05/08/10 第18回社会保障審議会医療保険部会議事録                    平成17年8月10日(水)13:00〜15:00                    於:厚生労働省17階専用第18,19,20会議室           社会保障審議会医療保険部会 第18回議事録  星野部会長  定刻となりましたので、これより第18回医療保険部会を開催いたします。  委員の皆様には、本日は御多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げます。  まず、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、浅野委員、久保田 委員、西村委員より欠席の連絡をいただいております。また、松原委員、山本委員、岩 村委員が若干遅れているようでございます。  続きまして、欠席委員の代わりに出席される方についてお諮りいたします。浅野委員 の代わりの関口参考人(全国知事会調査第二部長)、久保田委員の代わりの花井参考人 (日本労働組合総連合会生活福祉局次長)の御出席につき、御承認いただければと思い ますが、いかがでございましょうか。  全員  異議なし。  星野部会長  ありがとうございます。  本日は、省内用務のため、水田保険局長が途中退席する予定となっておりますので、 御承知置きいただきたいと思います。  それでは本題に移りたいと存じます。  本日は、まずこれまで御審議いただいている高齢者医療制度等につきまして、岡谷委 員から資料を提出いただいておりますので、御説明いただきたいと思います。よろしく お願いいたします。  岡谷委員  ありがとうございます。本日は、医療保険制度の改革に対する基本的な考え方につき まして、また、現在議論されております新たな高齢者医療制度の創設につきまして、日 本看護協会の意見を述べさせていただきたいと思います。  医療保険制度の改革に対する基本的な考え方についてでございますが、3点意見を述 べさせていただきます。まず1つは、限りある医療資源を効率的、公正に分配するとい う視点でこの医療保険制度の改革を進めていくということでございます。  医療保険財政につきましては、経済変動や人口構造の変化の影響を回避しながら、必 要な医療やケアには確実に資源を投入することができ、かつ安定した制度の運営が可能 となる仕組みを構築する必要があります。また、健康という、生きていく上で最も基本 的で重要な価値が軽んじられることのないような政策が必要であり、医療費を抑制する ことだけを前提とした議論では不十分であると考えます。医療費の単なる抑制でなく、 限りある医療資源を効率的、公正に分配するための無駄の排除、医療費の適正化が必要 であると考えます。そのために、若年層からの生活習慣病対策や疾病予防等の健康増進 施策の充実を図ること、また医療機関の機能分化を進めて安全で質の高い急性期医療は 入院医療で、回復期や慢性期等の継続的な療養は訪問看護を中心とする在宅医療や介護 施設で行うという体制を整備することが、医療資源を効率的、適正に利用することにな ると考えます。  2点目は、医療費の適正化ということでは、「最短の入院期間で患者を速やかに回復 させること、患者の選択が尊重され患者が望む場所で必要な医療やケアが継続されるこ と」を最重視すべきであると考えます。  患者の回復を促進し、入院期間を短縮させて患者が本来の生活をできるだけ速やかに 取り戻すためには、看護師の人員配置基準を引き上げ、看護労働力を強化することが最 も有効であると考えております。看護師の人員配置が手厚く、看護師一人当たりの患者 数が少ないと、患者の病院内での死亡のリスクが減る、あるいは急変時の救命率が高く なる、術後の合併症の発生率が低い、当然在院日数も短縮できるということが研究によ って明らかになっております。  在院日数の短縮に伴いまして、退院後に継続して医療やケアが必要な人達が現在確実 に増えていますので、在宅医療を整備することが急務であると考えます。高齢化社会と いうのは一方で多死時代の到来でもあり、癌末期の患者だけではなく、高齢者の看取り をどうするかということが今後の大きな課題になると思います。在宅医療を充実させる ことは、医療費の適正化に貢献するだけではなく、在宅死を希望する国民のニーズに応 えることにもなります。在宅医療の整備に当たりましては、現在の介護保険制度と医療 保険制度の統合化を図り、どの世代の人にとっても、どんな病気や障害であっても必要 なサービスが十分に受けられる仕組みにする必要があると考えます。  3点目は、費用対効果という観点から医療制度を見直すことも重要だと思っておりま す。  現在のような高度で複雑な医療におきましては、安全で質の高い医療サービスを効率 的に提供するためには、多種の専門職によるチーム医療が非常に重要です。医療の効率 と患者のアウトカムを考えた時に、医師に集中しすぎている権限や業務を他の医療従事 者に委譲するという仕組みを整備することも今後は検討していくべきではないかと考え ます。  2番目に、新たな高齢者医療制度の創設でございます。現行の老人保健制度、退職者 医療制度を廃止して、新たな高齢者医療制度を創設することには賛成です。しかしなが ら75歳で年齢を区切り、老化による身体・精神機能の低下から医療に係る頻度や重症化 のリスクが高くなる後期高齢者のみを被保険者とする保険制度が、安定的かつ持続的な 制度になるかという点では疑問が残ります。すべての高齢者が弱者とは言えません、世 代間の負担と給付の公平性を確保するために、低所得者や生活困窮者に十分な配慮をし た上で、高齢者の収入に応じた負担を求めることが妥当であると考えます。医療費が多 く掛かる後期高齢者が被保険者である以上、国保や被用者保険からの支援金がいずれは 増大する可能性があり、保険料収入を基本としながらも消費税等による公費負担分を増 やすなどして収支均衡を公費で調整するといった仕組みも必要ではないかと考えており ます。  2点目に、高齢者医療制度では保険者の機能強化が重要だということで、このことに 関しましては多くの議論があります。今、議論されていることに対して日本看護協会と しても保険者の機能強化が重要だと思います。  ただ、医療費抑制に効果のある病気の予防とか健康づくりというのは、若い時から行 うことに意味がございますので、現行の若年者が加入している被用者保険の保険者が高 齢者医療制度に何らかの形で関与して、互いに連携して健康づくり、介護予防、重症化 予防等が取り組めるような仕組みが必要ではないかと思います。  3点目ですが、高齢者の医療制度は限りある医療資源の効率的な利用という点から、 医療へのアクセスや個別的な健康問題への対応に関しまして、従来とは異なる仕組みが 必要であると考えます。具体的には、高齢者の日常生活圏内で、身近にいて、健康問題 や受診等について第一の相談窓口になり、そこから必要な保険サービス、医療、看護、 介護等が受けられるように医療機関や訪問看護ステーション、保健所や保険センター、 介護施設等と連携を取り、サービスを調整する役割を担う医療関係者が必要ではないか と思います。特に、後期高齢者は同じ病気でもその進行や症状の現れ方、治療への反応 等様々な点で若年者とは違うという場合が多いと思います。また高齢者程個別性も高 く、価値観や健康観なども多種多様であると思われますので、その人に合った治療の方 法や生活の仕方を患者にも家族にも助言できる医療関係者が存在し、気軽に利用できる 仕組みを整備する必要があると考えます。これは、フリーアクセスを制限するものでは なく、むしろ高齢者の健康意識の改善や有効かつ効率的な受診の促進、日常的な疾病・ 生活管理による過剰な医療の抑制、家族の安心と負担の軽減等をもたらすことができる 仕組みとして構築するものであると考えております。  以上、日本看護協会の意見を簡単ではございますが、述べさせていただきました。  星野部会長  ありがとうございました。それでは、御意見、御質問等ございましたらお願いいたし ます。  大内委員  看護協会から御意見をいただきましたが、私の専門の立場から考えましても非常に適 切な御意見だと思います。ポイントの一つは、病気になったからあるいは要介護状態に なったから必要な医療やケアをする。これは当然でありますが、やはり若い頃からの生 活習慣病の対策、疾病予防、正におっしゃるとおりだと思います。このことにつきまし て、厚労省としてどのように具体的に進めておられるのか、お聞かせいただきたいと思 います。  間杉課長  前回の当部会で御紹介を申し上げましたが、一つには生活習慣病、今御指摘ありまし たように進まないようにするということで、具体的にその健康増進計画という計画がご ざいます。その中で県ごとの取組みの目標値を作りながら、例えば健診率を上げる。あ るいは健診後の事後指導の率を上げるといったこと、できるだけ手前で止めようという 試みを今進めております。  もう一つ、やはり医療の提供体制が非常に大きな問題でございます。これも手前のと ころでできるだけ止まるということを前提に置いて、一旦病気になった方々を地域の中 でどうやって具体的に急性期から回復期を経て在宅の方に帰っていっていただくかとい う形で、ずいぶん医療計画そのものも思い切った見直しをするということで関係審議会 で御議論が行われているところでございます。また、改めて機会をいただきましてその 状況を御説明させていただきたいと思います。  大内委員  もう1点よろしいですか。今看護協会の方から75歳で年齢を切るということで、若干 の懸念が表明されています。確かに75歳を越えたから、あるいは75 歳直前がどうかと いったことで、継続性がありますので区切るのは難しい面があります。前回からも65歳 以上を対象とする、あるいは75歳以上を対象とするといった御意見が出ております。医 療保険制度を作るという行政の問題、あるいはテクニカルな問題等があると思います が、専門の立場から申し上げますと、65歳以上あるいは75歳以上を対象としたいずれの 保険も、75歳以上という後期高齢者では例えば要介護状態の方が非常に増えてくる、介 護、ケアが必要な老年症候群が急増してくるということは、これも本部会の最初の方で お示ししました。したがいまして75歳以上ということの保険の中身を、前期高齢者と後 期高齢者で相当違った内容にしなければいけないだろうと考えています。