建設雇用改善計画(第七次)(案)

目次


I 計画の基本的考え方
 計画の背景と課題
 計画の期間

II 建設雇用等の動向
 建設経済の動向
 雇用者の動向
 建設技能労働者の需給動向
 労働条件の動向
 職業能力開発の動向

III 雇用の改善等を図るために講じようとする施策に関する基本的事項
 魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備
(1) 建設雇用改善の基礎的事項の達成
(2) 労働環境の整備
 職業能力開発の推進
(1) 事業主等の行う職業能力開発の促進
(2) 労働者の自発的な職業能力開発の促進
(3) 熟練技能の維持・承継及び活用
 若年労働者等の確保及び建設業に対する理解の促進
 高年齢労働者及び女性労働者の活躍促進
(1) 高年齢労働者の活躍促進
(2) 女性労働者の活躍促進
 円滑な労働力需給の調整等による建設労働者の雇用の安定等
(1) 円滑な労働移動及び新規・成長分野への進出の支援
(2) 建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の趣旨
(3) 建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営の確保
 雇用改善推進体制の整備
(1) 建設議場主における雇用管理体制等の整備
(2) 事業主団体等における効果的な雇用改善の推進
(3) 地域の実業を踏まえたきめ細やかな雇用改善の推進
(4) 雇用改善の気運の醸成
(5) 建設雇用改善助成金制度の活用
(6) 関係行政機関相互の連携の確保等
(7) 雇用改善を図るための諸条件の整備
 外国人労働問題への対応



I 計画の基本的考え方
 1 計画の背景と課題
(1) 我が国経済の現状をみると、景気は、弱さを脱する動きが見られ緩やかに回復しており、また、雇用情勢については、厳しさが残るものの改善に広がりが見られる状況にある。また2007年には人口が減少に転じ、団塊の世代が60歳代に到達する等、我が国の経済社会が大きな転換点を迎えることとなり、労働者の意欲と能力がなからずしも活かされていない状況が放置されれば、労働力の大幅な減少や人材の質の低下等様々な問題が生じ、経済社会の停滞等を招くおそれが指摘されている。
 このような経済状況の下、建設経済の現状をみると、建設投資が減少傾向で推移し、将来的にも大きな伸びが期待できないという厳しい環境にあり、建設業も競争の激化の中で、優勝劣敗、淘汰の時代となっており、建設事業主が必要な技能等を有する労働者を確保し、建設業内外の新分野に進出することにより、建設労働者の雇用の安定を図ることが重要になってきている。
 また、建設業における雇用の現状をみると、厳しい経済状況等を背景とした総量としての雇用需要の減少によって雇用過剰感がみられることから、新分野進出を図るほか、余剰となっている労働者について、円滑な労働移動を図ることが必要である。
 一方、技能労働者については、過剰と不足の間を行き来するとともに、過剰とする企業と不足とする企業が常に一定量存在する状況が生じている。さらに、建設業の労働力構成は、若年者の入職率が低いこと等により他産業に比べて中高年齢層の占める割合が高く、全体の過半数が45歳以上で、その過半数が55歳以上となっており、若年労働力の減少と相まって、将来的には労働力が大幅に不足することが懸念される。
 また、高齢化した技能労働者の引退等のほか、建設業を取り巻く厳しい環境の下、認定職業訓練校等の教育訓練施設の休・廃校が進行しており、高度な教育訓練を受け、高い水準の技術・技能を習得した人材の育成・確保が必要となる。
 加えて、労働力の確保の観点から、若年者の建設業に対する関心を喚起するとともに建設業の社会的評価を向上させるため、建設労働に対するイメージアップを図る必要がある。
 さらに、従来より我が国建設業においては、受注生産、個別生産、屋外生産、移動生産、総合生産といった建設生産の特性と、重層的下請構造及び中小零細企業の割合の高さという特徴を背景として、不明確な雇用関係、臨時・日雇労働者への依存、労働災害の多発、労働条件・労働福祉の立ち遅れ、適切な職業能力開発の機会の不足等の問題が存在しており、これらの問題への適切な対応については、今後も万全を期していく必要がある。
(2) 以上を踏まえ、「建設雇用改善計画(第七次)」においては、「高い意欲と能力を持つ建設労働者が安心して生活できる労働環境とする建設雇用改善を推進するとともに建設産業における就業機会の確保・拡大を図る」ことを課題とし、次の事項を最重点事項として、施策を推進していくこととする。

