05/09/29 社会保障審議会介護給付費分科会第29回議事録          社会保障審議会 第29回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所 : 平成17年9月29日(木) 午後3時から6時           全社協 灘尾ホール 2 出席委員:池田、石井(代理:森岡委員)、井部、漆原、大森、沖藤、喜多、        木下、木村、見坊、田中(雅)、対馬、野中、花井、村川、        矢野(代理:松井参考人)、横山の各委員 3 議題  (1)事業者団体ヒアリングについて  (2)その他 ○有限責任中間法人日本在宅介護協会(以下、「在介協」という。)・建部、有限責任 中間法人「民間事業者の質を高める」全国介護事業者協議会(以下、「民介協」とい う。)・石原、全国農業協同組合中央会(以下、「農協」という。)・佐藤、日本生活 協同組合連合会(以下、「生協」という。)・田中、社会福祉法人全国社会福祉協議会 (以下、「全社協」という。)・勝野、特定非営利活動法人市民福祉団体全国協議会 (以下、「市民協」という。)・島津の各意見陳述人より、意見陳述。 (沖藤委員)  JAの意見の中で、登録ヘルパーを制度として存続強化すべきだという話があった。 登録ヘルパーの方々が非常に活躍していることは私も、しばしば聞いている話だが、登 録ヘルパーの勤続年数が非常に短い。事業所、事業所を転々とする。よく3年の壁と言 われている。更には、辞めてしまう。登録だけという方もいて、地域の中での介護サー ビスのノウハウが蓄積されていない。その方が辞めることによって断絶してしまうとい うことが指摘されていると伺っている。そういうわけで、地域の中の介護労働のノウハ ウを蓄積していくために、私は登録ヘルパー制度のメリットも当然あると思っている し、多様な人材がそこに入っていけるよさもあると承知しているが、その辺はどうお考 えか。  それから、一般的に介護保険になってから家族の嫁は介護から解放されたけれども、 どうも社会の嫁が発生してきているという言い方もあるので、その辺の考え方はどうか 聞かせていただきたい。 (佐藤意見陳述人(農協))  御指摘の登録ヘルパーの労務状態あるいは労働のノウハウが蓄積されないという論理 については、都市型による使い捨ての論理ではないかと思っている。  私どもが地域基盤にしている農村地域においてはどこも逃げるところが実はないわけ で、登録ヘルパー=地域の住民であり、皆、顔なじみである。そうすると、基本的には 登録ヘルパーで家庭内介護を中心として技術を磨いて家族の面倒を見るというところか ら出発する。その延長線上で2級、1級を取りながら地域に貢献をしていくというステ ップを踏んできている。ということは、地域の福祉について地域全体で支えていこうと いう考え方が、私はこれからの日本の介護の基本になるべきではないかと思っている。  一方、ではそういったアマチュアだけで足りるのかという論議があるわけだが、その 部分を私は否定をしない。専門性をより追及する専門スタッフと、そしてそれをドーナ ツ的に支える登録ヘルパーとが同居する中で、これからの21世紀の福祉を支えないと制 度そのものがもたないのではないかと考えている。 (沖藤委員)  おっしゃることは本当にもっともだと思う。ですから、働き手の確保として介護のノ ウハウを地域の中でずっと蓄積していく人材と、それからこういう働き勝手のいい登録 ヘルパー制度との仕組みを上手につくっていくところで若干立ち止まっている部分があ るように思うが、いかがでしょうか。 (佐藤意見陳述人(農協))  実は、その辺では私は最初に申し上げたように安い労賃で使い捨てという論理ですれ ばそういう発想になるわけです。やはり、専任で常勤スタッフを抱えながら、そして登 録ヘルパー制度を導入するというスタイルが要るのではないかと思っている。  私どもは6,500名の登録スタッフを抱えているが、1名当たり平均すると月に5時間 から6時間。平均すると登録ヘルパーは週に1時間ちょっとの状態。それはたまにしか 労働しないが、その地域の中で皆が自分の空いた時間を提供して、支えていこうという 信念で我々は進めている。 (井部委員)  JAの方にお伺いしたい。こちらの資料の4ページの(3)で「報酬のあり方について、 包括的な定額方式が検討され、柔軟にサービスが提供できると評価を受けているが、反 対である。今日の実態からするとサービスのサボタージュが発生する危険性が高い」と いう指摘ですが、こういったことはつまり現場の人たちの信頼というところにいくわけ で、信頼とか信任という考え方からすると、本当に現在の段階では十分な信頼が置けな くてサボタージュが発生する危険性が高いと考えるべきなのか。その辺りの働き手の在 り方についての見解をお伺いしたい。 (佐藤意見陳述人(農協))  働き手の在り方ではなくて事業者の問題も含めての論議であり、労働者そのものが責 任をかぶるという意味ではなく、労働者とそれを雇用している事業者の両方の問題だと いうふうに理解をしている。  厚労省のいろいろな資料を見ても問題がある事業者もある中で、その辺は少し制度が 成熟する中で考えるべきではないかと思っている。  包括は、私は基本的には柔軟なサービスを継続的につくっていくということからすれ ば、利用者にとってはいいことではないかと思っている。ただ、運用のところで少しフ レームづくりなり成熟度が要るのではないかと考えている。 (井部委員)  包括支払いに関しては、NPO法人市民福祉団体全国協議会の資料の中にも、3ペー ジで「不適切な事例の温床となりやすいので認めがたい」と書いてあるが、この件に関 して意見があったら聞きたい。 (島津意見陳述人(市民協))  現在でも、例えば私たちのまわりのデイサービスを見ても、何もしたくない。要する に、朝迎えに行って帰るまでずっといすに座っている方とか、ずっとベッドに寝かされ ている方がいる。それは、事業所の問題だけではなくて利用者の問題でもある。利用者 が積極的に仲間の中に入っていけない状態、要するにあの人と話したくないとか、この 人と話したくないとか、そういうことでケアに参加しないのか、それとも事業者がつく っているプログラムが余り幼稚過ぎて参加できないのか。そういうことも含めて、今は 本当にデイサービスの内容は余りよくないと聞いている。私どもはデイサービスはして いないのでわからないが、聞くところによる状況である。  