受入事業主指針(案)

第1  趣旨
 この指針は、建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和51年法律第33号。以下「建設労働法」という。)第44条の規定により読み替えて適用される労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律( 以下「労働者派遣法」という。)第3章第1節及び第3節の規定により受入事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な事項を定めたものである。


第2  受入事業主が講ずべき措置

 1  建設業務労働者就業機会確保契約の締結に当たっての就業条件の確認
 受入事業主は、建設業務労働者就業機会確保契約の締結の申込みを行うに際しては、就業中の送出労働者を直接指揮命令することが見込まれる者から、業務の内容、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準その他建設業務労働者就業機会確保契約の締結に際し定めるべき就業条件の内容を十分に確認すること。

 2  建設業務労働者就業機会確保契約に定める就業条件の確保
 受入事業主は、建設業務労働者就業機会確保契約を円滑かつ的確に履行するため、次に掲げる措置その他受入事業主の実態に即した適切な措置を講ずること。
(1)  就業条件の周知徹底
 建設業務労働者就業機会確保契約で定められた就業条件について、当該送出労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者に当該就業条件を記載した書面を交付し、又は就業場所に掲示する等により、周知の徹底を図ること。
(2)  就業場所の巡回
 定期的に送出労働者の就業場所を巡回し、当該送出労働者の就業の状況が建設業務労働者就業機会確保契約に反していないことを確認すること。
(3)  就業状況の報告
 送出労働者を直接指揮命令する者から、定期的に当該送出労働者の就業の状況について報告を求めること。
(4)  建設業務労働者就業機会確保契約の内容の遵守に係る指導
 送出労働者を直接指揮命令する者に対し、建設業務労働者就業機会確保契約の内容に違反することとなる業務上の指示を行わないようにすること等の指導を徹底すること。

 3  送出労働者を特定することを目的とする行為の禁止
 受入事業主は、送出事業主が当該受入事業主の指揮命令の下に就業させようとする労働者について、建設業務労働者の就業機会確保に先立って面接すること、若年者に限ることとすること等送出労働者を特定することを目的とする行為を行わないこと。なお、送出労働者が、自らの判断の下に送出就業開始前の事業所訪問を行うことは、受入事業主によって送出労働者を特定することを目的とする行為が行われたことには該当せず、実施可能であるが、受入事業主は、送出事業主又は送出労働者に対してこれらの行為を求めないこととする等、送出労働者を特定することを目的とする行為の禁止に触れないよう十分留意すること。

 4  性別による差別の禁止
 受入事業主は、送出事業主との間で建設業務労働者就業機会確保契約を締結するに当たっては、当該建設業務労働者就業機会確保契約に送出労働者の性別を記載してはならないこと。

 5  建設業務労働者就業機会確保契約の定めに違反する事実を知った場合の是正措置等
 受入事業主は、建設業務労働者就業機会確保契約の定めに反する事実を知った場合には、これを早急に是正するとともに、建設業務労働者就業機会確保契約の定めに反する行為を行った者及び受入責任者(建設労働法第44条の規定により読み替えて適用する労働者派遣法第41条に規定する派遣先責任者をいう。以下同じ。)に対し建設業務労働者就業機会確保契約を遵守させるために必要な措置を講ずること、送出事業主と十分に協議した上で損害賠償等の善後処理方策を講ずること等適切な措置を講ずること。

