05/08/31 石綿に関する健康管理等専門家会議第3回議事録         第3回アスベストの健康影響に関する検討会・         第3回石綿に関する健康管理等専門家会議 合同会議                       日時 平成17年8月31日(水)                          15:00〜                       場所 経済産業省別館827号会議室 ○労働衛生課長  それでは始めたいと思いますが、傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たりま しては、すでにお配りしている注意事項をお守りくださいますようにお願いを申し上げ ます。  定刻になりましたので、ただいまから環境省の第3回アスベストの健康影響に関する 検討会と、厚生労働省の第3回石綿に関する健康管理等専門家会議を合同で開催いたし ます。本日は、両省初めての合同会議ですので、まず厚生労働省から、青木労働基準局 長にご挨拶をいただいて、その後に環境省の滝沢環境保健部長からご挨拶をいただきた いと思います。よろしくお願いします。 ○労働基準局長  厚生労働省労働基準局長の青木でございます。先生方におかれましては、このアスベ ストに関する健康問題について、それぞれ厚生労働省、環境省の両省でお願いをいたし まして、専門的なお立場からご検討をいただいており、大変ありがとうございます。  この問題が取り上げられてから、もう2カ月になり、政府としてはさまざまな対策を 講じてきておりますけれども、同時に、こういった専門的な調査研究というものをきっ ちりとやっていこうと考えております。  それぞれの所管のところで、精一杯きちんと仕事をしていくということで、私どもは やっておりますけれども、先般、今日も資料で配られておりますけれども、過去の行政 の取組みについての検証作業などもいたしまして、各省連携をしてきたかということに ついて、反省をするということもございまして、いま政府全体で関係省庁会議などを開 催いたしまして、連携をしてやっているところでございます。  そういう中で、先生方の専門的な調査研究会議につきましても、それぞれ各省で精一 杯やっておりますけれども、同時に、このように連携を取ることが必要だと改めて感じ ているところであります。そういう意味で、今日は合同会議を開催させていただきまし た。皆様方の格段のご協力をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○労働衛生課長  それでは、滝沢環境保健部長にお願いします。 ○環境保健部長  環境省の環境保健部長の滝沢でございます。全体的なスタンスは、いま青木局長から お話があったとおりでございます。私ども環境省も、住民への健康影響という観点か ら、すでに合計今日で3回目になるわけでございますが、検討会を持たせていただき、 当初から厚生労働省とも、いろいろと連携をしていこうという話合いも並行的に行いな がら進めてまいりました。  また、政府全体という意味でも、つい先日、8月26日に、また新たなその時点での方 針が示されたわけでございますが、アスベスト問題への当面の対応ということで、7月 29日、8月26日と、関係閣僚会議、閣僚級の会議が、いろいろ方向性を決めているとい う状況も、もちろん同時進行で進んでいるわけでございます。  特に、今日厚生労働省の専門家会議と合同ということで開催をさせていただきました が、先生方、それぞれのお立場での専門的、技術的な助言と言いましょうか、いろいろ な事柄、取組みに対するご指導、ご助言を十分にいただきながら、技術的な裏打ちをも った、エビデンスベースを持った形での対応を進めていくということが、我々環境省、 あるいは厚生労働省に求められている。特に住民の健康被害への対応、あるいは十分に 安心していただくための論拠等々、この検討会に課せられている課題というものは大き なものがあると思いますので、合同会議ということを1つの契機としていただきまし て、またそれぞれの省庁としての取りまとめ方、進め方はあろうかと思いますけれど も、それもまた結果的にも連携していくということで、進めてまいりたいと考えており ます。どうぞ、よろしくお願いを申し上げます。 ○労働衛生課長  ありがとうございました。本日初めての両省合同会議ですので、お1人ずつ、各委員 のお名前をご紹介させていただきます。  まず、環境省のアスベストの健康影響に関する検討会委員から紹介させていただきま す。京都大学大学院工学研究科教授の内山巖雄委員です。東洋大学経済学部教授の神山 宣彦委員です。兵庫医科大学教授の島正之委員です。国立がんセンターがん予防・検診 研究センター情報研究部長の祖父江友孝委員です。尼崎市保健所長の高岡道雄委員で す。兵庫医科大学教授の中野孝司委員です。国立環境研究所環境健康研究領域健康指標 研究室室長の平野靖史郎委員です。横浜市立うわまち病院副院長の三浦溥太郎委員で す。  続いて、厚生労働省の石綿に関する健康管理等専門家会議の委員です。労働者健康福 祉機構岡山労災病院副医院長の岸本卓巳委員です。祖父江友孝委員ですが、両省の委員 を兼任していますので割愛させていただきます。国立がんセンター中央病院副医院長の 土屋了介委員です。医療法人社団ひらの亀戸ひまわり診療所の名取雄司委員です。奈良 厚生会病院名誉院長の成田亘啓委員です。厚生労働省側検討会の本田浩委員、森永謙二 委員、鏡森定信委員は、本日ご欠席との連絡を受けていますので、以上でございます。  本日は厚生労働省で事務局を担当させていただいていますので、本日の議事進行につ いては土屋委員にお願いしたいと思います。ここでカメラの方は退席をお願いいたしま す。 ○土屋座長  ただいまご紹介がありましたように、私が本日の座長を務めさせていただきます。早 速議事に入ります。事務局より配付資料の確認をお願いいたします。 ○労働衛生課長  皆様のお手元に、資料1「第2回石綿に関する健康管理等専門家会議 主な意見」が あります。これは厚生労働省側の資料です。次に資料2−1「石綿(アスベスト)に係 る健康相談事例について」とあります。これは環境省側の資料です。資料2−2とし て、「石綿による健康障害を発生させた事業場周辺における健康相談実施状況」です。 資料3は環境省側の資料で、「石綿に係る健康診断実施要領」です。資料4−1とし て、「人口動態統計を用いた実態調査の概念」で、厚生労働省側の資料です。資料4− 2として、環境省側の資料で「平成17年度一般環境経由によるアスベスト曝露の健康影 響調査の概要(案)」があります。資料4−3「H17年度厚生労働科学特別研究におけ る研究の概要」で、厚生労働省側の資料です。資料5として、「問診による絞り込みと 健診の流れ(案)」が、厚生労働省の資料としてあります。この資料5については、2 次問診表の部分で差替え分がお手元にあるかと思いますので、ご確認をお願いします。 資料6は厚生労働省側の資料で、「アスベスト疾患センターの設置について」です。そ の後に皆様のお手元に、「アスベスト問題に関する政府の過去の対応の検証について」 というものが、別添で参考としてお配りしています。以上です。 ○土屋座長  資料に沿って進めていきます。資料1に沿って、専門家会議の論点整理をしていきま す。事務局から、厚生労働省の第2回専門家会議の概要についてご意見をお願いいたし ます。 ○労働衛生課長  これは、第2回専門家会議の主な意見をまとめたものです。まず論点として、「石綿 による住民への健康影響の実態把握について」というところで、「子どもの中皮腫に関 しての情報がない。子どもの中皮腫をどこで対応するのかを整理しておくべきではない か」と、鏡森委員からご意見がありました。「石綿を含む廃棄物を回収する事業場を同 定すること、青石綿を扱っていた事業場を同定することが大切ではないか」、「30年代 の保育所、小学校、高校など、勤務先など工場の近くに通っていたかどうかの確認も必 要である」という森永委員からのご意見がありました。  これは名取委員、森永委員、複数のご意見ですが、「生存者に関する調査を先行すべ きである。生存者からしか得られないばく露情報を収集して、それを死亡者に関する調 査に応用するのが良い」というご意見でした。さらには「調査員に対して事前に研修を 行い、調査内容のばらつきがないようにすることが望ましい」と名取委員からのご指摘 がありました。「中には中皮腫でありながら別の病名で亡くなっている人もいます。き ちんとした実態把握をするには、全死因の全国比較を行うべきではないか」というご意 見が、鏡森委員と森永委員からありました。さらには、「別の病名がついている人の中 で、実際の中皮腫患者を区別するのは困難であるから、まずは緊急度を考えて、実際に 中皮腫と診断のついている方から調査するのがいいのではないか」という土屋委員から のご意見がありました。  次に「住民の健康管理の方法について」、さらに「簡易自記式調査票について」のご 意見です。「会社名をきちんと調査票に書く人は、中皮腫と診断される率が高いので、 調査票に会社名と仕事内容をきちんと書いてもらうのが良い」というのが岸本委員から のご指摘でした。