05/09/27 労働政策審議会雇用均等分科会第51回議事録            第51回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時:平成17年9月27日(火) 13:00〜15:00 2 場所:三田共用会議所大会議室 3 出席者:    労側委員:吉宮委員、岡本委員、篠原委員、片岡委員    使側委員:川本委員、前田委員、渡邊委員    公益委員:横溝会長、今田委員、佐藤(博)委員 ○横溝分科会長  それでは時間が参りましたので渡邊委員がまだお見えになっていませんけれども、た だ今から第51回労働政策審議会雇用均等分科会を開催いたします。本日は奥山委員、林 委員、樋口委員、佐藤孝司委員、吉川委員、山崎委員がご欠席でございます。  議事に入ります前に、傍聴者の皆さまにお願いがございます。いつも熱心に傍聴して いただきまして感謝申し上げますけれども、審議を円滑に進めるために事務局からお配 りしております「傍聴される皆様への留意事項」に記載されている事項を遵守していた だきたいと思います。このことを改めてお願い申し上げます。審議の妨害とならないよ う審議会開催中は静粛にしていただきますようにご協力をお願いいたします。よろしく お願いいたします。  それでは早速議事に入ります。本日の議題は「男女雇用機会均等対策について」です が、まず「差別禁止の内容等」について議論していただき、続いて「ポジティブ・アク ションの効果的推進方策」、最後に「セクシュアルハラスメント対策」について議論を していただきたいと思います。  まず、差別禁止の内容等について議論をお願いいたします。なお、関連資料につきま しては以前分科会で提出された資料ですので説明は省略させていただきます。そういう ことでよろしいでしょうか。  それではご意見等述べていただきたいと思います。 ○吉宮委員  このくくりについては、労側からいくつか問題提起しておりますので、これまで2回 程議論しておりますけれども、引き続きこれまでの議論を踏まえつつ意見を述べたいと 思います。  最初は「募集・採用」の第5条の関係でして、差別的取扱いの禁止というのが、第6条 ・第7条・第8条で、そういう規定ぶりになっています。第5条についてはこの資料1の3 ページにありますように、アンダーラインを引いてあるように「均等な機会を与えると は女性に対して男性と等しい機会を与えることをいい」ということで実質的に禁止的な 条項になっているわけですが、名実ともに6条・7条・8条と同じような書きぶりにして おいたほうが良いのではないかという考え方です。  それから二つ目に「雇用管理区分」についてですが、これについては指針の取り扱い になっていまして、法律条文そのままではないわけですが、男性と女性との間における 格差の問題なり、差別の認定にあたって、雇用管理区分というのは非常に重要な役割を 果たしていると思います。いくつかの判例等における国への勧告もこの雇用管理区分を めぐる問題について提起がありますし、国連の女子差別撤廃委員会でもこの分野の日本 政府への指摘があります。  そのようなことを考えますと、真に男女間格差なり差別を無くす意味でこれまでの解 釈を少し抜本的に変えていく必要があるのではないか。これについても資料を今日お配 りいただいていますが、一つの雇用管理区分ということでその間で男女間の比較をする と。その「雇用管理区分とは」という書き出しで幾つか物差しが克明に出ていますが、 これも現状に合わないのではないかということもありますし、もう少し仕事に着目した 物差しがあってもいいのではないかと思います。学歴とか就業形態とか職種とか、いく つか細かにその同じ区分でなければ比較してはならないということを原則にして、ただ し形式の問題ではなくて実態だとは書いてありますけれども。これは結果としてコース 別雇用管理を生み出したり、あるいは最近とみに増加している非正社員は就業形態の違 いということになりますけれども、それはまさにさまざまな男女間格差を生み出してい るということからしますと、例えばその業務を遂行するにあたっての求められる技能は どういうものか、あるいは責任の度合いはどういうものか、あるいは労働負荷がどうな のかと。そういうことで物差しを作れば、もう少し仕事内容に着目した男女間の格差の 問題、差別の認定が公平にできるのではないかと思います。この点については、法律条 文ではありませんから、もし仮に均等法改正が成りますと、その後の指針改正も当然議 論されておりますけれども。そういう面での問題を国際的にも国内的にも問題になって いますので、検討を加えて欲しいという事が2点目でございます。  3点目に仕事の与え方というのが男女間のさまざまな格差を生み出す要因という分析 が、これまでの議論で指摘していますが、厚生労働省の賃金格差の検討会でも、格差要 因の大きな原因だと指摘していますし、私どもの調査でも、仕事の与え方に男性と女性 の違いがあって、そのことが格差を生み出しているという現状の均等法の仕組みからし ますと、仕事の与え方をどの分野でとらえるかということなのです。  今日の資料で、配置というものの解釈にあたっては、日常の業務の指示については該 当しないという指摘がありまして、当然私どもも日々の日常の業務まで仕事の与え方で くくるということは考えていませんけれども、ただ、性的役割分担というものの考え方 が根底にありまして、女性に非常に補助的業務を専ら与えるということが問題でして、 そのことが結果として評価になり、加えては昇進・昇格にも影響するという事からする と、現在の6条、7条、8条という書き方では仕事の与え方というのはとらえきれないの ではないかと。  そうしますと、とらえきれる方法は何かということで、前回までの議論の中で賃金、 労働条件その他というアメリカが規定しているような方向で、もしこの均等法を見直し すれば労働条件の中に仕事の与え方も入りますから、そういう意味ではその方がいいの ではないか。前回までの議論の中で、厚生労働省事務局から示されたいろいろな均等室 の相談事例で、佐藤博樹委員が「その行政指導は無理があるのではないか」という指摘 をされて、課長も「ある意味ではそういう面があります」と。例としては退職勧奨や身 分変更の問題です。雇い止めというか、解雇という解釈をして指導しているということ でした。  これは現行の法の書き方ですと非常に無理な解釈があると分科会長も言っていますよ うに、そういう意味で、そういう面からも今の規定ぶりを変えていくことが必要ではな いかというのが3点目です。  4点目は労働基準法との関連なのですが、3条・4条の問題で、3条については均等待遇 という面が入っていますが、これには性別が入っていません。従って労働基準法も女子 保護規定だけを見直すのではなくて、3条・4条についても、今回は言及すべきではない かという指摘でございます。  それから特に4条について「男女同一賃金の原則」の賃金原則のところですが、これ についても、現行は刑罰規定になっていて「女性であることを理由として」というのが 差別認定の考え方なのですが、この事を証明するのは非常に困難が伴います。刑罰規定 だけに非常にハードルが高い。そういう4条がなかなか使い切れないという面からする と、均等法はまさに男女間格差の改善を求める法律ですので、賃金分野についても基準 法の4条を、もう少し機能的に高めていくためにも賃金というものを均等法に盛り込む べきではないかと思います。  それに対して、同じ女性差別の賃金差別を基準法でとらえるのと均等法というのはち ょっと矛盾するのではないかという奥山委員の前回までの議論と、それから佐藤委員か らは、賃金差別というのは当然配置の違いなり訓練の差異なりそういう分野で出てくる わけだから、そこの元を正せば賃金差別というのは無くなるので、そういう意味では特 段均等法に賃金を盛り込むことは必要ないのではないかというご指摘がありました。  しかし実際の表れ方としては、賃金差として出てきた時に、まさにその原因は何かと いえば、当然佐藤委員がおっしゃるように、配置だったり教育訓練だったりします。も ともとの発生原因からすると、両方からとらえる必要がありまして、コインの裏表みた いな感じだと私は認識しているのです。そういう意味できちんと賃金というものを入れ 込んだらどうかと思います。  加えて、厚生労働省均等室の相談の事例の区分けから見ますと、5条・6条・7条・8条 それぞれごとにどの位相談事例があったのかということの他に、その他という相談事例 が挙がっていまして、賃金なり労働時間なり深夜労働にかかわる相談事例が、かなりの 割合を占めているわけです。そういう意味で、もう少し行政指導が関与できるような均 等法にする意味でも賃金・労働条件などの書き方の方がもう少し実効性が高められるの ではないかと思います。そんな観点で、4点目を問題提起として引き続き出したいと思い ます。以上です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。他にいかがでございましょうか。