05/07/29 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 平成17年7月29日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成17年7月29日(金) 10:00〜   厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(12名)五十音順   青 柳 伸 男、 井 上 和 秀、 岩 崎   学、 首 藤 紘 一、   田 島 知 行、 谷川原 祐 介、◎永 井 良 三、○長 尾   拓、   長谷川 紘 司、 早 川   浩、 樋 口 輝 彦、 村 勢 敏 郎、 (注) ◎部会長 ○部会長代理 他 参考人2名   欠席委員(2名) 堺   秀  人、 土 屋 文 人 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、   川 原   章(審査管理課長)、 平 山 佳 伸(安全対策課長)、   豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、   浦 山 隆 雄(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、   森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、   坂 本   純(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、   牧 野 ゆり子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、   田 中 克 平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長)  他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部 会を開催いたします。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうござ います。当部会委員数14名のうち12名の委員に御出席いただいておりますので、定足 数に達しておりますことを御報告いたします。それでは永井先生、以後の進行をよろし くお願いいたします。 ○永井部会長 それでは審議に入らせていただきます。まず事務局に人事異動があった ということですので、御紹介をお願いいたします。 ○審議役 7月1日から審議役を仰せつかりました浦山でございます。よろしくお願い いたします。 ○永井部会長 よろしくお願いいたします。それではまず資料の確認及び資料作成に関 与された委員の報告をお願いいたします。 ○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。先生方の机の上に本日の議事次 第、座席表、名簿のセットを配付させていただいております。それから議事次第に資料 番号が振ってございますけれども、資料1〜5、7につきましては事前にお送りしたも のでございます。本日の席上配付資料として資料3-2というものがございますが、これ は諮問書に誤字がありまして、その差し替え版でございます。それから資料6といたし まして優先対面助言品目の指定について、資料8で審議品目の薬事分科会における取扱 いについてという表、資料9で専門委員のリストでございます。また資料番号は振って おりませんけれども、本日御欠席の土屋先生からコメントを頂いておりますので配付い たしております。以上が資料でございます。もし不足等がございましたらおっしゃって いただきたいと思います。   それから平成13年1月23日の薬事分科会の申合せに基づく資料作成に関係された委 員の確認ですけれども、審議事項の議題2のルボックス、デプロメール錠につきまして 樋口先生が関与されていますので、先生には議題2の審議の間は別室で待機していただ くということでよろしくお願いいたします。また、本日は議題1のプロペシア錠におけ る参考人として横浜市立みなと赤十字病院長の西岡清先生においでいただいておりま す。それから、議題4のアクチバシン注における参考人として広島大学大学院医歯薬学 総合研究科脳神経内科学教授の松本昌泰先生にお越しいただいておりますので、御紹介 申し上げます。以上でございます。 ── 説明中、西岡参考人着席 ── ○永井部会長 ありがとうございました。それでは審議に入らせていただきます。本日 は審議事項が4議題、報告事項が2議題、その他が1議題となっております。  議題1でございますが、医薬品プロペシア錠の輸入承認の可否等について、機構から 審査の概要の御説明をお願いいたします。 ○機構 それでは議題1、資料1、医薬品プロペシア錠1mg、同0.2mgの生物由来製品 又は特定生物由来製品の指定の要否、輸入承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬及 び劇薬の指定の要否について機構より御説明申し上げます。  本品は申請当初プロペシア錠1mg錠のみの申請でありましたが、審査の過程で0.2mg 製剤も申請すべきとされたことから0.2mg錠が追加申請されたため、申請年月日が二つ となっております。また、申請時の販売名は「プロペシア錠1」でしたが、「プロペシ ア錠1mg」に改めることになっておりますので、資料においてはすべて「mg」が付いた 名称で整理いたしております。  本申請は男性型脱毛症の治療を目的とした新有効成分含有医薬品の申請でございま す。男性型脱毛症は一般に遺伝的背景を持つ男性の一部が思春期以降に経験されるとさ れており、初期には前頭部から頭頂部にかけて毛包がミニチュア化し太くて長い剛毛が 細くて短い軟毛に変化する、すなわち毛周期の過程で成長期が短縮するためミニチュア 化した毛包からの色素の少ない軟毛が形成されるようになり、最終的には休止期から成 長期に移行しない毛包が増え、軟毛数も減少していくというものでございます。  本邦においては男性型脱毛症は500〜1,600万人いるとされておりまして、日本人男性 における発生率は30歳未満で3.5%、30代では12.4%であり、年齢とともに増加して、 日本人より白人で10%程度高いとされております。  男性型脱毛症の発生については遺伝的要因、ホルモン要因が関与されていると言われ ておりますが、いまだ不明な点が多いものの、男性ホルモン、特にテストステロンの代 謝物であるジヒドロテストステロンが関与しているとされております。ジヒドロテスト ステロンはテストステロンから5α-還元酵素による変換反応により産生され、男性ホル モン感受性の頭皮毛包の成長期短縮、毛球部容積の減少、毛包のミニチュア化を引き起 こすと考えられています。  本薬の有効成分のフィナステリドはこの5α-還元酵素を特異的に阻害する薬物とし て見いだされた4-アザステロイド化合物でございます。  本品目の専門協議では、本日の配付資料9に示しましたとおり、岩崎委員、越前委員、 西岡委員、小嶋委員、松岡委員、松木委員、溝口委員、吉田委員の計8名の先生方に専 門委員をお願いしております。  プロペシアにおきまして、規格及び試験法、毒性、薬理、吸収、分布、代謝、排泄に 関して提出された資料の内容は妥当であると判断いたしました。後ほど本薬の注意事項 として再度御説明いたしますが、毒性試験では強い催奇形性が認められております。ア カゲザルの胎児器官形成期反応試験においては2mg/kg/日の経口投与で雄の胎児に尿道 下裂、包皮の陰茎亀頭への接着、陰嚢発育不全などの外部生殖器異常が見られておりま す。  次に臨床試験成績について述べさせていただきます。評価資料として第I相試験、血 中動態試験、最終製剤による食事の影響の検討試験、高齢者における血中動態試験、こ れは5mgでございます。あとは第II、第III相二重盲検比較試験、長期投与試験が提出さ れております。  有効性に関してですが、日本人男性の男性型脱毛症患者413人を対象として本薬を1 日1回、48週間経口投与する二重盲検用量反応比較試験が実施され、主要評価項目であ る最終評価時点での頭頂部写真評価において1mg投与群及び0.2mg投与群はプラセボ投 与群に対して有意に優れ、本薬の有効性が認められております。  安全性に関してですが、国内外の臨床試験及び海外の市販後調査の結果において特に 問題となる有害事象は認められておりません。また国内臨床試験において1mgと0.2mg に関して安全性上ほぼ同等であると考えられました。  効能・効果につきましては、申請時点では男性型脱毛症における発毛、育毛及び脱毛 防止でございましたが、検証試験は写真による頭頂部での毛髪状態を評価したものであ り、毛髪数の変化については測定されておりません。そのことから、毛髪数の変化に係 る発毛及び育毛等の効能を付すことは適当ではないと考え、効能・効果は進行遅延に改 めております。  