II  生活保護制度を取り巻く他制度との関係

 1  年金制度との関係

  ○  生活保護と公的年金の役割の違い

生活保護
  ⇒  資産、能力等すべてを活用しても、なお生活に困窮する者に対する最低生活の保障及び自立の助長
   ○ 基準 最低生活を保障する水準として設定。この水準で生活を営むことを想定。
   ○ 給付 就労収入、年金収入等を差し引いた不足分を給付。
資産、能力等を活用しているかどうかにつき、預貯金等の調査を厳格に実施。

公的年金
  ⇒  高齢による稼得能力の減退を補てんし、老後生活の安定を図るもの
   ○ 水準 現役時代の収入の一定割合を保障するとともに、老後生活の基礎的な費用に対応することにより、現役時代に構築した生活基盤や老後の備えと合わせて自立した生活を可能とするもの。
   ○ 給付 他の収入や資産の有無にかかわらず、現役時代の保険料納付実績に基づいた年金を支給。


  ○  基礎年金月額と生活扶助基準額

生活保護と公的年金の役割が異なることから、
生活保護の基準と公的年金の給付額は単純に比較できるものではないことに留意

   ◇ 基礎年金月額 66,208円(夫婦合計:132,416円)(平成17年度月額)
   ◇ 生活扶助基準額

(平成17年度月額、単位:円)
世帯 構成 生活扶助基準額
(3級地−2〜1級地−1)
<参考>
2級地−1
[県庁所在地等]
単身 65歳 62,640〜80,820 73,540
夫婦 夫65歳、妻65歳の場合の1人平均 47,250〜60,970 55,480
夫婦合計額 94,500〜121,940 110,960

  (注1) 家賃、地代を支払っている場合は、これに一世帯当たり月額13,000円を限度(一般基準)として住宅扶助が加算される。
  (注2) なお、70歳以上の高齢者には経過的に老齢加算(3,080円〜3,760円 [平成17年度月額])が支給される。


  ○  年金未加入・年金保険料未納者と生活保護について

(1)我が国の老後生活と社会保障制度に関する基本的な考え方

 ○  今後の我が国における高齢社会を活力あるものとするためには、自律自助を基本とし、自立した老後生活を目指すべき。

 ○  高齢社会を支える年金、医療、介護などの社会保障制度についても、自律自助の考え方に立つ社会保険の仕組みが基本。

 ○  最終的に、現役時代に築いた生活基盤や老後の備えや年金、医療、介護の社会保障給付で最低限度の生活を営めない場合に、生活保護を適用。

(2)年金未加入者や年金保険料未納者の増加と生活保護との関係

 ○  自律自助の考え方に立つ年金と、現役時代に築いた生活基盤や老後の備えを合わせて、老後に自立した生活を送ることができるようにしていくことが重要。
 → 例えば、現役時代に保険料を納付せず、老後を安易に生活保護に依存することは適当でない。

 ○  年金の適用・徴収対策等に、より一層強力に取り組むことが必要。
 → 年金未加入者や年金保険料の未納者は、将来無年金者や低年金者になりかねず、これらの者の増加は、年金制度に対する信頼を損なうだけではなく、将来の被保護者の増加につながる可能性がある。

 ○  現役時代に築いた生活基盤や老後の備えと年金等の社会保障給付で生活している者との公平の観点からも、生活保護の適正な実施や自立支援の強化が必要。
 → 生活保護は、年金給付と異なり、訪問調査等による被保護世帯への継続的な接触・関与を通じて、収入や親族からの扶養の履行状況等の生活状況を十分確認することや、できる限り自立した生活を営んでいただくための健康管理、介護予防等の自立支援を行うことが必要。

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