それを包括的に訪問介護まで含めてしまうと、やったことにしてしまうというような ことが現在の段階では起きるのではないかという気持ちがある。もう少し成熟して、1 人の利用者を自立支援に導いていくような風潮が事業所も利用者にも定着していけば、 包括で支払うということは賛成するが、現在のところではちょっと賛成しかねる。 (野中委員)  すべての団体に聞きたいが、在宅介護協会の資料に利用者の希望が尊重されると書い てあるが、これは大事なことだと思う。私たち医師も、患者の視点に立った医療という ものがいつも望まれて苦労しているが、現実に利用者の希望あるいは選択権を尊重する ことに対しては何が重要であると考えるのか。それをひとつ聞きたい。  それから、盛んにサービス提供に当たっての公平性・中立性ということを言われた が、公平性・中立性を保つためには何が大事なのか。それは事業者とケアマネが離れる ことなのか。それとも、ほかに重要事項があるのかどうか。 (建部意見陳述人(在介協))  まず第1点の利用者の選択権の尊重ということについて、いろいろな場面があって、 利用者が意思を表す機会があると思う。例えば、この介護予防の訪問介護という場面を 想定したときに、それぞれの生活履歴から、あるいはその方の身体的、肉体的なそのと きの条件により、通所介護は余り好きではないから、選択的サービスであっても訪問介 護のヘルパーなり、あるいはそういう資格を持った方々から居宅においてサービスを受 けたいというようなことがあったら、そういう意思は尊重できる仕組みであればありが たい。  どちらかというと、色濃くにじんでいるのは介護予防の通所介護が主役であって、そ こに行って「するようになる」という支援を受けましょう。それであれば、居宅でも 「している」という状態になるまで介護予防もヘルパーさんの支援を受けられますよ と、大ざっぱに言うと今はそういう仕組みかと思う。  しかしながら、人によっては通所ではなく居宅で受けたいという方もいるかもしれな い。そういうときに、それもありだということを具体的には選択保障することだと思 う。目的志向の予防介護ですよと、その目的志向という点においては適正を欠くという ことには必ずしもならないと思うので、具体的にはそういったことが利用者の選択を保 障するというふうに私どもは認識している。 (石原意見陳述人(民介協))  利用者の希望に沿ってということは、2つ問題があると思う。  1つは、利用者が例えば希望されても専門性とかアセスメントをすることによって、 必ずしもそうではなくてもう少しこうする方がよりQOLがよくなるとかいった場合に はやはり専門性というものを説明するなり、納得していただくというか、そういったこ とが必要であると思う。  もう一点は、地域ごとに段々いろいろサービスをしていくとなると、あちらにどうし てもいきたいというときに自治体が違うとか、サービスの範囲が違うということで希望 がかなえられない。選択の自由は介護保険の基本理念の一つなので是非残していただき たいので、何らかの配慮が欲しい。  それから、公平・中立について、よく現場で耳にするのは、ケアマネージャーが公平 ・中立だから何も教えられないとか、何も言えないというようなことを言う。そうする と、利用者は非常に困らる。なので、そういったときに利用者の利益が優先されるとい うことが常になければいけないし、例えばサービスでもこういうサービスの特徴があっ て、この事業者はこういう特徴がありますよということをきちんと説明するまでの公平 ・中立でなければならないと思っている。 (佐藤意見陳述人(農協))  御指摘の公平・中立、利用者の尊重という言葉は大変難しいのではないかと思ってい る。私たちがここで使っているのは、そのときそのときの事案について公平・中立ある いは利用者の尊重をお願いするものであって、定義ではなくてその事例に対してそれを 解決する手段として公平・中立であってほしいという思いでこの言葉を使っている。  そうすれば、公平・中立ということになれば利用者が選定をするときには情報の公開 もあるし、あるいは選ぶときの協議会等の設置もあるだろう、それはそれぞれの手段な りが違ってくるのではないかと思っているが、そういう形で公平・中立あるいは利用者 の尊重という言葉を使わせていただいている。 (田中意見陳述人(生協))  基本的には利用者の選択権と自己決定というか、その枠組みについてきちんと尊重し ていくことがベースとしては必要だろうと思っている。今回の問題に則して言えば、介 護予防との関係で言っている意味は、生活援助ということについて介護予防の中できち んと利用者の選択を保障するようにしていただきたいということを今回の話との関係で は言っている。  それから、従来から言っているのは、居宅介護支援事業がその事業所に併設されない と事業として成り立たないという現実が存在するので、そこは居宅介護支援事業自体が 独立で成り立っていくということが社会の仕組みとしても必要ではなかろうかというこ とを従来申し上げている。 (勝野意見陳述人(全社協))  利用者の選択の自由と、それから公平・中立という問題だが、私は小牧市の社会福祉 協議会の会長をやっているが、実際に訪問介護の仕事と通所介護の仕事、更にケアプラ ンの作成と、この3つの事業所をやっている。それで、特に大切なことは本人の自由、 利用者本人の意思を中心にしてケアプランをつくるということは基本であるということ である。14名ほどのケアマネージャーがいるが、今まで5年間そういうことで誘導した とか、いろいろなトラブルは一回もない。円滑にいっていると理解をしている。それだ けケアマネージャーが教育を受け、自分のところへ誘導したり、あるいは利用者の意思 に反したようなことをすることはない仕組みにしている。これは競争の原理の中からも そんなことをやったらすぐつぶれてしまうというようなこともあり、その点については 御指摘の点は非常に円滑に小牧はいっていると理解をしている。 (島津意見陳述人(市民協))  公平・中立については、居宅介護支援事業所が独立できるような介護報酬の仕組みを 考えていただきたい。現在では、本当に独立は無理。ですから、そういうことも含めて 公平・中立という言葉も使わせていただきたい。それから利用者の選択権と自己決定と いうのは本当に大事だが、そこへ誘導していく、自分がこういうことをしたいというと ころまでケアマネージャーが非常に苦労して誘導していくのは大変な仕事である。何も したくない。うちにいて寝ていたい。ベッドがすぐそばにあるのですぐ寝てしまう。