(案)
2005年日本政府年次報告
「電離放射線からの労働者の保護に関する条約(第115号)」
(2000年6月1日〜2005年5月31日)


.質問Iについて
前回までの報告に変更又は追加すべき事項はない。


.質問IIについて
(1
第3条)
 ICRP1990年勧告等を踏まえ、平成13年3月に電離放射線障害防止規則(以下「電離則」という。)の一部が改正された。
 その主要な改正概要は以下のとおりである。
(1)電離則で使用されている用語の変更(「線量当量」を「線量」に、「実効線量当量」を「実効線量」等に変更した。)
(2)管理区域の設定基準を改正((1)実効線量が3ヶ月につき1.3mSvを超えるおそれのある区域、(2)放射性物質の表面密度が表面汚染限度の1/10を超えるおそれのある区域)(電離則第3条)
(3)施設等における線量の限度の改正(施設内の労働者が常時立ち入る場所の実効線量を1週間につき1mSv)(電離則第3条の2)
(4)放射線業務従事者の被ばく限度の改正(実効線量は5年間につき100mSv、かつ、1年間につき50mSv、女性(妊娠する可能性がないと診断されたものを除く。)の実効線量は3ヶ月につき5mSv、妊娠と診断された女性について、妊娠期間中につき内部被ばくによる実効線量は1mSv、腹部表面の等価線量は2mSv)(電離則第4条、第5条、第6条)
(5)緊急被ばく時における被ばく限度の改正(眼の水晶体の等価線量について300mSv、皮膚の等価線量について1Sv)(電離則第7条)
(6)線量記録及び健康診断結果の保存年限の改正(30年保存)(電離則第9条、第57条)
(7)健康診断の改正(健康診断の検査項目の追加及びその省略方法等の改正)(電離則第56条)

 船員電離放射線障害防止規則についても、1990年のICRP勧告等を踏まえ、平成13年4月に同趣旨の改正を行った。(船員電離放射線障害防止規則第4条、第5条、第6条、第7条、第9条、第10条、第12条、第13条、第17条の2、第18条、第19条、第23条、第39条、第42条)

第6条)
 ICRP1990年勧告等を踏まえ、以下のとおり改正した。
(1)実効線量
 100mSv/5年間、かつ、50mSv/1年間(ア及びイを除く。)
 女性(妊娠する可能性がないと診断されたものを除く。) 5mSv/3ヶ月
 妊娠と診断された女性 妊娠中につき1mSv(内部被ばく)
(2)等価線量
 眼の水晶体 150mSv/1年間
 皮膚    500mSv/1年間
 妊娠中の女性の腹部 妊娠中につき2mSv

 船員についても1990年のICRP勧告等を踏まえ、平成13年4月に同様 の改正が行われた。(船員電離放射線障害防止規則第6条、第7条)

第7条)
 本条の水準については、電離則第4条、第5条及び第6条に規定されている。また、本条2については、前回までの報告に追加、変更すべき事項はない。
 (参考)
 (放射線業務従事者の被ばく限度)
 第四条 事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
 2 事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第六条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、三月間につき五ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
 第五条 事業者は、放射線業務従事者の受ける等価線量が、眼の水晶体に受けるものについては一年間につき百五十ミリシーベルト、皮膚に受けるものについては一年間につき五百ミリシーベルトを、それぞれ超えないようにしなければならない。
 第六条 事業者は、妊娠と診断された女性の放射線業務従事者の受ける線量が、妊娠と診断されたその時から出産までの間(以下「妊娠中」という。)につき次の各号に掲げる線量の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める値を超えないようにしなければならない。
 内部被ばくによる実効線量については、一ミリシーベルト
 腹部業面に受ける等価線量については、二ミリシーベルト

