第19回社会保障審議会医療保険部会 資料2
平成17年8月24日


我が国の医療について



I  医療提供体制の現状について


医療提供体制の各国比較(2001)
【我が国の医療の特徴】
 人口当たり病床数が多い。
 病床当たり医療従事者数は少ない。
 平均在院日数が長い。
国名 人口千人当たり
病床数
(床)
病床百床当たり
の医師数
(人)
病床百床当たり
の看護職員数
(人)
平均在院日数
(日)
外来受診率
(回)
日本 12.8
(2003)
15.6
(2002)
42.8
(2002)
28.3
(2003)
14.5
ドイツ 9.1 39.6 102.2 11.6 7.3
(2000)
フランス 8.2 35.2
(1998)
69.7
(1997)
13.5 6.9
イギリス 4.1 43.9 129.2 8.3 4.9
(2000)
アメリカ 3.6 77.8 230.0
(1999)
6.7 9.0
※ 外来受診率: 1人の国民が1年間に外来医を受診する平均回数


医療法改正の経緯

終戦後:感染症等の急性期患者が中心の時代。医療へのフリーアクセス確保のため、医療機関、医療従事者の量的な充実が急務。
1948年 医療法制定 医療水準の確保を図るため病院の施設基準等を整備
 高齢化の進展、疾病構造の変化(急性疾患→慢性疾患)。国民の意識の変化
 量的整備がほぼ達成→医療機関の地域偏在の解消。医療施設の機能の体系化。
 医療の高度化・専門化、チーム医療の進展。
1985年 第一次改正 医療計画の創設
1992年 第二次改正 療養型病床群制度導入・特定機能病院制度導入
1997年 第三次改正 診療所への療養型病床群導入
2000年 第四次改正 病床区分見直し(療養病床と一般病床の区分)・医療情報提供の推進・臨床研修必修化


 我が国は、諸外国と比して人口当たり病床数が多いが、医療計画制度を導入以降、上昇傾向に歯止めがかかっている。
人口当たりの病床数の国際比較のグラフ
 2000年までは旧医療法に規定する「その他の病床」であり、2001・2002年は「一般病床」、「療養病床」及び「経過的旧その他の病床(経過的旧療養型病床群を含む。)」を指す。


 我が国の平均在院日数は、減少傾向にあるが、諸外国と比して長い。
平均在院日数の国際比較のグラフ
 2000年までは旧医療法に規定する「その他の病床」であり、2001・2002年は「一般病床」、「療養病床」及び「経過的旧その他の病床(経過的旧療養型病床群を含む。)」を指す。



II  医療機能の分化・連携について


第4次医療法改正による病床の機能分化のイメージ

第4次医療法改正による病床の機能分化のイメージ図
   将来
第4次医療法改正による病床の機能分化のイメージ図
 ※  上記では、一般病床、療養病床以外の病床(精神病床、感染症病床、結核病床)については、簡略化するため省略している。


病院病床の機能分化(イメージ)
病院病床の機能分化(イメージ)の図
病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション等の十分な連携
急性期医療〜医療従事者による手厚い治療・サービスの重点・集中化を通じて、早期退院が可能になり、平均在院日数が短縮され、病床数は必要な数に集約化されていく。
このほか、一般病床は、地域のニーズと医療機関の選択により、難病医療、緩和ケア、リハビリテーション、在宅医療の後方支援などの特定の機能を担う。
長期療養が必要な患者については、良質な療養環境と社会復帰を目指した医療を提供
かかりつけ医(歯科医、薬剤師)は、地域の第一線の機関として普及定着、訪問看護ステーションの普及とあわせて在宅医療が充実


一般病床・療養病床の状況について

 病床区分の届出結果(平成15年9月1日)
  一般病床 92万3千床 (72.7%)
  療養病床 34万6千床 (27.3%)
合計  126万9千床  
(参考) 平成12年10月1日 医療施設調査
 旧その他病床(療養型病床群を除く)  102万3千床 (80.9%)
 療養型病床群 24万1千床 (19.1%)
  合計 126万4千床  