そ ういう利用者をどうにか自立に向けて激励をしていきながら何かをしていただくという ことは非常に大変な仕事だろうと思う。  でも、やはりその利用者がしたくないとしたら、おしりをたたいてしていただくわけ にはいかないというところがある。訪問介護についてもそうだし、それからデイサービ スに行ってごらんなさい、お友達ができますよというようなことを言っても、していた だけない場合はやはり個人の選択権があるということで、私たちはあきらめざるを得な いというところもある。 (横山委員)  JAに質問。2ページの(4)の「地域包括支援センターの中立性・公平性」の最後のく だりで「地方自治体が安易に特定の組織・事業者および在宅介護支援センター等に業務 委託しないよう指導を強化願いたい」。先ほどのほかの皆さんの意見陳述の中にも全国 で包括支援センターは5,000か所、1人1か所平均約300ケースを見るという話があっ た。このほかに評価事業であるとか、成功報酬だとか業務もたくさん入ってきて、セン ターの業務は肥大化していると認識しいるが、この「安易に」というところが非常に引 っ掛かるわけで、この視点に特定の組織、事業者、公平性・中立性というような観点か らこういう言葉が出てきたんだと思うが、システム上の何か考えがあったらその辺を御 教示願いたい。 (佐藤意見陳述人(農協))  今、全国を私も研修で歩いているわけだが、9割くらいが社協と在宅支援センターが 移行するという動きになってきている。その市町村レベルでの論議経過を見ると、そこ に組織があるからとか、そういう単純な理由で移行をされているように見える。  私は、在宅支援センターが受けることに反対するとかではなく、やはり在宅支援セン ターが今まで置かれてきた経過をきちんと総括する中で次のステップを踏まないといけ ないのではないかと思っている。それで、実態を見ると委託を受けた地域の中学校区の 在宅支援センターにおいては、特養とか、あるいは老健とか、そういったところの併設 型の形態が多い。そうすれば、そこには当然介護関係のサービス事業もやっているし、 デイケアも含めてやっているわけで、その辺の関係をどうするのか。  あるいは、先ほど意見があったが、社会福祉協議会との関係。これも同じようにサー ビスを提供して、特に農村においては社協でするしかないような状況もいっぱいあるわ けで、そういった中で住み分けをどうするのかという論議をきちんとやらないと、安易 に支援センターに持っていくということは少し乱暴ではないかと思っている。 (横山委員)  全国社会福祉協議会活動についてお伺いしたいが、介護予防訪問介護について1ペー ジ目の最後のところに、やはり通所系サービスを中心として介護予防が行われることに 関して、訪問介護もこういう責任を担うべきだということが書いてあるが、ここで通所 系サービスとの密接な連携の下に訪問介護はこれを担う必要がある。運動器の機能向 上、栄養改善、口腔機能の向上についても、訪問介護による補完が必要。それから、最 後に下から3行目のところに訪問介護でないと充足できない介護予防ニーズがあるとい うふうな表現があるが、この具体的な考えがあるのかという点がまず第1点。  それから、3ページ目の「目標の度合いに応じた介護報酬について」というところ で、最後はサービスの貢献度によって成功報酬の分配を行うことが必要であるというこ とで、さまざまな介護予防プランに応じたケアプランが立てられるわけだが、やはり評 価のシステム化が可能かどうかという点があると思う。それで、サービスそのものが効 果を前提とするものでなければならないし、効果がない場合、その原因分析が可能かど うかという問題点が出てくると思うが、その点についての見解をお聞きしたい。 (小野随行者(全社協))  1ページの下のところの質問の訪問介護による補完が必要な場合ということだが、通 所系サービスが中核となるということに対して反発をするわけではないが、やはりその 方々の在宅生活の多くの時間を担っているのは在宅への訪問系サービスではないかとい うことであり、通所系で担っていく部分を十分な連携の下に在宅で展開をする、その意 味でも、訪問介護の位置付けは重視されてもいいのではないだろうか。そういう視点で の記載である。  評価のシステムの質問について、地域包括支援センターを核としながらそのスタッフ が客観的、更に公平・公正的にその評価の物差しであったり、基準をつくっていく。そ ことの連携によって担保されていくものではなかろうかと思う。 (池田委員)  先ほどJAの佐藤さんがおっしゃったことは実に正論だと思う。それは地域包括支援 センターの在り方については避けて、全社協に聞きたいが、お示しいただいた文書のう ちの2ページ目を見ると、軽度者へのサービスの必要性ということで、「山間地等に居 住する事業者であり」から始まって、例えば「家事能力がない男性の独居者で自立支援 が必要な者」と、こういうものが列挙されているが、実はこういったケースは要介護状 態のように高齢者に普遍的に存在する問題ではなく、ある意味で特殊的に存在するニー ドというものだと思う。  そこでお伺いしたいのは、介護保険は社会保険であり、社会福祉ではない。つまり、 社会保険と社会福祉の住み分けということについてどのように考えているかお聞きした い。  どういうことかというと、例えば家事能力がない男性の独居者で自立支援が必要な方 というのは結構たくさんいると思うが、そういう方たちに介護保険を使うと月90食要 る。ホームヘルパーを使って90食を提供するというのは、これはおよそ非常識としか言 いようのないサービスになるわけで、実際上そういうことができない。できないとすれ ば配食サービスというものに金を付けなければいけない。それは介護保険の仕事ではな く、社会福祉の仕事ではないか。もっとはっきり言うと社協の仕事ではないか。そうい うことで、そこの切り分けみたいなものをどういうふうに考えていくか。これは非常に 重要なことだと思うのでお伺いしたい。  それと関連して、民介協の石原さんにお伺いできればと思うが、石原さんのところで は非常に注目すべき配食サービスというか、食事サービスを展開されている。しかも、 栄養改善と絡めてやっているということで注目しているが、こういった食事サービスと 介護保険の関係、あるいは地域福祉の関係、これをどういうふうに整理していけばいい のか。若干同じ問題意識につながるところだが、それについてお教えいただければあり がたい。 (渋谷随行者(全社協))  御指摘はそのとおりだと思っており、このニーズについてすべてをホームヘルパーが 応えるという性格のものではないと思っている。