用法・用量につきましては、有効性において1mg投与群と0.2mg投与群で統計学的な 有意差は認められず、また安全性においても大きな相違が見られなかったことから、1 mg、0.2mgのいずれも臨床用量として選択することは可能だと判断いたしました。一般 には有効性及び安全性において同等であれば低い用量が選択されますが、本薬につきま しては海外の承認用量がすべて1mgで、現在1mg製剤の個人輸入がインターネット等を 介して広く行われているという社会実態を考えますと、仮に国内の承認用量を0.2mgに 限定した場合には高用量製剤を希望する患者による個人輸入が継続し、催奇形性がある 本剤の適正使用に懸念すべき点が残るという観点から、1mg製剤についても適正な流通 管理下に置かれることが考慮されるべきであると考え、用量を0.2〜1mgとさせていた だきました。 本薬において注意すべき事項として毒性の項で御説明しましたけれども、 強い催奇形性が認められております。本薬は男性にしか適応になりませんが、妊婦又は 妊娠している可能性のある婦人、及び授乳婦への投与を禁忌として添付文書で強く注意 喚起しております。また破砕した錠剤の妊婦及び妊娠している可能性のある女性による 取扱いもかたく禁止するとともに、破砕調剤なども禁止する旨を添付文書の重要な基本 的注意の項で掲げているところでございます。なお製剤はフィルムコーティングされて いますので、通常の取扱いで原薬に直接触れることはないと考えております。  以上のとおり、機構での審査の結果、男性における男性型脱毛症の進行遅延に関して 有用性が認められ、承認して差し支えないと判断し医薬品第一部会で審議されることが 適当だと判断しました。  なお原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品にも特定生物由来製品にも該当しな いと判断しました。また再審査期間は6年と判断しております。薬事分科会では審議を 予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。参考人として西岡先生においでいただいてお りますけれども、何か御意見ございますでしょうか。 ○西岡参考人 この薬剤は欧米において既に幅広く使用されているものでございます。 しかも1mg錠ということで使われております。先ほど御説明がありましたように、本邦 ではインターネット等を通じて個人輸入されて使われているという実態があります。   男性型脱毛症は思春期以降に発生いたしますので、この対象となる方達の悩みというの は非常に大きなものでございます。そこで、今御説明のありましたことにもう一つ付け 加えさせていただきますと、この薬剤を使用される対象者は大体成熟期の男性というこ とになります。しかもこれを毎日連続投与いたしましたときに、その方の精液を通じて パートナーに影響を与えないかどうかといったことも問題になってまいりますが、精液 への移行量に関する調査でも安全であるという結果が出ておりますので、そういった懸 念はないのではないかと考えております。私が付け加えるのは以上でございます。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方から御意見をお願いい たします。位置付けとしては処方せんが必要な生活改善薬ということでございますね。 田島委員、どうぞ。 ○田島委員 プロペシアの0.2mgと1mgという2種類をお出しになるということです が、これは実際に現場ではどのような使い方をするのですか。この0.2mgと1mgという ものの差はどう使い分けるのでしょうか。 ○審査管理課長 実際の使い分けということになりますと、先ほど来お話がありました けれども、本剤についてはかなり物質的なリスクもあるということ、それから永井部会 長の方からお話がございましたが、まだ実際に承認になっておりませんので確定はして おりませんけれども、このものはホルモン作用ということで処方せん薬という形になる ことはまず確定的だろうと思います。したがいまして、患者さんがお医者さんの診察を 受けて使っていくということになると思います。恐らく集団で評価したときには0.2mg と1mgで有効性、安全性に差がなかったということですが、実際に個々の患者さんの場 合には0.2mgよりもうちょっと増やした方がいいかもしれないということで、用法もそ うなっておりますけれども、恐らく0.2〜1mgの間で個々には対応していただくと。お 医者さんと相談しながら最終的には用量を決めていくというふうな形になっていくので はないかと考えております。 ○田島委員 なぜこういうような意地の悪い質問を申し上げたかといいますと、この1 mgと0.2mg、しかも今お話にあるような破砕しての催奇形性とかその他のいろいろな危 険性があるという問題から考えますと、0.2mgの効き方は同じでもやはり国際的な統一 を考えますと、恐らく1mgだけでもよろしいのではないだろうかというのが私の意見な のですが。  確かに今これは前立腺肥大のお薬で5mgの用量のものも売られていると思います。そ れから、これが0.2でも効くとなればお値段も0.2mgと1mgではそれほど変わらないと 思うのです。そうしますと、経済的な面を考えますと、お飲みになる方は効果が変わら ないのだったらそれをつぶすか割って飲んでいこうというような方もきっといらっしゃ ると思います。そうなりますと、この薬の催奇形性等々に関する汚染の問題というもの が広がってくる危険性が非常に増えるのではないだろうかと私は考えるのですが。 ○審査管理課長 本日土屋先生から田島先生とむしろ逆の御意見が出ておりまして、1 mg製剤の必要性はないのではないかということで、ここが先ほど事務局の方から説明さ せていただきましたように0.2mgと1mgの間ということで幅をもって用量の記載をした ということでございます。繰り返しになりますけれども、催奇形性を有する薬剤という こと、それから相当な量が個人輸入により使われているという実態がある、これはもち ろん1mg錠でございます。  それで薬剤管理の観点からは、先ほど申し上げましたように患者さんが医師の診察を 受け相談しながら使っていくという形で、国内の薬事法の下での使用をできるだけ徹底 させるということで、これが承認されましたら個人輸入は極力避けさせるということを 考えております。実際国内で承認されれば個人輸入の口をかなりきつく締めることが可 能ではございますので、そういったことも考えております。諸外国では1mg製剤が流通 していて、個人輸入されているのは1mg製剤であることから、0.2mgのみを承認用量と しますと、今先生から御指摘があったようなより高い効果を求めた個人輸入がやまなく なることも懸念されるということで、これは5倍の用量差があるわけでございますけれ ども、1mg群が0.2mg群に比して特に劣っていないと。先ほどの土屋先生の御意見は、 より用量が低くて有効性も同じであれば、それがエビデンスに基づけば至適用量ではな いかという御指摘なのですけれども、事務局の方から御説明いたしましたように1mg群 が0.2mg群に対して安全性においても特に劣っていないということから0.2〜1mgの間 ということで、ある意味では個人輸入の防止といったところも少し配慮して承認用量を 決めさせていただいたということでございます。 ○永井部会長 ということですが、いかがでしょうか。谷川原先生、どうぞ。 ○谷川原委員 用量反応試験の結果を見ますと1mgと0.2mgの有効性というのは全く同 じですし、安全性も差がないということでしたら、通常の判断だったら0.2mgを選択す ると思うのです。もし1mgがないと個人輸入が減らないという危惧は分からないことは ないのですが、ただ個人輸入をしようという動機は国内に薬剤がないからでありまして、 国内の0.2mgが海外の1mgと全く同じ効果だという薬剤が現実に市販されれば、あえて 海外から面倒な手続きをして個人輸入を…。それほど減らないとは私は思わないのです が。むしろ供給されることが大事であります。  もう一つの問題は、ホルモン作用ということで全身的な副作用というのがまだ十分に 分からない面もありますので、海外が1mgだから日本も1mgにそろえなければいけない ということではなくて、0.2mgで効果があるのでしたら別に0.2mgでも構わないのでは ないか。もしかしたら日本と海外とで長期の副作用の発現率に差が出る可能性もなきに しもあらずとも思います。  あともう一つの面は、この頭髪の問題には遺伝的要因があると最初のイントロで書か れておりますし、白人と日本人とで発現率が違うというようなこともありまして、ホル モン支配と遺伝的要因というのがあるのであれば別に海外と日本人で至適用量が違って いてもおかしくないのではないかというような考えもあるのですけれども、その辺りは いかがでしょうか。 ○審査管理課長 最初の個人輸入の関係の話ですけれども、これは直接説明になるかど うか分かりませんが、ミノキシジルの製剤がございます。これは国内でも医療用を飛び 越しましてダイレクトOTCという形で市販されているのですが、これについてやはり 海外で高濃度のものが医療用で販売されているということで、どうしても濃度が高いと より有効性が高いのではないかということもあって、それの個人輸入はなかなか収まら ないという面があるようでございます。  