05/09/12 第28回今後の労働契約法制の在り方に関する研究会議事録         第28回今後の労働契約法制の在り方に関する研究会                     日時 平成17年9月12日(月)                        10:00〜                     場所 厚生労働省18階専用第22会議室 ○菅野座長  ただいまから、第28回今後の労働契約法制の在り方に関する研究会を始めます。本日 はお忙しい中、お集まりくださいましてありがとうございます。本日は荒木先生、内田 先生、春日先生、土田先生から御欠席という御連絡がありました。  前々回、前回と、最終報告書についての検討を行い、委員の皆様からさまざまな御意 見をいただきました。これらを踏まえて、私から事務局に報告書案の修正を指示いたし ましたので、まず前回の資料として提出されていた報告書案から変更された点につい て、事務局から御説明をお願いいたします。 ○労働基準局監督課調査官(秋山)  お手元の資料1は、先々週説明した報告書案です。前回の研究会で御指摘いただいた 部分と、その後菅野座長から御指摘のあった部分、また事務局のほうでもう一度通読い たしまして、読みやすさや誤字・脱字といった点を踏まえて、若干修正した部分等に下 線を付しております。形式的な所は抜かして、実質的な部分の御説明をさせていただき ます。  14頁の総則規定の(4)、「指針の意義」の最初の4行目、5行目です。前回お渡し した報告書案では、「指針の内容が合理的なものであれば、裁判所において斟酌される ことが期待される」となっておりましたが、行政としては合理的でないものを定めるつ もりはありませんので、「合理的な内容の指針は裁判所において斟酌されることが期待 される」というように、若干言葉を直しております。  次は18頁の真ん中よりちょっと下、イの最後のほう、なお、労使委員会制度について 引き続き検討する必要があるという事項です。こちらの箇所に関しては前回、曽田先生 からいろいろ御意見をいただいて、座長とも御相談させていただき、若干表現を改めて おります。今回お出しているものを読み上げますと、「なお、労使委員会制度について は、労働者委員の選出や運営に要する費用負担の在り方等を含め、労使委員会が当該事 業場の多様な労働者の利益を公正に代表でき、労使当事者が実質的に対等な立場で交渉 できるようにするという観点から、上記に加えて取るべき方策があるかどうかについ て、引き続き検討することが必要である」というように改めております。  あと、18頁の終わりから19頁にかけてです。こちらはこの箇所での修正ではありませ んが、「労使委員会で事前協議や苦情処理の機能を持たせて、労使委員会で事前協議や 苦情処理等が適正に行われた場合には、配転とか出向とか、そういったことが濫用判断 の考慮要素となり得ると指針で明らかにする」というのを、前回付け加えましたが、こ れは各論の配置転換や出向の所にも加えたほうがいいのではないかという土田先生から の御指摘を踏まえて、それぞれ該当箇所で対応しております。  25頁の第3、「労働関係の展開」の就業規則の(1)については題名です。前回は 「就業規則の作成に関する労働基準法の規定」というタイトルでしたが、曽田先生の御 指摘を踏まえて、前回のまとめで、「労働基準法上の就業規則の作成手続」というよう に直しております。  26頁のイの2段落目の「民法第92条」は、前回内田先生から御指摘がありましたの で、民法第92条はこういうこととしておりというように、若干修辞上の表現を改めてお ります。  30頁の下から4行目から始まる段落、「これについて」は前回、一部の労働者に大き な不利益のみを与えることが明らかな場合には、内容の合理性を認めることは手続的に も多数決の濫用と言えるし、変更の内容としても一部の労働者に対して酷であり、不適 当だという表現をしておりましたが、研究会で菅野座長から、一部の労働者に対して大 きな不利益のみを与える場合ということは、もうすでに書いているので、一部の労働者 に対して酷でありというのは重複しているし、あまり適切ではないのではないかという 御指摘がありました。併せて一部の労働者に対して大きな不利益のみを与えるとしてお りましたが、みちのく銀行事件の判決等をよく見ても、「のみ」の場所がもうちょっと 前のほうではないかということで、ここの箇所は「これについて、一部の労働者のみに 対して大きな不利益を与えることが明らかな場合には、手続的に多数決の濫用と言える ことから、変更内容の合理性の推定を認めることは適当ではない」というように修正し ております。「のみ」の場所がずれた関係で、この前後にいくつか変更があります。  32頁の2行目、就業規則の変更の合理性の推定では、「法令で規定する委員の選出方 法、意思決定方法等が遵守されている場合に限って推定が働く」として、「(ただし、 使用者からの不当な支配介入があった場合を除く)」としておりましたが、前回の御議 論も踏まえて、また菅野座長からも御指示をいただいて、「(不当な介入や誘導があっ た場合を除く)」というように改めております。  36頁の雇用継続型契約変更制度の案(1)、まず変更を使用者が提案して申し込むとい うほうですが、研究会の中でもありましたし、終了後も菅野座長から流れが読みにく い、どのような手続の流れになるのかわかりにくいという御指摘がありまして、座長と 御相談の上わかりやすく、若干文章を噛み砕いて書いております。案(1)の1段落目で は簡単に書いております。第2段落目では「すなわち」ということで言い換えておりま す。  