社会福祉協議会だけではないと思う が、社会福祉のサービスをきちんと重視することが必要である。  ただし、自立の支援ということから、要支援状態から自立に向けて専門的に集中的に ヘルプあるいは支えるということであれば、そこでホームヘルパーの仕事が非常に重要 ではないかということである。したがって、家事能力がない男性の独居者について、代 わってホームヘルパーがやるのではなく、その人が徐々に生活を維持できて、あるいは 通所介護も利用できるようにする。その自立支援の方向でホームヘルパーが援助をす る。その点に着目していただきたいという趣旨である。 (池田委員)  それで意味はわかったが、介護保険、社会保険制度なので、一定の保険事故に対して は必ず給付をしなければならないという権利義務関係が存在する。したがって、そのニ ーズとウオンツの見分け方というのは非常に難しい。  例えば、私が65歳を過ぎて、もう家事をやるのは嫌だから調理をだれかにやってほし い。これはごく当たり前の考え方でだれでも持っている。それをどういうふうに判断し てどうサービスを提供していくかは、介護保険の役割ではなく社会福祉の役割だと思 う。しかも、介護保険が始まってから主に高齢者福祉の行政部門というのは、介護保険 がすべてをやってくれるという誤解をして、ある意味で眠り込んでいるという状況で、 これは非常にまずいと思う。  そういった意味では、全社協は、各市町村社協というもののある意味で元締めでもあ るので、社会福祉としての高齢者福祉の在り方、それを展開していくために介護保険に すべてを丸投げするのではなくて、高齢者福祉の在り方は何かという議論をしてほしい という意味で申し上げた。 (渋谷随行者(全社協))  おっしゃるとおり。確かに眠っているという面もあると思うので、私どもさまざまな 形で社会福祉面からもアプローチしているが、更にそれをきちんと進めていきたい。介 護保険にお金があるからといってべったり頼ることは間違っていると思う。 (石原意見陳述人(民介協))  私は今日は協議会の代表で来たので、先ほど申し上たように財源とか人手が非常に少 なくなるときに重度化していくところに目をつけて、そのために勉強をしたり、質を上 げたりしていこうというようなことは合意できているが、先ほど池田先生が言った低栄 養の問題は私の会社でやっていることで、ちょっと切り分けていただきたい。  訪問介護をやっていると非常にいろいろな矛盾点を感じることがあり、例えば1食つ くるためにヘルパーが30分入ると2,000円ちょっとかかる。たった1食を2,000円使うと いうのはどうしても不経済だと思わざるを得ない。  もう一つ、今は若いヘルパーが非常に増えてきているが、お年寄りの食事を1対1で していると、大根の切り方が悪いとか、魚の頭の置き場所がどちらだとか、そういうこ とで辞めたくなるヘルパーが髄分出てきたりして、専門性ということから言っておかし いことである。  そこで、私は配食とセットにすることを試している。昼と夜と毎日食事を届けると、 本当にお年寄りが変わってくるのが分かった。紙コップも持てない方が、丼を持てるよ うになったということが分かってきた。  ただ、配っていくところでいろいろ考えてみたところ、3通りが今のところある。1 つはボランティアでいいケース、いわゆる地域の介護というものが特にわかってなくて も全員で協力していただけるボランティアが配れる対象の方。もう一つは30分を10分ず つに分けてもらって、それで10分で済むケースがある。朝、昼、晩で10分だけ入って食 事が食べられる状況にする。そして、次の食事のときに行って残食の状況を見てまたセ ットをして帰る。その10分のヘルパーとしていわゆる訓練されたヘルパーが入ることに よって非常に食事の状況がよくなって健康が回復する。  もう一つは、もう少し重度で食事の介護まで30分どうしても必要だという3通りの配 食の仕方があることがわかってきた。  なので、できれば30分を10分に分けて巡回ができるようになってほしいと思うし、こ の巡回サービスというのは非常に利用者にとって有効だと思っているので、もう少し活 用できるシステムができたらいいと思っている。 (池田委員)  つまり施設サービスから食費は切り出されたから、在宅も同じように考えなければな らない。といって、要支援、要介護高齢者の食事を提供することはできない。とするな ら現在夜間対応型の巡回介護が考えられているが、いわば全日中的な巡回介護を考えろ という御提案ですね。よくわかりました。 (対馬委員)  各団体によって違うだろうが、経営の状況辺りがどうなのか。前回、経営概況の調査 結果が発表されたが、できれば改善の努力なども簡単にコメントいただけるとありがた い。 (勝野意見陳述人(全社協))  小牧市のこの収入について率直に申し上げたい。会計基準が決まり、7億くらいの総 予算を持って社会福祉協議会を運営している。そのうち介護収入が約45%、約3億2,000 万は介護報酬から3事業の収入。そこから人件費や光熱費などを差し引くと、何とかプ ラスマイナスゼロ、例えばデイサービス1か所を単純に取ると赤字になっている。  ホームヘルパーだけの事業も、その経営努力ということで、登録型もかなり採用して いるが、やはり人の問題であるからやや厳しい。ただ、いいところもあり、例えばデイ サービスは定員35人でやっているが、これは給付にもよるが、30人くらいの利用者だと 何とか黒字。稼働率が30を割ると厳しい。昨年、2つのデイサービス施設で今まで給食 を自分の職員でやっていたのを民間に施設を提供して委託した。その人件費などを考え ると若干黒字になったが、何とか5年間、赤字だからやめようと言われずに維持してき た。 (石原意見陳述人(民介協))  私は長い間、介護保険になる10年ほど前から訪問介護をやってきており、その間は全 く赤字の会社であったが、介護保険になってから黒字になってきた。  ただ、3年ほどたって少し落ち着いて質というものをきちんと見直してみようという ことで、主任とか責任者とか役職をきちんとシステム化して質を担保できるようにした ところ、やはり非常に経営を圧迫しているのが現状である。  特に女性の多い職場なので、管理者の役割を本当に理解するまでには時間がかかる。 役割がきちんとなって普通の企業としての形ができるように今、改善をしている最中。 (建部意見陳述人(在介協))  私ども在宅のサービスは、主に訪問介護の事業者が多いが、この9月12日の分科会に お示しいただいたような数字で、月単位での赤字が協会全体での傾向に近いという認 識。  