「血液製剤の使用指針(改定案)」(事前送付資料)への意見


 要約に「目的」を挿入すること等について
 新鮮凍結血漿及びアルブミン製剤と同様に赤血球濃厚液及び血小板濃厚液にも本文中の「目的」に該当するコメントを追加する。また、新鮮凍結血漿については重複を避けて記載する。
赤血球濃厚液
 「赤血球補充の第一義的な目的は、末梢循環系へ十分な酸素を供給することにある。」を追加する。
血小板濃厚液
 「血小板輸血は、血小板成分を補充することにより止血を図り、又は出血を防止することを目的とする。」を追加する。
新鮮凍結血漿
 「凝固因子の補充による治療的投与を主目的とする。自然出血時,外傷性の出血時の治療と観血的処置を行う際に適応であり,観血的処置時を除いてFFPの予防的投与の意味はなく,あくまでもその使用は治療的投与に限定される

 新鮮凍結血漿の要約と本文との統一
(1) 大量輸血時:「希釈性凝固障害による止血困難が起こる場合にFFPの適応となる。
(2) クマリン系薬剤:「ビタミンKの補給により通常1時間以内に改善が認められる。より緊急な対応のためにFFPの投与が必要になることが稀にあるが,この場合でも直ちに使用可能な場合には「濃縮プロトロンビン複合体製剤」を使用することも考えられる。」

<以下、要約及び本文の修正>
 用語等の統一
(1) 「細胞外液系輸液薬」→「細胞外液補充液」
(2) 「心臓血管手術」や「心臓外科手術」→「心臓血管外科手術」
(3) 新鮮凍結血漿における「フィブリノゲン値が100mg/dl以下の場合」→「フィブリノゲン値が100mg/dl未満の場合」
(4) 参考6と参考8における「自己血輸血」の表現を「貯血式自己血輸血」、「希釈式自己血輸血」、「回収式自己血輸血」に統一。
(5) 参考14の表「上清Hb」→「上清中遊離Hb」

 赤血球濃厚液の「使用指針」の1)〜3)について
1) 内科的適応:慢性貧血に対する適応
→「慢性貧血に対する適応(主として内科的適応)」
ア 出血性→「イ 慢性出血性貧血」
イ→ア
 ・ 1行目の貧血の種類の冒頭に鉄欠乏を追加する。
2) 外科的適応:急性貧血に対する適応 急性出血
→「急性出血に対する適応(主として外科的適応)」
 ・ 1行目「外傷性の出血を除くと急性出血を来す疾患は、主として消化管出血と腹腔内出血に分類できる。」→「急性出血には外傷性出血のほかに、消化管出血、腹腔内出血、気道内出血などがある。」
 「3)周術期の輸血」を2)の3段落目の後に挿入する。

 赤血球濃厚液の「不適切な使用」に他製剤と同様に「末期患者への投与」を入れること。

 血小板濃厚液の「使用指針」の血小板数の分類の統一
 一部に存在する「2万未満」を他の記載と統一して「1〜2万」と「1万未満」に分ける。
 「血小板数が2万/μL未満ではしばしば重篤な出血をみることがあるため、血小板輸血が必要となる場合がある。」
「血小板数が1〜2万/μLでは、時に重篤な出血をみることがあり、血小板輸血が必要となる場合がある。血小板数が1万/μL未満ではしばしば重篤な出血をみることがあるため、血小板輸血を必要とする。」

 血小板濃厚液の「使用指針」の「f 血液疾患」の「(1)造血器腫瘍」
(1) 2行目:「・・・定期的に血小板数を測定し、多くの血小板数が1〜2万/μL未満に低下してきた場合には血小板数を1〜2万/μL以上に維持する・・・」
(2) 「とくに、急性白血病(M3を除く)においては、安定した状態(発熱や重症感染症などを合併していない)であれば、血小板数を1万/μL以上に維持すれば十分とされる。」
理由: 現在はM3の治療も進歩し、寛解率が向上しているため。

 血小板濃厚液の「投与量」への追加等
 「一回投与量は、原則として上記計算式によるが、実務的には通常10単位が使用されている。」
合わせて、「※出血予防の基本的な適応基準」の最終行「1回の輸血量としては10単位が推奨されている。」を削除する。

 新鮮凍結血漿の「使用指針」の「1)凝固因子の補充」の「(1)PTおよび/またはAPTTが延長している場合」の「播種性血管内凝固(DIC)」の「通常,(1)に示すPT、APTTの延長のほか(1)PTは(@)各医療機関における基準の上限の1.5倍以上INR 2.0以上,(A)4530%以上以下,(B)INR 1.6以上/(2)APTTは(@)各医療機関における基準の上限の2倍以上,(A)25%以下,あるいは目安として、」に簡略化すること。

10  アルブミン製剤の「使用指針」の「1)出血性ショック」の1行目以下について
 出血性ショックに陥った場合には,循環血液量の30%以上が喪失したと考えられる。このように30%以上の出血をみる場合には、初期治療としては,細胞外液補充液(乳酸リンゲル液,酢酸リンゲル液など)の投与が第一選択となる。またり、人工膠質液の併用も推奨されるが、原則としてアルブミン製剤の投与は必要としない

11  アルブミン製剤の「使用指針」の「5)循環動態が不安定な血液透析等の対外循環施行時」について(重複しているため)
 血液透析時に血圧の安定が悪い場合において,特に糖尿病を合併している場合や術後などで低アルブミン血症のある場合には,透析に際し低血圧やショックを起こすことがあるため,循環血漿量を増加させる目的で予防的投与を行うことがある。
 循環動態の不安定な血液透析等において,一時的に循環血漿量を増加させる目的で,体外循環開始に際して予防的投与を行うことがある。

12  参考1 慢性貧血(造血幹細胞移植)の白血球除去赤血球濃厚液に最新の文献を引用すること
 「最近の抗体陰性血と白血球除去血の輸血による感染の比較検討では、感染予防率はいずれの場合も90%以上であるが、抗体陰性血の方が高いことが報告されている。
○) Vamvakas,EC.Is white blood cell reductionequivalent to antibody screening in preventing transmission of Cytomegalovirus by transfusion ? A review of the literature and meta-analysis,Transfusion.Med.Rev 2005;19(3):181〜199」

13  文献28を引用する箇所がない。

14  参考7「脳神経外科手術」の最後の段落が細かいので削除
 貧血となると,脳酸素消費量を供給するために,脳血管拡張が起こり脳血流量が増加する。脳血管拡張により頭蓋内血液量が増加すると,頭蓋内圧が上昇する。頭蓋内コンプライアンスが低下した患者では,わずかな頭蓋内血液量増加によっても頭蓋内圧が大きく上昇し,脳ヘルニアを起こす可能性がある。したがって,頭蓋内コンプライアンスが低下した患者では,貧血の是正を積極的に行う必要がある。

15  参考9「大量出血や急速出血に対する対処」の最後の段落を以下に変更して欲しい。
 臨床的出血が認められない場合,出血傾向を診断することにおけるプロトロビン時間や部分トロンボプラスチン時間の特異度や感度は低いとされている39。したがって,臨床的出血や出血傾向が認められない場合には,PTやAPTTのみを参考に新鮮凍結血漿の投与は行うべきではない。これは,大量出血に伴う出血傾向が,凝固障害によるものだけでなく,重篤な低血圧40,末梢循環不全による代謝性アシドーシス,低体温といったさまざまな因子に関係しているためであるかもしれないので注意深く観察して対処すべきである41

16  参考15の「血小板濃厚液の製法と性状」の単位ごとの血漿量及び血小板数を表にしてほしい。

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