05/09/15 労働政策審議会雇用均等分科会第50回議事録            第50回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成17年9月15日(木) 14:00〜16:00 2 場所: 厚生労働省専用第21会議室 3 出席者:    労側委員:吉宮委員、岡本委員、篠原委員、片岡委員    使側委員:川本委員、吉川委員、前田委員、渡邊委員    公益委員:横溝会長、今田委員、奥山委員 ○横溝分科会長  お待たせいたしました。渡邊委員が遅参なさるようですが、他の方はお見えになりま したので始めさせていただきます。ただ今から第50回労働政策審議会雇用均等分科会を 開催いたします。本日は、林委員、樋口委員、佐藤博樹委員、佐藤孝司委員、山崎委員 がご欠席でございます。議事に入る前に、事務局において異動がありましたので、順次 ごあいさつをいただきたいと思います。 ○北井雇用均等・児童家庭局長  8月26日付で雇用均等・児童家庭局長を拝命しました北井でございます。大変重要な 課題が山積みということで、責任を十分自覚して取り組んでいきたいと思います。どう ぞよろしくお願いいたします。 ○白石審議官  その後任で、大臣官房審議官を拝命しました白石でございます。よろしくお願いいた します。 ○香取総務課長  同じく26日付で配属になりました総務課長の香取でございます。よろしくお願いいた します。 ○高崎短時間・在宅労働課長  短時間・在宅労働課長の高崎でございます。よろしくお願いいたします。 ○鈴木均等業務指導室長  均等業務指導室長を拝命しました鈴木でございます。よろしくお願いいたします。 ○横溝分科会長  新たにお見えになりました事務局の方々、今、局長がおっしゃったように大詰めの大 変な時ですが、よろしくお願いいたします。  それでは早速議事に入ります。本日の議題は「平成18年度雇用均等・児童家庭局の予 算概算要求の概要について」と、「男女雇用機会均等対策について」でございます。  まず、最初の議題の「平成18年度雇用均等・児童家庭局予算概算要求の概要について 」につき事務局から説明をお願いいたします。 ○香取総務課長  それでは、恐縮ですが座ったままで失礼いたします。18年度の雇用均等・児童家庭局 予算概算要求の概要について、簡単にご説明いたします。  資料No.1、表紙をとっていただきますとその次についているものですが、こちらでご 説明しますので、よろしくお願いします。雇用均等・児童家庭局全体としましては、少 子化というのが非常に大きなテーマになっております。先の衆議院選挙でも、各党それ ぞれ、少子化については非常に積極的な提言をされていたわけですが、この少子化、そ してそれと表裏の関係にあります公正で多様な労働環境、働き方の推進。これが大きな 二本柱ということになっております。  主要事項については、下に2つ◎がありますが、一つは、次世代育成支援、少子化対 策ですが、次世代の育成の支援という広い視点から施策を講じるということで、待機児 童ゼロ作戦をはじめ、柱がいくつか立っております。  もう一つは、雇用機会均等をはじめとする公正かつ多様な働き方の推進ということ で、それぞれ予算計上しております。ページをめくっていただきますと、局全体の予算 の額が出ています。18年度概算要求総額、一般会計と特別会計を足して1兆1,865億円と いうことで、約6.2%の増ということになっております。厚生労働省全体の予算が約18 兆円ですが、1兆円を越える予算を私どもで計上しております。このうち、一般会計が 児童の特別会計を含めて、1兆1,000億円、労働特別会計関係で112億円ということでご ざいます。  次に、中身の説明に入りますが、3ページをご覧ください。3ページ・4ページは、次 世代育成支援の一つの大きな柱ということで、地域における子育て支援の充実というこ とでございます。  昨年の三位一体改革の関係で、地方自治体に対して交付しているさまざまな補助金・ 負担金については、整理統合あるいは税源移譲をするということで、年末に一連の改革 が行われました。その過程で、私どもはソフト補助金と呼んでおりますが、地方自治体 に交付する少子化対策・子育て支援関係の補助金については、 (1)の○の一番下の行の ところに書いておりますが、次世代育成支援対策交付金という形で一種の交付金を統合 して、一括して市町村に交付するという形の交付金に切り換えたところでございます。 内容的には従来の事業を見直し、整理統合し、この交付金の中の項目ということで、盛 り込んだものです。  そこに、つどいの広場事業、それから育児支援家庭訪問事業、ファミリーサポートセ ンター事業等々、いくつか書いておりますけれども、その統合した補助金の中でも、特 に中心的に市町村に行っていただきたい重要な事項ということで、ここに6本挙げてお りますが、こういったものを中心に所要の予算を計上しているところです。  4ページの(2)ですが、地域児童のための健全育成事業ということで、これは学童クラ ブ・放課後児童対策ということで、学齢期の子どもを学校から帰った後お預かりすると いうことで、学童クラブ・放課後児童クラブとありますが、こちらについても、箇所数 の増をはじめ、新たな要求をしております。  下の○ですが、これは新しく特別会計で要求したものですが、文部科学省と連携しま して、中高生と乳幼児の触れ合いの機会を作るということで児童館等を活用して新しい 事業を行いたいということで計上したものです。  次に2番目、保育サービスの関係でございます。待機児童の解消については、平成15 年度から、これは内閣総理大臣の指示もありまして、待機児童ゼロ作戦ということで、 3カ年にわたって、約1万5,000名の定員増を図るということで対策を講じて参りました。 引き続き、18年度以降も待機児童ゼロに向け保育所の受け入れ児童数の拡大を図るとい うことで、保育所の整備の推進を図るということでございます。この施設整備の交付金 についても、先ほど申し上げたソフトの交付金同様、三位一体改革の中で、交付金化を 図り、市町村に直接交付して、自由に市町村で裁量が取れるようにということで、こち らもいわゆる交付金化しております。金額としては60%・約100億円増額して要求して いるところです。  (2)以下は、保育の充実に併せて、多様な保育サービスの提供ということで、例えば、 延長保育ですとか一時保育、特定保育あるいは保育ママといったような家庭的な保育の 充実ということで、保育サービス本体の保育所の保育サービスと一体となって、保育サ ービスを充実するさまざまな施策についても必要な措置を講じて要求しているというこ とです。  (3)総合施設の本格実施。総合施設とは何かと言われる方があるかもしれませんが、 これは、幼稚園と保育園の機能を統合していくといいますか、就学前の児童に対する保 育と教育のサービスを一体的に提供するという形で、幼保の一元化を進めるということ です。これもこの間の議論の中で、関係の方で裁きがありまして、こういったことを文 部科学・厚生労働両省で協力して進めていくようにということで、これについて16年、 17年と検討し、昨年新しい総合施設の形について、いくつかモデル事業を実施いたしま した。18年度から本格的に、総合施設というものを文部科学・厚生労働両省で協力しな がら進めていくというものです。  予算については、既存の保育所の運営経費の中で措置をするということですので、新 たな予算の品目は立てておりませんけれども、いわば事項要求のような形で要求してい るものです。  6ページ、両立支援の関係で、仕事と子育ての両立など生活と仕事のバランスのとれ た働き方の推進ということで、子育て世代の家庭の両立支援あるいは仕事とのバランス の推進ということで要求しております。  まず一つは、事業主に対する支援ということで、特に中小企業では、子育てと仕事の 両立ということについて時短あるいは育児休暇の取得といったことについても、大企業 と違って取り組みが遅れているということで、今般、中小企業の事業主に対しては特例 的に5年間に限って特別に手厚い助成を行うということで、既存の予算を組み換えて、 増額してこういった新たな助成措置を講じるという予算を要求しているところです。  二つ目は、子育て女性に対する再就職あるいは再就業、起業の支援ということで、出 産・育児で離職した女性が再び再就職をしていくという場合に、さまざまな相談・助言 をする。あるいは、マザーズハローワークといったような、就労支援の取り組みと併せ て、総合的な支援を行うというものです。就労ということと併せて、さまざまな働き方 ということで、起業ということについても、一定の取り組みを行おうということで、さ まざまな起業のための施策というものは新規のものとして助成措置を講じるということ で要求しているものです。  (2)で、仕事と生活のバランスのとれた働き方ということで、短時間正社員等、さま ざまな対応の働き方についてモデル事業を実施して、それに対する評価あるいは公正な 処遇の図られた短時間労働を行う正規職員の普及、制度の普及というものを図るために 予算を講じたものです。  (3)パートタイム労働の関係で均等処遇の推進ということで、現在、短時間労働者の 雇用管理助成金等いくつかの助成金の制度はありますけれども、これを、整理・統合し まして。この特別会計の予算ですが、一種の統合補助金というような形で要求するとい うことで、予算要求しているものです。  4番目は児童虐待の関係でございます。児童虐待も、最近また事例も増えております。 児童相談所への相談事例も非常に多くなっておりますし、さまざまな事件が起きており ます。つい3、4日前も小山の事件の死刑判決が出ておりますけれども、そういったこと もありまして、児童虐待等要保護児童対策については、充実した対応を図らなければな らないということで、今般予算要求をしたところです。  この関係では、再掲ですけれども、妊娠期から継続した支援を行うということで、特 に、0歳から生後4ケ月未満の子どもに死亡事例等が多いということもあり、この部分の 対応については、分娩にかかわった産科の医療機関に協力していただいて支援を行うと いうことで、乳幼児育児支援のための家庭訪問事業の強化というものを図りたいと思っ ております。  併せて、児童相談所の相談体制の強化ということで、心理職員の配置等人員の体制の 強化ということで予算要求をお願いしております。  それから、1ページ飛びまして5番目、小児科・産科の確保ということで、母子保健 対策の関係でございます。母子保健関係についても、やはり三位一体の関係で、さまざ まな補助金について母子保健医療対策等総合支援事業と長い名前ですが、統合補助金の 形にしております。統合補助金の形で、必要な施策をそれぞれ自治体において選択して やっていただくという形になっておりますが、主だったものとしては、小児科・産科医 療体制整備事業ということで、これは新規の枠で要求しているものです。小児科・産科 の医師が大変不足しておりますので、都道府県においてさまざまな体制整備を行うとい うことについて、経費の補助を行うというものです。特に小児科・産科は女医の割合が 多いということもありまして、そういった観点からの施策という位置づけもございま す。  それから、(3)は小児慢性特定疾患の関係で、これは全体で約120億円の予算を取りま すけれども、この小児慢性については、医療的な措置と併せて、日常生活用具の支給等 々在宅で療養される方の生活支援という視点で若干福祉的なサービスですが、こういっ たものについて新たに行っていきたいということで要求したものです。  6番目、母子家庭対策ですが、これについては、現在母子家庭に対しては、児童扶養 手当の支給がわれわれの制度として行っているところですが、母子家庭対策として、手 当ての支給と併せて、経済的な自立を支援していくということで、生活支援、就労支 援、子育て支援ということで、経済的な支援と併せて、自立支援のためのプログラムを 作って、できるだけ母子が自立して生活できるようにしていくということで、各自治体 において自立支援のプログラムを策定し、支援をしていくと。これは、今年度モデル事 業で実施したものを全国的に展開するということで予算要求しております。  併せて、母子家庭の方々で就労されている方を常用雇用に転換をしていくということ について、一定の転換奨励の助成金を支給しているところですが、これについて、要件 の緩和等を図りまして、できるだけ自立の支援を促進するようにということでございま す。  