「簡易自記式調査票は、全員に配るものではなくて、不安のある人や 自発的に相談に来た人に対してまず行って、専門家の相談窓口につなげていくのが良い のではないか」、さらには、「『近く』の概念は一概に定義するのは難しいので、0.5 〜1kmぐらいかな」というご意見もありました。「希望者の方々に、調査現場で自記式 の調査票を用いるとすれば、ここに提示された内容で良いのではないか」という3人の ご意見でした。「調査は青石綿を扱っている事業場周辺を重点的に行うべきではないか 」という森永委員のご指摘がありました。「項目に、廃棄物を回収する作業を追加し て、タルク・パウダーについて排除しても良いのではないか」という森永委員のご意見 がありました。「神山先生がクリソタイルの飛散距離を出したデータが前回の会議の資 料にあったけれども、石綿の種類によって飛散距離が異なることが考えられるが、調べ られていない。だから尼崎についてはきちんと調査をする必要がある」というご意見が ありました。  次の頁で、「住民の健康管理の方法について」です。「問診でリスクが高いと判った 人については、胸部X線だけではなく、胸部CTを撮影して胸膜プラークの有無を見る べきではないか」と、森永委員、岸本委員、名取委員からのご意見です。さらに、「肺 野に石綿肺がある場合など、経過観察についてデザインを組み評価できるかどうかを検 討する必要がある」と森永委員からのご指摘がありました。さらに「初回CTをとって 胸膜プラークの有無を確認するが、それ以降は毎年CTを撮影するというわけではな い。経過観察は胸部レントゲンでよく、必要があれば適宜CTを撮影するという方法が 良いのではないか」というのが、森永委員、名取委員、岸本委員のご意見でした。「じ ん肺健診の場合には毎年CT検査がなされるので、石綿の健診との整合性が問題となる のではないか」という鏡森委員のご意見がありました。「若年者に対しては、レントゲ ン+CT撮影の年齢をある一定の年齢以上にするなどの考慮が必要ではないか」と名取 委員からのご意見がありました。「CTに関しては早期発見の意味は薄いのではない か。1回撮影して評価をすることはメリットはあるけれども、経年的にCTを撮ること については医学的に根拠はないのではないか」という祖父江委員のお話がありました。 「アスベスト関連で早期発見で治癒できるのは肺がんだけと言われていることから、コ ストや被曝を考えると、経時的なCTは推奨できないのではないか」という本田委員の ご意見がありました。  「住民の健康不安の解消について」ですが、「今回提出した簡易自記式調査票を臨時 相談会の時に使用したい」という岸本委員のご意見がございました。  「その他」として、中皮腫のメソテリンという血液中のマーカーの測定の意義につい ての質疑がありました。岸本委員から「早期にはあまり値が上がらないので、早期発見 には役立たないと思われる。有用性の検討には多施設研究をしなければならないのでは ないか」とありました。名取委員から、「偽陽性、偽陰性があって、陽性と出た場合に は、確定診断には胸腔鏡が必要となって、過度の侵襲になりかねない。FDAの認可も 下りていない」というご意見がありました。前回の議論は、大体このようなご意見だっ たかと思います。 ○土屋座長  追加のご意見、その他はございますか、よろしいでしょうか。  それでは前回の論点整理ができましたので、早速資料2に沿って、健康相談事例につ いて進めたいと思います。環境省の環境保健部の俵木保健業務室長からご報告をお願い いたします。 ○保健業務室長  資料2−1です。それぞれの検討会で、前回第2回のときにご報告させていただきま したが、環境省では、一般環境経由によるアスベストの健康影響に関して、保健所の相 談窓口で、情報収集をお願いしています。前回は7月1カ月分の相談事例をご報告いた しましたが、資料2−1は8月1日から8月15日までの各保健所に寄せられた相談事例 で、前回より数は減っていますが、中皮腫が23例、肺がんは17例の相談が、一般環境経 由の可能性が否定しきれないということで報告があったもので、裏側に表があります。  前回同様、兵庫県の尼崎市に数が多くなっていて、2枚目の紙が7月以降、8月15日 までの1カ月半を全集計した表です。全体で、中皮腫が140例、肺がん46例の相談事例 が集まっていて、特に尼崎市に突出して報告がありますが、これらについては、今日も この後にご報告させていただきますが、前回もご報告しましたとおり、兵庫県及び尼崎 市等自治体にお願いして、これらの相談事例も含め、一般環境経由の実態把握の調査を 実施する予定にしているところです。簡単ですが以上です。 ○土屋座長  引き続いて厚生労働省側からのご報告をお願いいたします。 ○労働衛生課長  資料2−2で、「石綿による健康障害を発生させた事業場周辺における健康相談」実 施状況です。これは尼崎市の日時だけを書いていますが、8月22日から全国で何カ所か 始めています。3枚目に相談の日程があります。  まず、8月22日の尼崎市中小企業センターで行われた兵庫労働局主催の健康相談で す。石綿の健康相談を午後1時から5時まで、2時から3時まで健康影響に係る講演を 神戸労災病院副院長の大西先生をお招きして行いました。健康相談の対応者は、医師7 名、保健師3名、労災補償に関しては労働局、監督署から担当者3名、安全衛生法に関 しても同じく3名出しています。  参加者ですが、石綿に関する健康相談に来られた方が38名で、石綿の健康障害に関す る講演をお聴きになられた方は120人となっています。相談者の内訳ですが、重複があ るので合計をしても38になりませんが、ばく露歴があると思われる労働者本人は22人、 労働者の家族の方々が11人、周辺の住民の方々が18人、その他に事業場の担当の方々な どが7人でした。内容については、健康障害に関する部分についての相談が33件、労災 補償に関する相談が11件、労働安全衛生法に関することが6件、その他が5件でした。  8月26日(金)は阪南市立保健センターで行っています。ここでは講演会は開いてい ませんが、参加者は28人で、その方々の石綿に関する健康相談がありました。労働者本 人が18人、周辺住民の方が10人でした。相談内容は、そこの下に書いてあるとおりで す。  次に、これは出ていませんが、8月29日に神奈川県横須賀市で講演会並びに相談会を 開催しています。数字は今日の午後1時で報告を受けた分をまとめているのでご紹介い たします。講演会には午前、午後で合計94名の方々が参加されております。相談会も、 午前、午後行って、合計44名が相談に見えています。その内容は現在集計中ですので、 また後ほどご報告いたします。  次に、8月29日、同日ですが岐阜県羽島市で講演会並びに相談会が行われておりま す。羽島市については、講演会への参加者が130名、これは岡山労災病院呼吸器科部長 の玄馬先生が講演をされております。相談会に個別相談に来られた方は41名ということ です。  昨日、8月30日に、岡山県玉野市で講演会並びに相談会が開かれました。緊急に締め た概数ですが、講演会への参加者が約140名、個別相談に来られた方が約70名となって おります。  3枚目の資料になりますが、本日は佐賀県サンメッセ鳥栖で、産業医科大学の森本教 授をお招きして、講演会と個別相談会が開催されています。9月5日に奈良県橿原市医 師会館で、相談会が予定されております。ここでは調整中になっていますが、埼玉県さ いたま市で9月15日、広島県呉市で9月22日という予定になっています。さらには、香 川県香川市から、講演会並びに個別相談会の申込みがありまして、現在日程等を調整中 です。以上です。 ○土屋座長  ただいまの両省のご説明に、ご質問、ご意見はございますか。私から、いまの厚生労 働省側の説明で、2カ所出ていますが、周辺住民18名、10名ということで、前回の話で 周囲500mとか1kmという話がありましたが、その辺については何かありますか。 ○労働衛生課長  そのような期限や範囲の制限はありません。とにかく相談に訪れたい方々はどうぞと いうことでやっています。 ○土屋座長  どのくらいの辺りに住んでいる方が来たなど、具体的な情報は何か入りましたか。 ○労働衛生課長  いま相談内容について、居住地などを整理している段階ですので、次は合同会議では ありませんが、そのときには整理したものをご紹介できると思います。 ○土屋座長  どうもありがとうございました。精力的にやっていただいてありがとうございます。  続いて健康診断のほうに入ります。資料3に基づいて、尼崎市の住民健診について8 月19日に実施されたということで、高岡委員からご説明をお願いします。 ○高岡委員  資料3に記載していますが、石綿に係る健康診断として、毎週火曜日と金曜日、月1 回日曜日に実施しています。対象が30歳以上の市民で、概ね昭和30年から昭和50年の間 に尼崎市内に居住した方としています。これは青石綿の使用の時期が、概ね昭和30年か ら昭和50年にかけてですので、その間を念頭に置いて設定いたしました。