05/08/25 第1回労働に関するCSR推進研究会議事録            第1回 労働に関するCSR推進研究会                       日時 平成17年8月25日(木)                          14:00〜                       場所 経済産業省別館1012会議室 ○政策企画官(労働政策担当参事官室)  定刻になりましたので、ただいまから第1回「労働に関するCSR推進研究会」を開 催させていただきます。本日は大変お忙しい中、また天気も非常に悪い中お集まりいた だきまして誠にありがとうございます。私は厚生労働省政策統括官付労働政策担当参事 官室で、政策企画官をさせていただいております矢田と申します。座長が選出されるま での間、私が暫時議事進行役を務めさせていただきます。  はじめに、厚生労働省を代表いたしまして、本来政策統括官からご挨拶を申し上げる べきところでございますが、所用のため欠席をさせていただいておりますので、労働政 策担当参事官からご挨拶を申し上げます。 ○参事官(労働政策担当)  労働政策担当参事官の東でございます。本来統括官の太田がご挨拶を申し上げるとこ ろでございますが、現在省議をやっておりまして、誠に恐縮でございますが、私が代り にご挨拶をさせていただきます。  CSR、最近、日本でもいろいろ耳にするようになった、あるいはマスコミ等でも、 特に専門的な週刊誌で取り上げられているわけですが、労働分野につきましてまだとい う感があるわけでございます。エコとかいう面では、やはりある程度進んでいるという ことがございます。それから昔、フィランソロピーという形で、CSRとは若干違うの でございましょうけれども、企業の社会的責任というかあり方といったもので動きがあ るわけでございますが、労働関係はなかなかいかないということで、まだ、以前から私 どもといたしましても、この研究会を設けましていろいろな学者の先生方、実務の方々 からご意見をいただいてきたところです。その中でやはりある程度研究をして提示し て、少しでも流布をすべきではないかというご意見を頂戴している。あるいは自社でど れぐらい取組みが進んでいるのか、そういったものがチェックできるような指標的なも のをお示しできるような形で提言したらどうかというご意見等をいただいたわけでござ います。  今回委員の皆さま方に参集していただきまして、また新たに前回の研究会報告で言わ れた、必ずしもそれにとらわれることはないかと思いますが、いろいろなご意見を頂戴 しまして、それを少しでも企業の労働面でのCSRのほうへ展開が行くようにお願いで きればということで、本日ご参集いただいたわけでございます。ジュネーブのISOの ほうでもいろいろ動きがあるやに聞いておりますし、EUあるいはOECDと、国連も いろいろそういった観点で、労働分野がワールドワイドになってきておりますので、ヒ ューマンライフのほうも含めて動きがあります。  外圧がないと動かないと言われるような日本であってはいけないということではあり ますが、ただ、グローバルスタンダードに乗り遅れますと、また10年前のセクハラの問 題とかいろいろございまして、企業が叩かれるようなことになってはならないという意 味も含めまして、ある程度ご研究をいただければということで、本日はお集まりいただ いた次第でございます。その辺の趣旨はそれだけにいたしまして、今後どのような形で 皆さま方のほうで労働面のCSRを進めていくのがいいのかということで、いろいろな 忌憚なきご意見をいただけますようにお願い申し上げて、冒頭の挨拶に代えさせていた だきたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。 ○政策企画官  本日は第1回目の会合でございますので、まず委員の方々を私から簡単にお名前をご 紹介させていただきます。はじめに、日本総合研究所創発戦略センター上席主任研究員 の足達委員です。成城大学法学部教授の奥山委員でございます。京都大学地球環境学堂 助教授の小畑委員です。トーマツコンサルティング株式会社ディレクターの寺崎委員で す。法政大学キャリアデザイン学部教授の八幡委員です。それから、オブザーバーとし まして経済産業省の矢野さんと環境省の尾崎さんです。よろしくお願いいたします。  事務局のご紹介をさせていただきます。労働政策担当参事官の東です、私、政策企画 の矢田と申します。室長補佐の千葉です。調整第二係長の福岡です。  続きまして座長の選出をさせていただきます。まずご参集者の皆さまにお諮り申し上 げたいと思いますが、どなたかご推薦をお願いできませんでしょうか。 ○小畑委員  奥山委員にお願いしたいと存じます。 ○政策企画官  いま小畑委員から奥山委員のご推薦がございましたが、ご異義ございませんでしょう か。                  (異議なし) ○政策企画官  それでは奥山委員に座長をお願いしたいと思います。今後の議事進行につきましては 奥山座長にお願いしたいと思います。では、中央にお移りいただきまして、以後よろし くお願い申し上げます。 ○奥山座長  ただいまご紹介いただきました成城大学の法学部に現在勤務しております奥山と申し ます。このCSRの問題については個人的には考えることがあるのですが、深くこれま で考えたことがございません。労働法全般について普段は勉強をしておりまして、高齢 者の雇用保障とか、男女の雇用平等とかいう観点については、いろいろ厚生労働省の中 でも研究会等でお手伝いをさせていただいたり、自分でも関心をもってやってきて、多 少それなりの知識は持っているつもりなのですが、今回この研究会のこういう問題につ いては、本当に細かなところは何もわかっておりませんので、不手際等たくさんあると 思いますが、よろしくお願いしたいと思います。  名簿を拝見したり、これにかかる前にちょっとご相談等を受けましたが、既にCSR の問題については、中間報告が出されていまして、そこでの名簿も拝見させていただき ましたら、既に関わっていらっしゃる方、特に小畑委員などは前からこういう問題につ いての専門的な観点からの関わりもございますので、そういう委員のお知恵等を出して いただきながら、私は本当に単なるこの会の進行役みたいな形でしか貢献できません が、一生懸命に頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  議事に入ります前に、この研究会の開催に当たりまして、会議の公開、最近こういう 省の研究会では常にこういう問題があるのですが、その問題についての説明をお願いし たいと思います。 ○室長補佐(労働政策担当参事官室)  資料4「会議の公開の取扱いについて」です。会議、議事録及び資料については、基 本的に公開といたしたいと考えております。よほどの事情があればということで1から 4で、例えば個人に関する情報を保護する必要があるとか、あるいは公開することによ って市場に影響を及ぼしてしまうとかいう事情があれば別なのですが、基本的には会 議、議事録、資料のいずれにしましても公開という形でお願いしたいと思っているとこ ろです。以上です。 ○奥山座長  ただいまの事務局の説明につきまして、特段ご意見等がございますか。ないようです ので、いまの公開の問題については事務局の説明どおりで取り扱うようにしたいと思い ますので、よろしくご了承をお願いいたしたいと思います。  次にこの研究会の目的及び今後の進め方等についても、事務局から説明いただければ と思いますので、よろしくお願いいたします。 ○室長補佐  この会議、研究会の目的につきましては資料No.1で、今後の進め方については資料 No.3に基づいて説明いたします。資料No.1をお開けいただきたいのです。後で少し詳 しめに申し上げますが、「労働におけるCSRのあり方に関する研究会」を平成16年に 開催していまして、昨年の6月に中間報告書をとりまとめたところです。  その背景に何があったかといいますと、企業間競争が激化したりして、長時間労働な どが増大するなど、働き方の持続可能性について懸念される状況が見られるといった問 題意識があったわけです。そうなると、従業員に対して、いろいろ考慮する必要性が増 大してくるのではないかということです。この報告書の中においては、企業がCSRを 推進していくのに役立つように、国が側面から情報とか判断材料とかを提供していくこ とについては、意義があるのではないでしょうかという提言をいただいています。  より具体的に申し上げますと、社会報告書に盛り込むことが望ましいと考えられる項 目を提示することとか、あるいは企業がどこまで自社の取組みが進んでいるか、自分で 点検できる材料を開発すること。いわば情報開示の項目と自主点検用のチェックリス ト、こうしたものを作っていくことが有効なのではないでしょうかというご提示を受け ています。そこで、今回こうした施策の中身について具体的にご検討をいただくため に、学識経験者・有識者の方を参集させていただきまして、この研究会を開催させてい ただいているところです。  この研究会のスケジュールについて資料No.3です。開催予定として第1回は本日8 月25日ですが、労働のCSRに関するこれまでの検討経緯ということで、論点整理のペ ーパーなどについては後で説明しますが、こうしたものに基づきながらご議論をいただ ければと考えています。以降、10月17日、第2回と書いていますが、第2回以降に具体 的な議論に移ってまいりたいと思っています。その具体的な中身については、自主点検 用チェック指標から開始したいと思っています。これの意味合いは、自主点検用チェッ ク指標と情報開示項目、これどちらも労働に関して項目立てをしていくという点におい ては、共通はしているのですが、自主点検用チェック指標のほうが、どちらかという と、これは企業が自分でチェックをするものなので比較的詳しめのものになる可能性が あります。したがいまして、まずチェック指標を先にご検討いただきまして、その成果 を踏まえて情報開示項目についてご検討をいただくという流れにしてはいかがかと考え ています。  その後、1月になりますが、第5回のところで、関係者へのヒアリング、これは何か ということですが、自主点検用チェック指標、情報開示項目などについて、それまでの 間でご議論をいただいた内容について、例えば労働者を代表する方々、あるいは使用者 を代表する方々などに対して考えをお聞きするということなどが想定されるかと思って いますが、この辺りについてはまたご相談させていただきたいと思っています。  「チェック指標作成のための調査に係る調査項目の検討」と書いていますが、これの 具体的な意味合いですが、自主点検用チェック指標を作ったときに、果たして自分の会 社がどこまで進んでいるかを見るに当たっては、同じような業種、同じような規模の企 業と比べて見て、自分の会社がどれぐらいの位置づけにあるのかが分からなければ把握 しづらいということがあります。