 船員についても船員電離放射線障害防止規則第6条及び第7条に同水準が規定されている。

第10条)
 船員については、船員電離放射線障害防止規則第49条に通報義務及び通報の態様について規定している。

第12条)
 電離則第56条に規定されている健康診断項目のうち、自覚症状の有無を新たに追加し、健康診断項目を以下のとおりとした。
(1)被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容及び期間、放射線障害の有無、自覚症状の有無その他の放射線による被ばくに関する事項)の調査及びその評価
(2)白血球数及び白血球百分率の検査
(3)赤血球数の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査
(4)白内障に関する眼の検査
(5)皮膚の検査
 また、定期に行う健康診断については、医師が必要でないと認めるときは、健康診断項目のうち(2)〜(5)までの項目の全部又は一部を省略できることとした。
 さらに、過去1年間に受けた実効線量が5mSvを超えず、かつ、今後1年間受ける実効線量が5mSvを超えるおそれのない者について、医師が必要と認めないときは、健康診断項目のうち(2)〜(5)までの項目を行うことを要しないこととした。
 この他、(4)及び(5)の診断の頻度については、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後3月以内ごとに1回としていたが、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後6月以内ごとに1回とした。

 なお、船員についても、平成13年4月に同様の改正を行った。(船員電離放射線障害防止規則第39条)

第13条)
 電離則第43条により、所定の事故が発生し、その事故によって受ける線量が1.5レムを超えるおそれのある区域が生じたときは、その旨を当該所在地を管轄する労働基準監督署長に報告することを事業者に義務づけていたが、平成13年3月の電離則の改正により、所定の事故が発生したときは、その事故によって生じた線量に関わりなく、その旨を当該所在地を管轄する労働基準監督署長に報告すべきこととした。


(2)2001年専門家委員会からの直接要請について
 委員会が提供を求めている規則、告示等の関係条項は、別添のとおり。

(@)条約第3条第1項及び第6条第2項
 電離則の改正が平成13年3月に行われ、ICRPの1990年勧告の線量限度の内容が取り入れられた。
 これにより、例えばICRPの1990年勧告が示している線量限度である「5年間で100mSv、ただし、いかなる1年間にも50mSvを超えないこと。」を、また、妊娠中の女性の職業被ばくの線量限度である「腹部表面の等価線量限度2mSv、内部被ばく1mSv」等が電離則に規定された。
 なお、2001年専門家委員会の直接要請に「放射線審議会が議論の後で国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告で述べられた放射線被ばく限度量の国内法令への取り入れの可能性を拒否した。」とあるのは誤りであり、放射線審議会は、ICRP1990年勧告の我が国の法令への取り入れを意見具申している。

 また、船員についても、船員電離放射線障害防止規則が平成13年4月に改正され、同様の内容が取り入れられた。

(A)緊急時における被ばく状況
 ICRPの1990年勧告の緊急被ばくについては、「人命救助を例外として、約500mSvを超える実効線量とならないようにすべきである。また、皮膚の等価線量については、約5Svを超えることは許されるべきではない。」としている。
 これを踏まえ、平成13年3月に電離則が改正され、緊急作業時における被ばく限度は、実効線量は100mSv、眼の水晶体に受ける等価線量については300mSv、皮膚に受ける等価線量については1Svと規定された。

 また、船員についても、平成13年4月に同様の改正を行った。

(B)選択可能な雇用についての条項
 我が国における放射線業務従事者の年間の実効線量は、基本的に限度値以下であり、各事業場において労働者の線量管理が適正に行われていると考えている。ちなみに、商業用の原子力発電所の労働者の平成14年の年平均線量は、1.3mSvである。このように、特殊な事故等以外、ご指摘のような状況は起こりにくいと考えられる。
 また、電離則に定める措置を講じることにより、労働者の被ばくの低減化に努めている。

 船員についても、船員電離放射線障害防止規則に定める措置を講じることにより、労働者の被ばく低減化に務めている。


.質問IIIについて
 2001年1月6日より、厚生省と労働省が統合され、厚生労働省が発足した。
 2001年1月6日より、運輸省と建設省が統合され、国土交通省が発足し、2002年7月に国土交通省の組織が地方組織も含め改組された。
 船員については船員法に基づいて船員労務官が、改組された地方運輸局等(11カ所)及び運輸支局等(51カ所)に置かれている。


