第18回社会保障審議会医療保険部会 | 資料1 |
平成17年8月10日 |
平成17年8月○日
社会保障審議会医療保険部会
(注) | これは、第10回〜第17回の会議における資料及び発言を中心に議論を整理したものである。 |
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○ | さまざまな施策を通じて国民の健康・長寿という人間にとって一番大事な価値を実現し、その上に立脚した国民皆保険制度とすべきである。 |
○ | 具体的には、以下のような考え方に立って、改革を進める必要がある。 |
(安定的で持続可能かつ給付と負担の関係が透明でわかりやすい制度)
○ | 人口構成、就業構造等の構造変化に柔軟に対応し、国民の安心、制度の持続可能性といった観点から見直しを行い、将来にわたり国民皆保険制度を堅持する。 |
○ | また、給付と負担の関係が透明でわかりやすく、かつ、医療費適正化の取組や高齢者医療制度の運営に対して関係者が関与できるなど、関係者の負担への理解や納得が得られる制度とする。 |
(国民の生活の質(QOL)の向上を通じた医療費の適正化)
○ | 生活習慣病の予防や質の高い効率的なサービスの提供により、国民の生活の質(QOL)の向上を図ることを通じて医療費の適正化を推進する。 | ||||||
○ | 具体的には、次のような取組を推進する。
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(都道府県単位を軸とした制度運営)
○ | 保険者については、保険財政の運営を適正な規模で行うこと及び保険料水準をそれぞれの地域の医療費水準に見合ったものとすることを基本として、都道府県単位での再編・統合を推進する。 |
○ | また、都道府県を軸として、地域の関係者(保険者、医療機関、地方公共団体等)が連携して、医療の地域特性を踏まえた質の高い効率的な医療を提供できるような取組を推進する。 |
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○ | 被用者保険、国保それぞれについて、各保険者の歴史的経緯や実績を十分尊重しながら、保険者の財政基盤の安定を図るとともに、保険者としての機能を発揮しやすくするため、都道府県単位を軸とした再編・統合を推進すべきである。 |
○ | 国を保険者とした全ての国民を対象とする医療保険制度への一本化を実現すべきという意見もあった。 |
1. | 国民健康保険 |
○ | 市町村国保については、国、都道府県及び市町村の役割を明確にした上で、都道府県と市町村が連携しつつ、広域連合等の活用により都道府県単位での再編・統合を進めるべきである。 |
○ | 都道府県単位での再編・統合を進めるに当たり、段階的に二次医療圏単位での再編・統合を行うことについては、一つの選択肢ではあるものの、市町村合併の範囲と二次医療圏の範囲が必ずしも一致していないことから、必ずしも有効な方法とはなりえないのでないかという意見があった。 |
○ | 再編・統合の際、国保保険者は、保健・介護・福祉事業の中心的な実施主体であり、保険者として実績のある市町村が引き続き担い、都道府県は、技術的な助言や調整等必要な支援を行い、国は財政支援を行うべきという意見があった。 |
○ | 市町村国保の保険運営は低所得者等を多く抱え非常に厳しい状況にあり、その安定を図ることは、市町村国保の再編・統合に加え、国民皆保険制度を守るという観点から極めて重要である。 |
○ | 国保と被用者保険との間での財政調整を行うことについては、加入者の年齢構成や所得水準の格差、厳しい雇用情勢や非正規職員の増加といった雇用形態の変化に伴う若年国保被保険者の増加等を踏まえた上で、引き続き、検討が必要である。 |
○ | 国保組合については、市町村国保の補完的役割を果たしているということを踏まえた上で、職域保険と地域保険という観点から、その在り方について検討を行い、国庫助成の在り方についても見直しを検討すべきであるとの意見があった。 |
2. | 政管健保 |
○ | 政管健保の見直しに当たっては、被保険者等の保険料を負担する者の意見が反映される運営の確保、保険者機能の発揮の観点から、国とは切り離された全国単位の公法人において運営することについて、更に具体的な検討が必要である。 |
○ | その際、財政運営は基本的に都道府県を単位としたものとし、都道府県別の年齢構成や所得について調整を行った上で、地域の医療費水準に応じた保険料水準とすべきとの意見が大勢であった一方、公的医療保険制度という性格から、全国一律の料率にすべきとの意見があった。 |
