05/09/26 「医療計画の見直し等に関する検討会」第4回ワーキンググループ議事録      「医療計画の見直し等に関する検討会」第4回ワーキンググループ                        日時 平成17年9月26日(金)                           10:00〜                        場所 厚生労働省共用第7会議室 ○針田医療計画推進指導官  ただいまから「医療計画の見直し等に関する検討会」第4回ワーキンググループを開 催いたします。本日ご参集いただきました委員の皆様方にはお忙しい中、ご出席いただ きまして誠にありがとうございます。また、本日は長谷川友紀委員、松田委員がご欠席 となっています。また、長谷川敏彦委員は若干遅れて来られることになっております。 それでは、議事に入りたいと思います。よろしくお願いします。 ○尾形座長  久しぶりのワーキンググループ第4回目ということですが、どうぞよろしくお願いし ます。事務局からいろいろ資料が提出されていますので、それについてご確認をお願い したいと思います。 ○針田医療計画推進指導官  資料の確認をさせていただきます。本日ご用意した資料は、資料1として「医療計画 に記載すべき事項について(考え方)[議論のたたき台]」です。資料2−1が「全国 で行われている医療連携の事例」です。もう1つの綴りは、「医療連携の事例分析につ いて」というもので、医療連携の分析等さまざまなものが書かれているものになってい ます。長谷川敏彦委員の発表資料になっております。その他、参考資料1、参考資料2 としまして、中間まとめの資料、ポンチ絵を添付しております。資料に欠落等がありま したらお申し出いただければと思います。以上です。 ○尾形座長  よろしいでしょうか。それでは、早速、議事に入りたいと思います。議事次第にもあ りますように、本日の議題は2つありまして、1つは医療計画の記載事項の考え方につ いて、もう1つが医療連携の事例紹介についてということです。初めに、資料1につい て事務局からご説明をお願いします。 ○針田医療計画推進指導官  資料1「医療計画に記載すべき事項について(考え方)[議論のたたき台]」を基に 説明します。この記載事項につきましては昨年9月にまとめられました検討会ワーキン ググループ報告書においても触れられているところです。  1頁目です。平成18年の医療制度改革を念頭においた医療計画の見直しの考え方とし て、1つ目の○ですが、従来の医療計画では地域の医療提供体制の量的整備を目的とし て立案されてきた。2つ目の○として、一方で患者の視点を尊重し、がん・脳卒中・小 児救急・災害医療など事業面に関する地域の医療機能を把握するとともに、これらの医 療機能をどのように確保するかという医療提供体制の質的な観点を重視することが求め られている。3つ目の○、このため、平成18年の医療制度改革を念頭においた医療計画 の見直しに当たっては、がん・脳卒中・小児救急・災害医療など患者の視点を尊重した 事業面での地域の医療提供体制の確保に着目することとし、医療計画に記載すべき事項 としても、同様の視点でもって検討するものとしてはどうか。4つ目の○ですが、その 際、特に医療提供体制として地域で確保することが求められる事業に関しては、医療法 第30条の3に規定する医療計画の記載事項として取り上げるものとしてはどうか。法律 のところに取り上げてはどうかと書いております。  次頁ですが、「医療計画に記載すべき事項として加味する観点(案)」です。記載事 項に関しましては、法律の中に書かれる部分と通知等で書かれる部分があるのですが、 全体といたしまして記載すべき事項として加味する観点というペーパーになっておりま す。☆印の所ですが、都道府県が作成する医療計画に記載すべき事項については、次の 観点を加味した事項としてはどうか。1つ目としまして、住民・患者の医療サービスを 提供する体制を地域で確保するに当たって、都道府県の関与が求められる事業であると いう観点。2つ目としまして、患者のニーズ等医療を取り巻く最近の情勢を踏まえ、新 たに政策的に推進すべき事業であるという観点。3つ目として、緊急時に住民・患者に 医療サービスを継続して提供できる体制を地域で確保する事業であるという観点。そう いった観点を踏まえまして記載事項を構成していってはどうかということを書いており ます。  以下につきましては参考資料ですが、先ほど言った法律にはどのように書いてあるか というところです。医療法第三十条の三があり、2つ目の一、二が区域の話、三が基準 病床数の話。四〜九とありまして、例えば六に救急医療、七にへき地医療、八は医療従 事者の確保と書いてありますが、こういうところに関して、先ほどお話した1枚目の所 ですが、この量的整備の観点のみならず、患者の視点の尊重とか質的な観点、また、が ん・脳卒中・小児救急・災害医療などの患者の視点を尊重した事業面での医療提供体制 の確保に着目するという形の観点で検討したらどうかということを書いております。  次頁が、「医療計画について」の平成10年6月1日付の通知ですが、医療計画作成指 針の中で記載事項として同じことが書かれております。2の(1)にアからクまである のですが、先ほどの法律の所で書いたものと同じものが大体出ている形になっていま す。次頁に「医療計画の記載事項及び評価の導入等について」というペーパーがあるの ですが、これは医療計画の見直し等に関する検討会ワーキンググループ報告書、昨年9 月に取りまとめていただきましたワーキンググループの報告書の中に書いてあるところ です。3頁ですが、下から9行目ぐらいの所です。作成された医療計画では、記載事項 についても理念的なものにとどまり、医療計画の達成度を把握、評価し得るような具体 的な内容にまで踏み込んでいる例は少ない、ということが書いてあります。  次頁ですが、このワーキングの報告書で記載事項に関する所ですが、2の(1)(1) として公的病院等の位置づけ及び公私の役割分担の明確化とあります。(2)で政策的に 推進すべき医療や機能との関連ということで、アは医療安全支援センターの位置づけ、 イは医師等の医療従事者の確保等、ウは小児医療・小児救急医療の推進、エは周産期医 療の推進、オは地域がん診療拠点病院の位置づけ、カは重症難病患者に係る入院施設の 確保対策の推進、キはエイズ治療拠点病院、クは病院前救護体制のメディカルコントロ ール体制、ケは在宅医療の推進ということでワーキングの報告書にすでに記載されてお りまして、それを踏まえて検討会でディスカッションがあり、この平成18年の医療制度 改革を念頭においた見直しをいま検討を進めているという形になっております。そし て、最初の頁に戻りまして資料1の議論のたたき台ですが、このような流れの中で法律 に位置づけるものも検討してはどうかというものをまとめてみました。 ○尾形座長  ただいまのご説明につきまして何かご意見、ご質問があればどうぞ。私から確認です が、これはすでに親委員会で7月に議論が行われています。たまたま、私は欠席してい たのですが、そこでの議論はこの資料の1枚目あるいは2枚目に書かれていることで尽 くされていると考えていいのでしょうか。それとも、そこではまた別の議論があったの か。その辺をご紹介いただければと思います。 ○針田医療計画推進指導官  検討会でも何度かディスカッションをさせていただきました。しかしながら、基本的 に親委員会では全体的なディスカッション、例えば医療連携をどうするべきかとか、医 療計画全体の話をしておりまして、記載事項に限局して発言があったわけではありませ んでした。実際、今後、事務的に進めるにあたりまして、ある程度の方向性を持ってい なければということがありまして、むしろ、ワーキングの先生方にこういう方向性で検 討してはどうかということを提案してご意見をいただいて、また適宜、ご助言などのア ドバイスをいただきながらこういう方向性で今後進めていきたいという思いで今回の議 題として挙げさせていただきました。 ○尾形座長  以上のような説明ですが、いかがでしょうか。 ○河口委員  資料の2枚目の記載すべき事項として加味する観点の案は新しく追加することを考え ているのか。それとも、従来すでに記載事項になっていることについて、やや十分では ないことについてもう少しカチッと入れることも含めるのか。これはどちらを意図され ているのですか。 ○針田医療計画推進指導官  従来のものも含めてといいますか、こういう観点で記載事項というものを考えてはど うかということです。 ○尾形座長  追加の質問ですが、すでにワーキンググループからはこういうことを追加してはどう かという案を出しています。それとここに示された観点はどういう関係になるのでしょ うか。 ○針田医療計画推進指導官  ワーキングの報告書を出していただいて、それを基に検討会でディスカッションをし てきたと。1年前のディスカッションは、平成18年の医療制度改革をするかどうかとい うことまでは踏み込んでなく、選択肢としてディスカッションをしているという認識だ ったと思います。その検討会でディスカッションする中で、平成18年の医療制度改革を 踏まえて医療計画も検討すべきだという方向性になりまして、改めて、法律改正、医療 制度改革があるのであればこの記載事項をどうするのかという問題が起こったというこ とがあります。当然、そのワーキングの報告書の流れを受けてやっておりますが、それ らについて、また、それ以外にも加わるものがあるかもしれませんが、こういう観点で 整理したらどうかという提案です。 ○谷口指導課長  少し追加させていただきます。資料の関係で、行きつ戻りつしているような感じが先 生方もしておられるのではないかと思います。ベースになっているのは、指導官からも 申しましたように、ワーキングでまとめていただいた中身、コンテンツを基本に踏襲さ せていただいて、検討会でも議論をしていただいたし、その方向性を我々としてもずっ と持ちたいと思っております。ただ、記載事項という、どちらかというと立法技術論的 な部分にこれから入ってまいりますので、基本方針について再確認をしておきたいとい うことです。その内容につきましては、1頁、2頁の部分については検討会で議論され てきた意見の集約といいますか、エッセンスの形でまとまっているので基本方針として これを再確認させていただきたいという意味におとりいただければと思っております。 ○尾形座長  ありがとうございました。いかがですか。 ○河原委員  これは私の印象かもわかりませんが、2頁に3項目ありまして、2と3に関しては焦 点が非常に絞りやすいと思います。かなり主観的に解釈すると、1に関しては幅が広い のではないか。1が総論的で、2と3が各論的なイメージがするのですが、1は例えば 焦点を絞ったような立場で書いているのかどうかをお聞きしたいのです。どういうこと を想定しているのか。 ○谷口指導課長  1と2・3については少し視点が違うのかもしれないと我々も思っております。2・ 3は従来からの医療計画であっても当然行われるべきこと。1も本当はそうなのです が、あえて1を最初に持ってきたねらいというのも、実は、三位一体という流れもあり まして、本来の医療計画でも都道府県が責任をもってやるべきものに間違いないのです が、従来の経緯からいたしますと、その辺の部分についてもまだ完璧であると言いがた いというところから、今後、何を置いてもこういう問題は都道府県において自主性、裁 量性、併せてレスポンシィビリティといった面もきちんと理解していただくことを強調 するということもありまして、そちらの中で地域に基づいた事情にマッチしたような医 療計画にしていただきたいということを踏まえて書かせていただいたというねらいがあ ります。 ○尾形座長  ほかにいかがでしょうか。それでは、私から2点ほどコメントさせていただきます。 1つは、2頁の2ですが、「最近の情勢を踏まえ、新たに政策的に推進すべき事業であ るという観点」と。これはこれで結構だと思うのですが、これだけを書くと何となく拡 大一途路線という感じがします。およそ事業については選択と集中、あるいはスクラッ プ・アンド・ビルドという観点が重要ではないかと思います。すべてを拡大していくと いうのではなくて、そこら辺のメリハリが必要なのではないかという気がいたします。  2点目は、これは前回の社会保障制度審議会の医療部会で原総務課長からご説明があ ったかと記憶しているのですが、現在、医療保険制度の見直しが一方であり、あるいは 医療費の適正化とか総枠をどうするかという議論があり、それが医療提供体制のほうの 見直しにも絡んでくる、あるいは影響してくるというお話がありました。その辺の表現 はなかなか難しいと思うのですが、そういう観点も盛り込む必要があるのではないかと 思います。  それでは、またお気づきの点があれば戻っていただくことにして、とりあえず先に進 みたいと思います。いま出ました意見あるいはコメントにつきましては、整理して親委 員会で引き続き議論をしていただくことにしたいと思います。続きまして、資料2−1 ですが、これについて事務局からご説明をお願いします。 ○針田医療計画推進指導官  資料2−1について説明します。少し厚目の資料になっております。これまではこの 検討会、ワーキンググループ等でいろいろディスカッションがありまして、医療連携、 地域連携についてもっと検討していくべきだという話があったと思います。実際のとこ ろはどのような医療現場になっているのかというところでいろいろな資料を集めたり、 インターネット等を利用しながら情報収集して、とりあえず指導課でまとめた資料がこ れになります。できるだけわかりやすくしたいという思いがありましたので、例えば資 料2−1の上のほうですが、診療所等から病院の部分が(1)、病院から診療所の部分が (2)、全体像が(3)、在宅に関する連携を(4)にしておりますが、あくまでも便宜的であ りまして、当然、医療連携についてはさまざまな連携が行われていて不正確なところが あるかもしれませんが、一応の整理として取りまとめたことをご理解いただければと思 います。  初めに、診療所から病院の連携が特徴的なものとしていくつか列挙しております。診 療所等から受診予約や検査を病院が受け付けて、その情報を診療所へ戻すシステムとい たしまして、例えば宮城県古川市では地域医療連携システムというものが古川市立病院 などとともに行われています。3頁からはもう少し具体的なものを書いています。古川 市立病院のものに関しましては、かかりつけ医と古川市立病院がそれぞれ機能を分担し て、相互連携を密にする地域医療連携システムをつくっています。また、9頁に別紙1 がありまして、これが参考となります。地域医療連携システムの概要としまして、地域 のかかりつけ医と古川市立病院がファックス等を使って古川市立病院の地域医療連携室 が取りまとめ等をやりながらシステムをつくっているという事例です。これは古川市立 病院だけに限らず、かなり多くの医療機関でやられていると思います。一つのパターン としてかなり普及したシステムではないかというものの一例として挙げさせていただき ました。また、次の海老名総合病院は資料でいくと10頁になります。これも海老名総合 病院と地元の医療機関が海老名総合病院の地域連携推進室などで情報のやりとりなどを しながらやっていくシステムをいま構築しています。この病院ではネクスト(NECS T)という名前を用いて紹介、逆紹介、高度医療機器の共同利用などを進めているとい うところです。  続きまして、1頁の3つ目の黒ポツですが、横浜市神奈川区で行われている病診連携 Wの会です。これは病院としては済生会神奈川県病院が関係していると聞いています が、10年以上も前から地道に病診連携を続けられてきたという比較的有名なシステムに なっています。地元の有志の先生方が数十人集まりまして、病院と連携しながら病診連 携を進めている形になっています。  次の静岡市のイーツーネット(医2ネット)に関しましては、インターネットにも載 っていますが、13頁です。静岡市立静岡病院と静岡市医師会がやっているもので病診連 携イーツーネット(医2ネット)で患者さん1人に2人の主治医、病院では病院の主治 医、地元では地元の主治医が連携をとってやるシステムです。この特徴は、下のほうに 書いてありますが、糖尿病、C型肝炎、気管支ぜん息等、疾患別の連携をとっていると いう点です。疾患別にそれぞれ専門の方と地元の先生が連携をとりながらつくるという 新しいシステムで、これも比較的有名なシステムとして、疾患別に8診療科9疾病につ いて連携をとっています。  その他、診療所から病院への連携のタイプですが、トヨタ記念病院とかあり、大阪府 泉佐野市りんくう地区に関しましては、地元の医療機関と協定を結んで地域完結型の医 療を目指していく。また、このりんくうの医療ネットワークでは医科に限らず歯科の分 野でも連携を図っています。西神戸医療センターに関しても地域との連携をとっていま す。  次が熊本県の連携パスです。