第19回社会保障審議会医療保険部会 |
資料3 |
平成17年8月24日 |
社会保障審議会 医療部会
「医療提供体制に関する意見中間まとめ」の概要
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社会保障審議会医療部会において、本年8月1日に「医療提供体制に関する意見中間まとめ」のとりまとめが行われた。その概要は以下のとおり。 |
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厚生労働省
○ |
医療は、患者と医療提供者との信頼関係を基本として成り立つものであり、患者本位の医療を実現していくことが重要。安全で質の高い、よりよい医療の実現に向け、患者や国民が、自らも積極的かつ主体的に医療に参加していくことが望ましい。 |
○ |
医療機関等において、医師とその他の医療従事者が専門性を発揮しながら協力してチーム医療を推進していくことはもとより、地域において、患者を中心とした協力と連携の体制を構築していくことが必要。 |
○ |
医療提供体制については、それぞれの地域の状況やニーズに応じた適切な対応ということに十分留意しつつ、以上のような医療の望ましいあり方、理念に基づき、少子高齢化の進展等も踏まえながら、安全で安心できる、より質の高い効率的な医療サービスを提供するための改革に積極的に取り組んでいくべき。 |
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2. |
「改革のビジョン」の策定とこれまでの審議経過 |
○ |
平成15年8月に厚生労働省においてとりまとめた「医療提供体制の改革のビジョン」も踏まえながら、「患者の視点に立った、患者のための医療提供体制の改革を基本的な考え方とすべき」との共通認識のもと、医療制度改革の両輪である医療保険制度改革と歩調を合わせ、平成18年の国会への法案提出を念頭に、平成16年9月から検討を開始。これまで15回の会議を開催。 |
○ |
今後、平成17年中の意見のとりまとめを目指し、引き続き検討。 |
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<医療機関等による積極的な情報提供>
○ |
医療機関等が、その施設の医療機能に関する一定の情報を都道府県に届け出て、都道府県がそれらの情報を集積してインターネット等で住民にわかりやすく情報提供する枠組みの制度化など、医療機関等による積極的な情報提供の仕組みを導入。 |
<広告可能な事項の拡大>
○ |
医療機関等が広告可能な事項については、拡大していくことが適当。ポジティブリスト方式、ネガティブリスト方式という広告規制の方式については、二つの方法のメリット・デメリットを考慮しつつ、患者の情報ニーズ、利用者保護の観点、規制の実効性等の観点から、引き続き検討を進め、本年末までに結論を得る。 |
<医療の実績情報(アウトカム指標)の情報提供に係る基盤整備>
○ |
患者の関心が高い治癒率、術後生存率、患者満足度など医療の実績情報(アウトカム指標)については、客観性や検証可能性を確保するための手法の研究開発等、情報提供の速やかな基盤整備を行い、段階的に広告できる事項として追加すべき。 |
<インターネットによる適切な情報提供>
○ |
インターネットによる情報提供については、これまでと同様、広報として位置付け、広告規制の対象とはしない。ただし、虚偽等著しく不適切な内容が情報提供されている場合に、法令により実効性のある一定の規制を行うことのできる枠組みの創設を検討。また、適切な広報を行うためのガイドラインの作成・普及方策について検討すべき。 |
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<医療安全対策の基本的考え方>
○ |
医療安全対策については、「医療の質の向上」という観点を一層重視しつつ、医療に関する情報を国民、患者と共有し、国民、患者が医療に積極的に参加することを通して、医療の質の向上を図り、3つの柱からなる医療安全対策を総合的に推進。 |
<医療の質と安全性の向上>
○ |
無床診療所、歯科診療所、助産所及び薬局における安全管理体制の整備や病院等における院内感染制御体制の整備など |
<医療事故等事例の原因究明・分析に基づく再発防止対策の徹底>
○ |
医療関連死の届出制度・中立的専門機関における医療関連死の原因究明制度及び医療分野における裁判外紛争処理制度の具体化に向けた検討など |
<患者・国民との情報共有と患者・国民の主体的な参加促進>
