05/09/14 第21回社会保障審議会年金数理部会議事録


社会保障審議会　年金数理部会（第２１回）議事録

日　　時：平成17年９月14日（水）15：00～16：21
場　　所：全国都市会館第１会議室
出席委員：堀部会長、都村部会長代理、栗林委員、近藤委員、田村委員、林委員
　　　　　山﨑委員
議　　事
　　　　１．平成16年財政再計算結果等の聴取について
　　　　　　　－私立学校教職員共済制度－

○田村首席年金数理官
　定刻になりましたので、ただいまより、第21回社会保障審議会年金数理部会を開催
させていただきます。
　審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第
のほか、
「平成16年財政再計算結果等について-私立学校教職員共済制度-」でございます。
　配布資料は以上でございます。
　次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。
　本日は、宮島委員、渡辺委員が御都合により御欠席とのことでございます。
　御出席いただきました委員の方が３分の１を超えておりますので、会議は成立してお
りますことを御報告申し上げます。
　それでは、以降の進行につきましては、堀部会長にお願いします。

○堀部会長
　昨日に引き続きましてお集まりいただきましてありがとうございます。
　本日は私学共済の平成16年財政再計算結果等についての報告を聴取いたします。そ
のため文部科学省から伊藤室長に御出席していただいております。ありがとうございま
す。
　それでは早速、私立学校教職員共済制度の平成16年財政再計算結果等についての報
告を聴取いたします。

　　　　　　 （文部科学省・私立学校振興・共済事業団報告者席へ着席）

○堀部会長
　今回の財政検証のために、文部科学省にお願いをして、昨年の年金数理部会で決めた
事項に従って、検証分析に必要な資料や本日の説明資料を作成していただきました。お
忙しいところ作業していただき、ありがとうございました。
　それでは早速説明をお願いしたいと思います。