 6  送出労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
(1)  建設業務労働者就業機会確保契約の締結に際して配慮すべき事項
 受入事業主は、建設業務労働者就業機会確保契約の締結に際し、建設業務労働者の就業機会確保の期間を定めるに当たっては、送出事業主と協力しつつ、当該受入事業主において建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けようとする期間を勘案して可能な限り長く定める等、送出労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をするよう努めること。
(2)  受入事業主による送出労働者の交代の求め
 受入事業主は、送出労働者に建設業務労働者就業機会確保契約において定められた送出労働者が従事する建設業務の内容を適切に処理していないことを等理由として、送出事業主に対して送出労働者の交代を求めることは可能であるが、交代を求めるときには、あらかじめ送出事業主に対して、送出労働者に対する改善指導を求めること。
(3)  建設業務労働者就業機会確保契約の解除の事前の申入れ
 受入事業主は、専ら受入事業主に起因する事由により、建設業務労働者就業機会確保契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、送出事業主の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間をもって送出事業主に解除の申入れを行うこと。
(4)  受入事業主における就業機会の確保
 受入事業主は、建設業務労働者就業機会確保契約の契約期間が満了する前に送出労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって建設業務労働者就業機会確保契約の解除が行われた場合には、当該受入事業主の関連会社での就業をあっせんする等により、当該建設業務労働者就業機会確保契約に係る送出労働者の新たな就業機会の確保を図ること。
(5)  損害賠償等に係る適切な措置
 受入事業主は、受入事業主の責に帰すべき事由により建設業務労働者就業機会確保契約の契約期間が満了する前に建設業務労働者就業機会確保契約の解除を行おうとする場合には、送出労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、建設業務労働者就業機会確保契約の解除を行おうとする日の少なくとも30日前に送出事業主に対しその旨の予告を行わなければならないこと。当該予告を行わない受入事業主は、速やかに、当該送出労働者の少なくとも3 0日分以上の賃金に相当する額について損害の賠償を行わなければならないこと。受入事業主が予告をした日から建設業務労働者就業機会確保契約の解除を行おうとする日までの期間が3 0日に満たない場合には、少なくとも建設業務労働者就業機会確保契約の解除を行おうとする日の30日前の日から当該予告の日までの期間の日数分以上の賃金に相当する額について行わなければならないこと。その他受入事業主は送出事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずること。また、送出事業主及び受入事業主の双方の責に帰すべき事由がある場合には、送出事業主及び受入事業主のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮すること。
(6)  受入事業主は、建設業務労働者就業機会確保契約の契約期間が満了する前に建設業務労働者就業機会確保契約の解除を行う場合であって、送出事業主から請求があったときは、建設業務労働者就業機会確保契約の解除を行う理由を当該送出事業主に対し明らかにすること。

 7  適切な苦情の処理
 受入事業主は、送出労働者の苦情の申出を受ける者、受入事業主において苦情の処理をする方法、送出事業主と受入事業主との連携を図るための体制等を、建設業務労働者就業機会確保契約において定めること。また、送出労働者の受入れに際し、説明会等を実施して、その内容を送出労働者に説明すること。さらに、受入管理台帳(建設労働法第44条の規定により読み替えて適用される労働者派遣法第42条に規定する派遣先管理台帳をいう。)に苦情の申出を受けた年月日、苦情の内容及び苦情の処理状況について、苦情の申出を受け、及び苦情の処理に当たった都度、記載するとともに、その内容を送出事業主に通知すること。また、送出労働者から苦情の申出を受けたことを理由として、当該送出労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこと。

 8  労働・社会保険の適用の促進
 受入事業主は、雇用保険及び社会保険に加入する必要がある送出労働者については、雇用保険及び社会保険に加入している送出労働者を受け入れるべきであり、送出事業主から送出労働者が雇用保険及び社会保険に加入していない理由の通知を受けた場合において、当該理由が適正でないと考えられる場合には、送出事業主に対し、当該送出労働者を雇用保険及び社会保険に加入させてから送出するよう求めること。
 また、受入事業主は、送出労働者が従事する業務に係る事業について、労災保険の保険関係の成立の手続きがとられていることについて送出事業主から確認されたときにおいては、当該手続きの状況について、送出事業主に通知すること。