○ | 適用・徴収事務については、効率性の観点から年金と一括して実施すべきである。 |
○ | なお、中央と都道府県ごとに評議会を設置し、保険料率の決定等に被保険者等の意見を反映させる仕組みとしてはどうかとの意見があった。 |
3. | 健保組合等 |
○ | 健保組合の再編統合については、健保組合の自主性・自律性に配慮しつつ、主に同一都道府県域内において、健保組合間の共同・連携を進めるとともに、企業・業種を超えて健保組合同士が合併して形成する地域型健保組合の設立を選択肢の一つとして認めるべきである。 |
○ | 共済組合については、短期給付に加えて長期給付も行っており、長期給付の在り方の検討も踏まえ、保険者としての運営の在り方を検討する必要がある。 |
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1. | 基本的な方向 |
○ | 個人の自立を基本とした社会連帯による相互扶助の仕組みである社会保険方式を維持すべきである。 |
○ | 老人保健制度及び退職者医療制度は廃止し、世代間・保険者間の保険料負担の公平化及び制度運営の責任を有する主体の明確化を図るべきである。 |
○ | 現役世代の負担が過重なものとならないよう、増大する高齢者の医療費の適正化を図るべきである。 |
○ | 高齢者のQOL(生活の質)を重視した医療サービスを提供すべきである。 |
2. | 後期高齢者医療制度 |
(1) | 基本的な枠組み |
○ | 現行老人保健制度を廃止し、高齢者の保険料、国保及び被用者保険からの支援並びに公費により賄う新たな制度を創設するという意見が大勢であった。 |
○ | ただし、被用者保険の加入期間が長期にわたる退職者を被用者保険全体で支える新たな制度を創設すべきとの意見もあった。 |
(2) | 被保険者 |
○ | 高齢者の生活実態、経済的地位、心身の特性及び支え手を増やすなどの観点から、75歳以上の後期高齢者とすべきとの意見と、年金制度等との整合性などの観点から、65歳以上の者とすべきとの意見があるが、前期高齢者の就業・所得の状況や心身の状況などは現役世代に近い側面があることも踏まえ、引き続き、検討が必要である。 |
(3) | 高齢者の保険料と国保及び被用者保険からの支援 |
○ | 高齢者の保険料と国保及び被用者保険からの支援の割合については明確なルールを決定すべきである。 |
○ | 高齢者については現役世代との均衡を考慮した適切な保険料負担を求めるべきであり、その際、低所得者について適切な配慮をすべきである。 |
○ | 具体的には、高齢者の保険料について、老若の人数比で按分して負担すべきとの意見や、現行制度における高齢者の負担水準を勘案して医療費の10%とすべきとの意見があった。 |
○ | 若人からの支援については、一般の保険料とは別建てとすべきということについては、概ね意見の一致があった。 |
(4) | 公費負担 |
○ | 公費負担については、少なくとも現行老人保健制度における公費負担割合を維持すべきである。 |
(5) | 保険者 |
○ | 保険者については、地域保険とし、市町村をベースとして広域連合の活用を視野に入れるべきとの意見、都道府県(当面は国)とすべきとの意見、国とすべきとの意見、一定の地域を対象とした行政から独立した公法人とすべきとの意見があり、引き続き、検討が必要である。 |
○ | なお、いかなる保険者とする場合であっても、財政安定化の仕組みなど、保険者のリスクを可能な限り軽減する対策を講ずることが必要である。 |
○ | また、保険料を年金から徴収する仕組みを設ける方向で検討すべきである。 |
3. | 前期高齢者医療制度 |
(1) | 基本的な枠組み |
○ | 現行退職者医療制度は廃止すべきである。 |
○ | しかしながら、廃止後の新たな制度については、被用者保険又は国保に加入しつつ被用者保険と国保との間で財政調整すべきとの意見、前期高齢者に限らず更に下の年齢層まで財政調整の範囲を拡大すべきとの意見、前期高齢者も独立保険の対象とすべきとの意見、被用者保険の期間が長期にわたる退職者を被用者保険全体で支える新たな制度を創設すべきとの意見があり、引き続き、検討が必要である。 |
(2) | 被扶養者の保険料負担 |
○ | 高齢者には定型的な年金収入があることなどに着目し、扶養・被扶養の区別なく保険料を負担すべきとの意見と、医療保険だけで個人単位の保険料負担を考えるのではなく社会保障制度全体の改革の中で検討するべきとの意見があり、引き続き、検討が必要である。 |
