05/07/28 第5回船員保険制度の在り方に関する検討会の議事録について           第5回船員保険制度の在り方に関する検討会           日時:平成17年7月28日(木) 15:00〜           場所:はあといん乃木坂 6階「ソレイユ」 ○事務局  事務局でございます。開会に先立ちまして資料の確認をさせていただきます。お手元 に議事次第の紙が1枚、それから資料1〜7までございますでしょうか。それぞれ御確 認いただきまして、もし不足等がございましたら、事務局までお申しつけいただければ と思います。また途中、落丁等がございましたら、手を挙げていただければ事務局の方 から参りますので、よろしくお願いいたします。  それから、私どもは軽装で臨ませていただいておりますので、どうぞ委員の皆様方も 軽装にしていただければ……。  それでは、定刻になりましたので、座長、これからよろしくお願いいたします。 ○岩村座長  それでは、第5回船員保険制度の在り方に関する検討会を開催いたします。議事に入 る前に、本日の出欠状況について御報告をさせていただきます。本日は野川委員が御欠 席ということになっております。また、保険局長は所用のため欠席という御連絡を受け ております。  それでは、早速本日の議事に入りたいと存じます。本日は、今後の船員保険制度の在 り方について、資料が事務局から提出されております。まず、前回の検討会におきまし て、委員の方々から、さまざまな財政シミュレーションをしてほしいという御意見がご ざいました。これを受けまして、事務局で資料を作成していただいておりますので、ま ず「船員保険職務上年金部門の機械的試算について」、事務局から御説明をいただきた いと思います。よろしくお願いいたします。 ○事務局  それでは、事務局より説明させていただきます。資料1をよろしくお願いいたしま す。タイトルは、「船員保険職務上年金部門の機械的試算について」ということでござ います。前回、委員の皆様方から試算をしてほしいという御意見をいただきましたの で、それをもとに行いました。幾つかのパターンを行っておりまして、まず1番で、前 回の検討会でリクエストのあった試算ということでさせていただいております。なお、 この場合、各試算を比較しやすいように、保険料率を現在の44‰で一定ということで試 算をさせていただいております。後ほど、各試算について御説明を申し上げます。それ から2番でありますが、今の1番の試算だけでは、制度の長期的な維持可能性というの がなかなかわかりにくいのではないかと、私ども事務局の方で考えまして、積立金が枯 渇しない水準の被保険者数を推計するということをやってみました。それから3番でご ざいますが、試算につきましては11月の第2回の検討会で出させていただいております が、その際は職務上年金部門について、労災と同じ方法で試算した積立不足1,400億円 余りを償却するということで、料率を途中で引き上げてやるというような試算をやって おりましたが、それとの連続性と申しますか関係で、48‰という当時の数字を活用いた しまして、被保険者数の保険料率を変えまして計算したものでございます。  それでは、各試算につきまして御説明申し上げます。おめくりいただきまして1ペー ジでございます。【ケース1】と肩に書いてございます。これは第2回の試算で用いた ものを、44‰ということに直したものでございます。その前提でございますが、被保険 者数が過去3年間の伸び率の平均で減っていく、それから4万人で下げ止まるという形 の試算でございます。そうしますと、収支差は当面単年度赤字が続いてまいりますが、 平成34年度ぐらいに底を打ちまして、それ以降は単年度収支、積立金も枯渇しないうち に反転するというような試算結果になるところでございます。  おめくりいただきまして【ケース2】、こちらも前回お出ししたものと基本的に同じ ですが、これは過去3年間の伸び率で被保険者数が減っていき、また、下げ止まらない ということで計算をしたものでございます。収支差の欄を見ていただきますとずっと赤 字が続いておりまして、この表の中では出てまいりませんが、下の※のところをごらん ください。平成41年度には積立金がなくなるというような計算になるところでございま す。  おめくりいただきまして【ケース3】でございます。これは前回この委員会でリクエ ストがございました、現状の被保険者数で一定になるというような前提に立った試算で ございます。