クリティカルパスに関しましては、各医療機関でつくら れることがかなり増えてきていますが、施設間を跨ぐようなパスはまだ多くありません で、一つのあるべき姿として熊本医療センターで行われている連携パスが参考になるの ではないかと思います。19頁なのですが、具体的にパスのサンプルがあります。右側が どちらかというと急性期の病院で書く所で、真ん中にデジカメスペースがありますが、 その左側の所に急性期の病院を退院するときの状況を書いて転院先医療機関に渡す。ま た転院先医療機関でも事前に決められたものをやりまして、体質状態を書いて、それを また前の病院に情報提供をする。それぞれが情報を共有しながら、チェックし合いなが ら、患者本位の医療をしていく形になっています。それぞれの患者さんはいろいろ病態 が変わりますので、当然、予期せぬといいますか、例えば骨折でほかの疾病、持病が悪 化したとか、そういうことがあって入院期間が延びることもあるのですが、そういう場 合のバリアンスの研究もできる。個々の医療機関だけでやるのではなくて、複数の医療 機関が連携しながら検討していくシステムを講じておりまして、1つの医療機関の完結 型の医療ではなくて、地域の医療機関同士が連携して1つのシステムとして患者を診て いこうと。それによって、例えば転院先が見つからなくて、いたずらに入院するような ことがなくなったり安心して転院ができるシステムが出来つつあると聞いております。 これはどんどん広がっていく一つのモデルになるのではないかという思いがあります。 これも疾患別で、今のところは整形外科系の疾患が多いのですが、脳血管疾患とか、そ の対象疾病がいくつか増えていると聞いております。  また話が変わりますが、1頁の下に道東画像ネットワークがあります。これは北海道 ですが、釧路脳神経外科病院が噛んでいるシステムですが、北海道の道東地区では脳外 科医が特定の地域にしかいないということがあって、医療資源の効率活用が必要な状況 になっています。その中で、画像のネットワークを組むことによって、身近に脳外科医 がいなくてもフォローできるシステムをつくっていくという試みがされておりまして、 地域を占めるかなりの病院がネットワークに参加しながら遠隔診断などをやっていると 聞いております。次の岡山県倉敷市も同様な形になっています。  2頁目ですが、病院が中心となって医療連携を構築している例ということで、福島県 の竹田綜合病院です。これはまず、循環器疾患からやっていると聞いていますが、基本 的に既存の病診連携のシステムを有効に活用しながら、お互いに使えるパス的なものを つくって連携パスをつくっていこう、誰もができるようなシステムから発展させていこ うという形の地域連携パスづくりをしています。  次が、東京都北多摩地区の糖尿病医療連携システムです。これはかかりつけ医と専門 医の連携システムで、病状が悪化すれば専門医が診る、ある程度良くなればかかりつけ 医が診るという形の連携がスムーズにいっている例となっています。地域の医療機関が 一体となって取り組むこと。また、ここではコメディカルの分科会を設けていまして、 看護師は看護師なりで研究が進められている形になっています。糖尿病に関する病病医 療連携は比較的全国的に散見されておりまして、どんどん増えつつあるという状況にあ ります。  (3)の病・診・介護施設、病院と診療所とほかの施設が入った連携の例として、電子 カルテ等を用いて医療情報を共有化するシステムを検討している所があります。例えば 山形県の鶴岡地区のNet4U(ネットフォーユー)はネットで結ぶのですが、4Uで 4つのユニットということで、病院と診療所といろいろな施設が連携している形になっ ています。また、千葉県の東金病院が中心になっているわかしお医療ネットワークは糖 尿病に関して比較的精力的にやっておられて、例えばインシュリンの治療が病院でなく て一般の所でもできる形づくりをしている。専門知識を診療所でも活用できるシステム づくりを行っていると聞いております。ここでは、治験とか在宅方式とか、幅広い分野 で連携を進めていると聞いております。宮崎県の宮崎はにわネットは、診療所でも使え るような電子カルテ、共通利用サーバーをつくってネットワークで結ぶシステムが行わ れていると聞いております。  2頁の真ん中ですが、(4)の医療機関から在宅支援への取組みの例として、宮城県仙 台市の仙南地区在宅ホスピス連絡会は、診療所のみならず、調剤薬局とか訪問看護ステ ーションなどが連携し合って取り組んでいます。ここの特徴は保健福祉事務局、保健所 などの行政が積極的に関与して開業医やがんセンターの先生のつなぎ役をやって、がん のネットワーク化を図っています。  静岡市ではイエローカード・グリーンカードというものがありまして、患者さんが急 変した場合の対応として、かかりつけ医が登録医療機関と事前に調整しておけば急変時 にイエローカードを登録している病院に直行できるシステムをつくっています。患者さ んがいつでもその病院に入れるイエローカードという形で登録しておけばそのような病 状が連絡できるイエローカードシステムをつくっています。2つ目のポツですが、在宅 看取り、個々の開業医で看取るのは非常に大変なのですが、地域の医療機関が連携をと りあって必ず看取りができるシステムをつくっています。これも事前に登録しておく必 要があるのですが、グリーンカードに登録しておけばドクターが必ず看取りをやってく れる。要は、患者さんの療養場所が病院でなければいけないというわけではなくて、在 宅でも療養できる環境を支援するためのシステムとしてその連携がとられている一つの 例になっています。  また、尾道市の公立みつぎ総合病院を核にした地域包括ケアシステムは有名ですが、 保健、医療、福祉、地域全体が連携をとりあって地域に包括ケアというものを構築して いるシステムです。また、尾道市医師会方式として、診療所の主治医の先生が中心とな っていろいろな職種の方々が多職種共同という形で患者を支える新・地域ケアというも のを行っていると聞いております。また、長崎県でも在宅のドクターが連携をとりあっ てシステムを構築しているという話を聞いております。  話は若干変わりますが、(5)の周産期医療システムです。これは青森県のシステムを 出しておりますが、疾患別でも連携がとられつつあるということを伺っております。こ の周産期医療に関しましては、各県でいろいろな試みがなされておりまして、総合周産 期母子医療センター、地域周産期母子医療センターなどを核としながら、その連携をと りながらシステムづくりを図っていくという試みがなされております。  最後の(6)の所ですが、青森県の地域連携パス標準化モデルの開発・普及事業です。 資料の38頁ですが、青森県では当該地区の医療機関がすべて参加した形でどういう連携 をつくったらいいのかというシステムづくりに入っております。行政がしかるべき役割 を負いながら、医療機関と共同しながらシステムづくりをする。要は、ないところから つくるシステムです。既存のシステム、例えば福島の竹田綜合病院や熊本医療センター のものとは形が違って、ないところからつくる、すべての医療機関が参加した形で地域 連携パスをつくっていくという試みがいま青森県で進められているところです。これは 下北地区と八戸地区の2カ所でやられていると聞いております。39頁に、具体的に連携 システムの検討中の案が書かれております。  最後に、こういう都道府県の取組みに関しましてはまだ未定稿の部分ですが、40頁に あるのは茨城県の取組みです。茨城県においても地域連携の推進を図るためにさまざま な事業をいま検討中であるという資料を付けております。基本的に、その地域でのプレ ーヤーといいますか、参加する医療機関、施設はさまざまではありますが、地域連携が 地元に合った形でいま発展しているところの参考事例をご紹介いたしました。 ○尾形座長  ただいまのご説明につきましてご質問、ご意見等があればどうぞ。 ○河原委員  この連携の中で医療計画の中にはどこの都道府県も医療連携を書いていると思うので すが、都道府県が主体あるいは関与する形で連携が発展した事例で代表的なものはどう いう所がありますか。 ○針田医療計画推進指導官  難しいですね。関与のしかたがさまざまでして、例えば仙台市の在宅ホスピスをした い人に関しては保健所に連絡してからやるという話とか、青森県は県が前面に立ってや るシステムで、さまざまです。尾道の公立みつぎなども行政と本当に一体化してやって いる形です。 ○河原委員  在宅が絡むのは仙台の仙南保健福祉事務所ですか、それは名前を見ても絡んでいるこ とがわかりやすいのです。あるいは、青森の周産期ですね。そこまでの例えば(1)から (3)までの中では医療機関主導で行われているケースがほとんどなのですか。 ○針田医療計画推進指導官  本当にさまざまで、共通のパターンがつかみきれないというか。 ○谷口指導課長  私も全部承知しているわけではありませんが、おそらく、ほとんどが医療機関から出 てきているものだろうと思うのです。それに行政がどこかの段階で目をつけてサポート しているとか、そういうところで行政の噛み方というのはかなり早期から噛んでいるの と、自治体の面子もあるのであまり言ってはいけないけれども、ほとんど出来上がって から後で乗ってしまったみたいな所もあると思うのです。確かにそこは千差万別だと思 うのですが、少なくとも、私の知る限りでは先に医療機関が出てきている。行政がゼロ から発進させたのはそうないのではないかという気がしています。 ○河口委員  こちらのいろいろな全国の医療連携のケースを見たときに、多分、ねらいが2つあっ て、1つは患者の情報を共有するシステムをつくるという考え方と、もう1つは医療資 源を効率的に利用するために連携する考え方がある。それぞれ、割合は違うと思うので すが、実際に実施されている方の話だと、いまのところは情報共有が先にやられるべき という印象ですか。それとも、いろいろなケースはあると思うのですが、効率的な連携 みたいなものがメインになっているのでしょうか。その辺はどのような色合いと理解す ればいいでしょうか。 ○針田医療計画推進指導官  私見になってしまうのですが、私が感じたところによれば、要は、患者のニーズにど う応えていくかというときに1つの医療機関では対応できないというのが多かったと思 います。患者から選ばれるといいますか、鵜呑みというわけではないのでしょうが、求 める医療を提供するためには自分の所より適している機関がある、そのときには適切に 紹介しなければいけない。それによって、安心とか安全を提供するのがこれからのある べき医療だろうと。それで、先駆的に取り組んでいると言われている所が多かったと思 います。一つのツールとしてネットワークは非常に大切だという話は聞きますが、ネッ トワークが目的だというのはあまり聞かないです。そういう感じです。 ○河口委員  ニーズに対応するためにこういう形になっているということですね。 ○針田医療計画推進指導官  はい。要は、ニーズで求められてつくっていったらこうなってしまったという形みた いです。 ○尾形座長  私からコメントですが、各地でさまざまな試みがすでに行われており、それについて こういう事例研究をするということは大変重要なことだと思いますし、今回お示しいた だいた資料は非常に貴重な試みだと高く評価したいと思います。それを前提として2点 コメントしたいと思います。  1つは、こういう事例研究を踏まえて次のステップとしては、具体的な支援策等、今 後どのように対応していくかということを考えなければいけないと思うのです。そのと きには、いろいろな側面があると思います。制度的な支援もあれば、あるいは経済的に バックアップするようなことも当然考えられる。その際に是非考えていただきたいの は、補助金や税制等に加えて診療報酬まで含めてこういうものをどうやってバックアッ プしていくかということを考えるべきだと思います。もう1つは、先ほどの河原委員、 河口委員からのご質問に対する答えとも関連するのですが、国、都道府県あるいは市町 村はどういう役割分担でこれを支援していくのかというところも考えていく必要があ る。次のステップはそういうところに考えを進めていく必要があると思います。  2点目は、こういうケーススタディというのは非常に難しい面があり、ある程度、概 念化をして分類をしたりしないと理解が進まないので、こういう形で分類されたことに ついては納得する部分が多いのですが、少し違うなという違和感を覚える部分もいくつ かあります。1つだけ申し上げておきますと、熊本の事例について、(1)に分類してい ますが、私が理解しているところでは、むしろ(2)に近いのではないか。つまり、病院 のイニシアティブの下に動いてきているのではないかという気がします。  それから、代表的な病院としては、多分、ご存じだと思いますが、済生会熊本病院、 あるいは国共済の熊本中央病院は院長の強力なリーダーシップの下にこういうモデルを 展開してきて、そしていまこういうところに至ってきているという感じがするので、そ の辺はこの記述にはやや違和感があります。今後、各事例についてさらに検討を深めて いただければと思います。 ○谷口指導課長  座長が最初におっしゃった支援策の話ですが、確かに、制度的な支援と各種財政的な 面も含めた支援ということで、制度的な面はまさに立法技術論的にこれからまだ議論を させていただいて、記載事項としてどこまで書き込むかとか、そういう絡みがあります ので、むしろ、そこはご示唆をいただきたいと思っております。財政面とか、その辺も 含めた話はおっしゃるとおりで、さまざまな部分を駆使しないといけませんので、先ほ どのコメントの中にも、適正化との関連をどのように位置づけるか、ということがござ いましたが、そういうところも踏まえながら、保険局ともその辺のところをうまくつな げるような形で1回やらせていただければと思っております。  それから、国と県の役割分担の話です。これも大変大事な話で、残念ながら、今日は その資料を出していないのですが、医療計画の国の方向性というものを都道府県に理解 していただくために、国と都道府県との懇談会を9月9日に開かせていただきました。 年末までにあと2回ぐらい開く予定ですが、そういう場で全国の先進的な連携の事例に ついても意見交換をさせていただきながら、逆に、今日ご紹介したようなものについて も各都道府県にプリントして情報提供したりということで意識を高めていただくことも やっていきたいと思います。その辺の資料も今日お出しすればよかったなと反省してお りますが、そういうことも踏まえて、国と県の役割分担についても国だけではなくて都 道府県にも意識を持っていただく方向で進められればと考えているところです。 ○尾形座長  是非、その懇談会の資料等についてはこのワーキングの先生方に配付していただけれ ばと思います。 ○谷口指導課長  今日、資料が残っていたら帰りまでにお渡しします。 ○河口委員  いまの議論に関連するのですが、事実確認をしたいのです。こういうネットワーク、 連携をしていらっしゃる方は、それぞれ、システム維持のコストがかかると思うので す。これは皆さんどういう形でやっていらっしゃるのですか。中心的な所がある程度や っているのか。この中には会費として皆で出し合うというのがありましたが、その辺は 情報として何かありますか。 ○針田医療計画推進指導官  正しくは理解していないのですが、例えばうちにも医療機能分化推進事業を持ってお りますので、行政が事業としてそういった費用を使いながらやっている所、また、他省 庁などでもそういったものをやっている所がありますので、そういうものを集めてやっ ているものもありますが、基本的には既存のネットワークといいますか、地域の自然発 生的な人とのつながりの中でシステム化が図られてきたと。要は、診療科別、疾病別の 連携が多いのですが、それは地域で懇話会などがあって、そういう所から、そういうの は連携システムをつくったらどうか、ということになったのがかなり多かったというこ とです。申し訳ないのですが、すべてを掌握しているわけではないので、先生方も何か 資料等がありましたら、是非教えていただけるともっと勉強をしていきますのでよろし くお願いします。 ○尾形座長  ほかにもご質問があるかと思いますが、時間の関係もありますので先に進みたいと思 います。資料2−2ということで、医療連携の事例分析について長谷川敏彦委員から資 料を用意していただいています。長谷川委員、ご説明をよろしくお願いします。 ○長谷川(敏)委員  ちょうど今日の議論に関するようなことの準備をしてまいりました。これは、これま でのワーキンググループの議論の延長線上であり、また、私のやってまいりました研究 の発表ということになってまいります。保健医療科学院というのはいまだにご理解いた だいていないところがあるのですが、病院管理研究所と公衆衛生院が合体してできた新 しい研究所です。先ほど来、だいぶ議論になっているのは個人と地域というものの観点 をどうしていくか。