したがいまして、仮に出来上がりました調査項目につ いて、自主点検用チェック指標のリストについて、企業にアンケート調査の形で協力を お願いして、その数字を集めたいと思っています。  その成果などを踏まえて、最終的には3月を目処として、情報開示項目あるいはチェ ックリスト指標について、最終的にご検討をいただきまして固めてまいりたいと考えて いる次第です。以上です。 ○奥山座長  いまの事務局の開催の要領、中身、これからの日程、それからそれぞれの所での議論 の中身といいますか、議論の叩き台的なものを説明していただきましたが、いまの事務 局の説明につきましてご質問、ご意見とかがございましたら、自由にご発言をいただけ ればと思います。  これは確認なのですが、資料3の日程をいただき、説明していただきましたが、例え ば2回、3回、特に自主点検用のチェック指標、チェックリストを先に検討していくと いうことで、この検討の叩き台になる基本的な素案のようなものは事務局で作っていた だいて、それを基に皆さんでご意見を進めていくということで了解しておけばよろしい ですか。 ○室長補佐  はい、そうです。基本的には事務局で原案を作りまして、委員の皆様に叩いていただ くというスタンスで考えたいと思っています。 ○奥山座長  わかりました。月2回やるのは大変でしょうが、なにぶんよろしくお願いいたしま す。事務局の説明でほかに何かございますか。いまの要領は別として開催の予定の日 程、ここの研究会での基本的な検討事項、情報開示の項目を考えていくということ、企 業にとってCSRの中身となるものを進めていただくときの、それぞれの企業における 点検のためのチェックシート、リストの作成を中心に、研究会を進めていくことでご了 承いただければと思います。それではただいまの事務局の流れと中身に沿いながら本研 究会を進めてまいりたいと思います。  本日は初回ですので、先ほど事務局から委員のお名前等は説明していただきました が、初めてでそれぞれのテリトリー等も私自身もよくわかっていませんので、各委員か ら自己紹介も兼ねながら、こういう問題について日ごろお考えのところがございました ら、それもちょっと出していただきながら進めてまいりたいと思いますので、よろしく お願いいたします。 ○足達委員  日本総合研究所の足達でございます。私どもの調査研究機関は、三井住友フィナンシ ャルグループの下にあります。私自身は、もともと労働分野が専門ではございません。 もともとは環境問題関連のことをやって参りました。99年に日本でエコファンドという 環境の取組みの進んだ企業に投資をしようという、投資信託の金融商品なのですが、こ れをスタートするに当たりまして、私どもが企業調査を担当し、そしてスイスにありま すUBSという金融機関が運用して、住友銀行が販売をするというフォーメーションで 商品を世に送り出しました。当時はエコファンドでしたが、99年からもう6年経ち、6 年の間に環境への取組みというのが、企業の社会責任の1つという相対的位置づけにな って、世の中の関心が幅広く、この労働の問題もそうですし、法令遵守の問題もそうで すし、広がってきたということなのかなと感じています。  現在でも私の主たる業務は、環境や社会的側面からの企業調査です。まさにいまアン ケート調査も実施しているところですが、企業の皆さんのそれぞれの取組み情報を集め させていただいて、それを金融機関に提供する。金融機関は例えばファンドマネージャ ーという立場の人がこうした情報を参考に、投資対象を決定します。例えばエコファン ドであれば環境ですし、昨今、これは2003年からですが、SRIファンドであれば労働 の問題なども含んで総合的な企業の社会に対する責任の観点から銘柄選定をするわけで す。情報提供している先には大体300億円ぐらいのお金がございます。ちなみに日本全 体ではいま1,500億円ほどの社会的責任投資の規模があると言われています。それが日 常の中心的な仕事です。  併せて、先ほどお話が出ましたがISOの26000の社会的責任の規格作りの国内エキ スパートを拝命しております。非常に大きな議論があるわけですが、2008年の年初に向 けて国際的な議論にも参画をさせていただいています。日本の国益にかなうような規格 にするにはどうしたらいいかを、日ごろ頭を悩ませているということです。 ○奥山座長  どうもありがとうございました。小畑さんお願いいたします。 ○小畑委員  京都大学の地球環境学堂に所属をしております小畑でございます。もともとの専攻は 労働法全般でございますが、労働法を研究・教育すると同時に、公害ですとか環境をめ ぐる問題についても、また、労働災害の予防や補償についても所属の研究科で研究・教 育をしております。  CSRに関しましては、前回、中間報告書を作成する際に参加をさせていただいてお ります。そして、その後、いろいろな内外の企業の方々、もしくはその他の方々とお話 をさせていただいたり、インタビューをさせていただいたりする中で、また、少しずつ 状況が進んできたなというような印象を持っております。  私が特に印象深く思っておりますのが、企業でCSRの部署に所属しておられる方々 に「CSRのブームが起きて、何がいちばん変わったのでしょうか」ということを質問 いたしますと、「障害者の雇用、男女平等の問題でCSRが大変な追い風になった。な んとなく心苦しいなと思いながらも後回しになっていた問題について、社内で反対する 人が激減してどんどん取組みが進んできた」というようなお答えを頂戴することが多く あります。そうした変化を目の当たりにすることができまして、大変この問題が重要で あるということをさらに強く思っているこのごろです。以上でございます。 ○寺崎委員  トーマツコンサルティングの寺崎と申します。私は組織人事のコンサルティングと、 あとはコーポレートガバナンス、企業統治のコンサルティングを中心に手掛けておりま す。トーマツコンサルティング自体は、監査法人トーマツのコンサルティング部門の会 社でございます。今回、私がこちらに呼んでいただいたのも、実は労働CSRに関する 本を今年出版しました。その中でどうしてもCSRというのは、例えば環境問題である とか、コンプライアンスであるとか、企業はそちらのほうを先に対応していまして、従 業員が完全に後回しになっている状態だなというところが、人事関連を手掛けている者 としては、危機意識を持ってそういった本を書いております。  実際言われる成果主義という中で、私が現場で体験しているのが、社員の方がいまど んどん疲弊しています。エコ絡みのCSRですと、いわゆるサスティナビリティという 言葉が使われていますが、私は同じ問題が従業員に対してもあるのではないか。人も経 営資源の重要な1つであってヒューマンリソースと言いますが、ヒューマンリソースも 使いきるようなものではなくて、リサイクルといいますか人のサスティナビリティをき っちり考えないと、企業も永続的な繁栄は見込めないのではないか。こういったところ で今回、私も何らかのお役に立てたらなと思っています。  実際に同じCSRでも、企業によっては非常にスタンスの違いが明確にいま出ていま す。例えば今ですと高齢者の継続雇用に関しての対応で、私どももいろいろな会社さん のコンサルティングをお手伝いしているのですが、ある会社は法令さえ遵守していれば いいだろうと、変な話、国からお金がもらえるのだから、この人たちには10万円ぐらい 払っておけばいいかというような最低限の所から、法の精神にきっちり基づいて、い や、活用できる人材はちゃんと活用しよう、60歳以降もちゃんとした仕事とポジション を与えて、1,000万円ぐらいお金を払ってもいいではないかという会社さんもあります。  今回もこの研究会の中でも本当に最低限の法令遵守でいいのか、法の精神に基づいた コンプライアンスというところで評価すべきなのか。さらに積極的に労働者、従業員に 対して何か社会的責任というものを企業が果たしていくようなところまで、ちゃんと導 いてあげるような方向に持っていくのか。その辺のところは皆さんのお知恵を借りなが ら議論していけたらなと思っております。 ○八幡委員  法政大学の八幡と申します。キャリアデザイン学部という3年前に出来た学部です。 そこでは自分らしい生き方といいますか、自分らしいキャリアを少し考えてもらおうと いうコンセプトで始めたのです。それは若年の失業の問題とか、社会的な変化を踏まえ てそういう学部が出来たのだと思います。  私は日本労働研究機構という所に20年近くおりまして、そこで職業能力開発とか、技 術革新のテーマとか、地域雇用開発とかいうテーマでずっとやっていました。今回はC SRということで、コーポレートガバナンスとか、フィランソロピーとかいうことには 関心はあったのですが、研究としてやったことはありませんので、それほど詳しくはな いのですが、この間いろいろな所で市場主義的な改革がずっと進んで、短期的なことは うまくいくようになったのではないかと思うのですが、中長期のスタンス、人の育成も 含めて非常に弱くなってしまったのではないかという気がしてしようがないのです。そ のようなことも少し考えたいなと思っていましたら、このような話がありましたので、 是非参加させてくださいということでメンバーに加えていただきました。よろしくお願 いいたします。 ○奥山座長  皆さんそれぞれの専門の領域から、角度は違えども同じ枠組みの中で、同じ目的実現 のところに向けて少し議論をしていただいているようですし、そういう議論が集まれば 多様な意見の摺合せの中で一歩前進のものができるのではないかなと期待もしておりま すので、いろいろご尽力をお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。  本日事務局からお出しいただいています資料について説明をしていただいた上で、議 論をしてまいりたいと思いますので、資料の説明をお願いいたします。 ○室長補佐  資料No.6、No.7、No.8です。その後で資料No.5の論点の説明をさせていただきま す。  資料No.6、第1回「労働に関するCSR推進研究会」の参考資料です。1頁に「C SRとは」ということが書いてありますが、Corporate Social Responsibilityの略で、 「企業の社会的責任」と言われるもので、企業において活動をするに当たって社会的公 正、環境などへの配慮を組み込んで、従業員などへの責任ある行動をとっていくととも に、説明責任を果たしていくことが求められているというような定義を、後から申し上 げます中間報告書でもしております。またはCSRの定義自体は皆様方ご案内のとお り、論者によって多少ニュアンスが違ってくるというところがあるのも事実でして、1 つに固まっていないというのが実状であろうかと思います。   2頁「SRIとは」と書いているところです。Socially Responsible Investmentの 略 ということで、「社会的責任投資」と訳されるものです。