資料1−3


平成14年度石綿の代替化等検討委員会関係資料



石綿の代替化等検討委員会の概要


 目的
 現在、製造・使用等が行われている石綿製品について、非石綿製品への代替化の状況、代替製品の性能、国内外の代替化技術等を踏まえ、専門技術的観点等から、代替が困難な石綿製品の範囲を絞り込み、今後の非石綿製品への代替可能性等を明らかにすること。

 委員(五十音順)
池田 浩治   東京農工大学工学部機械システム工学科助教授
枝広 英俊   芝浦工業大学工学部建築学科助教授
大野 晋   日本原子力研究所社会技術研究システム研究員
(化学工学会安全部会副部会長)
菊池 雅史   明治大学理工学部建築学科教授
菅原 進一   東京大学工学部建築学科教授
長谷見雄二   早稲田大学理工学部建築学科教授
  ◎ 平野 敏右   独立行政法人消防研究所理事長 《委員長》
森崎 繁   (社)産業安全技術協会会長

 開催経過
 第1回  平成14年12月16日(月)
  ・ 代替が困難な石綿製品の範囲等の検討
  ・ 石綿製品の代替化の事例ヒアリング
 第2回  平成14年12月25日(水)
  ・ 石綿製品(建材)のメーカー団体、ユーザー団体からのヒアリング
  ・ 代替が困難な石綿製品(建材)の範囲等の検討
 第3回  平成15年1月9日(木)
  ・ 石綿製品(非建材)のメーカー団体、ユーザー団体からのヒアリング
  ・ 代替が困難な石綿製品(非建材)の範囲等の検討
 第4回  平成15年1月17日(金)
  ・ 石綿製品(非建材)のメーカー団体、ユーザー団体からのヒアリング
  ・ 代替が困難な石綿製品(非建材)の範囲等の検討
 第5回  平成15年1月23日(木)
  ・ 代替が困難な石綿製品の範囲等の検討
 第6回  平成15年2月19日(水)
  ・ 検討委員会報告書の案の検討
 第7回  平成15年3月4日(火)
  ・ 検討委員会報告書の案の検討



石綿の代替化等検討委員会報告書の概要


1.  建材(石綿セメント円筒、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板、窯業系サイディング)は、既に代替品が商品化されており、その使用により防火、耐火等の観点から安全確保が困難とは考えられないこと等から、使用が不可欠なものではなく、かつ、非石綿製品への代替化が可能であると考えられる。

2.  摩擦材(クラッチフェーシング、クラッチライニング、ブレーキパッド、ブレーキライニング)は、既に非石綿化されているか、今後代替化が予定されており、代替化が可能であると考えられる。

3.  断熱材用接着剤は、既に商品化されている非石綿製品があり、非石綿製品への代替化は可能であると考えられる。

4.  シール材、ジョイントシートは、高温の流体等が存在する環境下で使用されるもの等については、現時点では安全確保の観点から代替が不可能な場合があり、また、代替可能なもの・不可能なものを温度等の使用限界や使用される機器の種類等から明確に特定することは困難である。

5.  耐熱・電気絶縁板は、超高温の環境下で使用されるもの等については、安全確保の観点から石綿の使用が必要とされており、現時点で代替可能なもの・不可能なものを温度等の使用限界や使用される機器の種類等から明確に特定することは困難である。

6.  石綿布、石綿糸等については、二次的にシール材等に加工されることから、シール材等の代替可能性に連動すると考えられる。


石綿製品の種別及び対応

製品の種類 報告書での判断 対応
建材 石綿セメント円筒 代替可能 禁止
押出成形セメント板
住宅屋根用化粧スレート
繊維強化セメント板
窯業系サイディング
非建材 摩擦材(ブレーキ、クラッチ)
断熱材用接着剤
シール材 代替化困難 現行規制で管理使用
ジョイントシート
耐熱・電気絶縁板
石綿布、石綿糸等



石綿の代替化等検討委員会で行われた代替化困難なものの論点抜粋

1.  耐熱・電気絶縁板
(1)  アンケート調査における代替化困難なもの
 【 ユーザー団体】高温高圧ガスから保護するための断熱ゴムシート、変圧器のヒーター・磁気遮断器の電気絶縁板等
(2)  ヒアリング結果
2000℃を超える極めて高い温度で使用される断熱材は代替困難である。
検知器の取付け部に用いられている絶縁シートは、現在代替品を検討中で見込みはある。
ジョイントシートを断熱材や高圧縮力を受ける部分の絶縁板として用いている例があり、代替可能性は不明である。
(3)  耐熱・電気絶縁板の代替可能性について
 耐熱・電気絶縁板については、極高温の環境下で使用されるもの等一部のものについては、安全確保の観点から石綿の使用が必要とされており、現時点で代替可能なものと代替困難なものを温度等の使用限界や使用される機器の種類等から明確に特定することは困難である。