65歳以上にす るか、75歳以上にするかは色々な観点があると思いますが、75歳以上の後期高齢者では かなり中身を考えて作らなければいけないと思います。そこが一番ポイントではなかろ うかと思っています。  以前にも75歳以上でポンと区切るのかということの懸念が表明されていましたが、極 端な話、65歳にならなくても老年疾患に掛かられる方がおられるわけです。そういった 方をこういった保険でケアできるような仕組みのオプションも必要ではないかと思いま すが、基本的には75歳以上の後期高齢者というのは、相当中身を今までの保険のインセ ンティブと違えて考えないといけないのではないかと考えています。  岩村委員  今75歳といった話が出ているので、私が気になっていることを申し上げたいと思いま す。  今回のこの議論の中では、75歳を後期高齢者にするのか、年齢はどうするかというこ とで独立保険制度を作ろうという話があります。疾病の状況の違いを考えると、確かに 理由がありそうですが、他方でぜひ事務局で御検討をお願いしたいのは、年齢で区切る ことによって、その年齢以上の人と年齢以下の人のところで医療保険における地位に大 きな差が、今回の構想ですと、出てくる可能性があります。それが年齢で差を設けると いうことについて、平等原則との関係で合理的に説明できるのかということを少し法的 に検討していただきたいという気がいたします。  星野部会長  ありがとうございました。他にございませんか。それでは、続きまして本日は、前回 の部会におきまして、秋の厚生労働省試案の作成に向けて精力的に議論の整理を行うべ きとの御指摘がありました。  これまで各委員から広範な御意見を頂戴していますが、今後の議論を整理していくた め、8月中に2回、当部会を開催し、論点の整理に入っていきたいと考えております。 それでは、事務局から説明願います。  間杉課長  総務課長でございます。資料を2つ用意させていただいております。資料1と横長の 参考です。これまで、特に2巡目に各委員の先生からいただきました御意見、それから 団体としての御意見、御表明を頂戴しておりますので、これを忠実に項目ごとに整理を させていただいたものでございます。誤りがないか等御指摘いただければと思います。  これを基にいたしまして、私ども部会長と御相談をし、作らせていただきましたのが 資料1、当部会における議論の整理(案)ということでございます。本日、御意見をいた だき、次回にも整理をさせていただくということで、今回お示しさせていただいたもの でございます。これまでの御議論の中でできるだけ大きな方向性について、大体同じよ うな方向性を御示唆されているのではないかという点につきましては、思い切って書き 込んでおります。それからまだ制度論のところでさまざまに御意見があるというところ も、率直にそのまま書かせていただいているというものでございます。簡単に御説明さ せていただきます。  基本的な考え方でございますが、前回も国民の健康・長寿という価値の実現をすると いうことを当部会としては基本に据えていくべきだという大きな御議論がございました ので、そこから始めさせていただいてございます。それから「具体的には」ということ で、医療制度改革の具体的な考え方ということで3点挙げさせていただいております。  1点目は安定的で持続可能な制度を目指すということ。それからもう一つは2つ目の ○に整理してありますが、給付と負担の関係が透明でわかりやすい。医療費適正化の取 組みあるいは高齢者医療制度の運営に関して、関係者が関与できるなど、関係者の負担 への理解や納得が得られる制度とする。ということです。  大きな2つ目の括りで、国民の生活の質の向上を図ることを通じて医療費の適正化を 推進するということで、只今も御議論がございましたように、若年期からの生活習慣病 の発症抑制、それから急性期から回復期、療養期を経て在宅という患者の流れを促進す るという点。在宅の受け皿の問題。この3点につきまして触れさせていただいておりま す。  2ページ、3つ目の大括りな考え方でございます。都道府県単位を軸とした制度運営 ということで、保険財政の運営を適正な規模で行うということ。それから保険料の水準 をそれぞれの地域の医療費水準に見合ったものとするということを基本として、都道府 県単位での統合・再編を推進するということ。その際に、都道府県を軸として、地域の 関係者が連携して様々な取組みが進められるような体制を作りあげていくということ。  各論のIIが、保険者の再編・統合でございます。若干繰り返しになりますが、保険者 の財政基盤の安定。保険者としての機能を発揮しやすくするため、都道府県単位を軸と した再編・統合を推進をすべきだということ。2つ目の○で、国を保険者とした全ての 国民を対象とする医療保険制度への一本化を実現すべきという御意見もございました。  各論の国民健康保険でございますが、市町村国保につきましては、都道府県と市町村 が連携しながら広域連合等の活用により都道府県単位での再編・統合を進めるべきであ るという基本的な考え方でございます。その際、一つには段階的に二次医療圏単位での 再編・統合を行うということについては一つの選択肢ではあるが、現在の市町村合併の 範囲と二次医療圏の範囲が必ずしも一致していないということから、必ずしも有効な方 法とはなりえないのではないかという御意見がございました。  それから国保の保険者は、保険、介護、福祉事業の中心的な実施主体であるというこ とで、保険者としての実績のある市町村が引続き担い、県は技術的な助言や調整等必要 な支援を行う、国は財政支援を行う。そういった三者の役割分担に関しての御意見もご ざいました。  それから市町村国保の保険運営は低所得者等を多く抱え非常に厳しいということで、 その安定を図るということが、国民皆保険制度を守るという観点から極めて重要であ る。これは概ね共通の御認識ではなかったかと思います。  3ページ、国保と被用者保険との間の財政調整ということで、これも大きな御議論が あったわけでございます。加入者の年齢構成、所得水準の差、厳しい雇用情勢や非正規 職員の増加といった雇用形態の変化に伴う若年の国保被保険者の増加等を踏まえた上で 引続き検討が必要であるという書き方にさせていただいています。  それから国保組合につきましても、職域保険と地域保険という観点から、その在り方 について検討を行い、国庫助成の在り方についても見直しを検討すべきであるという意 見がございました。  2番目に政管健保でございます。一つは国とは切り離された全国単位の公法人におい て運営するということについて、さらに体的な検討が必要であるということでございま す。その際、財政運営は基本的に都道府県を単位としたものとする。都道府県別の年齢 構成あるいは所得といった点については、調整を行った上で、地域の医療費水準に見合 った保険料水準とすべきという御意見が大勢であった一方、公的医療保険という性格か ら、全国一律の料率にすべきという御意見もございました。  適応・徴収については、効率性の観点から年金と一括実施。なお書きで、中央と都道 府県ごとに評議会を設置し、保険料率の決定等に被保険者等の意見を反映させる仕組み としてはどうかという御意見もございました。  3番目に健保組合でございます。一つの再編・統合の選択肢といたしまして、企業・ 業種を超えて健保組合同士が合併して形成する地域型の健保組合の設立を認めるべきで あるという御意見。共済組合についても御意見をいただきました。短期給付に加えて長 期給付も行っており、長期給付の在り方の検討も踏まえて、保険者としての運営の在り 方を検討する必要があるということでございます。  4ページ目からが、IIIの新たな高齢者医療制度の創設でございます。基本的な方向 として、4点あります。社会保険方式の維持、老健制度と退職者医療制度は廃止をす る、その上で制度運営の責任を有する主体の明確化を図る。いずれの制度でありまして も、増大する高齢者の医療費の適正化が必要。高齢者の生活の質を重視した医療サービ スの提供が必要ということでございます。  具体論としまして、後期高齢者医療制度といった括りをしてございます。基本的な枠 組みでございます。現行の老健制度を廃止をし、高齢者の保険料、若年の国保、被用者 保険からの支援並びに公費により賄う新たな制度を創設するという御意見が大勢であっ た。ただし、被用者保険の加入期間が長期にわたる退職者を被用者保険全体で支える新 たな制度を創設すべきとの御意見もあったということです。  被保険者でございますが、ここも冒頭の御意見、御議論がございましたように、75歳 以上の後期高齢者とすべきとの意見。それから65歳で区切るべきという御意見がござい ます。前期高齢者の就業・所得の状況あるいは心身の状況などは、むしろ現役世代に近 い側面があるのではないかということも踏まえて、引続き検討が必要であるというご意 見がございます。  それから高齢者の保険料と若年からの支援の割合について、これは明確なルールを決 定すべきである。高齢者については、現役世代との均衡を考慮した適切な保険料負担を 求める。同時に低所得者についても配慮すべきといった御意見がありました。  5ページ、明確なルールの具体論といたしまして、老若の人数比で按分して負担すべ きだという御意見がございました。医療費の概ね10%とすべきではないかという御意見 もございました。若人からの支援につきまして、一般の保険料とは別建てすべきだとい うことにつきましては、概ね意見の一致があったのではないかということです。  公費負担でございますが、少なくとも現行の老健制度における公費負担5割を維持す べきであるという御意見でございます。  保険者につきましても、様々な御議論がございます。一つは地域保険とし、市町村を ベースとして広域連合の活用を視野に入れるべきという御意見。都道府県当面は国とす べきとの御意見。国だという御意見。一定の地域を対象とした行政から独立した公法人 とすべきだとの御意見がございました。この場合、いかなる保険者とする場合でありま しても財政安定化の仕組みなど、保険者のリスクを可能な限り軽減する対策を講ずるこ とが必要である。あるいは一環といたしまして、保険料の年金天引きという仕組みも検 討すべきであるという御意見でございます。  続きまして3.前期高齢者の医療制度でございます。基本的な枠組みとして、今の退 職者医療制度を廃止すべきである。