要は従業員などに対して 責任ある行動を積極的にとっている企業に対して、例えば投資をするとか、あるいはそ ういう企業の製品を買うという行動などを指すものでして、そうしたSRI的な要素が 強まってきていると言われています。  3頁「労働に関するCSRの提言」です。まず最初、国外から見ていきたいと思いま すが、OECDにおいては多国籍企業についての行動基準、行動指針を1976年の段階で 策定していまして、直近では2000年に改定をしています。基本的には多国籍企業に対す る勧告でして、「環境」「消費者利益」とかいろいろ項目があるわけですが、その中に 「雇用及び労使関係」が含まれています。その具体的な中身については従業員代表との 交渉とか、あるいは進出先の労働者の訓練、こうしたものなどを規定しています。な お、いま申し上げたような中身については、4頁にOECD「多国籍企業の行動指針」 抜粋と書いていますのであとでご参照いただければ幸いです。  コー円卓会議です。コー円卓会議の「企業行動原則」1994年策定です。これはビジネ スリーダーの方々が集まっているネットワークです。この中で企業行動の是非を判断す る基準として、行動指針を策定しています。その中でもやはりステークホルダーの1つ として「従業員」というのが「顧客」とか「地域社会」とかいうものと並んで挙げられ ているところです。さらにこの従業員については待遇、機会を均等させなさいとか、誠 実な交渉をしましょうとかいったことが規定されています。  これについても5頁に抜粋という形で労働に関係する部分をまとめていますので、以 下ご覧いただきたいと思います。  3頁「SA8000」です。2001年に改定が行われたものですが、これはどこが作ったか といいますとアメリカのNPO組織であるCEPが中心となりまして、1997年に設定し たものです。これは認証機関によって認証されるものでして、児童労働、強制労働と か、健康と安全とか、あるいは結社の自由と団体交渉、こうしたものなど、9つの分野 から構成されているものです。基本的には労働絡み、人絡みのものが中心になっている ものです。  国連「グローバルコンパクト」の10原則ですが、2000年に発足して、2004年に改定 しているものです。アナン国連事務総長が提唱して発足したものです。原則が現在10あ りまして、人権、労働基準、環境、腐敗防止、こうしたものが挙がっております。労働 基準については団体交渉の権利確保、雇用差別の撤廃、こうしたものを規定していま す。このように国外において労働のCSRに関連していると思われる提言が、いくつか なされているところですが、ILOにおいてももとはといえば、いろいろな基本条約を 作っているところでして、具体的には8頁です。強制労働条約、あらゆる形態の強制労 働の廃止を求めるから始まりまして、結社の自由、あるいはその団結権とか、強制労働 廃止条約、最低年齢条約とかいうものが作られている、ということを併せて申し上げて おきたいと思います。以上見てきていますのが国外の提言が中心です。  9頁、今度は国内において労働に関してCSRの提言はどのようなものが行われてい るかです。経済団体が行っているものをセレクトしていますが、日本経団連「企業行動 憲章」から説明いたします。  1991年に発表したものです。その後1996年、2002年、2004年と、社会情勢に合わせて 改定が縷々行われているわけですが、2004年の改定の際にCSRにおきまして重要なス テークホルダーとして位置づけられる従業員の多様性の尊重を条文に追加しています。 具体的には性別、人種、障害とか、こうしたものの相違を超えて、従業員が活躍できる 職場づくり、こうしたものを作っていきましょうということを明確に謳っています。そ の中身については10頁です。右側に「企業行動憲章」と書いてあって、4に棒線が引い てあるところをご参照ください。  「企業行動憲章」については、それぞれについて、より詳しく説明をしています「実 行の手引き」があります。実行の手引き、具体的には先ほど申し上げた4の部分につい てさらに細かく書いています。これについては11頁から14頁までペーパーを載せていま すので、後でご参照いただければ幸いです。  9頁、経済同友会の「企業評価基準」です。経済同友会においても2003年の「企業白 書」において、企業の社会的責任に関する「企業評価基準」を提唱しています。「評価 の視線」として「顧客」「地域社会」などと並びまして、「従業員」に関していくつか 評価軸を挙げています。その評価軸は「優れた人材の登用と活用」、あるいは「従業員 の能力の向上」「ファミリーフレンドな職場環境の実現」「働きやすい職場環境の実現 」、こうしたものが掲げられています。  具体的には15頁以降です。例えば機会均等を見ますと、従業員の採用等において、性 別等にかかわらず、優れた人を適材適所で活用する取組みをしていますか、ということ を自分でチェックする。該当しないか、取り組んでいるか、取り組んでおり十分な内容 であると考えているかを、チェックをしていく仕組になっています。以上が労働に関す る国外、国内の提言です。  21頁、そもそもいま申し上げてきたようなCSRが求められてきた背景というのは一 体何なのだということですが、これについてはアメリカあるいは欧州、日本で、それぞ れ若干意味合いが違うのかなと考えています。アメリカについてはもとを糺せば、ベト ナム反戦運動辺りから、軍需産業投資せずといった辺りから萌芽が見られているところ ですが、最近の動きなどは、特にNPOとかNGOとかの市民団体が主力となって、企 業に対してCSRの取組みをやりなさいということで働き掛けを行っていく、市民団体 からの圧力が1つのテコになっていると我々としては解しています。  次に欧州ですが、欧州のほうは、1970年代以前からイギリスの教会で、アルコールと かに関わる企業は、投資対象から除外していたといった動きはあったわけですが、その 後EUとかが結構頑張っています。政府がイニシアティブをとって法整備を含めて、S RIについて制度化していくという動きが最近欧州においては、いろいろ見られるとこ ろではないかと思っております。  翻って日本はどうかということですが、日本については確かにエコファンドとかいう ものも見られたりし始めています。CSR、SRI的な取組みがだんだん広がりつつあ る状況にあるかと思うのですが、そのきっかけは例えば偽装問題とかいう、会社の一部 の不祥事、こうしたものなどに端を発する色彩が比較的強かったのかなと考えていま す。まだ本格的な取組みを始めたばかりと言ってもいいような状況で、萌芽期と言って もいいのではないかと考えています。  22頁です。ISOですが、先ほどからお話が多々あるように、規格化の問題が最近取 りざたされています。2004年の6月においてISOの中のTMBにおいて、CSRの中 のCを取ったSR、社会的責任について、ガイダンス文書を策定しましょうということ が決定されています。これは認証という形ではなくてガイドライン形式でということが 言われているわけですが、最終的には2008年の春辺りに「ISO26000」として発効さ れる予定の動きになっていることを申し上げておきます。  23頁以降の説明に入る前に、ではそういうCSRについて、これまでどういう検討を 行政側としてしてきたのかを説明いたします。資料No.7です。資料No.7は「労働にお けるCSRのあり方に関する研究会」ということで、昨年ご検討いただいていた研究会 です。これで具体的に何を言っていたのかを簡単に説明させていただいて、資料No.6 に戻ります。  冊子のほうの1頁、2頁の部分に基づいて説明いたしますが、もとを糺せばなぜ労働 に関してCSRを検討する考え方に至ったのかということですが、最近の国内の従業員 の状況を見ますと、懸念される状況がいくつか見られます。具体的に言えば7頁の週の 労働時間が60時間以上の者の割合を書いている図があります。これをご覧いただきます と、60時間以上の就業者割合、特に25〜34歳とか、35〜44歳の辺りが高くなっていま す。しかも近年上昇する傾向が見られる動きもあるところです。  こうしたことから、労働においても持続可能性というのが果たしてどうなのか、とい うことが取りざたされるような状況になっていて、労働に関しても行政側として何かC SRという観点から施策の芽があるのかどうか、ということで検討し始めた経緯があり ます。  1頁に戻りますが、従業員というのは基本的にはステークホルダーの代表ということ になりますが、置き換えることのできない存在であるわけで、こうした従業員について 十分な考慮を払っていく、それで個性や能力を活かせるようにしていくことが企業にと って、そもそも本来的な責務ではないのかと認識しているところです。また、従業員な どに責任ある行動を積極的にとっている企業が、市場において高い評価を受けるように していくということも有益なのではないかという観点から、CSRという切り口で労働 に関してご検討をいただく必要があるのではないかということで、ご議論をいただいた という経緯があります。  1頁の2番、「社会情勢の変化に応じた従業員への考慮」のところですが、企業が従 業員に対して、では具体的にどのような事項に取り組んでいけばいいのかということ も、このときには若干ではありますがご議論をいただきました。その中身が(1)を中心 に書いています。例えば人材の育成とか、それぞれの生き方・働き方に応じた働く環境 の整備。全ての個人についての能力発揮機会の付与、あるいは安心して働く環境の整 備、こうしたものなどが大事なのではないでしょうかということです。  2頁、事業の海外展開が進む中で、海外進出先においても現地従業員に対して責任あ る行動をとるということで、若干この研究会のときも海外における企業の行動も少しは 念頭に置いていましたが、ただ、基本的には国内の労働者がすり切れないようにするた めに、具体的にどういうことを考慮していけばいいのか。政府としては何をするべきな のかという辺を中心に、ご議論をしていただいたという意味合いが強かったと考えてい ます。(3)は人権への配慮を行う、こうしたことも提言されています。  3です。「労働に関するCSR推進における国の役割」です。もともとCSRという 言葉の定義からしまして、これを推進する主体は企業です。CSRを構成するいろいろ な要素のうち、どれを重点的に実行するかは、少なくとも法令を超えた部分などについ ては、社会の動向を見ながら企業が決定していく、ということになろうかと思います。  では、国の役割というのは一切ないのかということですが、ただ、実際に企業に聞い てみたりすると、どれをやっていいのかよくわからない、どんなことを労働に関して講 じていけばいいのか分からないといった声も聞いたりすることがあります。