 平成17年5月末 医療施設動態調査(概数)
  一般病床 90万7千床 (72.0%)
  療養病床 35万4千床 (28.0%)
合計  126万1千床  

 療養病床における介護保険及び医療保険の適用状況
  療養病床数・・・・・・・・・・・・ 371,255床  
   うち 介護保険適用 ・・・・・・ 136,179床 (37%)
医療保険適用 ・・・・・・ 235,076床 (63%)
(平成15年9月現在 厚生労働省老健局振興課調べ)



III  在宅医療について


在宅医療費が国民医療費に占める割合

 在宅医療費(※)は増加しているものの、国民医療費に占める割合は2%程度となっている。
(※)医科診療費の在宅医療費である。
在宅医療費と国民医療費
在宅医療費が国民医療費に占める割合
在宅医療費と国民医療費のグラフ
注) 国民医療費、社会医療診療行為別調査(いずれも統計情報部)をもとに算出


在宅医療費の推移と内訳

 在宅で療養する患者に対する診療としては、「往診」(患家の求めに応じて患家に赴いて診療するもの)のほか、近年、「訪問診療」(居宅で療養する患者で通院困難な者に対し、その同意を得て計画的な医学的管理の下に、医師等が定期的に訪問して診療を行うもの)が大きく増加している。また、在宅で療養する患者又はその看護にあたる者に対して、医師が当該患者の医学管理を十分に行い、在宅療養の方法や注意点等についての指導等を行う「在宅療養指導管理料」も近年大きく伸びている。
在宅医療費の推移と内訳のグラフ
注) 国民医療費、社会医療診療行為別調査(いずれも統計情報部)をもとに算出


訪問看護の事業量と国民医療費に対する割合の推移

 平成4年度に創設された訪問看護の事業量は、介護保険分も含め伸びているが、国民医療費に対する割合は、合計しても0.5%程度にとどまる。
訪問看護の事業量と国民医療費に対する割合の推移のグラフ
注) 国民医療費(統計情報部)、介護保険事業報告をもとに作成


訪問看護ステーション数の年次推移

 平成4年の訪問看護ステーションの制度化以来、訪問看護ステーションの件数は増加してきているが、介護保険制度が導入された平成12年以降の伸びは鈍化している。
訪問看護ステーション数の年次推移のグラフ

平成5年〜11年(10月1日):訪問看護実態調査(統計情報部)
平成12年〜15年(10月1日):介護サービス施設・事業所調査(統計情報部)


死亡の場所の推移

死亡の場所の推移のグラフ
人口動態統計調査より


終末期における療養の場所

問 ご自身が痛みを伴い治る見込みがなく死期が迫っている場合、療養生活は最期までどこで送りたいですか。

終末期における療養の場所のグラフ
終末期における療養の場所のグラフ 終末期医療に関する調査等検討会報告書(H16)より


自宅で最期まで療養することが困難な理由

問 最期までの自宅療養が実現困難であるとお考えになる具体的な理由をいくつでもお答えください。

自宅で最期まで療養することが困難な理由のグラフ
終末期医療に関する調査等
検討会報告書(H16)より


地域における高齢者の生活機能の重視
 急性期の入院から、回復期(亜急性期)等を経て、在宅(多様な居住の場)での療養に至る患者の流れを促進
 在宅(多様な居住の場)における介護サービスと連携した医療サービスの充実を図ることにより、患者の生活の質(QOL)の向上を図るとともに、入院から在宅への患者の流れを促進し、社会的入院の解消を図る
地域における高齢者の生活機能の重視の図



IV  特定の地域や診療科における医師の偏在について


 平成10年に発表された「医師の需給に関する検討会」報告書によると、遅くとも平成29年には医師が過剰になると推計されている。
 医師数は毎年4,000人程度増加しているにもかかわらず、特定の地域や診療科において医師の不足感が強い。
↓
例えば、小児科・産科では、
 小児科医は地域偏在、女性医師の増加、救急、夜間・休日診療が問題の背景にある。産科医は産科志望者の減少や高齢化に伴う実働医師数の将来的な減少、女性医師の増加が問題の背景にある。
 いずれも医療機関や医師の統合・集約化などによる医療の効率化が必要
 小児科については、休日・夜間診療の対策が重要


診療科医師数の年次推移

診療科医師数の年次推移のグラフ 診療科医師数の年次推移のグラフ


米国の人口当たり医師数を1とした場合の日本の医師数

米国の人口当たり医師数を1とした場合の日本の医師数のグラフ



V  診療報酬体系の見直しに係る「基本方針」について


診療報酬体系の見直しに係る「基本方針」
(平成15年3月閣議決定)