差別禁止の内容について 何かご意見があれば。いかがでしょうか。  それでは、ポジティブ・アクションの効果的推進方策の方に移ってよろしいですか。 資料がありますので、事務局からお願いいたします。 ○石井雇用均等政策課長  それでは資料の説明をさせていただきます。かつてお配りした資料もありますが、資 料No.2-1については新しいものですので、それをご覧いただければと思います。  ポジティブ・アクションについて、夏より前に議論いただいた際に、地方公共団体に おける取り組みを紹介して欲しい、あるいは公契約において、男女平等の問題を加味し ている例もあるといったようなご発言がありました。この資料は、そうしたご意見を受 けまして作成いたしました。自治体の方のいくつかの取り組みですが、ここでは情報と して把握できたものを三つのタイプに分類しております。一つは入札参加資格審査への 反映等で、もう一つが補助金、それから三つ目が届け出制度等です。  まず入札資格参加審査への反映等ですが、宮城県と東京都千代田区の例で、これが似 通ったものです。宮城県は建設工事、そして千代田区は建設工事とそれから物品等競争 入札の参加資格者格付の中で男女共同参画の関係を反映して加算をするというもの。参 加資格の中で加算するという取り組みを行っています。  このうち宮城県につきましては、評価する項目が4項目ありまして、女性の登用、そ れから育児・介護休業法を上回る制度があるかどうか、職場環境、セクシュアルハラス メント。この4つの項目のうち2項目以上該当すれば確認証を交付して、加点するとい う考えです。  また東京都千代田区においては、男女共同参画社会貢献度ということですが、ここで 実際に取り上げておりますのは、育児・介護休業法に定めるレベルを上回る制度を有し ているかどうかというところのみに着目して加点しているという違いがあります。  その他、福岡県福津市でございます。制度ができた当時は福間町という所で行われて いたもので、市になった時に条例として引き継いで同じ制度を踏襲していると聞いてお ります。指名競争入札等参加資格審査申請を行う事業所に対して、男女共同参画の推進 状況の報告書の提出を求めております。これは条例に根拠がありまして、そういう書類 を提出するようにということで要請しております。具体的には従業員の男女別の状況だ とか、あるいは新卒者の男女別の内訳とか、平均勤続年数とか、管理職の数とか、育児 ・介護休業の利用の状況などいくつかの項目について記載を求めているところです。た だ、これは書類を求めているだけでして、その記載した報告書の内容が何か入札等で反 映されるという仕組みにはさしあたってはなっていないと承知しているところです。  次の補助金でございます。高知県で行われているものでして「男女がともに働きやす い職場づくり事業費補助金」ということです。原則2分の1の補助ということですが、二 つのタイプがありまして、従前女性を配置していなかった部署とか職場に新たに2名以 上の女性を配置するために必要な施設整備等を行った場合、例えば女性が入ってくると いうことで駐車場の防犯灯を設置するとか、あるいは重い荷物を運ぶ際に容易なように ということで機械の購入といったものが例示として挙がっているようです。また、もう 一つのタイプが母性の保護のための環境整備に必要な施設整備等ということで、男女別 の休憩室とか、休憩室における間仕切りとかそういったものが例示として挙がっている ようでして、必ずしもその利用状況は多くはないようですが、数件実績があると聞いて います。  それから、三つ目が届出制度等です。このうち神奈川県の取り組みにつきましては、 既にこの分科会でもご発言があったところです。神奈川県では、従業員数300人以上の 事業所に対して男女共同参画の推進状況について届出を毎年求めているところです。ま た東京都においては、これは要請するというのではなくて、男女平等の推進とか両立の 支援の関係で、どのような取り組みを行っているかということについてデータベースを 作成をしまして、登録の希望があった企業について訪問調査を行って、その事が事実で あることを確認した上で東京都のホームページ上で公開しているところです。登録件数 が9月1日現在で99件になっているということです。以上です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。何かこれについてご質問はございますか。 ○佐藤(博)委員  もしおわかりであればなのですけれど、この入札の上二つで具体的に、ほとんど入札 する所はこれを満たしているのか。実際にどうなのか。これを入れたことによって入札 企業はかなり変わってくるとか、という事ですね。  事実上みんな加算点を取るような状況になっているのか。あるいは加算というのは、 どのくらいなのか。例えばどういうふうにするのかわかりませんけれど。もし、おわか りになればで結構です。 ○石井雇用均等政策課長  現実問題、どのくらいこれが効いているのかというところは、再度宮城県に確認しな ければわかりませんが、加算の状況ですけれども、例えば宮城県の場合、請負工事金額 2億円以上の場合950点という点数が必要ということになっております。これに、もし加 算されるということになりますと最良の場合には20点加算されるということです。例え ば930点という企業があった場合は、この加点がなされることによって950点になり、滑 り込みセーフということが可能になるといったような形です。宮城県の場合、今回は男 女共同参画の話を取り上げましたが、他にはISOだとか障害者の雇用だとか、そういっ た取り組みについても加算制度を設けていると承知しているところです。 ○横溝分科会長  よろしいですか。他にはいかがですか。 ○吉宮委員  前回までの議論は、使用者側の方からは労側が提案している事業主にポジティブ・ア クションの義務付けは反対であるとのご意見がありました。むしろ均等月間などのPR にもっと重きを置くべきではないかという提案でした。それから、もう一つはコスト論 です。強制力を持たせるような仕組みを導入した場合に企業への負担、行政の負担も一 部入るかと思うのですが、そういう負担のところ、費用対効果の関係をどう考えるかと いうのが前回の論点かと思うのですが、平等性を確保するという大きな均等法の目的か らした場合に、どんな方法が一番必要かと言う意味ではポジティブ・アクションは非常 に有効な手段だと思うのです。これはまず認識できるかどうか、特に間接差別の問題等 を考えた際にも、いろいろな労使が導入した制度なり慣行等をうまく進める意味でも、 このポジティブ・アクションというのは有効な手段であるという認識を持っています。  そういう場合に、この20年間でポジティブ・アクションも国の支援等が入って法律化 して、約10年程度経ちますが、一部の企業の自主的取り組みは進んではいるものの、例 えば管理職の女性の数等見ても大きな前進をみていないという現状認識からしますと、 何らかの新たな仕組みというものを考える必要があるのではないかというのが私の認識 です。  そこのところを、やはり従来通りで良いのかということからすると、従来通りにやっ た場合に基盤ができるかというと、それを期待はしているのですが、どうかなというの がございます。では、どんな方法があるかというと諸外国の例もこの分科会に示されて いて、イギリスみたいに現行の日本のスタイルを実施している国もありますけれども、 アメリカ的な義務付けた上で行政が関与するという方法と、フランス等に見られるよう に例えば今日示された神奈川県・東京都のように、届出だけをお願いして、それを情報 公開して民間団体等の評価を仰ぐみたいな、そんなことを期待する仕組みがあります。  いくつかのタイプがありますが、私ども労側の意見としては、アメリカタイプが効果 があるのではないかと思います。ただし、中小企業分野については、ある一定期間猶予 を講じてというのが提案です。  労側はこれまでの議論の中で、例えば従業員の男女別状況とか配置の状況とか、採用 の数というのは当然企業の労務管理上は持っているはずで、改めてそれを課すことによ って負担がかかるとかではないのではないかというのが今までの議論、私どもの意見な のです。  だからこれが毎年義務付けで、毎年行政も関与するとなると、奥山委員がアメリカの 例で「なかなか機能してないよ、5年に1度くらいの実態になっている」というご指摘も あるわけです。そこは運用の考え方であって、これから平等な社会をつくるという意味 からすると費用の負担ではなくて、むしろ人材育成の投資という観点からすると、プラ ス面があるのではないかということです。ぜひそういう議論をこの場で、コンセンサス を得られるように私どもは、お願いしたいというのが1点です。  二つ目にポジティブ・アクションの対象ですけれども、今、ほとんどの企業にパート タイム労働なり派遣労働など非正規社員の労働者が増えています。この方々も対象に私 は入れるべきではないかというのがあります。  法律の仕組みでパート法の中には、企業が募集をする場合、空きがあった場合に、パ ートタイム労働者に優先的に応募機会を与えるという仕組みがあります。