ただし、廃止後の新たな制度をどうするかというこ とにつきましては様々な御意見が分かれております。被用者保険または国保に加入しな がら相互の間で財政調整すべきだという御意見。その場合に前期高齢者に限らず、さら に下の年齢層、55歳まで財政調整の範囲を拡大すべきだという御意見。それから前期高 齢者ということではなく、独立保険の対象とすべき年齢なのだという御意見。先程も御 紹介申し上げましたように、退職者を被用者保険全体で支えるような新たな制度を創設 すべきだという御意見があるということでございます。  前期高齢者の被扶養者の保険料負担につきましても御議論いただきました。高齢者に は定型的な年金収入があるということで、扶養・被扶養の区別なく、むしろ保険料を負 担すべきだという御意見。医療保険だけでこの問題を考えるべきではなく、社会保障全 体の改革の中で検討すべきであるという御意見がございました。  6ページ、前期高齢者の公費負担でございます。高齢者医療制度の被保険者範囲をど うするかという問題等と合わせ引続き議論すべきであるということ。それから65歳以上 という御主張の方から、公費負担を5割だという御意見もございます。  高齢者の患者負担でございます。高齢者についても現役とのバランスを考慮して応分 の負担を求めるべきだという御意見がございます。一方で、高齢者の患者負担の増大に ついては慎重であるべきだという御意見もございました。自己負担が高額となる場合の 限度額、高額医療費の在り方、さらには世帯の合算制度の創設についてどうするかとい うことを検討する必要があるということでございます。  その他といたしまして、若年の保険者と関係者がその上に参画をできる仕組み、保険 者の適正化努力を促すような仕組みについても検討が必要だということでございます。  IVの医療費の適正化でございます。1番目に中長期の医療費適正化効果を目指す方策 ということで前回も御議論をいただきました。生活習慣病対策の推進、急性期から在宅 への円滑な流れということについて書かせていただいております。併せて、前回、終末 期医療、高額医療の在り方についての検討が必要であるということでございます。  7ページ、その医療費適正化の役割分担でございます。都道府県が積極的な役割を担 うべきという御意見。都道府県は医療費の適正化を指導する立場になく、むしろ国が方 針を示し、市町村が地域の実績に合わせた施策を進めるべきという御意見がございまし た。  2番目が保険給付の内容及び範囲の見直しでございます。最初の点が、食費・居住費 でございます。これは介護保険で食費・居住費を入所者負担としたことを踏まえて医療 保険においても患者負担とすべきだという御意見がございました。一方で、医療と介護 とは同様に考えることはできず、引続き療養病床を含めて医療保険で給付することが必 要だという御意見がございました。  高額療養費につきましても、自己負担限度額を引き上げるべきであるという御意見。 それからいわば実質的な患者負担の上限があるので、引き上げるべきではないという御 意見。ということで、引続き検討が必要ということでございます。制度の簡素化あるい は申請者の利便性の確保について検討すべきだという御意見がございました。  出産育児一時金でございます。引き上げるべきだという御意見。額を少々増やしても 少子化対策にならないのではないかという御意見。非常に厳しい現下の医療保険財政で 引き上げる財源をどうするのかという御意見がございました。  8ページ、傷病手当金・出産手当金・埋葬料でございます。傷手、出手については、 現行の給付水準を維持すべきという御意見。給付水準や要件について見直しを検討すべ きだという両様の御意見がございました。埋葬料につきましても、保険給付としての必 要性は薄くなっているのではないかという御意見もございます。  薬剤給付でございます。これも前回御議論いただきましたとおりでございますが、後 発医薬品の使用促進、後発医薬品が出た先発医薬品の薬価の適正化、逆に画期的新薬の 評価といった3点を論点として挙げさせていただいております。  3のその他としまして、IT化の推進、それから前回ピュアレビューというお話もござ いましたが、高額医療の医学的妥当性についての検証等についても引続き検討すべきで ある。  Vの今後の進め方としまして、最後に、当審議会としても、今後、厚生労働省が秋にも 提示する予定の医療制度改革の試案を受けて、引続き、精力的な議論を行っていくとい うことです。あくまでもこれは事務局原案でございますので、御意見を賜ればと思いま す。以上でございます。  星野部会長  ありがとうございました。それでは早速ですが、御意見、御質問等お願いします。  対馬委員  各論につきましては別途ということですが、全体観として3つ程伺いたいことがござ います。一つは、この資料の意味合いについてです。一番上に8月○日と書いていると ころをみますと、おそらく次回、24日でしょうか念頭に置いて、議論の整理をしたいと いうことだと思います。そうであるとすれば第1巡目の議論は相当議論して、昨年7月 にまとめていただいたわけですから、それも含めての議論の整理ということになると思 いますが、どうも(注)を見ますと、中身も全体もそうですが第2巡目以降の議論だけの 整理になってはしないかということです。私ども、第1巡目の議論で申し上げて第2巡 目の議論で申し上げたことがありますが、第1巡目で整理された問題については第2巡 目は同じことを言っても仕方ないということもありますので、第1巡、第2巡目全体を 含めて整理すべきではないかと思うのですがいかがなものでしょうか。  もう一つは、全体のスケジュール観です。次回また御議論させていただいて、それか ら試案を秋口にということになっていくのかと思うのですが、この試案の中には当然第 1巡目、第2巡目の議論の成果といいますか、そういったことを含めてお出しいただけ るのだと思うのですが、そこの確認です。  それから解散総選挙といった新たな情勢を踏まえて、全体的な、今申し上げた例えば 試案は秋口と聞きましたが、全体のスケジュール、シナリオこの辺りがどうなるのか、 その辺りについてもお願いします。  間杉課長  3点御質問いただきましたが、最後の点からお答えを申し上げたいと思います。全体 のスケジュールでございますが、率直に申し上げまして、これまで秋口に厚生労働省試 案を御提示申し上げたいと申し上げて参りました。現時点で、その考え方に変わりはご ざいません。大臣からも粛々と進めるようにという御指示を本日いただいております。 したがいまして、当審議会といたしましては8月中に2回こういった形での論点整理を 改めてお願いを申し上げたいと思っております。また、選挙後にも私どもとしては準備 作業を急ぎ進めまして、与党と改めて十分相談をしたいと考えております。  それから1点目の8月○日とございますのは、今御指摘がございましたように、8月 24日に最終的な取りまとめをいただくために、今日は中間的な取りまとめをいただいて はどうかということで、日付を入れずにおいたという趣旨のものでございます。御質問 の1点目、2点目は共通するお話かと思います。  当然、第1巡目の時にも御議論の取りまとめ、その際は事務局(案)という形でござい ました。私ども、そちらも下敷きにした上でこちらを用意したつもりでございます。比 較して御覧いただきますと、基本的な考え方についてかなり踏み込んで書かせていただ いたということ。それから個別の制度論につきましても、1巡目の段階でほとんどござ いませんでしたが、今回はかなりそれぞれのお立場の違いは違いとして書かせていただ いているということで、私どもとしては十分それを踏まえてやらせていただいたつもり でございます。改めてまた、この辺をという御指摘がございましたら、当然のことなが ら入れさせていただきたいと考えております。  星野部会長  只今、対馬委員から全体的なことから議論を始めていただきましたので、これと関連 しまして全体的なことで何かございましたらどうぞ。  花井参考人  今の対馬委員の御質問とも関連します。本日のこの表題が議論の整理(案)となってお ります。これは最終的に、よく部会のまとめで行われます例えば「取りまとめ」とか 「最終まとめ」といった形で、昨年の事務局(案)等も含めてそういう形になるのか御確 認をお願いしたいと思います。  間杉課長  これはあくまでもこれからの進め方で、委員の皆様方と御相談をしながらという話に なります。私どもとしましては、御議論いただいて8月中にある程度「こういうような ところまでであれば」ということでおまとめをいただけるのであれば、「中間まとめ」 ということでどうかと考えております。  また、私ども試案を出しまして、引続き当審議会でも御議論お願いしたいと思ってお ります。最終的にどういう形で当審議会として取扱うかということにつきましても、改 めて御相談申し上げたいと思っております。  星野部会長  どなたからでも各論についてでも結構でございます。議論を広げたいと思います。  齊藤委員  各論のところで2点申し上げたいと思います。3ページの国民健康保険の項目で、一 番上の○です。「国保と被用者保険との間での財政調整」云々と書いてございます。我 々、日本経団連としては、従来より医療保険者それぞれが自主性、自律性を損なうよう な財政調整には反対であることから、改めてそのことを申し上げておきたいと思いま す。また、保険者として、まず保険者機能を十分発揮すること、例えば保険料の収納率 を高めることなどが求められるのではないかと思っております。ここの財政調整ありき という考え方はどうかと思っております。整理の仕方としましては、反対する意見があ ったということを書き足していただきたいとかんがえております。  2点目が、6ページから書いてあります医療費の適正化でございます。1ページの基 本的考え方では、簡単に「給付と負担の関係が透明でわかりやすく」と述べています が、医療費の適正化の項目でもう少し、例えば「被保険者についてみれば、医療機関の 発行する領収書にはその内訳を明記してチェックができるようにする」、また「保険者 についてみれば、レセプトの電子化など保険者機能が発揮できるように環境整備を具体 的に進めていく必要がある」といった点を書き足していただきたいと考えております。  清家委員  IIIの新たな高齢者医療制度の創設に関してです。