情報とか企 業にとっての判断材料、こうしたものを提供していくという意味合いというのは、いっ てみれば国が側面から企業におけるCSRの取組みを支援していくのが、一定の意義が あるのではないかというご提案を、このときはいただいています。  4番、では具体的にどのような方策をとっていくべきなのかということです。「労働 のCSRを推進するための環境整備の方策」です。例えばですが、社会報告書に盛り込 むことが望ましいと考えられる項目を提示していく。あるいは先ほど来申しています自 主点検用チェック指標、こうしたものなどがご提言いただいているところです。表彰基 準あるいは好事例の情報提供、消費者あるいは投資家を対象としてCSRに関する啓発 ・広報も提言いただいているところです。  この度、この新しい研究会においては、この前二者です。社会報告書に盛り込むこと が望ましいと考えられる項目の提示、あるいは企業がどこまで自社の取組みが進んでい るのか、自分で点検できる材料を開発していく、この辺についてご議論をいただければ 大変ありがたいと思っています。なお、先ほど来申していますように、国の役割はあく までもサポートという提言をいただいていますので、例えば社会報告書の情報開示事項 にしても、自分がチェックするための指標を作るにしても、例えばそういうものに何か 強制力を持たせるとかいうことにはならないのだろうと思っています。基本的には企業 が自分たちの判断で使う、使わないというのは決めてチェックしていく、という使い方 をするのではないかと考えています。  上記施策を推進するに当たりましては、CSRの取組みが十分に進んでいない中小企 業に対する配慮、あるいは本日もオブザーバーとして経済産業省さん、環境省さんにお いでいただいていますが、関係省庁の皆様方との間での、十分な連携が必要になってく るのではないかなと考えています。以上が前回の中間報告の概要です。  資料No.6に戻ります。23頁で「労働CSRを検討する視点」というのが書かれてい ます。やや幼稚な図で恐縮ですが、横軸左側で最底限の法令遵守、例えば労働保険料を 払いましょうとかいった話です。右側で法令遵守を超えた社会のための行動。例えば従 業員が社会貢献するための活動、こうしたものを企業としても支援していくなどが考え られると思いますが、こうした軸を掲げています。  一方、縦軸で、下のほうが国内重視、上のほうが国際重視という軸を仮に作ったとし て、昨年ご提言いただきました労働CSRの中間報告については、黄色い丸で囲ってあ る辺りの位置にあるかなと、やや主観的なイメージ図でしか過ぎないわけですが、この ように考えています。どちらかというと国内のほうに向いているものでして、ただ、最 低限の法令遵守だけを考えていたわけではないという形ではあったかと思うのですが、 今回の検討はどの辺りの位置づけにするのかがおそらく1つ議論になろうかと思いま す。  ここでは試みにではありますが、以前に比べると国内と国際のバランスを少しだけと る形にして、なおかつ、最低限の法令遵守だけではない法令遵守を超えた社会のための 行動も睨みながらご検討をいただければというのが1つあるかとは思いますが、ただ、 これは1つの考え方に過ぎませんので、この辺りまたご議論をいただければ幸いかなと 思っています。  24頁です。「労働に関してCSRを検討する意義」のところです。これについては先 ほど少し申し上げましたので割愛させていただきます。人というのが極めて大事だとい うことを書いているものです。  25頁以降です。今回ご検討いただければと考えている、二本柱のうちの1つである情 報開示については、労働に関しては残念ながら進んでいるとはまだ言えないのですが。 環境については既に種々の取組みがなされているのかなと考えています。環境省におい ては2000年度版から「環境報告書ガイドライン」を策定していまして、環境報告書を普 及促進させるため、記載することが望ましい項目を例示しているところです。それの1 つの参考材料として、GRIの「サスティナビリティ・リポーティング・ガイドライン 」があるわけですが、こうしたものを参考にしながら、項目立てをされています。  26頁、環境報告書ガイドラインの中においては、基本的には環境事項について中心に 項目立てがなされているのですが、一部、社会項目の一環として労働関係の項目として も、このような項目が載っています。例えば労働安全衛生に係る情報とか、人権及び雇 用に係る情報などについて、記載が考えられるということで掲げられています。  27頁、「GRI持続可能性報告ガイドライン」があります。いわば1つの基となって いるものですが、Global Reporting Initiativeというのはアメリカの非営利ネットワ ーク組織が、ほかの国連環境計画などと連携して1997年に発足したもので、企業が報告 するに当たって、どういう事項を報告するのか。具体的には経済・環境・社会だと。経 済・環境・社会それぞれについて項目立てをいくつかしています。労働に関しては社会 のところに関係しているわけで、労働慣行及び公正な労働条件、人権、社会、製品責 任、こうしたものの中の前二者です。これが労働に関係している部分です。具体的な中 身については28頁以降、付けていますので見ていただければ幸いです。  32頁、今度は、この度、研究会でご検討いただければ幸いだなと思っている二本柱の もう1つです。自主点検用チェック指標について、これまで似たような取組みをやって いないかどうかということで、具体的には両立支援指標と呼ばれるものです。職業生活 と家庭生活の両立のために、具体的に企業が支援しているその中身について、自分でチ ェックしてみて、その進捗度合いとか、あるいはこういうところが足りなかったなとい うのに気づくとかいったことのために、使っていただくというものです。  これをご覧いただきますと、全部で大体60問ぐらいですか、いくつかの項目立てがな されていて、「はい」「いいえ」といった形で答える質問が多くなっていて、得点が全 部で何点という形で算出されるようになっています。  こうした中身などを参考にしますと、37頁で「自主点検用チェック指標のイメージ」 とありますが、この度ご検討いただきます労働CSRの自主点検用チェック指標につい ては、例えばこのようなイメージが考えられるのではないかということでまとめている ペーパーです。以下の項目について、それぞれ10問程度の質問に回答をいただいて、人 材育成から始まり、海外進出先の労働条件などについて、回答したものを項目ごとに得 点化しまして、項目ごとに業種平均値あるいは規模の平均値と比較してみる。そうなり ますとレーダーチャートみたいなものが表われます。これは基本的には両立支援指標と 大体同じような考え方ですが、これに応じて労働CSRの進捗状況・課題とかを企業が 自分で把握するという流れが1つ考えられるのではないかなと、行政側としてはいまの ところ思っています。  あくまでもイメージですが、38頁に、自己チェック指標のイメージです。この質問例 というのは、あくまでも試みに書いているだけなので、今後、具体的に詰めていくこと になろうかと思います。例えば健康確保のところをご覧いただきますと、メンタルヘル ス教育を実施している「はい」「いいえ」と、例えば「はい」なら10点、「いいえ」な ら5点を計10問ぐらい設けて、それぞれの項目ごとに得点化してレーダーチャート化し ていく流れが、考えられるのではないかなと思っています。以上が資料No.6、No.7の 説明です。  ほかに、先ほど説明の中で中間報告書において、好事例集を作ることが1つ考えられ るのではないかというご提言をいただいたという話も少しいたしましたが、この度、私 どもとして、社会経済生産性本部に委託しまして好事例集を作成しました。今後、労働 CSRの具体的な項目をご検討いただくに当たりまして参考になるかなということで、 この度、委員の皆様方には配付させていただいていますが、その中身、概要について若 干説明させていただきます。 ○調整第二係長(労働政策担当参事官室)  調整第二係長をしております福岡と申します。私から事例集について簡単に説明させ ていただきます。事例集の冒頭には、そもそもCSRとは何なのかというところを簡単 に記載しています。こちらについては先ほど参考資料等を用いて説明した内容と同じよ うな内容となっています。  具体的な事例の紹介についてですが、13分野のうち、28の企業に取材をさせていただ いています。ご紹介している分野については具体的には人材育成、キャリア形成支援、 仕事と生活の調和、従業員の社会貢献、多様な働き方、男女の均等推進、高齢者雇用、 障害者雇用、若年者雇用、安全衛生、従業員の健康、海外活動における「労働」への配 慮、最後が社会報告書・CSRレポートということで、13の分野に分けています。  先ほどからお話がございましたように、環境に関してはCSRは比較的進んでいると いうことではあるのですが、労働に関しては進捗状況がまだあまり進んでいないという こともあります。実際に既に取組みを進められておられる企業もありますので、そうし た所を取材をさせていただいて、いま作成を途中段階です。  実際の事例の内容についてですが、まず最初「取組みの経緯」で、企業の中での従業 員を取り巻く環境とか、企業の中でのどのような問題意識をもってCSRに取り組んで おられるのか、というところをまとめています。「取組みの状況」ですが、これは取り 組んでおられる内容について、簡単にご紹介をさせていただいています。  「取組みの効果」のところですが、こちらについてはCSRに取り組んだ結果、どの ような効果があったかということを従業員の方とか、企業において取り組んだ結果の反 応とかについても、取材させていただいた結果についてまとめています。  4として「今後の課題」を記載していますが、こちらについては企業の担当者の方が 考えておられる、取り組んだ後のさらなる問題意識とか、より一層の取組みを進めるた めの認識などについてまとめています。細かい内容については後ほどお目通しをいただ ければと存じます。簡単ですが事例集の説明を終わらせていただきます。 ○室長補佐  最後に資料No.5です。本日、労働に関するCSR推進研究会の中で、例えばこうい う論点が考えられるのではないかということで掲げたものです。何もこの2枚紙にとら われる必要はないかと思うのですが、一応こういうことが考えられるということで論点 を説明させていただきます。  最初に【情報開示項目・自主点検用チェックリスト指標に共通する事柄】として、先 ほど来お話させていただいていますし、また、委員の皆様方からもご指摘が一部ありま したが、どの辺りのスタンスにするのかという話です。(1)最低限の法令遵守のみを念 頭に置くのか、それとも法令遵守だけではなくて法令の精神に即した行動、あるいは法 令に規定されていはいないが社会のためになる行動、こうしたものも考慮しながら指標 などを作っていくのかということです。  (2)、これは国内を重視するのか、国外を重視するのかという話です。