○伊藤私学共済室長
　文部科学省で私学共済を担当しております伊藤でございます。よろしくお願いいたし
ます。
　本日は、日本私立学校振興・事業団から職員を同席させております。どうぞよろしく
お願いします。
　それでは、早速ですが、私学共済年金の財政再計算の結果について説明をいたします。
　資料の１ページですが、１．財政再計算の基本方針のところ、財政再計算の前提とな
る制度改正が昨年の法律改正により実施され、または実施の予定です。この制度改正に
ついては、（１）のとおりとなっております。項目は全部で13項目ございますが、基
本的には他共済等と同様ですので説明は省略させていただきます。ただし、このうち、
項目の８番目、70歳以上在職者に対する年金支給基準の見直しについては、70歳以上
の在職者に対して、現行の65歳以上70歳未満の在職者と同様の年金の支給調整措置の
適用等を行うものですが、共済年金の中では、私学共済のみの制度改正でございます。
この改正については、厚生年金の改正に準じて行いました。
　次に（２）経済前提の考え方ですが、賃金上昇率、物価上昇率、運用利回り等の前提
については、厚生年金等他制度の財政見通しにおける前提との整合性を図るために他制
度と共通のものといたしました。
　また、私学共済年金の給付水準については、従来から厚生年金の給付水準との均衡を
維持してきたという経緯も踏まえ、今回導入したマクロ経済スライドに係るスライド調
整率、調整期間については、厚生年金と同一のものといたしました。
　続きまして（３）加入者数の前提についてですが、加入者数の将来見通しについては、
厚生年金等他制度と同様に、将来推計人口を推計の基本といたしました。
　具体的には、学種毎の加入者数を各年の学齢対象人口の減少に応じて減少させました。
この学齢対象人口は、国立社会保障・人口問題研究所による日本の将来推計人口、平成
14年１月推計における中位推計に基づいております。
　ただし、既に学齢対象人口は減少しているにもかかわらず、平成16年度現在、依然
として私学共済年金の加入者は増加しているという状況に鑑み、平成17年度から平成
19年度までの３年間については、平成16年度末実績見込みの加入者数で一定として計
算を行いました。
　ちなみに平成17年３月末現在の加入者数は44万 1,500人超で、平成16年３月末現
在の加入者数と比較して約 7,100人ほど増加しており、今年度においても増加傾向が
続いているという状況です。
  なお、このような見通しとした理由については、前回(平成11年)の財政再計算にお
いて、学齢対象人口比例モデルに基づいて、平成15年度末に加入者数は減少すると見
込んだにもかかわらず、実績では増加し、見込みと実績が約１万 2,000人ほど大きく
乖離したということも考慮したものです。
  また、平成19年度までの３年間を一定と見込んだ理由としては、中央教育審議会の
予測で、平成19年度に大学・短大の全入時代が到来すると見込まれていること。それ
から、平成19年度においては、いわゆる団塊の世代の退職時期が到来するということ
で、私学の教官については定年年齢が高いので直接すぐに影響はないかもしれませんが、
事務職員等の減少も考えられるということも考慮して、平成19年度を加入者増加のピ
ークとして見込んでおります。
　平成20年度以降における具体的な予測加入者数の算定ですが、資料５ページの表の
下に「加入者数の見通しの推計方法」として書いておりますが、平成20年度以降の加
入者数については、男女別に平成19年度の学種別加入者数の当該学種の学齢対象人口
に対する割合を算出して、その割合を平成20年度以降、各年度の当該学種の学齢対象
人口に乗じて、各年度の加入者数を算出しております。
　資料５ページの上の表が使用した各学種別の学齢対象人口を示しております。
　なお、学種別の対象年齢については、この表の学種の下のところにございますが、例
えば大学であれば18～21歳、短大であれば18～19歳としております。
　また、資料５ページのこの表については、単位を 1,000人単位としておりますが、
実際の算定では１桁まで推計人口をそのまま使っております。
　これを基に算定しました男女別の加入者数の見込み結果が、４ページの表になります。
上段が男性の見通し、下段が女性の見通しということでございます。
　これを合算した全体の加入者数の見通しが、３ページでございます。
　少し細かくなりますが、資料５ページに戻っていただきまして、具体的な算出につい
て若干説明させていただきます。資料５ページの一番下のところに【算出例】と書いて
おりますが、これは平成20年度における大学の加入者数（男性の場合）をどのように
計算したかというものです。まず、平成19年度加入者数ですが、これは４ページの上
の表の大学の欄の平成19年度というところを御覧いただくと、9万 9,129人となって
おります。これを平成19年度の大学学齢対象人口、資料５ページの上の表の19年度の
大学のところですが、534 万 2,010人で除して割合を算出して、これを平成20年度の
大学の学齢対象人口の520 万人7,373 人に乗じて得た数値を平成20年度の大学にお
ける男性加入者数として見込んでおります。それが資料４ページの上の表の大学の平成
20年度のところの9万6,631という数値となります。
　このように男女別、学種別に各年度の加入者数を算出したものが、資料４ページの上
下の表でございます。
　次に、２ページについて説明をさせていただきます。（４）財政方式についてですが、
従来は財政再計算時点で、将来にわたり一定の保険料率を設定して収支の均衡を図る平
準保険料方式をとっておりましたが、今回の財政再計算では、他制度と同様の段階保険
料方式といたしました。
　この段階保険料方式を採用することにより、掛金率の引上げ幅と最終掛金率の組み合
わせが複数通り設定可能となり、平成13年３月の閣議決定事項の保険料引上げの前倒
しにも対応できるようになりました。
　また、私学共済年金の給付水準については、マクロ経済スライドを導入する等、厚生
年金の給付水準の調整と同様の措置を講ずることとしております。しかし、厚生年金と
は財政状況が異なっており、そうした中で、保険料水準、最終の掛金率を設定すること
は困難であることから、従来どおり原則５年毎の財政再計算を行い、保険料率を見直す
ということにしております。
　加えて、今回の財政再計算では、他制度と同様に、財政再計算時以降おおむね 100
年間の財政収支の均衡を図ることを前提とした有限均衡方式により計算を行い、厚生年
金と同様に積立度合が１となるように計算をしております。
  次に（５）給付水準や掛金率設定の考え方ですが、給付水準の設定については、先
ほど説明させていただいた資料１の（１）に記載した制度改正、（２）の経済前提を反
映したものです。
　今回の財政再計算結果に基づく掛金率の設定については、平成13年３月の閣議決定
において「私学教職員共済については、公的年金制度に係る共通部分についての費用負
担の平準化を図る見地から、次期財政再計算時からの保険料引上げの前倒しを行うべく
検討を行う」とされた趣旨を踏まえ、私学共済年金には厚生年金相当部分に加え、国共
済・地共済と同様に職域相当部分が設計されているということを勘案した合理的な範囲
内で、厚生年金よりも高い最終掛金率となるように掛金率の引上げを計画いたしました。
　まず、閣議決定を全く考慮しない、純粋に私学共済年金の安定的な運営を考慮して掛
金率を設定した場合の計算をいたしました。これについては、６ページに階段図でお示
ししておりますが、この表の一番右側に細い線で書いたものです。具体的には、平成
16年度における掛金率、私学共済の場合は、千分比 104.6ですが、これを毎年1000
分の2.31ずつ引き上げ、最終掛金率は、平成61年度（2049年度）に1000分の 207
となります。
 この最終掛金率ですと、厚生年金の最終掛金率より1000分の24、国共済及び地共済
の最終掛金率の見込みよりも1000分の19高くなります。ちなみにこの表の、左側の方
の細い線が厚生年金、やや太い線が国共済・地共済の引上げの計画でございます。
  このように、全く前倒しを考慮しない場合は、後世代の負担が大きくなるというこ
ともあり、閣議決定も念頭において、どこまで保険料率の引上げの前倒しを行うべきか
ということを検討いたしました。この検討に当たっては、後世代の負担、私学共済年金
財政の安定、学校法人・加入者の適正な負担等について議論を重ねました。結果として
は、私学共済年金と同様に職域相当部分が設計されている国共済・地共済の将来の引上
げ幅と同様の、1000分の3.54ずつ毎年引き上げることにいたしました。なお、この引
上げ幅は、厚生年金の保険料率の引上げ幅と同様です。
  これが資料の６ページの太い濃い線になり、具体的に申し上げると、1000分の 
104.6である掛金率を平成17年４月以降、毎年1000分の3.54ずつ引き上げます。こ
れでいくと、最終掛金率は平成39年度（2027年度）には1000分の 185になる見込み
です。
  この最終掛金率は、厚生年金より1000分の２高く、国共済及び地共済よりも1000
分の３低いことになり、後世代の負担は他制度とほぼ同様となっております。
　学校法人、加入者の掛金率引上げ幅は、前倒しを全く考慮しない場合と比較すると、
約1.5 倍なるわけで、決して小さい負担ではありませんが、後世代の負担軽減や閣議
決定への対応等を考慮した結果、これであれば理解を得られるぎりぎりのところという
ことで、このような結論に至ったものでます。
  なお、先に申し上げたとおり、原則として５年毎に再計算を行う予定ですので、５
年後に改めて財政再計算を行い、その結果を踏まえて、次期財政再計算時以降の掛金率
を見直すということにしております。
　８ページの基礎数・基礎率以降については、日本私立学校振興・共済事業団の数理統
計担当から説明させていただきますので、よろしくお願いします。

