(資料5)
児童相談に関する体制の充実

(1) 市町村と都道府県(児童相談所)の役割分担と連携

緊急かつ高度な専門的対応を求められる相談の増加
 児童相談所のみで対応することは効率的でない。
 市町村をはじめ、多様な機関によるきめ細かな対応が必要。
身近な子育て相談ニーズの増大
児童相談に関し市町村が担う役割を法律上明確化
児童相談所の役割を要保護性の高い困難な事例への対応や市町村に対する後方支援に重点化
市町村

 児童及び妊産婦の福祉に関し、家庭その他の相談に応じる。
 →  児童相談の窓口を設定する必要
────→
連携・後方支援
←────
都道府県(児童相談所)

 専門性の高い困難事例への対応、市町村の後方支援に役割を重点化
 指定都市に加え、政令で定める市は児童相談所を設置可能


(2) 要保護児童対策地域協議会の設置

要保護児童の早期発見や適切な保護を図るためには、
 (1)  関係機関が当該児童等に関する情報や考え方を共有し、
 (2)  適切な連携の下で対応していくことが重要

関係機関相互の連携や役割分担の調整を行う機関を明確にするなどの責任体制の明確化の要請
 
個人情報保護の要請と関係機関における情報共有の関係の明確化の要請
関係機関等により構成され、要保護児童等に関する情報の交換や支援内容の協議を行う要保護児童対策地域協議会の法定化
図

要保護児童対策地域協議会の業務(1)

 協議会については、個別の要保護児童等に関する情報交換や支援内容の協議を行うことを念頭に、構成員に対する守秘義務が設けられている。
 個別の事例について担当者レベルで適時検討する会議(個別ケース検討会議)を積極的に開催することはもとより、構成員の代表者による会議(代表者会議)や実務担当者による会議(実務者会議)を開催することが期待される。

代表者会議
 協議会の構成員の代表者による会議であり、実際の担当者で構成される実務者会議が円滑に運営されるための環境整備を目的として、年に1〜2回程度開催される。
(1)  要保護児童等の支援に関するシステム全体の検討
(2)  実務者会議からの協議会の活動状況の報告と評価

実務者会議
 実際に活動する実務者から構成される会議であり、会議における協議事項としては例えば次のようなものが考えられる。
(1)  定例的な情報交換や、個別ケース検討会議で課題となった点の更なる検討
(2)  要保護児童の実態把握や、支援を行っているケースの総合的な把握
(3)  要保護児童対策を推進するための啓発活動
(4)  協議会の年間活動方針の策定、代表者会議への報告

要保護児童対策地域協議会の業務(2)

個別ケース検討会議

 個別の要保護児童について、その子どもに直接関わりを有している担当者や今後関わりを有する可能性がある関係機関等の担当者により、その子どもに対する具体的な支援の内容等を検討するために適時開催される。

 会議における協議事項としては次のようなものが考えられる。
(1)  要保護児童の状況の把握や問題点の確認
(2)  支援の経過報告及びその評価、新たな情報の共有
(3)  援助方針の確立と役割分担の決定及びその認識の共有
(4)  ケースの主担当機関とキーパーソン(主たる援助者)の決定
(5)  実際の援助、介入方法(支援計画)の検討
(6)  次回会議(評価及び検討)の確認

 各関係機関の役割分担や次回会議の日程等、個別ケース検討会議で決定した事項については、記録するとともに、その内容を関係機関等で共有することが重要

関係機関に対する協力要請

 協議会は、関係機関等に対し、資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。
 この協力要請は、協議会の構成員以外の関係機関等に対して行うことも可能。

個別ケースごとの関係機関等の役割分担請

 個別ケース検討会議で決定するべき事項であるが、主なものは以下のとおり

【主たる直接援助機能】
 ・  日常的に具体的な場面で子どもや家族を支援する機関(者)
 ・  当然ながら、子ども、保護者ともに同じ機関が支援を行うことや、複数の機関が子どもや保護者に対して支援を行うことが考えられる

【とりまとめ機能(個別ケース検討会議の開催等の事務的な作業を行う)】
 ・  主たる援助機関等から要請を受けて、個別ケース検討会議を開催する。(会議の招集の実務は地域協議会の事務局が行う場合もある。)
 ・  個別ケース検討会議で決定された支援の進捗状況についての連絡調整や情報の整理を行う。
 ・  主たる援助機関等のうち、最も関わりの深いものが、この機関となることも考えられる。

【ケースマネジャー機能(危険度の判断等を行う)】
 ・  ケース全体について責任を負い、危険度の判断や支援計画を作り、進行管理を行う。
 ・  必要に応じて、立入検査や一時保護の権限を有する児童相談所と連携を図りながら対応することが適当である。

児童相談体制・虐待防止ネットワークの参考事例(1)

【大阪府泉大津市児童虐待防止ネットワーク〔愛称「CAPIO」〕】(人口:78,057人〔17年3月末現在〕)
 平成11年7月に、周辺都市における児童虐待事例の急増を危惧した現場の関係者が中心となって設立。
 市児童福祉課が事務局となり、虐待ケースの緊急度の判定を児童相談所とともに実施。
 ネットワークの効果として、(1)関係機関間の結びつきが強化され、日常の連絡の円滑化が図られるとともに、各機関の虐待事例の通報・連絡・対処・解決に向けての協力度が高まり、援助に対する評価や指示系統が明確化された、(2)「するべきこと」と「どこまでするべきか」(役割分担)が明確なため、自分の活動に専念できるようになった、(3)CAPIOの名称が住民に浸透したことにより、通報・相談への抵抗感が少なくなった、などが挙げられる。
泉大津市児童虐待防止ネットワーク(CAPIO) ケース対応システムの図