(1) 建設労働者の職業生活の全期間を通じた職業の安定を図りつつ、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」(昭和51年法律第33号。以下「建設雇用改善法」という。)等に基づき、建設労働者の雇用の一層の近代化を進め、魅力ある労働環境づくりを図ること。
(2) 建設労働を取り巻く環境の変化も踏まえ、事業主等が行う職業能力開発を引き続き促進する中で、教育訓練の共同・広域的実施を推進しながら、建設労働者自らがその能力の開発を行えるようにし、その職業能力を高めるとともに、技能の伝承を図ること。
(3) 今後の労働力需給構造の変化を見通しながら、若年者の建設業への入職促進及び定着を図るとともに、高年齢者や女性が活躍できるような労働環境の整備を図ること。
(4) 建設事業主が、新分野において中核的な役割を果たす労働力を確保して新分野進出を円滑に行うことにより、現に雇用されている建設労働者の雇用の安定を図るとともに、企業単位での一時的な労働力の過不足が恒常的に発生する建設業務労働者の雇用の安定を図るため、建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営を確保すること。

 2 計画の期間
 この計画の期間は、平成17年10月から平成22年度までとする。


II 建設雇用等の動向
 1 建設経済の動向
 平成17年度の建設投資は、名目で前年度比2.7%減の51兆3,300億円、実質(平成7年度基準)で同3.1%減の51兆7,500億円程度となる見通しであり、実質ベースではピークの平成2年度から約40%の減少と見込まれている。
 建設投資の動向をみると、名目では、昭和59年以降、平成2年度まで民間投資の増加により前年度比プラスで推移し平成4年度には84兆円に達した。その後、主に民間投資の減少により平成6年度及び7年度は80兆円を下回り、平成8年度に民間住宅投資の増加により一時的に80兆円台となって以降減少傾向に転じ、平成14年度には50兆円台まで減少し、これ以降も引き続き減少傾向を示している。国内総生産(名目)に占める建設投資の割合も、昭和61年以降では平成2年度の18.1%をピークに低下しており、平成17年度は10.0%となる見通しである。
 今後の建設投資の見通しについては、平成18年度については公共投資について景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準を目安に重点化・効率化が推進されることとされていることなどから、急速に回復するとは考えにくい状態となっている。

 2 雇用者の動向
(1) 建設業の就業者数は、平成2年以降の建設投資の減少の中でも増加を続けていたが、平成9年の685万人(全産業に占める割合は10.4%)をピークに減少に転じ、平成16年には584万人(全産業に占める割合は9.2%)とピークの平成9年と比較して約15%の減少となっている。
 また、過剰感を見ると、平成16年の建設投資額が急激に増加し始めた昭和60年の水準以下まで減少している一方で、就業者数は、平成16年度では昭和60年の水準を約50万人上回っているなど、全産業の中でももっとも高くなっている。
 なお、技能労働者の数をみると、建設技能労働者の就業者数は、平成9年の455万人をピークに減少に転じ、平成16年には385万人となっており、建設業就業者全体と同様の傾向で推移している。
(2) 雇用者数も同様の傾向を示しており、平成9年の563万人(全産業に占める割合は10.4%)をピークに減少に転じ、平成16年には476万人(全産業に占める割合は8.9%)となっている。なお、企業の経営状況が厳しい中、技能労働者については、子会社への移籍、独立の動きがみられる。
(3) 建設業における雇用者のうち、日雇労働者の占める割合は、平成16年で4.2%となっており、非建設業2.0%に比べてなお高い割合となっている。
(4) 雇用者数を事業所規模別にみると、30人未満規模の小零細事業所に雇用されている雇用者の割合は平成16年で64.9%(非建設業29.6%)となっており、小零細事業所に雇用されている雇用者の割合が高くなっている。
(5) 出稼労働者の就労先産業は、平成12年には製造業がもっとも高い割合を占めていたが、平成14年では建設業の割合が約55%と最も高くなっている。
(6) 若年者の入離職の状況については、新規学校卒業就職者に占める建設業就職者の割合は、平成8年の8.4%をピークに下降傾向を示し、平成16年には5.0%となり、実数においても平成8年の半分以下の約3万2千人となっている。全産業における就業者の約1割を建設業における就業者が占めていることから、新規学校卒業就職者の建設業への入職はやや少ないといえる。
 建設業に就職した新規高等学校卒業就職者の入職3年後の離職率については、昭和60年以降では、平成4年3月卒業者の39.4%を底に、以後上昇を続け、平成13年3月卒業者の入職3年後の離職率は56.0%と、全産業より約7ポイント高い状況にある。
(7) 建設業における就業者に占める若年層(15〜29歳)の割合は、平成元年の16.4%を底に上昇を続け、平成9年の22.0%をピークに減少傾向にあり、平成16年は16.1%となっており、非建設業の21.6%に比べてやや低くなっている。
(8) 建設労働者の高齢化の状況については、建設業における就業者に占める高年齢層(55歳以上)の割合は、昭和53年以降上昇傾向にあり、平成16年には28.1%と、非建設業の23.5%に比べてやや高くなっている。また、平成16年における建設労働者の平均年齢は42.5歳であり、非建設業の39.8歳と比べると高齢化している。
(9) 女性労働者の就業状況については、建設業における就業者に占める女性労働者の割合は、昭和60年以降では平成3年の16.7%をピークに低下し、平成16年においては14.7%と、非建設業の45.2%に比べてかなり低くなっている。また、技能労働者のみについてみても、建設技能労働者に占める女性技能労働者の割合は平成16年には2.9%となっており、全産業の24.5%に比べてかなり低くなっている。