○堂前数理統計室長
　日本私立学校振興・共済事業団数理統計室の堂前でございます。引き続き説明させて
いただきますので、よろしくお願いいたします。
　それでは８ページから説明させていただきます。８ページは基礎数・基礎率の一覧を
掲載したもので説明は省略させていただき、９ページを御覧いただきたいと思います。
　基礎数・基礎率に関して特記すべき事項ですが、今回の再計算では基礎数・基礎率を
性別に作成してございます。また、加入者、年金者及び待期者などに関する基礎数につ
いては、平成15年度末における実績を基にしてございます。
　年金数理部会から御指摘いただいた事項ですが、待期者について、前回の再計算まで、
年金支給開始年齢に達した者を全員年金受給者としていたことから、実績の年金受給者
が大きく下回ったことを踏まえ、今回、再計算では年齢別年金請求割合を乗じて、待期
者数をおおむね30％に割り落とすことといたしました。また、前回再計算では複数の
加入者期間を有する待期者については、それぞれの期間につき待期者一人としてカウン
トとしていたが、今回再計算では複数期間を持つ待期者の期間を合算して待期者１人と
してカウントしました。
　その次の「・」ですが、給与指数、年金者消滅率等の基礎率については、平成13年
度から15年度の３年間の実績等を基にしました。また、総脱退力及び初任年齢分布に
ついては、平成14年度の65歳から69歳の適用拡大導入時の影響に配慮し、平成15年
度のみのデータにより作成しました。
　年金者消滅率については、将来生命表における平成15年の死亡率に対する将来の各
年の死亡率の割合を乗じることにより改善を見込んでおります。
　なお、年金者消滅率の改善については、今回の再計算から織り込んだものでございま
す。
　在職支給停止における70歳以上者の支給停止率については、実績がないため、私学
共済の70歳以上の短期給付適用者実績、70歳になると長期給付の適用は外れますが在
職していると短期給付は適用になりますので、その実績を基に在職率を作成しました。
この在職率に60歳台後半の在職支給停止者の年金額停止割合を乗じて算定したもので
す。
　次の10ページは、基礎数の元となる統計の概要と算定方法等でございます。
　前回再計算までは、男女の合計で作成しておりましたが、今回の再計算から性別に作
成しております。また、平成15年度末における全数統計実績を基としております。加
入者数の一番上のア欄を御覧いただくと、性別、初任年齢グループ別、加入年数別とご
ざいますが、初任年齢グループとは、右のイ欄の10グループのことでございまして、
例えば19歳以下の新規加入者を19歳グループ、20～24歳の新規加入者を22歳グルー
プ、25～29歳の加入者を27歳グループ、以下５歳刻みで、最後の63歳グループは60
歳以上となっていますが、実際は原則70歳でみなし退職しますので、60～69歳のこと
です。
　私学共済の場合、後ほど実数で申し上げますが、初任年齢が幅広く分布しておりまし
て、総脱退力や給与指数等の基礎率がグループ毎に異なる特性を持っていることから、
加入者関係の基礎数や関連の基礎率をグループ別に作成して計算しております。
　基礎数の具体的な数値として、16ページを御覧いただきたいと思います。年度末加
入者の初任年齢グループ別、加入年数別分布でございます。上の男性の表の52歳グル
ープと57歳グループにぽつんと１人ずつ加入者がおりますけれども、52歳グループは
51歳加入の70歳者、57歳グループは55歳加入の71歳者で、いずれも外国人で、年金
受給資格がなく長期給付資格を継続している例外的な方です。ほかにも２人ばかりその
ような方がいらっしゃいます。
　その他の説明は省略させていただき、22ページをお開きいただきたいと思います。
　基礎率の元となる統計の概要と算定方法等でして、９ページで触れました特記すべき
事項も記載しておりまして、いくつか読み上げながら説明させていただきます。基礎数
と同様、今回再計算から性別に作成しております。
　上の初任年齢分布ですが、ウの設定方法で、平成14年度の65歳～69歳の適用拡大
導入時の影響に配慮し平成15年度末実績から作成しました。14年度は65歳～69歳の
適用外者が１万 6,000人ばかり入ってくるので、使うのがあまり適当でないというこ
とで、直近実績だけを用いてございます。
  その右の欄ですが、初任年齢分布の推計における使用方法は、新規加入者数に分布
率を乗じることにより初任年齢グループに振り分け、初任年齢に加入年数を加えたもの
を年齢としております。
  下から２段目の総脱退力ですが、ウの欄、粗整値は加入当初に顕著な特徴をもちそ
の曲線もスムーズであることから原則的に粗整値を使用しております。粗整値が使用可
能な加入年数以降については、二次関数により補正したものを加味して作成しておりま
す。また、初任年齢に幅があることから各初任年齢グループにおける70歳到達年数を
考慮しております。例えば22歳グループですと、20歳で70歳になる者と24歳で70
歳になる者がいるので、その辺を考慮しています。
　総脱退力のカ．前回との変更点ですが、性別に作成するとともに、粗整値作成の元と
なる統計を平成８年度から10年度までの３年平均から、平成14年度の65歳から69歳
の適用拡大導入時の影響に配慮し、平成15年度の直近１年に変更しました。14年度以
前は65から69歳の脱退が原則的になかったためです。
　次の23ページ中段の給与指数ですが、基準となる初任年齢グループ19歳で、加入年
数０年の者の標準給与月額を１として指数化し、粗整値を可能な範囲で使うとともに、
対数関数により補正したものを加味して作成しております。
　24ページ、今回の再計算で初めて入れたものですが、一番上欄の年収の対月収比率
調整率でございますけれども、左から３番目のオ欄、年収の対月収比率は、性別、初任
年齢グループ別、加入年数別につくっているものですが、その加入者全員分の低下傾向
を勘案し、平成16年度の比率がおおむね1.35、以降１年毎に0.01ずつ逓減させ、平
成21年度に1.30、以降一定となるように設定しております。
　その右欄ですが、年度末の給与に年収の対月収比率とその調整率を乗じ、年度末の総
報酬を算出しております。
　その下欄ですが、退職共済年金消滅率等ございますけれども、死亡率の改善を行って
いるものです。
　33ページを御覧いただきたいと思います。初任年齢分布の具体的な数値を掲載して
おりますけれども、男の新規加入者の場合、22歳グループから37歳グループに多く分
布しておりますが、下から２行目、63歳グループも15％近くを占めております。これ
は国公立学校を退職し私学に再就職する方が多いためと思われます。
　その右の女の新規加入者は、22歳グループに全体の５割以上が分布してございます。
　36ページ、総脱退力でございます。上段の男の表を御覧いただくと、初任年齢グル
ープ毎に脱退の仕方に相違が見られます。特に上の方でかなりグループ別にやめ方が違
っており、これは基礎率の特性が異なっている一例でございます。
　なお、70歳で全員が脱退するとして、２といたしておりまして、例えば、右から２
番目の57歳グループですと、57歳グループなので、最小加入年齢が55歳で、加入年
数15年のところで70歳となるので２となります。本来ですとそれでよろしいのですけ
れども、16年以降も２としているのは、先ほど16ページで申し上げた、70歳以上で年
金受給資格がなく、長期給付の資格を継続している者が、計算上強制的にここで脱退さ
れてしまうので、以降も同じ２を便宜上入れております。このような例外を除くと、範
囲外に入っているものは計算上未使用でございまして、給与指数とも同様でございます。
