(案)
2005年日本政府年次報告
「国際労働基準の実施を促進するための三者協議に関する条約(第144号)」
(2004年6月1日〜2005年5月31日)
2005年日本政府年次報告
「国際労働基準の実施を促進するための三者協議に関する条約(第144号)」
(2004年6月1日〜2005年5月31日)
1 | .Iについて 前回までの報告に以下の事項を追加する。 海上労働に関する三者の協議機関たる協議会(以下「ILO海事協議会」という。)を開催した。このILO海事協議会は、「ILO海事協議会開催要綱」(別紙1)に基づいて運営を行っている。 |
2 | .IIについて
〔第1条〕 前回までの報告に追加すべき事項はない。 〔第2条〕 前回までの報告に以下の事項を追加する。 ILO海事協議会の開催要綱を政労使三者の合意の上で作成した。 〔第3条〕 前回までの報告に以下の事項を追加する。 ILO海事協議会の開催にあたり、使用者及び労働者の代表者の選定については、ILO海事協議会の参集者である国土交通省海事局船員政策課長が最も代表的な労使団体からILO海事協議会に参加する者の推薦を得て、それに基づいて参集を求めているところである。 〔第4条〕 前回までの報告に以下の事項を追加する。 「手続への参加者に対する必要な研修のための経費の負担」についての取極については、ILO海事協議会への参加者の研修が必要であり、この研修に経費の負担が生じることが判明した場合になされるものであるが、我が国の最も代表的な労使団体のILO海事総会等での活動実績等を踏まえれば、本条約の趣旨を理解したうえで、協議手続に参加するにふさわしい能力を有する者を代表者として選ぶものと考えられることから、我が国においては研修の経費負担が必要になることはないと考えている。 〔第5条〕 ILO懇談会の開催頻度については、これまで、代表的団体との合意の上で、年2回(4月頃及び8月頃)の頻度で開催してきたところであり、今後もこの頻度で行っていくこととしている。 また、ILO海事協議会の開催頻度については、これまで、代表的団体との合意のうえで、必要に応じ年1〜2回開催することとしている。 ILO懇談会及びILO海事協議会における協議の結果として行われた報告・勧告については、政府の最終的な見解をとりまとめる上で、最大限に尊重していくこととしている。各事項に関する協議については以下のとおりである。
〔第6条〕 前回までの報告に以下の事項を追加する。 本報告期間中に開催されたILO懇談会における協議の詳細については、議事要旨(別紙2及び別紙3)を参照されたい。 また、ILO海事協議会の議事要旨等協議に関する情報については、ILO海事協議会が開催される毎に報道機関に概要を通知するとともに、国土交通省のホームページ上で公開している(別紙4)。 〔ILO条約勧告適用専門家委員会の直接要請について〕 上記「2.〔第6条〕」で述べているとおり、ILO懇談会における協議の詳細については、議事要旨(別紙2及び別紙3)を参照されたい。 |
3 | .IIIについて 前回までの報告に以下の事項を追加する。 ILO海事協議会の運営については、政労使三者の合意を得て作成されたILO海事協議会開催要綱に基づき、国土交通省に委任されているところである。このILO海事協議会の運営に関する検査機関については、明文の規定は設けられていないが、運営に際しては、議題等について労使の意見を聞いていること、議事概要をホームページ上で公開していることから、実質的には適正な運営が確保されていると認識している。 |
4 | .IVについて
該当無し |
5 | .Vについて
該当無し |
6 | .VIについて
本報告の写を送付した代表的労使団体は、下記のとおり。 (使用者団体)日本経済団体連合会 (労働者団体)日本労働組合総連合会 |
(別紙1)
ILO海事協議会開催要綱
平成16年8月
国土交通省海事局船員政策課
国土交通省海事局船員政策課
1 | .目的 国際労働機関の活動に関する事項のうち海上労働に関わるものについて、政府、使用者及び労働者の代表者の間で効果的な協議を行うため、ILO海事協議会(以下「協議会」という。)を開催する。 | ||||||||
2 | .メンバー 労使の代表的団体(全日本海員組合、社団法人日本船主協会、日本内航海運組合総連合会、社団法人日本旅客船協会及び社団法人大日本水産會)の代表者及び国土交通省海事局関係職員により構成する。 | ||||||||