基本的に、高齢化が進んで医療サ ービスに対する需要が高まると負担が重くなってくるので、この部分を何とかしなけれ ばいけないという問題意識は共通していると思います。4ページ目の基本的な方向の中 で述べられていることは、それぞれ最もなことだと思います。その際に、いずれにして も何らかの形でコストが負担されなければいけないわけです。現在も、高齢者の医療費 を基本的には、もちろん年金とは違って医療保険は付加方式のような形ではないとして も若い世代が色々な形で負担しているわけです。その際に、今までも議論してきました ので、改めて整理する必要がないということかもしれませんが、この書きぶりですと、 現在の形で高齢者の医療費を負担するより新たな医療保険制度を創設した方が良いとい うことの説得的な説明が見られない。私もそこのところはそうなのかという疑問を持っ ているのですが、それは敢えてはっきり出さない形にされたのか、そうであるならそれ はそれで色々な意見があるので良いと思います。新たな医療保険制度を創設するという ことについては、「創設する」と決めて、しかし今の制度に比べれば明らかに新たな医 療保険制度の方が良いということをはっきり書かない方針にされているのか、その辺を 伺いたいと思います。  もちろんどっちがいいかというのはそれぞれ利害関係者の立場によって違うわけで す。保険者によってサービスを受ける人、供給者にとっても違うわけです。一時的にど っちが良いということは言えないのでしょうが、様々な利害関係者の利害等を総合的に 勘案した際に、現在の形で高齢者医療費を負担するより新たな高齢者医療制度の方が望 ましいということが、ここでは必ずしも明確には説明されていないように思います。そ れはそれで良いのかお聞きしたいと思います。  間杉課長  新たな高齢者医療制度の創設が良いということについて、敢えて私どもの方で何か意 図するところがあって、そこの部分を書ききっていないというわけではございません。 御指摘がありましたように、今の老健制度につきまして、各団体から御指摘、御批判を いただいております。今の方式のメリット、デメリットということについてもかなり御 議論をいただいてきたつもりでございます。今、具体的な方針そのものについてはまだ 開きがあると思いますが、その中でも共通項として例えば増大する5倍にもなる老人医 療費でございますから、それに対して財政調整的な方式というよりは独立の保険を作っ て明確な形で運営をし、費用負担も分担の縷々を明確に作っていくということは私ども はぜひ必要なことだと考えてございます。その辺少し工夫の余地がないかどうか考えて みたいと思います。  清家委員  一つ言い忘れましたが、先程岩村委員が指摘されたことは私も非常に重要だと思いま すので、ぜひ御検討いただきたいと思います。  河内山委員  議論のまとめの内容についてでなく、先程の対馬委員がお話になりましたことに関連 します。やはり被用者保険の方々の御意見は何度もお聞きをしていますが、市町村の国 保の現状を踏まえますと、控えめな表現ですが、3ページの「厳しい雇用情勢や非正規 職員の増加といった雇用形態の変化云々」と非常に押さえた表現ですが、それを踏まえ た議論をしていかないと介護保険制度は維持できない。  具体的に申し上げますが、前年までは被用者保険の被保険者でおられた方がリストラ による失業によって、国保の方で失業者の方を集めて保険を運営しているわけでなく、 被用者保険でなければ、自然にというか当然に国保の被保険者になられるわけです。国 保運営者が必要なことをさぼっているということではなく、構造的な問題として既にそ ういうことが起こっている。徴収率の話も幾度となく出ましたが、負担能力、負担可能 性がない方にはいくら徴収努力をしましても保険料を払っていただけないという現状が あります。そういう厳しい現状を考えますと、財政調整を頭から否定をされるというの でなく引続き検討が必要であるという表現で私は妥当だと思っております。その辺をよ ろしく事務局でも御検討いただきたいと思います。  北郷委員  Iの基本的な考え方のところについてです。前に基本方針がありまして、これをもう 一度考え直すのでしょうか。その点についてお願いします。  間杉課長  考え直しておりません。基本方針に沿った形で整理をさせていただいたつもりでござ います。  北郷委員  これはそうすると、基本方針に付加するものですか。  間杉課長  私どもの立場は、基本方針をベースに置きながら基本方針の肉付けをするという立場 でございます。  北郷委員  確か基本方針のところで基本的な考え方では、公平な制度といった考え方が入ってい たと思うのです。こういうのは残るのでしょうか。  間杉課長  御指摘のとおり、そういう意味では基本方針の時の基本的な考え方の中に、給付の平 等、負担の公平という一文がございます。御指摘あれば、再度改めて整理をしたいと思 います。  北郷委員  そうすると、制度的な不公平な仕組みとかというものは直すという意味に基本方針で は理解していたわけですが、それは変わりませんか。  間杉課長  基本方針では、保険者の自立性、自主性を尊重した上で医療保険制度を通じた給付の 平等、負担の公平を図るという一文がございますので、その点は変わってございませ ん。  齊藤委員  河内山委員から先程言われましたことについて、我々も、財政調整を何が何でもやる べきではないと思っているわけではありません。当然、雇用情勢や非正規従業員の増加 など所得状況の差異についてはわかります。その点は、国保の給付費等に国庫補助が行 われているという意味から、我々サラリーマンや企業は税を納めることで応分の負担は していると思っております。更にどういうふうにみんなで負担していくのかということ です。ただ、保険者同士でやりとりするのはどうかという提案でございます。  一方、ニートなどそういう人につきまして、我々が今提案させていただいているのは 個人別番号制で、若年時に納めた分に応じて給付を受ける仕組みであり、年を取っても 負担の公平という考え方で対応したらどうかと考えております。障害を持っている方々 について我々は言っているのではありません。働けるけれども働かないという人に対し て、今さら「アリとキリギリス」ではありませんが、病気に備えることなく年を取って からさあ病気になりましたというのはいかがなものかというようなことを申し上げたい と思っております。  対馬委員  財政調整につきまして前回も大分議論させていただきましたので、基本的には齊藤委 員の立場と同じです。他のことについて、資料2の参考資料の位置付けです。この中の 4ページの後期高齢者の基本的な枠組みですが、75歳ですが、新たな高齢者医療制度の 創設の中で前期と後期と分けていくということに対して、違う意見が今日も出ているわ けです。そこは基本的な枠組みの中に75歳を境として分けていくことについてどうかと いう意見がありましたので、基本のところだと思いますので入れていただきたい。  次の被保険者の一番下の○です。おそらく私どもが申し上げたところだと思います が、給付費、疾病といったところからすると75歳という区切りは本当にどうなのだろう かということを申し上げました。「給付費は65歳から一気に上がるのであって」という 部分はどなたが言われたのか、私ども再三、「年齢とともに双曲線でもって上がってい く」と申し上げていますけれども、65歳から一気に上がるので65歳からにして欲しいと 申し上げたつもりはない再度見ていただきたいと思います。  それから意見です。1ページの基本的な考え方です。先程、北郷委員からもお話が出 まして基本的な考え方をどこまで入れるのかはありますが、各委員共通に、保険で機能 を発揮するということが、高齢者医療制度についても保険者の再編・統合という問題に 関しても非常に大きなキーワードだと思いますので入れていただけないかと思います。  2ページ目の一番上の○に、保険者については、都道府県単位の再編・統合を推進す るということですが、健保組合ですと400ぐらいの健保組合が全国的な展開をしていま す。被保険者の数でいいますと、とても1600分の400というものでなく、非常に大きな 位置付けを占めますので、他と同じように「都道府県単位での」ではなく、「都道府県 単位を軸とした」といったように改めていただきたいと思います。この辺りは、健保組 合の再編・統合に絡む問題ですから、単純に文章上の問題ではないだろうと思います。  それから3ページです。3.健保組合等のところは全体の国保、政管との関係があっ たのかもしれませんが、かなり地域型健保なり都道府県単位ということが強く出ている のではないか、前回の資料の中では「規制緩和による選択肢の一つとして」といったこ とが随分議論されたと思いますので、できれば○の中に、「地域型健保組合の設立も規 制緩和による選択肢の一つとして認めるべきである」と。前の資料にも「規制緩和」と いうことの関連で整理されていると思っています。以上です。  間杉課長  今御指摘の点、工夫させていただきます。1点だけ恐縮でございますが、対馬委員が 兼ねてから75歳で急に医療費が急上昇するわけではないというお話をされていました。 私ども非常に気になっておりますのは、前回、入院と外来が75歳を境としてそれまで外 来で済んできた様々な病気が入院系の病気に変わっていく、入院・外来のそれぞれの受 診率を見たときにはっきりした分岐点があるのではないかといった資料をお示しさせて いただきました。私ども、何も75歳がアプリューリにあって、後から医療論で後付けし ていこうといった意図をもってこのお話をさせていただいているわけではありません。 マクロとして見た場合に、後期高齢者の医療の8割は医療介護認定を受けているという 問題もあって、それまでとはかなり気をつけなくてはいけない点が出てくるのではない かということをかなり気にしているわけでございます。そういう意味で75歳というポイ ントを置かせていただいていることは、ぜひ御理解を賜りたいと思っている次第でござ います。  花井参考人  3ページの政管健保です。これは従来から国庫補助金が現状維持するとあったかと思 うので、ぜひとも「最低でも現状」という言い方にしていただければと思います。と言 いますのは、16.4%が当分の間ということで13%になっていることを踏まえまして、「最 低でも現状維持する」ということを入れていただきたいと思います。  