保険料率などは同じように44‰ということで試算いたしますと、平成22年 度のところを最後に、計算上は平成24年度から黒字になりまして、したがいまして積立 金も700億円余りを残した上で反転していくというような計算結果になるところでござ います。  おめくりください。4ページ、【ケース4】でございます。これも前回御意見があっ たところで、【ケース1】【ケース2】の試算よりも速いペースで、すなわち平成22年 度ぐらいに4万人となるペース、年率に直しますと8%ということで当初減少いたしま して、その後、平成22年度に4万人で下げ止まるというような前提を立てて計算をしま すと、当面は単年度赤字が続きますが、平成32年度過ぎ、平成34年度を底に反転をして いくという計算になります。  おめくりください。5ページの【ケース5】でございます。被保険者数は先ほどと同 じように、平成22年度に4万人となるペースで当初減少し、さらに先ほどと違いますの は、その後も同じペースで減少し続ける、下げ止まらないということで計算をいたしま すと、最後、平成37年度の欄は積立金もマイナスになるということで、※にありますよ うに平成33年度からマイナスになるということで、財政的には破綻をしてしまうケース ということがわかると思います。  おめくりください。6ページ、【ケース6】でございます。ここからは事務局の方で 前提を置かせていただきました。先ほどまでの前提の中で最も被保険者数の減少のスピ ードが速い、厳しい、平成22年度に4万人となるペースで減っていった場合に、逆に年 度末積立金がマイナスにならないように被保険者数が下げ止まる、そういう被保険者数 を推計するということで考えていきますと、そこの数字で被保険者数の欄を見ていただ きますと、下の方、平成27年度のところにありますが、29,000人余りで下げ止まれば積 立金が負にならないということで、計算結果が出ております。  おめくりください。先ほどまでは失権率を労災制度と同様の失権率、すなわち受給権 がなくなっていく方がどれぐらい発生するかという率を、労災並びで出しておりました が、7ページの【参考ケースA】というのは、その失権率に厚生年金の財政再計算で使 用した失権率等を使うということで、この違いは厚生年金の場合は年齢別に集団を組ん でいくと。労災の場合は権利を取得された集団ごとに失権率を設定してありますが、年 齢別の様子を加えたものがこの失権率になります。こういう形で、先ほどと同じように 平成22年度に4万人となるペースで減っていって、積立金がマイナスにならない被保険 者数を推計いたしますと、被保険者数の欄を見ていただきますと40,300人という数字が 出てまいりますが、この人数までで下げ止まれば積立金はマイナスにならないという結 果です。  おめくりください。8ページでございます。これは肩のところに【11月29日に提出し た試算】とあります。これも基本的には第2回に出したそのままでございますが、前 回、2回目の試算は労災制度並びで考えた場合の積立不足を償却していくと。この場合 は20年償却するということで計算をすると、料率を48‰にする必要があるだろうという ことで、前回出させていただいた資料でございます。このほか3パターン、合計4パタ ーンを前回お出ししておりますが、その中で一番保険料率の上げ幅が少ないものとし て、この48‰のものを再度提出させていただいております。このケースでいきますと、 収支差は当面赤字でありますが、平成31年度を底に反転していくというようなことにな るわけでございます。  おめくりください。9ページの【ケース7】でございます。こちらは、先ほど来出て きています最も減りが速いことでやっていきまして、最後に積立金がマイナスにならな い被保険者数の推計ですが、先ほどと違いますのは、料率を今申し上げました48‰とい うことで設定させていただきました。そうしますと、その被保険者数の欄を見ていただ きますと、平成32年度に23,100人という数字が出ておりますが、ここまでこの水準で下 げ止まれば、積立金はじきに反転するというような試算結果になっております。  さらにおめくりいただきまして10ページ、【参考ケースB】は先ほどと同じように、 失権率が労災制度並びよりも若干厳しめに出る厚生年金の財政再計算の失権率等を使っ た試算でやりますと、同じように計算していきますと、平成27年度の被保険者数の欄に 34,200人とありますが、34,000人ぐらいで下げ止まれば、積立金はマイナスにならない という試算結果になっております。  