3 | .テーマ ILO第144号条約(国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約)第5条1に規定する海上労働に係るILO活動について協議を行うとともに、ILO海事総会の報告等を行う。 | ||||||||
4 | .協議会の運営
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(別紙2)
第3回ILO懇談会議事要旨
1.日時: | 平成16年9月1日(水) 14:00〜16:00 |
2.場所: | 厚生労働省専用第20会議室 |
3 | .出席者:(敬称略)
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4 | .議題
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5.議事要旨
(司会)
それでは第3回ILO懇談会を開催いたします。私、厚生労働省大臣官房国際課長の村木が、本日の司会を務めさせていただきます。はじめに、開催に当たりまして、主催者であります厚生労働省の長谷川総括審議官から一言御挨拶をさせていただきます。
(長谷川総括審議官)
本日はお忙しいところ第3回ILO懇談会にお集まりいただきましてありがとうございます。 この懇談会は御承知のとおり、144号条約が我が国においても昨年6月に発効いたしまして、昨年8月が第1回、今年の4月の第2回に引き続きまして、今回が第3回の会合となります。今回の会合におきましては昨年8月の会合と同様に、既批准条約の年次報告等についての協議を中心に議論を行いたいと考えております。本日お集まりいただいた労使のメンバーにおかれましても、本懇談会が建設的に行われ、意思の疎通がより一層深められるよう、御協力のほどをよろしくお願い申し上げます。 また、本日来ていただいております関係各省庁、そして省内他部局の皆様のいろいろな協力に感謝を申し上げますとともに、この懇談会の議論を踏まえて今後とも引き続き御協力のほどをよろしくお願いいたします。
(司会)
つづきまして出席者の皆様の紹介をさせていただきます。 労使、政の順番で御紹介します。 まずは連合の中嶋総合国際局長、長谷川雇用法制対策局長、大久保国際局部長、続きまして使用者側の鈴木日本経団連国際協力センター参与、讃井日本経団連国際労働政策本部長、川本労働政策本部長、最後に政府側は、ただいま御挨拶申し上げました長谷川総括審議官、私が国際課長の村木、国際課海外情報室長の野地、同じく国際課の辻田企画官、ILO担当の課長補佐の宮原、そして今日は外務省から国際社会協力部の山田専門機関課長がお見えになっています。
(司会)
それでは、早速議題のほうに入りたいと思います。議題1は、2004年年次報告についての協議でございます。まず、政府側より報告案について御説明いたします。
(政府側説明)
(司会)
以上が政府報告案の説明でございます。このあと、労使双方の御意見を伺ったあと、質疑応答に移りたいと思います。 それではまず、労働者側の御意見について御説明をお願い申し上げます。
(労働側)
29号については、条約の適用とは直接の関係はありませんが、連合は日本政府に対して、被害者に対し、被害者の納得のいくような措置を追求するように、これは改めてという形ですが、引き続き求めていきたいと思っております。
これについては、強制労働、強制連行問題について、未払賃金の問題がありまして、当時の金額にして合計約1億円東京法務局に供託されたままになっていまして、特に死亡弔慰金が遺族の方に渡っていない状態です。また法的に請求権がないという取扱いになっているために、供託されている金額が遺族・御本人のところに渡らず宙に浮いた存在になってしまっていますので、そういう問題について納得のいく措置がとられないと、確かに連合としてもILOの問題として取り上げられるべきではないという見解を持ってはおりますが、関係国の代表等の理解を得るというのもなかなか難しいという現実もありますので、あえてコメントさせていただきます。
144号に関しては、たとえば未批准条約について、その条約がなぜ批准できないのかなど、問題点を明らかにして、それをどのように克服していくのかということを政労使三者で協議していくという役割が当懇談会の大きな役割だと思っていますので、全面的、率直かつ有意義な協議がなされるべきだという考えを持っております。
