(案)
2005年日本政府年次報告
障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約(第159号)
(1999年6月1日〜2005年5月31日)


 質問Iについて
(1)前回までの報告に「発達障害者支援法(2004年法律第167号)」を追加する。
(2)前回までの報告中の「障害者対策に関する新長期計画(1993年、「障害者対策推進本部(本部長:内閣総理大臣)」決定)」を「障害者基本計画(2002年12月、閣議決定)」に改める。
(3)前回までの報告中の「障害者雇用対策基本方針(1998年、労働省告示)」を「障害者雇用対策基本方針(2003年、厚生労働省告示)」に改める。
(4)前回までの報告中の「雇用対策基本計画(1995年、閣議決定)」を「雇用対策基本計画(1999年、閣議決定)」に改める。
(5)前回までの報告中の「障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年戦略〜(1995年、閣議決定)」を「重点施策実施5か年計画(2002年12月、「障害者施策推進本部(本部長:内閣総理大臣)決定」に改める。


 質問IIについて
(1
【第1条関係】
障害者の定義〕
 前回までの報告を以下のとおり改める。
 障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」という。)においては、職業リハビリテーションの対象となる「障害者」を「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と定義しており(同法第2条第1号)、この「障害者」は、身体障害者、知的障害者、精神障害者を含むすべての種類の障害者をいうものである。
 なお、身体障害者福祉法においては、「身体障害者」を、視覚、聴覚等の障害、肢体不自由又は心臓、じん臓等の障害で一定の水準をこえた、18歳以上の者であり、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた者、と規定しており(同法第4条)、その居住地の都道府県知事に対して行う身体障害者手帳の交付の申請には、都道府県知事の定める医師の診断書を添える旨規定されている(同法第15条)。
 また、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律においては、「精神障害者」を精神分裂病(統合失調症)、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者と定義している(同法第5条)。


【第2条関係】
  前回までの報告を以下のとおり改める。
障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する国の政策〕

 障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るに当たり、今後とも社会全体の理解と協力を得るよう意識の啓発に努め、ノーマライゼーションの理念を一層浸透させるとともに、この理念に沿って、障害者が可能な限り一般雇用に就くことができるようにすることが基本となる。この点を踏まえ、特に雇用施策に立ち後れのみられる精神障害者に重点を置きつつ、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を総合的に講じる(障害者雇用対策基本方針第4)こととしている。
 さらに、職業能力開発促進法では、職業に必要な労働者の能力を開発し、及び向上させることが職業の安定及び労働者の地位向上のために不可欠であるという基本理念に基づき、厚生労働大臣は「職業能力開発基本計画」を策定することとされており、その中で障害者の職業能力開発に係る計画も策定されている(同法第5条)。また、一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な身体又は精神に障害がある者等に対してその能力に適応した職業訓練を行うための施設として、障害者職業能力開発校を設置してしている(同法第15条の6)。
 なお、一般の就業が困難な重度の障害者に対しては、授産施設や福祉工場等を整備し、就労の機会を設け、その社会参加を促進しているところであるが、障害者基本計画(2003年〜2012年)に沿って、同計画の前期5か年に重点的に実施する施策及びその達成目標として2002年12月に策定された重点施策5か年計画においては、2007年度までに通所授産施設を約73,700人分整備すること等を目指すこととしている。
 また、障害者基本計画(2003年〜2012年)に沿って、同計画の前期5カ年に重点的に実施する施策及びその達成目標として2002年12月に策定された重点施策実施5か年計画においては、雇用・就業の確保に関して、トライアル雇用、職場適応援助者(ジョブコーチ)、各種助成金等の活用、職業訓練の実施などにより2007年度までにハローワークの年間障害者就職件数を30,000人に、2008年度の障害者雇用実態調査において雇用障害者数を600,000人にすることを目指すこととしている。


国の政策の実施と定期的見直しの方法〕

 障害者雇用促進法をはじめとした法律によるものの他、障害者基本計画、障害者雇用促進法に基づく障害者雇用対策基本方針(同法第7条)、雇用対策法に基づく雇用対策基本計画(同法第8条)における基本的な「国の政策」の策定等の方式で実施されている。
 その定期的な検討については、障害者雇用対策基本方針(計画期間5年)及び雇用対策基本計画(計画期間5年程度)に関し、それぞれの計画期間終了の際に検討が行われることとなっている(計画期間中でも必要に応じ見直しが行われる)。
 また、職業能力開発基本計画は定期的に検討、策定している。