以上でございます。 ○岩村座長  どうもありがとうございました。それでは、ただいまの「船員保険職務上年金部門の 機械的試算について」の御説明につきまして、皆様から御質問等がありましたらお伺い したいと思います。はい、谷口委員。 ○谷口委員  ちょっと確認させていただきたいのですが、このシミュレーションの計算結果では、 1から全てそうですが、諸支出金という項目で、どのシミュレーションも平成27年度か らこの数値が落ちておるのですが、これはどういうことなのか教えていただきたい。 ○事務局  お答えいたします。諸支出金は旧法、職務外の厚生年金について船員保険で給付して おりまして、それを厚生年金に職務外年金部門だけを統合した前の人たちの分の職務上 部門、それは今は厚生年金の方から年金が支給されるのですが、その職務上部門の費用 負担をするというのが諸支出金でございまして、昭和60年で一緒になる前の人たちの集 団がこのあたりで減っていく、お亡くなりになるような計算をしてやると、このように がくんと減るということでございます。 ○岩村座長  よろしゅうございましょうか。ほかにはいかがでございましょうか。三尾委員。 ○三尾委員  今のに関連してちょっと質問をさせていただきます。まずはシミュレーションを幾つ かやっていただきましてありがとうございます。このシミュレーションの中で、幾つか 前提条件をかましているということですが、特にわかりづらいのに失権率というのがご ざいます。これは先ほどの御説明で労災と厚生年金保険、これに基づくものを使ってや っていただいたということですが、本来は船員保険ですから船員保険に基づく数値とい うのがあるのだろうとは思うんですけれども、それを使わなかった理由をひとつ説明し ていただきたいのと、失権率というものが厚年にしても労災にしても、先ほどの平成27 年度以降どっと減ってくるということの何か具体的な根拠というのか、その辺ももし説 明があるようでしたらお願いしたいと思います。 ○岩村座長  事務局の方、よろしくお願いします。 ○事務局  船員保険の失権率を使わなかった理由でありますが、一つは失権される方の人数がサ ンプル数としてちょっと少ないものですから、かなりばらつきが出ることからそれを今 使っていないと。それからもう一つ、これは労災制度で計算した積立不足を償却すると いう考え方で前回計算をしておりまして、その関係で労災制度と相当の形でやったら、 実際に積立不足をどうやって償却すればいいかと。そういう労災制度との関係で計算を するということから、この場合は労災の失権率を使うということを基本にさせていただ いております。  もう一つは執権率の関係ですが、計算の仕方といたしましては、発生された年の集団 の方が1年目にはこれだけ減っていくという労災制度の割合がございまして、それを発 生年度ごとに集団を区切りまして、そして計算をしていった結果がこのようになってい るということでございます。 ○岩村座長  今のお答えでよろしゅうございましょうか。ほかはいかがでしょうか。それでは龍井 委員。 ○龍井委員  なかなか興味深い数字ではあるのですが、実際にこれがどの程度リアリティーを持つ かとなると、もうちょっと別の要因も考えなくてはいけないのかなと思っています。と いうのは、これまでも船保の被保険者のグラフを何回も見せていただいて、その時点で 果たして下げ止まりをするんだろうかというのが一つの論点としてあったと思うんです ね。そのときに、マクロの経済環境はちょっとさておいて、やはり私としては産業見通 しというのか、これは当然国内海運流通の見通しもそうでしょうし、あるいは漁業とい う産業の見通しもそうだと思いますし、それも実は見通しという受け身のものだけでは なくて、産業政策としてどういう手だてを打つかによって、実はこのシミュレーション が変わってくるという要因もあるのではないか。なかなかそれは数値上、政策変数でき れいに出るということはあり得ないわけですが、想定としてそういう要因というのは重 要な要素を持つわけで、そうなるとここでシミュレーションの中で出されています、こ れ以下積立金がマイナスにならないようにするために逆算するとこれだけの人数だねと いうのは、これは一つの考え方だと思います。だとすれば、その人数を確保するために は、どういう要件、あるいはどういう政策が必要なのかということに、議論としてはつ ながっていくのかなと思います。  