それから4ページ一番下の○、「高齢者については」とあり、最後に「その際、低所 得者について」とあります。高齢者の所得格差が大変大きいものがあるということ、そ れから今高齢者の間で医療保険での負担が上がるのではないかといった不安が出てきて おりますので、「高齢者の所得格差が大きいという実体を踏まえて、適切であるのと同 時にきめ細かな配慮を行う」という文言を追加していただきたいと思います。  7ページ、医療費の適正化、中長期というふうに書かれておりますが、参考資料では 短期的な適正化策も発言として記載されております。例えば入院日数の問題、多剤投薬 の是正、そういうことも少し組み込んでいただけたらと思います。  それから7ページから8ページにかけましての保険給付の内容でございます。出産一 時金について、これは大変難しいと思いますが、保険適用すべきということを意見とし て前回久保田委員から述べさせていただいておりますので、ぜひ御検討をお願いしたい と思います。  次の(4)の傷病手当・出産手当・埋葬料と3つ一緒になっております。傷病手当金は 下げる方向、出産手当は上げる方向かと前回の資料から読み取れますので、3つ一緒に して「現行の給付水準を維持すべき」ということではないと思いますので、できました らそれぞれ分けて書いていただけたらと思います。  それから3のその他に、IT化の推進と並列的に書かれております。IT化の推進につき ましては、もう少し大きな問題として扱っていただけないかと思います。IT化の推進に よってデータを収集して科学的な議論をするのだということをずっとこの間言われてき ているかと思いますので、そのことをもう少し大きな課題として取り上げていただけれ ばと思います。  それからどこに入るのか、ぜひ御検討お願いしたいと思うのです。医療保険で国保の 方に失業者と併せまして、パートあるいは派遣労働者など様々な雇用形態の方が、本来 は被用者保険である人達が相当入っているということがございますので、社会保険への 原則適用ということを、これはもちろん年金との問題もありますので、ここだけで解決 するとは思いませんが今後の検討課題として挙げていただけたらと思います。以上で す。  山本委員  2ページの国民健康保険の一番上の○の中に「広域連合等の活用により云々」と書い てあります。こういう文言で簡単に県単位にまとまることができるのかという心配があ ります。広域連合を活用するのは難しいのです。私は福岡県の介護保険の広域連合の連 合長をずっとしておりますが、最初は73の市町村でした。ところが介護の内容が変わる というより地域間格差が出てくるものですから、維持するのが非常に難しくなるという ことと市町村合併が進んでいきますから運営上障害が出てきました。市町村合併をした ところは離脱をしていくことになるわけです。この辺り、私の経験から考えますと、県 単位でまとまるには無理があるような気がしますのでもう少し知恵が出せないかと思い ます。  それから前のところですが、介護保険と医療が最近は密着性が非常に高くなってきて います。療養型病床で看ていますが、これは介護の方でも看なくてはいけないという方 がたくさん出てきます。その辺りの介護と医療の整合性についても書く必要があるので はないかと思います。全然書かれていないように思います。  次は皆さん御存知だと思いますが、中身を突っ込んで言うのはどうかと思いますが、 中核病院になるようなところは患者さんが非常に多いのです。そういうところは入院を して治療をしなければならない人が出ても3ヶ月以上置かないのです。そこがいいから そこの病院に行っているわけですが、3ヶ月以上経つと確かに診療費が下がるのです。 そのために3ヶ月に区切ったと思われますが、そんなことでなく患者さんが多いので す。大学の名前を言っていいでしょう、九大で私の友人が前立腺の治療をしなくてはな らないのにベッドが空かないものですからずっと待たされているのです。そういうこと などを考えていけば、もう少しこの項とは直接とは言えませんが間接的には大いに関係 があると思うのです。二次診療圏云々とありましたが、まだはっきり決まっていないか ら無理だということが書いてありますが、その辺りの整理というか、そういったものも きちんと固めなければ本当の意味での医療はうまくいかないと思います。ですから、私 の友人が院長をやっていまして、開業医に頼みに行くというわけです。有償診療所のと ころです。というのは、先程3ヶ月で出ていかないとベッドが空かないものですから、 来る人たちに対応できないということです。そういうことまでやらなければならないよ うな状況下に地域医療というのはなっているわけです。  ここに掲げているような簡単な文章で、そういう事態を解消することは不可能だと思 いますから、もう少し突っ込んだ議論が必要だと思います。これは医療保険部会の関係 かもしれませんが、医療部会とここが別々に物事を検討していて、どこかで一緒にまと めようではないかというやり方をするのは決して良いことではないと思います。ですか ら、医療部会の方でそういう意見が出る可能性は高い、確かに出ています。出ておりま すがここもやはりそういうところまで検討した上で、こういう制度はどうあるべきかと いうことを考えることが必要ではないでしょうか。その辺りが遠いような感じがしま す。  その次、私は前期高齢者でも何でもありませんが、高齢者のところが65歳と75歳、ど うして分けるのかわからないです。75歳以上の人達は、ある意味では病人だと思いま す。私がそうですから。自分の体が到底一人前に社会的に活動するような体力ではない ということです。ですからどうして区切っているのか、例えば高齢者医療というのは65 歳以上にするけれども、内容についてはこのようにやっていくのだということの方が返 って現実的ではないでしょうか。70歳にするか、75にするか、80にするかということを こういうことで議論するより、65歳以上なら65歳以上で結構だと思います。ただし、そ れには段階的にランクを作るというようなやり方をすればいいと思います。  これを読むと老人というのは簡単に年齢で分けられるかのか理屈がわからないです。 もう少し書き方を、高齢者の医療はこうやるべきだ、そのためにはどのようにしていく という年齢の制限は65歳以上になることは、今の老人福祉法で65歳ですからわかりま す。しかしそれ以上で良いのか悪いのか、あるいはそれを一番最低にするならば年齢を 段階的にやってはどうかと思うのです。そこまで書けないと言われればそれまでかもし れませんが、そうしないと現実性がないと思います。  簡単に書かれて、それでやりましょうということにはならないと思います。もう一回 検討していただければと思います。今日初めて読ませていただきまして感じたことで す。もし参考になるのであれば参考にしてください。同時に私の意見として採択してく ださい。  対馬委員  今おっしゃられたとおりでして、非常に複雑な制度になると思います。75歳前後でも って、75歳未満のところはと。ずっと申し上げていますから細説はいたしませんが、国 民にわかりやすい仕掛け、制度ということからしますと、基本方針を進化する、深める という意味もありますが一歩先に進めるという意味からしてももう少し知恵と工夫を出 し合いながらやっていきませんと、国民は理解できないと思います。  もう1点ですが、国保組合が3ページの2つ目の○に書いてあります。これは「見直 しを検討すべきであるとの意見があった」と書いてあります。「見直しをすべき等の意 見」です。少なくとも私自身は在り方について「見直しを検討すべき」というよりは 「見直すべきである」という意見を申し上げたつもりです。また、上の「市町村国保の 補完的役割を果たしているということを踏まえた上で」ということを申し上げたつもり はないし、また他の委員も言わなかったのではないかと思います。むしろ所得について の調査をやっているのだけれど、まだ出てこないとその実体はどうなのだろうかといっ た議論は出たと思うのです。もし次回、国保組合についての所得の実体調査等が出るの であればそれを踏まえてからでも結構ですが、ここの○は、委員の意見というより事務 局としての意見がかなり出ているのではないかという感じがあります。  唐澤課長  今のところだけ説明させていただきます。確かにあまり細かな理由について、国保組 合のところは御議論がなかったのですが、これは実は基本方針を引いてきているだけで ございます。特別に他意はございません。もちろんこれをもっと縮めて書くということ も整理上可能でございますので、検討させていただきたいと思います。  大内委員  先程、山本委員から65と75の根拠は何かと言われましたのでお話させていただきま す。75歳以上を後期高齢者と分類するのは、老年学の世界では世界的なコンセンサスで す。その理由は、以前私がお示ししましたように、老年症候群という高齢者に多い臨床 兆候がありますが、それが65、75、90前後ぐらい段がついて内容が変わってくるので す。そういうことで75歳以上は、むしろ病気の一つの疾病の管理ということだけでなく 全身的な機能をみていく必要があります。それから合併症が多くなってくるといった特 徴がありますが、それも75歳を境にかなり様相が変わってきます。但し、これはあくま で集団で見た場合です。例えば山本委員のように80歳になっても非常にお元気な方もお られるわけです。しかし集団として見た場合で75歳の前後でかなり様相が変わってくる のです。  私は、たぶん山本委員と同じことを申し上げたと思うのです。今までの保険の発想で は後期高齢者の保険と言うには難しいのではないかと申し上げているわけです。その意 味で、山本委員の言われた年齢によってランクをつけるということと同じことだと思い ます。  山本委員  医学的根拠から75というのを決めたのですか。それは後でいいです。もう一つは、高 齢者の保険料があるわけです。ところが現代の75歳以上の人達は何の保険が一番多い か、民間は別として、公的なものは何があるか。例えば厚生年金、共済年金色々ありま す。そうすると公的なものでも一番低いのは国民年金です。月あたり5〜6万しかもら えないのです。もし、重病になって一部負担をするようになってきますと、到底それは できないと思います。そこで私が言ったのは75歳というのに対してもう少し考えろと、 基準はどこでも良いのですが、考えろと言ったのは保険料が75歳以上の人達は、今から 75歳になる人達は良いと思います。