昭和50年には 作業環境の濃度測定が義務づけられたので、そのようなことも念頭に置いて、昭和50年 までの間、市内に居住された方を対象にしています。30歳以上というのは、昭和50年に 生まれた方が現時点で30歳ということで、30歳以上に設定しています。  予約制にしていて、1回当たり40人ということで、検診内容は書類に載せています が、詳しい問診と胸部の直接のX線撮影で、これは正面だけの1枚です。  受診はできれば半年ごとということで、年2回受けてもらえるように指導をしていま す。料金は630円の自己負担となっています。検診結果については、異常のない場合は 郵送で、異常のある場合は保健所に来ていただいて、紹介状と写真を持って、4つの専 門医療機関に紹介する形を取っています。  専門医療機関については、中皮腫の治療を行っていただいている市内の公立病院3病 院と、兵庫医科大学の中野先生のところで診ていただく形を取らせていただいていま す。  次の頁に受診票という形で挙げていますが、1つはお願いということで、この健診そ のものが国の対策の資料となることもあり得るので、この健診結果を調査に活用させる ことについて可否をいただいていることがあります。それと、1番目のところで、大き くどのようなことで不安を感じられておられるのかということで、解説をいただいてい て、(1)の「石綿を扱う仕事をしていた」、(2)の「そのような場所の近くに住ん でいた」、(3)が「石綿を使った製品、材料、建物など、このようなことのかかわり があった」と、製品というのは、例えばボイラーなどの管理に従事していたとか、吹付 けのアスベストを使った建物の中に出入りしたといったことを含めて、3で○を付けて いただきます。  これについては、まずご本人に記載をしていただくのですが、後から保健師が問診を して、ここについてはより詳しく内容を聞き取ります。  2番目の住所、3番目の職業・アルバイトについても、3頁に記載をしていただいた 上で、これも保健師がもっと詳しく、職業の中身や従事した仕事の内容、職種を全部聞 き取ります。居住歴についても、昭和30年頃の地名といまの地名は違いますから、旧地 名でも構わないとして、あと場所が特定できるように、番地までは覚えていなくても、 寮の名前などがわかるような聞き取りを別途保健師がするように手引きを作っていま す。  4番目には配偶者、5番目に両親の職業、家族内ばく露も考えて聞き取ります。仕事 以外でも、そのような可能性があるかどうかを6番で本人に聞いて、その上で保健師が また詳しく聞きます。7番目は。胸部のレ線の読影上、関係するような結核の既往など を聞きます。8番目には、特に症状があるかどうかを聞きます。これは、後の要精検に する際に、ばく露があって、かつ症状がある場合には、レントゲン上所見がなくても、 要精検に持っていくという考え方をしているので、8番目については、詳しく保健師の ほうが聞き取りをします。  9番目には、家族内でアスベスト関連疾患にかかった人はいるかどうかを聞きます。 喫煙の有無、胸部レ線の有無を聞きます。最後に、周辺でそのようなばく露があったよ うな情報があれば、詳しく聞き取ります。  3頁の下の欄に書いていますが、胸部X線の一次読影と二次読影を、このような所見 について確認をしながらするということでしています。一次読影は、先ほど言った精検 を受けていただく医療機関の呼吸器外科と、呼吸器内科の部長先生に見ていただいてい ます。  二次読影については、当初保健所の医師が研修を受けた上で診る形で考えていました が、この辺は厚労省のご協力をいただければ、より専門家の先生に診ていただけるよう にできればと思っています。  4頁は継続票になります。半年後にはもう一度受けていただきたいということがあり ますので、その際の受診票です。5頁に、昨日4時段階までの予約数があって、335名 で、昨日までに受けていただいた方が202名という状況です。以上です。 ○土屋座長  いまのご説明に何かご質問、ご意見はございますか。 ○名取委員  健康診断のレントゲンの診療結果は書類になっているものがあるのですか。 ○高岡委員  19、21、23日の一次読影については終わっています。 ○名取委員  おわかりの範囲で、胸膜肥厚の有所見率と、年齢分布などがわかれば、特に知りたい と思います。特に30歳から40歳ぐらいで、有所見の方が出るのか、出ないのかが、レン トゲンのばく露との関係が気になるところなので、もしおわかりでしたら教えていただ きたいのですが。 ○高岡委員  現在、年齢別のデータは持って来てはいませんが、全体の有所見率をX線だけで見た 場合には、30%近くあるということです。胸膜肥厚だけではなく、胸水貯留を含めて。 ○名取委員  自発的に心配されて来ている方々のなのでしょうけれども、30歳から40歳での、その ような所見の方があり得そうな結果ということですか。 ○高岡委員  年齢についてはそこまでは見ておりませんので。 ○成田委員  異常の頻度としては、胸水貯留、胸膜肥厚がいちばん多いのですか。胸膜肥厚もびま ん性肥厚と限局性と両方ありますが、びまん性は別として、限局性の肥厚、いわゆるプ ラークは大体何パーセントぐらいありましたか。 ○高岡委員  そこまでは覚えていませんが。 ○成田委員  かなり多いか少ないかでも結構です。 ○高岡委員  どちらかというと、肺尖部の両側性の胸膜肥厚のような、いわゆる非特異性のものを 含めて、そちらのほうが多いです。片側だけの胸膜肥厚のような所見は少ないです。 ○成田委員  両側性の限局性の胸膜肥厚はどうですか。 ○高岡委員  それももちろんございます。 ○成田委員  それはかなりありますか。 ○高岡委員  いいえ。ちょっと数値は覚えていませんが、それほど多くはなかったと思います。 ○名取委員  有所見だった方の場合は、通常問診を再度聞き直ししたくらいのほうがいいときもあ るのですが、この問診票は比較的かなり詳しくできているので、有所見の場合でも、再 度聞き直す必要はほとんどないような状態でしょうか。 ○高岡委員  この問診を取るに当たって、保健師が、このような点をこう聞きなさい、職業や内容 についてはこう聞きなさいと、別にマニュアルを作っていまして、それに基づいて保健 師がさらに詳しく聞き取っておりますので、所見があるといって再度聞き直すことはな いようにしています。 ○岸本委員  石灰化というのがここにあるのですが、昨日私も玉野市で相談したのですが、石灰化 があって、結核の既往がないというのは、ほとんど石灰化胸膜プラークなのですが、そ う言われた人がかなりいたのですが、そのようなところの所見はいかがでしょうか。 ○中野委員  追加して話をさせていただきます。昨日尼崎の委員会がありまして、1次検診で引っ かかった胸部X線を少し見せてもらったのですが、肺尖部に確かにありました。プラー クの好発部位ではない部位の非特異的な胸膜肥厚もありました。それを今回は、2次健 診に回して確認する様にしています。それと問診を併せて、専門医の判定を受ける様に しています。  特徴的な、好発部位に見られるものもあったのですが、最も多かったのは、非特異的 な肺尖部に近いところの肥厚です。 ○岸本委員  3、4頁目で、写真の一次読影、二次読影というのは、1次スクリーニング、2次ス クリーニングという解釈でいいのか、ダブルチェックというか、これは両方とも要精検 のチェックの項目がありますが、ダブルチェックと考えてよろしいのでしょうか。 ○高岡委員  はい。 ○労働衛生課長  ダブルチェックということです。先ほど厚生労働省の協力が得られればということ で、先日尾辻厚生労働大臣が尼崎市を訪問して、今回の健診について厚生労働省の研究 班の専門家を派遣して、二次読影等にご協力をするという話もいたしましたので、岸本 班を中心に、尼崎に参りまして二次読影にご協力させていただくことにしていますの で。 ○土屋座長  よりダブルチェックの質が向上するということですね。これは成田委員、あるいは名 取委員にご確認したほうがいいのかもしれませんが、所見のところで、胸膜肥厚の有無 で問題になった部位ですが、絵があるからいいということがあるかもしれませんが、せ めて肺尖と側胸部とを分けて記載したほうがわかりやすいのかどうかですが、その点に ついてご意見はありますか。 ○成田委員  絵を描いてもらえば、それでいいと思います。 ○土屋座長  あとで統計処理をするときに便利かと思ったのですが、両側肺尖と聞くと、我々胸部 の専門家はTBCだろうなというのが頭に浮かんでくるものですから、その辺をまたご 検討いただければと思います。他によろしいでしょうか。どうもありがとうございまし た。引き続きよろしくお願いいたします。  続いて、実態調査の項目に入ります。実態調査については、兵庫県の調査と、岸本研 究班の人口動態統計調査で重なる部分があるということですので、この点について事務 局からご説明をお願いします。 ○労働衛生課長  資料4−1です。これは前回の厚生労働省の専門家会議でご指摘があって、わかりや すく概念図を書いてみたものです。厚生労働省の岸本研究班は、平成15年中の中皮腫死 亡者全国分について調査をいたします。