 3 建設技能労働者の需給動向
 建設技能労働者の過不足状況については、全体的には平成10年以降過剰と不足の間を行き来している。また、企業単位で見ると、過剰とする企業と不足とする企業がともに一定量存在している。
 また、建設技能労働者については、高齢化が進む一方、若年労働者が減少していることから、今後、不足することが懸念される。

 4 労働条件の動向
(1) 労働時間の状況をみると、平成9年4月1日からの週40時間労働制の全面適用を経て、建設業における規模5人以上の事業所の1人当たりの年間総実労働時間は、平成10年に2,009時間となって以降上昇に転じ、平成16年では2,058時間となり、非建設業の1,796時間と比べるとかなり長時間労働となっている。
(2) 週休制の状況をみると、建設業において完全週休2日制を導入している企業の割合は、規模30人以上の企業に対する調査で、平成16年では25.3%と土曜閉所の割合も低いことなどから、非建設業の48.8%に比して普及が遅れている。
 また、年次有給休暇についても、付与日数、取得日数、取得率のいずれも全産業を下回っている。
(3) 賃金制度の状況を建設業の常用労働者の主な賃金形態別企業数割合についてみると、月給制(欠勤差引なし)を採用している企業の割合は、平成16年度の調査で29.1%となっており、平成14年度の調査での34.0%に比して低くなっている。しかし、月給制(欠勤差引あり)を採用している企業の割合は平成16年度で48.8%となっており、平成14年度の44.6%と比して高くなっている。
(4) 労働災害の状況をみると、建設業における休業4日以上の死傷災害は昭和53年以降減少を続けている。死亡災害は昭和60年代から年間1,000人前後で横ばいで推移していたが、平成7年以降減少に転じ、平成16年では594人となっており、全産業に占める割合は、死傷者数で22.8%、死亡者数で36.7%である。
 また、死傷者に占める死亡者割合は2.1%で全産業の1.3%に比べると高い状況にある。

 5 職業能力開発の動向
(1) 建設業のOFF−JT(通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練)の実施状況をみると、平成13年度には63.8%の企業が実施していたものが、平成14年度には53.8%に低下している。平成14年度については、全産業の実施率の48.7%、製造業の51.3%よりは若干上回っている。
 計画的なOJTの実施状況についても、実施した企業の割合は平成13年度では52.1%であったが、平成14年度は43.8%に低下している。平成14年度については、全産業の41.6%からみると高い割合であるが、製造業の45.7%よりは低い状況である。
(2) OFF−JTの未実施の理由については、平成13年度の調査では「仕事が忙しく、教育訓練を受けさせる時間がない」が40.2%で最も多く、「教育訓練に要する費用を負担する余裕がない」が31.8%で続いている(複数回答)。


III 雇用の改善等を図るために講じようとする施策に関する基本的事項
 建設労働者の雇用改善を進めるに当たっては、その職業生活の安定を図ることが前提となるが、建設投資が減少し、建設業を取り巻く環境が厳しさを増す中、建設労働者の雇用が不安定化するとともに、建設労働者の福祉が後退するおそれがある。
 労働者の職業生活の安定を図るためには、雇用過剰感や技能労働者を過剰とする企業と不足とする企業の併存、建設事業主の新分野進出等がみられる現状においては、建設業内外への円滑な労働移動の支援、建設業内外の新分野進出の促進、職業能力開発の推進、労働力需給調整機能の強化等を通じて、雇用の安定を図ることが必要である。
 また、建設労働に関しては、依然として雇用関係が不明確、労働条件その他の福祉の立ち後れ、職業能力開発が十分に行われていない等の問題があり、引き続きこれらの改善を図っていくことが必要である。
 さらに、今後、技能労働者の高齢化の進行等を背景に、技能労働者が不足するおそれがあることから、技能労働者を育成・確保していくことが必要である。
 このため、建設労働者の職業生活の安定にも十分に配慮した上で、前述のような建設雇用等の動向を踏まえ、建設労働者の雇用状態の改善、職業能力の開発及び向上、福祉の増進等雇用の改善を一層促進することにより、建設業の魅力ある産業としての発展に資するため、次の施策を積極的に推進する。