それは公的なものにほとんど払っておられると思い ますから大丈夫かと思いますが、我々ぐらいの連中は公的なものは割と少ないのです。 ですから、今の国民年金で負担をしていくとなると大変な負担になって重圧を感じるこ とになるから、私は申し上げたのです。そういう意味です。  大内委員  私はあくまで、医学的な見地で申し上げましたので、そういった色々な経済あるいは 財政の仕組みといった考え方は当然あると思います。ただ、医療の中身からいっても75 歳前後でかなり様相が変わるので、その中身をしっかり考えるべきだという意味で申し 上げました。  井伊委員  資料1の基本的な考え方の最後の○、二つ目のポツ、「医療機関の機能の分化・連携 を推進し」ですが、今話題になっていました高齢者の健康問題や患者への情報提供など で、地域の掛かり付け医の役割が非常に大きいと思っています。しかし問題の多くは、 一次医療を飛び越えて病院に持ち込まれています。その最大の原因は、日本の医療提供 体制ではフリーアクセスが許されていて、一次医療機能が十分に発揮されていない。フ リーアクセスは、いつでも、どこでも同じレベルの医療が受けられるということです が、同じ医療が受けられていないために保険証を持って患者が色々な機関を走り回ると いうのが実体のように思います。ですから一次医療圏、二次医療圏内で標準化されて適 切な同じ水準が保たれているということ、つまりフリーアクセスするというより適正な アクセスが保証されることが重要だと思います。そういう受診のプロセスに一定のルー ルを設ける。その点が、制度として機能するような制度設計なり運用を、単に「医療機 関の機能の連携を推進し」というだけでなく、どのようにして制度として機能する設計 や運用が必要かという議論が必要であると思います。  漆畑委員  今の井伊先生、山本委員のお話に関連しますが、山本委員の御指摘のように医療部会 の方でそういう議論をされているわけで、過日中間取りまとめが行われていると思いま すので、ぜひその内容をこの部会でも御報告いただければ今の議論がもう少し明確にな るような気がします。  間杉課長  山本委員からも、提供体制に関わる非常に大事な御指摘をいただきましたので、早速 私どもの方から医療部会の担当に伝えて少し議論をさせていただきたいと思います。ま た、漆畑委員からも御指摘をいただきましたので、改めまして医療部会の状況につきま して当部会でも御報告をさせていただきたいと思います。  星野部会長  まだ御意見もございましょうが、次の議題に移ってよろしいでしょうか。次に「平成 18年度診療報酬改定に向けたスケジュール」について、事務局から資料が提出されてい ますので、報告願います。  間杉課長  総務課長でございます。引き続きよろしくお願いいたします。資料2を御覧くださ い。これは、前回ちょうど最後になりましたのでお聞き取り難かったと思いますが、中 医協の在り方に関する有識者会議が最終的な取りまとめが6月に行われました。その中 で、中医協の位置づけ、役割というものが一つの議論の大きな柱になりました。その最 終的な報告の中で当部会との関係につきましても触れられておりますので、改めて御紹 介を申し上げ、御報告をさせていただきたいと思います。  今申しました有識者会議の中で、中医協の機能・役割としまして大きく2つ議論がご ざいました。一つは診療報酬の改定の率、これは従来からそうですが予算編成過程を通 じて内閣が決定するということを改めて確認させていただきました。その上で、それで は診療報酬改定の大前提となる大きな、今も御議論ございましたが、医療政策について はどこで議論をするのかということになったわけでございます。これにつきましては、 当審議会と医療保険部会、それから今話題に出ました医療部会で行う。そこで基本的な 方向性を御議論いただいた上で、中医協はそれに沿って具体的な診療報酬点数改訂をど うしていくかといった議論を行うと、このような流れが新しくできたところでございま す。  そこで左側に中医協、右側に社会保障審議会と書いておりますが、中医協の予定でご ざいますが、この8月末から前回改定までの様々な宿題事項や課題がございます。それ に沿った形で次の改定に向けての課題の整理を始めるわけでございます。平行いたしま して、社会保障審議会、当部会におきましても改定の大前提となる大きな医療政策の基 本方針といったものにつきまして、改めて機会を作らせていただいて御審議取りまとめ を賜りたいという次第でございます。  それを受けましてと申しますか、暮れに内閣の方で予算編成過程で診療報酬等の改定 率の決定をいたします。その2つをもちまして、厚生労働大臣の方から中医協に対して 予算編成過程を通じて内閣が決定した改定率を所与の前提として、また医療政策につき ましては社会保障審議会において御議論された事柄といったものに基づいて診療報酬点 数の改定案を作ってくれということを諮問いたします。そういった新しい段取り、プロ セスが今回の有識者会議の報告で盛り込まれておりますので、秋に数回、この点につい ても改めて御議論をお願いしたいと考えておるところでございます。以上でございま す。  星野部会長  ありがとうございました。それでは御質問等ございましたらどうぞ。  岩村委員  1点だけですが、診療報酬改定の時に従来ですと、例えば新しい診療行為の保険収載 であるとかあるいは陳腐化したというか、もう使われなくなった診療行為を外すといっ たことが行われているようですが、それはどの場面で議論するということになります か。私の印象では、保険収載といったことについての決定プロセスが非常に不透明であ るという感じを持っています。その点はいかがでしょうか。  間杉課長  その点につきましては、中医協で御審議を賜ることになります。ただ一つ、御説明を しなければなりませんのは、これまで特に中医協で例えば高度先進医療といった新しい 技術につきましては、専門家会議で上がってきたものについて一つ一つ御審議をいただ いて中医協の方に御報告をいただくというプロセスをやって参りました。今回それに加 えまして、それ以外の様々な医療技術につきましても専門家の方々の会議というものを 新しく設けまして、そこにまずお諮りをいただく。その中で、新しい技術についての必 要な技術の要件ですとか、施設としての要件といったものを、技術の安全性評価ととも にそういったことを行いまして、プロセスを通って最終的には中医協の方で御報告され るといった仕掛けを作りました。ですから、中医協で新しい技術がいつ審議されるの か、陳腐化された技術はいつ無くなるのか、不明確だという御指摘が兼ねてよりござい ましたが、その点につきましてはかなり透明なプロセスができたと考えております。  北郷委員  医療保険部会の改定率について意見を言うのですか。  間杉課長  改定率につきましては、医療保険部会に御意見をお願いするということは考えてござ いません。むしろ医療保険部会は、これは医療制度部会もそうですが例えば小児医療、 癌といった大きな病気との関わり、どういうふうな方向、政策的に向かうべきかという 大きな御議論を賜れればと思っている次第でございます。  星野部会長  私からのお願いとしては、社会保障審議会もお役所の縦割りと同じように2つに割れ て、それぞれの部会にはそれぞれで議論して後でホッチキスするというそういうことに ならないようにしないと、何のためにこういう場面を設けるかという意味がないだろう と思いますので、そこはよろしく御配慮をお願いします。局長がいませんから、お伝え いただきたいと思います。それではこの件はよろしゅうございますか。  それでは次に、平成16年度の医療費の動向について、事務局から御説明いただきたい と思います。  石原課長  調査課長でございます。私から資料3、平成16年度の医療費の動向について説明させ ていただきます。  まず医療費として何を計上しているかということから説明させていただきます。概算 医療費という表題をつけております。表1-1の注1を御覧ください。社会保険診療報酬 支払基金及び国民健康保険団体連合会における審査分の医療費ということでございま す。国民医療費はもう少し広い概念でございます。全額自費の医療費ですとか、労災の 医療費などが入っております。そういったものがない、医療保険及び公費負担医療に係 る審査支払機関で取り扱った分の医療費というものでございます。国民医療費の約97% 占めておりますので、そういった意味ではここの医療費の動向でほぼ全体の国民医療費 の動向も占えるものだと考えております。  具体的な数字を御覧いただきますと、表1-1の平成16年度でございますが、31兆4千 億円、対前年度で6千2百億円の増加ということとなっております。内訳を見ていただ きますと、高齢者の欄ですが12兆8千億ということで、対前年度で4千7百億の増加。 全体が6千2百億でございますので、ほぼ4分の3程度が高齢者の医療費の増加という 形になっております。高齢者の隣に、参考までに老人保健の欄をつけております。注2 ですが現在、老人医療の対象年齢を75歳に引き上げる途中でして、段階的に引き上げら れており、その関係で従来の70歳以上の部分を高齢者としておりまして、若干老人保健 の医療費は差が出ております。具体的に申し上げますと、16年度は11兆6千億でござい まして、対前年度で1千3百億の減ということで、老人医療につきましては医療費が減 っているということでございます。  表1-2を御覧ください。今は実額について申し上げましたが、今度は伸び率でござい ます。総計の欄で16年度の伸びが2.0%ということになりました。従来から医療費の自然 増について3.0〜4.0%の伸びということで御説明いたしております。平成16年度につき ましては、平成15年度、具体的には16年2月が閏月でしてその関係等ありまして、稼働 日数が2日少ないという状況になっております。その影響と平成16年4月に薬価の引き 下げで医療費ベースで1%引き下げられております。その影響が1%、稼働日数の影響 0.5%ぐらいございまして、それを補正してみますと3.5%ぐらいということになります。 そういった意味では、従来から申し上げております3.0〜4.0%の伸びという医療費の自 然増が16年度においても続いていると認識しております。  2ページの表2-1が一人当たり医療費でございます。