関する調査(アセスメント)や障害程度区分素案の試行を通じ、障害者等の心身の状態等に関するデータを収集し、障害程度区分の開発を行うとともに、新制度における新支給決定手続き実施の際の実務上の課題を把握することを目的として実施

(1)  障害程度区分判定調査対象者(30名)の選定

身体障害者 10名
 
知的障害者 10名
 
精神障害者 10名
(2)  障害程度区分認定調査

 調査対象者の心身の状況(認定調査)
 社会活動や介護者、居住等の状況(概況調査)
 
(3)  ‘医師の意見書
 
(3)  一次判定
 
(4)  市町村審査会(障害者の保健または福祉に関する学識経験を有する者原則5名)による二次判定

 調査対象者の中で、今回の試行事業の期間中に、新たに支給決定を行ったか、あるいは支給決定の変更を行った者を対象に、障害程度区分の判定以降、支給決定までのプロセスを調査



【参考資料2】

支給決定・サービス利用のプロセス(全体像)

支給決定・サービス利用のプロセス(全体像)の図
(※) 一定数以上のサービス利用が必要な者や長期入所・入院から地域生活へ移行する者などのうち、計画的なプログラムに基づく自立支援を必要とする者を対象

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