 1 魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備
(1) 建設雇用改善の基礎的事項の達成
(1) 建設労働者の雇入れの主体及び雇用契約の内容等を明確にするため、雇入通知書の交付等による労働条件の明示について、公共職業安定機関と労働基準監督機関との連携を密にし、的確に指導及び監督を行う。また、日雇労働者等の建設労働者に対する雇入通知書の交付等の徹底を図るため、元請事業主による下請事業主に対する指導及び援助を促進する。
(2) 建設業務の実施に当たり労働者募集及び請負が適正に行われるよう、「建設雇用改善法」、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(昭和60年法律第88号)等の遵守に向け、的確な指導及び監督を行う。
(3) 臨時・日雇労働者といった不安定な雇用形態の労働者の雇用の安定を図るため、常時使用している技能労働者の常用化・月給化、季節労働者の通年雇用化、公共職業安定所を通じた就労やグループによる就労等による出稼労働者の安定就労の確保等を推進する。
(4) 労働時間については、働き方の多様化が進展する中で、全労働者一律の労働時間の目標に向けて労働時間の短縮の取組を促す従来の手法から、労働者の健康や生活に配慮した労働時間や休日の設定に、労使が自主的に取り組むことを促進する。
 なお、建設業においては、天候や納期の問題から完全週休2日制の普及が遅れているところであり、その普及が重要であるが、事業主が完全週休2日制を実施するに当たっては、土日連続全休制による現場閉所が望ましいが、当面は、国民の祝日も含めて週に2回の休日を設定する等、各企業の各部門や現場の状況に合わせて取り組む必要がある。
(5) 墜落や建設機械等による災害、アスベスト対策等の労働災害防止に向けた事業主の取組を一層促進するため、労働災害防止計画等を踏まえ、「労働安全衛生マネジメントシステム」の一層の普及・定着を図るとともに、「安全衛生情報センター」の活用等により安全衛生教育を推進する。
 また、中小総合工事業者を対象とした研修会の実施等により中小総合工事業者の安全衛生管理活動及び安全水準の向上を支援するほか、雇入時の健康診断の実施を促進するために中小建設事業主が期間雇用者に行う雇入時の健康診断に対する助成を行う。
 さらに、高年齢者の割合が高く、今後も高年齢化が進むことから、労働者の健康管理や職場における適正配置等の指導等を推進する。
(6) 労働保険及び社会保険への加入促進を図るため、関係事業主団体等との連携の下に、啓発・指導を推進する。特に、中小零細建設事業主の労働保険への加入促進については、労働保険事務組合の活用を図るとともに、特別加入制度の周知に努める。
(7) 建設業における退職金制度の整備を図るため、建設業退職金共済制度等中小企業退職金共済制度の適正な運営に向けて、事業主の理解を進めるとともに、制度が広く普及するよう、啓発・指導を強化する。また、年間を通じた「中小企業退職金共済制度加入促進」の取組等を通じて退職金共済制度への加入を一層促進する。
(2) 労働環境の整備
(1) 屋外生産、移動生産といった建設業の特性等により、他産業に比べて必ずしも良好な状況にない建設労働者の労働環境を改善するため、作業員宿舎や食堂、休憩室、浴室・シャワーその他の現場福利施設の整備に対して引き続き助成を行うとともに、建設工事現場において清潔、安全かつ快適な職場環境を形成するための措置を継続的かつ計画的に講ずるよう、建設事業主に対して引き続き指導を行う。
(2) 建設業を一層魅力ある雇用の場とするため、助成制度について継続的に政策評価、見直しを行い、助成制度の効率的、効果的な活用を図る。