.質問IVについて
 前回までの報告に変更又は追加すべき事項はない。


.質問Vについて
 前回までの報告に変更又は追加すべき事項はない。


.質問VIについて
  本報告の写しを送付した代表的な労使団体は、下記のとおり。
   (使用者団体)日本経済団体連合会
   (労働者団体)日本労働組合総連合会



茨城県東海村のウラン加工施設の事故を踏まえて改正された
労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の改正後条文

労働安全衛生規則

(特別教育を必要とする業務)
三十六条 法第五十九条第三項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
(略)
十八の二 加工施設(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第十三条第二項第二号に規定する加工施設をいう。)、再処理施設(同法第四十四条第二項第二号に規定する再処理施設をいう。)又は使用施設等(同法第五十三条第三号に規定する使用施設等(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(昭和三十二年政令第三百二十四号)第十六条の二に規定する核燃料物質の使用施設等に限る。)をいう。)の管理区域(電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号)第三条第一項に規定する管理区域をいう。次号において同じ。)内において核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質をいう。次号において同じ。)若しくは使用済燃料(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第二条第八項に規定する使用済燃料をいう。次号において同じ。)又はこれらによつて汚染された物(原子核分裂生成物を含む。次号において同じ。)を取り扱う業務
十八の三 原子炉施設(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第二十三条第二項第五号に規定する原子炉施設をいう。)の管理区域内において、核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによつて汚染された物を取り扱う業務


電離放射線障害防止規則

(加工施設等における作業規程)
四十一条の三 事業者は、加工施設(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 (昭和三十二年法律第百六十六号)第十三条第二項第二号 に規定する加工施設をいう。第五十二条の六第一項において同じ。)、再処理施設(同法第四十四条第二項第二号 に規定する再処理施設をいう。第五十二条の六第一項において同じ。)又は使用施設等(同法第五十三条第三号 に規定する使用施設等(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令 (昭和三十二年政令第三百二十四号)第十六条の二 に規定する核燃料物質の使用施設等に限る。)をいう。第五十二条の六第一項において同じ。)の管理区域内において核燃料物質(原子力基本法 (昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号 に規定する核燃料物質をいう。以下同じ。)若しくは使用済燃料(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第二条第八項 に規定する使用済燃料をいう。以下同じ。)又はこれらによつて汚染された物(原子核分裂生成物を含む。以下同じ。)を取り扱う作業を行うときは、これらの作業に関し、次の事項について、労働者の放射線による障害を防止するため必要な規程を定め、これにより作業を行わなければならない。
 加工施設、再処理施設又は使用施設等に係る設備の操作
 安全装置及び自動警報装置の調整
 核燃料物質による偶発的な臨界を防止するための措置
 作業の方法及び順序
 外部放射線による線量当量率及び空気中の放射性物質の濃度の監視に関する措置
 天井、床、壁、設備等の表面の汚染の状態の検査及び汚染の除去に関する措置
 異常な事態が発生した場合における応急の措置
 前各号に掲げるもののほか、労働者の放射線による障害を防止するため必要な措置
 事業者は、前項の規程を定めたときは、同項各号の事項について関係労働者に周知させなければならない。

(原子炉施設における作業規程)
四十一条の四 事業者は、原子炉施設(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第二十三条第二項第五号 に規定する原子炉施設をいう。第五十二条の七第一項において同じ。)の管理区域内において、核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによつて汚染された物を取り扱う作業を行うときは、これらの作業に関し、次の事項について、労働者の放射線による障害を防止するため必要な規程を定め、これにより作業を行わなければならない。
 作業の方法及び順序
 外部放射線による線量当量率及び空気中の放射性物質の濃度の監視に関する措置
 天井、床、壁、設備等の表面の汚染の状態の検査及び汚染の除去に関する措置
 異常な事態が発生した場合における応急の措置
 前各号に掲げるもののほか、労働者の放射線による障害を防止するため必要な措置
 事業者は、前項の規程を定めたときは、同項各号の事項について関係労働者に周知させなければならない。