(司会)
ありがとうございました。 続きまして使用者側の御説明をお願いいたします。
(使用者側)
検討いたしました結果、特段加筆修正すべき記述はない、とさせていただいております。
(司会)
ありがとうございました。 以上、政府側からの御報告と、労使それぞれの御意見について御説明いただきました。 これらにつきまして、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。
(使用者側)
年次報告で労働基準法第5条違反容疑で労働基準監督官が検察庁に送検した件数等の記載がなされているところがありますが、傾向として上がっているのでしょうか、下がっているのでしょうか。
(労働者側)
「権限ある機関への報告の義務」について、ILOで議論されたことが国内の政策の中に反映されるべきだと考えておりますが、今のやり方には少し疑問もあり、この場でも議論すればいいのではないかと思います。
(使用者側)
船員の身分証明に関する条約に係る権限ある機関への報告のような海事の案件についても、協議ではなくとも、この場で報告をしていただいたほうが望ましいと考えます。
(司会)
ご指摘の点については、柔軟な対応に努めたいと思います。
「権限ある機関への報告」ということについては、内部で一度議論したいと思います。また、世の中一般への周知という観点も重要だと考えます。また、未批准条約については、伺った問題意識を踏まえ、実質的な議論ができるような用意をしたいと思います。
(労働者側)
国会への報告をどうやってするかということに関して、厚生労働委員会を活用するなどの方法があると思います。 また、ILO総会の報告を労使の方が政府よりもよく知っているように感じます。労使のほうが早く情報が伝わっていて、その情報を活用していくスピードが速いのではないかと思います。
(山田外務省専門機関課長)
29号条約について、この場でありましたお話は当省でも報告して、これから外務省として何がしていけるのかをよく考えていきたいと思っております。
(政府側)
使用者側から御指摘のありました件数の傾向についてですが、一度きちんと整理させていただきたいと考えております。
(司会)
それでは議題1の年次報告案についてはこれで終了させていただきます。なお今後の取扱いについては、政府報告案については今日出ました御意見も含めまして関係省庁に送付して、報告案の修正も含めて検討させていただきます。また労使の御意見について、最終的に労使の御意見を添付する形でILOに提出いたします。
続きまして議題2の第92回ILO総会について御説明いたします。
(政府から説明)
(司会)
総会に出席されました皆様方、それぞれ御意見、御感想をお願いします。
(使用者側)
今回は、ソマビア事務局長の第2期ということで、新しいページが開かれた総会だったと思います。ワールドコミッションの報告書に書かれているように、ソーシャル・ダイアログが大切になってきており、グローバルプレーヤーとしてのアカウンタビリティ、情報開示、そしてコラボレーションが重視されていくというのが今後のILOの流れになるのではないかと思っております。
(労働者側)
ワールドコミッション報告は、実施をどうするかが問題です。その点、ソマビア事務局長来日時のシンポジウムは意欲的でいいことだと思います。労働側としても、報告を参考として、果たすべき役割を考え、進めていきたいと思います。
(長谷川総括審議官)
今のお話でもありましたが、ワールドコミッション報告を今後ILOがどのように展開していくのかというのが最重要ではないか、という気がします。今後ILOとして具体的に理事会でどういう議論をしていくのかというのが一つのポイントだと思います。
もう一点として、いろいろな国際機関の間の連携というものに関心が持たれてきています。経済政策や社会問題をやっている国際機関ともっと議論を深めるべきだということで、ワールドコミッション報告でいえばブレトンウッズの機関とか、国連とかWTOとか、そういうところでもっとILOを含めたいろんな議論がなされるべきだと思っております。ILOだけで決められる話でもないので、議論の動向を注視しなくてはならないと考えております。
(司会)
他に御発言が無いようでしたら、議題2を終了させていただきます。
本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。