それから、これは谷川原先生御指摘のように確かに集団で群間で比較を行ったところ では0.2mgと1mgで差がなかったわけですけれども、至適用量みたいなものは実際には ホルモンの状態や遺伝的背景といったところで個人個人によってばらついていて、そこ が集団になると混ざってしまって恐らく差が出ていないというようなことなのではない かと考えます。  したがいまして、ちょっと繰り返しになって恐縮なのですが、個人輸入の防止といっ たようなところも少し配慮しながら考えますと、0.2〜1mgの間で一人一人が医師の診察 を受け相談しながら自分に至適な用量を、恐らくスタートは0.2mgからを勧められると は思うのですけれども、そういったような形が一番適切ではないかと考えたということ でございます。もし何かあるようでしたら、西岡先生からお願いできますか。 ○西岡参考人 海外からの輸入の問題はさておきまして、実際の臨床の現場ではやはり 患者さんの体格に応じて処方されるだろうと思います。その結果としては0.2mg錠を五 つ飲むのがいいのか1mg錠を一つ飲むのがいいのかという患者さんの利便性も考えてお かなければいけないのではないかと思います。この治療試験の場合には、全体的なオー バーオールの評価でもって差がないということになっているのですが、実際の写真撮影 の方の、むしろこれからの治験そのものはそういった形の評価になると思うのですが、 軟毛や硬毛の数を考慮した評価をしていきますと、やはり後の方のデータではこれは副 次的としてしか今回の治験では扱われていないのですけれども、むしろそちらのデータ を見ますと量が多い1mgの方が効果が高いということは明らかではないかと思います。  ですから先ほど御質問がありました実際の臨床の場でどう使うかというのは、やはり 患者さんの体型、体格、体重等を考慮しながら量を調節していくということになるので はないかと考えております。 ○田島委員 私は何も1mgにこだわっているわけではございませんけれども、もしそう だとしたら0.2mg×2、3というような処方の仕方も可能なわけですね。そうしますと 1mgというのは0.2mgを5錠飲めばいいというような乱暴な議論も可能ではあるかとは 思うのですが、そこら辺のところはいかがなのでしょうか。 ○西岡参考人 実際には臨床の場で一番問題になりますのは、お薬の数が多くなればな るほど誤りが大きくなるということでございます。最近の日本人の体型というのは欧米 人に比べて同じぐらいの方もおられます。そうなってきた場合に五つ飲むのと一つ飲む のを考えますと、コンプライアンスの面からしますと1錠を投与する方がはるかに高い と考えられます。それによって治療効果もはっきりしてくるということが考えられます。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○谷川原委員 効果はグループで見たときは全く差がないのですけれども、個別には差 がある可能性があるということで用量の幅を持たせたいというお話だと思うのですが、 長期に服用される薬剤ですし、また内服で全身性の作用があるということで、やはり安 全性面で少し気になるところがあります。審査レポートを読ませていただいて、前立腺 重量が減少するというのは事実としてあるのですが、それは問題ないという審査センタ ーや機構の御判断が一つ、それが長期にわたって服用されたときにも問題ないと言える のかというところをもう一度確認させていただきたいということです。  もう一つは男性型乳癌のリスクの議論がありまして、そこの中に1mgでは報告はない が、5mgの投与になると一般的な発現率よりも200倍リスクが高いと。というとやはり この発現リスクは用量依存性だと思うのです。そう考えると、やはり低用量の方が長期 の安全性としてはいいのではないかというふうにも考えられるのですけれども。1mgと 0.2 mgが有効性でそれほど大きな違いがなくて、仮に用量調節のときに0.2mg錠を2錠とい う選択肢で対応できるならば、基本的な標準用量は低くてもいいのではないかというふ うにも考えられるのですが、その辺りの審査側のお考えをお伺いしたいのですが。 ○機構 補足させていただきます。前立腺に関する影響につきましては概要の540ペー ジを参照しながらお話しさせていただければと思います。今おっしゃられたように前立 腺は多少の縮小は見られているのですが、機能的な問題が見られていないということに ついての海外における試験がなされております。  それから5mgのがんの話ですけれども、がんについてはそういったリスクが一部上が るという報告もあるのですが、一方では上がらないという話もあって、国際的には5mg で発がんリスクが上がるという結論にはまだなっていません。ただ、少なくとも1mgで は1報もないということだけはより確実的なものとして主張されているというのが実際 ですので、そういうことからすると今のところ1mg、0.2mg共に乳癌の発がんリスクに ついては許容範囲内であろうとは考えております。  添付文書にも発がんリスクの話は書かないと申請者はかなり固執していたのですが、 先生のおっしゃるようにまだ分からないところもございますし、5mgでそういう議論が あるということ自体は処方医の先生方に御理解いただく意味で注意喚起をすることとし ています。掘り起こしをしないと本当に起きているのか起きていないのかも分からなく なりますから、そういう意味では日本ではまだ上市されていませんが、5mgでの海外の 最新の議論を御提供させていただくことによって、もし御懸念があるようであれば自発 報告等で拾い上げてそこら辺を明らかにしていくべきと事務局は考えております。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。これは男性型脱毛症で すが、女性には適応はないということなのでしょうか。また女性の脱毛症あるいは逆に 女性の多毛症などの場合にこういう薬が使われることはないのでしょうか。 ○西岡参考人 海外では試験的には使われております。この審査資料では余り有効性が ないということが記載されております。女性に対しても海外で一部に使われております が、その効果は明らかになっていません。 ○機構 補足させていただきます。本薬の女性への有効性に関しましては、実は海外で 臨床試験がされております。閉経後の女性に加齢とともに起きてきすので、そこに適応 した臨床試験結果で実は効かないということがございます。先生方のお手元の538ペー ジを御覧いただきますと、閉経後女性の男性型脱毛症に関する効果といたしまして、海 外でそういった患者さんを対象にして1mg12か月投与のダブルブラインド試験が行わ れております。実際にはプラセボと比較して両群間に有意差がないということで、本薬 を閉経後の女性の男性型脱毛症に適応しても効果はないということになります。今回の 申請も男性であり、こういった情報については添付文書の方に注意喚起として本当に効 かないということを入念に書かせていただこうと考えております。 ── 審議官退席 ── ○永井部会長 ありがとうございます。 ○審査管理課長 今説明がございましたように、添付文書案の効能・効果に関連する使 用上の注意に使用成績の件は触れさせていただいております。1ページの一番左下にあ ります(3)に女性に対する適応はないということで、海外で実施した閉経後女性の男性 型脱毛症を対象にした試験の結果が簡単に記載されております。 ○永井部会長 そのほかいかがでしょうか。岩崎先生、どうぞ。 ○岩崎委員 統計担当で専門協議にも出ていたのですが、統計的に見ると1mgと0.2mg はほとんど同じということで、やはりチョイスとしては0.2mgだろうと思います。それ からこれは劇的に効かないですよね。専門協議のときに写真も見せていただいたのです けれども、48週のビフォアー、アフターで見たのですが、劇的に増えている方はほとん どいなくて増えているかもしれないというぐらいだと思います。ですから基本的に0.2 mgでいいと思うのですけれども、ちょっと飲んで全然効かないから安易に用量を上げる ということがなるべく現場で起きないようにしてほしいと思います。  それからもう一つ、これは製剤ミスに関係ないのかもしれませんが、1mgの方が色が 薄いですね。つまらないことかもしれませんが、これは間違えないかなと思ったのです。 ですから基本的には現場で0.2mgでオーケーではないかと私は思うのですけれども、安 易に1mgにしないような措置が講じられたらいいと思います。  あと、これは市販後は何か調べるのでしたでしょうか。 ○機構 特にスタディーを組んではございません。今御指摘がありました色の件につい ては、事務局からも最初手にした瞬間に指摘申したのですが、当初この申請が1mgでス タートしたこともあって、実際に処方が1mgで固定されてしまったために、0.2mgの製 剤を作るには色をずらさなければいけないという事情がございました。