　47ページを御覧いただきたいと思います。将来推計の全体的なフローチャートでし
て、点線で区切ってございますけれども、左欄の加入者関係では、データ年度末の加入
者数に新規加入者数がプラスされ、脱退者数がマイナスされて当年度末の加入者数とな
ります。
　給与についても同様で、これから掛金収入等が算出されるという、そのような仕組み
になっておりまして、右欄の年金者・年金待期者関係では、データ年度末の年金者数に、
先ほどの脱退者からの新規裁定者数がプラスされまして、主として死亡により消滅者数
がマイナスカウントされ、当年度末の年金者となっていく。
　年金額も同様でして、これから年金額が算出され、それに基づき給付額等が算出され
ると、そのような仕組みでございまして、他制度と恐らく似通っていると思われます。
　２年度目以降は、この繰り返しでして、今回平成 112年度まで計算してございまし
て、また、年金待期者も年金者関係と同様の流れで掲載してございます。
  次の48ページ御覧いただきますと、年次別推計の算定式レベルでの計算過程の骨格
を示したものでございまして、経過措置などは全部外したものでございまして、ざっと
飛ばしていただきまして、この式が数ページまいります。
　55ページを御覧いただきたいと思います。推計方法に関して特記すべき事項でござ
います。先ほどの伊藤室長の説明と若干重複部分がございますけれども、まず、有限均
衡方式導入への対応では、他制度と同様に財政再計算時以降おおむね100年間の財政収
支の均衡を図ることを前提とした有限均衡方式による計算を行うこととしてございます。
  なお、モデルによっては、最終の平成 112年度における積立度合が１を上回ってい
ますが、これは最終掛金率を決定する際、小数点以下を切り上げて千分率で整数にまと
めていることによるものでございます。
  国庫負担割合の引上げでございます。年金改正法に基づき、平成21年度までに２分
の１への引上げを完了することとしてございます。平成16年度は３分の１に加え、2.6 
億円を国庫負担、平成17年度から20年度までは３分の１に加え1000分の11を国庫負
担という前提で計算してございます。
　その他、特記すべき事項ですけれども、基礎年金拠出金単価及び年金保険者拠出金に
ついては、厚生労働省より提供されたものを用いて計算しております。
　加入者及び年金者の将来見通しについては、各年度性別に人数等を算定し、それらを
合算しております。また、財政見通しについては、給付額等の支出額や掛金以外の収入
額を推計した上で、必要な掛金率を設定し、掛金収入を推定して作成しておりますが、
これらの支出額・収入額についても、運用収入等性別に算定できないものを除き性別に
算定し、それらを合算して推計しております。
　最後の「・」ですが、退職関係の年金者において、前回再計算までは給付水準に着目
し、20年以上・未満で３階部分の乗率が違うということと、配偶者加給がつく・つか
ないという理由で、加入者期間20年以上・未満で退年相当・通退相当を区分していま
したけれども、今回の再計算では、なるべく他制度と合わせようということで、他制度
と同様に加入者期間が25年以上・未満で、経過的に20年から24年を含めましたけれ
ども、退年相当・通退相当を区分して計算しております。
　次の56ページを御覧いただきたいと思います。ここから将来見通しの推計結果に関
する資料でございまして、このページは加入者のほか被扶養配偶者数や給与総額の見通
しを示したものでございます。
　次の57ページへ行っていただきまして、年金種別毎の受給者数の見通しでございま
して、先ほど若干申し上げた国公立学校の退職者が私学に再就職し数年で退職する者が
多いことや、比較的若いうちでの短期間退職者が多く、その者が支給開始年齢に達し、
年金者となることから、通退相当の受給者数が各年度とも非常に多く退年相当を大きく
上回ってございます。ただし、この者の１人当たり年金額は低いことから、次ページの
年金額ですと、58ページ、通退相当が退年相当を下回ったものとなってございます。
　60ページを御覧いただきたいと思います。伊藤室長がグラフで御説明申し上げまし
た掛金率引上げの前倒しを行った場合のその財政見通しでございまして、収入・支出等
の詳細を掲載したもので御覧のとおりですが、表のすぐ上に、スライド調整期間終了年
度時点の所得代替率が48.7％と厚生年金の50.2％を下回ったものが掲載してあります。
これは所得代替率算定に用いる分母の男子の手取り総報酬が私学共済の場合、厚生年金
より高く、男女分けると非常に私学共済は高うございます。女性はかなり低いですけれ
ども。分子には職域部分があるものの総報酬の高低と関係なく算定される定額の基礎年
金２人分が入っていることが要因と思われます。男子の標給月額ですけれども、45万
円を超えております。それに対して女子は29万円強、そのような形で、学種による差
がいろいろございますのでトータルではそのようになってございます。
　64ページの財政指標の見通しを御覧いただきたいと思います。一番左、年金扶養比
率ですが、加入者数の減少に伴い低くなっていくものの、退年相当の年金者数も減少す
るため2066年度から逆に高くなっております。
　その右の総合費用率ですが、加入者数の減少に伴い高くなり、加入者数の減少で給与
総額の増加度合いが少し小さくなる。分母がちょっと小さくなるということで、年金者
数の減少、今度は支出の分子が低くなっていくこともありまして、年金扶養比率とほぼ
逆の傾向となっておりまして、独自給付費用率もおおむね同様の傾向で推移してござい
ます。
　その右、収支比率でございますけれども、掛金率の引上げによる収入増で、2027年
度あたりまで低下していきますけれども、最終掛金率到達後は支出の増加により高くな
っていきます。積立比率はおおむね収支比率は逆の傾向となってございます。
　73ページまで飛んでいただきたいと思います。財源と給付の内訳でございますけれ
ども、給付合計は26.7兆円、うち過去期間に係る分が10.5兆円、将来期間に係る分が
16.2兆円となっております。
　財源の合計は26.7兆円、うち国庫負担 4.1兆円、積立金から得られる財源 3.1兆
円、残りの19.6兆円は掛金収入でございまして、括弧内の掛金率引上げ前の 10.46％
に相当する分、12.4兆円との差、7.2兆円が掛金率引上げ相当分となってございます。
  次の74ページ、所得代替率の見通しでございまして、マクロ経済スライド調整率に
ついては、基準ケースだけでなく、他のケースにおいても厚生年金と同一の調整期間と
しておりまして、スライド調整期間終了年度の所得代替率を申し上げますと、基準ケー
スでは、先ほど出ておりますけれども、2023年度に48.7％。
　１の加入者数の見通しを変更した場合のアの少子化改善ケースでは、2020年度に
50.1％。
　イの少子化進行ケースでは、2031年度に45.1％。
　２の基礎年金拠出金単価を低位推計に基づくものに変更した場合は、2023年度に
48.7％、基準ケースと同じでございます。
　３死亡率の改善を見込まない場合では、2015年度に52.9％。
　４経済的要素を変更した場合で、アの経済悪化ケースでは、2027年度に47.7％。
　イの経済好転ケースでは、2023年度に49.4％となってございます。
　下の枠に変更する前提についてということで一覧で記載しております。
　次の75ページ、ケース毎の掛金率の見通しを御覧いただきたいと思います。当面の
成熟度が厚生年金に比べ低いことから、スライド調整の効果は厚生年金より小さいと考
えております。したがいまして、掛金率引上げ幅を同率の 0.354％とすると、加入者