いろいろ申し上げたのですが、私が一言お聞きしたいなと思っているのは、産業単位 で管轄しておられる国交省さんや、あるいは漁業では水産庁になるかもしれませんが、 そちらのサイドから今私が申し上げたような視点で、何かこれに対するコメントがあっ たらちょっとお聞きしたいと思います。 ○岩村座長  なかなか難しい御質問かとは思いますが、まず国交省さんの方で何かコメントがあり ましたら、お願いしたいと思います。 ○後藤船員労働環境課長  確認でございますけれども、船員の数といった形の予測に対してのコメントで。 ○龍井委員  端的な質問としていろいろ申し上げれば、それで結構です。 ○後藤船員労働環境課長  そろそろ下げ止まったのではないかというような話もございまして、そこのところは 私どもの方で、申しわけございませんが、具体的な船員数のビジョンというのをまだは っきり持つに至っておりません。ただ、内航海運はやはり現状で日本人船員だけでござ いますので、永遠に船員が減り続けていくといったようなシナリオは、現時点では描き づらいのかなという気はいたしますが、これもあくまでアンオフィシャルな感覚でのコ メントというふうに理解をいただければと思っております。  申しわけございません、今日のところは以上でございます。 ○岩村座長  水産庁さんの方、もしございましたらお願いいたします。 ○島内漁政部企画課漁業労働班労政係長  水産庁の方でも産業としての衰退は困りますので、担い手の確保等、いろいろな施策 も講じておりますが、漁業担い手ということでやっておりますので、必ずしも漁船員と つながるわけではないですが、要するに産業として衰退しては困るという観点は持って いると判断していただければと思います。 ○龍井委員  おっしゃるとおりだと思うんですね。ただそのときに、私があえて言ったのは、衰退 してはいけないのであれば、産業政策、あるいは地域政策も関連するのかもしれません が、一応所管省庁としては、産業政策としてこういう手だてを加えていけばこの数値も 変わってくるという、やはり議論としてそういう方向に結びつけていかないとならない のではないか。ちょっとこの数字だけから見通しということでは、とても見定めがたい ことがあるので、両方の所管省庁にはできたらそういうことの検討もお願いできればと 思っております。 ○後藤船員労働環境課長  もちろん委員が言われることは非常に重要な点でございまして、このまま船員がなく なってしまうと、海運国日本の基幹的な輸送手段の重要な要素がなくなってしまうとい うことでございますので、私どもは船員教育機関というのを所管しておりますが、そこ で若年船員をいかに効果的に育てるのかとか、あるいは一方でやはり船員の労働条件が きついので、若い方が来ないといったような部分もございますので、きちっと船の職員 の定員を守っていただけるように、強力に今大キャンペーンを図っております。もちろ んそういったことはここで申し上げるほどのことではないかもしれませんが、いろいろ 策を講じておりますし、今後ともそういう視点でやっていきたいと思っております。よ ろしくお願いいたします。 ○岩村座長  はい、小坂委員、どうぞ。 ○小坂委員  大日本水産会の小坂でございます。実は私どもも省庁の皆さんに産業政策をすぐにと いう形の中で、この場での議論というのは非常に難しいと考えておりました。というこ とも含めまして、おととい、26日に非公式に海員組合の皆さんと私どもの船主団体4団 体が、こういうような形の被保険者数をどういうふうに見ていくのかというざっくばら んな話をいたしました。当然のことながら立場も違いますし、それから私ども船主団体 もそれぞれ状況も違いますのでなかなか難しいんですけれども、今このシミュレーショ ンが幾つか出ておりましても、条件がちょっと違うと数字が大きく動いていくというこ ともありますので、そういうことを考えまして、シミュレーションをやっていく上での 一定の数字を、労使で事務当局に出せないものかという話をいたしました。  その結果、結論だけを申し上げますが、当然ながら意見はいろいろございまして、あ くまでもシミュレーション上の数字ということで、10年後、平成27年度に30,000〜 35,000人。当然ながら各団体、それから組合さんからもいろいろな意見がございまし た。それで、その後は基本的には下げ止まる。