そのため逆に色 を濃くするというと今度は添加料の問題がありますので、なかなか濃くしきれないとこ ろがあって薄くなってきたと申請者は申しております。 ○田島委員 添付文書の中の内容なのですが、確かに使用上の注意の2.重要な基本的注 意というところに妊婦に投与するとうんぬん、それから本剤が粉砕、破損した場合には 妊婦又は等々ということが書いてありますけれども、これはやはりそういうことを明ら かに患者の方に伝えるというニュアンスが少し足りないような気がするのです。やはり 使用する患者にそれを十分アナウンスしなければ医者だけが知っていても効果が薄い部 分がありますので、そこら辺のところを御配慮いただきたいと思います。 ○機構 今先生に賜りました御意見でございますが、実際におっしゃるとおりでござい ますし、しかもこれは処方薬でございますので、添付文書は基本的には薬剤部で止まる 形になってしまいます。ですから患者にはそういった破砕時の取扱いの話、服用者以外 の家族の方に触らせないといった話、あるいはここには書いてありませんが、PSAと いう前立腺肥大のマーカーを半分ぐらいに減少させる効果もございますので、前立腺癌 の検査に行かれる方のためにも注意喚起のハンドアウト資料を注意喚起情報として渡す ような形で資料を作るように指示はしてございます。そこについては先生からのインフ ォームドコンセントと同時にハンドアウト資料の整備も併せて行うように指示してござ いますので、その辺で対応していきたいと考えております。 ○谷川原委員 いろいろお伺いしたのですけれども、今データを見る限り0.2mgか1mg かというと、やはりこういうデータが出たときは普通0.2mgを選択するというのは今ま での新薬の審査過程でもそのようにされてきたと思います。ただどうしても1mgを承認 したいと言われるならば、先ほど岩崎先生がおっしゃったような専門協議での議論の内 容が今の添付文書から読み取れないのです。ですから0.2〜1mgをということはどうや って使い分けるかとか、どちらがいわゆる標準的な用量なのかというのが全く分かりま せん。例えばもし0.2mgを中心用量とするならば、通常成人には0.2mgで、最大1mgま で可能だというような表現にほかの薬剤の場合は普通していたと思います。もし専門協 議でそういう御意見が中心だったのならば、そのように読み取れるように添付文書も書 いていただいた方がよろしいのかなと思います。  あと添付文書の書きぶりで何か所かコメントがあるのですが、例えば重要な基本的注 意に「本剤を分割しないこと」とありますけれども、粉砕して調剤することがときとし てありますので、「分割、粉砕しないこと」と併せて明確に書かれた方がよろしいかと 思います。また高齢者の場合に効果が不明であるという議論があったと思うのですが、 やはり加齢の要因が加わって本薬による効果が期待できない可能性があるということ で、高齢者に対する注意喚起が添付文書の中に明確に書かれていないのです。よくよく 探してみると臨床成績の項の真ん中下から10行目ぐらいに「なお、高齢者を対象とした 臨床試験は行われておらず、有効性は確認されていない」と書かれているのですけれど も、こういうところに入っているとなかなか目に付きませんので、普通は使用上の注意 の中で高齢者への投与という項目の中にこの一文を書く方が分かりやすいと思います。 以上です。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○審査管理課長 ただいまの御指摘の部分については適切に対応させていただきたいと 思います。 ○永井部会長 そのほかいかがでしょうか。 ○長尾部会長代理 こういうケースの判断というのは患者さんが決断をするのかなとい う気がするのですが。つまり割とよさそうだとか、満足度と絡むのかもしれませんけれ ども。統計的にやると大して差がないということなのですけれども、例えば自己判定の 方を見ると1mgの方がリスポンスが非常にいいし、それから24週のところぐらいだと上 がりが早いですよね。こういうことが結構大事なことなのかなという気がしますけれど も。 ○永井部会長 かなり主観的な判断によるところではありますね。 ○長尾部会長代理 患者の主観というのは結構大きいのかなと思うのです。客観的な議 論だけでnearly equalだからどちらでもいいというより、やはり両方のチョイスがあっ た方がいいと私は思います。 ○永井部会長 ただし原則としてはまず0.2mgから…。 ○長尾部会長代理 スタートはそういうことになりますね。 ○永井部会長 それから情報を十分に伝えること、あるいは漫然と続けないこととか、 やはり患者さんが自分で判断するときの情報を与えておくということでしょうか。その ほかいかがでしょうか。谷川原先生、どうぞ。 ○谷川原委員 幾つも申し訳ありません。もう一つは市販後に特段の試験が計画されて いないということなのですけれども、今一般薬でリアップというものが非常によく用い られていますが、結局直接比較でどちらが効果が高いかというような試験は計画されて いないのでしょうか。 ○機構 今現在では計画されておりません。ただ実際に海外においてリアップと比較さ れたものが二つほどありまして、そこでは本薬の方が有効性が勝っていたという報告は ございます。 ○谷川原委員 ただ海外は何か濃度が違うとかいう話ではありませんでしたか。 ○機構 海外ではリアップの2mgですから日本の国内流通よりも高いドーズと比較され ておりまして、それで勝っているので類推解釈をすると更に勝つことは可能なのですが、 正確には…。 ○谷川原委員 ただ片やOTCで片や処方薬で…、この薬剤の位置付けを考える上でど れくらい有効性に差があるかというデータも出していただけると、非常に分かりやすい と思います。 ○永井部会長 いかがですか。 ○機構 それは市販後臨床試験を組むという御指示と考えてよろしいですか。 ○谷川原委員 指示ではありませんが、そういうデータを出していただければ非常に位 置付けが分かりやすいということです。御検討ください。 ○永井部会長 そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もし御意見ございま せんでしたら承認を可とさせていただいて…。ただこの薬剤が新有効成分であるという こと、それから既存の医薬品とは薬理作用が異なるということでございますので、薬事 分科会に上程し審議することとさせていただきます。そういうことでよろしいでしょう か。西岡先生、ありがとうございました。  それでは議題2について機構から審査概要の御説明をお願いいたします。 ── 西岡参考人退席、樋口委員退室 ── ○機構 それでは議題2、資料2、医薬品ルボックス錠25ほかの製造承認事項一部変更 承認申請の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  ルボックス錠はマレイン酸フルボキサミンを有効成分とする選択的セロトニン再取り 込み阻害薬(SSRI)として知られている薬剤であり、既に本邦でうつ病、うつ状態及 び強迫性障害に対して承認されております。海外でもカナダ、フランス、ドイツ等94 か国で承認されております。今回の申請は社会不安障害の効能・効果を追加するもので ございます。  本申請の専門委員としては、資料9に記載されておりますとおり、大森委員、神庭委 員、鈴木委員、中村委員、林委員、山脇委員の計6名の委員を指名いたしました。  審査内容について簡単に御説明させていただきます。薬理的な検討ですが、社会不安 障害の機序等が明確になっておらず、モデル動物等についても確立されておりませんが、 SSRIの反復投与によりセロトニン5HT2C受容体を脱感作させることが機序の一つ と考えられております。  臨床成績についてですが、国内でプラセボ対照二重盲検群間比較試験が実施され、社 会不安障害のスコア指標として海外で用いられているLiebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)の日本語版LSAS-Jが主要評価項目として設定され、治療後のLSAS-J 総スコアはプラセボ群で65.8±2.5、本剤群で58.6±1.8であり、本剤による症状の有 意な改善が認められております。また最長52週間の長期投与試験も実施されており、改 善の維持が確認されております。審査においては社会不安障害という診断の適切性、増 量の必要性等について検討しております。  安全性については消化管出血のリスク、自殺との関連等について検討しておりますが、 社会不安障害で投与した場合の本剤のリスクは既承認のうつ病等に使用された場合と同 等であると判断しております。  また製造販売後には長期使用例を対象に500例程度を目標とした長期特別調査を実施 することとしており、この中で安全性を注意深く検討するとともにLSAS-Jを用いた有効 性評価も実施し、本疾患における適切な評価を推進したいと考えております。  以上のような審査を踏まえ、本剤の社会不安障害に対する効能・効果の追加を承認し て差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたし ました。