派遣法にもそ ういう仕組みがあります。優先的な応募機会というのは法律の仕組みがあるわけです。 そういうことからするとポジティブ・アクションをつくる中で、パート法なり派遣法の 現在の仕組みを有効的に機能させるためにも、対象にパートタイム労働者も派遣労働者 も入れ込むということが当然あって良いのではないか、というのが二つ目の指摘です。  それから三つ目に、法律でそう義務付けた場合であっても、特に重要な課題は、雇用 管理上の男女間の固定的な性別役割というのをどう払拭するかというのが根にはあるわ けです。そうしますと、これは企業全体の組織風土を変えていくということの課題です ので、できれば企業の中に、それを推進する労使委員会みたいなものを作ることによっ て、法律の届け出を、さらに基盤をつくる意味での事業所内の委員会を作れば、組織風 土も改善できる、全社挙げてやるということになっていくのではないかと思います。そ ういう推進部隊もあっていいのではないかというのが私の意見です。 ○横溝分科会長  はい、ありがとうございました。今、吉宮委員からいくつかご意見がございました。 ○佐藤(博)委員  ポジティブ・アクションを義務化した場合、ポジティブ・アクションをどう考える か。そのコストとか、毎年やれるのかも含めて、労側のご意見を伺いたいです。つまり どういうものをポジティブ・アクションとして想定されるか、ということにもよると思 います。それはなぜかと言うと、女性の活躍の場がどのぐらい拡大しているか企業ごと に相当違います。ですから女性の活躍の場を広げる、均等を進めていくというときに、 多分それぞれの企業でやるべきことは相当違う。そういう現状を考えたときに、多分一 律のメニューでやれというのがなじむのかどうなのか、というのがあると思います。  例えば次世代法の場合ですと、現状の子育て支援よりも少しでも前へ進めてくださ い、よりレベル高いところは、より上で、低いところは低い所で出発させてより少しと いう形です。一応、どういう分野か挙げていますが認定を取らない限りは、基本的には 何やれとは言っていない。前よりも一歩進める取り組みをしてくださいと言っている。 取り組みの中身については例示を挙げるだけで、それをやらなければいけないとなって いるわけでもない。ですから、ポジティブ・アクションというと、今のガイドラインに も、一律にやるものがあるのですが、多分どういうものを想定するかで相当違うと思い ます。その辺は議論されているのかどうか。もしされていれば少し教えていただけれ ば、議論が先に進むと思います。 ○吉宮委員  厳密に言うと議論はしていないのですが、均等法の大きな目的は、男女間の職務分離 を解消するというのが一つのねらいとしてあります。そうしますと職域拡大が一つの大 きな柱だとすれば、男女別労働者の配置状況も、企業によってもちろん違います。サー ビス業と製造業は違いますけれど、それぞれごとに、特に女性の職域が少ない場合につ いては、それを拡大するという、いわば目的を持ったポジティブ・アクション。あるい はある程度フィフティ・フィフティというか、そんなにバランスを変えても何というこ とはないという所について、管理職の地位に就く方の、男女間の格差が非常に大きい場 合は、そこに力点を置いた訓練とか、そういうものでのポジティブ・アクションもある でしょうし、まさに企業ごとに違うわけです。それは企業自身が逆に言うと、私のイメ ージでは行政が作っている指針の目的・ねらいというものを一つのベースにして、それ に沿った形でそれぞれの企業が自分の所で課題となっているものを、どのようにそれを 改善していくのか。それがポジティブ・アクションの企業ごとの取り組みになっていく のではないかと思います。そういう意味では一律物差しを作って、こうでなければいけ ないことはないと思っています。 ○横溝分科会長  はい。どうぞ ○川本委員  ポジティブ・アクションについて、確かに有効であり、大切な取り組みであるという ことを私どもも認識しています。  ただ、あくまでもポジティブ・アクションは、事業主が自主的にという所がこのポジ ティブ・アクションの最大の意味合いだと思っています。自主的に取り組むことをベー スに、どう考えていくのかというところが一番大事な視点だと考えています。 ○佐藤(博)委員  自主的に取り組むことを義務化する。例えばそれぞれ取り組むことは、それぞれの企 業が労使で考えてください。ただし取り組むことはやってくださいというものとか、い ろいろな幅があります。ですから今の次世代法に近い感じ、労側はどうかは別ですが、 積極的に事業主が女性の活躍を広げていく、男女を均等にしていくことは大事だとした ときに、自主的に取り組むことを義務化する。  ただしそれはこうしなさい、モデルはいろいろ示すかもしれないけれども、うちは採 用を少し増やすように努力しているということを立ててやるというのも、例えばいいか もわかりません。管理職登用というような、自主的な取り組みを義務化するようなもの もあり得ると思います。例えば自主的ということを、義務化はやらなくていいというこ とまでを選択だとしない限りはあり得る。やらないということまで残した自主的な取り 組みというと、確かに法律となじみませんが、自主的な取り組みを義務化するというの はあり得るような気もします。その辺はいかがですか。 ○川本委員  考えさせていただきます。貴重なご意見で即答はできないと、頭の中で考えていると ころです。  佐藤委員から自主的に取り組むことを義務化するというお話がありましたけれども、 義務化というのが非常に、一足飛びという感じはしています。個人的な感想です。 ○吉宮委員  先程佐藤委員が、大企業と言うか規模が大きい所は、かなりデータ上は取り組んでい るけれども、中小も取り組んでいますという指摘もありました。だから中小分野で義務 付けるのは、弾力的な運用というのはあると思います。私どもは中小は少し暫定期間を おいてやったらどうかという提案をしています。義務付けられたことに伴う負担という のはかかるのか、かからないのかというのが、それが多分大きな議論だと思いますが、 率直にそんなに負担が、かかるのかなというのがあります。まず客観的なデータを揃え なければなりません。うちの会社はどうなっているのかという男女別のデータをまず揃 えなければいけない。そのときに何が課題かと見えてくるわけで、その課題の必要性と いうのは、短期に解決できるものと、かなり時間がかかるものと、どうしても区分けが 出てくるわけで、目標も出てくる。そういうことをお願いして、やったらどうでしょう か。  そして行政がいろいろなそのための支援をする仕組みを一方で用意すれば、さらに企 業の方も頑張り、世の中に公表する。世の中の方もこういうデータをもとにして、この 企業というのはこんな方向性を持った企業だと。それは採用・募集というか、企業のイ メージアップにもつながりますし、差別化というか、そういうのも可能です。積極的に 取り組む企業は魅力ある企業になっていく。そういうことが普及することによってそう いう競争が始まるというのが期待できると思います。  だから前回の議論も聞いて、アメリカ的なものは私には理解が不十分なのですけれど も、データを揃えることをまずしましょう。それを次世代法みたいに目標を定めてやり ましょう。それがそんなにコスト、負担がかかるかどうかというのが率直に言って、疑 問というか納得できません。 ○前田委員  私もポジティブ・アクションというのは、ぜひ積極的に進めて欲しいという考え方で いるのですけれども、佐藤委員のおっしゃった取り組む事を義務化というのもどうなの かなという感じがしないでもないです。確かに各社いろいろな数字を持っていると思い ます。それを他社と比べやすいような整理が、本当にできているかと言えば、例えば行 政の方からこういう区分の仕方でデータを取ると、こうやって比べられますとか、そう いう情報を流してもらうことは、各社それぞれにそういう方向にデータを直していくこ とをするでしょうから、大変有効ではないかと思います。それを今、吉宮委員がおっし ゃったように、目標みたいなものを定めてとなりますと、各社本当に取り組む優先順位 ・規模・女性の人数の多さだとか、いろいろ違うと思うので、それを全部、法律とか、 全国を網羅するようなもので、かけてしまうというのは非常に難しいと思います。  ただし何とか各社取り組んでもらうことを前提としたような表現がうまくできれば、 そういうことはぜひ、して欲しいという気がしますが、法律で義務化というのは私も考 えさせていただきたいと思います。 ○片岡委員  どうしてもポジティブ・アクションを具体的に進めるに当たって、現在施行されてい ます次世代法を、もう一方でその動きを参考に考えております。  次世代法はもちろん十年間の時限立法ということですが、そういったものを作ってで も、それを押し進めようという、非常にその国を挙げてと言うか、高齢・少子社会への 対応というのがあるわけです。