被用者保険が12万9千円。国民 健康保険が21万4千円。高齢者が73万9千円というバランスでございます。もちろん高 齢者が実額では高いということになっておりますが、表2-2の伸び率を御覧いただきま すと、被用者が1.6%、国民健康保険0.7%、高齢者が0.3%ということで、制度別に見 ますと高齢者の医療費の一人当たりの伸びが若干抑えられた形になっております。  3ページ、診療種類別の概算医療費でございます。表3-1を御覧いただきますと、入 院の医療費ですが、12兆7千億円、入院外が11兆9千億円、歯科が2兆5千億円、調剤 が4兆2千億円という状況でございます。表3-2、伸び率でございますが、入院が1.2%、 入院外が1.3%、歯科が0.3%、調剤が7.8%という形です。入院と入院外はほぼ同じ伸びで すが、調剤の伸びが高いのを御覧いただけると思いますが、調剤の伸びは医薬分業が進 んでおりまして、その関係で高いという状況になっています。医薬分業の関係で、薬が 調剤薬局からでる関係もありまして、入院外の医療費は若干少な目という認識でして、 右の参考欄の入院外と調剤を加えた伸び率を見ていただきますと2.9%ということで、入 院よりは入院外の方が高い伸びということになっております。  4ページ、表4-1が受診延日数、これがトータル延べの患者数の状況でございます。 入院が5億日、入院外が18億日、歯科が4億日といった状況でございます。表4-2の伸 び率で御覧いただきますと、16年度、入院が−0.3%、入院外はほぼ横這いですが−0.0、 歯科が0.8という状況でございます。入院も入院外もそうですが、入院外は特に15年度 が−1.6という形で下がっておりました。これは健康保険法の3割負担等の制度改正の 影響がございまして下がっていたものが、−0.0ということで自然と横這いに伸びとい う形になっております。13年度もそうでございますが、基本的には最近は患者数が外来 においてもそれほど増えないという状況を16年度も示していると認識しております。  5ページ、医療費を日数と単価に分けて日数は今御覧いただきましたので単価の方、 一日行っていくら医療費が掛かったかという状況を御覧いただきたいと思って作りまし た。表5-1で1日当たりで御覧いただきますと、16年度、入院が2万5千6百円、入院 外6千6百円、歯科が6千百円、調剤が6千5百円となっております。入院が高いとい う形でございますが、入院外、歯科、調剤はほぼ同程度の額になっております。  表5-2で、1日当たりの伸びでございますが、入院が1.5、入院外が1.3、歯科が−0.6、 調剤が3.1ということです。医薬分業の影響を見るために入院外に調剤を加えて、1日 当たりを取ってみますと2.9ということで、やはりここでも入院外の方が1日当たりの 伸びは若干高いという状況になっております。  6ページ、数字が細かくて恐縮ですが、医療機関の種類別の概算医療費でございま す。表6-1が、病院と診療所を区分した医療費でございます。全体31兆4千億のうち、 医科が24兆6千億でございます。、病院の医療費が17兆1千億、大学病院が1兆8千 億、公的病院6兆6千億、法人病院8兆2千億、個人病院が5千億といったことでござ います。診療所は7兆6千億、歯科が2兆5千億のうち歯科診療所が大半でして2兆4 千億、保険薬局4兆2千億ということでございます。  伸び率は省略しまして表7-1が、診療所の7兆6千億の内訳を主たる診療科別に見た ものでございます。内科が3兆7千億、49.1%ほぼ半分は内科の医療費でございます。 その次に多いのが整形外科が6千8百億、9.1%、眼科が6千億ぐらいで8.0%というよ うな状況でございます。伸び率は飛ばさせていただきます。  7ページ、表8-1が今、トータルの数字を御覧いただきましたので、なかなか感じが つかめないと思いますので、1施設当たりの医療費について計算しております。大学病 院の欄を御覧いただきますと、1施設当たり113億、公的病院が38億、法人病院が13億、 個人病院が6億という状況です。診療所は1診療所当たりが9千2百万、歯科診療所は 3千7百万、保険薬局が9千4百万ということになっております。今年の特徴ですが、 従来保険薬局の伸びが高いことが、下の欄を御覧いただいてもわかると思いますが高い 伸びが続いておりまして、本年度は診療所の医療費を保険薬局の医療費が抜いていると いうのが今回の特徴でございます。表8-2の伸び率でございますが、病院が1.4%、診療 所が1.5%、歯科は−0.7%、保険薬局5.0%ということで、保険薬局が高いのは今申し上げ ました。病院と診療所はほぼ同じような伸びでございます。  表9-1が、主たる診療科別の1施設当たりでございます。診療所の平均が9千2百万 と申し上げましたが、各科別で御覧いただきますと、高いのは整形外科で1億1千万、 次が眼科の9千6百万といった順位でございます。一つ注意を申し上げますが、産婦人 科のところが5千8百万、若干減っております。これは基本的には自由診療分、審査支 払機関を通っている分と申し上げましたが、産婦人科の場合は正常分娩が審査支払い機 関を通らずに自費診療になっておりまして、その部分もあって若干少ないという形にな っているかと思います。  最後に表9-2の1施設当たりの医療費の伸びでございます。主たる診療科別に見ます と耳鼻科が4.4%という形で高くなっているのが目立つかと思います。耳鼻科の伸びにつ きましては、年度末2月、3月、今年は花粉症とインフルエンザがかなり流行しており まして、その影響もあって年度末にかなり医療費が増えております。その影響があって 若干耳鼻科が高い伸びという形になっているということでございます。以上です。  星野部会長  ありがとうございました。せっかくの機会です、何か御質問等ございましたらどう ぞ。よろしゅうございますか。  それでは次に移ります。前回、各委員から要求のあった資料について事務局から報告 を求めたいと思います。事務局からお願いいたします。  石原課長  調査課長でございます。引続いて資料4について説明させていただきます。  前回、終末期の医療につきまして資料を提出させていただきました。終末期につい て、関連するデータの御要求がございましたので、とりあえず揃うもので御説明したい と思います。  1ページ、医療機関における死亡割合の年次推移ということでございます。グラフに しておりますが、過去の年次推移でございます。御覧いただきますと茶色の線が医療機 関で死亡する割合で、青い線が自宅で死亡する割合ということできれいにクロスしてい ることが御覧いただけるかと思います。昭和26年辺りですと、医療機関で死亡する割合 が10%程度しかなかったもの、当時は自宅で死亡する割合が8割を超えております。そ れが昭和51年に逆転しまして、今や逆に自宅で死亡する人が10%少し、医療機関で死亡 する人が8割を超えるという状況になっているということでございます。  2ページ、死亡者の年齢別でございます。年齢別に死亡者を取りますと、当然高齢の 方の死亡者数が多い形となっています。棒グラフは死亡者数を示しております。人口が 減りますので90歳以降は若干減ってくるという形になります。死亡者の数、絶対数で申 し上げればやはり70代後半から80代辺りで多いという形になっております。青で折れ線 グラフを作ってありますのは、医療機関で死亡する者の割合でございます。これを御覧 いただきますと25歳から29歳辺りが若干少ない、5割を切っております。その辺をボト ムとして周りは大体その8割近い割合で医療機関で亡くなられているという形になって いることがお解りいただけると思います。高齢になりますと、70から74あたりがピーク でして、それから95辺りになりますと、医療機関で亡くなる方は若干減ってくるという 状況になっております。  3ページ、死因別に見たらどうかということでグラフを作っております。棒グラフは 実数でございますが、青の折れ線グラフは医療機関で死亡する者の割合です。これを御 覧いただきますと、死因では自殺と老衰、当然と言えば当然でございますが、この辺が 若干医療機関で死亡する割合は低いです。それ以外ですと、ほぼ8割前後は医療機関で 亡くなられているという状況になっております。  4ページ、前回、終末期医療で1ヶ月に152万の医療費という形で平均値をお示しい たしました。具体的なイメージが必要だろうということで、用意させていただいた資料 です。どんな状況が考えられるかということでお示ししたものです。例えば終末期にお いて医療で食道癌の術後で、自宅にて療養中、癌性疼痛、癌性発熱等の症状悪化により 入院という形で考えておりまして、その場合30日間入院して亡くなられるという状況を 想定しまして、医療費を典型的な形で見積もってみますと、以下の入院基本料で63,000 点、投薬・注射で14,000点、処置・検査等で38,000点という内訳でございまして、合計 すると115,000点、1点10円でございますのでちょうど115万円。前回112万円と申し上 げましたが、このような形の医療で115万円ぐらいの医療費になっているということで ございます。  5ページですが、参考までに外来の例を付けさせていただきました。外来でもかなり 高いケースもあるということでございますが、食道癌の術後で、自宅にて療養中、30日 で亡くなられた方の例です。基本診療料は1,700点ぐらいですが、在宅の末期医療総合 診療料で56,000点という形で計上される例もございます。この場合ですと、57,700点、 1点10円ですから57万7千円という医療費になっております。  6ページ、前回、高額な医療費のところの資料で、高額な医療費の場合には、高額療 養費が出て実際患者負担が減っているだろうということで、医療費に対して実効どのく らい給付があって、患者負担は反対にどれぐらいになるのかという御質問がございまし た。それを御覧いただくための資料でございます。  実効給付率と申しますのは、定率負担に高額療養費等がつきまして、医療費に対して 何パーセント給付されているのかというのを各制度別に御覧いただくように作った資料 でございます。政管一般で御覧いただきますと、先程も申し上げましたが年齢引き上げ がございまして、70歳未満が7割給付ですが、70歳以上は9割給付という形で、一定以 上所得が8割で、9割の場合と8割がございますが、そういったもので制度が分かれて いますので70歳未満と以上で分けて計上しております。