本申請は新効能医薬品であることから再審査期間は4年間、薬事分科会には報 告を予定しております。  なお追加でございますが、本品目については関与されているため今御退席の樋口委員 より事前にコメントを頂いております。今回添付文書でDSM-IVに基づく診断を行う ことというのを効能・効果に関連する使用上の注意で記載しております。樋口委員の方 からは、ICD-10といったものもあるのでDSM-IVに限定することは適切ではないと いうコメントでございます。機構としましては、今回の治験はすべてDSM-IVに基づ く診断により実施されていること、それから社会不安障害という診断そのものがまだ日 本で定着していないというような懸念、また日本でいわゆる対人恐怖症と言われている 疾患と社会不安障害との区別といったようなことから、DSM-IVに基づいて診断して いただくということきちんと明確にして、この社会不安障害というものの診断を日本の 中で正確に定着させたいと考えております。そういう意味ではDSM-IVに基づく診断 ということを明確に記載させていただきたいということを御説明いたしまして、樋口先 生の方からも御了承いただいておりますことを御報告いたします。以上です。よろしく 御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございます。この社会不安障害というのは割と新しい概念の ようですけれども、何種類かあって、そのうち緊張型対人恐怖に近い概念で妄想がない というような状態だという理解でよろしいですか。 ○機構 日本では古くから対人恐怖症というものが知られているかと思います。対人恐 怖症の分類としては今のところの緊張型対人恐怖症と確信型対人恐怖症というのが知ら れておりますけれども、今回このDSM-IVで言われております社会不安障害というの は緊張型、いわゆる人前に出るのが怖い、あるいは大勢の前で話ができず、そのことに 対して非常に不安を感じているということが特徴になっております。確信型対人恐怖症 の方はむしろ少し妄想が入るということです。それは今回のDSM-IVの概念からは少 し外れるところでございまして、日本でいわゆる対人恐怖症というのは社会不安障害よ りももう少し広い概念でとらえられていると認識しております。 ○永井部会長 いかがでしょうか。これまでこの社会不安障害に対する薬はないのだそ うです。初めての薬剤だということでございますが。井上先生、どうぞ。 ○井上委員 ちょっと門外漢で恐縮なのですけれども、私は昔抗うつ薬の研究をしてお りました。当時は抗不安作用を持つ抗うつ薬としてアミトリプチンなどがあったのです が、そういった薬剤ではこれは全く効かない範疇の新しい疾患ということなのでしょう か。資料を読ませていただいて、どうも対象疾患が明確になっていないのに先に薬剤が 出てきたように感じたのですが、その辺りはいかがでしょうか。 ○機構 機構の方から補足で御説明申し上げます。これは必ずしもアミトリプチンが効 かない、薬剤の効果ということから新しく出てきた疾患概念ではございませんで、DS M-IVというのは症候の方からアメリカが主流となって行ってきた分類でございますの で、薬効の面から新しく特別な病気ということではございません。  この病気の診断では、病気の性質として患者さんがなかなか受診してくれないという ところがありますので、お薬の効能・効果、あるいは実際使っていく面ではそこのとこ ろが問題になるかと思っておりますけれども、薬効の方では特にアミトリプチンが効か ないということではございません。 ○永井部会長 副作用、いろいろなリスク、抗うつ薬ですから自殺リスクですとか初期 に興奮ぎみになるとか、興奮ぎみになったところで増量するとかえって危険であるとか、 一般的な抗うつ薬の治療の注意ということは一応添付文書には配慮されているわけです ね。 ○審査管理課長 そこらにつきましては、基本的に今回の薬は効能の追加でございます ので、既に反映されていると認識しております。 ○機構 うつ病の精神症状、精神運動不穏あるいはアカシジアといった症状についての 注意喚起は、ちょうど海外でうつ病患者にSSRIを投与すると自殺のリスクが上昇す るといったようなことが報告されておりまして、今回の審査の中でもそもそもこのSS RIについてどの程度の自殺リスクがあるかということ、それから社会不安障害患者に おける自殺リスクはどうかというような点は審査をしております。  このうつ病に関しては今回の適応ではありませんけれども、海外の状況等を見てもう 少しきちんとした情報提供をすべきということで、今部会長が御指摘の点について重要 な基本的注意の(2)のところに、もともとうつ病患者の自殺企図のおそれがあるという ことで注意喚起があったのですが、そこに更に追記しているというのが今回の審査の中 で加えさせていただいているところです。それから社会不安障害患者の自殺リスクにつ いては、少なくともうつ病患者でのリスクを上回ることはないだろうと判断していると いうことでございます。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。岩崎先生、どうぞ。 ○岩崎委員 スコアでもってはかっていますね。それはそれで客観的でいいのですけれ ども、例えば飲む前はこうだった人が飲んだらこうなったとか、そういう分かりやすい エビデンスなどがもしあったら御紹介いただきたいのですが。 ○機構 分かりやすいエビデンスというか、CDIというのも一緒にはかっておりまし て、それの症例を1例1例見てみますと、人前でしゃべれなかった人がしゃべれるよう になった、あるいは最初医師とコミュニケーションできなかった方が素直に医師の説明 をきちんと聞いて、自分の症状も話すようになるといったことが見た目としてはあるの かなと思います。ただ今回のこのスコア自体は確かにスコアなのですが、中身を見てみ ますと例えば人前で電話を掛けるときに不安、恐怖を感じるかということにスコアを付 けていたり、人に姿を見られながら仕事、勉強をするというときに不安を感じるか感じ ないかというようなことでやっておりますので、このスコアの改善そのものが見た目の 症状の改善につながっているということで理解をしております。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。もし御意見がございま せんでしたら承認を可として薬事分科会に報告させていただきますが、よろしいでしょ うか。それではそのように進めさせていただきます。  次に議題3につきまして機構から御説明をお願いいたします。         ○機構 議題3、資料3、医薬品イヌリン、イヌリード注の製造承認の可否等について、 医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  イヌリンは果糖が直鎖状に結合し、その末端にブドウ糖が付加された平均分子量 3,000〜8,000の多糖類で、1930年代半ばに糸球体ろ過量(以下、GFR)の測定物質とし ての有用性が示されて以来、欧米を中心に世界各国でGFR測定のための標準物質とし て使用されており、イヌリンクリアランスは真の糸球体ろ過量を示すゴールドスタンダ ードとされています。現在イヌリンの製剤は米国薬局方及び英国薬局方にGFRの測定 用医薬品として収載されています。  本邦では院内製剤として試薬からイヌリン製剤を調製して使用される場合がありまし たが、発熱性物質等の混入、安全性等の問題があり、日本腎臓学会が平成8年に腎機能 ・尿たんぱく測定委員会を発足させ、イヌリン製剤の開発を製薬会社に要望した経緯が あって本剤は開発されてきたものでございます。学会からイヌリン製剤の早期承認の要 望書も厚生労働省あてに提出されています。  本申請の専門委員としては、資料9にありますとおり、谷本委員、菅野委員、三浦委 員、岩崎委員、柏原委員、佐中委員、鈴木委員、川上委員の計8名が指名されました。  次に臨床試験成績について説明いたします。国内臨床試験として健康成人男性での第 I相試験が行われた後、急性腎症候群、慢性腎症候群、ネフローゼ症候群及び糖尿病患 者を対象に、クレアチニンクリアランスとイヌリンクリアランスとを比較する試験が実 施されています。クレアチニンクリアランスについては尿細管からクレアチニンの分泌 による排泄もあり、GFRを過大評価するとされています。有効性評価の対象症例116 例においてクレアチニンクリアランスとイヌリンクリアンスの比は約1.9で、個々の症 例でもいずれもクレアチニンクリアランスはイヌリンクリアランスより大きい値でし た。  安全性については125例中17例(13.6%)に27件の有害事象が見られましたが、高度 と判定されたものはありませんでした。  本剤は水負荷並びに複数回の採尿及び採血が必要で、患者の負担も大きいことから、 現実的に本剤が必要とされる場合はより正確なGFRの測定が必要な場合と考えられま す。