例えば、個人の患者の視点あるいは住民の視点に立った計画づくり と、地域全体として安全・安心な医療を支援していくことの矛盾が、場合によっては起 こったりする。あるいは、少し違う方向性をどのように一致させていくかという課題に ついてのご議論がありました。また、実は、各病院にとってみれば、経営の課題という 大きな課題と関係がありまして、いかに今日の厳しい経営環境の中で生き延びていくか という課題とも関係があります。したがって、これら2つのキーワードを中心にお話で きればと思っております。  振り返ってみますと、このワーキンググループは過去1年半にわたってこれまでの医 療計画の問題点をまとめてまいりました。例えば、理念においては目的が曖昧だとか目 標値がない。内容につきましては、医療の質、アウトカムに関する対応があまりないと か高齢社会へどのように考えていくかということについて明確にされていなかった。手 法としては、先ほど座長から話がありましたように、誘因、インセンティブがあまりな いとか住民があまり参加していない、評価・推進のシステムがない。  そして、ワーキンググループとしての提案は、目的を明確化して、医療計画とは一体 何なのかということをはっきりさせた上で医療の質、アウトカムに対して、あるいはこ れから来たりくる超高齢社会に向けての医療システムの構築という課題を明確に位置づ けたらどうかと。手法としては生涯コース、疾病シナリオ、そして誘因、法律にはおか ないとか情報とかというもののリンケージを考えていく必要があるのではないか。最後 に、これらを進めるための評価・推進システムをつくる必要があるのではないかという ことを提案しました。  これをなぞっていくと、結局、15年前の地域医療計画とは違う新しい環境が出てきて いるということではないでしょうか。その背景から、去年から3年間にわたってその地 域医療システムの運営、連携並びに誘因の研究をしておりまして、それの一端をご紹介 したいと思います。  考えてまいりました高齢社会とともに連携化が進んでまいっている。3段階論という ものをご提案したいと思うのですが、思い起こせば今から10数年前、連携は主としてか かりつけ医の課題であったと覚えております。厚生省が事業をつくって各県でもさまざ まな事業を展開しておりまして、私、たまたま、東京都の事例を評価するチャンスがあ ったのですが、ポイントは何となく診療所だと。ちょうど、今から10年前といいます と、医者の団塊の世代、これは戦争中にご卒業された軍医なのですが、約3万人から5 万人おられたと。この方々が少し年をとって病院と競合した。病院の外来と診療所の外 来は、やっていることもあまり変わらなかったし、その小さくなったパイを取り合って いて、少しお年を召されてきて体力が落ちてくるとか、患者の好みも病院志向というこ とで、かかりつけ医をどうするかという課題として連携が語られたのではないか。1つ は、診療所から病院への紹介と逆紹介、それによって診療所の魅力を増そうということ ではなかったかと思うのです。  ところが、今から10年ぐらい前になりますと、病院の機能分化が重要、あるいは平均 在院日数を下げていくことが重要ということで、さまざまな政策がとられてきておりま す。その結果、まずは、長期入院患者を長期の療養型の病院へ後方連携する。そして、 それをするとドーンと病床情勢が減りますから、紹介を高めて診療所との連携を深めて いく。つまり、前方連携です。したがって、過去10年ぐらいの連携というのは、はっき り言いまして、病院中心的で、かつ経営といいますか、行政も一緒だったかもしれませ んが、平均在院日数を短くして効率のよい、そして良い医療を提供しようという掛け声 の下に行われたのではないでしょうか。  ところが、これからの連携、この地域医療計画で取り扱うべき連携というのはシステ ムからなのではないでしょうか。はっきり言って、開業者の延命策とか病院の経営のた めに連携をするのではなくて、医療システムをどうしていくのだと。まさしく、患者の ために、そして本格的な超高齢社会に向けた医療システムの再構築という観点から連携 を考えていく段階に入ったのではないでしょうか。そうでなければ安全で有効な医療は できない。  この春にヨーロッパに行くチャンスがありまして、私、確信いたしましたが、これは すべての先進国の課題である。つまり、診療所の医師は診療所の窓からしか患者を見て いない。診療所に来たときだけが患者である。病院の医師は病院の外来に来たときから 患者である。そういうように、ブツブツとシステムが切れていて、その間に落ち込んで 事故が起きたり効率が悪くなったり医療の質が下がったりしている。そう考えてまいり ますと、患者を中心にシステムを考え直す必要があるのではないかということです。患 者中心医療というのは、少し混乱するようですが、2つの考え方があって、1つは日野 原重明先生などがおっしゃっておられる、これまでのパターナリスティックな医療、こ れを患者さんの価値を踏まえて一個一個の臨床の場で意思決定していく必要があるとい う、こういう考え方です。これは大変重要なことですが、私が今日申し上げているのは それとは関係ありません。私が申し上げているのは、高齢者、たくさんの疾病を抱え て、そしてその疾病がクルクル変わっていく。そういうものに対して、医療提供体制が うまく連携しなければ危険である。医療事故が起きる。効率が下がる。しかし、それを どうしたらいいのか。それは患者中心に考えていく必要があるという提案であります。  そうしますと、なるべく在宅で。これまでの予防的ケアは診療所、急性期の資源を必 要とする治療は急性期病院で、そして福祉ケアは病院ではなくてゆったりとしたそれに ふさわしい福祉ケアで、末期ケアはできれば在宅と。こういうものを、連携をとりなが ら、1人の人を追いながら継続的にやっていく医療システムを構築するということであ ります。したがって、機能を一方で集中し強化して、その一方で身近な医療は家でやっ ていく。これをいかに連携していくかという課題ではないでしょうか。私は、先日、ヨ ーロッパにまいったときに痛感いたしました。日本は意外といいのではないか、早いの ではないか。おそらく、アメリカは駄目でしょう。アメリカも同じような提案がありま すが、極めて病院中心的な医療です。そうではなくて、診療所、病院、さまざまな医療 をどうシステムに組んでやっていくかという人類史的な課題に、必要は発明の母ですか ら、日本がいちばん早いのではないでしょうか。  そういたしますと、臨床家として患者を中心に考える。これは当たり前のことです が、今日の提案は行政としてネットワーク、連携をして安全で効率のよい医療を確保し ていく。そこで、病院経営者はその間できちんとした病院経営をやっていくという提案 です。  さて、考えてまいると、日本は世界で最初に超高齢社会に達します。皆さん方は目で 見るまでなかなか実感がないと思うのですが、これは左側が現在で右側が50年後です。 人類未曾有の超高齢社会に突入するわけですが、これからたった50年間でこの社会、も っと正確には40年間ぐらいでこの右側の社会の準備をしなければなりません。常識では 不可能です。しかし、そうすると日本は潰れる。日本が潰れると先進国が潰れる。先進 国が潰れると発展途上国が潰れる。なぜならば、超高齢社会というのは最終的にはどの 社会も到達する社会ですので、日本がサンプルということになります。  究極の社会、貧乏婆さんの世界と言っているのですが、これまでは限りない成長を信 じて成長してまいりました。ところが、21世紀というのは究極の社会に向かって収斂し ていくのではないでしょうか。今まで日本は盗めばよかった、どこかにモデルがあっ た。しかし、これからは日本がモデルになる。考えてみると、ちょうどいま戦後60年、 日清戦争からは100年になりますが、アヘン戦争を見て自国を守るということで富国強 兵をやりすぎて、海外侵略してすみませんと、戦後は経済大国になって60年経ちまし た。これから40年間かかって新しい老齢大国、老人に向けたシステムをつくっていく必 要があるのではないでしょうか。それを言い換えるとこのように、伝統社会からハイタ ッチの老人用の統合的医療システムに、たった40年間でつくり替えていかなければいけ ない。さまざまな課題があります。それを乗り越えてやっていく最も重要な形に連携と いうものがあるのではないでしょうか。  さて、2番目の提案としては、その連携と一言に言っても、特に地域で随分パターン が違うのではないか。