それは当然女性だけでなく、男性の働き方も含めて、男 女が職場で意欲的に働き続けるということと少子化の問題というのは切り離せないと考 えます。  その上で次世代法がそういった形で施行していて、企業規模、300人と数で仕切って おりますが、そうした対応をしていることに、両輪ということで合わせる意味でも、ポ ジティブ・アクションは、一定の義務化をすることで進めていくのが、少子化対策・男 女平等は車の両輪の関係ということでも大事だと思います。それは先程、具体的には吉 宮委員がおっしゃった、連合の要求に基づく今回の意見が内容ということになります。  コストの話が出ていて、果たして本当にかかるのかどうかということも出ています。 仮に一時的にコストがかかるにしても、それを補うインセンティブに値するような援助 策というのも、労側委員の中から今までの議論の中で例示などもしております。私は時 間がかかるけれど、十分それは後から回収するだけの効果がポジティブ・アクションを 進めることによって現れると思います。事業主対象のアンケート調査などでも、その効 果の所ではそういうものが期待をされているし、出ているという評価もあると思いま す。ということがまず義務化に向けた意見です。  もう一つは先程、資料No.2-1でこの間、公共入札に関する意見等あるいは質問等をし た中で、実際の例を出していただきました。恐らくこれ以上に、その効果なり評価がど ういうものかということは、興味あるところですが、もっとこういう事例は地方公共団 体を並べれば多いのではないかと思います。  こうした公共団体におけるポジティブ・アクションを進めるような、公契約の物差し になる平等をしていくことを、国がもっと積極的にかかわってやっていくことも、企業 の自主的な行動や、あるいはポジティブ・アクションを効果的にする大きな意味がある と思います。  均等法でこれをどうするのか、それ自体まで深く考えて公契約の問題を申し上げてい るわけではありません。これは少子化のことに言及することとかかわって、国が公共団 体の契約などの際に、こうした物差しを積極的に取り上げて、それを判断材料にしてい くことをもっと進めていただきたい。それは、結果として働く人だけでなく、市民にも よく見える動きにもなります。市民の中でも当然多くの方たちが、企業の社会性をどう いうふうに評価するか。自分自身の子どもが、将来会社を選ぶときに、その会社がどう いう会社であるかということを参考にすることなどにもつながると思います。  その点で、ぜひこの公契約に関する国の積極的な関与を進め、ポジティブ・アクショ ンを進めることの効果を期待したいと思っています。 ○岡本委員  ポジティブ・アクションについての意義というものを、十分に使用者の皆さまも認め ていらっしゃる、これまでの議論の中でそういうふうに受け止めているのですが、だと するとなおさら、なぜ義務化がいけないのか、難しいのかということが、もう少しはっ きりとわからないと、議論が進まないと思います。  これまでの議論の中では、コストの問題がありました。私も東京都のデータベースを 今回見たのですが、その調査票を見ても、労務管理上、企業としてはきちんと持ってい るものだと思います。この中でポジティブ・アクションについて、いくつか書いてあり ます。例えば登録をすることに、コストがかかるということは全く思いません。またそ のことにコストがかかるとおっしゃっているのではないと思います。この結果、どうい うふうに次のステップを進めていこうかという部分だろうと思います。例えばアメリカ 型のように1年ごとにということであれば、1年間の中に少しでも、例えば女性の管理 職の数を増やすということを求められていく。これは人材育成の面から言っても、簡単 に数を増やしていくということは難しいだろうと思います。例えばそれは3年という中 で進めていく。3年間で人材育成をしていく、検証をしていくということであれば、女 性の管理職を増やしていくプロセスもある意味、時間をかけて作り上げていくというこ とができると思います。そのことは片岡委員が言っていたように、結果的には人材育成 に寄与していくということで経営側にとって何らマイナスな部分がないのではないのか と思えて仕方ありません。  先程説明にあったハードの部分。女性をそこの職域に入れていく、増やしていくこと によって、何らかのハードを整備しなければいけない、整備をしなければいけないこと については、確かにコストがかかると思います。例えばそういったことも登録をしてい く、計画を出していくことの中で、行政からの援助・支援・助成金を求めるといったよ うな、両方を相まってやっていくことができれば、十分に組み直していくという形で対 応できるのではないかと思います。ポジティブ・アクションを積極的にやるべきだ、と いうことをおっしゃっていながらも、そこに対して消極的な意味合いが、私としては理 解ができないので、先程「考えます」とおっしゃっていただいていたので、この回かど うかわかりませんけれども、教えていただければ、またいろいろな智恵というか、やっ ていくための物差しができるのではないかと思います。 ○篠原委員  私もポジティブ・アクションについて紹介も含めて述べさせていただきたいと思いま す。2001年から毎年、私たちの組織ではポジティブ・アクションの実態調査をやってお ります。部長職・課長職をプラスしたものと、主任と係長ということで、二つに分けて 調査をやっています。数字的にはポジティブ・アクションが少しずつですが、だいぶ浸 透してきたというデータが表れています。  ちょうど2001年に調査をしたときは、部長職・課長職相当の役職の方が、女性の大体 0.5%ぐらいしかなかったわけですけれども、2004年の調査においては、約2%。それと 主任相当職・係長相当職ということで、2001年には女性全体の3.5%ということで、 2002年には約5%という数字になっております。  年々数字は上がっていますが、先程佐藤委員からもありましたように、企業によって 非常に積極的に取り組みをして、特に主任・係長職で、2004年には女性の10%を越えて いる所もあり、一方で0.何%という企業もあり、非常に差が大きいという実態もありま す。それを考えると、企業の取り組みを生かしたものは、非常に重要だろうと思いま す。  この次世代育成支援対策推進法の行動計画を作るときも、多分企業によっていろいろ な取り組みがさまざまなので、このような企業のやり方を尊重した行動計画を提出して くださいというやり方が、一番いいのではないかということで、このような行動計画が できてきたのではないのかと思うわけです。やはりポジティブ・アクションもそれぞれ の企業の特色を出すことが非常に重要だという認識を考えれば、この次世代育成支援対 策推進法のような行動計画を作って、きちんと自分たちの企業の中で検証することが、 重要なのではないかという意見です。 ○横溝分科会長  他にいかがでしょうか。 ○吉宮委員  現状認識ですけれども、国連などにおける日本の女性の活躍の機会のデータというの があって、世界で何番目というのはよく言われますが、どんな状況なのでしょうか。特 に管理職の状況を物差しにした指標が出ているのは、国連ですよね。私の記憶によれば 最近、韓国と日本が非常に遅れているというのを聞いたことがあります。25位とか26位 とかでしたか。 ○石井雇用均等政策課長  今、手元に資料はないのですけれども、それはUNDP、国連開発計画がジェンダー・エ ンパワーメント指数という形で、毎年指数化したものを発表していて、その中に政治家 の中における女性の政治家、企業における管理職、そういういろいろな総合的なものを 指標化したものと承知しています。  先般その数字が発表されていまして、確か38位とかそういった順位だったと記憶して おりますけれども、おっしゃるようにあまり高い順位につけていないというのはその通 りだと思います。 ○吉宮委員  何を言いたかったといいますと、労働組合も組合役員に女性を参画しようということ で一つのポジティブ・アクションというか一つのプランを作っていて、十分な効果とい うのは目標には行っていませんが、それを作ることによって各加盟組織が、委員会を作 ってやる。そうすると企業における女性の配置状況がどうなっているか、まさに企業別 組合ですから表裏一体です。  それは労働組合に与える影響も非常に大きい。例えば従来型の男性職場と言われてい る昔の伝統的な仕事は、女性がやっても訓練すればできるような仕事に変わってきてい るのに、職場に女性が入りにくい。そこを変えていかないと組合運営についても、その 分野の組合は女性が増えないという面があって、そういう意味で世の中全体が、特に雇 用分野でポジティブ・アクションを講じることによって、さまざまな団体におけるポジ ティブ・アクションも進む効果が期待されるわけです。そういう意味で先進国に求めら れている、さまざまな指標が我が国では残念ながら不十分だとすると、女性の活躍の場 をどのようにして本当に広げていくかということからすると、ポジティブ・アクション は本当に重要なことです。