臨床試験の成績について、その設定に問題はあったものの、クレアチニンクリアラ ンスは測定されたイヌリンクリアランスより大きく、GFRを過大に評価していること は示されており、本剤のGFR検査における有効性は確認できたものと判断され、専門 協議においてもイヌリンクリアランスがGFRを評価する方法として有効との御意見を 頂いております。  安全性について、本剤による試験は水負荷を伴うことから、循環血液量の増加等に関 する注意喚起を中心に使用上の注意を整備し、使用上の注意では開始時より患者の状態 を観察し、浮腫等の症状の悪化又は呼吸困難等が認められた場合には直ちに検査を中止 し、適切な処置を行うこと等を記載しております。  以上のような検討を行った結果、効能・効果を整備した上で本申請を承認して差し支 えないと判断し、医薬品第一部会で審議されることが妥当と判断いたしました。本剤は 新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は6年とすることが適当であると判 断しております。なお本剤は生物由来製品及び特定生物由来製品には該当せず、原体、 製剤共に毒薬、劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会には報告 を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ── 説明中、樋口委員入室 ── ○永井部会長 ありがとうございました。それでは御質問、御討論をお願いいたします。 教科書に出ているような有名な薬剤ですけれども、現実には院内製剤で作られていたよ うなのですが、臨床現場でも使った経験は私はございませんし、ほとんどクレアチニン クリアランスで代用しているという状況でございます。データを見ますとクレアチニン で見た場合とイヌリンで見た場合で随分違うのだなということを改めて認識した次第で すが、ただこういう違いというのは既に学会や専門協議では周知されていたということ でよろしいのですね。 ○機構 機構の方から御説明いたします。腎臓内科を専門とされる先生方はその点は既 に御承知でございます。 ○谷川原委員 イヌリンの定量法、分析法はどう…、これはクレアチニンの測定のよう に各施設でできるレベルのものなのですか。それとも結構難しい方法で外注検査になる のでしょうか。 ○機構 今までアンスロン法という方法で各施設で行われてきたと思うのですけれど も、今回東洋紡績株式会社から酵素法というものが開発されてきておりまして、これは まだ審議中なのですが、これによって検査が簡単にできると考えられております。 ○谷川原委員 今の御回答は検査キットも同時に審査中ということで、それが出れば医 療機関でも簡単に測れるようになるということですか。 ○機構 そうです。 ○新薬審査第二部長 これを用います検査は有名な臨床検査法提要という本にも既に載 っているようなものでございますので、先ほど部会長からお話がありましたように既に 院内製剤でも使用されておりますから、そういう経験のあるところでは当然測定は可能 であると理解しております。 ○谷川原委員 もう一つなのですけれども、確かにGFRの最も正確なマーカーはイヌ リンクリアランスだと思うのです。腎機能の評価としてはより精密なマーカーというの はよく分かるのですけれども、全然別の使い方として腎機能低下のときに薬剤の用量調 整をするという場合に、今までのジゴキシンにしろアミノ配糖体にしろ全部クレアチニ ンクリアランスをベースにして、クレアチニンクリアランスが幾ら以下の場合は用量を どのようにするというようなガイダンスがずっと積み上げられてきているわけです。も しこのスタンダードがイヌリンクリアランスに替わっていくと、今までの蓄積も全部読 替えが必要なのかというところもあります。クレアチニンクリアランスというのはやは り簡便なマーカーという意味では残るのでしょうか。 ○新薬審査第二部長 本剤は患者さんに水負荷をかけたり何回も採血、採尿も必要とい うことでございまして、専門協議においてもすべてこれに置き換わるということはむし ろ考えにくいのではないかという御意見がございました。実際に世に出てみないと分か らないというところはございますけれども、ゴールドスタンダードではありますが、簡 便性のあるものではなく、臨床的な意味というのは当然クレアチニンクリアランスにあ ると考えております。積極的に置き換えたいなどというような発想ではございません。 ○機構 ちょっと補足申し上げます。今までクレアチニンクリアランスはずっと積み重 ねがございましたので、それをひっくり返すためにこれが出たわけではございません。 学会の方からアカデミックなことも含めて、つまりGFRの絶対値基準をはっきりした いということもあっての今回の申請でございますので、今までのクレアチニンクリアラ ンスの流れの積み重ねをひっくり返すようなものではないと考えております。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。もしよろしければ承認を可として薬事分科会に報 告させていただきます。どうもありがとうございました。  続きまして議題4、アクチバシンに関して機構から御説明をお願いいたします。 ── 松本参考人着席 ── ○機構 それでは議題4、資料4、医薬品アクチバシン、グルトパ注につきまして機構 の方から御説明いたします。本剤の有効成分アルテプラーゼは血栓溶解を目的とするt- PA(tissue-plasminogen activator)で、遺伝子組換え製剤であります。申請者は三菱 ウェルファーマ株式会社及び協和発酵工業株式会社で、平成3年には既に急性心筋梗塞 における冠動脈血栓の溶解(発生後6時間以内)を効能・効果として承認されております。 今般、適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについての通知に基づいて、虚血性脳血 管障害急性期に関する効能を追加する医薬品製造承認事項一部変更承認申請が行われた もので、優先審査の指定を受けております。  本剤は虚血性脳血管障害に対する治療薬としては海外では既に承認されております が、国内では当疾患を効能・効果とするt-PA製剤がないことから、日本脳卒中学会か ら平成11年及び平成16年にt-PA製剤の効能追加に関する要望書が厚生労働大臣に提 出されております。これを踏まえて申請者は文献調査を行い、本剤の有用性は医学薬学 上公知と判断したものです。  本剤の審査の概要について御説明させていただきます。本申請は医学薬学上公知とし て申請されたものでございますが、国内における当該疾患に対する本剤使用例の報告は まだ十分とは言い難いことから、国内で発症後3時間以内の虚血性脳血管障害患者に対 して非盲検非対照単一用量臨床試験が実施されました。血液凝固線溶系には人種差があ るということはほぼ知られておりますので、欧米の臨床推奨用量の0.9mg/kgに対し本 試験では0.6mg/kgという用量が設定されております。  有効性の主要評価項目としては機能障害の指標でありますmodified Rankin scale(以 下mRS)が選択され、発症後3か月のmRS 0-1(全く症状なし、あるいは症状はある が、特に問題となる障害はなく日常生活及び活動は可能)の割合が33.9%を下回らない ことを確認することとされ、安全性の主要評価項目としては投与開始後36時間以内の症 候性頭蓋内出血の発現率が選択され、これが9.6%を上回らないことを確認することと されていました。これらの有効性の下限値及び安全性の上限値は1996年以降の公表論文 から算出したもので、試験成績としては、有効性の項目に関しては36.9%、安全性の評 価項目に関しても5.8%ということで、いずれもあらかじめ定めた判断基準を満たして おりました。  本剤の投与量0.6mg/kgについては、専門協議においてもこれより低用量では有効性 が不十分である可能性があり、0.9mg/kgでは欧米人よりも出血の有害事象が増える危険 性がある等の御議論を頂きまして、用法・用量は「通常、成人には0.6mg/kgを静脈内 投与する。投与は総量の10%は急速投与(1〜2分間)し、その後残りを1時間で投与す る。なお、本剤の投与は発症後できるだけ早期に行う」とすることが妥当と判断いたし ました。  本剤の有効性につきましては医学薬学上公知であり、効能・効果は専門協議における 議論も踏まえまして、虚血性脳血管障害急性期における機能障害の改善(発症後3時間以 内)とすることが妥当と判断いたしました。  また機構は、本剤の至適用量並びに有効性、安全性に関しては市販後臨床試験による 用法・用量の確認、並びに安全性及び有効性に関するデータを収集する使用成績調査が 必須であると判断しております。  以上のような検討の結果、可能な限り全症例を対象に使用成績調査を実施し、本剤の 適正使用に必要な措置を講じるよう承認条件を付した上で本申請を承認して差し支えな いと判断いたしました。本申請は効能追加でありますので、再審査期間は4年と判断し ております。薬事分科会へは報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いい たします。