○ |
医療安全支援センターの制度的位置付け、機能強化など |
※ |
関連する報告書等:「今後の医療安全対策について」(医療安全対策検討ワーキンググループ)(平成17年5月) |
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3. |
医療計画制度の見直し等による地域の医療機能の分化・連携の推進 |
<医療計画制度の見直し等>
○ |
それぞれの地域にふさわしい形で機能分化と連携を図り、望ましい保健医療提供体制を実現していくため、
・ |
主要な事業(がん対策、小児救急を含む小児医療対策、周産期医療対策、へき地医療対策など)ごとに、地域における医療連携体制を構築し、都道府県の医療計画に位置づけること |
・ |
医療計画に住民の視点に立った分かりやすい指標による数値目標を導入し、評価可能な計画としていくこと |
・ |
医療計画の作成からこれに基づいた事業の実施、事業に係る政策評価、そして次期医療計画への見直しという政策の循環が促進されるようにすること |
等により、実効性ある医療計画制度となるよう見直すべき。 |
○ |
新しい医療計画制度によって、地域の医療機能の適切な分化・連携を進め、急性期から回復期、慢性期を経て在宅療養への切れ目のない医療の流れを作り、患者が早く自宅に戻れるようにすることで、患者の生活の質(QOL)を高め、また、必要かつ十分な医療を受けつつトータルな治療期間(在院日数を含む。)が短くなる仕組みをつくることが必要。 |
※ 関連する報告書等: |
「医療計画の見直し等に関する検討会」中間まとめ(平成17年7月) |
<地域医療支援病院、特定機能病院制度のあり方>
○ |
地域医療支援病院については、周辺に紹介・逆紹介先がないような病院であっても、地域の実情に応じて地域医療の支援を担い地域連携を実施している医療機関が承認を得られるよう、紹介・逆紹介率に係る要件を含め、そのあり方について、引き続き検討が必要。 |
○ |
特定機能病院制度については、その承認を受けている病院であっても必ずしも病院全体として高度な医療を提供しているとは限らないなどの指摘もあり、承認要件や名称を含めた特定機能病院制度のあり方について、引き続き検討が必要。 |
<人員配置標準のあり方>
○ |
病院薬剤師や看護職員等に関し、医療安全等の観点から、夜間帯の体制確保も考慮して人員配置標準を充実させることについて、また、病院における外来患者数に基づく医師数の規定の必要性について、引き続き検討が必要。 |
○ |
へき地や離島等医療が不足する地域において、都道府県知事が、医療計画等において、医療提供の体制を確保できると判断できる場合には、指定した一定の圏域内の医療機関については、全国一律の配置標準より緩やかに設定する数を上回っていれば「標準を欠く」には当たらないこととする仕組みの創設について検討すべき。 |
<有床診療所のあり方>
○ |
病院と診療所(有床診療所)に係る医療法に基づく諸基準の違い(48時間の入院期間制限や人員配置標準等)については、機能の異なる様々な診療所が存在することや、現に地域医療で果たしている役割を踏まえつつ、医療計画制度や診療報酬との関係なども含め、それぞれの機能に応じた適切なあり方を検討すべき。 |
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4. |
母子医療、救急医療、災害医療及びへき地医療体制の整備 |
○ |
母子医療のうち、周産期医療については、全都道府県に周産期医療ネットワークを構築し、これを医療計画に位置づけ、安心して出産できる体制をつくることが必要。小児医療については、各地域において、医療連携体制を構築し、これを医療計画に位置づけていくことを通じ、地域での小児医療施設の再編・集約化や診療所と病院との連携強化を図る等、患者の受療行動に応じた切れ目のない保健医療提供体制を構築することが必要。 |
○ |
救急医療、災害医療については、各地域において、医療連携体制を構築し、これを医療計画に位置づけ、必要な体制を整えていくことが必要。 |
○ |
へき地医療については、医療計画に医療連携体制を位置付けるとともに、へき地診療所や巡回診療等による医療の確保や、代診医の派遣調整、情報通信技術を活用した診療支援等、具体的な取組を進めることが必要。 |
※ 関連する報告書等: |
「へき地保健医療対策検討会」報告書(平成17年7月) |
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5. |