次に、12ページ、公正かつ多様な働き方の推進ということで、予算的には極少ない予 算ですので、あまり大きいものではありませんけれども、一つは、まさに当審議会にか かわることですが、男女雇用機会均等の更なる推進ということで、具体的に雇用機会均 等の確保を図っていくための積極的な行政展開、それから妊娠・出産等を理由とする不 利益取扱いの問題等、この検討会等の結果を踏まえまして均等施策の充実を図るため に、所要の予算を計上しております。  それからもう一つは、ポジティブ・アクションの促進ということで、ポジティブ・ア クションの推進に活用できるような、ベンチマーク、さまざまな自社の取り組みについ て客観的に自分の企業の位置を測ることができるような、メルクマールとなるようなベ ンチマークを提供していきまして、それぞれ企業において出産・育児がキャリア面でハ ンディとならないような制度の普及促進を図っていくということで、そのための検討の 経費を計上しているものです。  (1)短時間正社員に関しては再掲でございます。それから3番目のパートタイム労働に 関しても再掲ということでございます。  以上、簡単でございますけれども18年度の予算案件について説明させていただきまし た。全体として厚生労働省予算は、年末に向けてもう2,200ほど全体としてまだ査定を されることになりますので、これから財務当局との予算折衝は厳しいところがあります けれども、できるだけ所要の額は確保できるように努力して参りたいと思っておりま す。以上でございます。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。それでは、ただ今のご説明に対しまして、ご質問等ありま したら、お願いいたします。 ○吉宮委員  二つございます。一つは1ページの冒頭(1)〜(3)までの次の、なお、「子ども・子育 て応援プラン」において検討課題とされている経済的支援等については、さらにそのあ り方等を幅広く検討するということで、もう少しわかりましたらご説明願いたいのと、 もう一つは、言葉遣いなのですが、パート労働問題のときにも、私は盛んに述べたこと なのですが、6ページの(2)仕事と生活のバランスのとれた働き方の推進で、短時間正社 員という言葉を使っています。(3)はパートタイム労働対策と書いてあります。この違 いはどのようにして認識すればよろしいでしょうか。短時間正社員はパートタイム労働 者と思っているのですが、どうも違う認識でずっととらえているのだと思うのですが、 どのように違うのか定義をお聞かせください。 ○香取総務課長  二つ目のご質問は、短時間・在宅労働課長から答弁申し上げます。一つ目ですが、こ こで言っている経済的支援というのは、具体的に言うと、児童手当のことになります。 児童手当については、説明を省略して恐縮ですが、11ページになります。予算上は児童 手当の支給のうち、国庫が負担している分について要求するということで約3,200億円 弱の予算を要求しておりますが、現在、児童手当は小学校3年生までの子どもに対して 第1子・第2子は5,000円/月、第3子以降は10,000円/月ということで、支給しておりま す。所得制限が、確か700万円ぐらいですから、大体支給率が85%ぐらいです。これに ついては、少子化対策全体の中の一つの柱ということで、保育対策ですとか、両立支援 と併せて、子育て家庭に対する経済的支援を充実するべきではないかということで、児 童手当を抜本的に拡充するということが必要なのではないかというご意見がございま す。これは先の衆議院選挙の中でも、いくつかの政党で、手当ての大幅な増額というこ とをマニフェストに書かれている党がありました。そういったこともありまして、この 問題については、おそらく年末にかけて政治的な課題になろうかと思っております。  ただ、こういう経済情勢ですので、今の児童手当が総額で6,000億円。国が半分ちょ っと持っていますが、6,000億円ぐらいございまして、仮に手当を増額する、あるいは 年齢を拡大するということなりますと、数千億円オーダーで財源が必要になりますの で、その財源をどのように確保するかということと併せて議論すると。あるいは手当の 場合には税で扶養控除とか子どもの控除とかが付いていますので、控除で手当てしてい る部分と、給付で手当てしている部分とをどういうふうに調整をするのかと。その考え 方として、どう整理するのかということと、そのお金の問題、金目でどう調整するのか という視点があります。そういったことも併せて、税制との関係も含め議論をするとい うことになります。  従いまして、概算要求上は今現在の、小学校3年までの制度ということで予算要求し ておりますけれども、この後、年末までの議論の中では何らかの形で政治的な決着がさ れれば、それに合わせて予算要求を見直すと。いわゆる改要求ということをするという ことになります。ここは、今の段階では、先がまだ見えませんので現在の形の予算要求 になっているということでございます。 ○高崎短時間・在宅労働課長  短時間・在宅労働課長高崎です。二つ目のご質問にお答えします。吉宮委員はパート の問題も長く担当されておられますが、私自身は、過去の議論等について必ずしも承知 しているところではない面もあろうかと思いますので、とりあえず、私の現時点での考 え方と言いますか、認識についてご説明させていただきたいと思います。パートタイム 労働者というものについては、法律上の定義は別として、世の中にパートタイム労働者 を所定労働時間の長短だけでとらえる考え方と、あと、呼称パートと言いますか、当該 事業所における、その労働力の労働者の位置付けとしてとらえる考え方があろうかと思 いますけれども。そういう意味で、パートタイム労働者と言う場合には、パート法にお いては所定労働時間の長さで見ておりますが、さっき言ったようなとらえ方で、いろい ろな意味でよく正規・非正規ということも議論されますが、非正規の位置付けとして、 労働力としてのパートタイムおよび労働者ということでとらえる場面が、パートタイム 労働対策という場合には含まれているのではないかと考えております。  他方、短時間正社員というのは、その名の通り、正社員と後についております通り、 所定労働時間が短いだけで、事業所における位置付けですとか、雇用保障あるいは評価 の制度、賃金の決定方針等々において、正社員と同じ方式のものが適用されているとい う意味での短時間正社員という場合を短時間正社員と、この予算要求上は位置付けてお ります。そういう意味でパート労働者にも当然含まれる、所定労働時間が短いという意 味では含まれますが、一方、正社員としての性格を持っているという意味では、いわゆ るその非正規という意味でのパートタイム労働者とは若干質的に異なる労働者というこ とで。そういう意味で書き分けているということでございます。 ○吉宮委員  やはり、差別的な認識があるのではないかと思うのです。パート労働者というのは正 社員で、かつパートタイム労働者もいるわけです。だから、(2)の短時間正社員という と、もう一方ではフルタイム正社員という反対語があります。パートというのは、通常 者より労働時間が短いだけなのです。  そうすると、(3)は、非正社員のパートタイム労働ということになる。どうも行政の 考え方に、差別化する偏見があるような気がします。そこを変えないと。  この短時間正社員というのを横文字にしたらどういうふうに言うのですか。パートタ イムは横文字ですよね。多分、短時間正社員もパートタイム労働者に入ると思うのです が、なぜ分けるのですか。この時点で皆さまの中に差別意識があるのですよ。新聞も、 かなりそういう書き方をしていて、抗議したことがあるのですけれど。パートタイム労 働者が増えているという場合に、非典型が増えている場合に、どういうふうに言うの か、正確に定義付けをして欲しいと思います。 ○横溝分科会長  吉宮委員、今日の段階はそれでよろしいでしょうか。次の中身に入ってよろしいです か。他に何かご質問ありますか。では岡本委員どうぞ。 ○岡本委員  1点だけ質問をしたいと思いますが。今の6ページのパートタイムのところなのです が、最初の均等処遇推進のための事業主への支援の充実ということで、まず、ここの予 算額が、前年度に比べて増額しているのかどうかということを伺いたいと思います。先 ほど統廃合によるという話がありましたので、そこを確認したいということと、それか ら、抜本的に見直しをすると、その上で均等処遇に向けた事業主の取り組みへの支援を 強化するということですが、具体的にどのように見直しをしているか教えていただきた いのですが。 ○高崎短時間・住宅労働課長  この短時間労働者雇用管理改善等助成金の助成金そのものの予算としては、17年度の 予算が4億4800万円予定あったものが、18年度の要求額が4億4600万弱ということで、若 干額としては少なくなっておりますが、ほぼ前同ということです。  中身について細かくいろいろありますが、端的に申し上げますと、これまではとにか く事業主団体あるいは事業主の方が、パートの処遇を改善してもらえれば助成金をもら えるというような制度だったものを、より正社員との均衡という点を意識して、例えば パート労働者の方にも正社員と同様の能力評価なり、資格制度を設けてもらうとか、同 等の制度を適用した場合について、お金が出るようにその仕組みを変えるということ で、何となく前進していくというよりも、正社員と同じものを適用できるような分野に ついては、適用していただくことを推進するために、事業を組み替えているということ が改善点です。 ○横溝分科会長  それでは篠原委員。 ○篠原委員  同じページになりますが、6ページ目の(3)の(2)です。ご質問ということで1点だけで すが、この部分、時間比例賃金の導入に向けた云々というところがあります。この部分 の業種別団体とはどのような団体かという点と、この内容を見てみますと、その最賃の 問題や産別最賃の問題というのも出てくるのですが、この辺りをわかる範囲で結構です ので、もう少し詳しくご説明いただければと思います。 ○高崎短時間・住宅労働課長  ここに時間比例賃金と書いていますが、私どもではパートタイム労働者の問題を担当 しているということで、ご案内の通り現状においては、パートタイム労働者の賃金は、 例えば時間給で設定されることが多いのに対して、正社員の場合には職務・職能・年齢 などさまざまな要素を加味して、例えば月給で設定されているということで、一概に時 間数で割って単純に比例することができないということはご案内の通りだと思います。  ただなんとなく2つを均衡考慮してといっても、現実問題どういうふうに考慮していい かわからない、事業主として何をしていいかわからないということがあります。今年度 の事業として、厚生労働省の別の部局ですが、パートタイム労働者と正社員の方の賃金 の決定方式などが違うなら違うとして、それを分解した場合に、例えば比較することが できるのかできないのか、できる場合にどういうふうにすればいいのかということを研 究していただいているところです。そういう研究結果をふまえて、では仮にパートタイ ム労働者と正社員との均衡を考慮した賃金を設定するとした場合にどういうことをする べきかというような方向性を出していただくことになっております。それを踏まえて、 来年度は具体的にできたそういうマニュアル的なものを事業主団体、一応2団体ほど委 託することを想定して予算を組んでいまして、どこに委託するかまだ現実決まっており ませんが、出来上がった設計図について、果たしてうまくいくのか、いかないのか。い かない場合はどういうふうに改良を加えなければいけないのか、ということをモデル的 に団体でお願いして検証していただき、そのための予算として7,700万円あまりの予算 を要求しています。 ○横溝分科会長  他には、いかがでしょうか。 ○片岡委員  全体を通じた感想と質問があります。感想というか予算の配分ということではないの ですが、少子化の流れを変えるための子育て支援という全体の状況には賛同します。  ただこの審議会の議論でも課題となっているように、就業を継続しながら妊娠・出産 を不安なく過ごすことができるということが、子育てをする前の段階として非常に重要 と考えられます。そのことが今回の支援策といいますか、予算を裏付けとした施策の中 で、十分という状況にはなっていないように感じます。