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは参考人として松本先生においでいた だいております。松本先生、何かコメントを頂けますでしょうか。 ○松本参考人 広島大学の松本と申します。よろしくお願いいたします。今機構の方か らもお話がありましたように、このt-PAに関しては実は日本では最初に心原性脳塞栓 での、このものそのものではないものにつきまして臨床試験を一部やっているのですけ れども、ジェネンティックの特許の関係でいったんそれができなくなったということが ございました。1996年にFDAがこのt-PAによる3時間以内の治療を認めて以来、 今世界40各国以上で既に使われていまして、アジアでも日本以外の韓国、台湾、中国そ の他で使用されています。日本でだけ認可されていない治療と言ってもいいぐらいにな ってしまっております。したがって国際的なエビデンスでは急性期の治療としてはこれ のみが一番有効と言われておりますので、それができない日本というのは現在非常に異 常な国と思われておりまして、基本的に治療法がないので日本にVIPが来て脳卒中に なったときには気を付けろと言われているような情けない状況でございます。  そういう中でアクティブドラッグでの臨床試験という形でやっと投与というのがなさ れたわけですけれども、それで有効性は検証されております。ただ日本人は出血を起こ しやすいため、量は0.6mg/kgということで、欧米のに比べますと0.3mg/kgほど少ない わけでございますが、私どもとしてはそれを進めるのは極めて大事だろうと思っていま すので、是非よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは御討論をお願いいたします。脳梗塞 と言ってもいろいろなタイプがございますね。先ほどの心原性脳塞栓症やコレステロー ル塞栓などの場合は実際にはどうなのでしょうか。 ○松本参考人 今先生がおっしゃったとおり、日本で認可されている薬剤については病 型を分けて治療するものというのは随分出来ているわけですけれども、発症3時間以内 という非常に超早期ということもございまして、欧米での臨床試験では虚血性脳卒中と いう形でほとんど区別せずに使われております。日本での臨床試験に関しては心原性の 方がかなり欧米よりも多い数が入っておりまして、重症度はそちらの方が重いわけです が、有効度は後のサブ解析で各臨床病型で見て差がなかったというのは欧米のNDSの 最初の研究であります。その後の研究でもそのようになっていますので、どの虚血性脳 卒中であっても使うことは可という具合には考えられます。 ○永井部会長 いかがでしょうか。当然CT検査を必ず行った上で使用するというのは 前提としているわけですね。 ○松本参考人 非常に大事なことは、今おっしゃられたようにCTで不可逆的な病変が 非常に大きいというときには、逆にそこに血流が再開することによって出血を誘発いた しますので、CTは必須でございます。それから重症度をよく評価できる専門医がいる こと。これは欧米のものでもNIHSSというNIHのStroke Scaleを用いて、世界的には 今それがよく使われているのですが、23以上というか22超のスコア以上であれば余り にも重症で効果が期待できないし、逆に副作用が起こり得ると。それから逆に軽過ぎる 場合無治療で軽快することがありますから、NIHSSで4未満ぐらいであったりすると使 わないといったところのことがございますので、脳卒中学会の方からもできたらこうい うことが評価できる方のいるところで使うようにという要望は出しております。 ○永井部会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。実際に急性心筋梗塞で脳出 血の合併症というのはどのくらいの頻度で起こっているのでしょうか。最近はインター ベンションが主流になっていますが。 ○機構 機構の方から御説明申し上げます。はっきりとした心脳卒中の疫学的なデータ というのは日本脳卒中学会でJ-MUSICを初めとしてかなり詳しいデータをとっているの ですが、心脳卒中に関する詳しい疫学的データはないと思いますけれども、松本先生、 いかがでしょうか。 ○松本参考人 t-PAが心筋梗塞で既に認可されておりますよね。ですから今おっしゃ ったのは、その間のt-PAを使われた方々での出血のパーセントですね。 ○機構 失礼しました。これは添付文書の3ページの左下、4.副作用の「急性心筋梗塞」 の部分に書いております。副作用の発現例は3,767例中267例、314件であったとなっ ており、その3行下に脳出血14件(0.4%)ということになっております。 ○永井部会長 ということは、脳梗塞に対して使ったときも別の部位で出血が起こる可 能性もある、あるいは当然梗塞部位でより出血も起こりやすくなる可能性もあるという ことですね。しかしベネフィットの方が大きいだろうという判断かと思いますが。適応 拡大ということですが、よろしいでしょうか。外国では既にかなりスタンダードな治療 になっているということでございます。もし御意見ございませんでしたら承認を可とし て薬事分科会報告とさせていただきます。どうもありがとうございました。  それでは報告事項に移らせていただきます。事務局から御説明をお願いいたします。 ── 松本参考人退席 ── ○事務局 それでは報告事項の議題1、希少疾病用医薬品の取消しについて御報告いた します。資料5を1枚おめくりいただきますと、希少疾病用医薬品指定取消し品目とし て医薬品の名称が「エチドロン酸二ナトリウム」、対象疾病は「後縦靱帯骨化症」、申 請者の名称は住友製薬株式会社でございます。本剤は平成7年4月に希少疾病用医薬品 としての指定をさせていただきました。もう1枚おめくりいただきますと、そちらに希 少疾病用医薬品に指定された経緯、開発の経緯等がございますけれども、後期第II相試 験での主要評価項目である骨化進展割合について用量反応性及びプラセボ群に対する本 剤投与群の優越性が認められなかったため、機構における対面助言において有効性を検 証するための追加試験を実施するよう助言したところ、会社としては追加試験の実施は 困難と考え、この品目の開発を中止するという判断がなされまして、希少疾病用医薬品 試験研究中止届け書が提出され、所要の手続きを経て今回の指定取消しに至ったという 次第でございます。以上でございます。 ○永井部会長 ありがとうございます。それでは先生方から御意見いかがでしょうか。 よろしければ御確認いただいたということで進めさせていただきます。  続きまして議題2、優先対面助言品目の指定について御説明をお願いいたします。 ○事務局 優先対面助言品目の指定について、資料6-1〜6-3により御説明いたします。 まず繰り返しになってしまいますけれども、簡単に制度の説明をさせていただきます。 対面助言と申しますのは従来より行っているいわゆる治験相談のことでございますが、 優先対面助言制度は治験品目の中でも医療上の有用性が特に高いと期待される品目に関 してほかの品目に優先して治験相談を行って、その開発の迅速化を図ろうというもので ございます。その選定基準は優先審査に準ずるとされているところでございまして、疾 病の重篤性と医療上の有用性を総合的に評価して指定の可否を決定するとしておりま す。  今般当部会の関連品目として新たに2品目を指定いたしましたので、各品目について 次に御説明したいと思います。まず資料6-2を御覧ください。一つ目は味の素株式会社、 武田薬品工業株式会社のリセドロン酸ナトリウム水和物でございます。対象効能は骨ペ ージェット病でございまして、5月27日付で指定しております。指定審査結果の概要で ございますが、疾病の重篤性に関しては、骨ページェット病は骨代謝疾患でございまし て、過剰の骨形成の結果、最終的には骨の変形に至るといった疾病でございますので、 日常生活に著しい影響を及ぼす重篤な疾患に該当すると判断しております。次に医療上 の有用性に関してですが、海外での臨床試験の結果、本剤は本邦における主な既存薬で ありますエチドロン酸二ナトリウムと比べて有効性が勝り、また安全性はほぼ同等であ るという成績が示されているところでございます。以上より、本剤は既存薬よりも有用 性が勝ることが期待されると判断いたしまして、優先対面助言品目に指定したものでご ざいます。  次に1枚めくっていただきまして、資料6-3でございます。二つ目はタクロリムス水 和物でございまして、多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎の効能につきまして 6月28日付で優先対面助言品目に指定したものでございます。なおこの品目に関しては 現在医師主導での治験が計画されているということで、個人名での申請となっておりま す。指定審査結果の概要でございますが、疾病の重篤性に関しては多発性筋炎・皮膚筋 炎に合併する間質性肺炎は膠原病に合併する間質性肺炎の中でも予後が不良であるとい うことが文献等でも示されているところでありますので、生命に影響を及ぼし得る重篤 な疾患であると判断しております。