(加工施設等において核燃料物質等を取り扱う業務に係る特別の教育)
五十二条の六 事業者は、加工施設、再処理施設又は使用施設等の管理区域内において、核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによつて汚染された物を取り扱う業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、次の科目について、特別の教育を行わなければならない。
 核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによつて汚染された物に関する知識
 加工施設、再処理施設又は使用施設等における作業の方法に関する知識
 加工施設、再処理施設又は使用施設等に係る設備の構造及び取扱いの方法に関する知識
 電離放射線の生体に与える影響
 関係法令
 加工施設、再処理施設又は使用施設等における作業の方法及び同施設に係る設備の取扱い
 安衛則第三十七条 及び第三十八条 並びに前項に定めるほか、同項の特別の教育の実施について必要な事項は、厚生労働大臣が定める。

(原子炉施設において核燃料物質等を取り扱う業務に係る特別の教育)
五十二条の七 事業者は、原子炉施設の管理区域内において、核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによつて汚染された物を取り扱う業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、次の科目について、特別の教育を行わなければならない。
 核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによつて汚染された物に関する知識
 原子炉施設における作業の方法に関する知識
 原子炉施設に係る設備の構造及び取扱いの方法に関する知識
 電離放射線の生体に与える影響
 関係法令
 原子炉施設における作業の方法及び同施設に係る設備の取扱い
 安衛則第三十七条 及び第三十八条 並びに前項に定めるほか、同項の特別の教育の実施について必要な事項は、厚生労働大臣が定める。



別添2(PDF:244KB)



船員電離放射線障害防止規則の該当条項
(昭和四十八年六月二十三日運輸省令第二十一号)

第三条 この省令において、「電離放射線」(以下「放射線」という。)とは、次に掲げる粒子線又は電磁波であつて自然放射線以外のものをいう。
 アルファ線、重陽子線及び陽子線
 ベータ線及び電子線
 中性子線
 ガンマ線及びエックス線
 この省令において、「放射性物質」とは、放射線を放出する同位元素(以下「放射性同位元素」という。)、その化合物及びこれらの含有物であつて、次の各 号のいずれかに該当するもの(固体のものでその濃度が七十四ベクレル毎グラム以下のもの及び密封されたものでその数量が三・七メガベクレル以下のものを除 く。)をいう。
 放射性同位元素が一種類のものにあつては、次の表の上欄に掲げる種類に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる数量を超えるもの
種類 数量
ストロンチウム九十又はアルファ線を放出する同位元素(トリウム及びウランを除く。) 三・七キロベクレル
物理的半減期が三十日を超える放射性同位元素(トリチウム、ベリリウム七、炭素十四、硫黄三十五、鉄五十五、鉄五十九、ストロンチウム九十及びアルファ線を放出するものを除く。) 三十七キロベクレル
物理的半減期が三十日以下の放射性同位元素(弗素十八、クロム五十一、ゲルマニウム七十一、タリウム二百一及びアルファ線を放出するものを除く。)、硫黄三十五、鉄五十五又は鉄五十九 三百七十キロベクレル
トリチウム、ベリリウム七、炭素十四、弗素十八、クロム五十一、ゲルマニウム七十一、タリウム二百一、トリウム又はウラン 三・七メガベクレル

 放射性同位元素が二種類以上のものにあつては、前号の表の上欄に掲げる放射性同位元素のそれぞれの数量の同表の下欄に掲げる数量に対する割合の和が一を超えるもの
 この省令において、「放射線業務」とは、次に掲げる業務をいう。
 原子炉の運転の業務及びこれに附随する放射性物質の取扱いの業務
 エックス線を発生させる装置(以下「エックス線装置」という。)の使用の業務
 放射性物質を装備している機器(以下「放射性物質装備機器」という。)の取扱いの業務