被保険者で見ますと74% 、7割 給付ですが高額療養費等があって結局74になるということでございます。被扶養者が 75.1、70歳以上が89.3、平均しますと75%。組合では、被保険者が75.9、被扶養者75.9、 70歳以上は90%、平均しますと76.4でございます。組合が高いのをお気づきになられる かと思いますが、(注)4に書いておりますように、組合の場合に一部負担還元金、家族 療養付加金等の付加給付がございまして、その分が乗っているので若干政管を上回って いるというように認識しております。市町村国保が70歳未満が78.6、70歳以上が90.3、 計として79.1、老人保健が91.2というバランスでございます。以上です。  星野部会長  ありがとうございました。それでは御質問等ございましたらどうぞ。  花井参考人  今の資料につきまして、大変貴重な資料だと思っております。その上で、先程の議論 の整理の6ページ、医療費の適正化下の○に、終末期医療も含めて高額医療の在り方に ついての検討が必要であると記載されてございます。検討が必要であるということです ので良いかと思っております。ただ、それが医療費の適正化の面からだけ、終末期医療 の在り方が検討されていいのだろうかという疑問を強く持っていることを述べさせてい ただきたいと思います。  年代ごとに同じ疾病で、どのような治療が行われて終末期を迎えたのかということを もう少し、お金の面だけでない方向からの検討がされなければいけないのではないかと 考えております。例えば、同じ食道癌で病院で亡くなった場合、あるいは在宅で亡くな った場合これだけ違いますよという金額は出ますが、終末期医療は個々人の人生観、宗 教観、家族の関係等様々関わって参りますので、ぜひともその辺の議論の進め方はもう 少し丁寧に行われるようお願いしたいと思います。  それから資料4、最後のページの制度別の実効給付率でございますが、これに国保組 合と共済を加えて出していただきたいと思います。以上です。  間杉課長  資料に渡る質問の部分がございましたので、国保組合の実効給付率、次回お出しさせ ていただきます。共済組合も聞いてみます。そのようなものを提出するよう私どもから お願いをしてみます。  松原委員  今お話がございましたように、お金の面からのみ終末期医療を検討するというのは大 きな問題があると思います。あくまでも個人の尊厳を保って、個々の人を尊重する形で 医療を行わなければならないと思います。単純に、入院していたら高くて、入院してい なければ安いという話でこれを議論するというのは問題だと思います。  また具体的に問題の一つを指摘しますと、終末期の場合で自宅で亡くなられる場合に は入院していれば看護師さんにしてもらえることでも、家では家族が行なわねばならな くなります。そういったこともございますので、単純にお金の話だけで検討するのは難 しいのではないかと思います。お金の話だけということで振り返りますと、あくまでも 高齢者医療制度を作る上では、確かに生理的な75歳のところでのターニングポイントが あるのは事実でございますが、74までを受け入れて75から突然適切な医療が受けられな い制度にしてしまうことは、岩村委員から御指摘がありましたように、個人の権利を侵 害することになりますので、高齢者医療制度は適切な医療がきちっと受けられる制度で なければならないと私どもは思っております。  北郷委員  資料2ページの20歳代が、病院で死亡するのが少ない理由は何でしょうか。  石原課長  手元に資料がないのではっきりお答えできませんが、3ページのグラフを見ていただ きますと、自殺と老衰、不慮の事故あたりが小さいということで、事故なども若干ある かと思いますが、自殺も若干関係しているかなという感じは持っております。年齢別の 死因別は調べてお答えしたいと思います。  齊藤委員  高額療養費ですが、事務局から話がございましたとおり、制度創設時の趣旨は自己負 担限度額が月収の50%ということであり、賃金上昇に伴い現在は月収の25%にとどまっ ていることを踏まえますと、時代に合う形で見直しを検討すべきであると考えておりま す。できましたら、少し書き足していただきたいと思います。  また、万が一に備えてという意味におきましては、個々の尊厳、自分の家族の状況を 勘案して自助努力により、民間保険等で対応しておくことも忘れずに準備するというよ うな趣旨は付記すべきではなかろうかと考えます。  松原委員  私ども、混合診療の時にも十分議論申し上げたわけですが、病気という大変な事態に 至るということはあくまでも受難者でございますので、受難者を皆様で力を合わせて救 うということで保険が成り立っているわけですから、個々の人が民間保険を使って用意 すればそれで話が済むとは思っておりません。あくまでも、保険というシステムは国民 皆保険によって大変な状態になられた方を救うというのが趣旨でございますので、自分 だけ民間保険に入って、入れない人が悪いのだという考え方は私どもは賛同できませ ん。  漆畑委員  全く松原委員と同様であります。したがって、このまとめや考え方の中に民間保険を 対応すべきだということを付記することについては、反対をさせていただきます。  岡谷委員  終末期の医療のことにつきまして先程から議論が出ていますが、私は病院で死ぬこと が全て悪いと思っておりませんが、今の入院医療の中の状況ですと、本当にそれが個々 の患者さんにとっていい死なのかどうかということにつきましては、大きな問題がある と思います。国民の多くが在宅死ということを望んでいて、そういうところで死にたい と、それに対して今の医療の制度ではなかなか在宅での死亡を十分にサポートするだけ の体制ができていないということが大きな問題ではないかと思っております。やはり最 終的には個人の選択が重要かと思いますが、もう少し多くの人の希望がかなえられるよ うな在宅医療の仕組みを早急に作っていくことが大事だと思います。  これから178万人ぐらいの方が年間死亡していくという時代になって参りますので、 全て病院で亡くなるということは、医療資源ということから考えても非常に大きな問題 ではないかと思います。  北郷委員  終末期の医療というのは非常にやっかいなものです。やっかいというのは、何が終末 期なのかわからないのです。一遍中央会で調査をしたことがあります。終末期の医療費 がどの位掛かっているか、これがどうにも難しいのです。高額医療を集めて3ヶ月とか 半年以内に亡くなったといった定義をしまして、色々なことをやってみましたが非常に 難しい。お医者さんの立場からしますと、終末期かどうかわからないわけです。それを 否定はできません。終末期かどうかということは病気によってわかる場合もあるのかも しれませんが、どれ位掛かるを調べるのに苦労いたしました。調査自体も大変な問題で した。もし何か必要があれば、どういうことをやったのかというのを前に一度公表して いますが、再度出しても構いませんが大変に苦労したということを申し上げたいと思い ます。  星野部会長  もし可能なら、お願いしたいと思います。  箱崎委員  私もその終末期医療については花井参考人が話されたように、医療費ベースで議論す ること自体に反対をしたいと思います。ただ、終末期医療そのものが非常に大事である し、大変な問題でもある。あるいはその生命倫理、人間の尊厳といった意味合いの中で どうすべきかという議論だろうと思うのです。ただ単に医療費の部分だけでなく、あら ゆるところから議論すべきであろうと思っています。  難しい、難しいの話の中で結論といいますか、方向性が見い出せないのがまた終末期 医療ではないかと思います。私なりに考えるのは、国民、患者サイドから見ての終末期 医療、あるいは医療サイドから見ての終末期医療といった、いわゆる何らかの形の基準 を少しずつ作っていきながら議論を進めていった方がある程度の形が見えてくるのでは ないかと、方向性も示せるのではないかという感じを持っておりますので、考え方の一 つとして申し上げたいと思います。  星野部会長  ありがとうございます。他にございませんか。終末期医療の問題について色々と御意 見をいただきました。私も知見があるわけでも何でもないのですが、終末期医療という のは大変深い問題だと思うのです。私、今インドの勉強をしています。インドのベナレ ス、御存知のようにヒンズー教というかバラモン教といった方が正しいのかしれませ ん。あの人達は、魂と肉体は別々に考えられる人達です。最後に死ぬ時に医療に何も全 部投げないのです。ところが日本の場合はどうも考えてみると、宗教が乏しいのかどう かわかりませんが、結局医療にみんな終末を皺寄せというか押しつけているのではない でしょうか。医療も親孝行になったり、その人の成仏になったり道徳と結びつき過ぎて 医療に依存し過ぎているように思うのです。そこは現実なものですから、したがってど こかでやってくれると一番良いのですが、国民全体でやってくれれば良いのですが、そ ういうことをやってくださっているところが、それぞれ別々におやりになっているので 良くわからないです。どうしても、こういう医療の話になると、残っているのは終末期 医療が人生の全体のサイクルの中で一番日本では遅れているのではないかという意見も 片方にあります。そういう意味では事務方がこういうことで苦労されておられるのは、 非常に良くわかります。皆さんの間で、こういう方法がもう少し膨らまし方があるので はないかといった御意見がありましたら、そういう御意見も含めてお知恵を出していた だけるとありがたいです。  この問題は非常に重要だと思います。今言われたように、これから死ぬ人が多いわけ です。それにどう幸せに向かっていくかというのは重要なことだと思いますのでよろし くお知恵の限りを絞っていただければと思います。  今日は、その辺で止めさせていただきたいと思います。どうも御協力ありがとうござ いました。では、次回についてお願いいたします。  間杉課長  8月24日、水曜日でございます。15時からということでお願いをさせていただきたい と存じます。場所は追って御連絡申し上げます。  星野部会長  よろしくお願いします。今日は御協力ありがとうございました。                                      以上 〈照会先〉 保険局総務課企画調査係 代表 03−5253−1111 内線 3218