05/08/11 第1回医師等の行政処分のあり方等に関する検討会議事録       第1回 医師等の行政処分のあり方等に関する検討会 議事録          日時 平成17年8月11日(木) 10:00〜          場所 厚生労働省共用第7会議室 ○事務局  定刻になりましたので、ただいまから第1回「医師等の行政処分のあり方等に関する 検討会」を開催いたします。各委員の皆様方には、ご多忙のところ本検討会にご参集い ただきましてありがとうございました。  初めに、本検討会の委員の方々をご紹介いたします。この検討会の座長をお願いして おります、東京大学大学院法学政治学研究科教授の樋口委員です。慶應義塾大学病院長 の相川委員です。専修大学大学院法務研究科教授の岩井委員です。川崎医療福祉大学教 授の岩渕委員です。東京大学大学院法学政治学研究科教授の宇賀委員です。社団法人日 本歯科医師会専務理事の蒲生委員です。エッセイスト・ジャーナリスト、青森大学教授 の見城委員は遅れて出席されます。国立病院機構名古屋医療センター院長の齋藤委員で す。社団法人日本医師会副会長の寺岡委員です。東京大学大学院総合文化研究科教授の 早川委員です。  事務局を紹介いたします。厚生労働省医政局長の岩尾です。大臣官房審議官医政健康 担当の岡島です。医政局総務課長の原です。同じく医事課長の中垣です。歯科保健課長 の日高です。医事課試験免許室長の福田です。私は、医師資質向上対策室長の田原で す。  岩尾医政局長から、一言ご挨拶を申し上げます。 ○医政局長  先生方には、大変お忙しいところを委員にご就任いただきましてありがとうございま す。この検討会を開催するに当たり、その趣旨を申し上げさせていただきます。現在、 医療政策には多くの課題がありますけれども、特に、いま私どもが最優先と思っている のが、医療に対する安全・安心を確保していくことです。ここ数年医療事故に関する報 道なども非常に多く、医療に対する国民の信頼が大きく揺らいでいる現状という認識を しております。  私ども、これまで医療安全対策の充実には厚生労働省を挙げて取り組んでまいりまし た。それぞれ施設に対する施策、それから医薬品・医療機器などに対する施策、そして これからご議論いただきます医師・歯科医師等の資質向上対策というものに取り組んで まいってきたわけです。ここでは、医師・歯科医師の資質向上という観点から、行政処 分を受けた医師・歯科医師に対して、職業倫理などの再教育を義務づけることを考えて おります。  具体的な内容については、行政処分を受けた医師に対する再教育に関する検討会にて ご議論いただき、今年4月に報告書をまとめていただきました。その中で、併せて行政 処分のあり方に関するいくつかの課題について、別の場で討議すべきだろうというご指 摘をいただいたところです。  したがって、行政処分の類型の見直し、行政処分に係る調査権限の創設といった行政 処分のあり方、国民からは、医師資格の確認等についての方策などの質問がありますの で、ご議論いただくこととしてこの検討会を開催することにしたわけです。  ご議論いただいて、取りまとめられたものにつきましては、医療に対する信頼性を確 保するという観点から、現在進めております医療提供体制の改革の一環として、必要に 応じ次期通常国会へ提出する医師法の改正案に盛り込みたいということも考えておりま す。委員の皆様におかれましては、高い見地から、またさまざまな視点から率直なご意 見をいただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。 ○事務局  以後の議事進行につきましては、樋口座長にお願いいたします。 ○樋口座長  早速議事に入るわけですが、こういう検討会を含めて昨今の情報公開のあり方が当然 問題になるわけです。本検討会についても、これから議事を進めるに当たり、その議事 内容についてどういう形で情報公開・情報提供していくかという問題がありますので、 まずその点を確認してから議事に入りたいと思います。 ○事務局  本検討会の検討事項につきましては、国民の関心も高い分野であるということもあり ますので、公開したいと考えております。また、検討会の議事概要、資料につきまして も、厚生労働省のホームページに掲載するなどにより、原則として公開することといた します。例外的な取扱いが必要な場合がありましたら、事務局から座長に相談させてい ただきたいと考えております。 ○樋口座長  ただいまの説明について、ご異議、ご質問はあるでしょうか。                 (特に発言なし) ○樋口座長  それでは、いまの説明にあったように、本検討会の議事概要及び資料については公開 とし、具体的な取扱いは厚生労働省の事務局に任せることにします。問題は発生しない と思いますが、何らか個別の問題があるようでしたら、私を含めて対応を決めることに したいと思います。  岩尾局長からも、大きな意味での説明がありましたが、事務局からこの検討会の趣旨 について説明を伺います。 ○事務局  資料により、この検討会の趣旨等についてご説明いたします。基本的には、「議事次 第」と書いてある資料によりご説明いたします。このほかに、参考資料1から4まであ りますが、これは適宜ご覧いただきたいと思います。  「議事次第」と書いてある表紙の1頁目の資料1「医師等の行政処分のあり方等に関 する検討会について」ですが、先ほど局長からもご説明がありましたように、行政処分 を受けた医師に対する再教育に関する検討会があり、この報告書の中で提言をされてお りました、行政処分のあり方などの事項についてさらに検討を進める、ということでこ の検討会を開催するものです。  検討項目については、処分の類型の見直しなどその他を含めて7項目ありますが、こ れについては後ほどご説明いたします。2頁目は、この検討会の委員名簿です。  3頁ですが、この検討会は行政処分、それから行政処分と関係の大きい再教育につい てがテーマになりますので、この2つに関するこれまでの取組みについて若干ご説明い たします。平成14年12月には、医道審議会医道分科会で、行政処分の考え方が公表され ております。医道審議会は、厚生労働大臣が、医師・歯科医師に対して行政処分を行う 際に意見を聴く審議会です。その内容については、参考資料1に全文ありますが、ご説 明は省略させていただきます。  この行政処分の考え方においては、医道審議会の審議を行うに当たり、考え方を明確 にするということと、ポツの2番目にあるように、刑事事件とならなかった医療過誤に ついても、処分の対象として取り扱うものと、こういうことを明確にしたものです。  次に、平成15年12月には、厚生労働大臣医療事故対策緊急アピールを公表しておりま す。これは、医療事故が相次ぎ、医療事故に起因する医師の逮捕があったということも ありましたので、このような緊急アピールを公表したわけです。参考資料2にその抜粋 を載せております。対策の1つとして、行政処分を受けた医師・歯科医師に対する再教 育制度について検討する、という方針を明確にしたわけです。  そして平成16年3月には、医道審議会において、行政処分についての当面の対応と、 将来的な対応を整理するとともに、将来的には調査困難な事例について、厚生労働大臣 が報告を命じる権限を創設する、ということを検討することを明確にしたわけです。こ れについては、参考資料3に抜粋を載せております。  併せて、3頁の下にあるように、行政処分を受けて医業に復帰する医師に対して、再 教育を行うべきである。そして、その具体的な内容については、別途検討会を立ち上げ て検討を進めることとされております。  そして検討を進めて、今年4月に再教育に関する検討会の報告書が取りまとめられた ところです。これは、参考資料4に用意しております。この報告書では、再教育のあり 方と当面の対応をまとめるとともに、この再教育の検討に当たって議論が必要だと考え られた、行政処分のあり方についても課題を列記したものです。  そこで、このような行政処分のあり方等についても、別途検討するということですの で、今年6月に医道審議会において、行政処分のあり方などの事項についてさらに検討 を進めるということで、検討会を開催するという方針が明確になり、本日検討会を開催 するに至った経緯です。  4頁は、その具体的な検討課題です。今年6月に医道審議会で了承されております、 「新たなる検討会の開催について」というペーパーに、大きく7つの項目が主な検討事 項として挙げられております。  1番目は、「処分類型の見直し」です。再教育を義務づけるということをした場合 に、戒告などの医業停止を伴わない行政処分の類型を設けることについて、どういうふ うに考えるのかということが1つあります。現在、戒告というのは行政処分ではなく て、行政指導という形になっております。  2番目は、「長期間の医業停止処分のあり方について」です。長期間の医業停止処分 になるような事例については、免許取消しとして、免許取消しに至らない事例について は、一定期間の医業停止処分と、十分な再教育を併せて課すことにしてはどうかという ことです。  3番目は、「行政処分に係る調査権限の創設について」です。行政処分を行う場合、 特に刑事処分が確定されていないようなケースについては事実認定が必要であり、国に そういう行政処分の根拠となる事実関係に係る調査権限を持たせてはどうかということ です。  4番目は、「医籍の記載事項」です。医師免許は、医籍に登録されることによって行 われるわけですけれども、この医籍に再教育を修了した旨を登録することについてどう いうふうに考えるかという点です。  