第四条 放射線業務が行われる船舶(以下「放射線業務船」という。)の船舶所有者(第四十八条第一項及び第四十九条を除き、以下単に「船舶所有者」という。)は、次の各号のいずれかに該当する船内の区域(以下「管理区域」という。)を標識により明示しなければならない。
 外部放射線による実効線量(臓器以外の組織及び臓器の放射線に対する感度に応じて補正した等価線量(放射線の種類等による影響に応じて補正した 組織が吸収する線量をいう。以下同じ。)の総和をいう。以下同じ。)と空気中の放射性物質による実効線量との合計が三月間につき一・三ミリシーベルトを超 えるおそれのある船内の区域
 放射性物質によつて汚染される物の表面の放射性物質の密度が、国土交通大臣が告示で定める限度(以下「表面汚染限度」という。)の十分の一を超えるおそれのある船内の区域
 前項に規定する外部放射線による実効線量の測定は、一センチメートル線量当量について行うものとする。
 第一項に規定する空気中の放射性物質による実効線量の算定は、国土交通大臣が告示で定める方法により行うものとする。
 船舶所有者は、必要のない者を管理区域に立ち入らせてはならない。
 船舶所有者は、管理区域内の見やすい場所に、第十二条第三項に規定する放射線測定器の装着に関する注意事項、放射性物質の取扱い上の注意事項、事故が発生した場合の応急措置等船員の放射線による障害の防止に必要な事項を掲示しなければならない。

第五条 船舶所有者は、管理区域の外部放射線による線量当量率及び空気中の放射性物質の濃度を、一月以内(第三条第三項第一号の放射線業務に係る管理区域について は一週間以内、使用の方法及び遮へい物の位置が一定しており、かつ、固定して使用する放射線装置(エックス線装置及び放射性物質装備機器をいう。以下同 じ。)又は装備している放射性物質の数量が三・七ギガベクレル以下である放射性物質装備機器に係る管理区域については六月以内)ごとに一回、放射線測定器 を用いて測定し、その都度次の事項を記録し、これを五年間保存しなければならない。
 測定日時
 測定方法
 放射線測定器の種類、型式及び性能
 測定個所
 測定条件
 測定結果
 測定を実施した者の氏名
 測定結果に基づいて実施した措置の概要
 前項に規定する線量当量率は、放射線測定器を用いて測定することが著しく困難なときは、同項の規定にかかわらず、計算により算出することができる。
 第一項に規定する測定又は前項に規定する計算は、一センチメートル線量当量率について行うものとする。ただし、七十マイクロメートル線量当量率 が一センチメートル線量当量率の十倍を超えるおそれのある場所においては、七十マイクロメートル線量当量率について行うものとする。
 船舶所有者は、第一項に規定する測定又は第二項に規定する計算による結果を、見やすい場所に掲示する等の方法により管理区域に立ち入る船員に周知させなければならない。

第六条 船舶所有者は、管理区域内において放射線業務に従事する船員(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量(男子並びに妊娠不能と診断された女子 及び妊娠の意思のない旨を船舶所有者に書面で申し出た女子にあつては、第三十八条第一項第三号に掲げる線量に係る実効線量を除く。)が五年間につき百ミリ シーベルトを超えないようにし、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
 船舶所有者は、女子の放射線業務従事者(妊娠不能と診断された者及び妊娠の意思のない旨を船舶所有者に書面で申し出た者を除く。)の受ける実効線量については、三月間につき五ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
 船舶所有者は、前項の規定にかかわらず、女子の放射線業務従事者の申出等により妊娠の事実を知ることとなつた時から出産までの間(以下「妊娠 中」という。)にあつては、当該放射線業務従事者の受ける実効線量については、汚染された空気を吸入することにより被ばくすること(以下「内部被ばく」と いう。)について、一ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。