【第3条関係】
  前回までの報告を以下のとおり改める。
職業リハビリテーションに関する措置の適用範囲〕

 全ての種類の障害者に対して、公共職業安定所、障害者職業センター等において、職業評価、職業指導、職業訓練、職業紹介その他の職業リハビリテーションに関する適当な措置が行われる(障害者雇用促進法第2章、職業安定法第22条、職業能力開発促進法第15条の6第1項第5号)。
 さらに、平成13年の改正に伴い、職業能力開発促進法では、職業能力の開発及び向上の促進は、労働者の職業生活設計に配慮しつつ職業生活の全期間を通じて段階的かつ体系的に行われることを基本理念としており(同法第3条)、また身体又は精神に障害がある者等に対する職業訓練は、特にこれらの者の身体的又は精神的な事情等に配慮して行わなければならないとされており(同法第3条の2)、必要な調整を行った上で、一定の者を排除することなくすべての障害者について職業訓練に関する措置が適用される。


障害者の雇用機会が増大される方法〕

 障害者雇用促進法は、事業主に対し、一定率の身体障害者又は知的障害者を雇用する義務を課している(同法第43条)。また、同法に基づき、事業主が、障害者を雇用する場合及び一定の障害者を雇用するための作業施設・設備の設置・整備を図り、又は適切な雇用管理を実施する場合は、障害者納付金制度に基づく助成金等の支給が行われる。(同法第49条、第73条等)。これらの施策により、労働市場における障害者の雇用機会の増大を図っている。


【第4条関係】
  前回までの報告を以下のとおり改める。
障害者である男女労働者と他の労働者の間の機会及び待遇の均等を図る捨置〕

 障害者雇用促進法において、適正な雇用管理についての事業主の責務について規定している(同法第5条)ことに基づき、障害者雇用対策基本方針において、事業主に対し、採用及び配置、教育訓練の実施、処遇、安全・健康の確保等に際し、適正な雇用管理を行うことにより、障害者がその適性と能力に応じて、健常者とともに、生きがいを持って働けるような職場作りを進めるとともに、その職業生活が質的に向上されるよう努めることを規定する(同方針第3)。また、公共職業安定所における正当な理由なく障害のないことを条件とする求人の申込みの不受理(障害者雇用促進法第10条)、雇用率制度の厳正な運用及び法定雇用率に達しない事業主からの納付金の徴収等により、障害者である労働者の雇用機会の確保を図っている。
 なお、本条の適用に関して、障害者を含むすべての男女の間における労働者の機会及び待遇の均等は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律により確保されている。


【第5条関係】
  前回までの報告を以下のとおり改める。
労使団体等が協議を受ける方法〕

 障害者雇用促進法により、労働者の代表者、事業主の代表者、障害者の代表者及び学識経験者により構成される労働政策審議会障害者雇用分科会が設けられており、障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する国の施策の実施に当たっては、関係法令案、計画案等について、審議が行われる(労働政策審議会令第6条)。
 前回までの報告中の「中央障害者施策推進協議会」に関する記載を削除する。障害者基本法により、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験のある者により構成される「中央障害施策推進協議会」は、内閣総理大臣が、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な計画の案を作成する際に意見を聞くために設置されているものである。
 第2条でいう「障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する国の施策」の実施に当たっては、労働者の代表者、事業主の代表者、障害者の代表者及び学識経験者により構成される労働政策審議会障害者雇用分科会において、関係法令案、計画案等について審議が行われている。


【第7条関係】
  前回までの報告を以下のとおり改める。
障害者が職に就き、これを継続し、及びその職業において向上することを可能にするための、利用しうるサービスやいかなる調整に関して、本条に効果を与えるために実施される措置〕