1997年の均等法見直しのときにはどうしようかという議論だ ったのですけれども、導入いわば国の関与までは行ったわけですから、さらに1歩進め て、企業の自主的取り組みを国で法律上担保するみたいな仕組みを求められているので はないかという認識です。  ですから企業の方もコストということもあるでしょうけれども、1歩踏み出すという まさに、企業のトップの決断が活躍の場というわけで、使用者側の委員の皆様も、ぜひ そこは決断をしてやっていただくということが必要ではないかと思います。 ○横溝分科会長  随分前ですが前回、奨励措置についてのご意見を伺っておりますけれども、これにつ いてありますか。随分義務化についてご発言がありました。ポジティブ・アクションの 奨励措置でもご意見を伺っていますよね。 ○佐藤(博)委員  例の自治体のポジティブ・アクションのこの加算、今の奨励措置のことですけれど も、なぜポジティブ・アクションを加算しているのかわかりますか。つまり障害者雇用 率とか他にも加算している中の1部なのか、これしか加算していないのか。これだけ加 算することについて議論が普通あるだろうと、その辺はわかりますか。 ○石井雇用均等政策課長  まず宮城県につきましては、もともとそのISOシリーズの取得状況とか障害者の雇用 の状況を反映するスキームがありまして、そこに男女共同参画という問題を付け加えた らどうかということで、後から追加されたと承知しています。  もう一方、東京都千代田区について承知している限り、ここもISOの認証取得の関係、 区ですから在住区民雇用加算。その区の中でいる方をどのくらい雇用したかということ での加算をするといったようなことも加味されています。  一方福津市については、男女共同参画条例を作る際に、こういった問題も議論され、 条例の一文として根拠が作られまして報告書提出という形に至っているということで す。若干自治体によって色合いが異なっていると思います。 ○横溝分科会長  ご議論はいかがでしょうか。なければ、次のセクシュアルハラスメントのテーマでよ ろしいですか。セクシュアルハラスメントについては資料No.3で添付されていますけれ どこれの説明は今回省略します。はい、セクシュアルハラスメントに入りたいと思いま す。どうぞ。 ○川本委員  セクシュアルハラスメントにつきましてご意見いただいたのは、参考資料の1に入っ ているわけですが、その中で特に労側の委員から出ております義務化という話の中で事 前防止と事後対処という2つの話が出ていまして、それに対して分けて考える必要があ るだろうというご意見をさせていただいています。  今日は冊子で21世紀職業財団の資料が入っていますけれども、21世紀職業財団が平成 16年9月に発表したセクシュアルハラスメントのアンケート結果があります。お手元に 資料がないのですが21世紀事業財団の調査によりますと、企業がセクシュアルハラスメ ントについてどのような対応をしてどのような事に苦慮しているかということを調べて あります。その中で処分上の問題、要するに事後をどうしているかという話になるので すが、一番大きいのは加害者と被害者の言い分が違うのでどうしていいかわからない、 非常に困っているというのが、63%くらいの会社が答えています。  その次に困っているのは、処分の妥当性がよくわからないというのが3割(27%)く らいになります。言い分が違っていてどういう事実でどちらが正しいのかが非常にわか りにくいというケースがあるのだろうと思います。もちろん非常に明らかな場合もあっ て、その場合は就業規則上の対応がやりやすいのだろうと思いますが、それ以外の部分 が非常に難しい問題をはらんでいるということだろうと思っています。従って事後対処 の話というのは企業側の管理という面からいっても非常に厳しくて難しく対処しにくい 問題だということを改めて申し上げておきます。 ○横溝分科会長  はい、片岡委員。 ○片岡委員  現行の配慮義務規定では効果的ではなく実効性を強化するということで、労側委員が 予防と事後の適正な措置を義務化するということを言ってきたわけですが、改めて意見 公募の中を読むと、重要な指摘が幾つかされていて、その必要性の認識を新たにしてい ます。  例えば、事後措置ということを自分なりにもう少し整理してその柱というのを考えて いますのは、当然その予防効果が高まって起こらないことが一番望ましいわけですが、 起きた場合に事後措置の柱となるのは、被害に遭った人の救済であり、その人の就業継 続の要望に応えるものというのが事後措置の柱であるということだと思います。  これまでこの審議会でも行政の相談の事例も紹介していただきましたし、意見公募の 中間取りまとめを受けて行った中にも非常に参考になるものがあると思っております。  今、申し上げた事後措置の柱と別の意見になりますが、今日資料でいただいている現 行の規定あるいは指針・通達等が資料として配られており、その現在の指針に新たに加 えるべきものも多いように行政相談の事例、意見公募から読み取っております。  これは以前申し上げましたが、意見の中に多くあることなのですけれども事実認定の 話は別として被害を訴えた人のプライバシーをきちんと保護する、あるいは訴えたこと による不利益を禁止することが現在は指針のその他事項で取り上げられておりますが、 これをきちんと条文なりに格上げし強化して被害者の2次被害を防止すること、あるい は場合によっては先ほど事実認定が難しいと川本委員がおっしゃったわけですが、それ を第3者の証言によって明らかにしていくということも行われているとは思います。  その際に第3者が客観的な証言ができるようにするためにも証言を行った場合にその 人まで報復を受けるようなことがあってはならないと思いますので、その点では現行指 針にさらに今、申し上げたようなことを踏まえた格上げや追加が必要だと思います。  先ほど川本委員から企業の対応も苦労している事について二つご紹介がありました。 言い分が違うことと処分妥当性ということで苦労されているということは、事実認定の 混乱性という点では理解いたします。  ただ、事後の問題でけしからんと言っているのは、その困難だということをとらえて 被害者の言い分を認めないということではないと私は思っています。まずは被害に遭っ た人が求めているのは両者を公平に扱っているかどうか、扱ってもらいたいということ であったり、事が起きた後の対応でいえば、ものによって早い段階で結果が出れば、ま ず加害者から謝ってほしいと言っていることや、受けたダメージは大きいけれど仕事を 失うことをどうしても避けたいから仕事の継続環境を整えてほしい、例えば配置転換や 場合によっては加害者処分ということだと思います。先ほど柱は被害者を中心とすると 言ったことと重なりますが、事後の対応をきちんとやることが事実認定の困難性は残る けれども、大事だと思います。  事実認定が企業内で困難な場合には、第3者の機関を活用するということも重要です が、企業によっては外に持ち出すことに拒否反応があるような場合があります。  結果として解決を遅らせますし当事者のダメージがさらに深刻化するということがあ りますので、事実認定にあたってはそうした第3者機関を利用することなども含めまし て、公正客観的な判断を下すということももっと進めていいことではないかと思いま す。  今、申し上げたように事後の適切な対応ということは、被害者の対応として会社が全 てけしからんと言っているのではないということを最後にもう1回申し上げたいのです けれども、やはり実態を踏まえて被害を訴えた人に誠実に向き合って事実認定を行っ て、それに基づく公平な対処をする。被害者に納得のいくことを誠心誠意企業がやるこ とということです。あるいは被害を回復する手段を提案したり実行することが被害に遭 った人が事後の対応として一番求めていることではないかと思います。  長くなりましたけれど意見公募の中から相談活動に携わっている人の声が多く出され ていて、被害の状況はますます非正規と言われる派遣社員や非常に立場が弱い人につけ 込んだ被害の状況が多いし、職を失いたくないあまりにがまんをしたり、そのことによ って傷ついていく人が依然多いというのが相談者からの事例で挙げられています。  審議会の意見の中で申し上げてきましたが、精神的な後遺症を受けた場合にどういう ケアを行うかということを企業も社会も十分受けとめていかないとそのダメージは、心 身ともに健康でなければ働く機会さえ奪われなおかつ、その過酷な状況に放置されると いうことが見受けられますので、アフターケアということも今回の中では十分見えるも のにしていく必要があるということを思います。  セクシュアルハラスメントの事後の対応を具体的に申し上げたのが、今の中身です。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○佐藤(博)委員  質問です。今の議論にかかわってですがセクシュアルハラスメントはいろいろと難し い問題があります。  