第七条 船舶所有者は、放射線業務従事者の受ける等価線量(第三十八条第一項第三号に掲げる線量に係る等価線量を除く。)が一年間につき、次に掲げる値を超えないようにしなければならない。
 眼の水晶体 百五十ミリシーベルト
 皮膚 五百ミリシーベルト
 船舶所有者は、妊娠中の女子の放射線業務従事者について、外部放射線による被ばく(以下「外部被ばく」という。)により腹部表面に受ける等価線量が二ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。

第九条 船舶所有者は、放射線業務船に乗り組む船員であつて放射線業務従事者以外の者(以下「一般船員」という。)の受ける線量(第三十八条第一項第三号に掲げる線量を除く。)が一年間につき次に掲げる値を超えないようにしなければならない。
 実効線量 一ミリシーベルト(国土交通大臣が適当と認めた場合には、五ミリシーベルト)
 眼の水晶体に受ける等価線量 十五ミリシーベルト
 皮膚に受ける等価線量 五十ミリシーベルト

第十条 船舶所有者は、第三十六条第一項各号のいずれかに該当する事故が発生した場合における放射線による障害を防止するための応急の作業(以下「緊急作業」とい う。)を行わせるときは、当該緊急作業に従事する放射線業務従事者(女子にあつては妊娠不能と診断された者及び妊娠の意思のない旨を船舶所有者に書面で申 し出た者に限る。)については、第六条第一項及び第七条第一項の規定にかかわらず、これらの規定に規定する限度を超えて放射線を受けさせることができる。 ただし、当該緊急作業に従事する間に受ける線量は、次の各号に掲げる値を超えないようにしなければならない。
 実効線量 百ミリシーベルト
 眼の水晶体に受ける等価線量 三百ミリシーベルト
 皮膚に受ける等価線量 一シーベルト
 前項の規定は、男子及び女子(妊娠不能と診断された者及び妊娠の意思のない旨を船舶所有者に書面で申し出た者に限る。)の一般船員で、緊急作業に従事する者について準用する。

第十二条 船舶所有者は、放射線業務従事者、管理区域に立ち入る一般船員及び緊急作業に従事する船員の外部被ばくによる線量及び内部被ばくによる線量を測定しなければならない。
 前項に規定する外部被ばくによる線量の測定は、一センチメートル線量当量及び七十マイクロメートル線量当量について行うものとする。ただし、次 項の規定により、同項第二号に規定する部位に放射線測定器を装着させることにより行う測定は、七十マイクロメートル線量当量について行うものとする。
 第一項に規定する外部被ばくによる線量の測定は、胸部(女子(妊娠不能と診断された者及び妊娠の意思のない旨を船舶所有者に書面で申し出た者を 除く。)にあつては腹部)及び次の各号に掲げる場合にあつては当該部位に、フィルムバッジ、ポケット線量計等の放射線測定器を装着させることにより行うも のとする。ただし、放射線測定器を用いて当該線量を測定することが著しく困難な場合には、線量当量率を測定できる放射線測定器によりその値を算出し、これ が著しく困難な場合には、計算によりその値を算出することができる。
 頭部及びけい部、胸部及び上腕部並びに腹部及び大たい部(次号において「体幹部」という。)のうち、被ばくする線量が最大となるおそれのある部 位が胸部及び上腕部以外(女子(妊娠不能と診断された者を除く。)にあつては腹部及び大たい部以外)の部位であるときは、当該部位
 人体のうち被ばくする線量が最大となるおそれのある部位が体幹部以外の部位であるときは、当該部位
 第一項に規定する内部被ばくによる線量の測定は、国土交通大臣が告示で定める方法により、放射線業務従事者については三月(一月に受ける実効線 量が一・七ミリシーベルトを超えるおそれのある女子(妊娠不能と診断された者及び妊娠の意思のない旨を船舶所有者に書面で申し出た者を除く。)及び妊娠中 の女子については、一月)に一回、管理区域に立ち入る一般船員については三月(女子(妊娠不能と診断された者及び妊娠の意思のない旨を船舶所有者に書面で 申し出た者を除く。)にあつては、一月)に一回、緊急作業に従事する船員については当該作業に従事した後速やかに行うものとする。