5番目は、「再免許に係る手続の整理」です。行政処分を行う際に、この行政処分を 避ける目的で、免許を自主的に返上したような場合には行政処分が実施されなくて、一 方で現行法規では再免許交付を妨げる規定がない、といった事例に対応できるような手 続をきちんと整備するべきではないかという課題です。  6番目は、「国民からの医師資格の確認の方法について」です。ある人が医師である ということの確認について、どういう方法でやるのか、あるいは問題点はあるのかとい うことについてどのように考えるかという点です。7番目は、「その他」ということで す。  6頁の資料4に、具体的な「検討のスケジュール(案)」をお示しております。本 日、医師等の行政処分の現状や、後ほど、弁護士等他の国家資格に対する処分の現状等 についてご説明し、フリーディスカッションをします。次回9月には、外国における医 師等に対する行政処分の現状と、その他ご指摘のありました資料を用意してフリーディ スカッションし、10月に論点整理をして、12月に中間まとめを行うということで、年内 に中間報告をまとめていただくようなスケジュールを考えております。  現在、医療提供体制の改革に向け、多岐にわたる論点について検討を進めておりま す。局長の挨拶の中にもありましたように、次期通常国会に提出する医師法の改正案 に、ここでまとめていただいた結果を盛り込みたいと考えておりますので、年内に中間 まとめをしていただく、というスケジュールをお示ししているところです。以上、趣旨 とスケジュールについてご説明いたしました。 ○樋口座長  この検討会の大きな枠組みについての説明をいただきましたが、ここまででご質問が ありますか。                 (特に発言なし) ○樋口座長  特にないようですので、中身に入ってディスカッションをしようと思います。我々 は、7つの課題を背負っているということだけがまずわかったのですが、7番目は「そ の他」ということになっているので、はっきりしているのは6つだということです。数 も多いのですが、それぞれに関連性のある話だということが、平成14年以来一連の流れ の中で、この検討会も流れの一翼を担っているという理解だけは私もいたしました。  いちどきにこの6つを並べてということではなく、少なくとも2つぐらいに分けて議 論を始めたいと思います。それについても細かな説明をしていただく用意が事務局にあ ると伺っております。前半と後半の2つに分けますが、7つあるうちいちばん大きなも のは、本検討会の主題にもなっている「医師等の行政処分のあり方」ということであり ます。第1のアジェンダである「処分類型の見直し」と、第2の「長期間の医業停止処 分のあり方」までの説明をしていただき、議論を開始したいと思いますが、それでよろ しいでしょうか。 ○事務局  資料につきましては、それぞれ関連がありますので、一括してご説明させていただき ます。議論については、いま座長からご説明がありましたように、前半と後半に分けて いただければスムーズにいくのではないかと思います。 ○樋口座長  それでは、資料の説明をお願いいたします。 ○事務局  7頁の資料5「医師・歯科医師の処分、再免許に係る根拠規定」です。医師法につい ては第7条に、医師が第3条に該当するときには、厚生労働大臣はその免許を取り消す ということ。それから、第2項で、医師が第4条の各号のいずれかに該当し、又は医師 としての品位を損するような行為があったときには、厚生労働大臣はその免許取消し又 は期間を定めて医業の停止を命ずることができると規定されております。  第4条各号の具体的な内容はその上に書いてありますが、特に問題になるのは第3号 の罰金以上の刑に処せられた者、第4号で、医事に関し犯罪又は不正の行為のあった 者、というのが大きく関係してくるかと思います。  また、第7条第3項にあるように、前項の規定による取消処分を受けた者であって も、再び免許を与えるのが適当であると認められるに至ったときには、再免許を与える ことができるという規定があります。そして、このような処分を行うに当たっては、医 道審議会の意見を聴かなければならない、ということが第4項で規定されております。 8頁は、歯科医師法の規定ですが、医師と同じような規定になっております。  9頁は「医籍に係る根拠規定」です。これも医師法から抜粋しておりますが、医師に なろうとする者は国家試験に合格し、大臣の免許を受けなければならないというのが第 2条です。第5条に、厚生労働省に医籍を備え、医師免許に関する事項を登録すること とされております。  この医籍というものの意味合いは第6条に明記されており、免許は医師国家試験に合 格した者の申請により、医籍に登録することによって行うとされております。つまり、 医籍に登録することによって、医師免許が有効になるということが法律で規定されてい るわけです。  医籍には、どういうものが登録されているかというと、施行令第2条にあるように、 登録番号、本籍地都道府県名、氏名、生年月日、性別、国家試験合格の年月、免許取消 し又は医業の停止の処分に関する事項、その他厚生労働大臣が定める事項とあります。  その他の事項については、9頁のいちばん下にある医師法施行規則第2条第1項にあ るように、再免許の場合にはその旨、第3項に、登録の抹消をした場合にはその旨並び にその事由及び年月日とされております。10頁は、歯科医籍に係る根拠規定ですが、医 師と同じですので省略させていただきます。  次は、このような行政処分がどのぐらい行われているのかということです。11頁の資 料6は、昭和46年度から、直近の平成17年7月までの行政処分の件数の累計です。医師 については647件、歯科医師については249件、合計896件です。これを理由別に整理し たものです。  直近の状況については、12頁に平成11年度から平成17年度の直近まで、それぞれの区 分別、そして年度別に整理しております。年間平均して約40件の行政処分が行われてい るということです。13頁には、歯科医師の処分件数で、年間平均20件となっておりま す。  課題の中には、医業停止の期間のこともありますが、医業停止の期間別に整理したも のが14頁です。医師については、平成11年度から平成17年度までで医業停止は合計240 件あります。そのうち1年未満が141件、医業停止処分の59%に当たります。3年以上 というのは33件あり、全体の14%に当たります。  15頁は歯科医師です。全体で96件の歯科医業停止処分があります。そのうち70件が1 年未満で、全体の73%に当たります。3年以上が8件で、全体の8%に当たります。  16頁は、医師・歯科医師の行政処分の流れです。フローチャートのいちばん上にある ように、事案の把握をします。これは、罰金以上の刑の場合には法務省から我々のほう に情報提供がありますし、また報道等でも把握することになっております。フローチャ ートに従い、調査、意見聴取等を行い、下から3つ目の枠にあるように、医道審議会医 道分科会で、その答申内容を決定し、答申をして行政処分を行います。免許取消し又は 期間を定めた業務停止命令を行います。右側にある戒告というのは、行政処分ではなく て行政指導という取扱いをしております。左側の、再免許の場合も医道審議会にかけら れ、再免許をするかあるいは棄却するかを決めております。  17頁は、今年4月にまとめられた、「行政処分を受けた医師に対する再教育に関する 検討会」の報告書の概要です。4月にまとめられた報告書を踏まえ、医師法を改正し、 再教育を義務づけるよう、現在事務局では準備を進めております。報告書の中で整理を された、再教育の内容を表にしたものです。  縦に見ていただきますと、研修の内容には、職業倫理に関する再教育「倫理研修」 と、右側の医療技術に関する再教育「技術研修」があります。職業倫理に関する再教育 については、医業停止処分を受けた者全員を対象とする。技術研修については、医療事 故が理由で、医業停止処分を受けた者、そして医業停止期間が長期に及ぶ者、こういう 者を対象にすることにしております。  真ん中の行にあるように、「助言指導者」を置き、その助言指導者の下で再教育のプ ランを作っていただき、再教育を実施していく。そして、下から2段目にあるように、 再教育の修了評価基準を定め、それをいちばん下の行にあるように、厚生労働省に提出 していただき、再教育の修了評価基準に沿って再教育の修了を認定する、という内容に してはどうかという提言をまとめていただきました。  いちばん下の※印にあるように、免許取消処分を受けた者については、将来的に免許 の再交付がなされる場合に再教育を義務づけることが適当だ、ということも併せて付記 されております。  18頁の資料9からは、弁護士、公認会計士、税理士という、医師・歯科医師ではない 資格における行政処分の類型、それから調査権限等の事例です。それぞれ弁護士法、公 認会計士法、税理士法によって定められており、その概要を表にまとめております。  まず弁護士です。資格の発効要件として、弁護士になるには、日本弁護士連合会に備 えた弁護士名簿に登録されなければならない。これが、医師の場合には医籍に登録する というものに対比しております。行政処分の類型ですが、戒告も行政処分として位置づ けられております。2番目は、2年以内の業務停止です。退会命令というのは、地方の 弁護士会からの退会命令です。除名処分というのは、日本弁護士連合会の名簿から削除 するものです。  処分権者は、弁護士が所属する弁護士会が処分を行うことになっております。