これからはこの数字をベースに、試算を していただくにしろ議論をするにしろ考えていってはどうかということで、もろ手を挙 げてという形ではないですけれども、組合さんと我々船主4団体が、まあまあやむを得 ないかなという数字を考えてみました。ちょっと中身の部分については御勘弁をいただ きたいのですが、10年後の平成27年度に30,000〜35,000人。はっきり申し上げますと、 30,000人という数字と35,000人という数字をベースにして、これからいろいろな資料を 考えていただくときには、そこで下げ止まるという形で2つの数字だけで議論をしてい こうと。そうじゃないと、今までも御説明いただいたように、例えば6万人にするか、 5万人にするか、4万人にするか、それから例えば保険料を44‰にするのか、46‰にす るのか、48‰にするのかと無限大の組み合わせが出てきて、とてもじゃないけど事務当 局にも莫大な負担をかけるし、議論もなかなか進まない。そんなことで、そのような数 字をこれからはできれば使っていきたいな、そういうふうに考えております。 ○岩村座長  ただいまの小坂委員の御発言につきまして、組合の側で御発言がありましたら。 ○三尾委員  今、小坂委員からありましたように、具体的に関係者というか、特に船主団体と被保 険者である組合と非公式な形でいろいろと話をしまして、シミュレーションをやるにし ても、被保険者数ぐらいについては一定の数にしておかないと、いろいろなケースばか り考えられて、どれが一体信憑性があるのかというのが非常にわかりづらくなるという ようなことで、話をしてまいりました。その結果、今御発言があったようなことで、今 後考えていってみてはどうかということでございます。意見としてはそれぞれあるんで すけれども、今後船員保険制度をどうしていくかということの被保険者数に対する共通 の数字としては、そんなところをもって今後やっていってみてはどうかということでご ざいます。  あわせて、先ほどのテーマもありますので、前提条件はいろいろあるとは思うのです が、船主サイドも私どもの方も、船員の確保・育成は必要なんだということについての 共通認識はしていると思います。昨日は、実は船主協会さんと私ども海員組合と、国土 交通省に対して船員の確保・育成という政策を含む事項について、要請をいたしたとい うこともございます。そういう共通理解はお互いに持っているということです。ただし 今後いろいろな手を打っていく政策テーマというのは、先ほどおっしゃった30,000人あ るいは35,000人という数字は一切そういう政策は抜きにして、この保険制度を実行して いくシミュレーションのための数字だということでございますので、そこは誤解をされ ないようにお願いしたいと思います。 ○岩村座長  どうもありがとうございました。前回、座長としてもぜひ労使で話し合っていただき たいということをお願いしたところでもありますので、労使の方々で話し合っていただ いて、シミュレーションを考えていく上での一定の数字を10年後、平成27年度で30,000 〜35,000人という被保険者ベースで考えようというふうにお話をしていただいたこと は、大変ありがたいと思います。ただ、そうはいってもそのほかに、人数以外にもいろ いろな要件があるところでもありますので、直ちにそれが具体的にどういう方向に行く かというのは、ちょっと見通しがすぐにつきませんが、その辺の今のお話というのは、 今日初めて社会保険庁さんなどもお聞きになったということでございましょうか。  そうしますと、今後の進め方ということになろうかと思いますが、今日幾つかのシミ ュレーションを出していただいておりますけれども、その中でザッと見ますと、人数と しては被保険者数だけを見ますと、多分先ほどの資料1の10ページの34,200人が一番近 い。あと2ページが35,000人ちょっとですね。その辺が恐らく先ほどお話しいただいた 数字の上限である35,000人というところに、大体近い数字なのだろうと思います。そう しますと、もし被保険者数を平成27年度に30,000〜35,000人というところで想定する、 それで下げ止まるということを前提とすると、この辺の数字をベースにしながら、少し 具体的に議論をすることになるのかなとは思いますが。  はい、どうぞ、松井委員。 ○松井委員  こういうものを見るときに、楽観的に見るか厳しめに見るか、やはり2種類あると思 います。それで、先ほどのお話では30,000〜35,000人ということでしたので、35,000人 に近い方ではなくて、本当は低い方で見てどうなのかを、本来見るべきではないかと私 は思います。