第十三条 船舶所有者は、一日における外部放射線による実効線量が一ミリシーベルトを超えるおそれがある船員については、前条第一項の規定による外部被ばくによる線量の測定結果を毎日確認しなければならない。
 船舶所有者は、前条の規定による測定又は計算の結果に基づき、遅滞なく、次に掲げる放射線業務従事者の受けた線量を国土交通大臣が告示で定める方法により算出し、その都度記録するとともに、算出の結果を当該船員に知らせなければならない。
 男子又は妊娠不能と診断された女子若しくは妊娠の意思のない旨を船舶所有者に書面で申し出た女子の実効線量の三月ごとの合計及び一年ごとの合計(一年間の実効線量が二十ミリシーベルトを超えた者にあつては、当該一年間を含む五年ごとの合計)
 女子(妊娠不能と診断された者及び妊娠の意思のない旨を船舶所有者に書面で申し出た者を除く。)の実効線量の一月ごとの合計、三月ごとの合計及 び一年ごとの合計(一月に受ける実効線量が一・七ミリシーベルトを超えたことのない者にあつては、三月ごとの合計及び一年ごとの合計)
 等価線量の三月ごとの合計及び一年ごとの合計
 妊娠中の女子の内部被ばくによる実効線量並びに腹部表面に受ける等価線量の一月ごとの合計及び妊娠中の合計
 船舶所有者は、前項の規定による記録を十年間保存しなければならない。

第十七条の二 船舶所有者は、エックス線装置を用いる場合には、国土交通大臣が告示で定める方法により遮へいするものとする。

第十八条 船舶所有者は、胸部集検用間接撮影エックス線装置又は胸部集検用間接撮影エックス線装置以外のエックス線装置を用いて撮影を行う場合には、前条に規定する措置を講ずるほか、国土交通大臣が告示で定める措置を講ずるものとする。

第十九条 船舶所有者は、エックス線装置を用いて透視を行う場合には、第十七条の二に規定する措置を講ずるほか、国土交通大臣が告示で定める措置を講ずるものとする。

第二十三条
 船舶所有者は、次に掲げる措置を講ずることにより、船員が常時立ち入る場所における外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量の合計を一週間につき一ミリシーベルト以下にしなければならない。
 放射線装置室及び放射性物質取扱作業室については、遮へい壁、防護つい立てその他の遮へい物を備え付けること。
 放射性物質のガス、蒸気又は粉じんが発生するおそれがある作業を行う場合には、局所排気装置又は発散源を密閉する設備を設けること。
 第四条第二項の規定は、前項の外部放射線による実効線量の測定について準用する。
 第一項に規定する空気中の放射性物質による実効線量の算定は、国土交通大臣が告示で定める方法により行うものとする。

第三十五条の二 船舶所有者は、放射性物質取扱作業室その他の放射性物質により汚染されるおそれのある場所において、船員が飲食、喫煙その他の放射性物質を飲み込み、又は吸い込むおそれのある行為をすることを禁止し、かつ、その旨を当該場所の見やすい箇所に掲示しなければならない。

第三十六条 船舶所有者は、次の各号のいずれかに該当する事故が発生した場合には、著しく放射線を受け、又は放射性物質により著しく汚染されるおそれが生じた区域から、直ちに、船員を退避させなければならない。
 外部放射線をしやへいするための設備が放射性物質の取扱い中に破損した場合又は当該設備が放射線の照射中に破損し、かつ、その照射を直ちに停止することが困難な場合