もちろん均等法の改正審議の中 で、それをめぐる不利益取扱いなど、重要な課題がまだこれからということは承知して おります。しかし、これではその点が、積極的に施策も進めながら審議も進めるという 関係から不十分ではないかと感じます。それを感想として申し上げた上で、公正かつ多 様な働き方の推進のところでは質問ということになります。  質問の前に12ページの(1)で、今後の検討結果を踏まえた対応ということが挙げられ ております。そこは承知する部分もありますが、その前段で、均等確保のための行政指 導の展開が書かれています。この間、相談事例などで取り上げられました妊娠・出産を めぐるトラブル・不利益な取扱いの相談事例の多さや、あるいはセクシュアルハラスメ ントに対する被害者への調査が行われていない状況が多く出されました。ぜひ積極的な 行政指導の展開では、そういったことを活かす展開をお願いしたいと思います。  それと質問です。ポジティブ・アクションのところにベンチマークの提供はわかった のですが、その後半に出産・育児がキャリア面でハンディとならないような制度の普及 ・促進に向けた検討を行うと書いてあります。この意味がわからないので、少し補足説 明をいただきたいです。 ○石井雇用均等政策課長  まず行政指導について、しっかりやってほしいというところは、そのつもりできちん と取り組んでまいりたいと思っています。  後段の方に入っております「出産・育児がキャリア面でハンディとならないような制 度の普及・促進に向けた検討を行う」ということですが、出産は女性のみで、育児は男 女双方ですが、現実問題として、育児休業の取得率を見ても女性が負うことが多いわけ です。その期間というのが現実問題として遅れをとるということが、少なからずあると いうのが今の状況ではないかと思います。  できるだけハンディをなくしていくために、モデル的に例えば人事制度・教育訓練制 度を見直す意欲を持つ企業の方にお集まりいただいて、そこにアドバイザーを加えて、 研究会のような形で実施し、問題把握とそれをどうクリアするかということのご検討い ただきます。そしてそれを実施し、問題があれば訂正いただき、好事例を作っていっ て、それを最終的には普及していくというような事業を展開していきたいということ で、このたびこのような形で要求をしているところです。総額としてはわずかですけれ ども、これも一種ポジティブ・アクションと位置付けができるのではないかと考えてい るところです。 ○篠原委員  これは要望ということで、今後考えていただければと思います。9ページのところの5 番、(1)にある不妊治療に対する支援とあります。この部分はなかなか声に出しにくい 部分だと思います。これからも要望ということで、 (1)の中の部分に入っているので、 例えばこの部分も1つ大きな項目を起こして、今後はこのような対策にもっと力を入れ ていただきたいという要望を1点申し上げたいと思います。 ○横溝分科会長  それではご要望ということでお聞きしてよろしいですね。  他にないようでしたら次の議題に入りたいと思います。次の議題は男女雇用機会均等 対策についてです。この問題につきましては、昨年の9月より論点項目に沿って議論を していただきまして、今年の7月にこの審議状況について、中間的な取りまとめをして、公 表したところです。  本日からの議論については、一応論点項目を立てていて、それに沿っていただきます が、相互に関連する部分がありますので、それも含めてご議論いただきたいと思いま す。  まず7月に取りまとめ、公表し、そして8月中に行いました意見募集の結果を事務局か らご報告いただきます。その後、男女双方に対する差別の禁止についてまずご議論いた だき、続いて妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い禁止について議論いただきたいと 思います。  事務局から意見募集の結果についてご報告をお願いいたします。 ○石井雇用均等政策課長  それでは意見募集の結果についてご報告いたします。資料No.2を見ていただきたいと 思います。  この雇用均等分科会の今後の議論を進めていく上で参考とするため、審議状況を示し ながら8月1日から1カ月間、意見募集を行ったところです。この間寄せられましたご意 見数は651通でした。平成14年の10月にパートタイム対策について、ご意見募集をした ときの件数が58件でしたので、これと比べると10倍以上のご意見が寄せられました。  ご意見をいただいたものの概要について、資料No.2の最後のページ、応募状況という 形で取りまとめています。参考の2ですが、まずそちらをご覧いただきたいと思います。  651件の内数として、電子メール・郵送、それぞれこのような数字で意見が寄せられ ております。また個人・団体別では、個人が357、団体が294でした。個人の性別でいき ますと、女性の方が圧倒的でした。また個人の方の年齢別に見ますと、40代、50代、60 代の方が多かったということです。さらに個人の職業別で見ますと、民間労働者の方が 最も多かったのですが、これに次いでおりますのが、地方公務員の方です。また団体の 内訳でいきますと、労働組合が一番多く、その次が女性団体です。労働組合の中の内数 としまして、地方公務員の方からのご意見が多かったという状況になっております。こ れが概括的な状況です。  資料No.2の表の方、最初のページにお戻りいただきたいと思います。これがご意見を 取りまとめたものです。分科会の委員の皆さま方には、いただいたご意見をすべてお送 りしているところですが、ここでは取りまとめたものという形でご紹介させていただき ます。  まず全体的な感じとしては、分科会で出された意見・議論と重なるものが多かったで す。論点項目別に見ても全体的には、それぞれまんべんなくご意見を寄せられる方が多 かったのですが、最後の方の女性保護・母性保護といった問題については、やや他に比 べて意見の数が少なかったように思います。  順次簡単にご紹介いたしますと、まず男女双方に対する差別の禁止です。双方に対す る差別の禁止とすべきとの意見が多かったところですが、その一方で女性差別の是正が 進んでいない中にあって、双方差別禁止規定を設けるべきではないという意見も少数な がらありました。  また、仕事と生活の調和、これを均等法の理念・目的として規定すべきというご意見 も大変多くありましたけれども、その一方でこれに反対する意見も見られたところで す。  さらに、現行均等法の第9条に規定する特例ですが、この扱いについて、女性差別の 現状があるので今のままで維持すべきという意見の他、男性についても同じような規定 を設けるべきという意見もございました。  この他、労働時間短縮のための措置、あるいは男性の働き方を規制すべき、あるいは 同一価値労働・同一賃金の理念を活かすべきなどのご意見が寄せられたところです。  (2)の妊娠出産など理由とする不利益取扱いの禁止です。この論点についても不利益 取扱いの禁止を明記すべきという意見が多かったところですが、一律禁止すべきではな いという意見も少数ながらありました。  その内容ですが、ここに記載のように、産休後は原職または原職相当職に復帰すべき とか、採用面接での妊娠・出産の有無の質問を禁止すべき、有期契約の更新拒否の問題 について禁止すべきとの意見が多かったほか、妊娠・出産した女性に対する退職の勧奨 等、そうしたものを禁止すべきという意見も見られます。  昇進・昇格における査定につきまして、休業や能率低下がなかったものとして、取り 扱うべきとの意見が多かったところです。下の方にありますが、不利益取扱いの禁止が 必要だけれども、能率低下などに伴う評価の面においては、他の社員との間で差が生じ るのが当然という意見も見られます。また産休取得・能率低下による賃金・一時金・退 職金の扱いについて、年休と同様に、出勤したものとみなすべきというご意見も多かっ たのですが、その一方で不就労期間のないものと同様に扱うことができないというご意 見、あるいは私傷病など、他の理由による処遇を下回ることは許容すべきでないといっ た意見もみられます。その他、この(5)に記載するような、さまざまなご意見が寄せら れております。  (3)の間接差別の禁止です。これについても間接差別の禁止を均等法に明記すべきと いうご意見が多かったのですが、反対のご意見が少数ながら見られました。その内容で すが、パートの処遇、コース別雇用管理制度など、ここに記載しているようなものを取 り上げて、これらを含めて禁止すべきというご意見、それから禁止の対象は限定しない こととすべきとのご意見が多く寄せられています。その一方で、限定的でもよいので法 律に禁止規定を置くべきという意見も見られます。さらには間接差別の判断について も、ここに記載のようなご意見があります。事業者に対して立証責任を課すべきとか、 あるいは経済的な理由の抗弁を認めないこととすべき、というご意見が多かったところ です。  またポジティブ・アクションの促進によって、格差解消に努めるべき問題というご意 見もみられます。  (4)差別禁止の内容等です。(1)、(2)これはまさにこの均等分科会での意見と同じご 意見でした。そして(3)において、それ以外の問題にも触れられておりますが、雇用管 理区分や基準法の問題に加えまして、労働基準法4条に「同一価値労働・同一賃金の原 則」を入れるべきというご意見が多かったほか、均等法に賃金差別禁止を規定すべき、 あるいは採用において、応募の男女比に沿った採用を義務付けるべきなどのご意見が見 られました。  (5)のポジティブ・アクションの効果的推進方策です。これについて企業に義務化を していくべきというご意見が多かったのですが、これについては時期尚早である、規制 強化は女性の採用の抑止力に繋がるとの意見もあって、最善の措置ではないというご意 見もありました。  またポジティブ・アクションの義務化の内容としては、100人以上の企業に特に義務 付けを行うべき、あるいは公共入札の際に、行動計画の作成の有無を考慮要素の一つと すべき、というご意見が見られたことのほか、事業主自らが実態を把握し、改善に向け て自発的に取り組むための規定が必要というご意見も見られます。  また奨励的なものとしても、(3)にあるような資金援助、表彰、認定マークなどのご 意見が見られます。  (6)のセクシュアルハラスメント対策です。これについても、当分科会で示されたご 意見同様、使用者に事前防止と事後の適正な対処を義務付けるべきというご意見が多か ったです。これに対して、企業がそうした責任すべてを負うことは、現実問題として極 めて困難などの理由で反対をされる意見が少数ながら見られます。  4ページ(2)からまたセクハラが続いておりますけれども、救済や予防・対処の申し出 を理由とする不利益取扱いを禁止すべき、あるいはプライバシーの保護を明記すべきと いうご意見も多かったのですが、会社がこの問題に入っていく場合に、事実関係を確認 する必要があるため、プライバシーについて完全に保護されるのが難しく、政府系の相 談機関の一層の周知が賢明といったご意見も見られます。またセクシュアルハラスメン トの定義にジェンダーハラスメントを加えるべきという意見も多かったのですが、これ に反対する意見もありました。  その他、(4)に記載のようなさまざまなご意見を頂戴しております。  (7)の男女雇用機会均等の実効性の確保です。これについても立証責任が使用者にあ ることを明記すべき、政府から独立した公正な性差別救済委員会を設置すべき、といっ た意見が多く寄せられました。その一方で労働審判制度が新たに創設されるなど、現行 の救済制度で十分という意見も少数ながら見られました。また罰則を設け是正命令を出 すべき、あるいは立入調査権限を入れるべきとの意見もありました。  その他、(3)に差別についての推定規定を明文化すべき、行政の権限を強化すべき、 あるいは救済申し立てを理由とする不利益取扱いの禁止を徹底させるべき、こういった 意見も見られました。  大きな2の女性保護・母性保護の関係ですが、まず女性の坑内労働禁止の関係です。 原則解禁すべき、あるいは女性技術者が坑内工事の管理・監督業務に従事できるように すべきという意見と、禁止のままであるべきという意見の双方が見られます。その他、 妊産婦の問題とか、イギリスの方法を検討すべきといったご意見も見られました。  (2)の母性保護ですが、ここは手厚くという趣旨でのご意見がさまざまな観点から寄 せられております。