再免許 については、除名処分を受けた場合には、処分の日から3年を経過しない者は弁護士と なることはできないという規定になっております。また、免許の自主返納への対応につ いては、懲戒の手続に付された弁護士については、その手続が結了するまで登録取消し の請求をすることはできないとされております。  調査権限については、弁護士会の綱紀委員会は、必要があるときは弁護士や懲戒請求 者等に対して陳述・説明・資料の提出を求めることができるということで、行政による 調査権限は規定されておりません。参考として、会員数、懲戒件数を示しております。  19頁は、公認会計士の事例です。資格の発効要件は、日本公認会計士協会に備えられ ている公認会計士名簿に、氏名等に関する事項の登録を受けなければならないとされて おります。行政処分は、戒告、2年以内の業務の停止、それから登録の抹消です。この 場合の処分権者は内閣総理大臣です。  再免許は、登録抹消の処分を受けて、処分の日から5年を経過しない者は公認会計士 となることはできないという規定です。また、免許の自主返納については、先ほどの弁 護士の場合と同じように、懲戒の手続に付された場合は、その手続が終わるまでは登録 の抹消をすることはできないとされております。  調査権限については、内閣総理大臣が、必要な場合には職権をもって必要な調査をす ることができるとされております。また、報告や資料の提出を求め、立入検査をするこ とができるとされております。  20頁は、税理士の場合です。税理士の場合は、税理士名簿に氏名等の登録を受けなけ ればならないとされておりますが、この税理士名簿は日本税理士会連合会に備えられて おります。行政処分の類型としては戒告、1年以内の業務停止、それから業務の禁止と いうことです。処分権者は、財務大臣となっております。  再免許の規定については、業務を禁止された者については、処分を受けた日から3年 を経過しない者は税理士となることはできないとされております。免許の自主返納は、 弁護士、公認会計士と同様です。調査権限は、国税庁長官は、必要があるときには税理 士から報告を聴取し、また質問をして帳簿書類の検査をすることができるという規定が あります。  21頁からは、いまご説明いたしました弁護士、公認会計士、税理士について、それぞ れの名簿に登録する事項と、その資格に対する照会について、各連合会等がどのような 対応をしているかを整理したものです。弁護士については、上から2つ目の丸にあるよ うに、弁護士名簿に登録する事項については、氏名、本籍、生年月日、事務所や住所、 所属弁護士会の名称等、懲戒処分もあります。  次の丸にあるように、日本弁護士連合会においては、弁護士の資格について照会を受 けた場合には、以下の事項について回答しているということです。弁護士の氏名、事務 所、所属弁護士の名称、その他懲戒処分についても回答しているということです。ま た、日本弁護士連合会のホームページにおいては、氏名や事務所の所在地で検索が可能 です。業務停止中の者についても、その旨の表示がなされることになっております。名 簿への登録、それから懲戒処分が行われたような場合については、官報による公告がな されることになっております。医籍においては、厚生労働省において医師の氏名、番 号、生年月日がわかった場合には、登録の有無についてお知らせをしております。  22頁は、公認会計士についてです。登録している事項は丸の2番目にありますよう に、登録番号、氏名、生年月日、住所、本籍、主たる事務所、従たる事務所、その所在 地等です。下から2番目の丸にあるように、日本公認会計士協会においては、氏名が判 明している場合には照会に応じて、名簿への登録の有無、番号、事務所の所在地等の情 報を提供しているということです。官報への公告も併せて行っております。  23頁は税理士の場合です。丸の2番目にあるように、税理士名簿に登録する事項は、 氏名、生年月日、本籍、住所等です。税理士法人の名称や所属事務所も登録することに なっております。下から2番目の丸ですが、日本税理士連合会においては、氏名が判明 している場合には、照会に応じて名簿への登録の有無等の情報を提供しております。官 報による公告もなされております。  24頁ですが、医師の資格については、先ほど厚生労働省で照会があった場合の対応に ついてご説明いたしましたけれども、医療機関においては医師の氏名を掲示しなければ ならないという規定があります。管理者の氏名、診療に従事する医師又は歯科医師の氏 名を院内に掲示しなければならないことになっております。  いちばん下にあるように、診療に従事する医師・歯科医師が複数いる場合について も、そのすべての氏名を掲示しなければならないこととされております。したがって、 医療機関に勤めている方について、医師の確認をしようとした場合には院内掲示を見る ことによってできるということです。以上駆け足でしたが、資料のご説明は終わりま す。 ○樋口座長  本日の残された時間はフリーディスカッションということなのですが、見城委員がお 見えになりました。 ○見城委員  見城です。本日は10時まで仕事でしたので、遅れてしまい失礼いたしました。医道審 議会のメンバーに入れていただいておりますが、こちらのほうでも微力ながら一生懸命 やらせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○樋口座長  ディスカッションのやり方としては、先ほど申し上げましたように我々としては7つ の課題があります。7つ目は、関連の自由課題みたいなものかもしれませんが、資料3 の4頁目になります。主な検討事項としては、「処分類型の見直し」と「長期間の医業 停止処分のあり方」の2つと実際には密接に関連していると思いますが、「調査権限の 問題」、情報公開にも関係するのでしょうか、「医籍の記載事項」、「再免許等に係る 手続の整備」、「国民からの医師資格の確認の方法」ということで、6つの特定された 課題が与えられていて、いまのお話にも出た医道審議会へ何らかの形でつなぐことがで きればということだと思います。  いきなり6つ全部ということではなく順々にということで、「処分類型の見直し」と 「長期間の医業停止処分のあり方」についてまずご議論、ご意見、ご質問をいただきた いと思います。私は、この後に出てくる医籍というものがあるということすら知らない 人間ですので、ここに座っているのが本当にいいのかどうかというのが問題です。  しかし、普通に患者であり、一般国民でもあり、法律のこともやっていて、医事法の ことも少しやっておりますので、個人的にも関心を持っています。この処分について は、この検討会の中に私の同僚の1人でもある、行政法の専門家の宇賀委員にも入って いただきました。個人的な色合いが強くなるといけないのですけれども非常に興味深い ところがあります。  医師の行政処分について興味深いなどと言っているのは無責任のような感じがします が、そういう意味ではなくて、私もついこの前までは国家公務員でしたが、いまは国立 大学法人になっています。国家公務員について懲戒処分が問題になる場合のいろいろな 手続があって、懲戒処分というのは、処分を受ける者にとっては一大事でありますの で、フェアな手続が行われなければならないと思います。国家公務員を懲戒するときの 一連の流れというのがあります。  医師についての一連の流れ、それぞれ歴史も違いますが流れがあります。本日も、ほ かの専門職についての説明がありましたように、私にとって馴染み深いのは弁護士会で あります。弁護士のほうは弁護士で懲戒という話があり、それぞれいろいろな違いがあ りそうだということだけはわかっています。それぞれ違いに意味があれば当然違いとし て残すべきですけれども、どうなのだろうかということもあります。そういうことを比 較検討する機会もあればと私自身は思っております。宇賀委員からご意見を伺いたいと 思っている事例がいくつもあります。皆さんのほうが、私よりもいろいろな意味で経験 やご見識があると思いますので、この機会に是非いろいろなご意見を伺えればと思いま す。そこで最初の2つなのですがいかがでしょうか。 ○齋藤委員  質問ですが、いま座長が言われた2つのうち、最初は免許取消しと医業停止という類 型なのですが、免許取消しの考え方を伺いたいのです。7頁の、「処分再免許に関して 」という資料5があります。医籍とも関係するのですが、医師の国家試験に合格して、 申請をして、医籍に登録するというのが免許を受けるということですね。  免許取消しになった場合には、国家試験に合格したという資格は消えないわけです か。要するに、これは再免許とも関係するのですが、例が悪いかもしれませんけれど も、身近な自動車の運転免許証の場合は、免許取消しになるともう一遍試験を受けなけ れば免許を貰えないわけです。しかし、これを見ると、免許は取り消されても、国家試 験に合格したという事実は生きているので、申請すればまた免許が貰えるというふうに 読めます。  ただ読み方によっては、取消処分を受けた者であっても、その者が取消しの事由とな った事項に該当しなくなったとき、その他その後の事情により再び免許を与えるのが適 当であると認められたら再免許ということが7頁に書いてあります。運用によっては、 国家試験をもう一遍受けなければ認めないというふうにできるとも読めるのですが、そ の辺はどういう考え方なのでしょうか。 ○事務局  国家試験を合格していることについては事実として残っております。現行の規定で は、免許の取消しを受けた者が再免許の申請をして、免許を与えるのが適当であるとい う場合には再免許を与えるということをしております。国家試験をもう一回受けなけれ ばいけない、というような形にはしておりません。 ○齋藤委員  もちろん、これは取消しの理由にもよると思うのですけれども、本当に医療の安全や 質ということを考えれば、場合によってはもう一遍国家試験を受けなければ再免許は渡 さないという場合もあり得るのではないでしょうか。 ○事務局  そのような考え方もあるかと思いますし、そういうご議論をしていただきたいと思っ ております。再教育の議論をしたときには、再免許を与える可能性があるようなケース については、再教育を義務づけてはどうかというお話がありましたので、国家試験をも う一度受け直してもらうという方法や、再教育を義務づけて、その課程を終えて、それ が修了したと認められる場合には再免許を与える、というようなことも考えられると思 いますので、この場でさらに議論を深めていただければと思っております。 ○樋口座長  いまのお話で、18頁に弁護士の話が出てきます。弁護士の司法試験というのは難しい 試験の代表だということになっています。早川委員は弁護士の経験もおありですが、弁 護士の場合も、一旦処分を受けたら、司法試験をもう一回受けなさいという話にはなっ ていないでしょうね。 ○早川委員  それは、なっていないと思います。もう一度受けたら、皆さん受からないだろうと思 います。 ○樋口座長  これは2番目の話になるのでしょうけれども、弁護士の場合にこういう処分を受けて 再教育という話は聞いたことがありますか。 ○早川委員  調べないとわかりません。 ○樋口座長  私も、調べてみようと思っています。 ○事務局  我々のほうで調べた範囲では、再教育の規定はないと聞いております。明確な規定は なくて、それぞれ各地方の弁護士会で自主的にやられているかもしれませんけれども、 日弁連のほうではそういう規定は設けていないと聞いております。 ○寺岡委員  議論がそこへ一直線に行く前に、その前提として行われた行政処分を受けた医師に対 する再教育の方法については既に報告書が出ています。それを踏まえて、今日の議論に 移っているということですから、そこのところを一応頭に置いて議論すべきではないか と思います。 ○樋口座長  私からも質問ですが、処分類型の見直しのところで、いままで行政処分の類型が、医 師については免許取消しと医業停止のみであった。これは、ある意味では非常に使いに くい制度です。ですから、よほどとんでもないことをした場合でないと、処分はこれし かないものですから使えないということを意味するので、それはどうかという話があっ て、戒告等の別個の処分も設けたらどうかという話だと思うのです。  免許取消しの法令上の根拠はこういうものですということなのですが、医業停止につ いてはどういうことになっているのかということ。それから、長期間の医業停止処分の あり方についてということもあり、付随的な質問としては、極端な話をすると、30年間 の医業停止という処分も法律上はあり得るということなのでしょうか。  質問は、医業停止の処分の根拠の規定のあり方と、長期間というのが5年ということ になっているようですが、5年どころか10年、20年、30年とやろうと思えばやれるとい う仕組みにいまのところなっているのかどうかということをお伺いします。 ○事務局  資料の7頁をご覧ください。医業停止処分の根拠規定ですが、先ほどは説明が不十分 で申し訳ありませんでした。医師法第7条第2項に、「医師が第4号各号のいずれかに 該当し、又は医師としての品位を損するような行為があったときには免許取消し又は期 間を定めて医業の停止を命ずることができる」とされております。したがって、期間を 定めれば何年でも構わない、法的には30年でも構わないということにはなろうかと思い ますけれども、医道審議会においては、運用として概ね現在では最長5年間ということ で運用しております。  なお、平成10年のころまでは、最長3年間ということで運用しておりましたけれど も、当時は保険医の取消期間が最長5年になったということもあり、医業停止処分も厳 しくすべきだという議論があり、最長5年という取扱いにしております。 ○樋口座長  最初の2点について、ほかの委員からもご意見を伺えればと思いますがいかがでしょ うか。 ○岩渕委員  基本的に、ここに提示されている方向性については賛成ですけれども、それぞれにつ いてある程度の基準みたいなものはどのように設定するのかということが必要なのでは ないか。例えば必要と認められる、あるいは表現が国民から見るとやや曖昧な感じがし ないでもないので、ある程度基準みたいな物差しみたいなものがもう少しはっきりしな いと、そのときどきあるいはケースに応じて弾力的とはいいながら訳がわからなくなっ てくる、という印象を国民に与えかねないという感じがいたします。  医業停止処分5年間を受けていて、その後現場に復帰できるかという話ももちろんあ りますので、改善の方策としてはこれでいいと思いますが、その辺りのところをもう少 しきめ細かい方針なり基準なりといったものを考える必要があるのではないかと思いま す。 ○樋口座長  この点について、事務局から何かありますか。 ○事務局  特段ありませんが、現在の行政処分の考え方については、先ほど少し触れましたけれ ども、参考資料1にありますように、医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方をま とめております。これに沿いながら個別の事案、そして過去の行政処分の事例を勘案し て、医業停止期間の長さ、あるいは免許取消しにするかどうかということを医道審議会 でご議論いただいております。 ○齋藤委員  いまの処分に関して、11頁の表について教えていただきたいのです。いちばん上の医 師法違反が41件、その他の身分法違反が50件挙がっています。具体的にはどういう内訳 なのかということ。  もう1つ不思議に思ったのは、医師については歯科医師法違反というのは当然ゼロに なっています。ところが、歯科医師のところを見ると、医師法違反というのも2件あり ますが、これはどういうことでしょうか。 ○事務局  その他の身分法違反というのは保健師助産師看護師法、あるいは放射線技師法の違反 になります。歯科医師の場合で医師法違反がありますのは、歯科医師で医業をしたと か、医行為をさせたということが医師法違反に当たるということです。 ○齋藤委員  医師法違反の内容はどういうものですか。 ○事務局  医行為をほかの無資格の方にさせたようなケースについては、医師法違反に問われる ことになります。 ○相川委員  資料の確認です。資料7の処分の流れのスタートのところです。これは、公正に処分 されなければいけないということですけれども、事案の把握のところに、法務省からの 情報提供ということで、罰金刑とか、贈収賄というようなもののときには、どのような 形で法務省はその人が医師であるということを確認しているのでしょうか。  例えば、本人が医師免許を持っていても、文筆業と言ったような場合もあります。罰 を受ける人は、医師であるということを法務省に言わなければいけないのでしょうか。 本人が医師だということをどのように確認しているのでしょうか。つまり、医師であり ながら、法務省が医師と把握していないでほかの職業と把握することはあり得ないでし ょうか。医籍登録が、本籍地、生年月日、氏名ということだけになると、法務省はいろ いろなことを起こした人について、医籍と照合しているわけですか。 ○事務局  質問の趣旨はわかりますけれども、調べた上でご説明したいと思います。 ○寺岡委員  検討項目の処分類型の見直しというのがいちばん最初の課題だと思います。ここで提 示されているのは、医業停止と医師免許取消しの2つしかない。例えば、戒告というの はどうだろうということが説明されているわけです。戒告のほかに、いわゆる懲戒処分 のいろいろな類型の中で、ほかにどのようなことが考えられるのか、ということも教え ていただきたいと思います。 ○事務局  戒告以外の行政処分の類型が考えられるかということですが、ほかの資格の事例を見 ても、戒告というか業務停止と免許取消し以外に、注意みたいなものとして戒告がある わけです。そういうもの以外に、次回資料としてお示ししたいと思いますけれども、諸 外国においてはいくつかの事例があります。  参考資料4の後ろから5枚目で、右肩に参考資料5−1というのは、「米国における 医師に対する処分と再教育について」ということでまとめております。処分内容として は、保護観察や資格制限、あるいは戒告、教育訓練のプログラムの受講というものがあ ります。日本の場合にはどういうものが馴染むのかということは、この場でご議論いた だきたいと考えております。 ○寺岡委員  この議論を進めていく上では、その辺の説明は次回ということですが十分していただ いて私たちが勉強しないと、ザックリと免許停止と業務停止しかない、あとは戒告しか ない、あと類型はどのようなことを考えればいいのだと言われても、なかなか具体的に 思考が進まないということがあろうかと思いますので、その辺もよろしくお願いいたし ます。それから、戒告というものの法的内容はどういうことになるのでしょうか。 ○樋口座長  昔、私が行政法で習ったときには、戒告のほかに訓告というのがありました。訓告の ほうは、間違いかもしれませんが処分には当たらない、普通の注意だと。だから、戒告 になると一応きちんとした処分だということを習いました。宇賀委員から一言お願いし ます。 ○宇賀委員  国家公務員法や地方公務員法でも、免職、停職、減給、戒告というのが正式に懲戒処 分の類型として位置づけられています。