第三十八条 船舶所有者は、第三十六条第一項各号のいずれかに該当する事故が発生した場合には、次に掲げる事項を記録し、その記録を十年間保存しなければならない。
 事故が発生した日時及び場所
 事故の原因及び状況
 事故が発生した場所の周辺にいたことにより、又は緊急作業に従事したことにより放射線を受けた船員の氏名及び受けた線量
 放射線による障害の発生状況
 応急措置の概要
 船舶所有者は、前項の場合において、同項第三号に掲げる線量が明らかでない船員については、事故が発生した場合の周辺の必要な場所ごとの外部放 射線による線量当量率又は空気中の放射性物質の濃度を放射線測定器を用いて測定し、その結果に基づいて、計算により当該線量を算出しなければならない。
 第五条第二項の規定は、前項の線量当量率の測定について準用する。

第三十九条 船舶所有者は、放射線業務従事者に対し、放射線業務船への雇入契約が成立した時、及び当該雇入契約が成立した後六月以内ごとに一回、次に掲げる項目(当該 雇入契約が成立した後六月以内ごとに一回行う健康診断にあつては、第二号から第五号までに掲げる項目については医師が必要と認めた項目に限る。)について 医師による健康診断を行わなければならない。
 被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容及び期間、放射線による障害の有無その他放射線による被ばくに関する事項)の調査及びその評価
 白血球数及び白血球百分率の検査
 赤血球数の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査
 白内障に関する眼の検査
 皮膚の検査
 前項の健康診断のうち、放射線業務船への雇入契約が成立した際に行わなければならないものについては、使用する線源の種類に応じて前項第四号に掲げる項目を省略することができる。
 船舶所有者は、第一項の健康診断の際に、当該船員が前回の健康診断後に受けた線量(これを計算によつても算出することができない場合にはこれを推定するために必要な資料、その資料がない場合には放射線を受けた状況を知るために必要な資料)を医師に示さなければならない。
 船舶所有者は、第一項の健康診断を受けさせるべき時期に当該船員が乗り組んでいる船舶が航海中である場合には、当該航海の終了後遅滞なくこれを受けさせなければならない。
 船舶所有者は、放射線業務船に、当該放射線業務船又は当該船舶所有者に属する他の放射線業務船に放射線業務従事者として乗り組んでいた船員を、 放射線業務従事者として、第一項の健康診断(同項第四号及び第五号に掲げる項目のみについて行うものを除く。)を最後に受けた時から六月以内に乗り組ませ るときは、第一項の規定にかかわらず、雇入契約が成立した時に行う健康診断を省略することができる。この場合において、当該健康診断を省略したときは、当 該期間内に、同項の健康診断を行わなければならない。

第四十二条 船舶所有者は、次の各号のいずれかに該当する船員に、速やかに、医師による診察又は処置を受けさせなければならない。
 第三十六条第一項各号のいずれかに該当する事故が発生した場所の周辺にいたことにより、又は緊急作業に従事したことにより放射線を受けたおそれがある者
 第六条第一項若しくは第二項又は第七条第一項に規定する限度を超えて実効線量又は等価線量を受けた者
 放射性物質を飲み込み、又は吸い込んだ者
 洗身等により汚染を表面汚染限度の十分の一以下にすることができない者
 傷創部が汚染された者

第四十九条 船舶所有者(第二号及び第三号に掲げる場合にあつては、放射線業務船の船舶所有者に限る。)は、次の各号に掲げる場合には、それぞれ各号に掲げる事項につ いて、遅滞なく、主たる船員の労務管理の事務を行う事務所の所在地を管轄する地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)に報告しなければならない。
 第三十六条第一項各号のいずれかに該当する事故が発生したとき 事故の概要
 第三十九条第一項の健康診断を行つたとき 健康診断結果
 放射線業務を開始し、又は廃止したとき 次に掲げる事項
 船舶所有者の氏名又は名称、住所及び主たる労務管理を行う事務所の所在地
 開始又は廃止の別及びその期日
 放射線業務の内容
 放射線業務船の名称、総トン数、用途及び航行区域又は従業制限
 放射線業務従事者及び一般船員の構成の概要
 その他必要な事項
 前項第二号の報告の様式は、第二号様式によるものとする。

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