シルバーサービス振興会で2000年から2002年にわたってだったと思うが、介護事業 者、特に訪問介護事業者の経営状況についてのアンケートというものを継続的にされて いた。その時点での訪問介護事業所の経営の実態としては、4割から5割が赤字経営 で、今後の見通しとしても赤字であるということが示されている。その後、調査はされ ていないが、傾向としては変わっていないだろうということを聞いている。  それから、この介護事業が保険制度として国の制度として運営されだしてから、この 5年ほどの間に民間事業者の中からJASDACやマザーズやヘラクレスなど株式市場 に公開をするとことまで経営努力をされて順調に育ってきている企業体もある。  しかし、これらの会社であっても社員の報酬平均は年間約320万円である。どの程度、 経営改善について民間が努力をしているか、これは不正確になるかもしれないが、社会 福祉法人や社協などはもともと地方公務員の企業体系をベースにしてスタートしている ので、退職年金の積立てだとか、非常に手厚い形で推移している。多分、平均的には報 酬も400万円台を今も確保しているのではないか。なので、民間事業者団体としてはそ れなりに努力は重ねているが、力量不足の経営者が多いというおしかりを受けるかもわ からないが、必ずしも手放しで喜べるような経営状態ではない。 (田中意見陳述人(生協))  生協全体の統計はないが、購買生協の47生協で介護保険事業は約83億。そこの統 計で合計すると大幅な赤字になっている。47生協の中で介護保険事業で黒字を出して いるのは9生協である。そういう意味では事業の中で人件費率が高いということにな る。購買生協から介護保険事業に職員が移っていくので、人件費体系が高い。それか ら、サービスレベルを結構手厚く各生協ともやっているので、人件費がかなりかかっ て、その分で赤字になっているという構造である。 (佐藤意見陳述人(農協))  JAは、平成16年度の決算状況を見ると訪問と通所も黒字、居宅と福祉が赤字、訪問 入浴がやや黒字という状態。  ただ、経理関係処理は中央とか県段階において指導する経費について加味していない ので、事業所の収支については多少の黒字であっても我々の指導費を含めると赤字にな る。あるいは、JAの土地を無償で使っているので土地代は加味されない。上物につい ては共通管理費で配慮をしているが、そういう経費上の違いがあるので素直にとらえる ことはできないと思う。  それから、特徴的なことは居宅介護支援の状況を見ると、昨年に比べて1事業所当た り100万くらい赤字が増えている。昨年は100万少しの赤字だったが、今年は200万を超 えているという状況。  さまざまな要因があると思うが、1つはいろいろな専門性を求めるなどで作業付加が 増えてくる。あるいは、プランニングでも付加が増えてきてケアマネを増やしたり、あ るいは雇用条件として田舎でどうしても臨時が無理なので正式採用になり賃金ベースが 高くなる。こういうふうなことで、昨年に比べて1事業所100万円赤字が増えてきてい る。 (森岡参考人)  全施設関係団体の方が高齢者に対して大変に御協力いただいていることはよくわかっ たが、栄養の維持、体力の維持あるいは口腔ケア等について日ごろやるべきことと、今 回の新予防給付の中での考え方というのはどのように理解いただけているかということ をお伺いしてみたい。特に市民福祉団体の方から栄養改善等、口腔ケアは1週間に1回 程度でいいのかというお話もあったが、それが日ごろのケアとどのように峻別されてい るのか。その辺もちょっとお伺いできればと思う。 (島津意見陳述人(市民協))  介護保険が始まったときから口腔ケアについては非常に関心を持って利用者に勧めて いる。ただ、例えば胃瘻や、いろいろな管を付けている方、要するに口から物を召し上 がらない方に対しても口腔ケアは絶対に必要だからということで家族を説得して、そし て口の中の清潔、ほほの筋肉、舌の運動などを毎日していた。  そういう努力を重ねてきた結果、その方が本当に胃瘻になったときは、死にたいとい うことしか言わなかったが、口腔ケアを続けてきた結果、アイスクリームから始まって ゼリーから餃子とかおせんべいまで食べられるようになった。そうすると、今度はいつ 歩けるかなと、生きる望みが出てきた。  口から食べられることは、その方にとっては非常に生きる意欲につながる。口腔ケア の大切さは本当に身に染みてよくわかっているつもりでいる。  それで、今度の介護予防について、なぜ今更、口腔ケアが表に出てくるのだろう。そ んなことは当たり前のことではないかと考えていたが、予防の段階で口腔ケアをしてい かなければならないということはもちろんだと思う。しかし、これは家庭の中でしかで きないことではないかと考えている。  それから、栄養の面についても、高齢者2人家族になると妻は自分のために食事をつ くることはしなくなる。それと同時に、夫のためにもつくることをしなくなる。とにか く妻は子どもたちが喜んで食べてくれるから今までずっとつくってきた。ところが、子 どもたちが家庭からいなくなってしまうとお父さんのために御飯なんかつくるのは嫌だ わという話になって、必ず栄養が低下する。御飯にお漬物、おつゆぐらいで済ませてし まう。やはり家庭に入って、こういうものを食べないといけないと言ったり、何か食べ たいという意欲を持たせるために話をしたり、なだめたり、すかしたりして食べていた だく。そういうことでだんだんと自立に向かってくるというような状況を私は見聞きし ている。  それと同時に、私どもの地域は2,300世帯の集合住宅の中にある。その中に給食サー ビス、ミニデイ、訪問介護、子育て支援、障害者施設、いろいろなものが混在してい る。なので、私たちは、この方はこういうところでサービスを受けた方がいいなと思う とそちらに行っていただく。給食を届けたときにどうも具合が悪そうっといった連絡が 来る。そういうふうに、地域全体を皆で支えているという状態であるので、口腔ケア、 栄養改善、本当に地域でなければ支えられないと考えている。 (森岡参考人)  それは大変重要なことで、歯科医師会にとってもありがたい話だが、日ごろの介護の 部分と今回の新予防給付の中の位置付けをどういうふうに考えられているか、別に口腔 ケアが要らないとか、栄養改善が要らないとか、新予防給付に位置付けるのがおかしい とかいう話ではなく、日ごろの運動機能の向上と今回の新予防給付の住み分けをどのよ うに考えられているかということをお伺いしたい。 (島津意見陳述人(市民協))  住み分けというより、地域包括支援センターと地域の住民が連携を密にしていけば、 可能でないか。 (大森分科会長)  私は65歳を超えていて今は子どもがいないので夫婦2人だが、私の栄養状態をどこか でチェックしないと危なくなるかなと感じた。  いずれにしても、今回新予防給付で口腔ケアということを重視しているので、どうや って今までの努力とこれがつながっていくのか、非常に大事なポイントになっているよ うに伺った。 (花井委員)  介護労働者、取り分けヘルパーの労働条件の問題について伺いたい。  介護サービスの質を高めていくということだが、それと同時に労働条件、あるいは労 働の質を高めていくということがもう一方でなければと思っている。現在の介護職の労 働者の労働条件がそういう状況にあるとは残念ながら思えない。先般の介護保険法の改 正の国会審議の中でも、登録型ホームヘルパーの直行直帰型が非常に問題であるという ことが国会の中で共通認識となり、さまざまな改善策が今後求められているのではない かと考えている。  それからもう一つ、これから介護というものを考えたときに、やはり認知症へのケア をどうしていくのかということが強く言われているし、現実にそういう方がたくさん増 えている。そうすると、勤続年数が短くて3年ももたないでヘルパーが変わっていくと か、施設の職員が1年で辞めてしまうという状態が本当に認知症のケアを支える働き方 になっていくのかということを懸念している。  もう一つは、医療行為に関連して感染症をホームヘルパーが家族にうつしてしまうよ うなことも聞く。その問題も働く上での健康問題ということで大変重要だと思ってお り、そういう観点から3点についてお伺いしたい。1つ目は、介護職の質を高めるため の研修体制がどのように事業団体の中で指導されているのか。研修体制の問題。2つ目 が、感染症との関係で健康診断を例えば最低年1回とか、指導が行われているのかどう か。あるいは、その実態。3つ目は、平均の勤続年数がどのくらいなのか。 (島津意見陳述人(市民協))  健康診断は年1回必ず事業所の負担で受けさせている。  それから、研修会は月に1回必ずヘルパーを全員集めおこなっている。外部の研修も 積極的に受けるように進めている。  勤続年数は介護保険が始まって非常勤ヘルパーに来てもらってから、現在非常勤のヘ ルパーは38名おりますが、特別の事情以外、要するに引っ越したとか、そういうこと以 外で辞めたヘルパーはいません。 (小野随行者(全社協))  1点目の研修体制について、釧路市社協でパートタイマーを中心に事業関係をしてき たが、そのうちの約4割が介護福祉士の資格を取得している。パートタイマーイコール 質が悪いということではいけない。アマチュアリズム、プロフェッショナリズムの関係 があると思うが、パートタイマーという働き方の中でも志向性を持ちながら質が高く展 開している者もいる。  しかしながら、確かに直行直帰、それから登録型の問題も多々あると認識しているの で、そこのところを研修体制は十分つくり上げていて、採用時の研修は約1週間実施 し、3か月、1年、2年、3年と年1回の採用時から3年間のポイント、ポイントで研 修をしながら、その経験年数に応じた指導をするということを基本にしている。  それから、直行直帰のリスクをカバーするために、釧路市の場合は5つのホームヘル パーステーションを地域的に展開しているが、それぞれのホームヘルパーステーション で毎週木曜日、全員が集まり1時間、連絡調整をして積み上げるという形を維持してい る。  2つ目の健康診断の件では、当然、労働法に基づいて最低年1回、更に24時間体制の ホームヘルパーの場合は必ず年に2回、更にここ最近結核の方へのサービス提供があっ たので、当然法定でなので、更にその3年間の健康診断は対応している。  それで、先の研修体制の中でも感染症対策は大きな課題なので、更にその都度、新し い感染症の情報が出てくる。その都度または情報に合わせての専門教育をして積み重ね ているところである。  平均の勤続年数について、正確なところは今、手持ちはないが、3年で辞めるという ことはない。釧路市社協では58年度からはじめているが、20年以上勤めているパートタ イマーもいる。その方たちは、やはりパートタイム労働だからこそ生きがいを持って生 き生きと、更にその研修をしながらパートタイム労働の中で1時間でも2時間でも専門 性を持ちたいと思っている。そういうニーズと相まって10年選手、20年選手というスタ ッフがいる。当然、介護保険制度のスタートの段階ではサービス提供責任者の常勤の基 準が設定をされたので、内部登用という形でスキルを培った者で常勤稼働が可能な者の 中から中核になっていただいている。そういうシステムをつくっているところである。 (藤田随行者(生協))  コープ神奈川の状況だが、非常勤の訪問介護員が約400名。各事業所で必ず毎月強制 的に集まって研修を行っている。更に全体での研修だとか、神奈川県内の生協や農協と 共催での研修を積極的に行っている。また、健康診断は必ず年1回を義務づけているこ とと合わせ、事務職員も含め全員が毎月検便をし、感染には気遣っている。  勤続年数について、介護の事業は介護保険の約半年前から開始している。それ以前は いわゆるボランティアや助け合いの会的な活動だったので、介護保険が始まってからと いう統計でしかないが、平均は3年である。したがって、実稼働しているヘルパーはほ とんど辞めていない。  通所介護のスタッフについては一人も辞めておりません。 (佐藤意見陳述人(農協))  労働環境についてはどこにも負けないような体制だろうと思っている。就業規則も独 自でつくったし、感染症予防の問題などさまざまな研修会を各階層で実施しており、徹 底的に行っている。  先ほどヘルパーの退職という問題が出てきたが、やはり夢と実態は違う。35歳くらい で介護職が退職するという実態が出てきている。そうすると、専門性の蓄積という論議 が盛んにあるが、その問題からしても35歳で切れてしまうことは少し問題があるかと思 っている。そうならないように、定年まで継続して労働をして、そして定年後は助け合 い組織の中で活動をしていくというサイクルを念頭に置いて取り組んでいる。 (石原意見陳述人(民介協))  年に2回以上の各地区での研修会が義務づけられており、1回は共通テーマで全国で 行っている。  それから、マニュアルを本部でつくり、その中に2番目の健康診断のことなどもすべ て入っており、質を全体できちんと上げていくという取り組みを協議会としてやってい る。  