国内において も持続可能性の問題というのがありますし、また、海外進出先でも、現地従業員に対し て対応を誤れば労働争議などが起きるといったことなども考えられるところでして、こ うしたもののバランスをどのように考えていくのかということです。  加えまして方針や仕組みに関わるマネジメント面の質問項目、それから実績に関係す るパフォーマンス面の質問項目のバランスについて、どう考えるのかという問題もあろ うかと思います。もっと具体的に申し上げますと、マネジメントで言えば、例えば従業 員の満足度を吸い上げるといいますか、そういう仕組みを作っていますかみたいなもの が考えられると思います。例えばパフォーマンス面で言えば、女性管理職の登用割合が どれぐらいかを聞くことも考えられようかと思います。また、大企業と中小企業のいず れを中心に念頭に置くのが適当か。仮に例えば中小企業が使われることをかなり強く考 えるのであれば、こうした指標とかも使いやすいということを念頭に置いて作っていく ことに多分なるのではないかなと思っております。  続きまして労働に関する情報開示あるいは自主点検用チェック指標の項目について は、先ほど申し上げました「中間報告書」を踏まえますと、これから申し上げるような 事柄が含まれるのではないか、ほかに何かありますでしょうかということで、人材育 成、キャリア形成支援、職業生活と家庭生活・地域生活との両立、女性労働者の能力発 揮、高齢者・障害者への雇用の場の提供、健康確保、労働災害防止、海外進出先の労働 条件、こうしたものが1つの項目立てになるかなと思っていますが、ほかにもこういう 事項が考えられるとか、あるいは項目立てとして、もっとこういう観点を加えたほうが いいとか、こうしたほうがいいとかいうことがありましたら是非教えていただければ幸 いです。  【情報開示項目に関する事項】ですが、労働に関する情報開示は、なかなか難しいと いう声を実際に聞くことがあります。例えば賃金の情報とかを外に流してしまうと、取 引相手である大企業からもう少し納入価格を安くしろとか言われるといった実際の話を 聞いたりすることもあります。こうしたことなど影響しているものと思われるわけです が、情報開示の進んでいない要因として何が考えられるのか。また、これを解消するた めに何が必要になってくるのでしょうかという辺りをご忠言いただければ幸いです。  【自主点検用チェック指標に関する事項】ですが、ややテクニカルな話になります が、例えば企業の規模、業種とかによって質問項目を変えていくことが適当なのか。そ れとも全て共通の質問項目とするのかということです。結果については最終的には企業 規模別、あるいは業種別に比較対照できるような形にしたいとは思っていますが、質問 の段階から質問項目を分ける必要有りや無しやということです。質問数はどの程度とす るのか、答えは「はい」「いいえ」という形で単純に2段階にするのか、あるいは5段 階とかいう形にしていくのかという問題もあろうかと思います。また、総得点を算出す るのかということなども、いろいろ考えなければならないかなと思っています。  最後ですが、【労働のCSRを推進する他の方策】です。情報開示項目の提示、ある いは自主点検用チェック指標を作成することは、企業にとって取り組んでいただくに当 たって1つの参考になるかとは思うのですが、労働のCSRを推進するために有効な手 は、ほかにもあるのかもわかりません。こういうことが有効なのではないかということ を具体的にご忠言賜われれば幸いかと思っております。長くなりましたが以上です。 ○奥山座長  どうもありがとうございました。この後は意見交換にしたいと思います。今日は、か なりたくさんの資料が出ておりますが、事務局側の資料を通してのご説明や今後の議論 の進め方の問題も含めて、どこからでも、また、どのような内容でも、何かご意見等が ございましたらお願いいたします。 ○寺崎委員  対象をどこにするかということで、国内と国際という切り分けがあったかと思うので すが、もう1つ、CSRということを考えると、企業の負担はあるにしても、取引先と いう観点は、やはり出てくるのかなと思います。私が関わったある企業は、自社では労 働コンプライアンス問題はなし。海外の関係会社も含めて、それは非常にきっちり行わ れているのです。ただ、アウトソーシング先では、労働法を無視したような状況の中 で、安いからそこのアウトソーシング先を使っているということが結構あるのです。な ので、厳格にやれば、先ほどご紹介、ご説明のあったSA8000(Social Accountability 8000)を取引先のチェックシートとして使うというやり方をしていると聞いております ので、そのようなところまで踏まえてやったほうがよいのか。それとも、中小企業とい うこともありますから、最初にそこまで負荷をかけたり、あとは話が拡散してしまうの で広げることはないだろう、というようなところなのか。そんなところがどうなのか と、今お話を伺って感じました。 ○奥山座長  私も、先ほど説明をいただいたときにそこを考えていました。方法としては、ダブル チェック方式で。企業規模の問題はありますが、大企業、中小企業を問わず、とりあえ ず各企業に対して、これからの経営管理のあり方としてCSRの観点から進めていくと いうことをお願いしていく。そして、そのための項目作りと点検指標づくりが基本だろ うと思うのです。大企業も中小企業もカバーするような中身ができれば、それがいちば んよいと思うのです。  もう1つは、いまおっしゃったように、例えば大きな企業規模のところが他といろい ろな形で取引をしているという場合に、取引先の選定等を含めた中で社会的責任を考え て、1つの大きな企業規模を持っているところの中で、他企業にアウトソーシングに出 すときの会社選びのチェックとして、そういうところに入れ込んでやる。そういうこと ができれば、あるいはするのだったら、よいのかどうか分かりませんが、ダブルチェッ クになるでしょう。視点をどこに置くかだと思うのです。いまおっしゃったように、2 つをやりますと拡散する可能性もありますので、とりあえずは各企業の中の仕組みと行 動のルールづくりをするような形で進めていくのが適切なのか、その辺でしょう。小畑 委員、この前の中間報告では、そこまでをある程度射程に入れたような議論はなさって いたのですか。 ○室長補佐  前回の中間報告では、サプライチェーンの取組みを念頭には置いておりました。具体 的には、主に海外との展開の中において、海外を含めたサプライチェーンの事業所にお いても労働等のCSRに配慮しているかどうか、というのが資料7の10頁の下のほう (2)にあります。「労働等のCSRに配慮しているか否かが商取引上の要件となって きており、こうした点についても考慮する必要性は増大」ということで、広い意味で、 サプライチェーンマネジメント自体は念頭に置いておりました。  また、ヒアリングでイオンさん等をお呼びして、実際にサプライチェーンマネジメン トの中でCSRを組み込んでいるような事例についても、研究会の中でいろいろな話を 聞いたという実情はございます。 ○奥山座長  どうぞ、自由に発言してください。 ○小畑委員  いまのご説明のとおりですが、中間報告書作成の際には、国際的にCSRに直面した 経験を持っていないような企業もたくさんある、ということを踏まえて特に視野に入れ たというわけでもないものもあるのです。日本が他国より非常に進んでいる部分は特に 強調しなくてもよかったという面もございますので、まず第一歩ということで、CSR についての意識を喚起することや、正確な情報を広く普及させることの重要性に焦点を 当てたという部分がありました。  今回は第二歩目ですが、グローバルな視点は外せないとは思っております。世界が、 日本の企業も含めた世界中の企業に何を求めているのかということについての情報を日 本の企業がわかる、ということも将来のためには大変重要ですので、前回同様、サプラ イチェーンの問題についても言及する必要はあるのではないかと思います。 ○寺崎委員  いまのお話を伺っていて、私は、実際に海外に進出している企業の労務担当者の方と 話をする機会が結構あるのですが、海外進出に際しては、労働コンプライアンスは、社 会的責任を果たすというよりは、どちらかといえばリスクマネジメント的に捉えてい て、海外で変なことをしてしまったら、それはもう現地から顰蹙を買うという観点か ら、結構現地の弁護士さんを巻き込んで、大企業は意外としっかりやっているのです。  一方で、サプライチェーンという観点で国内に目を向けてみると、私が混ぜ返してし まったのは、国内のサプライチェーンのほうが意外と危ないのではないかという感覚で す。海外はリスクマネジメントという観点できっちりやっている一方で、国内の取引先 にはどうしても甘くなってしまいがちかなと思います。ですので、おそらく、どういう 使い方をするのかという話になる、マネジメントシステムの評価の話になるとは思うの ですが、これは推測なのですが、もし大企業がそういう使い方を取引先の中小企業にし たとすれば、つまりチェックリストとして使うとすれば、そういう方向から、労働のC SRというのはかなり啓蒙されるといいますか、意識が高まっていくのではないかと、 私は実はそう思っています。 ○奥山座長  例えば雇用平等の問題で、いまおっしゃった話に関連して考えますと、例えば日本の 企業がアメリカで、自動車メーカーや家電メーカーがいろいろな現地の会社を持ってい て、盛んにそういう観点で議論してきたのは雇用平等、特に女性に対する差別のことで した。日本の従来の女性に対する人事管理のあり方の延長で、アメリカでそれを前提に してやったときに、アメリカでは公民権法の第7編という非常にしっかりした法令があ りますので、そういう法律の下で訴訟が起きる。そういう訴訟が起きてくると、企業の 名前もまずくなるし、負けたときの損害賠償も、アメリカの場合には莫大なものになっ てしまいます。だから、そういうことを避けるために、いまおっしゃったリスクマネジ メントの一環として、常にアメリカの弁護士と相談しながら、アメリカの法令遵守とい う格好で、そういうことについてのリスクを回避するような手立てを講じているわけで す。それは対アメリカに限らず、ほかの所でも、そうだと思うのです。だから、そうい う点では、外国へ出ていく企業、あるいは外国の企業との関わりでは自ずからそういう ことをせざるを得ないという状況が一方であるでしょうから、これはある意味では、C SRの問題というよりも別の観点からのほうが動けるし、これからも動くだろうと思い ます。どちらかというと、日本の企業の中での取引先での問題のほうが、現実的には大 きな課題かなということは言えると思うのです。  ただ、先ほど事務局がおっしゃったように、世界がそれぞれの国の企業に対して、社 会的な責任として今後どういうことを求めていくのだろうかと考えると、外国への進出 企業についての社会的責任ということも無視はできないでしょう。