遺族のアンケート調査、カルテ、レントゲン、 病理標本等があれば、それの調査をしていくということです。  兵庫県での環境省の委託調査については、平成14年、平成15年、平成16年、3年間の 中皮腫の死亡者について、同じような内容で調査をすることになるので、兵庫県内での 部分については、対象者が重複することになります。  この点に関して、両省から別々にコンタクトをとって、別々な調査員が行って調査を することのないように、調査の調整をして、基本的には兵庫県内の分は兵庫県にお願い をして、うちの研究班に情報を提供していただくようにお願いしたいと思います。あ と、その内容等も調整をさせていただきたいということです。以上です。 ○土屋座長  ただでさえご遺族の方にはご負担の多いところですから、よろしくお願いいたしま す。  2つの実態調査の概要がわかりましたので、具体的な研究内容について、まず環境省 からお願いいたします。 ○保健業務室長  資料4−2です。これはそれぞれの検討会、専門会議で、前回ご報告させていただい たものと同じです。環境省で予定しているのは、対象地域は兵庫県内となっています が、兵庫県内の保健所設置市のご協力をいただいて、県内の対象者を調査する予定で、 真ん中の対象者のところにあるように、3つの種類の対象者を考えていて、いまご説明 のあったように、人口動態統計による中皮腫の死亡者を対象とするもの、保健所の電話 の健康相談で把握した症例を対象とするもの、その他の情報源から把握できる中皮腫患 者についても対象としていきたいと考えています。  調査内容は3つありまして、本人または遺族への聞き取り、医療機関のカルテ調査、 先生方からも両検討会、専門家会議でご指摘いただいているように、過去の石綿取扱い 施設の配置状況等についての調査をきちんとやりたいと思っています。  本日は、前回ご報告した聞き取り調査票と、今日初めて提出した「カルテ調査票(案 )」があります。3頁からの聞き取り調査票は、各調査主体になる自治体の保健師を中 心として、聞き取りをしていただくものですので、少し見にくいものですが、この用紙 を基に聞き取りをしていただきます。  5頁からが、細かい聞き取りの項目になっていまして、ここは前回ご報告したとおり で、若干厚生労働省の調査票とも調整をして、修正をしていますが、基本的には変わっ ていません。9頁からがカルテ調査票(案)で、本日初めて提出させていただいていま す。氏名、生年月日、現住所の基本情報の他、家族歴、生活習慣として、喫煙、飲酒、 運動、カルテ上に石綿曝露の可能性に関して、何か記録が残っているかいないか、その 内容、カルテ上の職業歴についての記載の内容、これまでの既往歴等病歴、悪性中皮腫 の発見の経緯、初期の臨床症状。検査所見としては、画像所見、X線とCTでの所見、 病理所見の内容及び可能であれば石綿小体数の測定結果等について、悪性中皮腫の確定 診断としてどのような方法によったのか、また腫瘍分類、中皮腫の部位をお聞きして、 治療法の概要、転帰、治療経過、画像・病理については、もし保存があればそれらの標 本についても見せていただけるようにお願いをして、研究を進めていきたいと思ってい ますので、画像及び病理標本が保存されているかどうかについてお聞きしたいと考えて います。以上です。 ○土屋座長  重複があるということですので、続いて岸本委員からご説明をお願いします。 ○岸本委員  そこにあるように、私の研究については詳細は出しておりませんが、皆さんご存じの ように、平成15年度に人口動態統計上で中皮腫になっている方が878例ということで、 この追跡調査をするということで、調査項目はそこにあるようなことです。いまの環境 省のものとそれほど違いはありません。  ただ、我々はステージ分類をやろうということで、IMIGの分類で、TNM分類を やると。ステージ別に予後が悪いだろうということで、治療内容と予後に関して、我々 は検討していきたいと思っています。  ご遺族に職業歴を聞かないと、一般臨床医が職業歴をきちんと書いているかという と、我々は非常に疑問を感じているので、ご遺族の方にはご面倒なのですが、職業歴、 生活歴に関して、アンケート調査はさせていただきたいと思っております。もちろん、 このアンケート調査とともに、診療録も参考にするという対応でいきたいと思っていま す。  アスベストによって起こったかどうか、いちばん大切なものは職業歴なので、なるべ く職業歴を明らかにしていきたいと思っています。検討項目は1から9まであります。 我々は厚生労働省の研究なので、労災申請、労災補償、石綿の健康管理手帳の発給があ ったかないかという、このようなところも検討対象にしていきたいと思っています。  それと、いま申したように、治療は非常に難しいわけなのですが、日本全国津々浦 々、中皮腫に関していろいろと治療をやっておられて、万が一非常に効果のある治療を やっているところがあるのではないかという期待も持っています。あと、そこにあると おりです。  これはあくまでも亡くなった方を対象としているので、先ほど申したように職業歴が 聞きにくいということで、現在治療中の方を対象としても並行してやっていきたいと思 っていて、そのときに、このような研究に全面的に協力してくれる医療機関はなかなか ないのが、我々のいままでの経験であります。厚生労働省関連の国立病院機構、労働者 健康福祉機構の先生方が私の研究班に班員として入っていただいているので、できれば これを中心として、現在治療中の患者に実際に面接をして、職業歴等を聞きたいと思っ ています。職業歴だけでなく、居住歴など、環境ばく露、家庭内ばく露についても調査 をしていきたいと思っています。以上です。 ○土屋座長  ただいまのご説明について、ご質問、ご追加はございますか。 ○名取委員  このような調査をするときに、1つポイントになるのが、中皮腫の診断と免疫組織学 的な確認について、案外問題が起こることがあります。それぞれの場合に、どのような 対策というか、いただいた病歴検査結果報告書が十分である場合は、それでいいと思う のですが、十分でないときに通常であれば腫瘍の部分のブロックが残っているかどうか を伺って、追加でするということが生じる場合が多いのですが、その辺について研究班 の先生方はどのような計画をしているか教えていただけますか。 ○岸本委員  我々はブロックとか、アスベスト小体の数も検討したいと思っています。これは私の 病院で簡単にできるので、ご遺族の方にお許しをいただければ、ブロックと、万が一手 術や解剖をやっている方には、いわゆる腫瘍浸潤のない健常肺組織をいただいて、アス ベスト小体のカウントをしていきたいと考えています。  それから、先生がおっしゃられるように、ブロックがあって、いわゆる既存の組織切 片だけでは中皮腫と診断できないような方については、さらなる検討をしていきたいと 思っています。これが今年度中にできるかわかりませんが、できる限り、やれる症例に ついては、カルレレチン、ケラチン、CAとか、中皮腫に特異的な免疫染色も併用して やっていきたいと思うのですが、実際に名取委員が非常に危惧されているように、私の ところにも中皮腫の症例、相談、労災が来るのですが、意外にきちんと組織診断をし て、中皮腫と診断をされていない例があるので、実際にそのようなこともまず今回明ら かにしたいと思っています。878例に死亡診断書が出ているわけですが、実際に臨床医 がどのような形で、この病気を診断されているのかというのは、いままで一度も検討さ れたものがないものですから、画像だけなのか、胸水中のヒアルロン酸だけなのか、細 胞診だけなのか、そのような場合もかなりあると思うので、まずはその辺りを、一度も 日本でやられていないのでまずこれをして、組織診がある、細胞診で残っているような 例は、もう一度これをレビューしたいということです。 ○保健業務室長  今年度の調査でどこまでできるかは難しいかとは思っていますが、先ほどの調査票で ご覧いただいたように、病理標本または組織の保存があるかについては確認したいと思 っていまして、保存されている場合にはそれを見せていただくなり、何らかの形で研究 に反映させていきたいと考えています。まだ詳細については詰めきっておりません。 ○土屋座長  確かに組織診断まできちんとついた症例は、意外と少ないような印象が臨床の現場で はあります。ぜひ明確にしていただければと思います。 ○三浦委員  アスベスト小体をカウントするとありましたが、これは小山委員のご専門のところで すが、一般的には医療機関によって、測定方法によって大きく変わるので、できれば調 査した時点で、どこで測定したかを書いておくと、その後の比較ができるのではないの かと思います。比較できない機関同士を比較してもしょうがないと思います。 ○岸本委員  私のところは、私のところへ症例を集めることになっているので、私のところがデー タを出すことになっていますので、いわゆる施設的なばらつきは絶対にないと思いま す。 ○内山委員  全国調査と、厚労省のやられる調査と重なるところが、環境省のする調査は遺族や本 人への面接調査で、厚労省のほうはアンケート調査ということです。