この分科会で議論がなかった問題としては、(2)にあるような、有 給通院休暇・有給生理休暇・更年期障害休暇を整備すべきといった意見も見られます。  3のその他としまして、当分科会で出ていない議論・意見として、公務員を含めたす べての労働者に均等法を適用すべき、罰則を盛り込んだ実効性のあるものに改正すべ き、非正規労働者に対して実効ある制度が必要であるなどの意見が見られております。  その他のさまざまな観点からですけども、外国の事例を紹介されるご意見だとか、企 業経営や経済活動の実態を十分に踏まえた議論を求めるもの、あるいは中小企業でも均 等法・均等対策ということだと思いますが、推進できる方策を求めるもの、少子化問題 ・次世代育成の観点から均等法に期待するものなどが見られました。  意見募集の概要結果は以上です。 ○横溝分科会長  はい。ありがとうございました。それではただ今のご説明に対してご質問などありま したらお願いいたします。ご質問がないようでしたら、次の本題に入らせていただきま す。  男女双方に対する差別の禁止、この項目について議論をお願いいたします。なお関連 資料が添付されていますが、これについては以前の分科会で提出されていますので、今 回は説明を省略させていただきます。 ○吉宮委員  このテーマは前回かなり熱心に議論したテーマで、若菜会長も重要なテーマだから、 また議論しましょうという取りまとめの一言が気になりますので、私から少し述べさせ ていただきたいと思います。  男女双方に対する差別禁止というのは、この間の議論を見ても使用者側の慎重なご意 見もあったのですが、私の認識としては、進むべき方向としてはそうだというご意見だ と思います。そういう中で取り扱いとしては、第9条の問題と、また男女双方にしたと きの対象、セクシュアルハラスメントも当然、男女双方になれば男性のセクハラも禁止 ということになると思います。問題は9条だと思います。  私どもが目指すべきは、第9条の関係も男女双方というのが本来あるべき姿と思いま す。ただし男女間の格差という、ずっと過去に作られた問題などを改善するという措置 ですので、女性の職域を見たとき、まだまだ偏りが見られますし、広がりを見せている ものの不十分だという現状からすると、当面は女性だけに限定すべきというのはありま す。  その方向で、当面とは何年ぐらいかかるのかということですが、男女のそういう労働 力配置状況なども見ながら、判断していくということがいい。仮に男性へのポジティブ ・アクションをした場合にどうなるかです。前回までの議論で、1月19日の第40回の分 科会ですか、男性の方々が管理栄養士、経理事務、保育士、訪問介護の登録ホームヘル パー、あるいは派遣会社に応募して、クライアントの希望が女性であることで断られ て、登録もしてもらえないということや、一般事務も挙げられていますが、確かにこの 分野での男性の希望があると思います。これも募集・採用などで、ポジティブ・アクシ ョンということになれば就くことができるかと思います。  加えて男性も対象にしたとき、今、女性の第9条のものの考え方の、事実認定は、相 当程度少ないというものとして、40%という数字が出ています。均等研究会でもそのと ころを議論されているようです。男性の場合、40%を適用するのか。日本全体の労働力 構成から見たら、雇用労働者のうち女性が40%占めているということで、40%を持って きたというのは、通達に書いています。もし適用した場合、男性はどういう判断でやる のかという問題は残りますので、当面は女性だけに限定するというのはどうでしょう か、というのが今日の意見です。  2つ目に、これまた大変議論になりました、私どもの意見に対して福祉法に後退する というご意見ですが、仕事と生活の調和という問題があります。目的・理念に入れるこ とに伴って、さまざまな措置も当然出てくるから、いわば法律全体が多くなって大変と いう意見です。私どもとしては目的を見ますと、第1条に「この法律は法の下の平等を 保障する日本国憲法の理念にのっとり」と書いています。理念とは何かというのは私も 言いたい重要なところです。第2条の基本的理念の、男女平等というものの考え方は、 使用者側からは、仕事と生活の調和の問題は、性別役割分担という性差の問題ではない とご意見を述べられました。しかし私の認識としては、事実、雇用の上で起きている男 女間格差は、まさに性別役割分担ということが根強く残っていることが原因だと思いま す。それが端的に男性は仕事中心で、女性は家庭ということが雇用の慣行なり、制度に 出てきている。そうすると真の男女平等を実現するためには、仕事と生活のアンバラン スを解消するということは、本来あるべき姿からすると、理念の中にそのことを入れれ ば、さまざまなものの解釈の中で解消することはできる。福祉法に後退するとか、ある いは他の法律でカバーできるじゃないか、ということとは違う観点です。そういう意味 での提案を今回してみたい。  つまり目的ではなく、理念の中にそのものの考え方を入れこむことは必要ではない か。そうすれば、いわば募集・採用とか配置とか現行のスキームからいうと、それに伴 う措置、前の法律は、職業講習とか、そういうことを書いてあって、婦人の職業講習と いうのをまた復活するのか、と前回述べられたのですけれども、そういうことを私は求 めておりますので、ものの考え方として、理念に入れてほしいということでございま す。 ○横溝分科会長  他にどなたか、はいどうぞ。 ○川本委員  委員の皆さまに質問を申し上げたいと思います。  先ほど吉宮委員も言われましたが、男女双方とした場合に、この第9条のポジティブ ・アクションが、問題になってくるという発言を、私は以前したわけでございます。  つまり理屈でいけば、男女双方差別禁止ということになれば、ポジティブ・アクショ ンのところも男女双方にするか、あるいはこの規定がいらなくなるか、という選択にな ってくるのではないか。  ただ一方で、ご指摘のあった通り、女性の職場進出を含めましてまだ進んでいないと いう状況にかんがみれば、女性のみの状況のポジティブ・アクションという考え方も当 然あるわけであろうと思います。  従いまして、理屈と、現実の話のはざまで、どうしたらいいのかなと、まだ考えてい るところでございまして、幅広く委員の方、または公益の先生を含めましてご意見をお 聞かせ願えれば、ありがたいなと思っています。 ○横溝分科会長  いかがでしょうか。  今の川本委員は、委員の皆さまにというご要望でございますけれども。  前田委員どうぞ。 ○前田委員  私は、ここの部分に関しましては、吉宮委員のおっしゃったように、まだまだ日本の 中で、特に雇用の場面で、各社、このポジティブ・アクションが必要でないという状況 にはないだろうと思います。  それと、先ほどの予算にもありましたが、ベンチマークを作って公開するとか、そう いうことは、まだまだ必要なことだろうと思いますので、双方差別禁止ということがあ ったとしても、9条は今のままにおいておいてもらって、各社積極的にポジティブ・ア クションをやっていただきたいという意見を持っております。 ○横溝分科会長  吉川委員。 ○吉川委員  今までのところは、同じ意見です。  やはり今、個人のライフスタイルまでを規定するようになってしまっては、働き方が 多様化していますから、もっと個人の選択の自由をおいておいた方が、規定にはめてし まうよりもいいと私は思います。従って、理念に規定することに対して反対という意見 です。 ○横溝分科会長  はいどうぞ、奥山委員。 ○奥山委員  双方適用の問題についてですけれども、結論的には、吉宮委員が今おっしゃったよう に、原則、均等法の本体中身としては、やはり女性に対する差別から男女双方への差別 の禁止という見直しは、不可欠であり必要だと思っています。  特に9条は、当然これに関連することですけれど、ある意味ではかなり理論的にはつ ながる問題でありますが、先ほど川本委員がおっしゃったように、実際に男女の職場で の状況の実態を留意して考えなければいけないのではないか、そういう点では立法政策 上の問題でもあると思っております。  ですから、理論的に言いますと、男女双方であれば、特例もやはり男女双方へ、一方 の性が職種あるいは職場で大きな偏りを見せている場合については、当然男性について の、いわば雇用の機会を拡大するというような措置も、理論上は当然あっていいと思い ます。  けれど、やはりこれまでの日本の職場の実態を見ますと、まだまだ職種や職場によっ ては、職務分離が大きいわけですから、この男女双方への平等ということも、そういう 職務分離の解消ということが、本来的な目標であろうと思います。  そういうことからすれば、やはり雇用平等の実質化を図るためには、この9条の特例 というのは、当面の間、9条それ自身が、臨時的、一時的なものという規定であります ので、そういう点で、男女双方の平等が進みながら、職場における男女の比率なども、 ある程度平均化するようになるまで、9条の持っている意味、女性に対する優遇措置と いう意味は、十分あるのではないかと思っています。  そういう点では、当面の間、9条は女性に対する特例という形で機能させることの方 が適切ではないかと、個人的にはそう考えています。 ○横溝分科会長  他にはいかがでしょうか。 ○今田委員  さまざまな、いびつな格差のあるものを是正していくというプログラムが、現実的に は、いろいろあろうかと思います。その場合に、それを一つの戦略として、われわれは とらえますが、法律の体系として望ましいあり方という、議論はもちろんあると思いま す。現実的にその格差を是正する戦略というのと、この2つの間は、なかなか一致しな い場合があるので、私は、どちらかといえば現実的に格差を是正するプログラムを直接 的に、こうやれというそういう発想を持ちます。  法律家から言えば、法律の理想の体系として、ある望ましい方向を目指して、法律が 整備されていくという一連の過程の中で法律の改正を見ていく場合に、それはそれとし ての正しい見方があると思うので、この9条についての問題を法律家として、それでい いと、問題ないというご意見が現実の評価としてあるならば、私は個人的には、この特 例措置の現状は、今回の改正において残存させるという形で、いいのではないかと思い ます。  そういう位置付けはどうでしょう。 ○奥山委員  必ずしも法律家全員が同じような視点で、同じような意見を述べるとは限りません し、解釈としてそうあるべきだということはないですけれど、やはり法律の制度も含め て、解釈適用においては、法が理想とする現実なり目的をかなえようという法の観点か らすると、あるべき姿は当然あるわけですけれど、やはり法も日常生活の中での現実を 見越しながら、理屈を言って恐縮ですけれども、適用されていかないと、いわば実効の ある法律というものにはならないと思っています。  ですから、そういう点ではこの特例の9条というのは、まさにそういうことを直視し なければいけないというか、当面出てくる問題ではないかと思っています。  だから繰り返しになりますが、理論的にやはりこういう性差別禁止法ということであ れば、男女の性を、共に取り込んだ形の差別禁止法とするのが、これが理想の姿ですけ れども、一方で職場における男女の平等という観点で見ますと、女性がまだ現状におか れている状況では、男性よりも職域においてあるいは職種においてかなり違いが、ある いは、職務分離という形で存在するわけです。  このように私は認識しておりますが、そういう意味で、この9条の特例の持っている 意義というのは、理論的な観点からだけでなくしてしまうというか、その意義を男性に も適用していくというのは、ちょっとまだ時期としては尚早というか、適切ではないの ではないかということであります。  すべての法律家が、そう考えるかどうかはわかりませんけれども、個人的にはそのよ うに考えます。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○石井雇用均等政策課長  今の奥山委員のご発言に関連しまして、一応実例ということで、お聞きいただきたい のですけれど、均等研究会の中で各国の法制についても整理しております。  フランスとドイツにおきましてはこうした特例、優遇措置というのは、現状をふまえ ての判断だと思いますが、女性に対してのみ適用することとされています。  ただしその一方で、イギリスとかスウェーデンなどは男女同じような形でかけていく という法律のスタイルをとっているというところでございます。 ○横溝分科会長  他に今の項目につきまして、いかがですか。  次の項目に入ってよろしゅうございますか。 ○片岡委員  9条の関係は特にないということで、先ほど仕事と生活の調和を、法律の理念にした 場合、これは、この間の審議会でも、使用者側委員の方が主張され、個人の選択の自由 を制約するという点で反対というふうに、今日もおっしゃったわけですが、むしろこれ までの均等法がどういう効果を生み、あるいはどういう課題を残したかということを考 えたとき、前にも申し上げましたけれども、男性の働き方をベースに、男女平等を目指 すという事が、やはりどういう結果をもたらすかということがあって、むしろ男女を問 わず、個々人の意欲能力を発揮するということの基盤として、均等法の理念に、仕事と 生活の調和を加えるということで、決してその選択の自由を制約するということにつな がるとは、どう考えても思えないわけです。  むしろ男性が強いられてきた働き方を、この均等法に、理念あるいは目的も含めて、 この考え方を入れ込むことで見直すことを通じて、例えば先ほどの議論ではありません が、パートタイム労働というものをどういうふうにきちんと位置付けていくのかという ことも、議論を進める上で関連すると思います。  ですから、そういう点でなく個々人の意欲能力を発揮するということ、男女平等をど ういう姿として目指すのかということで、仕事と生活の調和を基本理念に入れるという ことは、非常に効果が高いと思います。 ○岡本委員  今の片岡委員の発言と、ほぼ同じですけれども、当然その多様な選択性を持つという ことは、非常に重要なことだと思っています。  ただ現状から言えば、やはり男性の働き過ぎということに合わせていくという形で、 その自己が選択をするというよりは、やむを得ずいろいろな働き方にならざるを得ない ということが、今の現実だろうと思っています。  労働法というのは、私は個人的には当然労働者のための法律であり、特に弱者のため の法律だというふうに、解釈をしております。  そういった意味では、十分に働ける働く方たち、または、どんどん時間外をやって も、転勤をしてもいいという人たちのことを考えてというのでしょうか、そうしたこと に対して、幅が狭まるから理念が入らないということは、やはり少し納得ができませ ん。  そういう方たちはそういう方たちで、きちんとそういう働き方を自分の中で選択され ていくことが、この法律ができたからといって規制をされるとか、影響受けるというこ とには、あまりならないのではないか。  つまり、その全体的な男性の今の働き方に対して、それに合わせるような形では、そ の均等待遇というものは、なかなか目指していけないという、全体的な議論のところで すから、あまりそういった個人的な別な部分で、そこを見ることは少し方向性が、間違 ってしまうのじゃないかなと感じています。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○川本委員  今ご意見があったところですけれど、もう一つすっきり理解ができないわけですけれ ども。  今言われた通り、選択の自由というものを拘束したり、規制したりすべきものではな いということでしたけれど、そうは言いつつ、一方で男性の働き方に合わせると均等法 はなかなか進まない、というお話があって、そこはどうもすっきりつながらないような 感じがいたしております。  私は、自分の経験なりで言えば、男性、女性かかわらず、バリバリ仕事をされている 方は、バリバリ働いておられるし、そうでない方は、男女問わずいらっしゃるわけで、 これは個々人の、まさしく自分の職業人としての生き方、あるいは家庭人としての生き 方、その中で選択をされていることだろうと思います。  一方では、労働時間の長時間労働の云々の問題は別の切り口で、それなりの取り組み というのが行われているわけでございますので、私は、ここの男女雇用機会均等法にお いて、理念なり目的なりというところに、この「仕事と調和」という概念をおいておく ことについては賛同しがたいと思っています。  以上でございます。 ○横溝分科会長  他にないようでしたら、本日のところは次の議題がもう一つございますので、そちら に、入らせていただきます。  妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止、この項目について議論いただきたい と思います。  まず事務局から、資料の説明がございます。 ○石井雇用均等政策課長  それではまず資料の説明をさせていただきます。  妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの問題につきまして、本日4種類の資料を用 意させていただいています。  まず、資料No.4-1でございます。「妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益取扱 いについて」とタイトルを付けております。  この問題につきまして、まず妊娠・出産等の内容として考えられる事項、そして解雇 その他不利益取扱いの内容として考えられる事項の例、これを2つに分解をいたしまし て整理をいたしております。この両者は当然因果関係があるからこそ、「理由とする」 という形でつながるのだと思っております。  まず妊娠・出産等の内容として考えられる事項でございますが、(A)から(I)まで整理 しております。妊娠したこと、出産したこと、産休を取得しようとしたこと、等々と続 いておりますが、この(A)から(E)までのグループと、(F)から(I)までのグループ、これ は若干違いがございます。  すなわち、(A)から(E)までの事項につきましては、これは働き方において何ら変化が 出るものではないというものでございますけれども、(F)から(I)につきましては、労働 の提供面で、多かれ少なかれ休みを取っているとかそういう形で変化が出てきていると いう違いがございます。また(C)、(D)、(E)と、(F)、(G)、(H)、これも対応いたしてお りまして、いずれも法律により規定された事項にかかるものでございます。  妊娠・出産等の内容として考えられる事項は、こういう形で分類ができるのではない かと思います。  そして右の欄に移っていただきたいと思います。不利益取扱いの内容として考えられ る事項の例でございます。こちらは、(a)から(j)までに整理しております。具体的に、 何を念頭において議論するかということにもかかわってまいりますので、イメージも、 より明確になるのではないかという形で示しました。  参考にいたしましたのは、すでに不利益取扱いの禁止規定でございます育児・介護休 業法に基づきます指針でございます。そこで取り上げている事項を、(a)から(i)まで、 まず並べています。ただ、6月にこの問題を議論した際に労働側委員から募集・採用の 関係につきましても、ご発言がございましたので、それを(j)として追加をいたしてお ります。  さらに若干ご説明いたしたいのですが、この(a)から(j)のうち(g)、(h)、(j)につき ましては、このこと自体の考え方において、さらに不利益な算定とか、不利益な配置と か、もう一つ判断基準を含んでいる事項でございます。すでに育児・介護休業法の指針 の中では、考え方の例というのが示されておりますので、それを記載いたしておりま す。  例えば、(g)の関係で言いますと、減給をし、また賞与等において不利益な算定を行 うことにつきましては、その休業期間を超えて働かなかったものとして取り扱うこと は、不利益な算定と捉えるというふうになっているところでございまして、これはすで に示されております最高裁判例でもこういった考え方になっているのだと思います。  それから、(h)についても指針に示されているものを記載しています。  (j)につきましては、特段その育児・介護休業指針にないわけでございまして、均等 研の報告の考え方、均等研報告の中に記載されている諸外国事例の中から、2つほど考 え方をお示しをさせていただいているところでございます。資料4-1につきましては、 以上でございます。  続きまして、資料4-2をご覧いただければと存じます。資料4-2は、実はこの8月8日に 発表いたしております「平成16年度女性雇用管理基本調査」の結果概要でございます。  平成16年度におきましては、均等法の母性健康管理措置の実施状況等について整理し ておりまして、今日の議題にも関係するだろうということで、ピックアップして簡単に ご紹介をさせていただきます。  主として、この資料の骨子のところをご覧いただきたいと存じますが、まず、労働基 準法に基づく母性保護制度等の規定状況でございますが、産休につきまして、まず期間 としては、ほぼ法定通りになっているというのが現状、調査結果でございました。  また、この1ページの下から3行目、「また」以下で始まるところで、休業中の賃金の 支給状況でございますが、有給とする事業所割合が28.1%と、前回調査を上回っている ということを記載しております。  ページをおめくりいただきまして、2ページをご覧いただきたいと思います。大きな2 の「労働基準法に基づく母性保護制度等の利用状況」でございますが、(1)におきまし て、産休取得者の配置状況について取りまとめております。  出産者があった事業所のうち、産休後直ちに復帰をした女性労働者があった事業所 で、このうち女性労働者をどのようなところに戻しているかということでございます が、原職に配置をした事業所が98.4%、原職相当職に配置した事業所が0.6%、従いま して併せて99%で、原職または原職相当職に復帰をさせているという状態でございま す。これを女性労働者の割合で見たものが、次のパラグラフでございまして、ここでも ほぼ同様の傾向が示されているところでございます。  2ページの3をご覧いただきたいと存じます。「男女雇用機会均等法に基づく母性健康 管理措置の規定状況及び利用状況」でございます。  母性健康管理措置は、特に就業規則等に記載しなくても講じなければならないことに なっておりますけども、規定状況としまして、就業規則等に規定をしている事業所割合 が高まっています。37.7%というのが、妊産婦の通院休暇制度、あるいは通勤緩和の措 置について規定をしている事業所割合でございます。  こういったような形で、規定化が進んでいるところでございますが、その利用状況に ついて見ておりますのが(2)でございます。母性健康管理措置について、請求者があっ た事業所割合ということを見ておりますけれども、妊産婦の通院休暇制度につきまして は15.3%、通勤緩和の措置が3.9%等々となっております。妊産婦の請求者割合につき ましては、3ページの上の方のパラグラフでお示しをいたしております。  それで、産休の取得等による不就業期間の取扱いのことでございますが、それはグラ フをご覧いただいた方がよろしいと思いますので、恐縮でございますが、13ページをお 開きいただきたいと存じます。  図表6というのがございまして、「産前産後休業の取得等による不就業期間の取扱い 別事業所割合等」をしております。これは、産休のところをご覧いただきたいと存じま すが、例えば産休で昇進・昇格の決定につきまして、特にその扱いを決めてないという のが51.9%と、半分でございます。ただ、その出勤状況を考慮していないという事業所 割合も15.9%ございます。考慮しておりますのが32%でございまして、このうち就業し たものとみなしているのが51.2%。掛け合わせますと16.4%の事業所で、就業したもの とみなしているということになります。  昇給、退職金の算定もございますが、傾向的には、ほぼ同様でございまして、規定を していないのが半分あり、3割ぐらいが出勤状況を考慮している。そのうちの半分ぐら いが就業みなしと、大体こういう構造になっていることがおわかりいただけると思いま す。これが資料No.4-2でございます。  資料No.4-3をご覧いただきたいと存じます。これは6月3日の均等分科会におきまし て、妊娠・出産を機に、辞める女性や辞めさせられる女性のデータをめぐる議論があっ たのを、ご記憶の方も多いと思います。  本日はご欠席でございますが、樋口委員から数字につきまして、いわゆる正社員だけ なのではないかと、非正規労働者も含んだデータなのかどうか、わかる形で資料を提出 してほしいと、こういうご発言がございましたので、本日ここに用意をさせていただい たものでございます。  