ですから、懲戒処分としての戒告というのは、 正式に相手方に対して非難の意味を込めて懲らしめるという懲戒の一類型です。  通常、国でも地方公共団体でも、懲戒処分以外に、内規で訓告や厳重注意を設けてい ますけれども、これは行政処分ではないという位置づけになっています。通常戒告とい うと、行政処分として位置づけられていますので、それを争うときも抗告訴訟の類型で 争っていく。行政不服審査法で、その取消しを求めたり、あるいは行政事件訴訟法で取 消しを求める対象になってきます。  それに対して、内規の訓告や厳重注意というのは、そもそもそういう法的な効果を持 たないので、そうした行政不服審査法や行政事件訴訟法で争うこともできない、という ふうに通常は位置づけられています。 ○寺岡委員  そうしますと、懲らしめる意味での戒告だということになると、戒告の懲らしめる内 容がそれに伴ってくるわけですね。そうすると、どういう懲らしめ方によって、また戒 告の中にもいろいろな戒告があるというように理解できますか。 ○宇賀委員  いま、戒告は行政処分だと申しましたけれども、実は免職、停職、減給という他の懲 戒類型と違って、戒告というのはその処分自身によって何か資格を制限したり、あるい は財産的な不利益を与えたりというものではないのです。ですから、そこで害されるも のは、名誉などの非財産的な法益ということになります。  学説の中には、そもそもそういう非財産的な法益であるから、それを取り消してみて も意味がないのではないかという考え方もないわけではないです。ただ、一般的に他の 法令の場合、戒告は行政処分として位置づけられていますから、取消訴訟で取り消され ると戒告の効果が失われると一般に解されています。それ自身、そこで直接害されるも のというのは、財産的な法益というものではなくて、名誉とか人格的な利益、非財産的 な法益と解されています。 ○寺岡委員  私が申し上げたいのは、仮に戒告という類型を設けたとしても、その戒告に伴ってこ の検討会の趣旨である医師の資質の向上、医療安全というようなことを考えるならば、 どのような戒告にするかということがその次には必ずありますね、ということを申し上 げているのです。 ○樋口座長  寺岡委員の趣旨を敷衍したことになるのかどうかよくわかりませんが、うまく理解し ているかどうかわかりませんが、2つ目の問題の医業停止処分のあり方で再教育問題と いうのがあり、その再教育問題については既に検討会の報告書もあり、一定の方向性が 出ているものだと理解しています。これは、戒告等の処分というのを新しく設ければ、 一定期間の医業停止処分と十分な再教育を併せて課す、というようにここでは書いてあ りますが、戒告の場合についても再教育があり得るかどうかというのが1つあります。  もう1つは、国家公務員として懲戒されれば、それが戒告であっても当然私の履歴に 残るのでしょう。9頁に医籍に係る根拠規定が出ています。何を医籍に掲げるかという と、「免許の取消し又は医業の停止の処分に関する事項」と。もちろん現行法を前提に すると、懲戒処分はこれしかないから、これについて記載しますと書いてあるだけで、 もし戒告処分を今度作ることになれば、こういう所にもきちんと記載しますという効果 もあり得るのかもしれません。 ○事務局  第1点目の戒告に再教育をプラスすることがあり得るのかというお話ですが、そうい うことも念頭に置いてご議論いただければと思っております。それと、戒告を行政処分 にした場合は、もちろん医籍にも載せるということになろうかと思います。 ○早川委員  戒告の効果ですが、例えば国家公務員やかつてのJRなどでは、戒告があると昇進・ 昇給に影響を及ぼすことがあります。直接効果はないのですが、ある意味では何らかの 効果があります。今回も戒告を入れるのであれば、例えば戒告が2回続いたら、柔道の 技ありとか指導と同じように、ポイント制で更に上の懲戒になり得ることもあり得るの ではないかという気はしています。 ○樋口座長  所用で岩渕委員ご退席になりましたが、岩渕委員からは、いろいろな類型を作るのは いい、そういう方向性には賛成だが、それぞれの類型がどのような非行と対応するのか という目安がないと、国民には分かりにくいのではないだろうかというお話があったと 思います。戒告を作ったときにどういう場合に戒告されるのだろうか、今までの処分と は、こういうところが違うというようなことも。実際にそういうものが施行され、実地 で動いてからでないと分からない面もあるとは思うのです。一応、大きな制度として作 る場合は、目安として、それが拘束力を持つかどうかは分からないのですが。典型的に は、こういう場合は戒告にとどめるというか、あるいは、戒告にするというのか、そう いうのもあるべきだと思いますが、その点はどうでしょうか。先ほどの岩渕委員の話に ついては議論がそのままになっていますが。 ○医事課長  私ども、いま医道審でずっと処分しています。先ほど座長が言われたように、いま取 消しと停止しかありません。あと、実は行政処分ではなく、行政指導である戒告をいま やっているところです。医道審の処分の中では、ある意味類型的なものがあります。診 療報酬の不正請求など、わりと型にはまりやすいものと、非常に型にはまりにくいとい うか、新しい形のものが出てきたりします。  あくまでも医道審ですので、通常誰でも起こし得るような、犯罪と申しましょうか、 そういったものと、やはり医師としてのモラルというか、そういうところに非常に大き な影響のあるものがあります。特に医師としてのモラルに非常に多く関わるものと、そ うでないものは、参考資料1にもありますが、そこはきちんと峻別した形で、先ほどの 再教育をミックスすれば、あえて停止にしなくてもいいものもあるのではないかという ことです。そこはまた是非こちらでご議論をいただきたいと思います。  私どもすでに、いまこんな類型がというのを出しておりますが、もう少し具体的なも のを、場合によっては出してご議論をいただければと思っております。 ○相川委員  いまのことに少し関連してよろしいでしょうか。もし処分を受けた場合、将来、医籍 にその処分について記載されるということは、国民はそれを見ることができるかどうか も含めて考えないといけない。この検討会でやろうとしていることは、先ほど局長が言 われたように、医療の安全とか安心、あるいは、国民が、ある医師、その診療機関に安 心してかかれるかが非常に大事です。  そこのところでいま出てきたのは、例えば医業停止で、何人かが受けている「業務上 過失致死で車両」というのがあります。アルコールの影響下でやった場合と、そうでは なく、運転のことで結果的には大変な事故を起こした。そのようなときに、その理由、 懲戒処分の理由まで書くのか。倫理的なことで懲戒処分を受けたのか、そうではなく、 結果的に重大な、例えば自動車事故を起こしてしまったというところが分からないと、 その情報が別に解釈されて、非常に優秀な医師で、医療として安全を尽くしている医師 でも、それがほかの理由、大きな医療事故を起こした人と同じように扱われる。  そうすると、総合的にそれをどのような形で医籍に記載して、それを国民はどこまで アクセスできるかを含めて考えなければいけないのではないかと思っています。 ○樋口座長  医籍の話は後になるわけですが、こうして分けてしまったから自分で自縄自縛になっ ているようなものですが。現行のところで、免許の取消し又は医業の停止の処分に関す る事項が医籍に記載されている場合は、単純に処分の内容というか、その項目だけが記 載されていると理解していいのでしょうか。 ○事務局  現状においては、取消しや医業停止があったということのみが記載されており、理由 は記載されておりません。処分が行われたかどうかについては、こちらからはお答えし ておりません。処分が行われた時点では、その理由と処分の内容は報道機関にお知らせ をしておりますので、それは国民にも十分伝わっているのではないかと思っておりま す。それが3年も4年も経った後に、その人はどうだったのですかと言われたときは、 お答えはしておりません。 ○樋口座長  ほかにはいかがでしょうか。 ○宇賀委員  先ほど岩渕委員が言われた点については、免許取消しにせよ医業停止にせよ行政手続 法でいうと不利益処分になり、これについては行政手続法上、処分基準を事案の性質に 応じて出来る限り具体的に定めるように努め、それを定めたときはそれを公にしておく ように努める。処分基準については、具体的に作成することと、それを公にしておくこ とについて努力義務規定がかかっています。 ○樋口座長  先ほどから医籍に入っていますので、後の調査権限の創設、医籍の問題、再免許に係 る手続の整備、自主返納、国民からの医師資格の確認の方法について、というところも 含めて、全体としてフリーディスカッションを続けたいと思っております。  それで2番目について確認いたします。4頁、我々のアジェンダが書いてある所で、 「長期間の医業停止処分となるような事例については免許取消しとする一方」とありま す。今までのお話では、従来はいちばん長くて5年という停止処分があるということで すが、長期間というのは5年とか4年ということであって、そういうものがあればはっ きり免許取消しにするのがいいのではないかということだと思います。免許取消しに至 らない事例については、一定期間の医業停止処分と十分な再教育を併せて課す。こうい うことがカップリングになっているわけですが、これについてこの検討会の委員の方々 に、ご意見を伺いたいということだと思うのです。  