数の見通し等の変更が財政にプラスの影響を及ぼす場合はスライド調整期間が短くなる、
つまり給付水準が高くなるものの最終掛金率は低くなり、逆に財政にマイナスの影響を
及ぼす場合はスライド調整期間が長くなる、つまり給付水準が低くなるものの最終掛金
率は高くなるわけです。スライド調整の効果が厚生年金と同じなら最終掛金率は基準ケ
ースと同率になると思いますけれども、そのようにはなっておりません。加入者数が増
加すれば、年金財政にとってはプラスの要因となり、逆に加入者数が減少すれば、マイ
ナスの要因となります。加入者数を減少させる場合でも、減少の度合いがより大きいケ
ースほど財政的に一層厳しいものとなります。
　表を御覧いただきますと、１加入者数の見通しを変更した場合、アの少子化改善ケー
スは、基準ケースに比べスライド調整期間が３年短いものの最終掛金率は18％となり、
基準ケースを 0.5％下回っております。
  逆にイの少子化進行ケースは、スライド調整期間が基準ケースより８年長いにもか
かわらず最終掛金率は19.9％となり、基準ケースより 1.4％高くなっております。
 ２ 基礎年金拠出金単価を低位推計に基づくものに変更した場合は基準ケースに比べ
最終掛金率が 0.2％高い18.7％となっております。
  また、再計算上見込んでいた将来の退職共済年金消滅率等の改善を見込まないこと
とした３の場合は、年金者がより早く死亡し、給付が基準ケースに比べ減少するため、
最終掛金率が 0.7％低い17.8％となってございます。
  ４経済的要素を変更した場合ですが、新規裁定時から67歳に達する年度までは、賃
金上昇率により毎年年金改定をしていますので、無論スライド調整率は変わりますけれ
ども、年金改定をしていますので、運用利回りから賃金上昇率をマイナスしたものを実
質的な運用利回りとしますと、基準ケースは 3.2％－2.1 ％で 1.1％、アの経済悪化
ケースは、3.1％－ 1.8％で 1.3％、イの経済好転ケースは、3.3％－2.5％で0.8％と
なり、実質的な運用利回りが高いほど財政上プラスになる、つまり基準ケースに比べ経
済悪化ケースはプラス、逆に経済好転ケースはマイナスになると思われます。
　また、68歳に達する年度以降は物価上昇率を基準として、同じようにスライド調整
はございますが、毎年年金改定をしており、３ケースともに物価上昇率は共通の１％で
すので、運用利回りから物価上昇率をマイナスした実質運用利回りが高いほど財政上プ
ラスになる。つまり基準ケース 2.2％に比べ、イの経済好転ケースは 2.3％でプラス。
逆にアの経済悪化ケースは 2.1％でマイナスになると思われます。
 スライド調整の期間の相違もございますけれども、アの経済悪化ケースでは、実質的
な運用利回りの基準ケースに比べてのプラス分が実質運用利回りの基準ケースに比べて
のマイナス分を上回ったと思われることから、基準ケースに比べ最終掛金率は 0.2％
低い18.3％となっています。
 また、逆にイの経済好転ケースは、実質的な運用利回りの基準ケースに比べてのマイ
ナス分が実質運用利回りの基準ケースに比べてのプラス分を上回ったと思われることか
ら、基準ケースに比べ最終掛金率は 0.5％高い19％になっております。
  これらのケースを用いた加入者数の見通しや受給者数の見通しのまとめを次の76ペ
ージと77ページに掲載してございますが、76ページの加入者数の見通しにおける2005
年度に対する2100年度の割合を申し上げますと、基準ケースでは、45.6％、少子化改
善ケースでは55.1％、少子化進行ケースでは、28.4％となっております。
  84ページを御覧いただきたいと思います。試算 No.5と書いてあるのが、永久均衡と
した場合の所得代替率の見通しでございまして、2029年度に46.9％となっております。
  なお、試算 No.6は、先ほど申し上げました基準ケースでございまして、御覧のとお
りでございます。
  次の85ページを御覧いただきたいと思います。
  ここでは今回改正の主な３つの項目、マクロ経済スライドの導入、有限均衡方式へ
の変更、基礎年金拠出金に対する国庫負担割合の引上げの最終掛金率への変化を掲載し
ております。基準ケース試算No.６の最終掛金率18.5％は、試算No.５の永久均衡とした
場合の最終掛金率19.0％を 0.5を下回ったものとなってございます。この分が永久均
衡方式を有限均衡方式へ変更したことによる影響でございます。試算No.５の19.0％は
試算No.２の改正前制度、国庫負担２分の１の最終掛金率23.0％を4.0％下回っておりま
すが、この分がマクロ経済スライドの導入による影響でございまして、また、試算No.２
の23.0％はNo.１の改正前、国庫負担３分の１の最終掛金率26.3％を 3.3％下回ってお
りますけれども、この分が基礎年金拠出金に対する国庫負担割合を引き上げたことによ
る影響となってございます。
  また、その基となる86ページから飛んでいただきまして、89ページを御覧いただき
たいと思います。
  左から３段目の１の掛金率が基準ケースの掛金率でございまして、このうち職域部
分を除く掛金率を左欄に掲載してございます。
　また２は基礎年金拠出金相当の掛金率で、御覧のとおりでございます。
　９０ページの所見については、今回の財政再計算において、財政方式を平準保険料方
式から段階保険料方式に変更いたしましたが、年金改定費用等の相当部分を後代負担と
して予定する財政方式であることから、世代間の負担の公平性にできる限り配慮すると
ともに、平成13年３月の閣議決定事項である保険料引上げの前倒しにも対応するよう
保険料率（掛金率）を策定したものでございます。
　次の「・」ですが、将来にわたって給付費や基礎年金拠出金等の費用を確実に支払い、
年金財政の長期的な健全運営を図っていくためには、段階保険料方式に基づく掛金収入
の確保はもとより、積立金やその運用収入の確保も重要であり、金利の上昇が見込めな
い中で、安全性に配慮しつつ、より一層の効率運用に努める必要があると考えてござい
ます。
　最後の「・」で、加入者数の動向は年金財政に与える影響が大きいことから、財政再
計算における将来の加入者数の見通しに当たっては十分な注意を払う必要があり、今後
とも検討を要するものと考えてございます。
　最後のページ、91ページ、情報公開でございますけれども、財政状況については、
毎年度の決算数値を官報に公告するとともに、加入者向け広報誌に掲載してございます。
また、関係省庁、私学団体及び各都道府県（私学主管課）に対しまして、財政状況等を
掲載した私学共済制度統計要覧等を配布してございます。
　次の「・」でございますけれども、財政再計算結果及び掛金率の改定については、全
加入者にパンフレットを配付するとともに、全国71会場において、１月の下旬から２
月の１下旬にかけて、私立学校の事務担当者に対する説明会を開催し、周知を図りまし
た。記述しておりませんけれども、補足させていただきますと、掛金率改定に当たって
は、制度運営の根幹にかかわることなので、全国１万 4,000校近くの学校法人等や加
入者に周知を図る必要がございます。従来から掛金率改定等の重要事項については、学
校法人等への通知文や広報誌のみでなく、各学校の共済事務担当者を対象とした事務担
当者連絡会を開催して周知を行っております。北海道とか九州とか広域範囲については
複数の会場を設け、また、東京、大阪とか非常に多いところについては学種グループの
開催しております。
  ３つ目の「・」ですけれども、パンフレットの内容を私学事業団のホームページに
掲載し、一般の人々に対しても公開しております。
　長くなりましたけれども、以上でございます。