 2 職業能力開発の推進
(1) 事業主等の行う職業能力開発の促進
(1) 自己の雇用する労働者に対して事業主が必要な教育訓練を行うことは、各々の事業主の責務であるとともに、建設労働者の職業生活の全期間を通じた職業の安定及び地位の向上を図るために重要である。
 また、若年者を初めとした技能労働者の確保、新技術への対応、新∨分野への進出、円滑な労働移動等の面からも重要な課題である。
 このため、建設労働者の育成・確保に重要な役割を果たしている認定職業訓練等の実施を促進するため、関係行政機関と密接に連携しつつ、特に中小建設事業主等が行う認定職業訓練及び短期的な教育訓練である技能実習に対して引き続き助成を行う。
 また、様々な労働者が集団として作業を進めている建設現場の実態に即した集団作業の中での実践的な技能の向上などを図る観点から、建設現場における業務を通じた教育訓練の活用を図ることとし、広域的な訓練を支援する観点から富士教育訓練センター等における訓練に対して助成の拡充を検討するほか、公共職業能力開発施設等において、建設労働者に係る職業訓練を積極的に実施する。
 さらに、事業内教育訓練の実施体制が脆弱な中小建設事業主等の自主的な教育訓練を促すため、公共職業能力開発施設等を地域の職業能力開発のための総合的センターとして活用するため、職業訓練指導員の派遣、受託訓練、施設使用の便宜の提供等を行うとともに、多くの事業主が共同して職業訓練を運営する共同訓練の実施を促進する。
(2) 労働者の就労意識や就労形態の多様化が進む中で、個人ごとの適正なキャリア形成の必要性が高まっている。また、ニーズに対応した即戦力になるように実践的な知識と能力を有する技能労働者の育成を行う。
 このため、助成制度等を有効に活用し、職業能力開発推進者の選任及び事業内職業能力開発計画に基づく段階的・体系的な教育訓練の実施を促進する。
 また、一人一人の労働者の希望・適正・能力を踏まえた職業能力開発の実施を支援するため、建設技能労働者の特性に応じた段階的な教育訓練についての職種ごとのモデルプランを作成、提示する等により建設事業主等に対して相談・援助を行う。
 さらに、労働者の職業能力が企業内のみならず、広く社会一般において適正に評価されるよう努めるとともに、技能検定制度の見直し等及び職業能力評価基準の仕組みの活用を推進する。また、これら職業能力評価の結果が企業内における建設技能労働者の処遇の改善に結びつくよう、その方策の在り方について検討を行う。
(3) 設計、事務、管理部門はもとより、建設現場部門においても、工程や品質管理等多様な場面でITの活用が増加すること、また、職業能力開発を効率的に行う観点からITの活用が有効な場合があることが考えられることから、広くITの活用能力を高めるとともに、ITを活用した職業能力開発について、環境整備を図る。
(2) 労働者の自発的な職業能力開発の促進
 建設労働者に対する職業能力開発は、各々の事業主が責任をもって行う必要があるが、建設労働を取り巻く環境が変化する中で、一人一人の労働者が自己の技術・技能をより一層向上させるためには、労働者が自発的に職業能力開発を行うことも重要である。
 このため、企業内で職業能力開発に関する相談・情報提供を受けることが困難な建設労働者に対し職業能力開発プランの提示を行う等、その支援体制の整備を図る。また、教育訓練給付制度や公共職業能力開発施設における職業訓練等の積極的な活用を促進する。
(3) 熟練技能の維持・継承及び活用
 プレハブ、ツーバイフォー工法の住宅市場参入や、軸組工法のプレカット化の進行により、従来の技能が軽視される傾向もあるが、反面、伝統的技能や技術を生かしたものづくりのニーズも根強くある。
 一方、若年者の建設業離れとともに、高年齢化が進んでいる建設業においては、いわゆる団塊の世代が60歳代に到達し、今後、熟練技能者が大量にリタイアすることが見込まれることと等から、これまで建設業を支えてきた熟練技能の維持・承継及び活用が困難になりつつある状況にある。若年者に対しては、インターンシップなどの取組を通じて、職場体験等から現場実習をさせることも重要であり、これらの取組を通じて、技術・技能の承継を容易にしていく足がかりを構築するとともに、熟練技能の維持・承継及び活用を図るためあらゆる機会を通じて、熟練技能を後世に伝えていくシステムの構築を図る必要がある。
 また、技能者を講師等として活用したものづくり教育・学習を円滑に推進するための環境整備を行うほか、技能士の技能及びその地位の一層の向上並びに技能の振興を図るとともに、熟練技能の重要性が社会に認識されるよう、卓越した技能者を「現在の名工」として表彰することや、熟練技能競技大会(技能グランプリ)の開催等を推進する。