−了−
(別紙3)
第4回ILO懇談会議事要旨
1.日時: | 平成17年4月18日(月) 15:00〜17:00 |
2.場所: | 経済産業省別館1014会議室 |
3 | .出席者:(敬称略)
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4 | .議題
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5.議事要旨
(司会)
それではILO144号条約に基づく第4回ILO懇談会を開催いたします。私、厚生労働省大臣官房国際課長の村木が、本日の司会を務めさせていただきます。はじめに、開催に当たりまして、主催者であります厚生労働省の厚生労働省総括審議官の恒川から一言御挨拶をさせていただきます。
(恒川総括審議官)
本日はお忙しいところお集まりいただき、心より感謝申し上げます。
本懇談会は、ILO144号条約が平成15年6月に発効したことを受け、この条約に定める、政労使の代表者の間での効果的な協議を行うことを目的として開催するものであり、平成15年8月、平成16年4月及び平成16年9月に続き、今回が第4回目の会合となります。
今回の会合におきましては、条約第5条第1項(c)の規定に基づき、未批准条約について議論するということになっております。なお、昨年4月にご議論いただいたILO第162号条約(石綿条約)に関しましては、現在批准登録に向けて、国会でご審議いただいているところであり、先週12日に参議院外交防衛委員会で審議がなされ、全会一致で採決されましたのでご報告させていただきます。
ご参集いただいた労使のメンバーにおかれましては、国際労働行政の発展のためにも、建設的な議論が行われるよう、また、これを通じて、政労使の間の意思の疎通がより一層深められるよう、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
また、政労使の間の協議を円滑に行っていく上では、関係する他府省庁及び省内他部局の協力が不可欠です。ご出席の関係省庁等の方々には、これまでのご協力に心より感謝申し上げるとともに、引き続きよろしくお願いいたします。
(司会)
つづきまして出席者の皆様の紹介をさせていただきます。
労働側、中嶋連合総合国際局長、長谷川雇用法制対策局長、大久保国際局部長、続きまして使用者側、鈴木日本経団連国際協力センター参与、讃井日本経団連労働法制本部長、川本労働政策本部長の代理で高澤日本経団連労働法制本部国際関係グループ長、最後に政府側は、ただいま御挨拶申し上げました恒川総括審議官、私が国際課長の村木、国際課海外情報室長の野地がメンバーとなっております。そして今日は外務省から国際社会協力部の山田専門機関課長にお越し頂いています。
それでは、議題1「ILO理事会の報告等」ということで、政府側より、資料に基づいてご説明させていただきます。
(資料1に基づき政府側説明)
(司会)
ただいまの件について、ご質問等ございましたらお願いします。
(労働側)
資料1の(1)予算額について、数字の説明を希望します。前回予算と比較して何%増というときの数字は何と比較しているのですか。当方で把握している数字と異なっています。
(3)ミャンマー案件に関しては、政府、ILOの適切な対応を評価しています。
(6)SR(social responsibility)については、ISOは「C」を取って「SR」という呼び方をしているが、、ILOの中では「企業の社会的責任」ということで「C」は取られていないので、CSR(corporate social responsibility)とするべきではないでしょうか。
また、MNE小委員会の構成が6人から8人に変わっているので、その案について報告しておくべきです。
(政府側)
予算については、後ほど送付します。それ以外のご指摘に感謝します。
(使用者側)
資料1の(1)使用者側の「更なる努力」のみならず、政府側も更なる削減を求めたものと認識しています。書きぶりの修正をお願いします。
(2)については「ILO事務局内の」人的資源戦略を求めたものです。
(3)ILO憲章第33条の適用については、長いサマリーのため、なかなかわかりにくい結論だったのですが、総会で再度検討するということになったものです。
(4)記載されている3つの他、2つくらいあったと思います。