そうすると、どち らかで最終的には合わせると、環境省のほうの調査では兵庫県のこちらのデータを使う というようなことになると思うのですが、そのときに片方はアンケート調査、片方は面 接調査ということで、どの程度の違いが出てくるのかを、疫学の先生方にお聞きしたい のが1つです。  それから、岸本委員の調査で、厚労省だからこのような項目も付け加えたいとおっし ゃったところがあるのですが、それは兵庫県の調査を利用されるとそこの項目が抜けて しまうわけです。ですから、逆に、こういうところはぜひ調べてほしい、あるいは抜け ているということがあれば、おっしゃっていただいたほうがいいのではないかと思いま す。 ○岸本委員  まさにおっしゃられたとおりで、労災申請が実際に行われているかどうか、私の検討 項目の8番ですが、いま実際に中皮腫がアスベストによって起こったかどうかを知り得 るのは、労災補償がなされているかどうかで、あとはいわゆる症例報告はあるのです が、まとまったデータがないということになると、労災申請がなされたか、補償がなさ れたかも、ぜひ検討してみたいと思います。あと、アスベストによる健康管理手帳、こ れはアスベストばく露者をフォローアップするのには、労働者の場合に非常にいいシス テムだと思うので、このような健康管理手帳をもらっていたかどうかも検討していただ きたいと思っています。  それから、いまのアスベスト小体なのですが、私のところで私の研究班はやりたいと 思っているのですが、時間的な余裕が許されれば、私のところで兵庫県のものもやって いきたいと思っています。ただ、時間的なものがあるので、短期間にデータは無理かも しれませんが、可能な限りご協力していきたいと思います。 ○土屋座長  本日の合同会議の目的からいくと、資料4−1のクロスオーバーしたところの調整 を、ぜひ担当者同士でお願いできればと思います。  それから、前回の会議のときに話が出たと思うのですが、聞き取り調査の際の調査員 のトレーニングの点について何かございますか。 ○高岡委員  専任の保健師を当てて、調査の聞き取りについて差が出ないようにしたいと考えてい ます。カルテ調査については、保健所の医師を実際に派遣して、できれば主治医の先生 との面接も含めて、カルテ調査ができればと考えています。  特に、いままでのいろいろな関係企業なり、関係団体の聞き取り調査の方法を聞いて いると、聞き取る人が違うと、だいぶ聞き取る内容についても差が出ているということ で、聞き取る人については専任を置かなければ駄目だと思います。 ○土屋座長  特に職業歴のところで、大変職種が多岐にわたるのと、従事している方自体に全くそ の意識がないということで、その辺のトレーニングは大変大事だという感じがします。 ○岸本委員  いまの私のところの1次と2次の調査用紙についてご説明していませんでしたので、 資料5をご覧ください。資料5の2枚目はこれでいいのですが、2次問診表は差替えの ものを見ていただきたいと思います。いま阿部課長からご説明があったように、8月22 日から各地区で講演会をして、相談をやっています。私も昨日やってきました。まず、 相談に来られる方々に書いていただくのが、資料5の次の頁のものです。昨日はこれを 使わなくて、少し複雑なものを使ったのですが、ある程度以上複雑なものを使っても、 きちんと書いてくれていないことがわかったので、第2回の厚生労働省の検討委員会で 成田委員がおっしゃられたように、このA4版1枚くらいがリーズナブルかと思いまし た。これを見ていただいて委員の皆様方にご検討いただきたいと思いました。  資料5の差替え部分を見ていただきますと、「仕事に従事した時期」がIIIにあって、 年代別に、どんな会社に就労し、その内容はどうであったか、そして、取り扱った材料 や設備について書かれていますが、これに関しては皆さん、かなり書いてくださいまし た。ただ、例えばIIIを書いて、IVにも同じ項目があった場合に、書いたり書かなかっ たりということがあるのです。  昨日私は造船所に行ったのですが、造船所で働いていたということですと、IVの3に 艤装・溶接・配管・塗装・電気配線・組み立てとあります。実際に艤装をやっていると IIIに書いているのだけれど、IVに○をしている人もいるし、そうでない方もいて、III とIVとのコンセンサスについて、まだ問題があるかと思いました。  同じように、環境ばく露を問うのが7です。7の下に「石綿製品を取り扱う工場等の 近隣に初めて居住してから現在までの居住歴をお書きください」と書いてありますが、 この辺りに関しても、「お書きください」と書いたほうが、皆さん書いてくださるのか なと思います。  これは字が小さいです。実は昨日相談に来られた方は65歳以上の方が非常に多くて、 昨日使用したものも小さい字のものだったということもあったのかもしれませんが、意 外に「書いてください」という所のほうが書いてくれるのかなと思いました。  最後に「専門家評価」で、どういう方についてCTを撮るか、レントゲンを撮るか と、実は私も迷いました。資料5のいちばん前のところを見ていただくと分かるのです が、ばく露の疑いがあって専門家の窓口に来られて、専門家が「ばく露あり」と判断し た人は、初回にレントゲンとCTを撮るのがよいと思いました。専門家の先生方が見 て、これはばく露があるのかなという場合に、尼崎ではレントゲンを撮っていますが、 それだけでよいかどうか、CTも要るのかどうかを、是非今日この場で議論していただ きたいと思います。私が見た感じでは、高濃度ばく露の方は、レントゲン1枚撮って、 胸膜プラークも、アスベスト肺もわかります。低濃度ばく露、中等度ばく露の方は、レ ントゲンを撮ってもなかなか難しいのですが、CTを撮ると、胸膜プラークが検出でき るという場合があるのです。  先月の初めから約1カ月半以上健康診断を行ってまいりまして、明らかに職業性ばく 露があって、その年数が長い方は、レントゲンを撮っただけで診断がつく、という場合 がございます。もちろん100%ではありませんが、いわゆる中等度ばく露以下の方の場 合は、レントゲンを直接で1枚撮っても石綿の所見はなかなか出てこない。そうなる と、やはりCTが必要なのかなということで、このように、一応案として書いておりま す。今日は専門の先生方がたくさんいらっしゃいますので、是非先生方のご意見を聞か せていただきたいと思っている次第です。 ○土屋座長  実態調査でご遺族に聞く場合も難しいのですが、さらに問診で職業歴を聞く場合も大 変難しいということのご紹介ですが、その上で、専門家の判断で初回に胸部X線写真と CTを撮るという辺りのご意見を委員の方から頂戴したいということですが、いかがで しょうか。 ○中野委員  岸本委員がお出しになったものの5番、「以下の石綿製品を取り扱う仕事」でたくさ ん製品を挙げておられますが、この中で、いわゆるクロシドライト(青石綿)の製品と 白石綿の製品を分けて、それを同定するために細かくやったほうがよいということなの でしょうか。 ○岸本委員  青か白かと意識して使っていらっしゃる方はほとんどいませんので、石綿を使うであ ろうという業種で、なおかつ頻度が高いものをここに挙げたのです。実は私も、自分で 問診するときは青か白かと必ず聞くのですが、それを意識されている方というのは20人 に1人ぐらいしかいないので、こういう業種でアスベストが使われるであろうという意 味でここに書いております。 ○中野委員  3頁目、画像診断の必要性の判定のところで、仕事を1年以上行った場合にCTを撮 るということでした。いままでの研究で明らかにされてきたのは、白石綿はプラークを 形成することが割と多いが、クロシドライトとアモサイトはプラーク形成をあまりきた さないということでした。教科書的にはそうなっています。例えば中皮腫の場合、3〜 4割にプラーク形成がないということですが、その辺はどうなのでしょうか。 ○岸本委員  結局、中皮腫というのはものすごく頻度が低いので、健康診断で中皮腫を診断できる 確率というのは非常にないのです。ただ、胸膜プラークは非常に低濃度ばく露である、 一般住民健診でも何人も引っかかってくるということで、アスベストにばく露されたか どうかという指標としていちばんよいのは胸膜プラークです。ですから、まず胸膜プラ ークを引っかけて、それでフォローアップしようと、そういうスタンスです。 ○中野委員  尼崎市で胸部単純写真で検診を行うということには、大きな目的が2つあります。1 つは、いま委員がおっしゃったように、プラークを見出してリスクを評価する、ハイリ スクグループを同定していきたいということです。もう1つは、無症候性の胸水を発見 することです。中皮腫の頻度を考えますと発見される確率は低いと思われますが、少な いながらも出てきているわけで、無症候性の胸水を発見し、中皮腫の発見につなげると いうことです。全国で1,000例に満たない患者数ですので、マススクリーニングをして 出てくる確率は低いのですが、中皮腫の早期例を何とか見つけ出したいということと、 委員がおっしゃったプラークを検出することと、2つの目的があるのです。  