 3 若年労働者等の確保及び建設業に対する理解の促進
(1) 建設業における新規学卒者をはじめとする若年労働者の割合は、平成年間に入り急速に高まったが、ここ数年は減少傾向にある。
 建設業界においては、他産業に比べ高齢化が急速に進んでおり、必要な技能労働者を確保する観点から、学生に対する教育機関や関係行政機関等と連携した進路指導や職業指導等に取組、職業意識を高めるとともに、若年者の建設業に対する関心を喚起するため、ものづくりの重要さや仕事に対する誇りなどを感じさせるようにするための情報提供を行うとともに、インターンシップの有効活用を積極的に図る。
(2) 建設業において働く若年労働者がライフステージに応じた生活設計ができるよう体系的な処遇改善を図るとともに、労働者のキャリアルートの方針の策定や建設業人材育成モデルの普及促進等を積極的に進め意欲的かつ効果的な施策を実施するとともに、これらの取組を実施する建設事業主団体等に対して支援を行う。
(3) 国民一般の建設労働に対する正しい理解を促進するため、引き続き職場見学会等の機会の提供、建設労働の実情を紹介するためのビデオ製作及び頒布、体系的な職業情報の提供等の取組を推進する事業主団体等に対して助成その他の支援を行う。

 4 高年齢労働者及び女性労働者の活躍促進
(1) 高年齢労働者の活躍促進
(1) いわゆる団塊の世代が定年を迎える中、技能の承継を円滑に進めるためにも、高度な熟練技能者である高年齢者の活用は不可欠である。このため、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(昭和46年法律第68号)における定年の引上げ、継続雇用制度導入等の措置の義務づけについて一層の周知、指導を徹底するとともに、高年齢労働者の活躍促進に取り組む事業主等や定年退職者及び離職を余儀なくされる高年齢労働者について再就職援助措置を行う事業主に対して助成その他の支援を行う。
(2) 建設業において高年齢労働者の特性や健康、体力等に対応した労働環境の整備を進めるため、高年齢労働者の特性に配慮した作業方法の見直し、適正な配置、柔軟な勤務形態、安全衛生対策、職業能力開発等、高年齢労働者の活用について検討する事業主団体等に対して助成その他の支援を行う。
 また、高年齢労働者の健康、体力や多様な就業ニーズを的確に把握しつつ、適切な雇用管理が行われるよう、建設事業主に対する啓発・指導を行う。
(3) 高年齢労働者が、若年建設労働者や学生等に対して建設業の伝統技能の価値や建設業の魅力等について伝える機会を設ける等技能の承継を図るための支援を行う。
(2) 女性労働者の活躍促進
(1) 近年建設業への女性の関心が高まりつつある。また、女性の少ない分野にもかかわらず技能者・技術者として建設業に就職を希望する女性については、強い意志を持って入職しており、結果として優秀な人材が多いとの評価もある。
 建設業に関心がある女性が就業しやすく、また、定着できる環境を整備するため、建設業においても、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号)について一層の周知・指導を行うことにより、男女均等な雇用機会を確保するとともに、職場におけるセクシュアルハラスメント防止のための雇用管理上の配慮義務を徹底させる等、建設職場への受入体制の整備を促進する。
(2) 建設業は移動生産という特性を有し、建設現場が変わると住所の移動を伴うこともあり、結婚、出産等を契機に退職する傾向が強いという課題もある。
 長期勤続を促進し、家庭責任と仕事の両立が図れるよう条件整備を進めるとともに、作業方法や安全対策の配慮等女性労働者の活躍促進について検討する事業主団体等に対して引き続き助成その他の支援を行う。また、男女別のトイレや更衣室等の整備に対しても助成を行うことにより職場環境の改善に努める。
(3) 女性労働者を積極的に確保、育成することは、企業、ひいては建設業におけるイメージアップ等の魅力につながると考えられることから、内装関係作業や重機オペレーター作業等女性労働者が活躍している業務や作業方法等の改善により女性の職域が拡大した業務についての好事例集の作成及びその普及を通じて、建設業における女性の入職を促進する。
(4) 坑内労働に係る女性の就業の解禁についての検討結果を踏まえ、適切に対応する。