(5)政府グループを代表して、という書きぶりを、「全」政府グループを代表して、と修正すべきです。前代未聞のことが起きたという意味で、きちんと書いた方が良いでしょう。
(6)SRについては労働側が言うようにCSRとして問題ないでしょう。
(政府側)
その他に何かあれば。
(労働側)
10月のアジア太平洋地域会合については、長谷川地域総局長が労使双方に対し情報提供を行いました。また、開催日程が1日短くなったということを、番外編として、理事会に関連して報告します。
また、ネパールの件は2月1日に起きたばかりのことでもあり、触れるべきではないでしょうか。
結社の自由委員会も開催されました。日本案件は愛知の教職員の問題が取り上げられましたが、委員会が「更なる審議の要なし」という判断を示しましたので、取り上げる必要はないでしょう。また、結社の自由委に関して日本企業がターゲットにされている事例がフィリピン、インドネシアなどにあり、ウォッチする必要があります。
(使用者側)
バランスということでは、ベネズエラが使用者団体の結社の自由侵害事案として提訴されているので、それをとりあげてはどうでしょうか。
(政府側)
OECDとの関係も含め注視していきたいと思います。ご指摘の点は検討します。
(※:ホームページには上記指摘を踏まえて修正をした後の資料を掲載しております。)
(司会)
では、議題2として、4つの条約について御議論いただきます。
(資料2−1〜2−4に基づき政府側説明)
(司会)
以上が政府報告案の説明でございます。このあと、労使双方の御意見を伺ったあと、質疑応答に移りたいと思います。
それではまず、労働者側の御意見について御説明をお願い申し上げます。
(労働側)
この懇談会の意義に鑑み、条約批准にあたって、どの法律のどの条項が抵触するのか、具体的な条文をお示しいただきたいと考えます。例えば、155号条約については、労働安全衛生法改正が控えているところですが、これが改正されたとして、他にネックになる法律があるのですか。どういう法律をどうすればいいのか。議論の材料を早めにお示しいただきたい。我々は我々なりに検討していきたいので。
国際労働基準の促進を目的としてILO条約を批准するためには、具体的にはどの法律のどの条文が問題になっているのですか。他の国では、批准してから国内整備というところもあります。
(政府側)
批准については、ILOの基本条約、優先条約を優先的に検討し、また、法改正などにより批准のハードルが低くなったりしたものなどから、具体的に検討に入ります。条約は数多くあり、それぞれの条項が担保されているかをひとつひとつ見ていく必要があるため、ある程度批准が視野に入らないと具体的な検討がしにくいこともあります。
(労働側)
例えば、111号条約も受け皿となる法律が成立すれば即批准できるのでしょうか。三者で協議をしているのですから、情報をいただかないと。今回も政労使あわせて4つの条約について取り上げていただいているわけですが、どの国内法のどの条文担保されているか、内々であっても資料をいただきたいのです。
(政府側)
手続的なものを申し上げると、条約の批准に際しては、関係省庁と協議の上で、担保状況について整理することとなります。条約が最終的に関係省庁と協議する段階に入るのはかなりあとの話になります。関係省庁と調整が済んでオーソライズされたものを出せるかどうかは非常に難しいのです。
(労働側)
たとえば111号条約については、ILOから担当も呼んで見解を聞いたではないでしょうか。その上で担保についても検討したのではないでしょうか。基本8条約のうち、残された2つについて、批准を検討していくことは重要。少なくとも105号と111号については、問題点の整理等をした資料を出していただけませんか。
(使用者側)
このILO懇談会で取り上げる条約すべてがすんなり批准できるものではないだろうが、何が邪魔をしているのか、考えながらやっていくべきと考えます。
未批准条約を批准するために、手続について議論するのなら、とにかく情報を提出していただきたい。
ここで未批准条約について、可能なものは批准を、という流れになるなら、では可能とは何か、どの辺りがネックとなるのか、ある程度、リストで紹介いただいた上で皆で議論をしていくべきです。議論を始めるのであれば、粗々のものでも何か材料をいただかないと始まりません。
(政府側)
我々が考えているもので、各省と調整したものではない、という条件付きならば出せるものがあるかもしれません。