どの辺の比重でやる か、軸をどこに持つかなのです。落としてしまうということではなくて、どこら辺の軸 で考えて、それをどの辺の割合で入れて考えていくかだと思うのですが、今後の議論の 中でまた出していただければありがたいと思います。  私もよくわからなくて教えていただきたいのです。これは先の話につながっていくこ とで、何も今日で答えを出そうということではないのですが、資料5で挙げていただき ましたいろいろな情報開示の項目について、事務局では代表的なものを挙げていただい ていると思うのです。特に労働に関するCSRの問題で、つながっています。そして、 高齢者や障害者への雇用の場の提供ということも挙がっております。それで、こういう ものも、これからは重要な課題になってくるだろうと思うのですが、私たち法律から労 働関係を見ている人間からしますと、1つ1つの問題は個別の法規があったり、個別の 政策でやっているところもあるのです。しかし、そういうものをまとめて一括するとい うことが今までなかなかありませんでした。  例えば、私が今まで深く関わってきた男女雇用平等の問題ですと、1999年の男女共同 参画社会基本法の中で、もっと枠組みを広くつかまえてやっています。だから、従来労 働法の中の雇用平等、差別禁止の枠の中で作ってきたものを、今もう少し広く見るとい う視点。両立支援などは、従来は雇用平等、女性の職場環境整備や雇用均等の観点から 重点的に立法政策として行っているけれど、今回、ご承知のとおり、次世代育成など は、むしろ少子化対策の一環という立法政策のほうが、ある意味では強く出ているわけ です。だから、それも含めたより広い観点から、要するに働く女性のためだけではなく て、働く男女にとっての就業継続のための職業生活と家庭生活の両立という視点で、少 し枠組みを広く捉えているわけです。  しかし、このCSRはもっと広くつかまえていこうということです。企業にしてみれ ば、従来個別にはやってきているようなものを、さらにトータルな観点から1つの政策 の中で考えていこうとしているところです。  ただ、これは既にやっていると。例えば、先ほど挙げた育児介護休業やファミリーフ レンドリー政策の下で、両立しようということをやっているわけです。それから、雇用 平等の点ではポジティブアクションのチェックリストも立ててやっているわけで、ああ いうものと中身的にダブっているではないか。うちはもうそこで既にやっているから、 改めてこういうCSRの観点からやる必要はあまり感じていないのだ、というようなこ とを言われないとも限らないのです。だから、その辺のところをどううまくするか。項 目的にも指標づくりの点でも、あまりダブらせて、企業にとって無駄だと思われること のないようにしていくということが1つだと思うのです。  もう1つは項目の中で、これはある意味で何でも入ってきそうな感じもするのです が、その点で私が、こういうものも入ってくるのかなと思ったのは、資料5の(1)に 人材育成、キャリア形成支援とありますが、これは、おそらく既に雇用された人的資源 の更なる能力開発ということがある程度メインだろう。雇用しようとする従業員、ある いは雇用された従業員の更なるキャリアアップをしようということだろうと思うのです が、先ほどご挨拶の中で八幡委員がおっしゃいましたように、最近の問題であるニー ト、少し前のフリーターのように、仕事がいまない、あるいは学業にも従事していな い、典型的にはニートのこういう人たちに対して企業が1つの社会的責任の中身とし て、こういう若い世代の人たちの雇用促進というものを、いろいろな手立てを講じてバ ックアップするようなこともこういう枠組みの中で考えていく必要があるのか、それは 少し筋が違う問題なのか。これは今後の項目立てのところでしょうし、ほかにもあるだ ろうと思うのですが、その辺はどうなのでしょうか。八幡委員、そういうところについ て何かお考えはありませんか。 ○八幡委員  特に考えていなかったのですが、インターンシップの受入れというようなことで資料 がどこかに入っていましたね。ですから、そういうところに絡んでくるのかと思ってい ますけれど。 ○奥山座長  なるほどね、インターンシップ。私どもの大学でも、就職の窓口が特定の企業と個別 の契約を結んでインターンシップ制度をやっているのですが、あれなどはニートとか。 直接的にインターンシップというのは在学生、例えば、現に私どもの大学で学業を学ん で就職を間近に控えているような学生について、キャリア形成と職業選択のための経験 を積ませることをしているのです。ニートやフリーターというのは、いわば社会に出た 人たちをターゲットとして考えている問題なのですが、そういうものも取り込んでやる のか、あるいは別にして、インターンシップと、既に社会に出てそういう形で存在する 若い人たちについての雇用の確保のようなものも、企業の中で別の選択肢あるいは手立 てとして、こういう枠組みの中で考えていかなければいけないのか。少し話が細かくな りすぎて恐縮なのですが、その辺ですね。 ○寺崎委員  いまのお話を伺っていて、それは取り込むべきだと私は思っています。例えば欧州型 のCSRですと、若年層の失業問題、あるいは雇用をそもそも維持・創出しましょうと いう話というのはCSRど真ん中の話ですから、是非やるべきだと思います。  ただ、インターンシップという例を取り上げてみると、インターンシップというので も、大学生のインターンシップというのは、企業の側からしてみると、実は、体のいい 良い人材の囲い込みだったりしますから、それは別に社会的責任を果たしているわけで も何でもなく、利潤を上げるうえでの経済的な行動であると見ることもできます。  その一方で、高校生や中学生、兵庫県や富山県のように、14歳の中学生を全員企業が 受け入れます、などというのは、間違いなく社会的責任を果たす行動だと思うのです。 そういう切り分けをきっちり定義してあげないと、「インターンシップ。ああ、これ、 うち、やってるから、本当は社会的責任じゃないんだけど、点数は上がるよね」などと いうことになるのです。  人材育成というのも同じなのです。企業は今、かなり経済が持ち直してきている中 で、人材開発の投資を非常に増やしています。実際、企業内研修というものにかなりお 金を注ぎ込んでいます。ただ、それは自社にとって最適化するような育て方をする投資 であって、もしかしたら社会的責任を果たしたつもりでやっているわけではないのかも しれないのです。一方で、これは八幡委員がご専門だと思うのですが、エンプロイアビ リティーという言葉があって、要は、どこに行っても通用するようなポータブルスキル を身につけさせようと。うちの会社ではどうか分からないけれど、外に行っても平気だ というもの、それを身につけさせてあげるのは社会的責任のほうなのかとか、1つ1つ 取ってみても、いろいろな切り口で見ると、そうであったり、そうでなかったりという のはあるのかなという気がします。 ○奥山座長  そこは、ある意味では大事なところです。特定の企業が特定の人材確保とその活用の ためにやることは必ずしもCSRではなくて、もっと広く普遍的なものだという認識は きちっと置いておかないと、何もかも一緒になってしまうような議論になって困るよう なところもあるのです。 ○八幡委員  国際的なところをずっと見ていくと、団体交渉の話など、要するに組合の話がかなり 入っていますが、日本では一言も入ってこないので、何でなのかなと思って少し考えて いたのですが、日本はかなりうまく進んでしまっているから、もうよいのかな。労使協 議でうまくいっていればよいのかなというのはあるのです。しかし「従業員の経営参加 」というのは1970年のころに議論になったような話なのですが、そんな指標も本当はあ るのではないか。別に労働組合だけでなくて従業員代表でもよいのですが、そういう意 見が上がってくる仕組みがちゃんと整備されているかどうかということもあるのではな いかと思います。 ○奥山座長  資料6でしたか、事務局のご説明をいただいたときに、国際的なところ、ILOは別 として、他のところでも団体交渉の話が出ていました。実は私、これとの絡みで、そう いうものの認識はなかった。つまり団結権擁護や交渉制度の整備がCSRの中身で議論 されている、関係するとは思っていなかったのです。小畑委員に伺いたいのですが、中 間報告も、基本的にそういう視点はないですよね。 ○小畑委員  日本が他国よりも進んでいる部分というのを特に何度も何度も指摘する、ということ の必要がどれぐらいあるかというような感覚があります。例えば児童労働にいたしまし ても、敢えてここで児童労働のことを強調して書くのかという問題もあります。 ○奥山座長  団結権保障や、その中の交渉制度の整備が日本は進んでいるから、必ずしもここで改 めて、ということではなかったということですか。 ○小畑委員  そうです、強調する必要はないだろうということだったのです。もちろん皆様がご指 摘のとおりで、国際的に見た場合には、団結権の問題は大変重要ですし、児童労働も重 要性は非常に高いわけですが、そういったことにも目配りした上で、総合的にCSRと いうものを捉えていくということは非常に重要なことであるとは思っております。それ で、CSRに関して、取るものも取りあえず、とにかく挙げたほうがよいものは何かと いうことを優先したような傾向はあるかと思います。 ○足達委員  私も、中間報告に関わった人間として、報告書をまとめた後に、労働組合の方から、 少しバランスがおかしいのではないかという指摘を受けたことを皆さんにご披露してお きたいと思うのです。私も、若干反省を込めてご披露するわけですが、いまの中間報告 のまとめの1頁から2頁にかかるところに、社会の情勢の変化に応じた従業員の考慮が 必要であるということで、(1)さまざまな資質と才能を持った個人が、その能力を十分 に発揮できるように今の時代はしていかなければいけないと。そして(2)で海外のこと を挙げて、(3)で人権への配慮を行うということで、さらっと書いてあるわけです。こ れに対して、例えば不当解雇や本人の意思を無視した配置転換、あるいはサービス残業 は実態としてあるではないか。そこに目を向けずして、働く人の能力開発というような ことだけに目を向けてCSRというのはどうだろうか、というご意見を頂戴したので す。  中間報告はいま小畑委員がおっしゃったような立場でまとめましたが、今回指標とな りますと、そういう国内の残された問題というところまで踏まえて検討をして、その上 で何を取る、取らないということを議論していかなければいけないのかなと思っており ます。 ○奥山座長  そこまで入ってくると、CSRの中身がかなり難しいですね。私は全然わかりません ので感想でしかないのですが、従来、企業を取り巻く環境の中で企業に対して求められ ている社会的責任としていちばん大きなものは環境への配慮で、この辺からCSRは出 てきたのだろうとは思うのですが、一方でそれとは別個に並行的に現れてきたのはコン プライアンスなのです。