使用者として事前・事後の対応もきちんとやったとしてもほかのいろいろな紛争と違 って加害者と被害者の所にある意味では第3者としてどう解決するかという立場ですの で、もちろん事業主がやっていない場合もありますが、努力しても特に事実認定という のはなかなか難しい問題があると思うのです。  そうすると現状の均等法の中の調停ではセクシュアルハラスメントは入っていないわ けです。  先ほど第3の機関という話があるのですが、調停の中に入れるということがあり得る のかどうかということと、もう一つは調停を入れた場合でも基本的には事業主と労働者 という環境を想定して調停はできているのです。  セクシュアルハラスメントの場合は、被害者と加害者と使用者という中でのことです ので、従来の調停の枠組みの中で加害者、被害者という問題を扱えるには、枠組みを変 える必要があるのかどうか、その辺の意見と質問なのです。 ○石井雇用均等政策課長  ご質問の趣旨の受け止めが違っていたら訂正していただきたいと思いますが、セクシ ュアルハラスメントが現在調停の対象になっているかどうかということについて言えば 現在はなっておりません。  ただ均等法の中でセクシュアルハラスメントの規定が先にできたわけで、その当時調 停の対象としなかったという理由は、ともすればセクシュアルハラスメントの事案の多 くは特性として個人間のプライバシーの問題にかかわることがあって、事業主と労働者 の間の紛争解決のための調停にはなじまないのではないかという考えがあったのです。 その後個別紛争法ができ、その中ではあっせんの対象となっておりまして、現実問題、 事業主と労働者の解決というものも幾つもなされている実績はあります。  従いまして、そもそもの性質として調停になじまないものなのかというと今はそうで はないと言える状況になってきていると思っています。 ○横溝分科会長  よろしいですか。はい、どうぞ。 ○佐藤(博)委員  従来の加害者と使用者という枠組みで調停ができるのかどうか、お聞きしたいです。 ○石井雇用均等政策課長  現行の調停はあくまでも使用者と労働者という感じになりますが、確かに考えてみる とセクシュアルハラスメントというともう1つの存在として加害者という存在があるわ けで、そういう方々が中に参加するという形でいろいろなバリエーションを考えられる と思います。それは仕組み方、工夫の仕様だろうと考えています。 ○佐藤(博)委員  もし、調停をするなら第3者の機関が必要だと思いました。  一つは、個別紛争の中に調停を入れ込む、ただそのときに加害者・被害者両方がいる ので、特に加害者のところについてヒアリングや事情を聴くということが必要だと思い ましたので伺いたいと思います。 ○今田委員  質問です。今の調停の枠組みで言うと企業がセクシュアルハラスメントについてきち んとした対応をしなかったのだという形で労働者が訴えるという係争の調停というの と、セクシュアルハラスメントにおける3者の対立でそこでの言い分がという紛争では、 枠組みが少し違うと思うのですけれども、そういう意味で、調停にもっていくとセクシ ュアルハラスメントの中心的な、根絶すべき課題というものが残されてしまいます。  もちろん企業が問題に対してどう対応するか、どう処理するかということに関しては 調停で十分だと思うのですが、片岡委員が先ほど問題を出されたように加害者に謝って ほしいというような精神的なケアという部分は、企業と被害者の関係ではないのでその 辺を整理して何かセクシュアルハラスメントに効果的な根絶の枠組みを考えたほうが、 既存のものを使用するとかというのも1つのアイデアだとは思うのですけれど。その辺 どうなのですか。 ○石井雇用均等政策課長  今、セクシュアルハラスメントについて現状あっせんに持ち込めるもののタイプとし て企業が全く方針も事後対応もなってない、そのためこのような目に遭っているという ことで訴えてくる。そうなった場合にまず前提となってきますのが、事実関係を会社が 全く把握をしないでそこのところがはっきりしないために、事後措置をとってないとい うケースもありましすし、何もしていないというケースもあります。  先ほど佐藤委員からご提案があった話は、例えば入り口の事実関係のところで加害者 を呼んで本当はどうだったのか、第3者として両方の言い分を聞いて適切な判断をして、 これは実際問題としてセクシュアルハラスメンがあったと、会社として事後の措置を執 るべきであると。その執り方としてはいろいろとケースバイケースになってくるかと思 いますが、そういう意味で参加をさせるということは一つの考えだろうと思います。も しかして、少し中途半端な回答になっているかもしれませんが。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○吉宮委員  均等法になぜ使用者にセクシュアルハラスメントの予防を配しているかというと、使 用者の責任として快適に働く環境を作る責務があるということが前提です。それを受け て、任意なのですが企業に方針を、方針というのは何かというとセクシュアルハラスメ ントはまず、こういうのがセクシュアルハラスメントに当たりますというのを明確にし ていないと思います。セクシュアルハラスメントをしてはいけないと、それは対価型も あれば環境型もあるというのも含めて、それを使用者は守らなければこういう責務があ りますというような責務規定があって、その場合に事実認定をするための相談窓口があ りますというのでその仕組みも作っています。  その時に、たしか労働者同士だったり、上司と部下だったり2者間ですが均等法に期 待するのはまず使用者としての責務はどうあるというのが問題なのですから、加害者と 被害者を認定した後の措置を使用者責任は期待しているのだと思います。雇い主である 使用者に最終的に責任があるということも均等法は期待していると思います。  しかし現行の仕組みは配慮義務ですから、そこまでは行政は関与できない。従って今 度義務化することによって調停、紛争制度の仕組みに入ると、加えて認定ができ悪質な 場合は公表も入ると私は理解しているのです。今はその仕組みになっていないのでそこ まで行かないということです。  先ほど川本委員が言われた予防措置は使用者責任が必要だと認めた上で、実際に紛争 が起きたときに事実認定ができないものは使用者がやるというのは難しいと思います。  認定できたものについては就労継続の問題や2次被害が起きないような職場環境にす るように使用者に課すというような責任がありますよ。ということは事業所内での言い 分が違うときはどうしようかということを解決に努力しても不可能だという場合も、も し調停制度を均等法での調停にもっていくようにすれば、もう1回両者の言い分を聴き そこで判定し使用者の責任の範囲はどこまでだという結論はでるだろうと思います。  従って私どもの仕組みとしては予防措置配慮義務から予防措置、指針等を含めたとこ ろを義務化してやることが必要ではないかと思います。  付け加えて今、企業は相談員を委託しています。要するに利害関係者だけで判断する のではなくて、それに関係ない人に委託することが事実認定を含めたことにあたる。そ の方々の悩みを聞くと相談員の判断が相談を受けた方を含めて人生を左右する面があ る、どのようなアドバイスをすればよいのか。  皆、さまざまな個別事案ですから個別になるのですが、もう少しお互いに意見を交流 する場があればうまくいくのにというのがあります。その行政の支援・役割として相談 員の方々の研修や情報交換の場をもう少し作ってあげて、そういう役割が行政には必要 ではないかとこの間相談員の方にお会いしていただいた意見です。  セクシュアルハラスメントはデータ上増えていますから、何らかの取り扱いの強化を しないとまずいのではないかという認識です。 ○横溝分科会長  はい。 ○片岡委員  少し1点、先ほど川本委員が処分の妥当性について苦慮するとおっしゃったので、私 は企業そのものが社会的な評価にさらされているということは決して悪いことではな く、企業のコンプライアンスの上でもCSRの点でも重要だと思うのです。  最近の私の身近な例で申し上げますと、はっきり言って賃金の扱い、私の場合サービ ス業の出身なのですが、お客様から現金を預かって会社に入金して適正に処理していく ということが必要な業務なので、一般的な例ではないかもしれないですけれど、会社は 金銭の事故に対して敏感でそれは額の大小ではなく、非常に厳罰に処するということが 傾向として行われているのです。なぜセクシュアルハラスメントの時だけ、ではないと 思いますが今、苦労している例でおっしゃったので、私は正直加害者を失うことの重み と被害者に対する重みの扱いにとてもバイアスがかかっているというか、多くが先ほど から出ているように会社にとって加害者となった人は非常に失いたくない存在、一方恐 らく被害に遭った女性は派遣社員であるならまた次の人が会社としては呼べるのではな いかとかですね。  あるいは非常にインパクトのある事例が意見報告で挙がりましたけれど、正社員の男 性は正社員の女性にはセクシュアルハラスメントしないのだと。