(使用者側)
議論の材料ということで資料があると良いわけです。
(労働側)
例えば、今回、安全衛生法が改正されれば、一つ、批准に近づくことになります。では、残りの論点は、となると材料を前広に出していただいて、議論していきたいのです。
(政府側)
国内法令上、担保状況については各省にもまたがるものであり、オーソライズされていないものは、この場で出せないのです。関係省庁としても、具体的な批准プロセスに乗らない限りは作業にとりかかるのは難しい。
技術的な話を申し上げるならば、担保表を作り、それぞれの論点について通達のレベルまで見て検討するのです。包括的な条文だと、それが膨大な数に上ります。我が国の法体系と条約の体系では、形が違いますし、ILOに質問しても返事が来るとは限りません。
何より、この場が144号条約に基づく公式な場であるだけに、いい加減なものを出せないのです。そして、この場で何がネックとなっているか細かく見るのは不可能です。
決して反論ではありませんが、以上の事情があることをご理解下さい。私どもとしてもご指摘を踏まえ、努力したいと考えます。
(使用者側)
方向性は確保しなければなりません。むろん、批准の数の問題もありますが、むしろ批准に向けて条約を選択していく基準が必要です。総会での議論などを踏まえて、「これは批准せねばならない」というものを外務省に御提言いただいてもいい。このままでは、日本は置いていかれます。
(使用者側)
155号についていえば、どの条文が問題となるというような限定はされているのでしょうか。
(政府側)
全て限定されているとは言えませんが、条項ごとに内容を調査し、用語の意味を確認した上で国内法制との整合性を見る必要があります。通常の法律・政策の立案より、もう一段階難しいのです。
(労働者側)
155号条約について、安全衛生法が改正されれば、「2以上の企業が同一の作業場において同時に活動に従事する場合には、これらの企業はこの条約の要件を適用するに当たって協力する。」という点は担保されるのですか。
3条(c)の間接雇用について、派遣はクリアできていますが、では請負はどうでしょうか。また、3条の(a)、(b)については、一般の公務員との関係ではどうでしょうか。
(政府側)
国家公務員は労働安全衛生法から除外されていますが、人事院規則で同様の面が規定されています。個別に見ていく必要があります。具体的なデマケがどうなっているかは、整理しきれていません。
なお、請負といえども、使用者はいます。重層的なもの、例えば建設業や造船業については統括的に管理をすることになっています。製造業は、今回法改正ができれば、これを義務づけられます。
(労働側)
155号をクリアするために、何らかの形で問題が見えないと。今回の法律改正の中でクリアしていこうとしているのなら、審議会の段階から、155号条約の批准を視野に入れながら何が抜けているのか、何をフォローせねばならないかを検討していくために、この場で論点を明らかにしてもらう必要があります。
日本国内だけの問題ではないのです。例えば中国で何かをする場合、ILO条約が一つの国際言語となる。批准というだけの議論だけではなく、批准を視野に入れていく、という姿勢が大事ではないでしょうか。
(使用者側)
144号条約の批准の前にも、具体的な条約の批准に当たって、何がネックなのかを議論しましたことがありました。議論する以上は、各省とも協議した上で資料を出していただきたい。
我々としては基本条約の未批准のものについては定点観測的に見る必要があると思っています。そのようなものは、先進国として批准に向けた具体的な議論をすべきであり、ある程度の批准のネックがわかっていたら、出して議論すべきではないですか。
(政府側)
具体的な方法については検討させていただきたいと考えます。オーソライズされたものを出すのはなかなか困難ですが。
(司会)
では、時間も押しておりますので、111号条約についてお願いします。
(労働側)
111号条約は人権擁護法(法案)とも関連しますが、批准していくという体制が必要ではないでしょうか。
(使用者側)
今回、111号条約が基本条約であることに鑑み、取り上げてもらうことを提案しました。批准(の可否)を議論するに際して、もう少し臨場感のある情報提供をお願いします。
(政府側)
今いただいたご指摘がありましたこと、関係省庁にもフィードバックしていきたいと考えています。
(司会)
労働側からご要望のありました173号条約についてはいかがでしょうか。