○堀部会長
　どうもありがとうございました。
　それでは、ただいまの説明に対して質問等よろしくお願いします。

○近藤委員
　男女別は前はなかったので、今度やっていただいて、本当にありがとうございました。
それで、実は高等学校、中学校、小学校、幼稚園について、幼稚園はこれでしょうけれ
ども、女の先生とか、職員はほとんど変わらないのでしょうけれども女性の先生が急激
に増加している気がします。そうすると、この加入者数についても当然女性が増えてく
る。それから年金受給者も当然女性が増えてくる。そうすると収支に影響してくるので
はないかと思うのです。だから、その辺の傾向を、せっかく男女別がとれたので、これ
からずっときちんと追いかけていただきたいと思います。

○堂前数理統計室長
　わかりました。ありがとうございます。

○田村委員
　先ほど説明の中で、通退相当の件数がすごく多く、その割に金額の方は少ないという
説明でしたね。新規加入者の年齢分布を見てもかなり年齢の高いところまで人数がある
わけですね。ということは、厚生年金などと同じように、再加入というのがいるのでは
ないかと思うのですね。その辺の取扱いは、ここではまだ考えてないようなんですけれ
ども、考える可能性というのはあるのですか。

○堂前数理統計室長
　それは重々承知しておりまして、今のところ、まだ統計表が開発できていなくて、そ
のようなことはしておりませんけれども、次回再計算に向けて、何とか再加入率という
のを作成しまして、改善を図っていきたいと考えております。

○田村委員
　もう一点なんですけれども、きのう地方公務員共済のヒアリングでいろいろ話題が出
たのですけれども、有限均衡方式について、積立度合を１にする場合の他に、地方公務
員共済では積立度合を１から４まで複数、２、３、４の場合を計算しています。それは
積立金レベルをどうするかというところの検討がまだできてないので、そうしたと言っ
ているのですけれども、私学の方はどうでしょうか。現在かなり積立水準は高いですね。
地方公務員共済より高いので、地方公務員共済と同じような事情があるのではないかと
思うんですね。今の積立レベルを急速に１にまで落とすという選択をするのか。ある程
度維持していくというふうにするのかということがあると思うんですけど、その辺につ
いてどうお考えですか。

○堂前数理統計室長
　先ほど来、私も申し上げたり、私学共済室長も申し上げたりしているんですけれども、
平準保険料方式から段階保険料方式にした訳ですが、これは１つは閣議決定の前倒しに
応えるためということもあり、なるべく他制度と同じ形式をとった方がいいだろうとい
うことで、男女別もそうですが、合わせられるところはなるべく合わせた方がいいだろ
うということでございます。国共済・地共済は確かに１から４と設定しておりますけれ
ども、厚生年金は積立度合１としているので、積立度合を１とした厚生年金の最終保険
料率を上回る掛金率とした方がいいだろうということで積立度合１としたということで
ございます。
　もう一つは、私学共済の場合、国共済・地共済と同様に、５年毎に再計算するので、
５年後にまた必要があれば、別の積立度合というものを考えればいいということで、今
回は、厚年、国共・地共と共通である積立度合１といたしました。あともう一つは、言
い方は非常に悪いかもしれませんけれども、95年先はなかなかわからないと、個人的
には思っております。次回再計算で、２とか３とか４、あるいはもっと永久均衡という
考え方も出てくるやもしれません。

○都村部会長代理
　45ページに雇用保険による支給停止割合が出ています。一時、私学共済の雇用保険
の適用についてかなり問題になりましたけど、現在、適用割合はどのくらいなのですか。