 9  適正な送出就業の確保
(1)  適切な就業環境の維持、福利厚生等
 受入事業主は、その指揮命令の下に労働させている送出労働者について、送出就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、セクシュアルハラスメントの防止等適切な就業環境の維持、その雇用する労働者が通常利用している診療所、給食施設等の施設の利用に関する便宜を図るよう努めなければならないこと。また、受入事業主は、送出事業主の求めに応じ、送出労働者と同種の業務に従事している労働者等の福利厚生等の実状を把握するために必要な情報を送出事業主に提供する等の協力をするよう努めなければならないこと。
(2)  教育訓練・能力開発
 受入事業主は、送出事業主が行う教育訓練や送出労働者の自主的な能力開発等の送出労働者の教育訓練・能力開発について、可能な限り協力するほか、必要に応じた教育訓練に係る便宜を図るよう努めなければならないこと。

 10  関係法令の関係者への周知
 受入事業主は、建設労働法第44条の規定により読み替えて適用される労働者派遣法の規定により受入事業主が講ずべき措置の内容及び労働者派遣法第3章第4節に規定する労働基準法(昭和22年法律第49号)等の適用に関する特例等関係法令の関係者への周知の徹底を図るために、説明会等の実施、文書の配布等の措置を講ずること。

 11  送出事業主との労働時間等に係る連絡体制の確立
 受入事業主は、送出事業主の事業場で締結される労働基準法第36条第1項の時間外及び休日の労働に関する協定の内容等送出労働者の労働時間の枠組みについて送出事業主に情報提供を求める等により、送出事業主との連絡調整を的確に行うこと。

 12  送出労働者に対する説明会等の実施
 受入事業主は、送出労働者の受入れに際し、説明会等を実施し、送出労働者が利用できる送出就業する事業場の各種の福利厚生に関する措置の内容についての説明、送出労働者が円滑かつ的確に就業するために必要な、送出労働者を直接指揮命令する者以外の受入事業主の労働者との業務上の関係についての説明及び職場生活上留意を要する事項についての助言等を行うこと。

 13  受入責任者の適切な選任及び適切な業務の遂行
 受入事業主は、受入責任者の選任に当たっては、労働関係法令に関する知識を有する者であること、人事・労務管理等について専門的な知識又は相当期間の経験を有する者であること、送出労働者の就業に係る事項に関する一定の決定、変更を行い得る権限を有する者であること等受入責任者の職務を的確に遂行することができる者を選任するよう努めること。

 14  建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受ける期間の制限の適切な運用
 受入事業主は、建設労働法第44条の規定により読み替えて適用される労働者派遣法第40条の2の規定に基づき送出労働者による常用労働者の代替の防止の確保を図るため、次に掲げる基準に従い、事業所その他送出就業の場所ごとの同一の業務について、送出事業主から受入可能期間(同条第2項に規定する派遣可能期間をいう。)を超える期間継続して建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けてはならないこと。
(1)  事業所その他送出就業の場所については、課、部、事業所全体等、場所的に他の部署と独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断すること。
(2)  同一の業務については、建設業務労働者就業機会確保契約を更新して引き続き当該設業務労働者就業機会確保契約に定める業務に従事する場合は同一の業務に当たること。このほか、受入事業主における組織の最小単位において行われる業務は、同一の業務であるとみなすこと。なお、この場合における最小単位の組織としては、業務の内容について指示を行う権限を有する者とその者の指揮を受けて業務を遂行する者とのまとまりのうち最小単位のものをいい、係又は班のほか、課、グループ等が該当する場合もあり、名称にとらわれることなく実態により判断すべきものとすること。ただし、送出労働者の受入れに伴い係、班等を形式的に分ける場合、労働者数の多いこと等に伴う管理上の理由により係、班等を分けている場合又は係、班等の部署を設けていない場合であっても、就業の実態等から最小単位の組織に該当すると認められる組織において行われる業務については、同一の業務であるものとみなすこと。偽りその他不正の行為により建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けている又は受けていた係、班等の名称を変更し、又は組織変更を行う等、従来の係、班等とは異なる係、班等に新たに建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受け、又は受けようとする場合には、同一の業務について建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受け、又は受けようとしているものと判断すること。その他建設労働法第44条の規定により読み替えて適用される労働者派遣法第40条の2の規定に照らし、就業の実態等に即して同一の業務であるか否かを判断すること。
(3)  建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けていた受入事業主が新たに建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受ける場合には、当該新たな建設業務労働者の就業機会確保の開始と当該新たな建設業務労働者の就業機会確保の役務の受入れの直前に受け入れていた建設業務労働者の就業機会確保の終了との間の期間が3月を超えない場合には、当該受入事業主は、当該新たな建設業務労働者の就業機会確保の役務の受入れの直前に受け入れていた建設業務労働者の就業機会確保から継続して建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けているものとみなすこと。