「すなわち、労働契約の変更が認められる場合としては、例えば、変更が経営上の合 理的な事情に基づき、かつ、変更の内容が合理的である場合に限ることが考えられる」 とした上で、「さらに、就業規則の変更など、他の手段によって労働条件の変更を実現 することができず、本制度によってしか労働条件の変更を達成できない場合に限られる こととする必要がある」と書いて、就業規則変更ではできないということを先に持って まいりました。  その後、もうちょっと具体的に流れを書いております。「そして、本制度は、使用者 が労働者に労働契約の変更を申し込み十分な協議を行ったにもかかわらず、労働契約の 変更に合意を得られない場合に利用可能なものとする。このような、解雇の通告を伴わ ない協議を尽くした後にはじめて使用者が、更に労働者が熟慮することができる一定の 期間を設けて再度の労働契約の変更を申し入れ、これと同時に、その期間の終了時まで に労働者が労働契約の変更に応じない場合に効力を生ずることとなる解雇を通告でき る。この解雇通告を伴った再度の労働契約の変更の申入れに対しては、労働者が異議を とどめて、すなわち変更の内容が合理的かどうか等を裁判で争うことを留保して承諾し た場合には、この解雇の通告は効力を生じないこととする。そして、労働者は、変更の 内容が合理的かどうか等について、一定の期間内に裁判所に確認の訴え等を提起できる こととし、この場合、変更の効力は裁判の手続の中で変更の合理性判断によって確定す る」としております。  その後「なお」ということで、「労働者が異議をとどめて承諾したことを理由に、使 用者が改めて解雇するような場合は無効とする」としました。ここは全体的に表現を書 き直しております。  次の修正は、39頁の最初の4行です。配置転換の濫用判断の中でも、労使委員会に事 前協議や苦情処理の機能を持たせた場合には、こういったことが適正に行われたことが 考慮要素となり得るということを指針等で明らかにするというように、土田先生の御指 摘を踏まえて直しております。41頁の(2)のすぐ上の出向についても、同様の記述を 加えております。  42頁の5は転籍についてです。42頁のいちばん下のほうの「これについては」の段落 ですが、前回の案では、転籍というのは転籍元との関係が完全に切れてしまう、全く契 約の相手方が代わってしまうという趣旨が明らかになったほうが、よりよいだろうとい うことで、研究会で土田先生から御指摘がありましたので、「しかしながら、転籍は、 転籍元との関係が完全に解消され労働契約の相手方が変更されるものであり」とし、 「かつ、実態として転籍元が一方的に転籍先を指定することが多いから」というように 直しております。なお、いちばん下では「労働契約承継法によって分割会社等が負担す べき債務の履行の見込みがあること等の労働者への通知が義務づけられている」として おります。前回は「明示」と書いておりましたが、労働契約承継法では法律上、「労働 者への通知」という文言ですので、正確を期して直しております。  47頁の9の(1)「就労請求権」のいちばん最後の「例えば」については、「就労請 求権がないと規定することにより」と書いておりましたが、山川先生の御指摘を踏まえ て、「就労請求権がないことを明らかにすることにより」というように直しておりま す。  48頁は兼業禁止義務の関係です。ほかの所もそうですが、なるべく実態データもわか るように書いたほうがいいということで、兼業禁止義務ではそこが抜けておりましたの で、兼業を禁止している企業は51.5%、許可制が31.1%というデータと、一方で二重就 職者、ダブルジョブホルダーが増えているというデータを、1段落目に追加しておりま す。  第2段落目以降では、禁止の場合はいいとしても、許可制の場合の取扱いがどうなる かよくわからないという御指摘がありました。例えば2段落目の冒頭、「労働者の兼業 を禁止し又は許可制にする等の制限は」云々とあって、また次の段落でも「労働者の兼 業を禁止したり許可制とする場合」とあります。両方とも「やむを得ない場合を除いて 無効」と、明らかなように直しております。  また、この頁の真ん中辺りに、やむ得ない事由を列挙しております。前回の報告書案 では、兼業が不正な競業に当たる場合、労働者の働き過ぎによって人の生命、健康を害 するおそれがある場合、兼業の態様が使用者の社会的信用を傷つける場合、この三つを 例示しておりましたが、土田先生から御意見をいただいて、兼業が不正な競業に当たら ない場合であって営業秘密の不正な使用・開示を伴う場合はあり得るだろうということ で、もう一つ例示を追加しております。  同じ頁の下の「ただし」で始まる段落、兼業の制限を原則無効とする場合に、労働基 準法38条第1項は一定の場合を除いて適用しないこととすることが必要だろうと書いて いる所ですが、前回の菅野座長の御意見を踏まえて、「労働基準法第38条第1項につい ては、使用者の命令による複数事業場での労働等の場合を除き」というようにしており ます。これは必ずしもこれだけに限定できるかどうかということがありましたので、 「等」を入れております。  次は退職後の競業避止義務の関係で、50頁のウの直前です。ここは前回、山川先生か ら御指摘をいただいて、「競業避止義務の対象は秘密保持義務の対象である個々の情報 (秘密)とは異なり、より大きなまとまりのある事業活動であることが通例であるから 」としております。前回は「まとまりのある「事業」であって」としておりましたが、 ここは御指摘を踏まえて修正しております。  59頁の整理解雇の関係で、「指針において使用者が講ずべき措置を具体化したものと して示す」という件ですが、(1)から(4)まで書いているうち、(2)の本文のほうで、 「配転、労働時間の削減、一時休業等の解雇回避手段を尽くし、又は、このような手段 によって対処することができないために、整理解雇によるべき合理的な理由があること 」と書いた上で、「なお」で、「いわゆる非正規労働者」としております。