 具体的な施策の実施については、職業指導(障害者雇用促進法第24条)、職業紹介(障害者雇用促進法第2章第2節)、雇用率制度(障害者雇用促進法第3章第1節)、助成金の支給(障害者雇用促進法第3章第2節)等が行われている。
 また、労働者全般のための現存の事業は、職業紹介等の基準(職業安定法第16条)等により、必要な調整を行った上で、障害者にも実施されている。
 職業能力開発促進法では、労働者の多様な職業能力開発の機会を確保することとされており(同法第15条)、一般の公共職業能力開発施設で職業訓練を受けることが困難な身体又は精神に障害がある者等に対しては、障害者職業能力開発校を設置し(同法第15条の6)、障害の部位、程度に応じた職業訓練を実施している。
 さらに、身体障害者授産施設、知的障害者授産施設及び精神障害者授産施設等において、18歳以上で、障害を有し、雇用されることが困難な者等に対し、必要な訓練を行うとともに、職業を与えて自活させるため又は社会復帰を促すための措置を講じている(身体障害者福祉法第31条、知的障害者福祉法第21条の7並びに精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第50条の2第3項及び第5項)。


【第8条関係】
本条に効果を与える措置〕

 我が国では、各種障害者対策については、地域的に偏りのないように措置されている。例えば、障害者の雇用対策については、公共職業安定所を全国各地に設置し、地域に根ざした障害者の職業相談、職業紹介及び雇用の促進等の措置を実施しているとともに、地域障害者職業センターを各都道府県ごとに設置し、地域に根ざした職業評価、職業準備訓練等を実施している。


【第9条関係】
  前回までの報告を以下のとおり改める。
職業リハビリテーションに関し適当な能力を有する職員を確保するための措置〕

 公共職業安定所に就職促進指導官(職業安定法第9条の2)・雇用指導官等が配置され、障害者の雇用の促進のため、障害者及び事業主の指導にあたっている。また、障害者職業センターに障害者職業カウンセラー(障害者雇用促進法第24条)が配置され、障害者及び事業主に対する指導等を行っている。
 また、職業安定法において、職員を教養し、及びその訓練を行うことについて規定している(同法第52条)他、障害者職業カウンセラーについては、障害者職業総合センターにおいて、その養成及び研修を行うこととしている(障害者雇用促進法第20条第3号)。
 国は、職業能力開発総合大学校を設置して、職業訓練指導員を養成しており、障害者に対する職業訓練についても、当該職業訓練指導員が公共職業能力開発施設に配置され指導にあたっている(職業能力開発促進法第27条)。
 さらに、都道府県は、その設置する身体障害者更生相談所に、一定の要件を充たしたもののうちから任用され、身体障害者更生相談所長の命を受け、市町村の援護の実施に関し、市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報提供その他必要な援助等及び身体障害者に対する相談、指導のうち専門的知識及び技術を必要とするものをその業務とする、身体障害者福祉司を置いており、市町村においても、その設置する福祉事務所に、身体障害者福祉司が置かれているところがある(身体障害者福祉法第9条の2、同法第11条の2、同法第12条)。
 また、都道府県は、その設置する知的障害者更生相談所に、一定の要件を充たしたもののうちから任用され、知的障害者更生相談所長の命を受け、市町村の援護の実施に関し、市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報提供その他必要な援助及び知的障害者に対する相談、指導のうち専門的知識及び技術を必要とするものをその業務とする、知的障害者福祉司を置いており、市町村においても、その設置する福祉事務所に、知的障害者福祉司が置かれているところがある(知的障害者福祉法第10条、同法第13条、同法第14条)。
 なお、身体障害者授産施設に職業指導員が、知的障害者授産施設及び精神障害者授産施設に作業指導員が置かれている。