児童相談体制・虐待防止ネットワークの参考事例(2)

【東京都三鷹市子ども家庭支援ネットワーク】(人口:174,344人〔17年7月1日現在〕)
 平成2年に、子育てに関する実務者会議が必要という認識から、ネットワークの前身である子ども相談連絡会が発足。その後、東京都の単独事業である「子ども家庭支援センター」を平成9年に設置。
 子ども家庭支援センターが中核機関となり、子どもと家庭に関するあらゆる相談に応じるほか、地域の援助機関やサービスをネットワークでつなぎ、市全体の子ども家庭支援システムの強化に取り組む。
 ネットワークの効果として、(1)迅速な対応、(2)総合的な状況把握により、問題を家庭全体で捉えた援助が可能になった、(3)関係機関相互の役割や機能が理解でき、関係機関の力量アップに寄与、(4)様々な機関が関わっても、支援センターにつなぐことで同じ対応が取れるようになった、などが挙げられる。

三鷹市における子ども家庭支援に関わる社会資源とネットワーク
三鷹市における子ども家庭支援に関わる社会資源とネットワークの図

児童相談体制・虐待防止ネットワークの参考事例(3)

【神奈川県相模原市児童虐待防止ネットワーク】(人口:623,642人〔17年4月1日現在〕)
 平成12年の児童虐待防止法成立以降、ネットワークの設置について検討していたところ、虐待による死亡事件が発生し、これを契機に、「相模原市児童虐待防止ネットワーク」を平成13年5月に設置。
 これまで、子育て支援課、保健所及び教育委員会の複数の機関でネットワークの中心を担ってきたが、平成17年度からは、こども家庭支援センターが中心機関となり、市の虐待に関する相談通告窓口として位置づけるとともに、各機関との連携の中心となって虐待対応に当たっている。
 ネットワークの効果として、(1)関係機関間の情報の共有化により、早期の効果的な対応が可、(2)幅広い視点での対応方法の検討、(3)定期的に虐待担当職員が集まることで、課題の共有や検討ができるようになり、職員のスキルアップ等に寄与、などが挙げられる。

相模原市児童虐待防止ネットワークの図

児童相談体制・虐待防止ネットワークの参考事例(4)

【神奈川県横須賀市ネットワーク】(人口:428,804人〔16年12月1日現在〕)
 平成12年度に、母子保健事業の中から「子ども虐待防止事業」を立ち上げ、ネットワークミーティング(ネットワーク会議)や保護者を対象とした教室(MCG)の開催、従事者研修などを実施。
 平成14年4月には、保健師や保育士、専門家などによる「子ども虐待予防相談センター(YCAP)」を設立し、虐待の未然防止に資する様々な取組(各種相談、ネットワークミーティング、緊急一時保育・入院、啓発活動など)を行っている。
 ネットワークの効果として、(1)本人からの相談や関係機関からの情報が増え、的確な状況把握と早期対応が可能となった、(2)精神科医や心理相談員による関係職員へのサポート体制、(3)虐待をしてしまった保護者へのサポート体制、(4)啓発活動の推進によるネグレクトの把握の増加、などが挙げられる。

児童相談所・YCAP・健康福祉センターの役割分担図

児童相談体制・虐待防止ネットワークの参考事例(5)

【福岡県水巻町いきいき子どもネット】(人口:31,482人〔16年3月末現在〕)
 不登校対策や若い世代の子育て支援が大きな政策課題となっている中で、0歳から19歳までの子どもの発達段階での本人や家族のあらゆる問題・相談に対応できる相談機関として、平成13年4月に「水巻町児童少年相談センター」を教育委員会に設置。平成16年4月に新築移転し愛称を「ほっとステーション」と命名。
 平成14年2月に、32名の関係機関の委員で構成される「水巻町いきいき子どもネット」を設置し、児童少年相談センターが専従の事務局となり、関係機関の調整等あらゆる事務処理を担当。
 ネットワークの効果として、(1)関係機関の早期の事例開示による担当者の負担軽減、(2)相談センターが事務局を行うことで、機関の担当者が業務に専念できる、(3)事例についての共通理解と機関の役割の明確化が進み、関係機関の安心感の共有、(4)機関同士の信頼関係が深まり、支援の方向の共有化や事例の全体的な視点での捕捉が可能、などが挙げられる。

【水巻町いきいき子どもネットの概要】
委員構成
(1)保健・医療機関の代表者   医師1名
(2)教育関係機関の代表者 小・中学校長4名、幼稚園園長3名
(3)福祉関係機関の代表者 児童相談所1名、保健福祉環境事務所1名、保育所3名
(4)司法関係機関の代表者 保護司1名、弁護士1名、警察官1名
(5)議会・行政職員 議員3名、行政(福祉関係、教育関係)3名
(6)その他の委員 区長1名、公民館長1名、民生委員児童委員1名、社会教育委員1名、主任児童委員3名、青少年問題協議会委員1名、PTA2名
機関の代表者会議を年2回、委員研修を年1回開催。
代表者会議の下部組織として、地域連絡会議と事例検討会議を設置。
・地域連絡会議 職域毎の連携を深めるために幼保連絡会議と中学校区協議会を設置。それぞれ2回程度の会議を開催し、子どもや家族の情報の交換や対策の検討を実施。
・事例検討会 関係機関の機能を活用して、ケースが抱えている問題の解決のための支援のあり方を検討。

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