そういうつまり非常に 弱い立場につけ込んで性犯罪が行われているところで、処分のさまざまな一般的に行っ ていることともう一度照らし合わせれば、私は先ほど金銭の例を申し上げましたけれ ど、もっときちんと加害者の側に立つ処分ということで、その妥当性に悩まずに事実に 基づいて処分するべきは場合によっては懲戒解雇であるとか、配置転換によってあるい は降格によって加害者だった人もアフターケアがされて、以後、転勤したら違う所でま たセクシュアルハラスメントを起こすということがないように、そのことも含めて処分 するということは、十分悩まずにできるのではないかと思います。  その処分の妥当性の時、どうしても加害者の方に重きをおいた考え方に立っているか らではないかと思うので、そのような事例を少しご紹介して、十分妥当性を見出すこと ができると思っています。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○渡邊委員  セクシュアルハラスメントの問題については使用者側も非常に苦労していると、先ほ ど川本委員も言われた通りです。第3者機関が調停でというお話がありましたけれど、 やはり第3者がかむことについて、特に均等法上で何か縛りをしていいのではないかと いうのが私の私見です。これはセクシュアルハラスメント自体が主観の問題で非常に対 応が難しいというのが多い。  逆に経営者が使用人を解雇したいがなかなかできないという事態があるわけですし、 またその加害者が反省してもまたやるということがよくあるのです。  つまり人間の癖でセクシュアルハラスメントが多発するというのがあるのではないか という意味で、均等法という今の議論の中で公的な相談機能や調停機能ということは賛 成していいのではないかと思います。全体は義務化というように、持っていくのは非常 に難しいのではないかと思います。 ○横溝分科会長  はい。 ○吉宮委員  佐藤委員や渡邊委員がおっしゃった今の救済紛争制度に入れた意味は皆さん期待して いるのですね。  現行の救済紛争制度にどうすればのるのかです。 ○石井雇用均等政策課長  もし、今の均等法の規定を変えなければ調停の対象にできないというご趣旨であると すれば、必ずしもそうではないと思います。  今の規定のままで調停の対象にすることは法制上は可能ではないかと、法制局との相 談も必要かと思いますけれども絶対無理ということではないと思っています。 ○横溝分科会長  現在は均等室がセクシュアルハラスメントに対する相談を受けそれから助言をする、 それから、平成13年にできた個別労働関係紛争解決促進法は均等室と違うのかもしれま せんが、紛争調整委員会であっせんをする。  それはセクシュアルハラスメントに対しての現行の制度ですね。 ○石井雇用均等政策課長  それに加えますと助言・指導・勧告ということを行政指導上可能でありまして、個別 紛争になった時にも労働局長の助言・指導が可能ですが、調停の対象にはなりません。  個別紛争の場合は助言・指導までとありまして、紛争調整委員会のあっせんの対象ま でになるというのが現行の姿です。 ○吉宮委員  でも今の配慮義務から義務付けられたら一番すっきりするのではないですか。すっき りするという言い方ではなく、行政の関与の仕方が明確になるということです。  わが国のセクシュアルハラスメントの規定は諸外国より弱いですね。私に言わせると 人権侵害なのです。  もちろん事業主としてはそういうことが起こらないというのが一番いいわけで、その ようにがんばっているとは思いますけれども、やはりそういう意味で、事業主としての 責務は、法律上内外にもっと明らかにした方が、私としては公平性が担保できるのでは ないかと思います。  各企業の取り組みによって、バランスを欠いているというのはおかしな話です。どの 職場に行ってもセクシュアルハラスメントは駄目だということにしなければ駄目ではな いかと私は思います。  それから、前回の議論の中で不利益取扱いの禁止について、奥山委員から均等法上申 し立てによって不利益取扱い禁止なのか、セクシュアルハラスメントの申し立てなのか ということで、方やそうではない、セクシュアルハラスメントの苦情申し立てについて 不利益取扱い禁止だと言っているので、私たち労側はそういう考え方なので、そこは整 理したいし、不利益取扱いの禁止のところを法律上明記して欲しいということです。  もう一つは、プライバシーの方です。セクシュアルハラスメントという性格を考える と、プライバシーの保護は非常に重要なテーマなので、法律上きちんと明記することが 必要なのではないかということです。  それから、現行の労災の申し立ては拒んでいないと分科会長からもお話があったので すが、私どもに寄せられている要望・意見等では、認定の判断基準のハードルが高いと いうか、セクシュアルハラスメント以外のところも絡んでくるということなのでしょ う。  しかし、セクシュアルハラスメントというのは快適な職場を作る上で、起こっている 問題ですから、労災認定の申し立てなどももっと気軽にできるような考え方をして欲し いという要望です。  次は、男女双方についてですが、男女双方ということになれば、もちろん男性にもセ クシュアルハラスメントが適用されるということです。  それからジェンダーハラスメントについては、佐藤委員からポジティブ・アクション でやれば解決する話ではないかと、逆にセクシュアルハラスメントの定義が非常にあい まいになるという主旨の話で、川本委員からもそういう話がありました。  しかし、一方で公務員の場合はジェンダーハラスメントもセクシュアルハラスメント に入っているので、そのことが公務員のセクシュアルハラスメントの取り組みにあいま いさを残したり、ファジーになったりしているとは聞いていないので、もちろんポジテ ィブ・アクション等でも取り組むことによって、根絶するという役割はあるのですが、 私としては、せめて公務員の規則にあるようなことは、民間レベルでの均等法でも明記 しておくべきではないかと思っています。 ○横溝分科会長  他にございませんでしょうか。はい、どうぞ。 ○佐藤(博)委員  セクシュアルハラスメントの話なのですけれども、セクシュアルハラスメントとは何 かと言うと、確か行政解釈に「こういうものがセクシュアルハラスメントだ」と書いて ある部分と「女性がセクシュアルハラスメントと受け取るとセクシュアルハラスメント だ」に近い書き方の部分とがあるのです。つまり範囲が広く書かれているのです。  そのことと企業に事前の予防措置を義務化した場合、ある程度企業がやるべき取り組 みを明確化する必要があると思っていて、女性がセクシュアルハラスメントだと意識し たらセクシュアルハラスメントですというところまで事前の予防措置をしろと言うのは すごく難しいと私は思っています。  事前の取り組みはやらなければいけないけれども、今のセクシュアルハラスメントの 定義からすると、企業としてはどこまで事前の予防措置をしていいか、非常に不明確だ と私は思っています。  もちろん事後の予防措置については、個別にいろいろ出てきますから、あると思うの ですけれども、事前についてはある程度義務化した場合、企業の人事管理上で考えると ある所までの取り組みをしておけば、事業主としては一応取り組んだということを明確 にしないと、どこまでやっていいかわからなくなるようなことになりかねない。つま り、できるだけ安全な方までやろう、ここまでやっておかないと駄目か、というままで 義務化するというのは、事前の取り組みについては結構難しいと思っています。 ○石井雇用均等政策課長  一応クラリファイする意味で、資料No.3をご覧ください。  佐藤(博)委員から「女性の受け止め方によってセクシュアルハラスメント」に近い書 き方になっているのではないかというご指摘があったのですが、資料No.3の7ページを ご覧ください。  下の方に「(ホ)「性的な言動」及び「就業環境が害される」の判断基準」というのが あります。ここに記載しておりますのが「女性労働者の主観を重視しつつも、事業主の 防止のための配慮義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要である」とし て、「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とすることが適当としております。  ただ重ねて言いますと、それでも女性労働者が明確にこの意に反することを示してい る場合はそれに応じて対応しなければいけないということを言っておりまして、一応、 メルクマールは「平均的な女性の感じ方」としています。  ただ、事前措置ですので、そこについて「周知・啓発を図る」ときの留意事項としま して、もう1点述べている所があります。次の8ページをご覧ください。  セクシュアルハラスメントの防止ということに引っ掛けてですけれども、中程の(ロ) 「相談・苦情への対応」の直前のパラグラフですけれども、「その発生の原因や背景」 についてちゃんと理解させなさいと言っているくだりを受けてですが、このセクシュア ルハラスメントの発生の原因や背景としまして指針の中では、女性労働者を職場におけ る対等なパートナーとして見ず、性的な関心の対象として見る意識のあり方が挙げられ るものであるということを併せて強調しておりまして、そういった固定的な役割分担意 識や下に見下すといった意識が背景にあると、セクシュアルハラスメントとなって表れ るのです。