私も連携の研究をしていてよく発表をさせられるのですが、ある 会場で質問されました。「あなたが言うのは正しいかもしれない。しかし、うちの地域 には連携しようと思っても診療所がないわ」と言われたことがあります。つまり、地域 の資源によって連携のパターンが随分変わってくるのではないか。そこで、0・I・II ・III型というものをつくって、a型、b型というものを胃がんの進行度合に似せてつ くったのです。I型というのは、郡部であまり医療資源のない所で、人口も約10万ぐら いの所です。日本全国の人口でいうと結構多い。2,000万から3,000万の人が住んでいま す。そして、中核病院が1個あるかないかです。それに対して、人口10万から20万ぐら いになってくると、実は、地域中核病院は人口10万に1個が平均でありますが、それが ある。それから、もう少し大きくなって、県庁所在地のような地方中核的な都市では人 口が平均56万人なのですが、二次医療圏、それは病院が5、6個あるような所です。最 後に、大都会はフリーアクセス。  具体的に見てまいりますと、実は、0型も2種類あって、診療所のほうからすれば連 携すべき病院がない、逆に、病院はあるけれども連携すべき診療所が少ないというパタ ーンです。2番目には、城下町型、1個の大きな病院にいろいろなものが集中してく る。しかし、20万ぐらいではすべての三次機能を持つことは経済的に無理、あるいはそ のニーズがないということで、結局、どこかに三次機能を預ける。実は、長野の上田市 がその典型でして、人口が15万です。したがって、心臓等の高度の医療については、結 局、長野市に行く。上田の場合は運がよくて新幹線と高速道が通っていますので行きや すい。ところが、左側のように、ない所は大変です。したがって、アクセスをどうする かということが課題になってくるのではないでしょうか。  ところが、地方中核型の病院というのは、大体、人口40万から70万の間で、県庁所在 地を考えています。その場合に、大体、5つから7つぐらいの病院が存在している。そ うしますと、ちょうど医療に必要な第三次機能を役割分担して持つには良いサイズにな ってまいります。しかし、これも、残念ながら、単なる地域分担から機能分担の形が2 種類あるようでありまして、それは機能分化、連携の進化によって変わってくる。  例えば、秋田市の場合には地域分化になっている感じがあります。これは秋田の中央 的な場所なのですが、これにさまざまな病院、6つか7つの病院に後背地域から患者が 集まってくるという、いわゆる地域分化で、それぞれの病院が機能を分担しているとい うことではないようであります。それに対しまして、熊本市の場合には、同窓会のネッ トワークということもあるのでしょうが、切磋琢磨して、そこで6つか7つかの著名な 病院が三次機能になってお互いに連携している。  最後にこの大都市型なのですが、アクセスがいいものですから地域医療計画でも大変 問題で、二次医療圏の単位をどこまで広くするかというので、一時、大阪などは大阪市 全部とか、あるいは福岡も一個とか言っていたわけですが、それをどのように役割分担 していくかということが課題であります。おそらく、機能分化していく節がある。私の 個人的なことで恐縮なのですが、いま大田区、品川区で地域医療連携の委員会の委員長 をさせられています。そこで実際の具体的な事例を糖尿病にしてやっていこうというと ころまで進んでおります。  先ほど、チラッと、連携が行政主導か病院主導かということがありましたが、私は両 方というか、片一方が欠けてもいけないのではないでしょうか。大田区、品川区の場合 には連携を熱心にやっている医療機関、例えば東邦医大とかNTT関東などがあって、 それが個々の病院でやっているものではやり切れないという段階に入ったときに区の行 政の方が入る。  例えば、東邦医大の言を借りますと、ものすごい大きなネットワークをつくっている のですが、悪く言えば、個人の抱え込みのような感じになってきている。これをさらに 超えていくとなると、個々の病院がやるのにはキャパを超えている、やはり行政に音頭 をとってほしいと。そうすると、行政もかなり戸惑っているようでありまして、従来 の、予算をつけてばらまいて命令をしていくという執行のものではなくて、個々の医療 機関の独自性を尊重しながら行政の役割、言うべきことは言っていくということで、結 構、新しい試みではないかと思っています。  また、この機能分化のパターンもいくつかあるようで、東京都のような大都市の場合 にはなかなか一筋縄ではいかないかもしれません。例えば、先ほどの地域中核都市みた いな形のパターンもありましょう。あるいは、意外と城下町型、例えば荒川区などのよ うに、地域が比較的固定していない所では、特に老人が多い所では城下町型のようなパ ターンがあるかもしれませんし、大都会ですのでアクセスがいいですから、例えば伊藤 病院など、非常に高度機能で全国区の病院の場合にはニッチみたいな形で機能を分化し ていくことが可能です。したがって、右側は病院にとってはマーケティングの議論にな ってまいります。  考えてまいりますと、急性期のパターンというのは、大体すべての三次機能を1つの 病院が持つことはほぼ不可能でありまして、大学病院はそれを目指してきて失敗したと 思うのですが、二次広範的な機能の上に、三次的な機能の1つか2つを地域の役割分担 を見ながら持っていくことが必要なのではないか。そうすると、当然、得意機能ですか ら疾病別の連携が必要です。しかも、地域の資源、コンペティターとの関係、競合相手 との関係において地域分類が必要です。大変資源がある所、ちょうど適切な量、大変フ リーアクセスがあって、そこで選んでいくという地域類型によって違うのではないでし ょうか。  具体的にはこういう形ではないでしょうか。大都市型は、数十、20から30ぐらいと想 定できるわけですが、12大都市プラスアルファ、あるいは郊外。地域中核型は30から 50、各都道府県県庁所在地プラスアルファと。人口50〜60万ぐらいで大体6つぐらいの 病院があって、それがもともとから競合しておれば機能の棲み分け、地域の分担が機能 分担に変わっていっている。事実、そういう事例になっております。  城下町型は、100ぐらいか150か、大きな中核病院が1個あって、人口が10万から30万 ぐらい。その場合には三次機能へのアクセスが必要ですが、需要分析をして、どの資源 を持ってもペイするかどうかと。オーバーヘッドコストは重要ですし、どうしてもその 地域では持てない三次機能については道路を整備する。今日、幸い、現政権の長期的な 社会資本の整備の結果、端的には道路に膨大な金を注ぎ込んだ結果、日本国全体として アクセスが悪い所はほとんどないのですが、意外なことに岩手県はあまりよくない。か つての自民党の岩手県選出の議員は誰でしたっけね。しかし、山口県は非常にいいそう です。歴代の首相が出ています。四国はわりと悪い。山陰の一部が具合悪い。九州の一 部が具合悪い。そういう所はもう一度医療の観点から社会資源の整備が必要なのではな いか。  最後に郡部です。郡部は人口も少ないし、経営的にもなかなかペイしない部分もあ る。したがって、ネットワークとして絶対に必要なのは必須医療機能みたいなものを同 定する。端的には、プライマリケアとか救急、特に小児とか産婦人科の救急を確保して いく。そういうことをベースに連携をしていくことになるのではないでしょうか。元に 戻りますが、大都会の場合には疾病別の機能別のネットワークを考えていく。  そこで、復習になってしまいます。前回から何度もワーキンググループのほうから提 案しているライフコース、ディジーズシナリオアプローチということを復習してみたい と思います。患者の視点から計画をつくるということで2つのアプローチを提案してお ります。ライフコースの概念というのは、生涯をとおした病気と治療ということで、ど の年代にもきちっと医療を提供していくという考えであります。具体的にはこのような 感じです。子どものときは母子、感染症、呼吸器、交通事故。中年期になってまいりま すと、消化器や内分泌。老年になってまいりますと、がん、感覚器、心臓、脳卒中、そ ういうものが重要になってくるということです。  疾病シナリオというのはどういうものかというと、個人の立場で診断から合併症予防 まで下地をつくって、その各局面でそれがうまくいっているかどうかという指標をつく って判断をし、うまくいっていなければその地域で、特に地域医療計画でそれを整備し ていくという考え方です。具体的には、個人の願望で言うと、予防では運動したい、痩 せたいという願望。