あれはある意味で、労働法規にせよ商事関係の法規にせよ、そ ういうものを企業はきちんと守ってやっていかなければいけないと。ただ、いまおっし ゃったような点というのは、従来コンプライアンスの1つの枠組みの中でかなり強調さ れ、また、議論されてきたことです。個別には、どこの企業も、例えば不当解雇の問題 があったり、組合に対する不当労働行為の問題があるわけですが、そういうものについ ての防止のようなことをこの枠の中で個別に挙げていくとなると、切り口といいます か、座標軸をどこに置いていくかということがかなり微妙で難しくなってくるのです。 ○八幡委員  そこまでいくと労使コミュニケーションというニュアンスだと思うのですが、それを ちゃんとやっているかどうか。 ○奥山座長  そういうことですね。 ○寺崎委員  今回自主点検のチェックシートを作って、使側、経営側にチェックさせた場合と労 側、組合側にチェックさせた場合、労働コンプライアンスのところで結構意見の相違が 出てきてしまうのかなという感覚はありますよね。例えば、先ほどおっしゃった男女の 雇用機会均等という話や育児休暇の話は、使側、経営者がチェックしたら「うちは全部 やっているよ」という話になって、労側にチェックさせたら、それは形だけで実質的に は全然できていない、というようなところが出てくる。1つ1つ個別に何を入れていく かという話もそうなのですが、労働コンプライアンスのところでかなり進んでいる部分 はあるとしても、意外とそれは見た目だけ進んでいて、実際にやらせてみたら、実は足 下がいちばんぐらついていた、ということもあるのかなと、いま足達委員のお話を伺っ て、少し怖さを感じました。人材育成などは格好いいので、経営者側はそちらのほうに どうしても目を向けやすいのですが、ちゃんと足下を見ようよと。 ○奥山座長  これはこれからの議論の中身になっていきますけれど、指標づくりをする場合でも、 例えば両立制度の中身に関連するような質問項目を立てる場合も、育児休業法で、あれ は強行法規ですから、制度としては一応置かなければいけないのですが、そのときに 「御社には育児・介護休業の制度がありますか」と言うのと、ある場合に「では、どれ ぐらいの人が利用していますか」と聞くのとでは雲泥の差があるわけです。基本的には 法律の義務、コンプライアンスの一環で当然置いておかなければいけない。それがいろ いろな理由で、誤解もあったりして置いてない所もあったりします。そうすると、それ だけでやるのかということではなくて、ある場合、特にこういう点では父親や夫である 男性がどれだけ活用しているかによって実効の問題、あるいは企業が従業員に対して果 たすべき社会的責任があるわけです。だから、質問1つによっても大分変わってくるの です。 ○足達委員  ただ、そういう質問をきちんと入れておくことによって、会社側と労働組合の双方の 回答が違っているとすれば、そのことは、実は重要なのかもしれないと思うのです。ヨ ーロッパの社会的責任投資を行っている金融機関は、同じ調査票を会社と労働組合に渡 して回収して、その違いを見て、違っているところは何か問題があるのだろうと評価す るのです。日本でもそのくらいのことができるようになると、指標の目的を達成できる と思います。これは指標のための指標ではなくて、マーケットからその行為を評価して もらう。それは金融マーケットもあるだろうし、財、サービスのマーケットもあるだろ うし、就業者というマーケットもあるかもしれませんけれども、そのときの重要な情報 になるのです。いちばんよいのは、会社と組合両方の回答がきちんと「よい」というこ とで一致しているという状況ですか、仮にそうでなかったとしてもマーケットが判断す ればよいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○奥山座長  先ほどのご紹介のときにいただいたSRI、つまり投資の観点からすれば、選択の中 身としても、基準としても、それがいちばん重要なものなのでしょうね。だから、この 研究会で出るCSRの、先ほどいただいた指標が、どこまでの射程で今回そういうもの を進めていこうとするのか。そこまで射程が入っているのだったら、財マーケットにし ても就業者のほうからのマーケットにしても、その企業が名実ともに社会的な責任を果 たしているのか、あるいは果たそうとするのかの行動が見て取れますから、本来あるべ き姿とすれば、そういうところまでがある程度読み込めるものになることがいちばんな のでしょう。  ただ、今回そこまでやっていこうということで考えていらっしゃるのか。ある意味で は事務局のスタンス、それが委員の議論の中で変えていただく可能性もあるのか、「現 時点では、正直なところ、ここら辺までです」ということになるのか、その辺の問題だ ろうと思います。 ○参事官  もともとCSRがヨーロッパであったのが分かっているのは、ナイキの児童労働、チ ャイルド・レーバーです。当時ソーシャルクローズということで、それをどうするのか ということで、ヨーロッパでも児童労働をやめようというような話が出ていました。ア メリカと、ヨーロッパの中でもイタリア、イギリスとフランスは分かれているのは聞き ました。日本はアジアを控えているので「えーと」などと言って、あまり態度をはっき りしなかったのですが、そのうちWTOとILOの戦いになってきて、今どうなってい るか分かりませんが、バングラかタイの工場を閉鎖したということで、ナイキはもう完 全にやられたのです。日本でも、企業名は挙げませんが、コンプライアンスに失敗した のですっかり潰れたとか。そういう意味で、アカウンタビリティ、説明責任をどうやっ て果たしていくかという問題があります。  もう1つは、先ほどISOの話をしましたが、グローバルスタンダードになってきた ときに、海外とも付き合いのある企業はそういうことを知らなければいけない。それは 経済産業省なり経団連がやればよい話なのかもしれませんが、ある程度情報を提供する 必要があります。  流れとして、労働分野についても、各国は調べておりませんが、国際機関は必ず提示 はしていると。国際機関ですから、労働分野に重きを置いていない国があるので、団体 交渉権や団結権の話から87号や98号が出てくる。そういうことがいろいろない交ぜにな っています。今後景気が踊り場を脱して上がっていくというときに、いまパートから常 用のほうに人が移ってきているわけです。今後少子化になって、自分の企業のために、 良い人がいなくなるから囲い込みをしていくのか、それとも囲い込みをしてくれた結 果、常用が増えるからそれが社会貢献なのか、どう見るかの問題だろうと思うのです。  だから、まさに社会情勢のあり方によって、これをどう位置づけてCSRというもの を定義づけて踏み込んでいくのかがなかなか難しいのです。プライマリーからやってい くのか、それとも、ある程度進んだアドバンスのほうを向くのかというのは、我々とし ても世の中の歩みによって、難しい部分もあります。確かに最低賃金さえ守っていれば よいという、23頁の法令遵守型のほうに行けば指導監督ができないのですが、やはり、 いまは「安心・安全」という言葉が1つの用語として通用するようになりましたので、 そういった観点も置いていく。切り口がマルチなものですからなかなか整理し切れない というのが事務局の実態でありまして、最後はやはり委員の皆さん方がどういう方向で 整理するかにお縋りする。用意しろと言えば、いろいろな資料を集めますが。 ○奥山座長  次回に点検指標の叩き台も出していただきますし、そういうところで踏まえながらご 議論いただいて、これは落とすべきではないということを。もちろん表現や字句は考え ながら、団体交渉などが生々しく出て、いろいろなあれをするというのだったら、労使 コミュニケーションと先ほどおっしゃったような言葉を使って、中身となるようなもの を指標として入れていく。それは今後議論が進んでいく中で考えます。 ○参事官  指標のための指標になってはいけないというのが私たちの最低限のあれです。 ○奥山座長  折角今後こういうことをやっていこうとするわけですから、それだけのものよりは、 もっとよいものをということは当然お考えになっていると思います。 ○参事官  そうですね、そういう形でお願いいたします。 ○奥山座長  では、その辺のところもどんどんやっていきましょう。 ○足達委員  一言だけ言わせてください。前回、日本は進んでいると思って重点を置かなかった点 に反省があると申し上げましたが、サービス残業の話も、欧州のこういう評価をやって いる人間にこと細かに日本の状況を話しますと、それは強制労働だと言うのです。つま り、上司が帰らないのを待っている心理的圧迫とか、あるいは、そこで先に帰ってしま うと職場でつまはじきにされてしまうというのは、彼らの感覚でいうと、それはILO が禁止している強制労働にあたると解釈するわけです。ですから、そういうところも見 なくてはいけないと思います。  先ほどありました、世界がどう見ているのか、何を期待しているのかということも含 めて、今回は、日本国内はできていると、あまり軽々には前提を置かないでやってみた いというのが私の希望です。 ○奥山座長  もう1回洗い出してみようということですね。 ○小畑委員  私も全く同感です。世界で議論されていることと今ここで議論していることが、矛盾 してしまったら非常によくない結果になります。それと同時に気になる部分として、価 値観が反映される項目について非常に注意が必要だということは、本当にそう思うので す。例えば「私たちの会社は伝統的に終身雇用でやっていてそれに誇りを持っています 」、という会社に対して、能力をきっちり評価して、それに対応した賃金制度に変えな ければいけないのかというような問題も出てくる可能性はあるわけで、そうしたとき に、指標の作り方には工夫が要るのかなと思っております。 ○奥山座長  従来の日本の労使慣行、長期雇用と年功処遇というものの中で、ある程度うまくいっ た企業の労使からすると、従来の仕組みを変えるについてはなかなか難しいところがあ るし、そういうものでうまくいっていればいるほど評価が上がるものですから、そこに 新たな選択肢や新たな枠組みを作ろうとするときには、それはマイナスといった感じ で、本来はあるべき姿なのだろうけれども、その企業の中ではそうではない、というと ころがありますから、その辺をどううまくやっていくのか、難しいですね。 ○寺崎委員  そういう意味で価値観の相反するようなところは現場でも出てきています。例えばフ ァミリーフレンドリーで、転勤を強制しないという趣旨で地域限定社員制度を導入した けれど、それが結局、男女不平等を逆の面で助長してしまっているではないか。だった ら、そういう制度を入れないで、「うちは無理やり転勤はさせません」ということで運 用している会社のほうが、ある意味、よほどファミリーフレンドリーに値するとか。 ○小畑委員  CSRではステークホルダーとの対話というのが非常に重要です。