(2)2000年条約勧告適用専門家委員会直接要請について
パラグラフ1について】
 上記2(1)【第2条関係】を参照されたい。

パラグラフ2について】
 1998年以降、障害者雇用率(法定雇用率)を1.8%と設定している一方、近年の厳しい経済情勢等を背景にして、民間企業の実雇用率は1998年以降横ばいで推移している。なお、企業の社会的責任(CSR)に対する意識の高まり等を受けて、企業規模1,000人以上の大企業の雇用率は、1992年以降毎年上昇を続けており、特に1999年以降は、法定雇用率が適用される56人以上規模企業全体の平均を上回っているところである(法定雇用率が適用される企業全体の雇用率は、1992年は1.36%、2003年は1.48%、2004年は1.46%。一方、企業規模1,000人以上の企業の雇用率は1992年は1.23%、2003年は1.58%、2004年は1.60%となっている。)。
 障害者雇用の促進を図るため、障害者雇用促進法においては、事業主に対して法定雇用率に基づく身体障害者又は知的障害者に係る雇用義務を課している(同法第43条)。同法においては、雇用義務の達成を図るため、雇用率未達成の場合には、雇入れ計画作成命令(同第46条第1項)や計画に係る適正実施勧告(同法第46条第6項)等を実施するとともに、こうした指導によってもなお改善が見られない場合には企業名の公表(同法第47条)を行うこととしている。なお、2002年には、厳しい障害者の雇用状況を踏まえ法定雇用率達成指導基準の強化を行っている。このような指導の実施状況として、2004年度においては、雇入れ計画を実施中の企業数は1,113件であった。なお、このような指導と併せ、未達成企業に対する障害者の求職情報の提供等を通じて企業の障害者雇用の取組を支援し、企業において実質的に雇用が促進されるようにしているところである。なお、このような指導にもかかわらず改善がみられない場合には、事実上の制裁措置として企業名の公表を行っており、2003年6月に1社、2004年6月に1社の企業名を公表している。

パラグラフ3について】
 第4条関係のコメントと解する。本報告の第4条関係で述べているとおり、障害者を含むすべての男女の間における労働者の機会及び待遇の均等は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律により確保されている。

パラグラフ4について】
 上記2(1)【第5条関係】についての記載を参照されたい。



 質問IIIについて
 前回までの報告を以下のとおり改める。

(1) 職業リハビリテーション及び雇用に関する政策及び計画、法令等の適用は、厚生労働省が所掌している。これらの政策等に基づく職業リハビリテーションについては、都道府県労働局長(47)へのその事務の一部の委任に基づき、公共職業安定所(470)が行っている(職業安定法第22条、障害者雇用促進法第2章2節)。また、障害者雇用率制度に基づく雇用率達成指導については、公共職業安定所、都道府県労働局、厚生労働省が行っている(障害者雇用促進法第3章第1節)。
 また、職業安定局長は厚生労働大臣の、都道府県労働局長は厚生労働大臣及び職業安定局長の、公共職業安定所長は都道府県労働局長の、それぞれ指揮監督を受ける。

(2) 厚生労働大臣は、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に対して、障害者職業センター(障害者雇用促進法第9条)の設置運営業務(障害者雇用促進法第2章3節)の他、障害者雇用納付金に基づく納付金の徴収並びに調整金、報奨金及び助成金の支給等の業務(障害者雇用促進法第3章第2節)を行わせている。
 また、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構は、厚生労働大臣の監督の下に置かれている。

(3) 職業能力開発に関する政策及び計画、法令等の運用は厚生労働省が所掌している。これらの政策等に基づく職業訓練は厚生労働省職業能力開発局が所管しており、各都道府県に置かれている職業能力開発主務課がその事務の一部を行っている。実際の障害者に係る職業訓練については、国及び都道府県等が設置している公共職業能力開発施設(障害者職業能力開発校)等において行われる。
 また、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構及び都道府県が行う職業訓練については、国の予算面及び実施面の監督の下に行われている。

(4) 身体障害者更生援護施設への措置事務は、市町村に属している。
 知的障害者援護施設への措置事務は、市町村に属している。
 精神障害者授産施設の設置及び運営主体は、都道府県、市町村、社会福祉法人その他の者であり、都道府県に属する保健所に対して業務報告がなされている。また、精神障害者社会適応訓練事業は、都道府県が実施しており、協力事業所に委託することにより実施されている。
 身体障害者更生援護施設、知的障害者援護施設、精神障害者授産施設等については、都道府県等が、地域の実情に応じて計画等を策定し、整備を進めている。


4.質問IVについて
報告すべき特段の事項はない。


5.質問Vについて
報告すべき特段の事項はない。


6.質問VIについて
本報告の写を提出した代表的労使団体は、以下のとおり。
 (使用者団体)日本経済団体連合会
 (労働者団体)日本労働組合総連合会

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