また医療上の有用性に関しては、本剤については国 内外の臨床成績等によりまして既存薬であるステロイド製剤に抵抗性を示した症例に関 しても本剤が有効性を示すといった成績が得られているところでございます。これらに よりまして本剤は既存薬よりも有用性が勝ることが期待されると判断し、優先対面助言 品目として指定したものでございます。以上でございます。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは御質問いかがでしょうか。よろしい でしょうか。よろしければ御確認いただいたということで進めさせていただきます。  それではその他に移らせていただきます。議題1、承認条件に係る結果について説明 をお願いいたします。 ○事務局 それでは資料7を御覧いただきたいと思います。承認条件についてというこ とで簡単に御報告いたします。具体的にはレミケード点滴静注用100、一般名がインフ リキシマブという品目でございます。本剤はまず平成14年1月にクローン病の効能で承 認されまして、その後関節リウマチの効能追加の承認が平成15年7月になされておりま す。そのときに1ページの下半分にございますような承認条件を三つ付けておりまして、 今回はこのうちの1、いわゆる全例調査の結果について御報告申し上げるという内容で ございます。  2ページでございます。調査結果の概要ですが、この調査は平成15年7月から開始さ れまして、これまで6,477例の症例のデータが集積されております。そのうち当初目的 としておりました6か月以上の投与の観察が終了した患者さんの数が4,475例というこ とでございます。その結果でございますが、(2)にありますように6,477例の調査にお きまして重篤な副作用が5.1%(333例)の方に見られております。大体主なものは細菌性 肺炎が1.3%(86例)、それからカリニ肺炎(疑)が0.4%(26例)、結核が0.2%(11例)と いった形になっております。  1枚おめくりいただきますと、3ページに重篤な副作用について承認当時の国内臨床 試験との比較を表に載せております。調査期間が異なりますので単純な頻度ではなくて 人年法、person-yearで比較しておりますけれども、承認のときのデータと大体同じよ うなものでありまして、国内臨床試験あるいは外国での当時の臨床試験で見られていた ような副作用が使用成績調査でも出てきているということでございます。  ちょっと間を飛ばしまして、8ページの下半分を御覧ください。この調査の途中でど のような対応を図ったかということの御説明でございますが、初期の調査1,000例まで で認められた副作用を基に、結核、それから投与時の反応の対策につきましては学会の 方の「レミケード使用マニュアル」というものを改訂していただきまして、結核のスク リーニングの徹底、既感染の疑いがあれば抗結核薬を予防投与すること、それから投与 時反応の発症を予防するためにアセトアミノフェン、抗ヒスタミン剤の予防投与とか投 与速度の調整を行うというように改訂していただいているということでございます。そ れから細菌性肺炎、カリニ肺炎、間質性肺炎等につきましてもレミケード使用マニュア ルで主治医に情報提供を行うという対応を当時図ってございまして、結果的にはそうい った対応は今うまくいっているということでございます。  10ページの下の方になりますけれども、企業の方は一応これで全例調査の目的は果た せたのではないかというようなことを申しております。ただ、この調査終了後もその患 者さんに対しては全例調査のときに使った患者手帳などといったものをお渡ししていき たいと申しておりますし、11ページの上の方にまいりますけれども、医師と医療機関に 対してはリウマチ診断ができる専門医が在籍して、結核や感染症に関する治療、検査が でき、アナフィラキシーの処置ができる医療機関を対象に新規施設の拡大を行うという ような意向を示しております。そういった内容を踏まえて事務局と機構が中身を拝見し たところ、今回の承認条件の1である全例調査については一定のデータが集まってきて 対応もきちんとなされているということで、一応この報告をもって調査自体は終了させ ていただきたいと考えております。条件の2と3につきましは今後も引き続き継続して やっていただくということでございます。以上でございます。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは何か御質問いかがでしょうか。谷川 原先生、どうぞ。 ○谷川原委員 このような承認条件に係る審査報告書というのは通常作られるものなの ですか。今まで余り覚えがないように思うのですが。 ○事務局 これまで実際承認条件が付いてデータが集積されたものが余りなかったもの ですから頻度が少なかったのですけれども、今後はこういった形で担当の部会の方には 報告をさせていただく予定でございます。 ○谷川原委員 大変有り難いと思います。と言いますのは、審査のときにいろいろな議 論をして承認条件を付けて、結局その後どうなったかというフィードバックがほとんど ないと言いますか、お尋ねすれば特に回答はしてくれるのですけれども、こういう明確 な審査レポートという形にしていただいたのは余り前例がないと思いますので。重要な 案件に関しましては、是非こういう形で引き続きよろしくお願いしたいと思います。  あと質問なのですけれども、今回の6,000例の全例調査等の安全性データを踏まえた 上で添付文書の変更とか、具体的に新たに注意を喚起することは何かあったのでしょう か。○事務局 例えば副作用の頻度の改訂などの細かいことはやっているのですけれど も、大きく何か新しい項目を追加したということはありません。先ほど申し上げた使用 マニュアルの方にいろいろと情報提供させていただいていることで、今のところ対応が 図られているということでございます。 ○谷川原委員 ありがとうございました。 ○永井部会長 臨床論文にしてもらいたいぐらい重要なデータだと思うのですが、そこ で一つは結核への対応ですね。当初多くて、対応がうまくいくようになってきたら減っ てきたということですけれども、その辺も添付文書に何か加える必要はないのでしょう か。添付文書を守ればもう十分結核は抑えられるということですか。 ○事務局 事務局より御説明いたします。このようなレミケード使用マニュアルが医療 機関に配られているのですけれども、そちらの方で結核の疑いがあるような患者さんに は予防投与をするということと、また先生方が使われていて使用経験が積まれてきたと いうことで、発生頻度は段々下がってきていると思います。 ○永井部会長 それからもう一点、アナフィラキシーが臨床試験経験者で18%だったと いうのはかなり高いですね。この点に関する注意喚起もされているのでしょうか。ある いは一度中断して再び使う方もこういうことが考えられるわけですね。 ○事務局 そのような対応として抗ヒスタミン薬やアセトアミノフェンなどを予防投与 されていて、そちらに関しても段々発生頻度は下がってきております。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。谷川原先生、どうぞ。 ○谷川原委員 この審査報告書も審査レポートと同じように厚生労働省ウェブに載るわ けですか。 ○事務局 今のところは新薬の承認に際しての審査報告書を承認後すべて載せていると いう手続が確立されているのですけれども、市販後のものなどについては確立された手 続はございませんので、今の御要望を参考にして今後検討させていただきます。 ○谷川原委員 是非一般に公開していただきたいと思いますので、よろしくお願いいた します。 ○永井部会長 ありがとうございました。議題は以上でございますが、事務局から何か 報告はございますでしょうか。 ○事務局 事務的な御報告でございますけれども、6月27日の薬事分科会を経まして当 部会を通過した品目で、7月25日に承認したものがございますので、御紹介申し上げま す。3品目ございまして、一つ目がクリアクター注、モンテプラーゼ、これは効能追加 の承認でございます。二つ目がFDGスキャン注、同MP注、フルデオキシグルコース の製剤でございます。それから三つ目がサラジェン錠、塩酸ピロカルピンの製剤でござ います。以上三つにつきましては7月25日に承認させていただきました。  それから次回の医薬品第一部会の日程でございます。既に御案内させていただいてお りますけれども、次回は8月24日水曜日午後2時から開催させていただく予定でござい ますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。 ○永井部会長 それでは本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうござ いました。 ( 了 )                                         連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 1 -