ステークホルダー がどういうことを価値と考えているかということも反映されるわけです。それで、消費 者がどこの会社のものを買うか、その会社はどんな会社なのだろうということを見たと きに、その会社が労働に関してCSRを果たしているということが評価されて、たくさ んの消費者が飛びついたり、投資家がどんどん投資したいと思ったりする、というよう な問題です。そして、CSRを果たしている所に優秀な人材が集まるというようなムー ブメントが当たり前になったときに、それをやっていないことがハンディになるという ような時代が来たときに、もっと早く、もっと総合的に考えておけばよかったというよ うなことになっては非常によくない、そう思っております。 ○奥山座長  そうなんですよね。先ほど寺崎委員がおっしゃった、インターンシップにしろ、ある 企業の中でやっていることが、実はCSRの観点ではなくて、あくまでも自己の企業の 中での人材の確保、自己の企業の中での利益獲得の施策である。それは労使にとって、 ある意味で共通の利害であり、共通の利益かもしれないけれど、もっと広く客観的に見 たときに、いま小畑委員がおっしゃったようなCSRの本筋や目的にはかなっていな い。むしろステークホルダー、利害関係人が外部から見たときにその企業が社会的にど う評価されるか、どう責任を実行しているかという問題だろうと思いますから、その辺 のところの違いですね。 ○寺崎委員  結果として、先ほども出ましたけれど、景気が上向き始めてきたからたくさん雇用し て、結果としては雇用の創出につながっているだろうという話です。また、例えばいま のインターンシップも、本当は会社の都合なのだけれど、結果として、大学生にとって は非常によい機会を与えているよね、という見方もできます。最初から理念的なところ で、ここを目指せと言うのではなくて、結果としては社会のためになったよね、という ところを見てもらえれば、まずはよいのかなという気も一方でするのです。 ○奥山座長  各委員のとりあえずの意見を聞いて叩き台は作っていただくことにしましょう。 ○参事官  組織は、どうしても利益がないと、何らかのファンドがないと存在できないのです。 だから、それをどういう面で見るか、表・裏・斜め等いろいろあるだろうと思いますの で、そこら辺は企業が認識してもらうことで、それがどういうフォーマットがよいのか というところに繋がるのではないかと思います。労働側には、いろいろな面で難しい部 分がありますが。 ○奥山座長  先ほど、環境省が出した報告書のガイドラインの中身の説明のところでしたか、「多 様な人材の育成」というような説明がありましたが、これは、アメリカでもだいぶ前か ら言っていたし、経団連の人なども言っていたダイバーシティの問題も絡ませて指標づ くりを考えていくということになるのですか。 ○参事官  ダイバーシティは入れないと、いまの流行からずれますので。 ○奥山座長  ダイバーシティの問題とは違って取り扱おうということですか。この辺が私の頭の中 ではよくわからないのですが。 ○参事官  そこはダイバーシティの切り口の要素を何にするかという問題もあるのだろうと思う のです。 ○奥山座長  特にアメリカでしたら、黒人のマイノリティーとの絡みで出てきた問題ですし、日本 の場合には、こういう問題は、特に女性労働者の雇用管理改善の中で考えられてきてい る問題なのですね。でも、もう少し広く言えば、要するに男女であろうが、人種の違い であろうが、高齢者・若年者・女性・既婚者・独身、いろいろなものを含めて「多様な 人材の多様な活用」というのならば、こういう枠の中にも入り込み得るかなとは思うの です。  ポジティブアクションもそうですよね。日本の場合、これは女性の問題として、男女 平等、雇用均等の観点からやっていますが、もう少し広く考えたら、このCSRにもす ごく密接不可分につながってくるのだろうし。だから、その棲分けは、あまり気にしな いでよいのか。私の中ではまだその整理ができていないのです。 ○参事官  ダイバーシティという定義を切り口として持っていくのか、こういう要素で持ってい ったら、結果としてダイバーシティとして説明できるのか、どちらで見ていくかという 問題だろうと思うのです。ダイバーシティという定義を立ててやっていくと少しずれる のではないかとも思いますし、どちらにでも取れるように、とりあえず項目的にやって おいたほうがよいかもしれないと思います。 ○寺崎委員  これは質問なのですが、ダイバーシティという言葉を定義する上で、おっしゃったよ うに、属性で多様性というと、今回のCSRの中の話なのだろうと思うのです。ただ、 人事の現場、会社の現場からすると、ダイバーシティというのは最近、どちらかといえ ば価値観のダイバーシティを指すことが結構増えてきています。例えば、俺は出世はも うよいから、もっと家族を大事にして働きたいのだというのもダイバーシティなので す。一方で、俺は出世したいから一生懸命働くという場合もあるのです。働く上で、こ のように違った価値観を持った人に対して、それぞれちゃんとマネジメントできていま すか、というのが最近のダイバーシティの感覚なのです。 ○奥山座長  各人の職業観に対する理解等もある程度尊重していくわけですね。 ○寺崎委員  はい。それは先ほど話が出てきた、終身雇用を価値観として重きを置く人もいれば、 転職しても何でもよいから、とにかく自分のキャリアを身につけるという価値観を持っ ている人もいる、というダイバーシティなのかどうかという感覚なのです。 ○奥山座長  そうですか。だから、例えば、私はずっと勤めていきたいが、出世するというのでは なくて、個人生活の両立も果たしながらやっていきたい、そういう働き方のスタンスを 持っている人もいるし、キャリアウーマンではないけれど、キャリアをバリバリやっ て、高い賃金も高い地位もやっていきたいという、そういうものも全て含めて、企業は きちんと活用していくような環境づくりをしていこうと、そういうものも入ってきてい るわけですね。 ○寺崎委員  この議論をすると話が深くなりすぎるのですが、例えばメンタルヘルスの話にして も、一方では成果主義がメンタルヘルスに危機をもたらしているという論調もありま す。  高速道路の追越車線で、アクセルべた踏みでみんな走れ、というようなのが今の成果 主義みたいなもので、中には「俺は普通に80キロの制限速度を守って働きたいんだ」と いう人も一方ではいるのです。そんな多様化した働き方や価値観に本当にどこまで対応 できるのかというのが、コンプライアンスではなくて、非常に広い意味というか、理想 としてのCSRなのかなと思うのです。 ○小畑委員  1つ関連した部分もあるのですが、もう1つ付加してお話しておきたいのは、中間報 告書のときには、確かに日本で進んでいるからということで、重きを置かなかったもの もあるのですが、そもそもコンプライアンスとして日本において法律できっちりと義務 づけがなされていて、それに対する監督の用意もあるというものはコンプライアンスの 中で対処されるので、それを超えた部分がCSRの醍醐味なのです。そのCSRの醍醐 味というものをより鮮明にしていこうという問題意識もあって、それで、例えば団結権 を侵害してはいけないというのは、もちろんそのとおりなのですが、それはコンプライ アンスの問題としてすでに対応がなされている部分であるという認識もあったのです。 ですから、CSRというものを考えていく際に、決してコンプライアンスで終わるわけ では全然なくて、そこにいま注目が集まっているわけです。 ○奥山座長  コンプライアンスというのは、言ってみればボトムライン、最低基準ですから、要す るに、それ以下のものであっては困る。その上のもので、どう築き上げていくかという ことですね。そこら辺りは項目立てと深く関連しますので、いまのご意見も踏まえつ つ、とりあえず作っていただいて、その中で必要なものを埋めて拡充していくような形 で議論を進めていければと思っておりますので、事務局は大変でしょうけれど、よろし くお願いいたします。今後の進め方も含めて、ほかに何かございますか。もちろん今後 ともたくさん出てくると思いますが、特にこの時点で気をつけておかなければいけない ようなことがございますか。 ○経済産業省(オブザーバー)  私も、国際的なルールづくりということでCSRを捉えています。CSRはグローバ ルなイシューですから、グローバルな中で、最初から枠はあまりはめずに、やったほう がよいのではないかと思います。  また、いまCSR自身も、モラル・ルールからビジネス・ルールに変わってきて、例 えば日本のビジネスで、中国に出ていったために、従業員の半分以上は外国人であると いう会社が今どんどん出てきているわけです。そうすると、そういうことも加味しなが ら議論されたらよいのではないかと思います。  CSRというのは、小畑委員が言われたように、ステークホルダーとの関係の中でつ くっていくということがありますので、いろいろなステークホルダーとのコミュニケー ションをしながら、まとめられたらよろしいのではないでしょうか。  資料8は非常にいいですね。CSRは非常に幅広い概念ですから、事例をやらないと 議論がなかなか深まらないのです。ですから、これをもっと大々的に発表していったら よいのではないでしょうか。 ○奥山座長  これは、いわゆる部内限りで出ているだけなのですか。 ○経済産業省  いずれですね。 ○室長補佐  いずれ配付することは想定したいと思っております。 ○__  ホームページには出さないのですか。 ○室長補佐  ホームページも念頭には置きたいと思っております。何も部内限りで終わらせようと しているわけではなくて。 ○奥山座長  当面は委員限りで。 ○室長補佐  まずはということで、まとまったら、最終的には公表したいと思います。 ○参事官  公表の仕方をどうしようかと悩んでいます。 ○経済産業省  9月にバンコクで、ケーススタディーを議論しようかということで、いま経団連もケ ーススタディーをかなり集めています。資料の取り扱いについては、かなり後になりま すが。 ○奥山座長  特に今日の時点でご意見がなければ、第2回以降は適宜それぞれの課題に即して有意 義なご意見をいただきたいと思います。次回以降の予定等の説明があればお願いいたし ます。 ○室長補佐  次回の会合から、今日いただいたご意見を踏まえまして叩き台を提出したいと考えて おります。具体的な項目の検討に入るわけですが、日程につきましては、10月17日(月 )の15時半からを予定しております。正式な連絡、ご案内は追っていたしますので、よ ろしくお願い申し上げます。 ○奥山座長  次回は10月17日(月)の3時半で予定しておりますので、お忙しい中恐縮ですが、よ ろしくお願いいたします。第1回の会合をこれで終了いたします。雨の中、どうもあり がとうございました。 照会先:  政策統括官付労働政策担当参事官室調整第二係  電話 03−5253−1111(内線7720)