(労働側)
173号条約に関しては、公務員も対象となると言うが、そのような公務員の退職金や未払賃金はどう整理されるのか、また、農林水産業従事者などの扱いもあると聞いておりますが、それだけが批准できない理由でしょうか。国内法でどういう所を整理しなければならないのでしょうか。民法を改正して労働債権を一番上に持ってくることが必要なのでしょうか。次回までに具体的な論点をご教示下さい。
(政府側)
次回までに、ご指摘の内容について対応します。
(司会)
では、使用者側から要望のありました105号条約についてはいかがでしょうか。
(使用者側)
これも基本的な条約として取り上げていただいたものです。
(労働側)
G8加盟国のうち、日本だけが未批准というのはいかがなものでしょうか。国公法、地公法の「(ストを)あおり、そそのか」した者に対して懲役刑を課し得る条項が条約第1条(d)に抵触して批准できないわけですが、何とか見通しを立てていただきたい。ガス、水道等個別事業法でスト権に制約をかけている場合でも、懲役刑を課しているならば、条約に抵触するのではないでしょうか。
(政府側)
条約の批准に際して国内法令で担保できているかどうかは、当該条文が適用対象となる者がいるかというよりも、制度論としてどうか、という点を中心に考える必要があると考えています。
(司会)
最後に、「その他」として、資料3−1についてご説明します。
(政府側)
国際労働機関憲章第19条5(b)及び6(b)の規定に基づき、ILO総会で採択された条約及び勧告は、総会の会期終了後1年以内、又は例外的事情のためにそれが不可能な場合でも遅くても18ヶ月以内に、権限ある機関に提出しなければならないとされているところです。そして当該規定に基づき、政府は、和文のテキストを付した上で、条約及び勧告の内容並びに条約及び勧告に関して執るべき措置についての提案を権限ある機関に提出しているところです。
また、条約及び勧告の権限ある機関への提出は、ILO第144号条約第5条1(b)に基づき、代表的な労使団体への協議事項とされています。
ところで、昨年の第92回ILO総会で採択されたILO第195号勧告についても、今回の懇談会の開催の前に十分な余裕をもって、事務局から代表的労使団体に送付し、今回の懇談会の場で協議するよう準備してきたところですが、諸般の事情から、今回の懇談会の場に提出することが困難であるため、作業が終了次第、事務局より速やかに労使団体に送付し、書面の交換等を通じて持ちまわりで三者間の意見を調整した上で権限ある機関へ提出することとしたいと考えております。
事務局としましても、今回の取扱いが特例であることに留意し、次回以降、ILO総会で採択された条約及び勧告の権限ある機関への提出に係る事務作業について、遺漏無きよう努めたいと考えております。
(使用者側)
本件については、能力開発が団体交渉の対象となっている点を問題として、使用者側はグループ全体として反対票を投じました。ただ、他国の使用者側の中には賛成票や棄権票を投じたところもありました。
(労働側)
1年以内に報告、といってもいつもギリギリになってから報告がなされていますが。総会で採択されてからしばらく経っています。
(政府側)
11月後半になってようやくILO事務局からオーセンティックテキスト(認証謄本)が送られてきており、それから和訳作成等の作業を始めているためであることをご理解願えないでしょうか。
(司会)
他に御発言が無いようでしたら、本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。
−了−
(別紙4)
第1回ILO海事協議会の概要について
平成16年9月15日
<問い合わせ先>
国土交通省海事局
船員政策課国際企画室
<問い合わせ先>
国土交通省海事局
船員政策課国際企画室
1. | 日時 8月30日(月) 15:30〜16:10 | ||||||
2. | 場所 国土交通省10階海事局会議室 | ||||||
3. | 出席者
|
4 | .会議の概要
|
注 | .本協議会は、ILO第144号条約(国際労働基準の実施を促進するための三者の間の協議に関する条約)が、平成14年の批准により我が国において昨年より発効したことを受け、国際労働機関(ILO)の活動に関する事項のうち海上労働に係わるものについて、政府、使用者及び労働者の代表者の間で協議を行うため、開催したもの。 |