上の1でございます。これは、「第1回21世紀出生児縦断調査」から取ったものでござ いまして、出生1年前に有職だった母の、出産半年後の就業の変化を見ているものでご ざいます。  上のグラフが出産1年前の就業状況でございまして、7割の方が仕事をもっていらっし ゃった。それが出産半年後になりますと、ぐっと減っております。  この内数を、もう一回示し直していますのが、二つ目の棒グラフでございます。有職 者73.5%のうち、1年前には仕事を持っていた方の67.4%が、出産半年後には無職とな っているということでございます。その内訳といたしまして、元常勤、元パート・アル バイトというのが、それぞれ38.1%、27.2%ございまして、ここからもおわかりいただ けますとおり、全体のさまざまな働き方の方を含んでいるデータでございます。  そして、その辞められた方々が、辞めさせられたのではないか、というふうな議論が ございまして、その時お示しいたしましたのが、2にお示しする日本労働研究機構の 「育児や介護と仕事の両立に関する調査」でございます。  これは、出産1年前には雇用者で、現在無業・無職の方、かつ子供がいらっしゃる女 性が対象でございまして、仕事を辞めた理由を、内数で取っておりますけども、52.0% が「自発的に辞めた」ということでございますが、次に多いのが、左から三つ目でござ います。「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで辞めた」ということで ございます。その隣にございますのが、「解雇された、退職勧奨された」ということで ございまして、5.6%の方は辞めさせられたというふうに受けとめていらっしゃるとい うことでございます。  ちなみに米印をお付けしておりますけれども、正社員、パート・アルバイト、契約社 員等という形でこれは取っておりますので、上と同様さまざまな雇用形態の方を含んで のデータでございます。  なお、下の(2)の方には、妊娠・出産を理由とした紛争解決援助件数も、参考のため にお付けしています。資料4-3は以上でございます。  資料4-4は、すでにお出ししました規定でございますので説明は省略をさせていただ きます。  以上でございます。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。  では、議論をお願いいたします。吉宮委員。 ○吉宮委員  前回までの議論を踏まえて、意見を申し上げますと、一つはこの議論をするときに、 妊娠・出産にかかわる休業と、他の休業との違いをどう考えるか。  この点につきまして、奥山委員が6月3日に述べられましたが、妊娠・出産にかかわる 不就労とその他の一般の疾病をどう区分けするかということが問題で、議論の課題です よとおっしゃっているわけですが、休業する権利は基準法等で与えているけれど、その 他の保護については範囲をどう考えるか、どういう内容で保護するかは全く触れてない という問題提起でした。  そこで、私の認識では妊娠・出産にかかわる休業というのは、産前休業などは若干ご 本人の意思が入りますけれども、基本的には他の休業と違って選択しにくい休業だと思 います。  それに比べて、年次有給休暇をはじめ、育児・介護休業などは、それぞれ対象の労働 者が、自分が休むか休まないかを選択できます。選択できる休業だと思います。そこ は、これから賃金の分野、あるいは昇進・昇格、配置等を考えるときの不利益取扱いを どう見るか、まずそういう観点から議論できるのではないかというのが一つです。  二つ目に、ILOの183号の、2000年にILOが採択した「母性保護に関する条約」という のがございまして、これは何を言っているかというと、その中に8条、9条というのがご ざいます。  雇用保護と差別という項目で、8条の1項では、こんなことを書いています。「解雇の 理由が妊娠または出産及びその結果または保育に関係ないことを挙証する責任は使用者 が負う」このところが、いわば使用者責任、挙証責任は使用者が負うべきだということ を述べていますが、そういうことも私は、議論する際に、大きな問題として着目すべき だと思います。  二つ目に、「女性は出産休暇の終了後、以前の職または同一の額が支払われる同等の 職に復帰する権利を保障される」ということで、原職の復帰権または同額の報酬を払う べきものに復帰すべきだということです。  9条1項は、わが国では批准していませんけれども、「この条約を批准する加盟国は母 性が雇用上の差別にならないようにするための適切な処置を講じなければならない」と いうことで、これはこれから議論すべき課題ですが、2項に、「本条1に規定する措置 は女性の就業申し込み時の妊娠検査またはそのような検査結果の証明を求めることの禁 止を含むものとすること」と述べているわけです。  この8条、9条というのも、これから妊娠・出産にかかわる不利益取扱いを禁止する際 に、批准はしていませんけれども、多分これからわが国も批准の方向に向けていくと思 いますので、そのことも視野に入れてこの問題について議論すべきじゃないかというの が1点です。  そこで、今日配られた資料No.4-1でございます。前回の議論のときに四つの観点で議 論すべきだということで、整理されたものが今回この表になって一番左に出ているので すが、その右側の事例の例で(a)から(j)まであり、基本的には育児・介護休業法の指 針を踏まえていくということは当然だと思いますが、特に問題としているのは(I)の妊 娠・出産起因の労働不能・能率低下があったことをどう考えるかということです。  私はこの議論がなぜ出てきたかというのがわからないのですが、妊娠・出産にかかわ る症状というのは母性健康管理措置の23条にいろいろなことが出ています。どんな症状 が現れてどんな措置を講じるべきかというのが表に出ているのですが、周りから症状で 見ますと、妊娠・出産をすれば、特に妊娠から産後を見ても、能力・能率というのは落 ちるのです。個人的にはいろいろあっても落ちると思います。それをいちいち評価の対 象に加えるというのがわからないのです。それで評価すべきだというのは何なのですか といいたいです。当然落ちることで、そこは受忍しないと私は駄目じゃないかというふ うに思います。その多くは23条で医師の判断等とここにありますけれども、つわり、妊 娠悪阻、妊娠貧血というのを書いています。例えば妊娠悪阻でも休業を要する場合があ ります。それから妊娠貧血には立ちくらみとか脱力感だとかいろいろな症状が出てきま す。これを見ていきますと、当然あるのです。それをいちいち評価するというのはおか しい話で、ここはきちんと(I)を議論すべきテーマではないと、前回奥山委員も議論の テーマで、それをどうするかというのは判断ですよと述べていまして、多分研究会もそ ういう立場だと思いますが、私は当分科会では(I)については評価対象にすべきではな いということです。 ○奥山委員  個人的な観点でお話をさせていただきますと、おっしゃることと全く違うことを考え ているわけではないし、そういうことを言ってきたわけでもないのです。  妊娠・出産による労働能力の低下ということをどう評価するかといった場合に、当然 おっしゃったように妊娠・出産に個人差はあっても、どういう人であっても妊娠・出産 によってつわりがひどかったりあるいは出産後の肥立ちがよくなかったりということ で、仕事をやっている場合については、従前そういう状態でなかった場合と比べて落ち るということはある程度あるだろうと思います。そのときに落ちた程度といいますか、 例えば今まで100個製品を作っていたものが、そういう状況の中で例えば95個しか作れ なかった。その5個のマイナスを途端に労働能力の低下ということで、処遇に対しては ね返すかというとそれは非常に問題だろうと思います。  妊娠・出産による休業の権利というのは、そういう状況に女性がなるからこそ女性の 母性とか健康管理について留意しているわけですから。当然そこには労働能率がそうい う点で落ちるだろう。それは権利を認めたことの成果として、そういうものを直ちに処 遇のマイナスによって評価することは、法が予定しているような権利の請求とはつなが らないだろうと思います。  しかし、それだけですべていけるかというとそうではなくて、人によってかなり労働 能率が落ちてしまう。理屈だけの話ですが、例えば半分しか作れないといったときにそ れも全くマイナスのように評価できないのか。それも全部使用者の経済的負担、コスト 負担の中で考えていくべきなのだ、それは当然ではないかというふうに話が進んでくる と、当然の帰結として必ずしもそういうふうにはつながっていかないのではないか。そ ういう労働能率の低下を、処遇のマイナス上の評価とどのような観点からどのようにし てつなげていくかということは大きな議論をしなければならない、そういう気持ちを持 っています。  ですから、決して吉宮さんが言っているようなことで、労働能力の低下があるからそ れは直ちにマイナスに評価されても仕方がないというふうにストンとつなげているわけ ではないのです。問題はそういう労働能力の低下の判断基準とか程度というものを処遇 にどうはね返していったらいいのか。しかもそれを法律の規定として設ける場合に、ど のような判断基準を枠付けしていったらいいのか、非常に難しいと考えて今までお話し てきたつもりです。  そこのところでうまく共通の認識が出れば一番いいことだと思っています。その辺の 議論を少しやっていただければ非常にありがたいし、改めてそれを考えてみたいと思い ます。 ○吉宮委員  いいですか。私はそこは受忍していいと思います。 ○奥山委員  そこがちょっと違うのです。吉宮さんが言っているのは、どういう場合でも受忍すべ きだということでしょう。私はワンクッション入れたいというか、そこまで踏み切れな いところがあります。 ○吉宮委員  逆に、判断基準として妊娠・出産の症状等の因果関係が当然出てきます。誰がどのよ うに判断するのかですね。妊娠・出産前のその人の能力というのがあって、落ちたと比 較するわけです。妊娠・出産の症状が原因じゃないかという判断になると思いますけれ ども、そこは非常に難しいわけです。前回、川本委員もこのテーマは非常に難しいと述 べています。判断は誰がどのようにするかというのは、私は難しいと思うのです。そこ までいちいちしなければいけないのかというのがあります。これを見ればわかります が、労働能力の低下は起こるのです。 ○奥山委員  ただ、吉宮さんがさっき挙げた産休後の原職復帰については、国によっては当然の権 利として設定している場合もありますけれど、さっきおっしゃった説明では産休後原則 的に元の仕事、元の地位、元の賃金も含めた処遇へ、これは原則ですね。でもそれは元 の職場に帰った後、その仕事を実際に遂行しているときに労働能率の低下が出たときに まで同じ賃金を払いなさいとまでは言っていないでしょう。 ○吉宮委員  言っていませんけど、そこは育児・介護もそうですけれども、情報提供とか復帰後の 訓練を事業主にやっていただいて、できるだけやるという前提がないと。 ○奥山委員  私はそうあるべきだと思います。 ○吉宮委員  休業する期間があれば当然会社との関係は疎遠になりますから、そういう意味での訓 練は当然あっていいと思うし、それを前提にしてですね。 ○奥山委員  現在でも休業中の職場復帰プログラムの支援の助成金を出したりとか、そういうこと を行政の方で現実に各事業主がどこまでそれを具体的に行っているか知りませんけれど も、一応、法の仕組みとしては行政指導も含めてそういうことをやっているわけです。 それは休業後の職場復帰をスムーズに行えるようにバックアップしていこうということ です。  その点では私は反対でも何でもないのです。反対しているわけではないのですが、少 し吉宮さんと意見、考え方の違うところは、労働能率の低下の程度を処遇のところでど うはね返すのか、あるいははね返すべきじゃないと考えるのか。そこまで私は踏み込め ていないという、そこだけだろうと思っています。 ○吉宮委員  この23条の表を見ますと、著しく低下するという場合はかなり症状が深刻な状況じゃ ないかと思います。そうすると23条の医師の判断が当然今の仕事を続けるのは酷だとい うふうに出るのではないかと思います。著しく妊娠前と労働能力が落ちるという場合は 症状が激しいわけですから、そうすると何らかの措置内容が医師から示されて休業にな るのか、別の措置を講じなさいとなるか、そういう指導が出ると思います。  