その上での確認ですが、医業停止処分になったときだけ十分な再教育という話ではな く、免許取消しで、もう1回再免許の交付申請があった場合も、一定の場合にはという のか、あるいは必ずなのかというところがよく分からないのですが、これは再教育があ り得るという趣旨ですね。 ○事務局  趣旨は免許取消しの場合も再教育を課し、その上で再免許を付してはどうかというご 議論はありました。再教育検討会では、再免許についての議論は非常に事例が少ない、 また、議論が非常に難しいということで、あまり議論は深まっておりません。むしろ医 業停止処分を受けた方についての、再教育の内容についてまとめていただいたというこ とです。再免許の場合の再教育は、一応義務づけたほうがいいだろうということはある にせよ、その内容とか、どういう枠組みで義務づけたらいいのかについては、あまり議 論は深まっておりませんので、この場でご議論をいただければと考えております。 ○樋口座長  ほかの問題も含めて、ご意見、ご質問をいただきたいと思います。 ○寺岡委員  いまの医業停止期間の問題ですが、医業停止期間と免許取消しの方の再教育を一緒に すると難しいと思いますので、まずは医業停止期間についてお聞きします。  表を見ますと、平成11年から平成17年で5年は5人しかおりません。この5人の方 は、医業停止の後どういう現実になっているのか、参考になる事例があれば教えていた だきたいと思います。実際長期に及んだ場合に非常に問題があるということから今日の 議論があるわけですから。 ○事務局  いまご指摘があったのは資料14頁ですが、最長5年という取扱いは平成10年からやっ ております。表では平成12年度に5年の方が1人います。この方は医業停止処分が明け ているか明けていないかという時期で、どういう状況になっているかは分かりません。 また、それ以前にもそういう事例があるかどうかを確認したいと思います。 ○寺岡委員  資料を示していただければ参考になると思います。 ○事務局  平成12年度の方、いちばん最初に5年の処分になった方はまだ医業に復帰しておりま せん。医業停止処分を受けて医業に復帰をしているかどうか、長期の方かどうかは別に して、医業に復帰している状況については参考資料4、これは再教育の検討会でご議論 をいただいたときに整理したものです。参考資料4の後ろから6枚目、右肩に「参考資 料4−1」があります。「医業停止期間終了後の業務について」ということで、114名 の方が平成14年12月の時点で医業停止が終了しております。そのうちの80人、約7割の 方が病院又は診療所の従事者ということで臨床に復帰しています。医師の場合、2段目 に医業停止期間のクロス集計がありますが、比較的長期の方も病院や診療所に復帰して おります。 ○樋口座長  5年のケースの5人の方は、どういう事由により5年になったのかはすぐわかるので すか。 ○事務局  すぐはちょっと分かりません。 ○樋口座長  先ほど読んだ文章の趣旨は、こういう事例は免許取消しにしようということですよ ね。 ○事務局  それも併せてご議論をいただきたいと思います。こういう長期の方は免許取消しにし てはどうか、というのが検討課題でございます。 ○齋藤委員  それとの関係で現状をお伺いします。免許取消しになった場合の再免許の実状です が、どのぐらい申請があって、どのぐらい認められているのか。あるいは、処分から何 年後ぐらいに認めているのか、もしわかれば教えてください。 ○事務局  免許取消しについては、昭和46年以降、全部で医師が47件、歯科医師で23件ありま す。そのうち再免許は、医師は6件、歯科医師はありません。再免許の申請について は、申請が棄却された件数は15件です。つまり21件の申請があって6件が再免許、15件 が申請棄却となっております。期間はさまざまで、長いものでは10年以上経った後に再 免許を付されているケースもあります。 ○齋藤委員  短い期間、例えば1年、2年で再免許ということはあり得ないのでしょうか。 ○事務局  昭和46年以降では、1年、2年というのはありません。 ○樋口座長  再免許の申請を棄却した例が15件あるということですが、それも医師法の第4条で、 いずれかに該当するものは免許を与えないことがある、という裁量権の行使になるわけ ですね。 ○事務局  そういうことではなく逆です。 ○樋口座長  第7条第3号ですか。 ○事務局  そうです。認められるに至ったときには与えることができるということですので、与 えないことも、もちろんできるということです。 ○樋口座長  なるほど。 ○宇賀委員  再免許は医師法第7条第3号の規定が根拠になっており、行政手続法上は、審査基準 を出来る限り具体的に定めて公にしておくことになっているはずです。これについての 審査基準はあるわけですね。 ○事務局  再免許については、明示された審査基準はありません。免許の行政処分の考え方につ いては文書で公表されておりますが、再免許の事例については、個別に医道審議会でご 議論をいただいているのが現状です。 ○宇賀委員  再免許についても第7条第3号で申請権を与えているということになると、行政手続 法上は、審査基準を厚生労働大臣のほうで具体的に定めるという義務と、それを公にし ておく義務がかかると思います。 ○樋口座長  齋藤委員、お待たせしました。お願いします。 ○齋藤委員  いまの再免許に関しては、今までに自主的に返上したケースはないのですか。 ○事務局  これまではなかったと思います。 ○齋藤委員  今後、あり得るということですか。 ○事務局  あり得るということです。もし返上された場合、行政処分ができなくて、その後に再 免許をもう1回申請した場合に、今度は免許の交付を拒否することが手続上できないの ではないかということで、明確な規定を設けたらどうかという検討課題を挙げているわ けです。 ○樋口座長  ちょっと宇賀委員、助けてください。先ほど伺ったところによると、弁護士その他の ところは自主的に返納しようと思っても、懲戒手続処分が始まったときは凍結して受理 しないということですが、医師については明確な規定がないとそういうように受け取ら ざるを得ないようなものなのですか。 ○宇賀委員  免許を自主的に返納することをどう考えるかということですが、一度与えられた免許 について、本人が免許は要りませんからと言っても、免許を与えた厚生労働大臣が職権 で取り消すと、それを求めると考えるべきではないかと思います。そのときに、そうい う申出があったら直ちにしなければいけないというものでは必ずしもないと思います。  以前よく問題になったのは、公務員が辞表を提出します、そういうときに、辞表が提 出されれば直ちにそれを承認しなければならないかというと、例えば懲戒事由が問題に なっているときは、直ちに承認しないで懲戒の手続をするということが実際に行われて きています。明文の規定がなければ、このように申出があればそれをすぐ職権で取り消 さなければいけないとは考えないが、ただ、明文の規定があったほうが望ましいと思い ますし、当然そうすべきだと思います。 ○齋藤委員  初歩的質問ですが、行政処分について教えてください。行政処分は何らかの身分を持 っている期間、例えば公務員とか医師の免許を持っている期間しか適用できないわけで すね。他の処分の場合には、悪いことをしてから名前を変えても同じ人間だから追及さ れます。ところが行政処分は、同じ人でも免許を返すとか、身分が変われば追及できな い制度なのですか。  例えば公務員を辞めれば行政処分は受けない、医師免許を返せば受けない、ここが素 人には不思議なのです。 ○宇賀委員  公務員の場合でいいますと、懲戒処分は公務員としての身分がある間に行うものです から、一旦公務員としての地位を失うと懲戒処分はできないです。例えば弁護士につい ても、弁護士としての身分を失った後に弁護士として除名処分することはできないわけ です。 ○寺岡委員  でも、懲戒の原因となったことは、その地位にある間に起こっているわけでしょう。 その後に辞めたからといって処分の対象にならないというのは不思議な気もするので す。 ○宇賀委員  公務員が公務員としての身分を有している間に何か非行を行ったと。しかし、その公 務員が公職の候補者として立候補しますと公務員の身分を失いますので、そうすると懲 戒免職処分はできなくなってしまいます。 ○早川委員  あくまでもその身分に対する制裁ですので、身分がなければ駄目です。例えば刑事事 件でも、死んでしまえばそれで終わりというのと同じです。 ○樋口座長  宇賀委員、もう1点。4頁の第3の課題、「行政処分に係る調査権限の創設について 」とあります。今までも医道審議会でいろいろな処分がなされていて、しかし、行政処 分の根拠となる事実関係に係る調査権限を持たせることについてどう考えるかというの ですが、こちらのほうは調査権限がありますよという明文の規定がないと、調査権限は ないと考えるべきものなのでしょうか。 ○宇賀委員  行政調査を大別すると任意調査と強制調査があります。任意調査は何ら強制力はな く、専ら相手方の自主的な協力に基づいて行うものです。これは法律の根拠がなくても できるわけですが、相手側の協力がなければ、いやですと言われればどうしようもない ものです。強制調査は大きく分けると2つあります。1つは間接強制調査で、圧倒的に 多数を占めています。これは調査に従わない場合は罰則の規定があります。いやだと言 えるのですが、いやだと言うと起訴されるかもしれない、罰則が適用されるかもしれな いというのが間接強制調査です。行政調査の圧倒的多数はこの類型です。  非常に例外的なものとしては、間接強制ではなく、まさに物理的な実力を行使して、 相手方がいやだと言っても立ち入って調査することができる。