平均勤務は、協議会では平均はわからないので当社のことを申し上げると、15年とい う職員がいるにしても、全体的には介護保険からたくさん入社してきた。  現在ケアマネジャーがケアプランを大変細かく立て、時間も指定するためにヘルパー の活動が朝食時と夕食時に集中する。まだ十分働くことが出来ないヘルパーは自分の一 番都合のいい時間だけ働くことで問題はないが、働きたいヘルパーにとって朝と夕方の 仕事だけでは不十分である。折角研修をして育てたヘルパーが施設へ行ってしまう経験 をたくさんしている。事業者に置かれているサービス提供責任者に細部の時間等は任せ て貰ってヘルパーが有効に仕事が出来るようにして欲しい。また、利用者の自立やQO Lに有効な巡回システムも、非常に大切なことだということで申し上げておきたい。 (建部意見陳述人(在介協))  当団体は、活動内容の1番が経営者や介護従事者に対する研修事業であり、いろいろ なことをやっている。その成果物としての出版物なども発行いたしている。そういう業 界全体としての啓蒙活動を協会として行っている。事例としては、協会の資料は持ち合 わせていないので、私どもの会社について申し上げたい。  ヘルパーの研修体制について、きちんとした研修規定を持っており、初任者は24時 間、現任者は7時間の定期研修がある。毎月、各事業所単位で勉強会をする。それか ら、サービス従事者のスキルアップという意味では、日常業務的には殊に身体介護を中 心にしたようなサービスを新しくヘルパーを付ける場合には、サービス提供責任者が同 行して指導をする。具体的にはそのような形でヘルパーのスキルアップを確保しようと いう仕組みにしている。  健康診断は当然に入社時、それから年に1度の定期検診、これは全員。  それから、従業員、社員の平均的な在籍年数については、1年以内で離職される方は 1割といない。もう5年生、6年生である。 (松井参考人)  介護予防について、在介協、生協、全社協の方に伺いたい。  介護予防について、要介護度改善及びサービスからの離脱のみではなく、維持でもそ れを評価すべきだという指摘があった。しかしながら、すべての要介護度者について維 持ということは、いかがなものかと考えている。維持という場合、どのような人が維持 でもよくやったと評価ができるのか。何か具体的なお考えがあるのか。あるいは、こう いうケースならば事前にこの人は維持でも十分だと言えるものを、客観的な形で現場の 中でも決めることができるのか。あるいは、それも利用する方が納得し得るようなもの なのかどうかということをまずお聞かせ願いたい。  それに関連して在宅介護協会では、この問題は要介護度改善あるいはサービスからの 離脱とは、サービス提供側ではなくてそれを利用する方が本当にきちんと取り組むとい うことも大変重要だと考えており、利用者へのインセンティブということを入れるべき とお考えだが、その点についてもう少し資料に書いている以上に詳しいお考えがあるの かどうか。そして、ほかの2つの団体の方がどのように考えているか。これを教えてほ しい。  次に、JAの意見で情報開示の内容についての標準化をもっと進めてほしいとのこと だが、これは、利用者側からすると確かにそういう点もあるが、考えようによっては、 どれをやればいいのかということではなくて、何でもいいから出しなさいというやり方 で最終的に皆がどのようにやっているのか、個々が学んでいくことで収斂していくとい う方法もあろうかと思う。絶対標準化が必要と考えておられるのか聞きたい。  それに関連して、地域密着型についても制度のフレームワークはこの中でも十分議論 していくと思うが、地域密着型というのはまさに地域においてどのようなことが必要で あるかが重要であって、それをこと細かに決めるということが本当にいいとお考えなの か聞きたい。 (建部意見陳述人(在介協))  維持については、どういうねらいかというと、要支援の対象になる個人的な要件、そ のときの状況は必ずしも一定範囲に収まる方ばかりではないかもしれない。予防のカリ キュラムが、要するに適用がふさわしいか、その向上が見込めるかとの判断、それ自身 が難しい方も、やってみようかという形でこのカリキュラムに入ってくる方もいるであ ろうし、そうではなく明らかに改善が期待できる方もいると思う。  そういうことで、その対象になるこのカリキュラムを受けられる皆さんのもともとの 個体要件が違ってくる。そうすると一定期間、3か月とか6か月という期間の中で著し い改善まではいかないけど、悪化防止されて維持できたと言えば、もともと要支援の効 果がないのではと思われた方について維持ができたとするならば、もともと効果が期待 される人について離脱ができた、介護度が改善できたということと同等の評価をしても いいかもしれない。そういうことが、維持も評価をする対象ではないかという考えを述 べさせていただいた。  次のインセンティブのところで、改善の効果が見られたと評価した場合、その対象に ある方が通所もされ、介護予防訪問介護も受けているときで、しかもその事業者がA、 Bと違うと、どちらの評価の点数を付けるのかということがある。あるいは、予防介護 のケアプラン自身が適切であったからということで、場合によってはプレイヤーが三者 ということもあり得る話。いろいろな考えがあるかと思う。したがって、この分科会な り、ワーキングチームでいろんな考えが出て、これについて相当な幅でブレがあったと 認識しているが、最終的にはインセンティブ評価をしよう、しかも、事業者単位でやろ うということになると思うが、いま一度そのときの議論を踏まえて、利用者に努力を促 しその成果については利用者に、という方が素直ではないかと思う。ただ、与え方につ いては確かに種々の問題がまた出てくることは承知している。 (田中意見陳述人(生協))  維持は、介護予防サービスが新しいサービスとして提供されるわけだから、枠組みで 言えば介護度を改善することは当然その目的になるが、同時にその介護度を悪化させな いことは最低限の話である。なので、すべての介護度についてそれを導入するかは別で あり、新しい要支援について、それが維持されることは評価すべきではないか。ある生 協のデータで言えば、3年か4年にわたってその介護度が維持されているというのは58 %くらいで改善されたというのは12.3%、合計で約70%になっている。