23条にも引っかからないで、かつ医師の指導もないけれど仕事を続けられて労働能率 は落ちるという場合は何があるかというと、私は想定できないのです。 ○奥山委員  おっしゃることの趣旨はよくわかります。男女機会均等法の22条、23条は、そういう 状況にある女性についての職域転換とか時差出勤とかいうことをやりなさいといってい るので、その結果、処遇がどうなるかまでは、あの規定は組み込んでないわけです。  だがら、ぎりぎりした議論をやると23条がそういっているから、当然処遇の面でもそ のように労働能率の低下というものを考えないで従来通りの処遇をしなさいとまでは、 理屈っぽい議論かもしれませんけれど、あの規定の解釈からは出てこないのではないか と考えるわけです。  だからそこは新しい議論として、労働能率の低下を不利益な処遇との関係でどう考え ていったらいいか。当然吉宮さんみたいな考え方が出てくるでしょうし、あるいは一方 で、私が考えているような考え方も理屈としてはあり得るわけです。 ○横溝分科会長  川本委員が挙手しています。 ○川本委員  実は私どもも前から(I)のところで、妊娠・出産期の労働不能だとか能率低下の問題 は非常に難しい問題なので、この問題と妊娠・出産・休業を取ったことの話は分けて考 えるべきだと言ってきたわけです。  能率低下・労働不能の問題は、同じ職場のあるいは同じ出産した方でも能率低下の程 度が違うということも考えると、公正性の観点からはこの評価によって反映されること があっても当然なのでないかなというふうに思っております。  従って、先ほどの資料No.4-2のところでも、図表6というのは13ページにありました けど、産前産後休業あるいは下の方に育児時間とか妊娠・出産後の症状等に対応する休 業と、この辺の休業の話との対応ですが、やはり昇進・昇格、昇給の決定を反映させて いるところもあれば、していないところもあるということですから、その辺を先ほど受 忍したらいいというお話でしたけれども、それは個々の企業の労使自身で決めればいい 問題で、ここでその評価までしてはいけない、反映させられないということは、むしろ 非常に行き過ぎなのではないかなという気がしております。 ○吉宮委員  冒頭で言った一般の疾病と妊娠・出産にかかわる問題をどう考えるかということで す。  妊娠・出産というのはまさに女性だけにかかわる事項ですが、個人差があるといいま すが想定される症状というのは皆さんに共通するわけで、選択できない話なのです。そ れを評価の対象にするという、賃金というのはあると思いますけれど、評価の昇進・昇 格まで及ぼすというのはどうかと、そこまでギリギリしなきゃまずいのかなと私は賛成 できません。 ○今田委員  今、川本さんの議論で公正性の観点から話がありましたが、議論の流れからいって、 原因は妊娠・出産というのが特定されているわけです。妊娠・出産というのが原因であ る症状が出てきて、その症状に重い軽いということが出てくるという、この関係は明ら かなわけで、それ以外の例えば怠けだとか気持ちの問題とか、そういうことでいろいろ な差が出てきているわけではないという事象だと考えると、重い軽いというのは、不利 益を取り扱わないというルールを想定した以上は、重かろうが軽かろうがそれは一切評 価とか、そういうものには反映しないというのが公正性のあり方なのではないか。重い 人と軽い人の間に差をつけるという方が公正さという議論としては転倒していると思い ますが、いかがですか。  つまり妊娠が原因なのです。妊娠・出産による不利益は取り扱わないというときに、 妊娠による原因である結果が起きたときに、能力主義からいってもその結果が重い人と 軽い人にあって仕事において差ができたときに、その差を埋めるような明瞭な差をつけ るのが公正なルールだというその公正感はおかしいと思います。  能力主義というのはパフォーマンスですから、そういうものを超えた疾病とか病気と いう、ある意味では属性的なものです。個人ではいかんともしがたい。そういうものに よる結果というものについての公正性という議論は、能力主義からいっても論理として あり得ないというふうに考えるべきだと思います。ですから私は吉宮さんのおっしゃる 議論というのが正論じゃないかなと思います。 ○石井雇用均等政策課長  ちょっと議論の交通整理を試みさせていただければと思います。  資料4-1でございますけども、今の吉宮委員は冒頭の切り出しとして(I)のところを切 り取っておっしゃったわけでございます。  現実問題として均等法23条の母健措置の規定があるわけでございまして、妊娠・出産 期の症状が出た場合には、すでに使用者の方として措置義務がかかっておりますので、 きちんと手当てをすれば(I)の問題はほとんど(H)の世界の中に納まる話ではないかと思 います。  ただ、個別に具体的な事例を見ますと、労働者がそういうことを知らなくて、その措 置として休んでいないとか欠勤をしてしまったとか、そういうのがあるということはご ざいますが、一応症状的にそういうものが出たときには、ちゃんと医師を介せば母健措 置として休むなり軽業転換をするなりという形で、考えるべき内容としてはほぼ(H)の 中身に集約しているということをまず整理をさせていただければと思います。  その上で今の議論が、休んだこととかあるいは能率低下ということで一緒になってい たと思いますが、結局のところ、右の方に書いております不利益取扱いの中身として、 例えば解雇するとかあるいは労働契約内容の変更の強要を行うとか、自宅待機を命じる とか、降格させるとか、この辺が内容としてそれまでと比べて明らかに不利益になると いうことが明確な事柄だと思います。  しかし、(g)だとか(h)といったところになりますと、程度問題というのでしょうか、 どういうことをしたときが不利益になるのかというところで考え直さなければいけない ということで今この議論に入ってきていたと思います。  その際に、今とりわけ母健措置の関係になるような、能率低下とか欠勤がちというこ とだけが強調されておりましたけれども、産休も労働基準法上の母性保護措置も母健措 置も、みんな同じような出方になる。内容は若干違いがあるとしましても、休むとかあ るいは早退だとかあるいは軽業転換で違う働き方になるとか、そういったところで一つ くくってご覧いただいた方がいいのではないかと思います。  その上で休んだ期間あるいは勤務時間が短かった期間というものをまずどう考えるか というところについて、議論・整理をしていただいた方がこの場としては積み重ねの議 論になるのかなと思います。これは休んでいる期間の話でありまして、将来の働き方と か将来の評価という問題とは違う、まさにいなかったとかそういうことについての評価 をどのように考えるかということでまずご議論・整理をしていただいた方がよろしいの ではないかと思うのでございます。 ○奥山委員  さっきの吉宮さんの話の中で感じた、考えたことですが、私が想定した労働能率の低 下について、それを処遇上どうはね返すかというような問題について今の時点で考え方 が違うというのは、私は処遇上の中心においているのは賃金ということでお話をしてい ます。さきほど吉宮さんはその後で昇格とか昇進という話を出して、今おっしゃったよ うに当然処遇にもいろんなものがあるわけです。  休業明けで職場復帰したとき従前と違って少し能率が低下している、あるいは大きく 低下している。その辺は微妙な問題ですが、低下したことによって昇格とか昇進とかそ ういうものに直接はね返して不利益にするということは不利益取扱いだと思っていま す。まして降格などは格付けを下げる。しかし、同じ格付けの中でやっている仕事が従 来よりも能率が上がってないから、それに見合う賃金については評価をマイナスします よということであれば、法律的に許される可能性はあるかなと思っています。  しかし、それを昇進に対してポーンとはね返させる、あるいは格付けでドーンと落と してしまう。これは法が予定してない、こういう労働能率の低下による処遇のマイナス についてはこういったものだと思っています。あくまでもこういう休業明けのそういう 一時的な状況にある休業というものの意味は一時的な労働能率の低下ですから、そうい うものについての処遇のはね返りをどう見るかということです。  ですから、昇進とか昇格といわれたら、これはちょっと違うだろうということは私も 思うわけです。だから処遇と一口にいっても、そういうふうにいろいろ考えて、労働力 の低下をどこでどのような枠の中でどのように反映すべきか、あるいはさせるかという ことはかなり難しい問題になるだろうと思います。  だけど、一番の入り口の話ですると、やはり労働能率というのは、当然どんなもので あってもカウントしてはいけないというようなことで話がいくと、違いますよというだ けの話だと思っています。すみません、さっきの補足です。 ○吉宮委員  私もちょっとそこのところでかみ合わせますと、23条の医師の措置に伴う休業も措置 内容があります。休業は不就労ですからその時の賃金をどうするかという問題があると 思います。問題は評価のところです。奥山さんが6月3日に昇進についての考課の尺度に ついてというのがまだ議論が残っていますよと。昇進・昇格の評価の問題と賃金とは分 けて議論したいなと思っています。  今いった能力低下が賃金にまで反映するというのはどういうことなのかわからないの です。23条の休業に伴って不就労は明らかなのです。そこで賃金をどうするかというの はわかりますが、休業以外の措置、能力が落ちたから賃金を下げるとかはちょっとわか らない。  それをどうするのか、それを測れるのかというのがあるわけです。  もちろん昇進・昇格はあります。賃金まで能力評価が反映されたらわからない。測れ ないと私は思います。休業は不就労ですから、その期間どうするのかというのはわかり ます。それを100%保障するのかそれとも比例でやるのかとか議論はありますけれど、 その議論はものすごくしたいのですが、賃金の問題はあるけれども、能力低下・不能が どう賃金に反映するかというのはすべきではない。昇進・昇格もすべきではないといっ てそこは受忍すべきではないかと言っているのです。 ○奥山委員  繰り返しになりますが、労働能力の低下というのは、基本的には妊娠・出産によって 女性が個人差はあっても労働能率が多少なりとも落ちるというのは、出てくる大きな解 決すべき問題です。法がそういうものについて休業を認めているということは、そうい うことを含んで使用者をある程度拘束、負担をしなさいというのは予定している範囲で す。  ただ、問題はその労働能率の低下というものが、やはり人によっては違うわけです。 つまり、さっきの話ではないけれど100個作れたものが少し落ちて90になったとか、あ るいは全く半分しかできないということは出てきます。半分までとかあるいは全く欠勤 まではいかなくても、仕事ができないという場合になったときに、それをすべて…。 ○吉宮委員  そこは今田さんの意見に賛成ですけれど、その個人差があるからというのはちょっ と。 ○奥山委員  そうですかね。 ○吉宮委員  公正性というか。 ○今田委員  奥山委員の議論を聞きたいのですけれど、要するに妊娠・出産に伴ったいろんな労働 者の労働能力の低下について企業なり社会はある程度負担をして、そういう枠組みが段 々出来上がりつつあるという認識はいいわけですね。 ○奥山委員  そういう認識はいいと思います。出来上がりつつあるというよりも、むしろそういう 権利を認めているところにそういうものも組み込まれていると基本的には思っていま す。 ○今田委員  妊娠に伴って仕事ができないから仕事を辞めるというのは、労働者が一方的に全部引 っかぶる問題だけど、負担部分をいろいろな企業なり社会なり制度なりが負担をして、 徐々に妊娠・出産に伴うデメリットをニュートラルにするような社会へと動いている。 今回の改革もそういう方向に動いていくという改革の一つであるという、その辺はいい わけですよね。 ○奥山委員  そういうふうな切り口を出されるとちょっと。 ○今田委員  それを前提として、そのときに能力低下に伴ってそれについての企業の評価として賃 金に反映させるのは当然じゃないかというその議論がちょっとわからない。昇進は長期 的だからいいかもしれないけれど賃金は当然だろうという。 ○奥山委員  労働能率の低下があったらすべてそれを賃金にはね返していいですよと言っていない わけです。そこは分かれるだろうと言っているのです。 ○今田委員  どう分かれるのですか。 ○奥山委員  吉宮さんのおっしゃることは、仮にどんなに労働能率の低下があったとしても、それ は妊娠・出産による休業の結果で、そういう休業は法律で認めているのだから、当然そ の論理的な帰結として、使用者はそういうものについて負担をしなさいとそこにつなが るわけです。  私はそこにワンクッション入れるわけです。通常の状態で仕事をしたときに当然妊娠 ・出産による休業についてはまだ母体も回復していないということがあって、当然従来 の仕事の成果と比較したら落ちるでしょう。落ちるというのはある程度合理的な範囲で 予定しているわけです。それを超えたところまで落ちたときに、それも全部負担しろと いうところまで言っているのかなと。 ○吉宮委員  今田さんがおっしゃるのは自己の責めじゃないですよね、怠けたとか。 ○今田委員  それを超えたというのは。 ○奥山委員  例えば、そこは逆にいうと、不就労期間があるとその休業期間中も、吉宮さんの論理 でいけば、当然有給であるべきですとなりますよね。 ○吉宮委員  休業は別と言いましたよ。 ○奥山委員  何で別なのですか。それが私はわからない。まるっきり休んでいるわけです。労働者 の責めに帰すべき理由で休んでいるわけではないですよね。そうしたら、当然有給100 %払わなければいけないことになるのではないですか。 ○吉宮委員  そう言いたいけどね。 ○奥山委員  では、なぜ法律でそこははずして自主交渉にまかせているのかというと、やはり法は そこまでのものを予定してない。 ○吉宮委員  私は給与以外のさまざまなものの量、能力は落ちるといっているのです。 ○奥山委員  考え方は一緒じゃないですか。 ○吉宮委員  差はあっても落ちることをなぜ、いちいち落ち方がひどい人と軽い人と分けなければ いけないかと言っているのです。怠けているなら別だけれど、そういうことではないじ ゃないかと言っているのです。 ○横溝分科会長  100が95ならいいだろうと、それが50になったらそれは企業側の負担として能率低下と 見ないのは不都合だ、みたいなことをおっしゃったのですよね。そうすると限界線をど こに置くかというのが。 ○奥山委員  さっきから、それを言っていて。 ○今田委員  感覚はわかるけれど論理が。 ○横溝分科会長  境界線を置くことが可能かどうか。 ○奥山委員  それは感覚じゃなくて論理の問題です。 ○今田委員  それは逆です。なぜここに線を引くかの論理を言っているのです。 ○奥山委員  線を引けないからこそ、微妙な問題で議論しなければいけないと言っているのです。 数字を出したのは、あくまでわかりやすい例を出しただけで、つまり5%しか落ちてな い人と半分も落ちている人を同じに扱うというのはかなり難しい問題ではないかという だけの話なのです。  だから、吉宮委員とか今田委員みたいに、そこはスパっと割り切って、全部まとめて やれということも、当然一つの理屈だと思っています。でも、私の頭の中では、それは 少し分けて考える必要があるのではないかと思います。では、どこで線引きしたらいい かというと、それはわかりません。  それをうまく立てられたら、それは一番良いことだと思っているのですが、それを一 緒にするのはちょっと難しいと思うのです。 ○今田委員  実行上難しいという話と、それだけ違うのに同じお金を払うというのは企業側として はできないという感覚の問題と論理の問題とは別だと思うのです。論理としては、出産 に起因した問題なので、5%の人も10%の人も同じ原因によるものなのだから、それに 線引きをするとするならば、何らかの公正な論理が必要だと思うのです。「ちょっと困 るから何か考えましょう。5%だったらいいか、10%だと、いやこの辺で手を打ちまし ょう」その論理は、やはり通用しないと私は思います。先ほどから言っているのは、そ れだけなのです。 ○奥山委員  そういう事を言っているわけではないのです。先ほどの議論なのですが、要するに労 働能率が落ちることによって、出てくる不利益をどちらが負担すべきかといったら、そ れは使用者が負担すべきだという話ですが、それだったら、妊娠・出産による不就労に よる賃金上のマイナスの負担をどちらが持つべきかといったら、この場合は使用者が持 つべきだ、当然労働者の責めに帰すべき理由による休業ではないのだから、ということ にならなくてはいけないでしょう。それが論理の視点でしょう。でもそこは、今田委員 も吉宮委員も必ずしもそう思っていらっしゃらないでしょう。それは、私から言うと逆 におかしい。わからない。  なぜ労働能率の点だけ、労働能率が落ちるところだけ全く使用者の負担にして、別に 私は使用者側の味方をしてそんな議論をしているわけではないですよ。誤解のないよう に言っておきますが、あくまでも理屈の理論ですよ。そこは使用者側・契約当事者の一 方に負担させるべきで、不就労の場合には、必ずしもそういう議論にはつながらないと いうところの方が、私からすればすごく論理的におかしい。そう思いませんか。 ○吉宮委員  有給にしろと言いたいですよ。 ○横溝分科会長  奥山委員の理屈はわかるのですが、現実に制度としてどこに算定の境界線をおくかと いうのが。 ○奥山委員  もちろんそうです。もしそれが難しければ、50%落ちても使用者の負担にしようとい う考え方があってもいいわけですし、私はそれを否定しているわけではないです。で も、そこのところは理屈で考えても違うのではないかと言っているだけなのです。 ○吉宮委員  休業は測れます。休業期間が何日間かというのは測れます。 ○奥山委員  労働能率の低下は測れないから、全部一緒にしてしまおうということですか。 ○吉宮委員  労働能率が落ちるというのは、どこで測れるのですか。 ○奥山委員  それは難しいです。 ○吉宮委員  だから、できないでしょうと私は言っているのですよ。 ○奥山委員  労働能率の低下が測れないから、全部ひとまとめで。 ○吉宮委員  労働能率は落ちるのです。そこを認識しておかないと。妊娠・出産した方は平均で値 はこのレベルで、それよりも落ちたから、平均以下だから、あなたの責任だというふう に言えないと思うのです。 ○奥山委員  それは難しいと思います。 ○吉宮委員  私は測れないと思う。 ○横溝分科会長  岡本委員、挙手なさいましたか。 ○岡本委員  今の吉宮委員の意見のように、測れないと思うのです。少なくとも、そういう査定に しても昇進にしても、いわゆる査定をするのは経営者です。私たち労働者がその査定を するということ、自分が自己申告をして認められるということではないわけですから、 そういう意味で査定というのはものすごく曖昧だし、納得性はなかなか難しいわけで す。ですから測れないもので、まして経営者が決めていくものに対して言えば、先ほど からの議論の中で吉宮委員が言ったような形でいっていくしかない。つまり、休業はわ かるわけですから。  ノーワークノーペイという原則の考え方は、ある意味理屈としては理解しやすいので すけど。正直言うと、何か聞いていてよくわからなくなってしまいました。 ○片岡委員  私自身は、先ほど調査結果を少しご紹介いただいたところで、いわゆる不就業期間を 就業してきたものとしてみなすという、基本的な考え方をそこに置くことが、まず今回 の妊娠・出産にかかわる不利益取扱いの禁止にとって、まず一番重要だと考えますの で、それは休業あるいは能率低下というか部分休業も含めて、それ自体を保護という枠 組みの中で差別とみなさないという基本的な考え方に立てば、どの場合でも不就業期間 を就業したものとしてみなすと考えるべきだと思います。  先ほど川本委員が公平性とおっしゃったことについて、今田委員の考えに全く同感で す。仮に同じ土俵に立って、公平性で物事を判断するということは当然あると思いま す。そのときに男女ではないとか、正社員であるなしは問わないとかよく言われます が、そもそもやはり妊娠・出産機能というものは、単純に言えば、男性にはない機能と いうことで、そのことを保護として差別の根拠にみなさないというとき、男性とどう扱 いを公平にするかということで言えば、それ自体それに伴う不就労や仮に能率低下があ るというお話がありますので、であっても、それを不利益な取扱いの根拠にすること は、公平な扱いではないと思います。  併せて育児休業との、先に育児休業の議論が不利益取扱いの禁止の中では議論されま したので、それが一つの根拠を参考としてこの右側の表に書かれておりますけれど、そ もそも育児休業ということを妊娠・出産機能と同等に考えて、これを参考にするかとい うことを考えますと、そうではない。育児休業の場合は、例えば男性が取得し女性と交 替で取得をすることで、就業継続の可能性をシェアしたり、あるいは場合によっては、 先ほどから待機児童ゼロ作戦とか、さまざまに少子化対策を強化するという話がありま したけれど、社会で受け入れて、それをカバーすることで公平な処遇を受ける努力をす ることが育児休職について言えると思いますけれど、妊娠・出産を起因とするその休暇 の期間やあるいはそれによる労働能率の低下ということを考えることは、育児休業の代 替可能な方法が、妊娠・出産機能にはありません。それ自体、もちろん産む、産まない は女性の中にもその選択の違いは生じますけれど、産む人について言えば、どうしよう もない自分自身では代替の手立てを立てようがない機能です。就業継続をするものとし てみなさない限り、妊娠・出産を保護するということが少子化の対応からも具体的に実 体的に担保することにはならないと思います。  それと、パブリックコメントに寄せられた個別の意見を見ますと、有期や派遣で働く 人はそれ自体が課題になったとき、均等法や労働基準法の措置で担保されているかどう かという以前に、更新の拒否や、これは今後の議論の中の具体的な課題にはなると思う のですが、労働条件の不利益変更が一方的に行われる、あるいは妊娠告知をした途端に 仕事先が変えられるとか、派遣労働者を中心に、いわゆる妊娠リストラが存在している というような、どういうことを言っているのか具体的な中身は書かれていませんでした が、想像はできます。  こういう事柄が有期、派遣問題の中で起きているときに、ここで妊娠・出産の機能を 巡ってそれをどう位置付けるかということを、こういう状況も考えて、この場で決めて いく必要があると思います。その点からも、不就業期間を就業したものとして妊娠・出 産機能に起因するものについてはみなすという基本的な考え方を、この時代、状況やこ の間の議論や問題提起を受けてすべきだと思います。 ○横溝分科会長  また続いて議論するということで、本日はこれで終わりにさせていただきたいと思い ます。本日の署名委員は、吉宮委員と吉川委員の両委員にお願いしたいと思います。よ ろしくお願いいたします。  次回の予定について事務局からご説明よろしくお願いいたします。 ○石井雇用均等政策課長  次回は9月27日火曜日、午後1時から、場所は三田共用会議所大会議室で、議題は本日 に引き続き、「男女雇用機会均等対策について」を予定しております。最寄りの駅は麻 布十番でございまして、三田の共用会議所でございます。お間違えないようによろしく お願いいたします。 ○片岡委員  1点だけすみません。パブリックコメントの概要が今日示されましたけど、概要とし て示されたということと、もう一方で、集まった具体的な意見の中で、今後の議論の中 で参考にすべきものとか、今までの審議会で出されていない観点等の意見があると思う のですが、そういうものは今後、逐次紹介をしたり、出していくという予定はあるので しょうか。それともこの概要をもって審議会への反映となっているのでしょうか。そこ をお聞かせください。 ○石井雇用均等政策課長  あらかじめ申し上げたと思いますが、取りまとめたものを当分科会に報告するという ことで予定しておりまして、やはり予想通り件数も相当ございましたので、審議会への 意見募集の取りまとめは、本日これで終わりでございます。ただ、先ほど私の説明の中 でも触れさせていただきました通り、全てのご意見につきまして分科会の委員の方には 全部をお示ししているところでございます。 ○横溝分科会長  よろしいですか、片岡委員。 ○片岡委員  わかりました。私たちがそれをどう使うかという点で、という意味ですね。 ○横溝分科会長  では、本日はこれで終わりにしたいと思います。どうも長時間ありがとうございまし た。 照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)