これは例外的なケースと して認められている場合がありますが、多くは間接強制調査です。  通常監督権限を持っていますと、監督権限を発動するためには、そのための情報の収 集が必要です。一般的には間接強制調査の権限が設けられておりますが、それがないと いうのは非常に珍しいと思います。 ○樋口座長  対象になる人に、結局罰則まで適用になるものだから、やはり行政法上も明文の規定 がないと、これはやれないでしょうということですね。 ○宇賀委員  間接強制調査は明文の根拠が当然必要です。 ○見城委員  参考資料4−1、医業停止期間終了後の業務の所です。先ほども問題になっていまし たが、例えば医師で2年以上3年未満、病院の従事者2人、診療所の従事者2人とあり ますが、これは同じ所へ戻っているのでしょうか。また、その下の医師の業務上過失致 死(傷害)/医療の所で、7人が病院の従事者として復帰、5名が診療所の医師として 復帰しています。大変な過失致死をしているわけですが、こういう場合、従来は停止の 間は何もすることができず、それで何らかの伝でもう一度戻るというケースだったので しょうか。つまり、この方はもう期間も終えたし、医師としての信頼もできるから戻す というのは、どなたかが判断して戻っているのでしょうか。それとも長年の人間関係で 戻っているのでしょうか。この辺りは、従来どうなっていたのでしょうか。 ○事務局  この資料にあります、病院の従事者、診療所の従事者が同じ所に戻っているかどうか ということは分かりません。どういうケースが考えられるかは、ある程度想定できま す。同じ所に帰る場合もあるでしょうし、違う医療機関に勤めることもあるでしょう し、自ら診療所を開設するケースも、可能性という意味で、いずれもございます。 ○見城委員  私がなぜこの質問をしたかと言うと、国民にとって復帰されたということの信頼、確 認ができることが大事なので、そこは明解にしていただきたいと思います。従来です と、ある期間停止していたからもう十分とか、その辺が分からないまま、また医師に戻 っているわけです。そういうことの不安、また、信頼回復ができないようなところがあ るものですから、国民にとって分かりやすく、なるほど、復帰されて安心というか、分 かりました、受け入れますと。その辺のところなのです。ここが今までは不明瞭だった というのでしょうか、問題だったと思います。 ○事務局  見城委員のご指摘のようなことがありましたので、再教育の検討会でご議論をいただ いて、従来は、これは現行もそうですが、医業停止処分を受けた方が、その期間が終了 するとそのまま医業に復帰することができたわけですが、それでは復帰する際に本当に 問題がないのかどうかを確認することができないということで、再教育を義務づけては どうかと。再教育を義務づけるだけではなくて、修了の基準を設けて判断してはどう か、というのが検討会の報告書の内容です。義務づけられた後については、そうした確 認を得て医業に復帰をするということができるのではないかと思います。 ○樋口座長  私から医籍について質問いたします。9頁に医籍に係る根拠規定があって、医籍とい うのが、まず、第1なのか、あるいは、それだけなのかもしれませんが、とにかく医師 免許を得たという、つまり、得たという証拠ではなくて、むしろ医籍に登録することに よって医師免許が得られるということだと思います。これはいちばん入口のところで、 それ以上の機能があるのかどうかということですが、まず第1問は、免許の取消し又は 医業の停止の処分に関する事項というのは登録するとあるので、1件の誤りもなく全 部、必ず登録されているものかどうかです。  2つ目は、資料18頁に弁護士会の会員数は2万1,189人と1桁まで分かります。それ 以外に弁護士資格を持っている人はいますが、弁護士としての業を成すためには弁護士 会に登録しないといけないので、その登録数も1桁まで分かります。いま医師の実働人 というか、開業しておられるというか、実際に医業を行っている医師を把握する機能を 医籍に求めるのは間違っていると思います。入口の後、実際に医師が開業しておられる か、あるいは、そのあと亡くなったのかどうか、そういうことまで医籍でフォローでき るものなのかどうか、医籍の中身についてです。  3つ目は、誰が見ることができるのだろうかというと、これは厚生労働省に置いてあ るので厚生労働省の方だけが見ることができて、本人は見ることができるのですか。医 師は、自分で自分の情報がどうなっているかについては見ることができるのか、それ以 外は、全部見ることができないようなものなのかということです。問合せには一定程度 応ずるという話がありましたが、医籍についてまとめて教えていただければ有難いので すが。 ○事務局  第1点目の行政処分に関する事項が、1件の誤りもなく登録されているのかどうかで すが、これは当然、誤りなく登録されているということです。  医師がどういう所で活動しているのか、実働数とかどういう所で働いているかを把握 しているのかという点ですが、これは医師法に規定があり、2年に1回、厚生労働大臣 に、どこで、どういう診療科で働いているのかを届け出なければならないことになって おります。それにより医師数は約26万人と把握しております。もちろん亡くなった場合 は免許証を返納することになっておりますので、亡くなったということで記録されてい るわけです。届出がないケースについては、届け出がなくなったというところで。実働 は、届出がある医師については、基本的に臨床もしくはそれ以外のところで業務に従事 しているということが分かるわけです。  医籍は本人が見ることができるかということですが、情報開示を請求すれば、基本的 に自分の情報については見ることができるのではないかと考えております。 ○樋口座長  ほかの件も含めていかがでしょうか。 ○見城委員  いまあらゆるものがITで情報処理されています。医師の医籍はある番号があって一 瞬のうちに分かるようになっているのでしょうか。亡くなった場合は、ある番号はどん どん消えていくという形ですか。 ○試験免許室長  登録番号、氏名、生年月日がありますので、その事項でアクセスすれば分かることに なっております。先ほどから出ている死亡した人は届け出ることになっておりますが、 実質はなかなか届出はない。医師で言えば26万が従事者としていますが、医籍は相当オ ーバーした数が登録されているのが現状です。 ○相川委員  関連して確認します。私も19万何番という登録番号を持っています。例えば「山田太 郎さんは本当に医師ですか」という問合せがあった場合の答えは、いまは非常に難しい わけです。それで本籍地しか書いてない。現在は、医籍からは本人を特定しにくいで す。  いま日本では医師免許証を診療の場所に掲げることはさせていないのですか。それと も、してはいけないのか、してもいいのか、させるべきなのか。アメリカではいろいろ なライセンスを掲げています。例えばフグを扱う特別な調理師などは掲げなければいけ ないと私は認識しています。そのようなことで、現場で医師が本当の医師かどうかを確 認する方法と、問合せ等で、例えば山田太郎さんという方がいて、その人が医師である かどうかを確認する方法は、具体的にどうなっているのかを教えてください。 ○事務局  第1点目、山田太郎さんという方が医師かどうかということを我々のほうに照会があ ってお答えする場合は、同姓同名のケースがありますので、氏名、医籍の登録番号、生 年月日の3つが合った場合は、その方が医師かどうかについてお答えしています。 ○相川委員  でも、一般の患者さんは登録番号も生年月日も知らないわけで、山田医院の山田太郎 さんが医師かを答えるには限界があるということですね。 ○事務局  それは我々からはお答えしておりません。先ほど説明した資料24頁にありますよう に、院内に掲示をする義務がありますので、それぞれの医療機関で医師である方につい ては名前を確認することができます。現場での確認方法は院内掲示による確認がありま す。ただ、免許証を掲げるかどうかはその医療機関の判断になろうかと思います。 ○相川委員  免許証を掲げることは、いまの広告には規制はされていないのですか。 ○事務局  広告できる対象にはなっておりませんが、院内掲示については特に問題ありません。 ○樋口座長  田原室長からの説明の中で、これは弁護士のところでお話があったと思いますが、医 師の登録、つまり医籍登録の有無については、問合せがあれば知らせるということでし たが、山田太郎という名前で問合せがきたら知らせるということではなく、3点セット が揃ってから知らせるということですか。 ○事務局  そういうことです。山田太郎さんだけではお答えできないということです。山田太 郎、番号、生年月日が分かった場合は、この方は医籍に登録されていますというお答え をしています。現在はそういう取扱いをしているということです。 ○樋口座長  長年の慣行でそうやっているということですね。 ○事務局  プライバシーということもあり、そういう取扱いをしています。最近はいろいろ環境 が変わっておりますので、この場でご議論をいただくということで検討課題にしている わけです。 ○樋口座長  いまのような実務だと、問合せはないでしょうね。問合せをする必要がありませんか らね。 ○事務局  ごく稀にあるということです。 ○樋口座長  ほかにはいかがでしょうか。 ○岩井委員  「行政処分を受けた医師に対する再教育に関する検討会」の報告書では、再免許の際 と医業停止の処分を受けた人に対しては再教育を義務づける、という提案になっている わけですね。 ○事務局  医業停止処分の場合は、医師法を改正して再教育を義務づけるべきだとされておりま す。