前回は「解 雇をしていないことをもって」としておりましたが、菅野座長から「雇止めをしていな いことをもって」というのを入れるべきではないかという御意見をいただいて追加して おります。  65頁の10行目ぐらいに下線が引いてあります。使用者の働きかけによってなした退職 の意思表示のクーリングオフについてです。起算点についていくつかの考え方があり得 るかというところで、研究会終了後、承諾する主語が「使用者」というのを明らかにし て、「辞職の意思表示が相手方に到達した」と書いていた所を、「使用者」にしたほう が明らかだろうということで、若干修正しております。  69頁の「有期労働契約に関する手続」の(2)、雇止めの基準の関係です。69頁の8 行目、「これについては、使用者が手続を踏みさえすれば雇止めを有効とすることにつ ながり、現在の判例法理よりも労働者に不利になるのではないかという懸念がある」と いう所ですが、前回、菅野座長から御意見をいただいて、「しかしながら」の後に、 「単に手続を踏めば雇止めが有効となるものではない」というのを付け加えておりま す。  最後は72頁の有期労働契約期間中の解雇の関係です。この(3)の真ん中辺りの「立 証責任の転換が使用者にとって酷ではないか」の最後の所で、「過失によるものではな いことの立証責任を使用者が負うこととしても」と書いておりましたが、山川先生から の御意見を踏まえて、「過失によるものではないことを基礎付ける事実の立証責任を使 用者が負うこととしても過度の負担とはならないと考える」というように改めておりま す。修正は以上です。 ○菅野座長  それでは今回が最終回ですので、ただいま御説明いただいた報告書案について、全体 的に御意見をいただきたいと思います。特にこちらで議論すべき論点等は挙げませんの で、従来の研究会では議論が足りなかったと思われる点、言い残した点も含めて、御指 摘いただきたいと思います。 ○村中先生  1点申し上げます。いま御説明いただいた、30頁の下線の引いてある部分ですが、一 部の労働者のみに対して大きな不利益を与えることが明らかな場合というのは、手続的 に多数決の濫用と言えるというように、例外なく決めつけているわけです。例えば従来 は何か理由があって、一部にのみ有利な取扱いがなされていたけれども、時代が変わっ てそういう取扱いはあまり理由がなくなってきたから、それはもう廃止しましょうとい う変更を行う場合、やはり一部の労働者のみに不利益が行くわけです。しかし、それは 多分合理的な不利益変更だと判断されると思うのです。その場合もそうであれば、その 不利益を受ける人たちは反対するかもしれないけれども、手続的に多数決の濫用という ところまで言い切ることは、ちょっと難しいのではないかと思うのです。ですから「手 続的に多数決の濫用と言える場合が多いことから」というぐらいの書き方のほうが、穏 当ではないでしょうか。 ○菅野座長  「場合によって言えるおそれがある」とか。 ○村中先生  そうですね。 ○菅野座長  推定するかどうかの問題ですから、「場合が多い」と言うのよりは。「おそれがある 」のほうがいいですか。 ○村中先生  日本語としてどうでしょうか。 ○菅野座長  いずれかで、ちょっと考えさせてください。確かにこう断定してしまうと語弊が生じ ます。最後ですので御遠慮なくどうぞ。 ○西村先生  14頁の指針の話で、「合理的な内容の指針は」というのが、何となく引っかかるので す。やはり指針には合理的でないものもあるということになるのかという感じがするの です。「上記のような指針は合理的なものとして、裁判所において斟酌される」という ほうが、ここの指針の趣旨からすれば、何となくいいのではないかと思います。これも 言葉の問題なのでしょうけれども、「合理的な内容の指針」と言うと、必ずそうでない という含意が出てきそうな感じがするのですが、いかがでしょうか。形容詞的に「上記 のような指針は」と書いて、合理的なものとして斟酌されると。 ○菅野座長  これも今の御意見を踏まえて考えさせてください。このままになるかもしれません。  私はいつも前から読んでいて、後ろのほうがくたびれてしまうものですから、後ろの ほうから読んでいって気が付いたことがあるのです。まず70頁の3の「有期労働契約に 関する労働契約法制の在り方」というタイトルです。特に2でも、有期労働契約に関す る労働契約法制の在り方を論じているので、ここだけ「労働契約法制の在り方」という のが。しかも労働契約法制の在り方全般を論じているようにも取られるのに、ここで書 いているのは試行雇用契約の問題と、雇用継続型契約変更制度と、解雇云々の問題です から、特別の問題なのです。ですからタイトルを。いちばん簡単なのは「有期労働契約 に関するその他の問題」ですが、それだと味気ない。とにかく労働契約法制の在り方一 般ではないと思うのです。  それから68頁の(2)の上の5行目です。「しかし、期間の定めのない契約をされた としても、期間を定める必要性があったのであれば、その必要性がなくなった時点にお いて解雇の有効性が認められる可能性がある」という、この意味がこれでいいのかなと 思うのです。これは期間を定める必要性がなくなった時点という意味ではないのです か。 ○労働基準局監督課調査官  違います。雇用し続ける必要性というか。 ○菅野座長  そうでしょう。ですから「その」というのは、両当事者で合意していた期間の定め、 しかしそれが書面化されていないので、法律上は期間の定めのない契約として扱われて いると。合意による事実上の期間満了による雇用終了を首肯させるような事情があれば ということですよね。