 5 円滑な労働力需給の調整等による建設労働者の雇用の安定等
(1) 円滑な労働移動及び新分野進出の支援
 事務、管理職等の余剰となっている労働者について、ハローワーク、職業能力開発施設等が連携をし、円滑な労働移動を図る。
 また、総合相談窓口の設置、アドバイザーによる相談援助の実施等により建設事業主の新分野進出を支援し、建設事業主に雇用されている建設労働者の雇用を維持し、雇用の安定を図る。
(2) 建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の趣旨
 建設業においては、余剰労働力の発生、企業の再編・淘汰の進展、新分野進出の動き等が見られ、余剰労働力について円滑な労働移動を図るとともに、事業活動の中核的人材の確保が重要な課題となると考えられることから、建設業務有料職業紹介事業事業が創設されたところである。
 また、受注産業という建設業の特性等により生ずる、一時的な技能労働者の過不足を調整し、就業の場を確保することを通じて雇用の安定を図るとともに、将来的に不足が懸念される技能労働者の離職に歯止めをかけることが不可欠であること等を踏まえ、建設業務労働者就業機会確保事業が創設されたところである。
 中間搾取の防止等の観点から、建設業務に係る有料職業紹介事業及び労働者派遣事業が禁止されていることを踏まえ、建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業については、上記の趣旨に添った適正な事業運営を確保することが必要である。
 特に、上記の趣旨に照らして、恒常的に労働力が不足又は過剰となっている建設事業主においては、建設業務有料職業紹介事業等により適正に必要な労働力の確保等を図ることが適当であり、建設業務労働者就業機会確保事業については、一時的に労働力の過不足が生じる建設事業主のみが実施可能であって、送出就業に従事させることを目的として労働者を雇用することや、建設業務労働者就業機会確保事業を主たる業務内容とする部署を設けること等上記趣旨に反する事業運営を行うことはできないことについて、指導等を行うことが重要である。
 なお、建設事業以外の事業を主に行っている建設事業主については、建設事業主以外の事業において建設業務労働者を活用する等によりその雇用の安定を図ることが適当であり、建設業務労働者業機会確保事業は実施しないことが適当である。
 さらに、建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業については、特にニーズも把握されておらず、特に厳格な指導監督を行い中間搾取等の弊害を防止する観点から、国外にわたる職業紹介や海外への送り出しは実施しないことが適当である。
(3) 建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営の確保
(1) 中間搾取の防止等を図るため、実施計画の認定及び建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の許可に際しては、申請者に聞き取りを行う、申請者の事業場を訪問する等の方法により申請内容の確認を行い、厳格に審査を行う。
 なお、実施計画の認定に当たっては、建設事業の実態に詳しい建設業労使が委員となっている労働政策審議会の意見を踏まえて行うこととする。
(2) また、建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業においては、実施計画を作成し、その実施に責任を有する事業主団体の役割が重要であることから、事業主団体において、
 構成事業主、労働者、受入事業主の元請等関係者に対する建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の制度趣旨、制度内容等について、計画的に周知啓発を行い、また、送出事業主及び受入事業主に対する適正な事業運営に関する指導監督を行うほか、これらの者からの相談に応ずる等の援助を行うこと
 労働者の雇用の安定を重視して、適正な職業紹介を行うほか、送出事業主及び受入事業主の組合せを検討すること
 送出労働者について、送出事業主に適切に労働保険及び社会保険への加入手続きをとらせること
 求人者及び求職者並びに送出事業主、受入事業主、送出労働者等からの苦情について、適切な処理を図ること
等の措置が講じられるよう、事業主団体に対して指導を行う。
(3) さらに、事業の適正な運営を確保するため、事業報告の徴収、事業場への立入り検査等により、建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の実施状況を把握し、適切に指導監督を行うとともに、送出労働者等からの申告に適切に対応する。
(4) その他、建設事業主団体による講習の実施、リーフレットの配布等を通じて、建設事業主、事業主団体、労働者等に対して、建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の趣旨、建設業務労働者就業機会確保事業における送出事業主及び受入事業主に課される使用責任の内容等について周知啓発を図る。
 また、送出労働者等からの申告制度についても、同様に周知を図るとともに、適切に処理する。
(5) 建設業務労働者就業機会確保事業に関連して、建設業務について、形式的には請負であるものの実態として労働者派遣となっているいわゆる偽装派遣については、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」第4条第3項違反となるものであり、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)に係る周知を図るとともに、厳正に指導監督を行う。