そういう意味 で介護度を維持することは事業者だけではなく、利用者もそういう気持ちでやるから維 持できるわけで、どう具体的に考えるかというのは非常に難しいと思うが、何らかの形 でインセンティブを与えるべきではないかという考え方である。 (小野随行者(全社協))  維持、インセンティブの問題だが、維持については全社協としては意見を出してな い。しかし、現場でも要介護度を維持するだけでも精一杯というお年寄りはたくさんい るし、それは高年齢であったり、長い生活経験の中で固められた生活体験、生活様式で あったりということが多い。更に、このことはやはり現場で納得ができる形で、それも 利用者の十分な納得が得られる形で行うことが重要。さらにいろんな観点があるかと思 うので、この成功報酬は、まだいろんな論議が必要ではなかろうか。全社協の中でもま だ固まっていない。  それから、地域密着型について、住民参加の中で運営委員会などを設定しながら、地 域の中で理解をされた中でその地域に合ったサービスをつくり上げていくことは大変大 事なことだと認識をしているので、そういう視点が含められればと思う。 (佐藤意見陳述人(農協))  情報の標準化で、違いがあってもいいではとの話だが、確かにフリーハンドの場合は そのとおりだろう。ただ、今回の情報開示は強制力があるわけで、この辺は事業側がフ リーハンドで事業間同士の競争原理の中て開示という問題ではなく、強制的な中での情 報開示の審査の第三者評価の問題であるので、少し意味合いが違うのではないかと思っ ている。そういう中で、現場の取り組みは相当違いが出てきているので、事業者として の負担が何時間というところもあり、その辺を考慮してほしい。  それから、地域密着サービスの問題について、確かに地域の特性に合わせてつくると いうのは大変すばらしいことだが、ただ、この地域密着サービスが単独で動いているの でないので、介護保険制度とリンクする中で地域密着サービスが当然動くわけなので、 フリーハンドで何をしてもいいということにはならないのではないか。そうすると、一 定のフレームの中で地域支援サービスが実施される、計画されるべきではないかと考え ている。 (木村委員)  ケアマネージャー側の要望というか、事業者の考え方ということで伺いたい。  6団体がそれぞれ意見を述べられたが、利用者の状態とか特性によって適切に必要な 判断をして、利用者が通いたいとか、やりたいというプログラム、ケア内容を示すべき で、まさにケアマネジメントのプロセスの中でそれをやっていくのだが、日本在宅介護 協会と全社協に伺いたいが、ケアマネジメントをしていく中で、目標志向型のプランが できたとき、その目標に向かって個別サービスの事業者も同じ目標を持ってきちんとや っていかなければいけないというのは共通の認識だと思う。その中で、具体的に言うと サービス担当者会議はすごいポイントだと思うが、現実的にはケアマネージャー側の問 題もあるかもしれないが、担当者会議を開くにもなかなかうまくいかない。そこで、何 とか開けるような方向性ということで、どういうことをクリアしたら開けるようになる か、もしアイデアがあったら2つの団体の方に意見をいただきたい。 (北村随行者(在介協))  それに対しては、先ほどのインセンティブのような費用の部分を付けていただき、1 回やれば幾らと、そんな加算ができれば単純に開きやすくなるという答えを持ってい る。 (小野意見陳述人(全社協))  サービス担当者会議だが、1つにはやはり時間がなくて開けないというのが一番大き な課題だったかと思うし、その点で言うと今50件という基準のところを30件程度という 論議もあろうかと思うが、やはり事務的な作業をどれだけ少なくして直接的なケアマネ ジメントに時間が取れるような体制を組みながら、そのことの中でサービス担当者会議 が開かれる時間的、物理的な場をつくり上げていく、これが一点かと思う。  それから一点は、医療の現場のスタッフとの連携かと思う。医療スタッフがしっかり と参加いただける体制をつくること、そういった意味ではこれから考えられ得る介護予 防のケアマネジメントでも、地域包括支援センターが絡みながらということなので、そ の中に医療系のスタッフ、または委員が参画をしていただき、それぞれの地域の体制を 考え、つくり上げていくような委員会になっていくことが必要かと、そのように望みた いと思っている。 (木村委員)  全社協の今の回答では、ケアマネジメントをする側の考え方だったと思うが、訪問介 護事業の立場から、要するにきちんとしたケアプランができても訪問介護員が共通の認 識を持たないで勝手なことをしているという情報も入ってくる中、きちんと出てもらえ れば同じ目標に向かっていけると考えたので、訪問介護員としてどうやったらそこに出 ていけるかということを伺いたかったのだが。 (小野意見陳述人(全社協))  訪問介護計画の策定の段階とケアプラン策定の段階と一体化されながら展開をしてい る。  ただ、同じ法人がサービス提供とケアプランをすることに対しての論議があろうかと 思うので、公平・公正・中立性をかんがみながら、それを取り込むことのないような形 で、しかし同じ法人だからこそ連携が取れる形で進めているということを付け加えた い。 (大森分科会長)  ヒアリング、意見陳述は以上にさせていただく。  それでは、最後に私から提案だが、本日も議論の中に出てきており、前々回の本分科 会で議論が出ている介護予防サービスだが、この中で通所系サービスにおける目標の達 成度に応じた評価、これは難しくて、皆様方からいろいろ意見がたくさん出ているの で、その検討すべき課題の中に相当程度技術的な問題もあり、これは介護予防ワーキン グチームに再度検討願わないと無理ではないかと判断しており、井形先生とも相談の上 だが、本分科会としては介護予防サービスを始めとする新規サービスの報酬基準に関す る基本的な考え方の整理を行う際の参考として、改めて介護予防ワーキングチームに、 この目標の達成度に応じた評価について技術的な問題を集中的に検討していただいてこ ちらへ意見をお寄せいただくことをお願いしたいと思っているが、よろしいか。  実は、この内容を踏まえると、できれば本分科会の田中滋委員と、産業医科大学教授 の松田晋也先生にこのワーキングチームに加わっていただき議論を充実していただけれ ばというのが私の考え方だが、それも了解いただきたい。(一同了承) ○大森分科会長より閉会の宣言 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係 TEL03(5253)1111(内3948 3949)