「その必要性」というのは、期間を定める必要性を裏づける事情 とか、そういうことですかね。ここも検討させてください。  大きな所では56頁の上から4行目、「企業実務や裁判実務に与える影響が大きいこと から、適当でない」です。これは解雇には正当な理由が必要だということを正面から書 いて、立証責任が使用者にあることを明確にすべきだ、という指摘についての答えです が、「解雇には正当な理由を必要とすることは、平成15年の労働基準法改正で立法化さ れた解雇権濫用法理とは異なるルールとなり、企業実務や裁判実務に与える影響が大き い」と。解雇の客観的に合理的な理由の立証の必要性というのは、使用者にあることは 確立しているわけでしょう。 ○山川先生  その点は、附帯決議では大部分が使用者にというような形でした。権利濫用である以 上、一部はなお労働者側の主張立証責任も残っているけれども、実際上はということで す。100%使用者側にあるとすると、権利濫用の枠組みとは完全に切り離されるので、 その意味では私はこれでもいいのではないかと思っているのです。ただ実際上、大部分 の立証責任が使用者にあるということからすれば、実務に与える影響が大きいことを強 調するとなると、ここはミスリーディングになる可能性もあると思います。 ○菅野座長  解雇権濫用法理というのが実務上、確立されて定着され、それはもう平成15年に立法 化したばかりであると。それにおいて大部分の立証の必要性は使用者に課されていると いうことから言うと、正当な理由が必要だということを立法化する必要はないのではな いか、ということではないかと思うのです。そういう書き方でいいのかなという気がし たのですが、やはりここまで書きますか。 ○村中先生  いま菅野座長がおっしゃった言い方のほうがいいと思います。 ○菅野座長  これまでの研究会の議論の経緯があるから。 ○山川先生  確かにここで異なるルールとするものは、そうだと思うのですが、もともと大部分の 立証責任は使用者にあるという附帯決議に照らせば、裁判実務に与える影響が大きいと まで言えるかどうかというと、ちょっと疑問がある。少なくとも後半のほうはミスリー ディングかなと思います。 ○西村先生  解雇権濫用法理というのが、正当事由説とどう違うのかというのは、厳密に考えれば 確かに違うのかもしれないけれども、実質的には解雇権濫用法理で十分な機能を果たし ているから、あえてこういうことをする必要がないと。いままでの判例法理を踏まえて 作られているのだから、またそれを作るとすれば、新たに議論を呼び起こすことになる だろうと思うのです。そういうことよりも、今までの実質的な判例法理を踏まえて作ら れているわけですし、かつ実質的にこの正当事由説と、あまり違った援用のされ方はし ていないわけですよね。だから、これでいいのだということのほうが大きいのではない かと思います。ルールが違うからということとは、ちょっと重点が違うような感じがし ます。 ○菅野座長  いままでの議論の経過で何かありますか。 ○労働基準局監督課調査官  単純に第2ラウンドの議論の資料として、こういう資料を出させていただいたので す。大体そのままの議論があったので付けただけですから、この研究会の中で。 ○菅野座長  いまのような修正をするということでよろしいですね。  それと56頁の下から二つ目の段落というか、三つ目の段落というか、そこに「一方、 解雇に当たって労働者に対して弁明の機会を付与することを、使用者が講ずべき措置と して定めることは、懲戒解雇の場合に、解雇に時間がかかり、その間に労働者が退職し てしまうことに対応できない弊害が生じる」というのがあります。懲戒解雇、懲戒処分 については、それを要件とするのは適切ではないと言っていますよね。これは懲戒につ いての問題なので、解雇一般について指針で何を書くかという所に、あえて書かなくて もいいのではないかという感じがしたのです。これは指針において何を書いておいたら いいかというのを例示している中で、特にこれだけを書かないほうがいいと書いてある 所なのです。そこまでここに書く必要があるのか。懲戒の所でもう書いてしまっている のだから、いいのではないかという気がしましたが。 ○労働基準局監督課調査官  結構だと思います。 ○村中先生  しかし解雇の規制で一般にかけてしまうと、懲戒解雇にも跳ね返りますから、あって も悪くはないように思います。 ○菅野座長  指針の中に書いておいたほうがいいですか。いや、指針の中で書くのではないです ね。指針の中で書く必要がないということですね。 ○労働基準局監督課調査官  必要がないということです。 ○村中先生  やはり書くことの弊害というか、問題点の一つではあると思うのです。 ○菅野座長  このことは懲戒処分のところでも書いてあるのです。どこでしたか。 ○労働基準局監督課調査官  46頁の8の上の段落、「弁明を聴取をした後でなければできないとすることについて は」という部分の記述があります。 ○村中先生  懲戒でこのようにしておいて、しかし解雇の規制で弁明の機会がいるというようにな ってしまうと、それは懲戒としての普通解雇に跳ね返ることになってくるのです。 ○菅野座長  それはそうですが、46頁にこれを書いておけば、そうはならないだろうと思うので す。 ○村中先生  出ていれば、当然ここは斟酌されなければならないと思います。確かに56頁では、ち ょっと唐突な感はありますね。特に絶対残さないといけないという趣旨で申し上げてい るのではありません。なくても問題はないと思います。 ○菅野座長  では残しますか。 ○山川先生  問題点があるのが懲戒解雇の場合だけであれば、「懲戒解雇の場合に」と書いてある ので要らないのではないかという感じがしますが、どちらでも結構です。 ○菅野座長  懲戒解雇の所で、もうちょっとはっきり書いておきますか。 ○山川先生  そうですね。 ○菅野座長  では懲戒解雇の所で「慎重に検討する」ではなくて、「適当ではない」と。そうさせ ていただきますが、それでいいですか。ほかにお気付きの点を御指摘いただきたいと思 います。 ○山川先生  69頁の3行目から4行目辺りに、「明示の手続を必要とする」とか、「その履行を考 慮要素とする」というのがあります。これが「労働契約法制の観点からも」とあるの が、法律によってそのようにするのか、指針によってそのようにするのか。あるいは、 まだどちらか確定していないということであれば、「法律又は指針により」とするか。 どちらの形であれ、この部分の位置づけは書いたほうがいいのではないかと考えます。 ○菅野座長  これは法律事項です。 ○労働基準局監督課調査官  例えば2行目辺りに、「更新の可能性又は更新の基準の明示の手続を法律上必要とす る」というように。 ○菅野座長  「法律上」と書きましょう。 ○山川先生  あと、12頁の(2)の2段落目、「その際には、企業組織の変更に伴うルールを取り 込むかどうかについても」という所です。転籍等の変更に伴うルールというのは載って いるのですが、企業組織の変更そのものに関するルールというと、この中には出てこな いような感じがするのです。どのように表現したらいいのかは難しいのですが、そうい うことも将来的に考えられるのであれば、「適当である」に代えて「考えられる」とす るとか、「企業変更に伴う労働条件にかかわるルール」とか、何か表現を考えたほうが いいのではないかという感じがあります。 ○労働基準局監督課調査官  これまでの研究会の議論としては、例えば会社分割の際の承継法というルールがあり ます。ただ、それも一部の場面ですので、仮に今の労働契約法という全体のものを作っ たときにどうするかということを、一応念頭に置いた議論だったと記憶しているので す。 ○菅野座長  承継法のルールを取り込むとか、そういうことも。 ○山川先生  取り込むというのは、労働契約法ができた場合には、現在ある承継法をそこに移すと いう趣旨ですか。 ○菅野座長  はい。 ○山川先生  わかりました。記憶がだんだん蘇ってきました。その趣旨でしたら、もうこのままで 結構です。 ○西村先生  だとしたら、それをはっきり書いておいたほうがいいかもしれませんね。労働契約法 と承継法とは別々になっているけれども、労働契約法を作る場合にそれを取り込むとい う話ですよね。それをそこに書いておけば、はっきりするわけです。 ○菅野座長  ここは総論でわりとあっさりと、全体を鳥瞰したように書いてあるから、あまり具体 的には書いていないのです。バランス的にそういうように書いたほうがいいかどうか、 検討させていただいて、お任せいただきたいと思います。 ○山川先生  このように読んでよろしいかというだけですが、契約変更で今回、新たに付け加えた 部分です。36頁の「異議をとどめて承諾した場合には」という所で、裁判所に確認の訴 え等を提起できるということが書かれていますね。確認の訴えと言うと、通常訴訟にな るのですが、これはより簡易な手続も利用できるというほうが望ましいと思います。確 認の訴えということで、通常訴訟に乗れるような枠組みを実体法なりで作るのであれ ば、それは当然、労働審判手続で簡易な手続も利用できるという読み方ができるという ように、確認してよろしいでしょうか。 ○労働基準局監督課調査官  結構だと思います。 ○菅野座長  審判の申立てをして、それで決着が着けばいいし、異議があれば、そのような民事訴 訟法として移行するという形にするのでしょうね。 ○労働基準局監督課調査官  はい。 ○菅野座長  修正ではないのですが、私も確認というか、お聞きしたいことがあります。15頁の (2)「労働基準法の労働者以外の者への対応」の辺りです。この(1)(2)を合わ せると、報告書案の考え方は、労働契約というものの概念では労働基準法上の労働契約 として、(2)で言うような新しい契約、労働者に非常によく似た新しい人たちが出て いるので、それには例えばドイツで言う労働者類似の者とか、労働契約類似の契約とい うものを作って対応するのか、ほかに立法技術としてのやり方があるのか。いちばんや りやすいのは、そういうことだと思うのです。そこはまだ今後の検討に委ねているとい うことはあるのでしょうけれども、自然にいくとそうなるのかなと思います。そこまで は深く詰めて議論しませんでしたが。 ○労働基準局監督課調査官  少なくとも(1)では、労働基準法上の労働者は入るということです。(2)をどう するかというのは、今後実態を踏まえた上で検討ということです。そこを広げるとした ら、法制的にどう書くかというのは、またその段階で詰めるのではないかという気がい たします。 ○菅野座長  そうでしょうね。その場合、非常によく考えられる方法というのは、いま私が申し上 げたような方法ということですかね。 ○西村先生  類推適用というのは、原則適用しないということを前提にしているということでしょ う。 ○労働基準局監督課調査官  類推適用という考え方もあったというように書いています。 ○菅野座長  (2)は、そういう考え方もあったということですか。 ○労働基準局監督課調査官  類推適用については「なお」の所で、「類推適用が促進されるような方策を検討すべ きであるとの意見が出た」とあります。 ○菅野座長  15頁の真ん中で、「労働契約法制の対象とし、一定の保護を図ることが考えられる」 云々ですから、これは今後の検討課題という位置づけですね。 ○労働基準局監督課調査官  結論的には「いずれにしても」のいちばん最後の3行に、たぶん帰着すると思いま す。 ○菅野座長  筒井参事官がおいでになりました。最初に、14頁の3行目の「また、合理的な内容の 指針は裁判所において斟酌されることが期待される」という前回の議論を踏まえて修正 案が出まして、これについては「上記のような指針は合理的な内容のものとして、裁判 所において斟酌されることが期待される」というのでは駄目かという御意見が出たので す。そこの所で何か御意見があればと思います。 ○筒井参事官  やはり法的拘束力はないけれども、それは合理的な内容を持つものとして、裁判所に おいて斟酌されることが期待されるという文脈だと思います。それであれば差し支えな いと思います。 ○菅野座長  ではそのように修正することにいたします。  58頁の整理解雇について、裁判例の現在の立場というのを議論して、59頁の2段落目 の「そこで」の結論に、「人員削減の必要性云々を法律で示すことが必要である」とい うように持っていくこの流れが、ややわかりにくいですよね。一つ一つの段落はそのと おりだけれども、もうちょっと。「こういう意見があった」というのと、「と考えられ る」というのを併用しているものですから。最初の「四要素説に収斂してきている」と いうのは、いろいろあるから、必ずしもそういうようには断定できないですよね。 ○山川先生  なお例外と言いますか、少ないとは思いますが、要件説もあるということですと。た だ、ここは意見があったということですので。 ○菅野座長  これはそういう裁判例も多くなってきているというぐらいで。 ○山川先生  意見があったということではなくて。 ○菅野座長  はい。 ○山川先生  それでしたら結構です。 ○菅野座長  問題の立て方は、そういう状況においてどういう規定ができるかということを検討す る必要があるということでしょう。その問題の立て方も、「という意見が出された」と いうことで、我々全体の問題の設定なのかどうかがはっきりしないのです。ですから最 初の「四要素説に収斂してきている」というのは、「そういう立場を採る裁判例が多く なってきている」という書き方にして、そういう中で検討する必要があるということで いいのではないですか。結局、その答えが先ほどの「そこで」の段落だと思うのです。 ○山川先生  そうしますと、その次の「これについて」というのも、「検討する必要がある等の意 見が出された」と言うよりも、むしろこの点を検討課題として示す文章にすると。 ○菅野座長  そういうことです。 ○山川先生  先ほどのはそういう趣旨ですか。 ○菅野座長  ええ。「これについては」ですね。 ○山川先生  そうすると、仮にと言うよりも、これを法律で明らかにする必要があるかどうか、そ の場合にはどうするかなどということになるでしょうか。 ○菅野座長  その辺は文章を検討させてください。  60頁から61頁にかけてですが、「労働者からの申立てについて、現状では解雇につい て労働者が原職復帰を求めずに損害賠償請求をする場合、雇用関係を継続する意思がな いことから損害も認められないとして賃金相当額が損害賠償として認められない」とい うのは、雇用関係を継続する意思がないことから、賃金相当額が損害として認められな いということですよね。それでいいのではないですか。しかし、それだと後からのが続 いてしまいますね。「下級審判決があるので」かな。この辺も修文させてください。  63頁の下から6行目、「仮に検討を加えるのであれば」というのは、なぜここにある のでしたか。 ○労働基準局監督課調査官  いちばん最初の所で、研究会のスタンスとして、仮に制度を導入する場合には、理論 的に実効性があり、濫用が行われないようなものについて理論的に検討するとのことで すので、特にこの部分はなくてもいいと思います。 ○菅野座長  そういう意味では、ほかもみんな同じですよね。 ○労働基準局監督課調査官  はい。 ○菅野座長  これは取ってもいいのではないですか。その下の「しかし」は、「ただし」になるの ではないですか。「これこれを決定することが適当である。ただし」ということになる のではないですか。 ○村中先生  69頁のいちばん上、「そこで、労働契約法制の観点からも、こういう手続を履行した ことを雇止めの有効性の判断に当たっての考慮要素とすることは適当である」と書いて しまうと、普通、手続をやっていればそのとおりになるというようにも読めますよね。 しかし、そうではないという形で、雇止めの有効性の問題というのは、やはり期待可能 性というもので判断されるというのが、次の段落に出てきていますから、読む人が読み にくいのではないかと思うのです。雇止めの有効性の判断に当たってというのを考慮要 素とすることが適当というのが、どういう形で有効性の判断に影響するのか、もう少し 書いたほうが2段落目とのつながりが分かりやすいのではないかと思うのです。 ○菅野座長  では「しかしながら、単に手続を踏めば雇止めが有効となるものではない」というの を、もう少し詳しく書きますか。「考慮要素にすぎない」という言い方もおかしいです よね。 ○村中先生  そうですね。 ○菅野座長  しかし、それで全部決着が着くわけではないということでしょ。 ○村中先生  ええ。もちろんいま持っているものと持っていないものということで、考慮要素には なるわけですよね。それは有利にも不利にも、両方働き得るとは思うのです。 ○山川先生  「考慮要素の一つ」では弱いでしょうか。法律で書くとすると、「重要な考慮要素」 というのもあるかもしれませんが、ほかの点が重要でないというわけでもないですし、 それはちょっと書きにくいと思います。 ○菅野座長  規定上は「を考慮するものとする」という書き方になるのですか。