 6 雇用改善推進体制の整備
(1) 建設事業主における雇用管理体制等の整備
 建設労働者の募集、雇入れ、技能の向上、職業生活上の環境整備等に関する下請事業主に対する指導等、従前と同様、元請事業主の役割が適切に果たされるようにするとともに、雇用管理研修の内容改善等により雇用管理体制を充実させる。また、「雇用管理評価基準」を活用して雇用管理上の問題点を明らかにする等により建設労働者の雇用管理体制等の整備を図る。
(2) 事業主団体等における効果的な雇用改善の推進
 専門工事業者団体等中小建設事業主団体が行う自主的な雇用改善の取組の推進について引き続き啓発・指導を行う。また、専門工事業者団体等の取組に対する助成制度について、引き続き推進し、雇用改善を図る。
(3) 地域の実情を踏まえたきめ細かな雇用改善の推進
 地域における雇用改善の推進のための目標の設定やその実現に向けての具体的な取組を建設事業主やその団体等が共同して実施することについて、必要な指導及び援助を行うことにより、地域の実情を踏まえたきめ細かな雇用改善を推進する。
(4) 雇用改善の気運の醸成
 事業主等に対する雇用改善対策の周知徹底、雇用改善に対する気運の高揚等を図るため、毎年11月の「建設雇用改善推進月間」を引き続き設定し、中央・地方を通じて実効ある事業を実施する。また、雇用改善について相当の成果がみられる事業所を優良事業所として表彰する制度等を活用し、事業主の雇用改善に取り組む気運の醸成に努める。
(5) 建設雇用改善助成金制度の活用
 建設雇用改善助成金制度について、建設業におけるニーズを踏まえながら、継続的な政策評価に基づき、見直しを行い、効率的、効果的な運用を図る。また、中小零細建設事業主による助成金の積極的な活用に資するため、引き続き、助成制度の周知徹底、申請手続の簡素化等に努める。
(6) 関係行政機関相互の連携の確保等
 建設労働者の雇用改善について、都道府県と都道府県労働局の連絡協議の場等において情報や意見の交換等を積極的に行う。また、「建設雇用改善推進月間」の行事を中心に都道府県の協力の確保等に努める。さらに、公共職業安定機関、建設関係行政機関、独立行政法人雇用・能力開発機構等で構成する「建設雇用改善推進会議」の活用等を図る。
(7) 雇用改善を図るための諸条件の整備
 労務関係諸経費の確保、適正な工期の設定等について、引き続き、建設業行政等を始めとする関係行政機関による指導等により、関係事業主等において適切な対応を行うことにより、雇用改善を推進する。
 さらに、公共工事の発注については、年間を通じた工事量の平準化をできる限り進めることについて、各発注者の理解と協力を得る必要がある。

 7 外国人労働者問題への対応
 外国人建設技術者や外国に特有の建築又は土木に係る技能を持つ労働者等の専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れについては、我が国の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から、より積極的に推進することとするが、いわゆる単純労働者の受入れについては、国内の労働市場にかかわる問題を始めとして我が国の経済社会と国民生活に多大な影響を及ぼすこと等から、国民のコンセンサスを踏まえつつ、十分慎重に対応することが不可欠である。
 以上の基本方針の下、外国人労働者の就労環境の整備を図るため、公共職業安定機関の外国人求職者等に関する職業紹介、職業相談機能・体制の一層の整備・充実に務め、雇用管理の改善を図るための事業主への指導、援助等の一層の充実を図るとともに、労働基準関係法令等に基づき外国人労働者の労働条件及び安全衛生の確保を図る。
 また、そのほとんどが不法就労をしているとみられる不法残留者の数が依然として高水準で推移しており、その中には建設業への不法就労も多くみられることから、関係行政機関との連携・協力の下、人権擁護に留意しつつ、悪質な仲介業者や事業主の取締りの強化、事業主への啓発・指導等、的確な措置を講ずる。



参考資料

(建設労働関係統計資料)

目次


第1表 建設投資の推移
第2表 建設業者(許可業者)数の推移
第3表 業種別事業所数の推移
第4表 資本金別建設業許可業者数
第5表 従業者規模別事業所数の推移(建設業)
第6表 就業者数、雇用者数及び完全失業率
第7表 職業別就業者数(建設業)
第8表 企業規模別雇用者数の推移(建設業)
第9表 男女別就業者数、雇用者数の推移(建設業)
第10表 業種別建設業従事者数の推移
第11表 従業上の地位別就業者数の推移(建設業)
第12表 年齢階級別就業者数の推移(建設業)
第13表 労働者の平均年齢の推移
第14表 建設業の新規学校卒業就職者数の推移
第15表 新規高等学校卒業就職者の離職状況
第16表 入離職状況
第17表 新規求人数、有効求人倍率
第18表 建設業労働者の過不足状況判断(D.I)
第19表 賃金額の推移(年平均)
第20表 常用労働者年間総実労働時間数の推移
第21表 週休制適用状況
第22表 労働者1人平均の年次有給休暇の取得状況
第23表 労働災害発生状況の推移
第24表 社会保険等の適用状況
第25表 許可業者業種別完成工事高及び元請完成工事高の推移

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