 15  建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けようとする期間に係る意見聴取の適切かつ確実な実施
(1)  受入事業主は、建設労働法第44条の規定により読み替えて適用する労働者派遣法第40条の2第4項の規定に基づき、当該受入事業主の事業所の労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者(以下「過半数組合等」という。)に対し、建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けようとする期間について意見を聴くに当たっては、当該期間等を過半数組合等に通知してから意見を聴くまでに、十分な考慮期間を設けること。
(2)  受入事業主は、過半数組合等から、建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けようとする期間が適当でない旨の意見を受けた場合には、当該意見に対する受入事業主の考え方を過半数組合等に説明すること、当該意見を勘案して建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けようとする期間について再検討を加えること等により、過半数組合等の意見を十分に尊重するよう努めること。

 16  受入事業主の労働者の雇用の安定
(1)  一時的な労働者の不足
 受入事業主は、一時的に労働者が不足となるときにのみ建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けることができるものであり、常時建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けることはできないこと。
 このため、受入事業主は、労働者の一時的な不足が解消されたときにおいては、認定計画において建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けることとされている時期においても、建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けることはできないこと。
 また、同一の事業年度において、受入事業主が受け入れた送出労働者の延べ労働者数が、受入事業主がその雇用する建設業務労働者を自己の行う建設業務に従事させた延べ労働者数の5割を超えるときには、一時的に労働者が不足したものとはいえないこと。
(2)  雇用調整により解雇した労働者が就いていたポストへの送出労働者の受入れ等
 受入事業主は、雇用調整により解雇した労働者が就いていたポストに、当該解雇後3箇月以内に送出労働者を受け入れる場合には、必要最小限度の建設業務労働者の就業機会確保の期間を定めるとともに、当該受入事業主に雇用される労働者に対し建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受ける理由を説明する等、適切な措置を講じ、受入事業主の労働者の理解が得られるよう努めること。
 また、受入事業主は、整理解雇等の雇用調整を行った後3か月以内に、原則として送出労働者を受け入れてはならないこと。また、やむを得ず送出労働者を受け入れる場合には、必要最小限度の建設業務労働者の就業機会確保の期間を定めるとともに、当該受入事業主に雇用される労働者に対し建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受ける理由を説明する等、適切な措置を講じ、受入事業主の労働者の理解が得られるよう努めること。

 17  安全衛生に係る措置
 受入事業主は、送出事業主が送出労働者に対する安全衛生教育を適切に行えるよう、送出労働者が従事する業務に係る情報を送出事業主に対し積極的に提供するとともに、送出事業主から安全衛生教育の委託の申入れがあった場合には可能な限りこれに応じるよう努める等、送出労働者の安全衛生に係る措置を実施するために必要な協力や配慮を行うこと。

 18  職業紹介を受けることを予定して建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けることの禁止
 建設業務労働者就業機会確保事業制度は、送出事業主の事業所において送出労働者の雇用を維持し、雇用の安定を図るものであることから、職業紹介を受けることを予定して建設業務労働者の就業機会確保の役務の提供を受けることはできないこと。

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