○伊藤私学共済室長
　今、加入を勧奨しているところでございまして、徐々に増えているわけでございます
けれども、全体としては３割ぐらいでございます。

○都村部会長代理
　法人の数についてでしょうか。

○伊藤私学共済室長
　大学、短大については教職員数に対して３割でございます。学校数ですと、もうちょ
っと多くなりますが、全体ではなくて一部だけ加入にしているということがございます
ので、ただ、これは現在、厚生労働省の担当課ともいろいろ協議しておりますが、来年
の５月までには基本的には全部加入するよう各学校法人にお願いをしているという状況
でございます。

○都村部会長代理
　それから、もう一つ、私学共済の被保険者数がずっと将来的に減少傾向にあるわけで
すけれども、それは人口全体の３歳から21歳、学齢人口ですか、それの減少傾向とほ
とんど一致して下がっていっていますね。若年人口の動向以外に、例えば大学とか短大
が倒産するというような、そういうほかの要因も働くと考えられるのですけれども、そ
の場合はどうなるのでしょうか。それは考慮に入れていないのでしょうか。

○堂前数理統計室長
　入れてございません。

○都村部会長代理
　入れていないのですね。

○堂前数理統計室長
　可能性はあると思います。特に短大で経営が苦しくなっている学校もございますし、
廃校もございますけれども、高校以下でも相当数の廃校がございます。それに応じて加
入者数が減っている学種ももちろんございます。しかし、将来、どこの学校がつぶれて、
それがどの程度影響するかは、非常に推計しづらいものがあります。実は民間のシンク
タンクに加入者数の推計をやっていただいたこともございますけれども、過去の、主に
学齢対象人口以外にＧＤＰに教育費が関連し、また進学率とかちょっとからめておりま
すけれども、主に説明変数として回帰分析をやっておりまして、それで2050年ぐらい
まで推計をやっていただいたことがございますけれども、私どもの見通しより非常に多
いものとなりました。
　この見通しでも、前回の再計算で非常に甘いと年金数理部会に指摘を受けましたけれ
ども、ともかくよって立つものがないので、中位推計以外にも低位推計で、先ほど
28.4％になると申しましたが、そういう厳しい見通しを行っております。私学もいろい
ろ運営努力等しておりまして、実際には学齢対象人口という意味では減っておりますが、
大学で、18歳から21歳ですけれども、実際には、浪人を考慮外としても、社会人とか
留学生とか大学院とか、その辺の影響もございますし、また、先ほどの幼稚園ですと、
４～５歳児はちょっと頭打ちがかかっているようですけれども、３歳児をどんどん入園
させるとか、専修学校ですと、時代に即した学科、あるいは職業教育などを行った結果、
その３学種を中心に加入者が増え、17年に入っても加入者が増えてございます。
　ですから今の段階で、将来的にどこの学種がつぶれるのではないか、何千人減らそう
とかいうのをなかなか共済側としてやりづらいというか、それを95年までまたやると
いうのは非常につらいものもございまして、一応客観的な見通しであります人口推計を
基礎として使わせていただいております。

○都村部会長代理
　それから私学共済の被扶養配偶者率が他の制度に比べて非常に低いですね。現在
25％を切っているし、将来見通しでもずっと25％を切っていますね。共働きとか単身
者が多いということなのでしょうけれども、そうすると所得代替率ですけれども、厚生
年金の世帯モデルで出しているわけですから、40年間夫なら夫が働いて、配偶者は働
かないという、そういうモデルになっているわけですね。片働きモデルで所得代替率の
見通しを出すということについてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
25％を切っているというのは非常に低いと思うのですが。

○堂前数理統計室長
　まず、25％でございますけれども、実際にはもうちょっと26～28％あるかと思いま
す。これの表の56ページ……。

○都村部会長代理
　56ページですね。2005年を出しますと、23.8％ですか。

○堂前数理統計室長
　国民年金、あるいは基礎年金のこちらのヒアリングのときに表で出たと思うんですが、
各制度別の２号、３号の比率が出ております。あれは拠出金算定対象者数なものですか
ら、２号のうちの20歳以上、60歳未満という形で出ていると思います。こちらに出ま
したのは、加入者数全体、要は20歳未満と60歳以上が入ったものでやっているので、
その分、26～28％を切っているということになろうかと思います。
　それから、もう一つ、先生言われたものでございますけど、実質的に私学共済は非常
に共稼ぎが多いと思われます。そういう面では、夫が40年間働いて、40年間専業主婦
という、このモデルはあまり適当でないなということがございますけれども、今回のこ
の所得代替率については、共通モデルで試算しております。仮にほかのモデルでも試算
してみるということであれば、共稼ぎモデルといいますか、私学共済の実態の所得代替
率はこれとは違ってくるということはあろうかと思います。

○堀部会長
　都村委員の最初の質問に関連してお聞きします。雇用保険に加入しているのは３割と
いうことですが、たしか60歳から要件を満たす人には雇用保険から求職者給付が出る
ことになっています。その間は老齢年金は出ないということになっていると思うのです
が、それは試算に入っているのかどうか。それから、今後雇用保険が新たに適用される
残りの７割の人については、求職者給付による老齢年金の支給停止といったことは、推
計の中へ入っているのでしょうか。

○堂前数理統計室長
　将来的な、伊藤室長が申し上げた、いずれ雇用保険に全員加入するだろうという、そ
うすると停止割合が増えるだろうというようなことは今回は見込んでございません。見
込み過ぎると財政を甘くみるという、そのようなことがございますので、現状の実績に
近いもので、雇用保険による停止を低く、迷ったときには厳しく見るというスタンスを
持っておりまして、厳しく見る方向でやったので、将来的な改善を見込んだものではご
ざいません。

○伊藤私学共済室長
　追加で説明させていただきますと、財政再計算は昨年度行ったわけでございますが、
その時点では、雇用保険への加入が今後どういう状況になるかについては、展望がよく
ひらけておりませんでした。今現在は、来年には 100％加入していただくよう推奨し
ております。


○堀部会長
  ほかは。近藤委員、お願いします。

○近藤委員
  収支比率で、64ページ、2090年、2095年では、考えてもしようがないと堂前さんお
っしゃっているけれども、そうは言わずに、これは２割ぐらいずっと赤字が続いていて、
今度60ページで見ると 4,000億ずつぐらい赤字ですね。そうすると少なくとも財政計
画として考えた場合にあまり健全だとは言えませんよね、ほかの数字を伸ばした場合。
すぐ積立金なくなってしまうのではないかという、この数字見ていると誤解出てくると
思うんですけど、この辺、長く伸ばしたやつはまだ全然やってない。

