3  医療扶助・介護扶助の在り方

  1  医療扶助の概要

   (1) 被保護者の医療については、医療扶助で対応
    ※  ただし、他法他施策優先により、公費負担医療が適用される者や被用者保険の被保険者又は被扶養者となっている者については、一部負担、入院時食事療養費の標準負担額・患者負担分が医療扶助の給付対象。
    ※  なお、被保護者については、国民健康保険法の被保険者から除外されている(国民健康保険法第6条第6号)ため、ほとんどの被保護者については、医療費の全額を医療扶助で負担。
<参考>被保護者の被用者保険加入率3.2%(平成13年被保護者全国一斉調査)


   (2) 原則として現物給付


   (3) 指定医療機関の指定
医療の給付は、生活保護法の指定を受けた医療機関等に委託して実施


   (4) 診療内容及び費用
原則として、医療保険と同等の医療を給付し、費用は医療保険の診療報酬により算定


   (5) 受診手続き
被保護者が医療を受けるためには、福祉事務所の事前チェックを受ける。
(医療機関の医療要否意見書を徴収、受診月毎に医療券(傷病名、受診医療機関名を記載)を交付)
→ 医療保険のように保険証により自由に受診できる制度とはされていない


   (6) 医療扶助適正化対策の概要
区分 問題点 対応策 効果額等
入院患者対策
 いわゆる社会的入院患者の存在
 長期入院患者の退院促進
 入院期間が180日以上の者について、主治医との意見調整を行い、入院継続を要しない者に対して退院を指導。
 入院基本料が特定療養費化となる者を対象として、退院後の受入先の確保について、確認及び指導・援助を行う。
 退院促進個別援助事業(平成16年度新規補助事業)
 社会的入院患者の退院阻害要因を把握し、患者の状態に即した適切な退院先の確保及び退院後の生活に必要なサービスのコーディネイトを行うなど、その退院阻害要因の解消に向けた支援を行う。
15年度推計額
 113百万円/月
  (340人×332千円)

(基礎データ)
・平均入院医療費
  332千円/月
  (医療扶助実態調査)
・指導による退院者数
  4,035人
  (1月あたり340人)
外来患者対策
 長期外来患者の存在


 頻回受診者の存在
 長期外来患者実態把握
 同一疾病により1年以上継続して受療している者について、患者の状況に応じた療養指導、就労指導等の実施。

 頻回受診者に対する適正受診指導
 受診日数15日以上の3ヵ月以上続いた者について、主治医訪問等により頻回受診であるか否かを確認した上で適正な受診を指導。
指導・措置人数
44,066人
 (うち就労 2,726人)
頻回受診者数 1,343人
1人あたり効果日数
4.8日/月
 (15年度実績)
共通
 適正な医療費の支払
 レセプト点検
 生活保護費補助金により、点検業者への委託、点検調査員の雇上等による点検の高度化を図っている。
 指定医療機関に対する指導・検査
 個別指導(事務、診療状況等の確認・指導)
 検査(不正請求の疑いがある場合等)
過誤調整額 87億円
過誤調整率 0.75%
 (14年度実績)


  2. 医療扶助費の現状

○生活保護費23,881億円(平成15年度)のうち、医療扶助費は12,361億円(51.8%)

○医療扶助費のうち、入院医療費は7,769億円(62.8%)、入院外医療費は4,592億円(37.2%)

○精神障害に係る入院医療費は3,224億円(26.1%)

○医療扶助費は、国民医療費全体と比べ、精神障害に係るものの割合が大きなウエイトを占めており、全年齢では27.7%(国民医療費の場合7.4%)、70歳未満では33.3%(国民医療費の場合9.1%)

生活保護費の内訳(平成15年度)
生活保護費の内訳(平成15年度)のグラフ
医療扶助費の内訳(平成15年度)
医療扶助費の内訳(平成15年度)のグラフ


  3. 今後の医療扶助の在り方

 ・  医療扶助の給付に際しては、個別ケース毎に福祉事務所の適切な事務実施や  関係者とのきめ細かな連携が不可欠。
 ・  地方自治体における医療提供体制と医療扶助の実施状況の間には統計的な相関。
 ・  入院の長期化防止や長期入院患者の退院促進、疾病予防・健康増進や介護予防 の活用も、医療扶助の適正化に有効。

↓

 医療扶助の給付における福祉事務所の役割・責任についてどう考えるか。

 医療計画(病床数、医療機関間の連携)、健康増進計画、介護保険事業支援計画等の作成主体である都道府県の医療扶助適正化における役割・責任についてどう考えるか。

 我が国の医療は国民皆保険制度を基本にしており、被保護者もその中で対応するという考え方もあり得るが、それについてどう考えるか。


  4  介護扶助の概要
   (1)  介護扶助の対象者
    (1)  65歳以上の者
 介護保険の被保険者(1号被保険者)となるため、介護保険の自己負担部分を介護扶助により負担  ※自己負担部分=費用の1割及び介護保険施設における食事の標準負担額((2)において同じ)
    (2)  40歳以上65歳未満の医療保険加入者(2号被保険者)であって、特定疾病により要介護又は要支援の状態にある者
 介護保険の自己負担部分を介護扶助により負担
    (3)  医療保険未加入の40歳以上65歳未満の者であって、特定疾病により要介護又は要支援の状態にある者
 介護保険の被保険者(2号被保険者)とならないため、介護費用の全額を介護扶助により負担

   (2)  介護扶助の方法
 現物給付(ただし、住宅改修、福祉用具購入等は金銭給付)

   (3)  指定介護機関の指定
 介護扶助による介護の給付は、生活保護法の指定を受けた事業者等に委託して実施

   (4)  介護扶助の内容
 基本的に介護保険の保険給付の対象となるサービスと同内容(ただし、一部最低限度の生活にふさわしくないもの(特別な居室、療養室、病室の提供)は介護扶助の対象外)
介護保険の保険料及び介護保険施設入所者日常費については生活扶助により対応

   (5)  介護扶助の状況
年度 介護扶助人員(年度平均) 介護扶助費(総額)
12 66,832人 143億円
13 84,463人 222億円
14 105,964人 291億円
15 127,164人 358億円

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