基本的な考え方]
 少子高齢化の進展や疾病構造の変化、医療技術の進歩等を踏まえ、社会保障として必要かつ十分な医療を確保しつつ、患者の視点から質が高く最適の医療が効率的に提供されるよう、必要な見直しを進める。
 その際、診療報酬体系の評価に係る基準・尺度の明確化を図り、国民に分かりやすい体系とする。

基本的な方向]
(1)  医療技術の適正な評価(ドクターフィー的要素)
(2)  医療機関のコストや機能等を適切に反映した総合的な評価(ホスピタルフィー的要素)
(3)  患者の視点の重視
等の基本的な考え方に立って見直しを進める。

具体的な方向]
 医療技術の適正な評価
(1)  難易度、時間、技術力等を踏まえた評価
 出来高払いを基本とし、医療従事者の専門性やチーム医療にも配慮しつつ、難易度、時間、技術力等を踏まえた評価を進める。そのために必要な調査・分析を進める。
(2)  栄養・生活指導、重症化予防等の評価
 高脂血症、高血圧、糖尿病等の生活習慣病等の重症化予防を重視する観点から、栄養・生活指導、重症化予防等の評価を進める。
(3)  医療技術の評価、再評価
 医療技術の進歩や治療結果等を踏まえ、新規技術の適切な導入等が図られるよう、医療技術の評価、再評価を進める。
 医療機関のコスト等の適切な反映
 入院医療について必要な人員配置を確保しつつ、医療機関の運営や施設に関するコスト等に関する調査・分析を進め、疾病の特性や重症度、看護の必要度等を反映した評価を進めるとともに、医療機関等の機能の適正な評価を進める。
(1)  疾病の特性等に応じた評価
(1)  急性期入院医療
 平成15年度より特定機能病院について包括評価を実施する。また、その影響を検証しつつ、出来高払いとの適切な組合せの下に、疾病の特性及び重症度を反映した包括評価の実施に向けて検討を進める。
(2)  慢性期入院医療
 病態、日常生活動作能力(ADL)、看護の必要度等に応じた包括評価を進めるとともに、介護保険との役割分担の明確化を図る。
(3)  その他
 回復期リハビリテーション、救急医療、小児医療、精神医療、在宅医療、終末期医療等について、医療の特性、患者の心身の特性、生活の質の重視等を踏まえた適切な評価を進める。
(2)  医療機関等の機能に応じた評価
(1)  入院医療
 臨床研修機能、専門的機能、地域医療支援機能等の医療機関の機能及び入院期間等に着目した評価を進める。
(2)  外来医療
 外来医療については、大病院における専門的な診療機能や紹介・逆紹介機能等を重視した評価を行うとともに、診療所及び中小病院等における初期診療、かかりつけ医・かかりつけ歯科医・かかりつけ薬剤師の機能、訪問看護、在宅医療等のプライマリケア機能等を重視した見直しを進める。
 患者の視点の重視
(1)  情報提供の推進
 医療機関の施設基準や機能等に関する情報、診療・看護計画等の情報の提供を進める。
(2)  患者による選択の重視
 患者ニーズの多様化や医療技術の高度化を踏まえ、特定療養費制度の見直しを行う等患者の選択によるサービスの拡充を図る。
 その他
(1)  歯科診療報酬
 口腔機能の維持・増進の観点から、歯科診療所と病院歯科における機能や連携に応じた評価、う蝕や歯周疾患等の重症化予防、地域医療との連携を重視した在宅歯科医療等の評価を進める。
(2)  調剤報酬
 医薬品の適正使用の観点から、情報提供や患者の服薬管理の適正な推進等保険薬局の役割を踏まえた評価を進める。
(3)  薬価・医療材料価格制度
 薬価算定ルールの見直しについて検討を行う。
 画期的新薬について適切な評価を推進するとともに、後発品の使用促進のための環境整備を図る。
 医薬品等に係る保険適用及び負担の在り方について検討を行う。
 医療材料価格について、引き続き、内外価格差の是正を進める。
 医薬品、医療材料、検査等について、市場実勢価格を踏まえた適正な評価を進める。

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