そこについてしっかり予防の観点から理解を深めなさいということを併せて 言っている所です。  その辺が佐藤(博)委員からあいまいさがあるのではないかとご指摘があったゆえんで はないかと思ったので、補足をさせていただきました。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○佐藤(博)委員  今の7ページのところで、企業がきちんと事業主の配慮義務としてセクシュアルハラ スメントのセミナーをやっているところが結構多いです。そういったセミナーを見てい ただきますと「ただし」のところまで入れているところが結構多いのです。  企業とすれば、できるだけやろうとすればそうなるのです。できるだけそういうこと が起きないようにする。  ただそれをすると、やはり極端なことを言うと、男女のコミュニケーションを阻害し たり、例えば先程の女性の育成ということも「その辺も大変だ」と思ってしまう管理職 が出てきたりするということも実際にあるのです。  ですから私は、セクシュアルハラスメントとは何かということをある程度明確にし て、特に事前の予防措置について言えば、やはりこの「平均的な」という、このときは 何かということは非常に難しいと思いますけれども、そこまではきちんとやる。もちろ んやらなければ駄目です。やれば事後的にいろいろ出てきている、事業主としての努力 義務になるか配慮義務になるのかと思いますけれども、そこはクリアできるとある程度 明確に出さないと、特に義務化した場合は難しいかと思います。 ○横溝分科会長  これまでにセクシュアルハラスメント対策について規定の強化、それから定義等いた だきましたけれども、本日何かおっしゃっておきたいことがありましたら。  今、課長とも相談しまして、最初の差別禁止の内容について、非常に短時間で次に移 ってしまいましたので、この2つのテーマを議論しながら、またご意見等ありましたら 承りたいと思います。錯綜しておりますので、なかなかぱっとご意見を言いにくいかと 思いますが。はい、どうぞ。 ○佐藤(博)委員  事務局に質問です。  吉宮委員が言われた中にも一部ありましたが、まず、均等法は正規従業員の男女差別 だけを対象にしているのではなくて、有期契約の人全部入るわけですけれども。現行上 の不利益扱いで雇い止めなど、この辺のところは、前に質問があった時に今の均等法で カバーされているのかどうか、あるいは運用でやられているという形で均等法をそのま ま読むとなかなか難しいようなのか、ご説明いただければと思います。  特に雇い止めや例えば正社員をパートに雇用区分を変更するとか、契約変更とか契約 更新をしないなど、途中なら解雇になるわけですが、雇用契約にかかわる所が結構大事 だと思うのですが、正社員の場合は、定年と解雇でだいたい済んでしまうのかもしれま せんけれども、有期の人を想定した場合、現行法上で不利益扱いをカバーできているの か、その辺を教えていただければと思います。 ○石井雇用均等政策課長  以前にも同じようなご指摘がありましたので繰り返しになりますけれども、例えば現 行均等法の中でカバーができてないのは、おっしゃるとおり雇い止めではないかと思い ます。  相談事例の中でも、たまたま相談事例ではなんとか繰り返し更新をしておりましたの で、実質的にこれは期間の定めのなき雇用として判断することが可能な事例でしたか ら、解雇ということで対応したわけですけれども、いつもそういう事例ばかりではあり ませんので、例えば雇い止めという問題について言えば、均等法の中で非常に対応はし 辛くなってきていることは間違いないと思います。  またそれと同様で、身分変更の強要というところも、解釈の中で、それが雇用形態を 明らかに異にしてしまう場合は、契約内容を一方的に打ち切りであるということで、こ れは解雇であるという解釈で、救済を図ったりしておりますけれども、これは事案が起 きた時にそういう対応が図り得ているというに過ぎないわけでして、あらかじめそれが そういうこととして受け止められているかと言うと、そこは甚だ疑わしい面もあるかと 思っています。  従いまして、相談事案に挙がってきていることの中で、現行均等法で対応できていな い事象があるということについては、ご指摘の通りかと思います。 ○佐藤(博)委員  もう一つよろしいですか。  先程の6条のところでも昇進での差別的取扱いで、私は人事管理が専門なのですが、 普通、昇進というと降格も入るのです。降格も含めて昇進管理と言うのですが、この昇 進の不利益扱いと言った時に、昇進のスピードを付けるとか昇進をさせないということ と、これに降格も入るのですか。  それの法律上の解釈はどうなっているのですか。 ○石井雇用均等政策課長  法律上の解釈から言いますと、降格の場合も配置の変更を伴う場合には、配置でカバ ーすることはできるのですが、法律用語的に見たときには、降格はカバーできていない というふうに現行法解釈をするしかない状況です。 ○横溝分科会長  はい、川本委員。 ○川本委員  禁止規定の差別禁止のところに戻っておりますので、一言だけ申し上げておきたいと 思います。  私どもが主張してまいりましたものは参考資料1の通りですが、少し補足します。  特に「募集及び採用」のところなのですけれども、今の第5条では「女性に対して男 性と均等な機会を与えなければならない」と「均等な機会」という考え方になっている わけです。  この辺は、私ども使用者側としては非常に重視している所であります。つまり今の法 の体系上、雇用管理という面で見ますと、契約締結の自由という問題、契約内容の自由 という問題、契約解消の自由と三つあるわけですけれども、契約内容につきましては労 働基準法その他で最低基準というものを決めながらカバーしています。  それから契約解消の自由につきましては、これは民法原則ですけれども、それを判例 法理が積み上がって解雇濫用法理として基準法にも盛り込まれたということで、雇用を 維持して守ろうという形の体系が、日本の雇用関係の法体系になっています。  その中で契約締結の自由の所につきましては、かなり経営側の自由度を与えていただ いて、これでバランスが取れているのかと思っています。  そういうこともあって、ここの所は規程の書きぶりが他の所と違っていたのがでてい たのではないかと思っておりまして、ここはやはりこの考え方というのを残していただ きたいという主旨から、現行通りという主張を前回までにさせていただいているわけで す。 ○横溝分科会長  あと何分か余裕がありますので、全体のことで結構ですのでご意見があれば。  それではご意見もないようですので、本日のテーマについてはこれで終わりにしたい と思います。  本日参考までに配布している資料についてのご説明をいただきたいと思います。 ○高崎短時間・在宅労働課長  先程、川本委員からもご紹介いただきましたお手元の冊子について、単なるご紹介で す。パートの関係です。  ご案内の通り、これを作りましたのは私ども厚生労働省ではなく21世紀職業財団で す。21世紀職業財団はパート労働法におきまして、短時間労働援助センターとして指定 を受けているということで、そこにおいてさまざまな事業をやっているわけですが、そ の中の非常に大きな物としまして、パートに関する有用な情報を提供するという機能が あるわけです。  その一つとして、平均的なものではなくて、正に最先端ということであろうと思いま す。パートタイム労働者のやる気を企業活力に生かしている最新の企業10社の事例集と してまとめたものです。  中を見ていただければわかります通り、企業名も実名で出ておりますし、人事担当者 もパートタイム労働者自身も実名・写真付きで登場しております。業種もさまざまです し、企業規模も日本を代表するような大企業から、地域の小さな企業まであります。  できたばかりですが、聞くところによりますと非常に好評で、21世紀職業財団本部あ るいは地方支部の方には、問い合わせなり「貰えないか」という話が企業側からも来て いるということですので、ご紹介をしました。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。  本日の署名委員を指名させていただきますが、片岡委員と渡邊委員のお二方に議事録 の署名をお願いしたいと思います。  事務局より次回の予定について連絡がありますので、よろしくお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  次回は、10月7日金曜日、午後2時から開催します。場所につきましては調整中ですの で、決まり次第ご連絡をさせていただきます。 ○横溝分科会長  本日の分科会はこれで終了します。 照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)