(3) | 公費負担 |
○ | 高齢者医療制度の被保険者の問題と併せ、引き続き議論すべきである。 |
○ | 65歳以上を独立保険の対象とした上で、公費負担を5割とすべきとの意見があった。 |
4. | 高齢者の患者負担 |
○ | 高齢者についても現役とのバランスを考慮して応分の負担を求めるべきとの意見がある一方、高齢者の患者負担の増大については慎重であるべきとの意見があり、引き続き、検討が必要である。 |
○ | 高齢者の患者負担の在り方を検討する一環として、自己負担が高額となる場合の限度額の在り方、更には「医療給付と介護給付の自己負担の合計額が著しく高額となる場合の負担の軽減を図る仕組み」を創設するため、著しく高額となる場合の具体的水準、自己負担額を合算するための事務処理の方法などについて検討する必要がある。 |
5. | その他 |
○ | 高齢者医療制度の運営について、被用者保険や国保の保険者等関係者が参画できる仕組みを設けるべきである。 |
○ | 高齢者医療制度について、保険者の適正化努力を促す仕組みが必要である。 |
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1. | 中長期の医療費適正化効果を目指す方策 |
○ | 国民の生活の質(QOL)の向上を図るためには、生活習慣病対策を推進するとともに、急性期から回復期を経て在宅(多様な居住の場)へという患者の状態に相応しい良質で効率的な医療を提供する必要があり、こうした取組を進めることを通じて、医療費の適正化を図るべきである。 |
○ | 終末期医療も含め、高額医療の在り方についての検討が必要である。 |
○ | 医療費適正化に当たっては、医療計画、健康増進計画、介護保険事業支援計画の策定主体である都道府県が積極的な役割を担うべきとの意見、都道府県は医療費適正化を主導する立場になく、国が方針を示し、市町村が地域の実情に合わせた施策を進めるべきといった意見があり、国、都道府県、市町村、保険者、医療機関等の関係者の役割等については、引き続き、議論が必要である。 |
○ | 保健事業については、保険者も積極的な取組を行っていく必要がある。 |
2. | 保険給付の内容及び範囲の在り方の見直し |
○ | 国民皆保険制度の持続性の確保といった観点から、保険給付の在り方について、実態を踏まえつつ幅広く検討を進めるべきである。 |
(1) | 食費・居住費 |
○ | 在宅との負担の均衡という観点から、介護保険で食費・居住費を入所者負担としたことを踏まえ、医療保険においても患者負担とするべきとの意見がある一方、医療は介護とは同様に考えることはできず、引き続き療養病床を含め医療保険で給付することが必要との意見があり、引き続き、検討が必要である。 |
(2) | 高額療養費 |
○ | 総報酬制の導入や負担の公平を図る観点から自己負担限度額を引き上げるべきとの意見がある一方、高額療養費が患者負担の上限を定めていることから引き上げるべきではないとの意見があり、引き続き、検討が必要である。 |
○ | 制度の簡素化や申請者の利便性の確保について検討するべきとの意見があった。 |
(3) | 出産育児一時金 |
○ | 出産費用の水準に照らし引き上げるべきとの意見がある一方、額を少々増額しても少子化対策の政策効果の面からは効果が薄いのではないか、現在の厳しい医療保険財政を踏まえ、引き上げの財源をどうするか、との意見があった。 |
(4) | 傷病手当金・出産手当金・埋葬料 |
○ | 傷病手当金・出産手当金については、現行の給付水準を維持すべきとの意見、給付水準や要件について見直しを検討すべきとの意見があった。 |
○ | 埋葬料については、保険給付としての必要性は薄くなっているのではないかといった観点から、検討すべきである。 |
(5) | 薬剤給付 |
○ | 薬剤給付についても、後発医薬品の使用促進、後発医薬品のある先発医薬品薬価の適正化、画期的新薬の適切な評価といった観点から幅広く検討すべきである。 |
(6) | その他 |
○ | 上記の他、更にどのような方策があり得るか、引き続き検討すべきである。 |
3. | その他 |
○ | IT化の推進、高額医療の医学的妥当性の検証等についても引き続き検討すべきである。 |
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○ | 当審議会としても、今後、厚生労働省が秋にも提示する予定の医療制度改革の試案を受けて、引き続き、精力的な議論を行っていくこととする。 |