○堂前数理統計室長
  まず、健全でないという点については、積立金を取り崩して、積立度合がなるべく
１に近づくようにというやり方をとっているので、このような数字が出てきてしまうと
いう訳でございます。

○近藤委員
　2095年ぐらいで再計算したときに、どういうことが起こるかというと、料率の変更
とか、そういうことが起こってくるのか。

○堂前数理統計室長
　可能性はあると思います。

○近藤委員
　2095年。

○堂前数理統計室長
　ちょっとその辺ですと……。

○近藤委員
　これだとどういうふうに評価するのか難しいのだけれども、５年毎に修正していけば
いいのだということで、多分伸ばしていくんだと思うんだけど、１に近づくということ
は。

○堂前数理統計室長
　そうですね。

○近藤委員
　全体もそうなんだけど、やっぱり見方が難しい。

○堂前数理統計室長
　確かに積立度合１ということで、積立金を崩していくという、崩していかない限り、
１に近づかないものですから。

○近藤委員
　それはわかるのだけれども、そのかわり、積み立てを崩して料率を維持しているのだ
から、当然それは１になったら、崩すものがなくなったら、その逆の方向に行くのだか
ら、それがどの程度影響するのか。それを我々はどう書くか。


○堂前数理統計室長
　５年後でかなり動くのかなという気はいたします。次期再計算、あるいは次の次の再
計算で。

○堀部会長
　この問題は、厚生年金と共済年金では若干違ってくるのかなという感じもします。財
政再計算をやるか、やらないかという違いです。田村委員、どうぞ。

○田村委員
　その点は、この間、私、厚生年金の場合に言いましたけれども、厚生年金のように保
険料固定の場合は、給付水準を変更していくという形で次第に給付水準は下がっていく
と思うのですね。こちらの場合、そうではなくて、給付水準の方は厚生年金並みにして
おいて、保険料の方を変えていくという形になるはずですね。だから、今お話のように、
恐らく５年先、10年先に財政再計算やると、保険の方は上がっていくという形になる
のではないでしょうか。

○堂前数理統計室長
　もしかしたら下がる方向もあると思うんですね。要は公的年金制度全体の加入者数の
減少率をスライド調整の１つで使っておりますので、全体の加入者数の減少より私学共
済の減少が低かったら過大評価になって、次の再計算をやると最終掛金率が下がってし
まう。逆に全体の加入者数の減少率より私学共済の減少率が高ければ過小評価になって、
最終掛金率は上がってしまうという、５年間の動きも結構反映されていくと思うんです。
もう２回ぐらい通るとかなり動きが、最終掛金率に影響するなという気はいたします。

○田村委員
　そうなんですね。これから５年、10年先にどんなことが起こるかということが影響
あるでしょうから、簡単には言えないんですけれども、現在の状態が続くとすれば、今
言ったようなことになるのではないかと思うんですけれども。

○堂前数理統計室長
　そのとおりでございます。

○堀部会長
　　関連して、資料の２ページのところの過去からの財政方式の上から３つ目の「・」
のところについて質問します。２行目に、「このため、厚生年金とは財政状況が異なる
中、保険料水準を固定することは困難である……」、こういうふうに書いてあるのです
が、困難である理由がよくわからない。もう少し説明していただきたい。
　昨日の地共済のヒアリングの際の田村委員の御質問とも絡むのですが、要するに厚生
年金は保険料固定で私学共済は保険料固定でないといったところの質問です。

○堂前数理統計室長
　今、ちょっと申し上げましたけれども、スライド調整率について、平均余命の延び、
死亡率の改善というのですか、それと国民年金を含めた公的年金制度全体の加入者数の
減少率を調整率としているものですから、加入者数１つとりますと、私学共済の加入者
数の減少率が公的年金制度全体の減少率より非常に厳しくなれば、今、最終掛金率が
18.5％としたら、最終掛金率が過小評価になって次期財政再計算をするともっと高いも
のとなる。逆に全体の減少率より私学共済の減少度合いが低かったら、仮に増加したと
か、そういうことになりますと、最終掛金率が過大評価になって再計算すると下がると
いう、そのようなこともございます。平均余命の延びも同じことになるのだと思います。
　私学共済の加入者の方は非常に長命でございまして、国民生命表の平均余命より高う
ございます。そういうところで延びが全体より高い、低いで最終掛金率に及ぼす影響が
違ってくるかなということがございます。

○堀部会長
　田村委員、そういう説明で。

○田村委員
　いいのではないですか。

○堀部会長
　ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
　それでは、以上で私立学校教職員共済制度の財政再計算結果等についての報告の聴取
を終了いたします。どうもありがとうございました。

　　　　　　　　　　（文科省・私立学校振興・共済事業団退席）

○堀部会長
　これで５つの制度の聴取がすべて終了したわけです。この後の取扱いですけれども、
これまで聴取をした財政再計算結果等について検証をするというのが年金数理部会の役
割です。そこで、検証とその結果をまとめた報告書の素案を検討するための起草委員会
を設置したいと考えています。
　委員は、都村部会長代理、近藤委員、田村委員と私の４人を考えておりますけれども、
いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

　　　　　　　　　　　　　　（「異議なし」と声あり）

○堀部会長
　それでは、都村部会長代理、近藤委員、田村委員と私の４人の委員で構成する起草委
員会を設置し、報告書の素案等を検討することといたします。
　それから、現在既に設置してあります技術作業委員会ですけれども、検討に必要なた
め、私もその中に入っておりますけれども、代わりに栗林委員に入っていただきたいと
思っています。栗林委員、よろしくお願いします。
　それでは、本日はこれまでにさせていただきたいと思います。
　次回の日程等について、事務局に確認をお願いします。

○田村首席年金数理官
　次回の日程につきましては、調整をさせていただきまして、その後、正式な開催の御
案内をお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。

○堀部会長
　本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。


　－了－

（照会先）
　厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室
　（代）03-5253-1111（内線3382）