ここでは重要な考 慮要素ではあるけれども、それに尽きるものではなくて、これこれが問題となるという ことですよね。法律上の法文ではないのだから、ここにおいては重要な考慮要素だとい うことは書いておいてもいいでしょう。「しかしながら、上記の手続を踏むことは、雇 止めの有効性判断において重要な考慮要素ではあるが、他に」。何でしょうか。ここで 例示しておいたほうがわかりやすいですか。先ほど何と言われましたか。 ○村中先生  結局、判例法理でいきますと、期待可能性があるかどうかということが決定的です が、それを判断する場合の一要素になるということです。 ○菅野座長  期待可能性と言うよりは、雇用継続の期待がどれほど合理的かどうかということでし ょうね。 ○村中先生  そうです。期待の合理性です。たぶん例としていちばん心配されるケースは、更新は あります、あります、ありますということを何度か繰り返して、最後だけ、次は更新し ませんといったケースをどう判断するかです。そういったときにそれをどう見るかとい うのは、裁判所も割れていると思うのです。手続どおり踏んできて、最後に止めるとい うのだから、期待可能性もないじゃないですかというような言い方もありますし、更新 はあります、あります、ありますと三回言っているのだから、そのことによって期待を 持っても合理的なのだ、最後に次はありませんと言っても、それは従来、もうすでに生 じている合理的な期待を裏切るものだという判断と、二様に出てくると思うのです。そ ういうケースについて、こういうものを考慮要素にすることが、どちらへ影響するのか ということが心配されるわけです。  どちらかというと手続を守っているではないかということであれば、肯定的なほうへ 行って、守ってやった以上、使用者は雇止めできるのだという方向へ行きそうですよ ね。ただ、それというのは現在の判例が割れている中で、一定の方向づけをしています ので、現状の判例法理を少し変更するというようにも取れるかもしれません。そこがち ょっと前から心配だなと思っている部分なのです。ですから手続を守ったということが 期待の合理性というものについて、それが影響するのだということはあまり書かずに、 そこは裁判所に委ねてしまったほうがいいのではないかというのが、私の個人的な見解 です。そういうことが前提になっているものですから、ちょっと距離がありすぎるので はないかという感じが前からしているのです。もう最後ですので、特に修正いただかな くても結構ですが。 ○菅野座長  アンダーラインが引いてある所ですが、「しかしながら、上記の手続を踏むことは、 重要な考慮要素ではあるが、雇用継続の期待がどれほど合理的かに関するその他の事情 も考慮されるので、単に手続を踏めば雇止めが有効となるものではない」というパラフ レーズを入れておくと。 ○村中先生  そうですね。 ○菅野座長  では、もうちょっと修文しますが、そのような趣旨を入れるということにいたしま す。 ○山川先生  44頁の懲戒の(2)の1段落目です。これは意見があったということなので、その結 論に関係することではないのですが、これは土田先生と私が、こんなことを申し上げた かと思うのです。最後の「労働契約法制においても、このような手順で検討していくべ き」というのは、契約法制の中身の話なのか、それとも研究会での検討の手順なのか が、今ひとつはっきりしなくなっているように思うので、この「労働契約法制において も」というのは、取ってしまってもよろしいのではないかと思います。おそらく、これ は研究会で検討するプロセスの話だと思います。後から出てくることとの関係で、懲戒 事由該当や権利濫用というのは触れているのですが、限定解釈の点は触れていないので す。  「労働契約法制においても」というのを取る代わりに、例えば「就業規則の解釈の在 り方を含め、このような各段階につき検討していくべき等の意見があった」とすると か。限定解釈ということがこれ以降、あるいはその前にもしばしば出ているものですか ら、意見があったという所では、限定解釈についても少し触れたほうがいいのかなとい う感じがあります。 ○菅野座長  もう一回言ってください。 ○山川先生  この「労働契約法制においても」というのを取って、その代わりに、例えば「就業規 則の解釈の在り方等を含め、このような手順で」、あるいは「各段階につき検討してい くべき等の意見があった」などでしょうか。まだきちんとした文章にはなっていないか もしれませんが、少なくとも中身の問題ではなくて、検討の対象の問題に関する意見で あるということは、示してもいいかなと思います。 ○菅野座長  これはその後とどうつながるのですか。就業規則の解釈等を含めて、そういった段階 的な検討をしていく。単に「意見があった」という所で途切れてしまうのか、その後に つながっているのか。 ○山川先生  たぶん懲戒事由に該当するかどうかを判断すると。これは懲戒事由を法律で限定する ことは妥当でないというところにつながっているのではないかと思うのです。権利濫用 については、非違行為と懲戒処分の内容との均衡を法律で明らかにする必要があるとい う形で、つながっているのかと思います。その後の退職金等の関係では、限定解釈で対 応が可能であるといったことが書いてありますので、一応手順ごとの並びにはなってい たのかと思います。 ○菅野座長  それだったら「との意見があった」ではなくて、「検討していくのが適切である」と したほうが分かりやすいですね。「との意見があった」というのには二つあって、それ を活かしている場合と、そういう意見がありましたと言っている場合とがある。ここで 指摘していることは、そのとおりではないですか。これについてはそんなに異論がない のではないですか。  「現在の裁判例は懲戒事由に該当するかどうかを判断し、その際に限定解釈してい る。