中皮腫の場合は、白石綿の場合はプラーク形成しやすいけれど、クロシドライト、い わゆる中皮腫を起こしやすいタイプのアスベストの場合には、プラーク形成があまりな いという教科書的なことがあるものですから、最初は胸部単純写真でやると我々は考え たわけです。 ○土屋座長  名取委員、いかがですか。 ○名取委員  だいぶ健康診断の話に入っていますので、話を元に戻して、環境省と労働省のすり合 わせ部分の話をまずさせていただいたほうがよいような気がします。後でまた、いまお 話になった健康診断についてお話したいと思います。  私は、尼崎の環境ばく露の件については昨年来から相談を受けております。奈良医大 の車谷先生も研究されていて、私は直接しておりませんが、アドバイスはしてきており ます。そちらの調査もだいぶ進んでいるということもありますし、聞き取りも数十名に 対して実践されているという話で、ある程度経験があるように思われますので、まず環 境省の班で、奈良医大の車谷先生のグループと比較して一緒にやるようなことをしたほ うが実際的のような気がするのです。そこら辺について、すり合わせをご検討いただい たほうがいいという気がするのですが、いかがなものでしょうか。 ○内山委員  直接車谷先生と連絡をとって、どういう方法でやっておられるかも伺ってご指導な り、その雛型もいただいておりますので、それは是非参考にしたいと思います。すでに 車谷先生が面接された中に今回我々がやっている対象者も含まれて、重複する方もある と思います。車谷先生は1人90分ぐらいかけて面接調査をされているということですの で、また同じことを環境省が聞くこともありませんので、重複している方はそちらのデ ータをいただくなりして、ご協力いただく方の負担にあまりならないようなことも考え ております。問診の内容は、こちらが落ちているということはないようですし、方法に ついては高岡委員が尼崎のことも十分認識されていると思いますので、その点はうまく やっていきたいと思っております。 ○名取委員  岸本委員のほうの研究は、面接は併用されないのですか。 ○労働衛生課長  亡くなった方が対象なので、全国津々浦々まで先生が行くのも難しいだろうというこ とでアンケートの形にしております。 ○名取委員  環境省のほうも、亡くなった方がいらっしゃるわけですね。それに、アンケート調査 だけですと、調査の中身としてはやや、どうしても、ご遺族だけの聞き取りになってし まいますので、だいぶ少なめの結果になりがちかなという気がするのです。他の国の中 皮腫登録制度を見ていても、場合によっては専門医が実際に飛んでいくようなことを併 用しているようです。折角この機会に、アンケートだけで終わるというのは非常にもっ たいない。もう少し専門医の方がきちんと関わるようなデザインにしていただいて、日 本も諸外国と同じぐらいの中皮腫登録になるようなきっかけの研究にしていただいたら よいかなと思うのですが、そこら辺はいかがでしょうか。 ○労働衛生課長  岸本班は全国調査ということで、今年だけで全部終わろうという形で無理してやろう という考えではないのです。環境省の研究調査を、例えば保健師を派遣して個別にきち んとトレーニングをした上でやるということであれば、全国的な話になりますので、実 行可能性についての評価が必要だと思います。また岸本委員と相談いたします。大事な ことですので、研究費として捌く分には、私どもはいくらでも取ってまいります。なる べく正確な情報をきちんと集められるように、その手段については、中で検討した上で きちんと対応したいと思います。 ○名取委員  できれば中皮腫登録並みの病理医なり疫学者、もしくは職歴だけを取るような専門家 という体制を是非とっていただくよい機会だと思いますので、その点は是非頑張ってい ただきたいと思います。 ○土屋座長  新規症例については、改めて検討が必要かと思いますが、今回は周辺住民のことを優 先して議論を進めていきたいと思います。  先ほどの問題に戻ります。中野委員からご発言があったように、専門家から見て「ば く露歴あり」、あるいは高危険度群と思われる方に、胸部写真と同時にCTをやるかど うかという問題で意見がありました。そのご発言を受けて、岸本委員は何かご意見がご ざいますか。 ○岸本委員  中野委員は、クリソタイルは胸膜プラークをつくりやすくて、クロシドライトとアモ サイトはつくりにくいと言われたのですが、必ずしもそうではないのです。  私は、少なくとも20年ほど前から広島県の呉で、ほとんどアモサイトとクロシドライ トで起こった中皮腫を診ていましたが、そういう例に胸膜プラークはなかったかという と、ほとんど胸膜プラークはある。たぶん三浦委員も同じようなご経験があると思いま す。ですから、胸膜プラークがアモサイト、クロシドライト、クリソタイル、すべてに 関していちばんのメルクマールになるだろうと思っています。  良性石綿胸水というのは、委員がおっしゃるように、インシデンスとしては今かなり 増えていると思います。私のところだけでも、今年になって良性石綿胸水を6〜7例経 験しています。すべて胸腔鏡で検査をして、中皮腫でないということです。しかし、こ れは中皮腫が出てくる可能性が非常に高いので、必要な項目ではありますが、レントゲ ンとCTを撮っておけば、いちばん問題がないのです。まずレントゲンで水があって、 CTで腫瘍性の胸膜肥厚があるかないかも同時に見ていれば、遜色はないかなと考えて います。 ○中野委員  私が診ております中皮腫の患者には尼崎に住んでおられる方がその中に比較的多く含 まれるのですが、そういう患者さんのCT所見からいいますと、30〜40%近かったと思 うのですが、それぐらいの方はプラークがないのです。だからCTでプラークを引っか けることで中皮腫の高危険群の評価ができるかという点だと思うのです。中皮腫の患者 さんの100%にプラーク形成がある場合には、評価はできます。ところが、40%ぐらい の人はプラークがない状態で中皮腫の発症していますので、問診で少し疑いがあるとき に最初からCTで行くかというところに少し疑問を持ったのです。 ○三浦委員  この1つの大きな目的は、どのくらい人体にアスベストが入っているかということを 写真あるいはCTで確かめることだと思うのです。たまたま、そこで中皮腫が見つかれ ば、患者にとってはラッキーかアンラッキーかわかりませんが、それは副次的な問題 で、調査をすることによって、実際にそこに住んでおられた方にどの程度の率でそうい う所見が現れるかということです。  私は昔、連続剖検を二百何十例でやったのですが、単純写真で見つけられるのは大体 3分の1ぐらい、ルーチンの1センチのCTで3分の2ぐらい、いまのHRCT(ヘリ カルCT)を入れて8割ぐらい、残りの2割はどうやってもわからないというのが実態で す。ですから、CTを撮るとしたらある程度一律に撮っていただく。経年はまた別の話 になるので、そのラインでは一律に撮っていただく。しかも、希望者だけですからある 程度バイアスがかかっていると思うのですが、何年から何年ぐらいにどの地域に住んで いた人にどのくらいの頻度が出てきたかがわかれば、一般環境への影響はわかると思う のです。ですから、そういう点ではCTはよいと思いますが、CTの方法を決めておか ないといけないだろうと思います。 ○土屋座長  個々の被験者への関連は少ないかもしれないけれど、全体の把握としては一律にCT があったほうがよろしいのではないかという解釈ですか。 ○三浦委員  そうです。一度そこで撮っておけば、個々の方については将来の比較の基になりま す。この変化というのは、臨床的にはかなり大きな情報になりますので。 ○中野委員  CTのほうが単純写真よりは情報量が多いというのは常識ですので、CTのほうでよ り多く情報を得るというのは正しいことだと思うので、決してそれを否定するものでは ないのですが、それを全員にするのかどうかなのです。 ○成田委員  そのとおりだと思います。CTのほうがよいのはわかっているのですが、多数の人間 を撮る場合にどうするかということは、少し考えないといけない。まして、若い人が対 象になった場合に、それをどう考えるかということも多少問題はあると思うのです。 ○安全衛生部長  質問ですが、資料5のフローチャートでいきますと、現在、自分で手を挙げて胸部レ ントゲンを撮りたいと希望してきた方がいますが、その中で、ばく露歴があるというの は100%ですか。 ○高岡委員  尼崎の健康診断で、職業歴と居住歴を聞いています。その中で「ばく露なし」という 方は、基本的にはいないのです。 ○安全衛生部長  ということは「ばく露歴あり」のところでレントゲンのところへ来ているというわけ ですね。その場合には、前回私どもの委員会ですと、CTはできるだけ全員対象という ようなことだったと思いますが、いま尼崎の場合ですと、仮に胸部単純X線で何らかの 所見があって更にその先に進むべきだという方は、どれくらいいらっしゃるのですか。 ○高岡委員  ばく露歴があってもCTまで撮らなければいけないレベルかどうかというのはあるの です。それは、被ばくによる害と・・・。 ○安全衛生部長  そこら辺は全部議論されまして。 ○高岡委員  尼崎の考えとしては、先ほどから少しご意見がございましたが、非常に高濃度のばく 露という環境なり職業歴で問診から基準がつくられています。この基準のつくり方もあ ると思いますが、本来ならば低ばく露であるにもかかわらずCTまで行ってしまう可能 性もあるわけです。ですから、尼崎の考えとしては、そこの低ばく露なり高ばく露とい う考え方が問診だけではなかなか区分できない。そうなると、まずはとにかく胸部のレ ントゲンできちっと見ましょう。そして、そこで引っかかった人についてはCTへ持っ て行きましょう、という考え方でおります。 ○安全衛生部長  そこのところは、それぞれの委員会でやっていることですから、ここで詰めていただ く必要はないと思います。また、尼崎市は尼崎市で独自で判断されることでしょうか ら。私が先ほど申し上げたのは、胸部X線を撮って、どれくらいの方が更に精密検査な り何なりに回す必要のある人たちかということをお聞きしたかったということなので す。 ○高岡委員  一次統計を終わっている3日分、95名については30%ぐらいです。 ○土屋座長  いまのご議論について、何か追加のご意見はございますか。 ○成田委員  住民健診は尼崎もやっているし、それから、アスベストの取扱い工場がある奈良や岐 阜羽島でも住民健診をやっているかのように聞いておりますが、事務局、いかがでしょ うか。その辺の情報はございますか。 ○労働衛生課長  それは前回も成田委員からご指摘がありまして、私どもは調査に行ってまいりまし た。  これから岐阜羽島と奈良の王寺についての資料をお配りします。工場名は、皆さんも ご存じのところですが、一応A工場またはA事業場、B工場、C工業、D工場としてあ ります。まず、1のB工場が岐阜羽島の工場です。そして、青石綿、白石綿、茶石綿を このように使用していたが、使用量の詳細は不明であるということです。  ここの工場はしっかり、住民も不安だということで、住民説明会を7月9日に行い、 170名ほど来ていますが、そこから住民検診をするということになり、申込み数が400名 を超えているそうです。今もときどき申込みが来ているという状態です。さらに、従業 者健診ということで、元の従業員、それから工場でアルバイトをした方等広く呼びかけ ておりまして、この方々が約200名。これは現在も増え続けているそうですが、住民検 診の申込みがまだあるということです。  さらには家族検診、家族の方で不安になっている方々も20名ほどいま申込みがあって 健診を行っているということです。またその他として、工場に出入りしていた業者から 14名申込みがあったということです。実は、これが29日の状況で、7月19日から工場周 辺の従業者等に対して健診を開始しているということです。  2が奈良県王寺のアスベスト取扱い工場です。これは資本系列が一体化しておりまし て、C工業とD工場で青石綿、白石綿を使っていたわけですが、こちらも、健康被害へ の対応といたしまして住民健診を広く呼びかけております。D工場で申込み者が約450 名、C工業でも申込み者が約200名、総計600名を超える住民の方々から申込みがありま した。なおかつ元の従業者、アルバイトや工場等の出入り業者、それから不安になって いる家族も全部受け付けているということで、そちらのほうの数字は締め切っておりま せんのでまだ伸びる可能性があるということで、7月19日から1次健診をして、9月中 には全部終わりたいということですが、現在健診を行っているということです。  次の頁にその健診のフローがございます。第1次健診として、問診・聴診・胸部レン トゲン撮影を行って、そこできちんと所見を取りまして、そこで所見がある方々は第2 次健診に入って、その中で胸部CT、喀痰が出る方は喀痰細胞診、それから肺機能検査 を行う。元従業員の方で更に所見があれば、健康管理手帳の申請か労働災害認定申請を 行う。住民の方々でそういうものがあれば、個別に対応をするということで、現在進行 中であるということです。 ○岸本委員  私が言った、レントゲンやCTを会社のお金でやっていただいているというのは非常 によいことであります。このデータを見てから始めることでもよいのではないかと私は 思います。是非専門家で胸のレントゲン、CTを検討していただいて、そのデータをこ の場に持ってきていただければ、レントゲンでどれぐらい読めていて、CTではどれぐ らい読めているのかという実際の値が出てきますので、これは参考になると思います。 特に環境ばく露や家族内ばく露も評価できると思いますので、いかがでしょうか。 ○土屋座長  この住民検診は、合計で1,000名ぐらいが対象になる、相当の数なわけですね。 ○労働衛生課長  そうです。 ○成田委員  いまの阿部労働衛生課長の説明によると、これは9月中に終わるということです。ま た尼崎のほうも、見てみたら9月ぐらいである程度の数が出るようなので、その辺で再 検討するということをいま岸本委員がおっしゃいました。その結果をちゃんとして、エ ビデンスといいますか、証拠を持った上でいろいろな方法を決めていったほうがよいの ではないかという気がいたしますが、いかがでしょうか。 ○中野委員  最も聞きたいのは、これは胸部単純写真の所見からCT検査に持ってくるようになっ ているのですが、胸部単純写真のどういう所見でCT検査にもってくるのか。我々尼崎 の委員会はオーバーダイアグノーシスで、例えば肺尖部の肥厚でもCT検査を行うよう にする。それで30%の患者さんがCT検査を受けられることになります。このC工業と D工場の650名の単純写真からCT検査に持っていくときのクライテリアがどうなってい るのか、その点はわかりますか。 ○成田委員  要するに、限局性胸膜肥厚斑と間質性変化があればCTを撮る。 ○中野委員  肺尖部の変化はどうですか。 ○成田委員  たぶん取っていないと思います。 ○土屋座長  それは次回明らかにしていただいて、9月の結果を待つということで、よろしいです か。成田委員がおっしゃるように、9月の末にその結果が出たところで再検討していた だきたいと思います。ほかにこの件に関してご意見がございますか。  続きまして、9月1日から開設されるアスベスト疾患センターに関して、資料6も見 ていただきながら岸本委員にご説明いただきます。 ○岸本委員  資料6にありますように、平成17年7月29日に、「アスベスト問題に関する関係閣僚 による会合」にて、「アスベスト問題への当面の対応」というのが出ました。そして、 労災病院に対して、「アスベスト関連疾患の診断・治療の中核となる医療機関として労 災病院の診療体制の充実を図るため、診断・治療体制が整備された労災病院に『アスベ スト疾患センター』を設置するとともに、アスベスト関連疾患の症例の収集、他の診療 機関から医療相談等他の医療機関の支援を行う」というお話がありまして、実は明日か ら、そこにある22の病院にセンターが開設されることになりました。  我々はセンターにおいて、アスベストばく露者や関連疾患の患者を対象として、地域 の医療機関と連携しながら、健康相談、健康診断を7月の初めから行っております。診 断治療も行って、アスベスト関連疾患、中皮腫だけではなくて、じん肺症としての石綿 肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水、石綿肺がん等の症例を収集しようということで 既に準備が完了しております。  労災病院は22ありまして、胸膜プラーク等、かなり目の不均一があるかと思いました ので、8月24日に関東労災病院に関係各位が集まりまして、これの標準化という形で、 レクチャーの後、実地の訓練・指導、レントゲンの読影ということを行いました。明日 から、7ブロックの中核病院を主体として、アスベスト疾患の診断・治療に関して努力 をしていきたいと思っております。 ○土屋座長  アスベスト疾患センターに関して、何かご質問がありますか。よろしければ、事前に 用意した事項についてはご意見を承ることができましたが、全体を通じてご意見がござ いましたら、最後にいただきたいと思います。先ほどご指摘があったように、エビデン スが近々積み上げられるということで、それに基づいて再度見直しということでご意見 を賜りたいと思いますが、そういうことで、よろしいでしょうか。 ○祖父江委員  今回の実態調査については、中皮腫の患者の死亡例や罹患例を調査されるということ なのですけれど、環境省のほうの調査の中に居住歴を調査するという形のものが、委託 調査でないところであったと思います。そちらは、どうなっているのですか。 ○保健業務室長  この調査でなくてですか。 ○祖父江委員  市町村が行うというようなことでしたが。 ○保健業務室長  この調査を、尼崎市なり神戸市を含めた兵庫県下の関係自治体で調査いただくという ことです。 ○祖父江委員  死亡例について、死亡時の住所を同定し、戸籍の付票で過去の居住歴をすべて把握し て、昭和40年代の。 ○保健業務室長  居住歴の調査もその一環として行うつもりです。 ○祖父江委員  しかし、それだけでは調査全体として完結しなくて、中皮腫の人たちの居住歴等に共 通の特性があるかどうかを洗い出してハイリスクのエリアを同定し、さらにそこから、 きちんとした疫学調査を実施するということが最終の目的ではないかと思うのですが、 そこの認識は正しいのですか。 ○保健業務室長  この調査だけで何が言えるのかというのは難しい点もありまして、この調査の結果を 受けて、必要な更なる疫学調査がどういうふうに設計できるかは、また考えていきたい と思います。まずはこの調査を実施して、その結果を見てみないと、次の設計もまだで きないかなと考えております。 ○祖父江委員  車谷先生がなさった調査がもう少し精緻な形でできれば、あれがいちばんよいものだ と思うのですが、その際に、中皮腫の死亡例の方の死亡時の住所でリスクを同定するよ うなことは、あまりよくない可能性もある。あるいは、過去に遡って住民数をカウント する分母の部分、その居住範囲を指定した場合の分母の部分を、その当時の住民数を積 み上げるだけでは、1年間だけいた人なのか、それとも、ずっと居住していた人なのか ということの判別ができない。過去の一時点にどなたがいたのかという住民票の名簿と いいますか、そういったものを同定して、その人たちを一斉に追跡するという形のもの がいちばん望ましい、後ろ向きのコホート研究を行うのがいちばん望ましいわけで、そ ういうことの可能性も追求していただいたほうがよいのではないかと思います。 ○土屋座長  膨大な仕事だと思いますが、ご検討を是非お願いしたいと思います。 ○労働衛生課長  先ほどの奈良や羽島でも企業主導でやっています。ただ、これは指導医療機関にきち んとお願いしてやっているということで、全部合わせると約1,000名近い方々がアスベ スト関係の健診に入ってくるということです。中には、従業員と住民と出入り業者、そ して家族の方が相当数出てきますので、こういう事業所で、職種等の関係でどのくらい の率で石綿関連の所見が出てくるのかということまで一意的にわかりますので、結構こ れは大事な情報になるのではなかろうかと私自身は思っておりますので、先生方のご指 導等を仰ぎながら、また、こちらの会社側や住民側ともいろいろと相談した上でデータ をきちんと整理して専門家会議にかけて委員の先生方にご判断いただくということであ れば、それぞれのリスクも出てきて、それも尼崎と比較すれば、かなりの評価がいける のではなかろうかと思っています。早速こちらも交渉等を始めたいと思っています。 ○平野委員  ターミノロジーなのです。いまアスベストの問題が産業汚染ではなくて一般環境に出 てくるというのは非常に大きな問題だと思うのです。ターミノロジーで、岸本委員は 「環境ばく露」と言っておられます。あとは「一般環境ばく露」というのも出てきてい ますし、「非職業性ばく露」というのも出てきます。岸本委員のものは、どちらかとい うと家庭内に作業服を持ち込んでというところを環境ばく露に近いところと捉えている と思いますし、人によっては、ビルの解体からの一般環境を考える人もいます。事務所 があって、その地下倉庫に行って、そこで石綿ばく露したりすることをどう考えるか。 それも職業性ばく露なのかということなのですが、ターミノロジーをどこかできちんと やっておいたほうがよいのではないかと考えているのです。 ○土屋座長  やはり定義をはっきりしておきませんと誤解を生みますので、是非関係の先生方のご 提案をお願いしたいと思いますが、何かありますか。 ○名取委員  先日申し上げた家族ばく露については、いまのところ、このままでいくと入っていな いようですが、それをやる予定はどうなのかということが1点です。もう1点は、いろ いろな空気、空気の扱いというのが省庁縦割りになっておりまして、労働現場の空気は 旧労働省、建物の内部になると、学校は文部省、民間のビルは国土交通省というような 形です。いまのところ環境省のほうは、いろいろと大気の測定を予定していると伺って いるのですが、それ以外の省庁からは、いろいろなところの濃度測定の予定を伺わない のです。厚生労働省の管轄でも、労働現場以外に、病院や社会福祉法人だとか言って通 知を出していますが、濃度測定の予定はあるのか。そうでないと、環境省だけが測るこ とができて他の部分については測ることができないという状態になっているのですが、 そこら辺はどういうご予定なのでしょうか。 ○労働衛生課長  労働現場であれば、いまであれば特化則の中で規制されて測定義務もかかっている話 です。 ○名取委員  それは建物内ですか。 ○労働衛生課長  敷地の内部です。 ○名取委員  いやいや、建物の中について、いろいろと管轄が変わってしまうような状態があるよ うに思うのですが。 ○成田委員  委員がおっしゃるのは、どういう意味ですか。 ○名取委員  例えば、この間問題になっているJRの何々駅のところの濃度はどうだと言うと、あ れは国土交通省になる。それがみんなバラバラで、学校だと文部科学省が測るとか、そ うなるわけです。そして、病院や社会福祉法人だと厚生労働省が通達を出しているわけ です。そのように、空気に対する縦割りというのがあるのです。 ○労働衛生課長  特化則以外に測定義務がかかっているところは他にはないですね。ビルの中ではビル 管則というのがありますが、ビル管則にはアスベストを測れという項目はありません。 ○安全衛生部長  名取委員のご提案は、そうではないのです。そういうところで測る必要はないのかと いうことです。そうすれば、どこが問題かがわかるということですね。 ○名取委員  そうです。そうすれば、どこが問題かがわかるので、そういうご計画を当然考えてお くべきだと思うが、そのご計画はないのかということなのです。 ○土屋座長  使用する場所ですね。 ○名取委員  そうです。当然厚生労働省の管轄の建物でも、吹付けがあるところがおありでしょう から。 ○労働衛生課長  健康影響というところから考えれば、当然一括して、研究ベースで測る分には全く構 わないだろうと思いますが、それをどこがどういう測り方をするのかということがあり ますね。 ○土屋座長  そうです。その点を是非ご検討いただいて実施していただければと思います。 ○労働衛生課長  難しいのです。要するに、我々サイドからすると、厚生労働省全体でいくと、いろい ろな部署がありますが、労働者の健康管理上必要があるということで規定してしまう と、なかなか難しいのです。 ○名取委員  いや、それは無理です。ビル管理法でいけば、その中に本当はアスベストの濃度測定 が入ってもいいわけですが、いまはそれが入っていません。 ○労働衛生課長  そこら辺は関係のところを。本来であれば、その建物を持っている所、あるいはそこ を指導監督する立場のところが判断してやるべきですが。 ○名取委員  ええ、それぞれが。でも、国民はいろいろなところに移動して行くわけですから。 ○安全衛生部長  そこは少し、少なくとも我が省の中で関係するところにいろいろご意見を聞いて、委 員がお話になったようなことに対してどうするかを考えたいと思います。 ○名取委員  家族ばく露の件はどういうふうになっているのでしょうか。 ○安全衛生部長  家族ばく露の話は、委員の前回のご指摘があって、私のほうからこんなことをやった らどうだと申し上げたのです。今、先ほどの羽島や奈良の例については、工場が地域住 民に非常に密着したところにあり、これは住民のばく露の話で、先ほどのような、企業 にいろいろお願いしたりして、あるいは企業の自主的な判断で地域向け健診を行ったり している。また、尼崎市は、市のほうでそういったことを環境省と一緒になってやって いる。そういうモデルが1つ、地域住民モデルだろうと思います。  造船関係ですと、私も2カ所行きましたし、他の造船所にも行ったのですが、住民と 非常に遠い。まず住民の地域ばく露というのは、どう考えてもあり得ないだろうという ぐらいに遠い。そういうところで、先ほどのような地域住民と密着したところだと、タ ーミノロジーの話もありましたが、家族ばく露と住民ばく露の境があまりよくわからな い。ある労働者の家族であって、しかもその地域に住んでいた。それで、どちらのばく 露なのか分からないという形になってしまいます。委員がご提案になったように、造船 関係だと、少なくとも労働者あるいは労働者の家族という形が、地域住民とはっきり分 かれるのではないかと。そこで、1つのモデルとして造船関係を考えたらどうかと思っ ております。実際は相手がある話なので、そういったところと相談させていただきたい と思います。 ○名取委員  進行中という理解でよろしいですか。 ○安全衛生部長  そうですね。 ○土屋座長  ほかによろしければ、次回についてのご説明をお願いいたします。 ○労働衛生課長  次回は9月28日(水)15〜17時、場所は本日と同じ部屋になります。次回はまた、厚 生労働省は厚生労働省で、環境省は環境省でご連絡をお願いいたします。 ○保健業務室長  変更については事務局で調整して連絡いたします。 ○土屋座長  これで閉会にさせていただきます。ご協力、どうもありがとうございました。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課(内線5493)