免許取消しの場合の再教育は、義務づけることが適当ということだけで、手続など 中身までは踏み込んではおりません。 ○岩井委員  行政処分のあり方の見直しの所では、新たに戒告という処分を設けて、再教育という 新しい制度を設けてはどうかという提案になっていると解してよろしいでしょうか。 ○事務局  それで結構です。 ○岩井委員  戒告という新しい処分をつくるとしても、それに再教育を義務づけるという機能をく っ付けることができるのかどうかが、ちょっと問題ではないかと思います。「米国にお ける医師に対する処分と再教育について」の処分の所には、戒告とは別に教育訓練プロ グラムの受講が処分内容になります。ですから、戒告を受けても再教育の訓練を受けよ うとしない場合は、どうすればいいかという問題が起こるのではないでしょうか。 ○樋口座長  いまの質問の中の1つであるアメリカの事例は次回にも出てくると思いますが、ここ で処分の類型がいろいろ書いてありますから、多分、重複して行うのは構わないと思い ますが、戒告だけあって、こちらのプログラムにはいかないのもあり得るのかなと思い ますが、そこまでは分からないですか。 ○事務局  戒告だけで再教育のプログラムが適用されないことは想定しておりません。再教育は 行政処分を受けた方全員、少なくとも倫理研修の部分については全員に義務づけるべき だという考えで報告書はまとまっております。もし戒告を行政処分とするのであれば、 再教育もセットになるのではないかと考えております。  アメリカの事例は参考資料4の後ろから3頁にいくつか載っております。戒告だけで はなく、医業停止と保護観察などいくつかの行政処分を組み合わせてやっておりますの で、必ずしも1つだけということではないのではないか。この場でそういう組み合わせ についてもご議論をいただければ、それに沿って我々は制度設計をしていきたいと思っ ております。 ○医事課長  再教育についても、一応医師法を改正して条文に書くことになりますので、戒告と再 教育を併せてやることは、条文上書けば私ども可能だろうと思っております。  あと、戒告を受けた方で再教育を受けなかった場合のご質問については、先ほども申 し上げましたが、医籍には再教育の受講歴を書く必要があるのではないかと思っており ます。再教育を受けなかった人は、それが書かれない形になりますので、処分は受けた と書いてあるが、そこは書いてない形になるという効果があろうかと思っております。 ○見城委員  再教育を受けないという人は、その後はどうなるのですか。どのぐらいの拘束力があ るのですか。処分を受けて、でも再教育は受けないと言ったら、その医師はその後はど うなるのでしょうか。 ○医事課長  基本的には医業を復帰するための条件として再教育を付けます。ただ、戒告の場合は 基本的に医業を継続しておられますので、その場合、私どもとしては受講歴が医籍に載 らないという効果があるので、そこは抑止力になると思っております。そこで更に何ら かのものが必要かどうかについては、またご議論いただければと思います。 ○見城委員  情報は個人情報で守られますから簡単にチェックできませんし、そうすると再教育プ ログラムを受けたかどうかというのは、国民が知るのは難しいですね。 ○医事課長  その辺りも含めて、どの部分をどうやれば誰が知ることができるのかについても、併 せてご議論いただければと思います。 ○樋口座長  これは「その他」事項になるかもしれませんが、また、ここまで大きな話をこの検討 会でできるかどうか分からないのですが、私のほうは法学部から出てきているものだか ら、どうしても弁護士との対比を考えてみたいと思っているのです。18頁に弁護士につ いての話があって、そこに平成16年懲戒件数49件とあります。先ほどの説明だと、医師 については過去7年間ぐらいで平均して37件です。ただ弁護士会の会員数は2万人で、 一方医師は26万人です。医師は懲戒の事例数が非常に少ない。また、医道審議会を通し て実際に処分される例は免許と医業停止処分と、非常に厳しい処分ですので、そういう こともあるのかなと思うのです。  もう1つは、弁護士会のほうは2万人を単位弁護士会に分けて懲戒手続を行っていま す。47都道府県にそれぞれ別々に弁護士会があって、そこで懲戒手続を行っているわけ ですから、非常に小さな単位で懲戒手続を行っている。日本の場合は医道審議会という 大きな審議会があって、そこを通して26万人を把握して懲戒処分をしようというのは、 大変なのではないかという気がするのです。今までのように極端な事例、刑事処分を受 けてというような事例だけを扱うのであれば、件数としてはそんなに大きくはないので という話ですが、戒告の話になると、戒告でどこまで拾ってくるのかという話になるの かもしれません。件数が多くなるのは誰にとっても望まないことですが、そのようなと きに26万人をモニタリングするようなことは果たしてできるのかどうか。  この再教育の検討会でも、国の役割についてというところで、やはり国が医師に免許 を与えているわけですから、当然免許制度のところで責任を持っているから懲戒のとこ ろも責任を持つのだというのは、1つの筋として非常に分かりやすいことではありま す。一方弁護士のほうを見ると、弁護士の資格も国家資格です。弁護士会という所で、 しかも単位弁護士会で懲戒制度を行っています。弁護士のほうの懲戒制度が本当にうま くいっているのかどうかも、これもまた1つの問題です。26万人を全部、1つの所で把 握してということが今後とも、フィージビリティとしてうまくいくのかどうか、また、 制度としてこれしかないのかどうか。  最近の流行言葉は、本当に国がやらなければならないのか、これが大きな問題になっ ていて、医師は国家資格の代表ですから、当然やるべきことだと私も一方では思い、し かし、他の機関を通して、きちんと国も関与してということもあり得るのかもしれない ということを考えるのです。これでどんどん制度を広げていくのは、大勢として大きな 流れとしては分かるような気がしますが、それを実際に制度化していく中で、いまと同 じ、国が全部責任を持ってやっていく、やっていければいいとは本当は思うのですが、 どうなのだろうか。私はぼんやりしたことしか考えていないので、委員の方々から、そ うではないよとかいろいろなことを、次回でも結構ですので、もしご意見があればご示 唆をいただきたいと思います。 ○齋藤委員  いまと同じことですが、弁護士資格のほうが処分権者が弁護士会ということで、あと は医師も公認会計士もみんな国です。ですから、むしろ例外的なんだけれども職能団体 としてセルフコントロールしているという意味では、今後の方向性を示していると思う のです。 ○早川委員  弁護士会との比較でもう1つだけ補足しますと、弁護士会の場合は市民からの一般的 な懲戒請求が制度としてあります。したがって、それも視野に入れて考えていただけれ ばと思います。 ○寺岡委員  いまのことに関してですが、座長が言われたのは、1カ所だけのモニタリングで可能 かどうかというお話だったと思うのです。実は、私は日本医師会の代表で出ております が、日本医師会という職能団体は組織率が100%ではない。要するに強制加入ではない。 弁護士の場合とは違うわけです。医師会が全部把握しているのであれば、医師会でいま 言われるようなことをやることは可能になります。  とは言え、日本医師会としていまどうしているかを申し上げますと、医師会としての 自浄作用を発揮するために、都道府県に自浄作用活性化の組織を作り、そこで不正な事 例を把握する窓口を設けることがいま進んでいます。そういうところから問題把握が始 まって、それを郡市区医師会、都道府県医師会、そして日本医師会と上げて、最後は裁 定委員会で懲戒処分をするという形ができております。ただし、最初に申し上げたよう に100%強制加入組織ではありませんので、国と同じような強制力を持った処分にはなっ ていないところがあります。一応、状況だけ概説しておきます。 ○見城委員  後ほど資料をいただき参考にさせていただくのがいちばんいいと思います。例えば税 理士の場合は、区役所なら区役所に電話をしますと、区の納税課で区民の声を聞いて、 何か不都合なことがあれば区の税理士会に懲罰委員会があるので、そこへ訴えてくださ いというように、声が上がりやすいようになっております。ですから、公認会計士はど うなのかとか、資料として参考に見せていただければ有難いと思います。 ○樋口座長  いまのご意見は、先ほど早川委員が弁護士については一般からの懲戒請求というのが 窓口としてすでに備わっているが、ほかの所も含めてどうかということですね。これは 次回に資料として、あるいは、ご説明いただけれは有難いと思います。  時間が過ぎてしまいましたが、ほかにどなたかご意見はありますでしょうか。それで は第1回はここまでにいたしたいと思います。次回について事務局から説明を伺いたい と思います。 ○事務局  次回の開催は、9月16日(金)10時から12時までで開催したいと考えております。場 所は追ってお知らせいたします。本日の議論を踏まえ、事務局において追加の資料等を 用意したいと考えています。また、資料6頁のスケジュールの所にありましたように、 次回はフリーディスカッションを考えております。 ○樋口座長  いまの点について何かご意見はありませんか。それでは長時間にわたって本当にお疲 れさまでした。本日はどうもありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医政局医事課  電話 03−5253−1111(内線2568)