地域、診療科等での医師の偏在解消への総合対策 |
○ |
医師の地域偏在については、離島やへき地での勤務への動機付け(医師のキャリア形成における地方勤務の評価など)などの施策について、関係省庁とも連携し、幅広く検討していくことが必要。 |
○ |
産科や小児科、救急医療など診療科・部門による偏在については、診療報酬での適切な評価など不足している診療科への誘導、地域内の病院・診療所の協力体制整備などの施策について、幅広く検討することが必要。 |
※ 関連する報告書等: |
「医師の需給に関する検討会」中間報告書(平成17年7月) |
○ |
医師の地域偏在や診療科等での偏在は、患者、国民の医療の確保にとって極めて重要な問題であることから、関係省庁とも連携し、早急に総合的な対策を取りまとめるべき。 |
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○ |
患者・家族が希望する場合の選択肢となりうる、終末期を含めた在宅医療の体制を地域において整備することが重要。 |
○ |
在宅医療に関する情報が積極的に提供される環境整備、在宅医療を担うことのできる人材の養成、在宅医療に係る地域の医療連携体制の構築など、医療提供体制改革の各課題の解決を通じて、在宅医療を推進。 |
○ |
訪問看護サービスの充実・普及、薬局・薬剤師の積極的な関与、医療機関における退院調整機能の促進など、主治医をはじめ、多職種が協働して患者を支える体制整備が必要。 |
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○ |
医療法人制度全体について非営利性をより明確にし効率性や透明性の向上を図ることなどについて検討するとともに、高い公益性がある医療法人が、都道府県が作成する医療計画に基づいた医療を積極的に担っていく方向を目指すことが必要。 |
○ |
安定した医業経営の実現の観点から、資金調達手段の多様化や、地域の住民や企業が寄附等を通じて医療法人を地域で支えていく仕組みを検討することが必要。 |
○ |
医療法人の公益性の内容を明確にした上で、高い公益性のある医療法人への寄附金を促進する等の税制措置が講じられるべき。 |
○ |
法人設立等の際の財産拠出者に係る「持ち分」の取扱いについての見直しを行う際には、新制度への移行については、法人運営に支障を来すことのないよう、必要な経過措置等を講ずるべき。 |
※ 関連する報告書等: |
「医業経営の非営利性等に関する検討会」報告書(平成17年7月) |
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<医師等に係る行政処分のあり方>
○ |
医業停止の行政処分を受けた医師等に対する再教育のあり方(目的、内容、対象者、助言指導者等)について整理し、医師法等の改正により再教育を義務付けることが必要。 |
○ |
戒告など医業停止を伴わない新たな行政処分の類型の設置など、行政処分の在り方等について引き続き検討を進めるべき。 |
※ 関連する報告書等: |
「行政処分を受けた医師に対する再教育に関する検討会」報告書(平成17年4月) |
<保健師・助産師・看護師資格のあり方>
○ |
看護師資格を持たない保健師及び助産師の看護業務、看護師等の名称独占、行政処分を受けた看護職員に対する再教育、免許保持者の届出義務の創設等について、必要な措置を講ずるべき。 |
※ 関連する報告書等: |
「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」中間まとめ(平成17年6月) |
<専門医のあり方>
○ |
専門医の質の確保に当たり、国あるいは公的な第三者機関が一定の関与を行う仕組みとすることを含め、医療の質の向上と医療安全のさらなる推進を図る上での専門医の育成のあり方について検討すべき。 |
○ |
心臓外科や血管外科等特に高い専門性が求められると考えられる一定の領域について、専門医の養成・確保や専門的医療を行う病院の位置づけを通じて、医師の専門性を評価する仕組みについても検討。 |
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○ |
電子カルテやレセプト電算処理の普及など医療の情報化の一層の推進のため、セキュリティ確保等の必要な基盤整備を図りながら、効果的な普及方策を検討し、積極的に推進すべき。 |
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