意外に日本はデータがありまして、県別のベンチマークが可能で す。治療では、受診をしたい、身近な診療所に行きたい、長く続けたい。こういうもの は患者調査とか国民生活基礎調査を使うと計算が可能です。  アウトカム。患者になりたくない、健康になりたい、障害になりたくない、目が見え なくなりたくない。実は、少し驚くべきことですが、国民生活基礎調査を使うと、糖尿 病の患者でこういうものを持っている数が出てまいりまして、ベンチマークが可能で す。  そして、紹介率とか、あるいは専門医の分布とか、地域別に分析することも可能で す。先ほど申し上げたようなものの変数をダーッと並べて、重み付け1個にして評価を します。一個一個を重み1にして評価すると、上位は石川、京都、富山、岡山、奈良と なります。下位は高知、茨城、鹿児島、岩手、長崎になってまいります。それを、どこ が悪いかどこが良いかを見るのはレーダーチャートで予防と治療と結果ということでベ ンチマークが可能となってまいります。この結果、資源におきましても結果におきまし ても、自分の所の県はどこが悪いのかということがわかるので、これを中心に地域医療 計画で整備をしていくことが可能になるのではないでしょうか。  さて、先ほどのキーワードの中で、もともと、病院経営と地域連携はうまくいかなけ ればならないということをチラッと申し上げましたが、政策的には効率が良くて、高質 ・安全な医療を提供し、かつ患者中心的な立場から超高齢社会に向けて、人類未踏の新 しい社会に向けて医療システムをデザインして設計して再構築をしていく。経営として は、大変厳しい経営環境の中で、与えられた経営環境の中でマーケティングをして、自 分たちの病院はどういう商品を売るのか、医療機能をどうするのか、戦略をつくってブ ランディング、ブランドネームを確立していくという過程になってまいります。  現在、経営環境が大変厳しいので、どこの病院とも経営戦略を立てなければ、今まで のように去年と同じような経営をしたのでは潰れると言われている。長期的な展望を持 って診療機能を整備し、やっていく。一般には、どういう主な事業ドメインか、どんな 商品を売って、それに対するロジスティックはどうするかという課題です。具体的に は、実は、病院の企業戦略のドメインというのは、規模、専門、総合、長期別というこ とで、大体9つぐらいのドメインに限られてきております。大型の専門病院というと大 半が公的病院で、県の子ども病院とかがんの病院になってまいります。中小規模になる と、あまり中規模がないのです。小規模、私立の専門病院、眼科とか脳卒中、整形。そ れに対しまして、総合は地域中核病院。長期のほうは収容型とか、かつての老人病院の ような形で、それが健診センターや福祉施設、診療所と連携しながらその選択をしてい く。  ところが、次に、商品を決める場合に、一個一個の病院が売る商品で、例えば心臓バ イパス、大腸がんの手術というのはあまりにも細かすぎる。私は病院経営のほうも研究 させられていますので、クラスター、塊というものを提案しました。具体的には脳卒 中、がんです。そうしますと、診療所あるいは病院から紹介をされてくる。院内も、例 えば虚血性心疾患の場合は内科、循環器科、心臓外科、リハビリ科と回って、そしてま たほかの施設に紹介されていく。一つの生産ラインのようなものがここで考えられるわ けです。  ということで、最後はご本人自身との連携と。そう考えてまいりますと、クラスター を考えていったらどうなのか。具体的には、時間が短くて恐縮なのですが、疾病系と政 策系と。大体、資源を同じくするDRG(診断群別グループ)を想定しますと、母子、 呼吸器、感染症、外傷等、これぐらいの括りが同じような資源を必要とするDRGだ と。したがって、疾病系のDRGと、もう1つは政策的に安全・安心、支援・公平とい うことで、感染症、災害や救急。支援としてはへき地とか精神、難病、そういうものを この2つを組み合わせて診療機能を考える。特に、自治体病院の場合は後者を担ってい る所が多いわけですし、後者は通常は赤字部門ですので公的にお金を支援される場合が 多いというわけであります。  これの院内の診療科、前方、後方連携がどうあるべきかということで選択をとってい く。具体的にはこんな感じになりまして、退院回数は、年齢階級別には出産が結構多い のです。入院回数から言いますと、これはがんですね。各クラスター別の入院回数を想 定し、地域でのシェアを考えれば、大体、自分の所の病院がどんな機能を持つべきかと いうことが経営戦略として浮かび上がってくる。例えば、クラスターそれぞれに親和性 があるのではないでしょうか。ハイテクのグループ、救急システム、呼吸器、外傷等、 心臓。それに対して、ゆっくりと外来からの流れで、例えば糖尿病、婦人科の課題、失 禁とか、そういう日常的なQOLを高めていくみたいな部分とか、そういう経営上の親 和性があるのではないでしょうか。  最後に、これらのキーワードを医療計画の課題としてとらえ直しますと、この2つの 政策と経営というものをうまく一致させていく。同じ方向を向けば国民のためにもよ い。逆に言うと、もう同じ方向を向かなければ日本の医療システムは持たないのではな いか。高齢者を3分の1抱えて、常識ではほとんど持続不可能です。したがって、各医 療施設でのマネージメントと地域全体あるいは国全体でのマクロのマネージメントがう まく一致していくことがすごく重要で、先ほど申し上げたような指標を使ってパフォー マンスを見ながら地域レベル、施設レベルで両方やっていくことが必要なのではないで しょうか。もっと言えば、臨床家も含めてです。ここで、最初のキーワードに戻りまし て、個人と地域、行政と経営というものが結びつくのではないかと思われます。これは 私の理解ですが、医療計画も新しい段階に入って、病床規制からアウトカムに進んでい く。そして、もう一歩踏み込んで、超高齢社会へ向けての医療のシステムの新しい構築 ということになってまいるのではないか。そして、住民を中心にそのネットワークを考 えていこう、そして疾病単位に考えていこうと。  これは糖尿病のイメージですが、一応、私のほうでご提案申し上げたいのは、その辺 を明確に、地域医療計画の理念としては目的を明確に、迫りくる超高齢社会に向けての 医療システムの再構築、それから、アウトカムの確保、特に医療の質、安全性の確保、 そして、あえて効率を入れるかどうかと。  地域医療計画の定義ですが、行政と住民との地域での医療システムの構築、運営上の 約束であるというように定義をする。それで政府は何の役割があるのか。必要な機能、 資源を確保する。医療をとおして安全・安心を確保する。その安全・高質・効率的な医 療システム、医療の確保をする。具体的にはどうするか。住民の視点からの策定。そし て、できれば生涯コースや疾病シナリオの方法論を使う。その節目に目標値を設定し て、そして法律やお金、制度等の誘因との結合を行う。近々、国民健康保険が県レベル でマネージされる可能性もあるとお聞きしていますので、その制度的なバックアップを できるのではないでしょうか。最後に、それらをきちっと地域で評価し追跡をしていく ということは、それもシステムで結構お金がかかることだと。地域医療の経営戦略情報 システムであります。  そのご提案なのですが、この間、我々のワーキンググループのほうからは個人の願望 として、例えばがんを例にとると、がんが発見された場合にもっとがんのことを知りた いとか、いい病院を紹介してほしいとか、いい治療を受けたいとか、セカンドオピニオ ンが欲しいとか、早く帰りたいとか、苦痛なく死にたいとかいうような個人の願望が必 ずしも行政と合わない場合もあるというご議論がありました。したがって、行政的な観 点から、例えばがんの死亡を減らすとか受診率を上げるとかいうような類、この2つを 並べて、それに共通するような指標を想定して設定していくというようなことがいいの ではないでしょうか。  ということで、今日は2つのキーワードをめぐって、歴史的な医療連携のステージと 類型をご提案し、今日針田指導官から新しい連携の事例をパターン化してご紹介があり ましたが、もう一つ踏み込んで地域的な類型というものがあるのではないか。地域のリ ソースの豊富さと少なさによって連携のパターンが変わってくるのではないかというこ とをご提案いたしました。ご清聴ありがとうございました。 ○尾形座長  ありがとうございました。ただいまの説明につきましてご意見、ご質問等があればど うぞ。 ○河口委員  大変貴重なお話をありがとうございました。ご説明の内容について2点ほど素朴な質 問をさせていただきたいのです。1つは、ご説明資料の中に、1つの病院ですと二次医 療的な機能を広範囲に持ちながら三次の得意機能を一部持っているのが急性期病院の機 能パターンであるということです。これは、ほとんどすべての急性期と思っている病院 に当てはまるのでしょうか。それとも、先生の中でのメルクマール、急性期としてはこ ういう病院をイメージして、例えば病床数とか、そういうものがあるのでしょうか。 ○長谷川(敏)委員  急性期病院の定義ですか。急性期ケアを提供する病院のことですね。急性期ケアとい うのは何かというと、資源をたくさん投入することによって比較的短期に問題解決をす る医療のことです。したがって、がんは慢性期疾患ですが、医療は急性期医療です。平 均在院日数が短くて、人や機器の多い所が急性期医療です。 ○河口委員  ありがとうございます。それから、その下のスライドで、三次医療へのアクセスとい うことが城下町型の分類では重要であるというご指摘をされていると思うのですが、こ れは量の話ですか。それとも、時間の話でしょうか。 ○長谷川(敏)委員  近年の研究で、ボリューム、取扱い件数が医療の質と高い相関があることがわかって まいりました。日本ではまだ議論しているようですが、諸外国では常識になっていま す。そして、ボリュームの課題というのは単に医療の質だけではなくて効率の問題があ ります。例えば、年間に1例か2例しか心臓の手術をしないのに人工心肺を買うとすご い無駄があるわけです。ですから、機能の集約化というのは質と効率の両方の側面が大 変重要である。ところが、三次機能の医療のニーズは数が少ないのです。したがって、 人口とか患者の数を見ながら整備していく必要がある。  おそらく、日本は比較的公平さということ、アクセスがいいということを中心に医療 が整備されてきて、それは世界でも素晴らしい医療なのではないでしょうか。しかし、 はっきり言うと、そのために医療の質が犠牲になっている、効率が犠牲になっている。 近年、国民も声を挙げて医療の質を高めてくれと言っていることから、アクセス公平さ と医療の質、経済性とバランスをとることを考えていく必要があるのではないか。そう すると、すべての二次医療病院がすべての三次機能を持つというのは効率が悪い、質も 悪いと。したがって、そこを限る必要があるのではないか。ただ、アクセスとのトレー ドオフ関係にあるので、地域を決める必要はあるのではないか。城下町型みたいに、流 出、流入があまりない地域の場合はすべての三次機能を持つことが効率的にも、医療の 質からいっても好ましくない。そういうのが私の主張です。 ○尾形座長  ほかにいかがでしょうか。私からは2点コメントなのですが、1つは、連携の4つの 類型という考え方については私は非常に納得したというか、私が考えているものに非常 に近いと思います。ただ、その中で問題は、先ほど長谷川先生がおっしゃったように、 大都市をどうとらえるか。これが最大の問題だろうと思うのですが、先ほどのプレゼン テーションの中にもヒントがあったように思うのです。荒川区の事例ですか。ベースに なるような所は、案外、城下町型だったりするかもしれないけれども、それにもう少し 広域が組み合わさる形で複合的にとらえる必要があるのではないかと思います。  2点目ですが、先ほどの河口委員のご質問にも関連するのですが、4つの類型という のは比較的急性期医療を念頭においた分類になっているという印象があります。それは それでいいと思うのですが、一方で慢性期あるいは介護まで含めた形のものを考えると きには、多分、もう少し狭い地域とか、あるいは密着型のモデルを考える必要がある。 ですから、日本の医療全体を考えるときにはその両方の組み合わせということになって くるのか。あるいは、ベースにそういう慢性期、介護型があると考えるべきなのか。そ の辺がこの問題を考えていくときの一つのポイントになるのではないかと思います。 ○長谷川(敏)委員  大変素晴らしいご指摘でありました。第1番の点は全くそのとおりでありまして、こ れからかなり真剣に分析を考えていくと同時に、もう実践をしていくと。具体的にどう するのかという段階に入っているのではないかと感じます。幸い、大田区や品川区、あ るいは郊外型の所で糖尿病の連携などをやったりしていますので、そういうものを見て いくとわかるのではないでしょうか。  後者につきましてはご指摘のとおりです。これは地域医療計画で、福祉計画ではない ので、医療を中心に語りました。しかし、高齢社会においては両方がリンクしなければ ならない。福祉と医療とは明らかに違うことがいくつかあります。それは、福祉の場合 は技術集積性と効率性という観点から、ある技術を集約して持つことはあまりない。か つ老人家族との関係ですので近くなければならないということです。単位自身は、日常 的な生活圏の中ということになるのではないでしょうか。したがって、それがどう整備 されているか。例えば、東京都では都内に老人ホームを建てるにはあまりにも土地が高 すぎるという課題になってまいりましょうし、少し違うディメンジョンの課題が浮かび 上がるのではないでしょうか。 ○尾形座長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○谷口指導課長  行政からお願いのような形になるのですが、ご指摘いただいたように、いくつかのパ ターンがあるとして、私も非常に納得してしまったのですが、今後、質が高く効率的な 医療提供を確保するために医療連携はどうしても必要であると思います。そのために都 道府県がこれから悩まずにどういう連携を確保していくかということを考える際には、 自分の所がどういうパターンに適応してこのとおりやればうまくいくのだなという、あ る意味でマニュアルといったらいいのかモデル的な医療計画といったらいいのか、我々 としてはそういうものをスタンダリゼーションしてお示ししてあげられればという欲張 った気持も持っているのです。そういうものを議論の中で我々にご示唆いただくことが 可能でありましょうか。 ○長谷川(敏)委員  ワーキング全体の先生方がお答えすべきことかもしれませんが、私個人としては研究 者としてかなり突っ込んでおりまして、実は、マニュアルのようなもの、アプローチの ようなものの原形が出来上がりつつあるので今日お持ちしようかなと思ったのですが、 今日は連携の話に焦点を合わせろということでしたのでその部分はカットしております が、用意しつつあるということを1点申し上げておきます。  それから、大都会の部分と郡部、この2つが大変な課題で、おそらく、47都道府県 の大半は郡部の医療が足りないところをどうしたらいいのだろうというのが大きい課題 でしょうし、12の大都市を抱えている県では大都会をどうするかということが課題かな と思っております。その辺も含めたマニュアルで、しかも主要な疾患を5つか6つぐら い、それから政策系の課題、難病、精神、災害、救急、そういうものを含めたものにな るとかなり膨大な内容になりますが、少し挑戦していきたいと思っております。 ○谷口指導課長  立法技術論的なところも今後は噛んできますので、すべてのフォーマットまでここで 決定していただくということではなくていいと思うのですが、できればワーキング辺り でその辺のヒントみたいなものをいただければ我々としてありがたいということで、そ れは先生方にお願いしてよろしいでしょうか。 ○尾形座長  特に異論はないようです。マニュアルと言うのか何と言うのかわかりませんが、そう いうものをつくることについては結構だと思います。ただ、「都道府県が悩むことなく 」というのは、私はよくないと思うのです。やはり、悩んでいただかないといけないの ではないか、大いに考えていただくための材料を提供するというぐらいのつもりで受け とめたいと思います。  ほかに特によろしければ、一応、今日の会合はこの辺で終了したいと思います。熱心 なご議論をありがとうございました。事務局から連絡事項があればお願いします。 ○針田医療計画推進指導官  次回につきましてはまた改めて今日のディスカッションを踏まえて整理させていただ いてご相談したいと思いますので、よろしくお願いします。 ○尾形座長  それでは、これをもちまして第4回ワーキンググループを終了させていただきます。 どうもありがとうございました。 照会先: 医政局指導課 担当者: 計画係、指導係 連絡先: 03-5253-1111(内線2557)