2.  ジョイントシート・シール材
(1)  アンケート調査における代替化困難なもの
 【 メーカー】高温用のバルブパッキン、高温の酸化性塩に係る機器に使用するもの、タイヤ加硫材のプレスのラムパッキン、300℃以上の発電用、蒸気ライン用に使用する石綿製品等
 【 ユーザー団体】特に、高温、極低温、高圧、極低圧、酸・アルカリ・塩類・有機溶剤・熱媒・可燃性物質・腐食性物質その他有害性物質等のある条件下で使用される石綿製品、ボイラ、圧力容器、焼却炉、発電所、航空機、船舶等に使用される石綿製品
 化学プラントに使用する石綿製品は、代替化には耐久性を評価したうえでの実施が必要、非石綿製品は石綿製品と比べ使用温度や使用流体の範囲に限界があり、耐用年数に問題があることから、代替化の可能性を一律に判断できない。
(2)  ヒアリング結果
性能の問題
 温度が100℃以上では石綿ジョイントシートガスケットの代替品として膨張黒鉛テープの渦巻き形ガスケット、膨張黒鉛シートガスケットがあるが、取扱い性、シール性、厚さ等に問題。
 タイヤ加硫材のプレスの石綿布入りゴムパッキンについては代替材料なし。
 水、蒸気等を対象とし、温度が100〜200℃程度の場合にも代替化は困難。
膨張黒鉛の使用の限界に係る問題
 酸化性酸(濃硫酸、硝酸、クロム酸、重クロム酸等)、酸化性塩(塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等)等の腐食性流体に、膨張黒鉛シートガスケット、膨張黒鉛テープの渦巻き形ガスケットは使用できない。
 一部のハロゲン及びその化合物(臭素、フッ素、ヨウ素、二酸化塩素等)のガス系流体に、膨張黒鉛テープの渦巻き形ガスケットは使用できない。
 黒鉛を使用するパッキンは硝酸ナトリウム等と反応して爆発する危険性があるため、温度が430℃から450℃で硝酸ナトリウム等の酸化性塩に使用するグランドパッキンの代替化は困難。
実証試験の必要性の問題
 ジョイントシート及びガスケット等のシール材は、代替品の使用実績、実証試験が不十分なため代替に時間を要する。
 代替品についてユーザーの実機で検証を行う必要がある。
 膨張黒鉛を使用するジョイントシートは、実証試験で性能が確認できているものは一部しかない。
 化学プラント等に使用するシール材は気密性について高い信頼性を必要とすることから代替化の検討に時間を要する。
仕様上の問題
 温度が450℃以上の水系流体の場合に、フランジのガスケット座が全面座、平面座等の配管フランジに使用できる非石綿のガスケットがない。
 ガラスライニングフランジは歪みやうねりがあるため、テフロン包みガスケットしか使用できず、その代替化は困難。
 石綿製品と代替品では厚さが異なるため、既設の配管のガスケット等の代替化に当たって問題が生じる可能性がある。
 膨張黒鉛ジョイントシートは、石綿ジョイントシートに比べ1枚のサイズが小さいため、配管の口径等が大きい場合には何枚かをつないで使う必要があり信頼性が低下する。
設備・装置の改造に係る問題
 石綿ジョイントシートガスケットを非石綿の渦巻き形ガスケットにすると最小締付け圧力の増加により求められるフランジの強度が大きくなることから、設計の見直し、設備・装置の改造等が必要。
 バルブの駆動部をシールするためのシール材(グランドパッキン)は、黒鉛系にすると摺動抵抗が増加するため、電気駆動の駆動部の改造等が必要。
(3)  ジョイントシート、シール材の代替可能性について
(1)  代替化が困難なもの
 主要な代替物である膨張黒鉛を使用したガスケットは、450℃以上の流体や、酸化性酸、酸化性塩等の腐食性流体、一部のハロゲン化合物等のガス系流体、硝酸ナトリウム等の炭素と反応して爆発するおそれがある物質等がある環境下においては使用できない
 テフロンガスケットは、高温使用ではクリープを発生しやすい
 大口径の配管等に使用するガスケットについては、膨張黒鉛シートガスケットを使用する場合、1枚のサイズが小さいため、何枚かをつないで使う必要があり、気密性等についての信頼性が低下する
 可燃性物質、引火性物質、有害性物質等を取り扱う化学プラントや放射性物質を扱う原子力発電所等で、内部の物質が漏洩し火災・爆発、健康障害等の発生の危険性がある等の箇所は漏れ等について厳しく管理する必要があり、特にそのような箇所で使用される非石綿製品の耐久性等について、実際の機械・設備による検証が済んでいない場合や同種の設備での検証データがない場合等がある
(2)  既に製造又は建設され、使用されている機械・装置や化学プラント等の設備等についての問題
 代替品の使用により、フランジの締付け圧力や座面の形状、摺動抵抗、厚さ等が変化し、設備・装置の設計の見直し・改造等の必要性がある
(3)  ジョイントシート・シール材として使用されている石綿製品は、高温の流体、腐食性の流体、ハロゲン化合物等のガス系流体が存在する環境下で使用されるもの内部の物質が漏洩し、火災・爆発・健康障害等の発生の危険性がある等の箇所に使用されるもの等については、安全確保の観点から石綿の使用が必要とされており、現時点で非石綿製品へ代替可能なものと代替困難なものを温度等の使用限界や使用される機器の種類等から明確に特定することは困難である。
 これらを代替化するに当たっては、非石綿製品の開発、非石綿製品の耐久性等の実証や当該製品が使用されている機械・設備等の設計の見直し・改造等に時間を要するものがあると考えられる。

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