第3回 |
資料1―2 |
臨床研修医の労働者性について
平成17年6月3日 第二小法廷判決 平成14年(受)第1250号未払賃金請求事件
主文
本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人池上健治ほかの上告受理申立て理由について
1 | 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
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2 | 本件は,被上告人らが,Bは労働基準法(平成10年法律第112号による改正前のもの。以下同じ。)9条所定の労働者であり,最低賃金法(平成10年法律第112号による改正前のもの。以下同じ。)2条所定の労働者に該当するのに,上告人はBに対して奨学金等として最低賃金額に達しない金員しか支払っていなかったとして,上告人に対し,最低賃金額と上告人がBに対して支払っていた奨学金等との差額に相当する賃金の支払を求める事案である。 | ||||||||||||||||||||||||||||
3 | 研修医は,医師国家試験に合格し,医籍に登録されて,厚生大臣の免許を受けた医師であって(医師法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下同じ。)2条,5条),医療行為を業として行う資格を有しているものである(同法17条)ところ,同法16条の2第1項は,医師は,免許を受けた後も,2年以上大学の医学部若しくは大学附置の研究所の附属施設である病院又は厚生大臣の指定する病院において,臨床研修を行うように努めるものとすると定めている。この臨床研修は,医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり,教育的な側面を有しているが,そのプログラムに従い,臨床研修指導医の指導の下に,研修医が医療行為等に従事することを予定している。そして,研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には,これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり,病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り,上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきである。 これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件病院の耳鼻咽喉科における臨床研修のプログラムは,研修医が医療行為等に従事することを予定しており,Bは,本件病院の休診日等を除き,上告人が定めた時間及び場所において,指導医の指示に従って,上告人が本件病院の患者に対して提供する医療行為等に従事していたというのであり,これに加えて,上告人は,Bに対して奨学金等として金員を支払い,これらの金員につき給与等に当たるものとして源泉徴収まで行っていたというのである。 そうすると,Bは,上告人の指揮監督の下で労務の提供をしたものとして労働基準法9条所定の労働者に当たり,最低賃金法2条所定の労働者に当たるというべきであるから,上告人は,同法5条2項により,Bに対し,最低賃金と同額の賃金を支払うべき義務を負っていたものというべきである。 これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 |