さらに当該懲戒の判断について、当該懲戒が権利濫用法理に照らしてどうかの判断 を行っていると解される」でいいですよね、我々が解するのですから。そうすると「労 働契約法制においても」としてもいいのではないですか。「労働契約法制においても、 就業規則の解釈等を含め、これらの各段階を分けて検討するのが適切である」と。 ○山川先生  細かいことですが、「労働契約法制においても」と言うより、「ついても」というよ うにしたほうが。 ○菅野座長  では、そうしましょうか。 ○西村先生  「労働契約法制においても」というのは、労働契約法の問題としてということです ね。 ○菅野座長  はい。 ○西村先生  難しいですね。労働契約法の問題としてこういうことを考えたら、検討することが妥 当だという感じでしょう。前に村中先生から提案があった30頁辺りも、「一部の労働者 にのみ」云々というのが、随分たくさん出ていますね。村中先生は例外的な場合もある という話に触れられて、一部の労働者に利益を与えていたことが、従来は妥当性を持っ ていたけれども、時代の推移の中でそういった特別取扱いが、合理性を失うようなケー スもあるではないかという話をされたわけです。それならば、そういうケースを具体的 に明示して、「一部の労働者」と言っているけれども、それに不利益を与えるからとい って、合理性の推定を全く認めないということを、はっきりどこかで出しておいたほう が、バランスとしていいのではないかと思うのです。ちょっと見ていても、随分たくさ んありますから、30頁を修文するだけでいいのか、それでわかるのかという感じがしま したが、どうですか。  全体的なトーンで、「一部の労働者のみ」はもう駄目だというニュアンスが、すごく 出ているわけですが、そうでないようなケースもあるではないかということで、ちょっ と例外的なことを言われたのです。それを、こういうケースについては確実に合理性が 否定されるわけではないというように、本文のどこかできっちりと、はっきりした表現 をしておいたほうがいいと思います。「手続的に多数決の濫用と言えるおそれが多い」 ということだけでは済まない問題ではないかと思いました。全体的な問題にかかわるか ら。 ○菅野座長  そういう意見があったというように言っておきますか。 ○村中先生  ただ推定が効かないだけの話ですから。 ○西村先生  推定が効かないケースであるということで十分なのかどうか。 ○村中先生  表現は後でそういうケースを。 ○菅野座長  「大きな」という修辞と、推定を効かせるかどうかの問題だけなので、最後は総合判 断です。西村先生や村中先生が言ったケースでは、合理性が認められるということです が、やはり推定の段階ではしようがないのではないかという気がするのです。 ○西村先生  そのとおりですが、具体的なケースがはっきり分かるように書いておいたほうがとい うことです。 ○菅野座長  この中で何か書き込めるかどうかは考えてみますが、ちょっと難しいかもしれませ ん。例えば解説本などでは。 ○村中先生  何をもって一部と考えるか、一部ということの解説も、ものすごく出てくると思いま す。例えば80%でも一部か。 ○西村先生  それは、そういうイメージではないでしょう。 ○村中先生  ごく少数の人に集中するということで、10%、20%ぐらいをイメージしているわけで すよね。あくまでも推定ということで、そこはある程度杓子定規にやるような、一部と いうのは10%ぐらいだとか、それはあってもいいのではないですか。 ○菅野座長  それはこれからの問題ですから。 ○西村先生  一部の労働者というのは多分、非常に大きな争点の一つなのです。 ○菅野座長  西村先生が言われたようなことを意識して、もう1回読み直してみます。ほかにはい かがでしょうか。  よろしいですか。議論が出尽くしたようですので、本日の研究会における議論に基づ く修正等を行って、報告書といたしたいと思います。なお、内容上のことではなくて、 「てにをは」や修文の類で、もう一度見直す必要があると私が考えた所は直したいと思 います。そういう必要があるかもしれませんので、それはお任せいただければと思いま すが、よろしいでしょうか。  ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。それでは今後の日程 ですが、事務局への修正の指示等を行って修文をして、タイミングを見て新聞発表等を 行いたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。事務局もそれでいいですか。  それではこの報告書案にたどり着いたということで、これで検討は終わったというこ とになります。 事務局から御挨拶があるということですので、よろしくお願いします。 ○労働基準局長(青木)  昨年4月から今日で28回ということで、この研究会も大変お忙しい中、頻繁に開いて いただき、熱心に御議論いただきまして、大変ありがとうございました。今後の労働契 約法制については、さまざまな問題を含んでいるということで、私どももこの研究会の 報告を受けて、途中の経過の議論も参考にさせていただきながら、労働政策審議会にお いて検討をお願いしたいと思っております。今後とも労働契約法制については、さまざ まな議論があり得ると思っておりますので、引き続き御指導、御支援をお願い申し上げ ます。本当にどうもありがとうございました。 ○菅野座長  これにて、今後の労働契約法制の在り方に関する研究会を終了いたします。参集者の 皆様には御多忙の中、1年半にわたる長期間、貴重な御意見をいただきまして、誠にあ りがとうございました。 照会先:厚生労働省労働基準局監督課政策係(内線5561)