そういうことからしますと、ほかの前提がいいのかどうかわからないです が、10年後に30,000人に近くて厳しめに見るというのであれば、6ページの【ケース6 】のところが、一番フィットするのではないかと私は思います。 ○岩村座長  ありがとうございます。ちょっとバッと見たときに、29,200人という数字が余り目に つかなかったものですから。どうぞ、小坂委員。 ○小坂委員  ちょっと私の説明の仕方が悪かったのかもしれませんが、30,000〜35,000人の範囲と いうことではなくて、30,000人という数字と35,000人という数字をシミュレーション上 考えていこうと。ですから、33,000人はどうかとか、そういう議論はもうしません。 30,000人という数字と35,000人という数字で、資料を出していただくときにしろ何をす るにしても、そうやっていこうと。ですから、今、松井委員のお話にあったような厳し めにということであるならば、30,000人を使っていけばいいんだろうし、そうじゃなく てもう少しということであれば35,000人を。だけど、それ以外の数字は基本的にはシミ ュレーション上は使わないでやっていこうというのが、我々の合意というか、大体のと ころです。 ○岩村座長  組合側もそれでよろしゅうございましょうか。 ○三尾委員  結構です。 ○岩村座長  そうですか。そうしますと、今の松井委員の御指摘にもありましたように、30,000人 という数字ではありませんが、比較的近いものとしては今日出ているので29,200人とい うのもあります。いずれにせよ今のお話ですと、一応労使でお話をいただいた上での合 意ということで、今後シミュレーションを考えていく上では、数字としては被保険者が 平成27年度で30,000人、あるいは35,000人という数字になって、そこで下げ止まるとい う前提で具体的に幾つかシミュレーションを考えて、制度設計を議論しようということ だと理解いたしますが、それで労使の御理解はよろしいですか。  そうしますと、ある意味非常に建設的な第一歩だと思いますが、逆に次回の宿題とし ては、その数字をベースに幾つかの仮定を置いていただいて、今日例えば置いていただ いているものは保険料率がどうなるか、それから失権率をどう設定するかということ で、幾つかのパターンが出てくるのだと思いますので、それを前提に、恐縮ですが再度 シミュレーションの資料をつくっていただく。その上でもう少し議論を詰めていくとい う、そういう作業になろうと思いますが、社会保険庁さんの方で何か御意見があれば。 ○武田医療保険課長  本日はさまざまなパターンを提供させていただきましたが、お話がありましたように 30,000人と35,000人の2つのケースにつきまして、幾つかのパターンを改めて計算し直 す、恐らく10年後に30,000人と10年後に35,000人ということで、それぞれ平均的な伸び 率を計算いたしまして、それぞれ計算し直すということで、次回に向けて作業をさせて いただきたいと思います。  ただ一つ、ちょっと余計なことかもしれませんが、その30,000人ケース、35,000人ケ ースで財政の検証をいたしますが、その財政検証は財政検証といたしまして、次に私ど もで資料を用意しておりますが、制度の在り方論は制度の在り方論として、それはそれ としてまた議論の必要があるということは、ちょっとつけ加えさせていただきたいと思 います。 ○岩村座長  それはもちろんシミュレーションをもとにということもありますが、他方で制度の在 り方としてどう考えるかということも、また別途考えなければいけないということでご ざいますので、まず数字を出していただいたことをまた具体的にイメージしながら、制 度設計の問題というのをこの場でさらに詰めて議論していくことになるのだと思いま す。江口委員、どうぞ。 ○江口委員  労使といいますか、我々と組合さんとで一応合意できた数字で、新しいシミュレーシ ョンを出していただくということですが、その際一つお願いしたいのは、我々としまし てももうこの秋口である程度の方向性といいますか、結論を考えていかなくてはならな い中で、年金部門だけではなくて、保険全体が見えるような資料をお願いできないかな と。つまりは、保険料率全体で幾らになるのかというようなところまで見渡した資料 を、別におつくりいただきたい。その際には、保養所、健康管理センター、病院、診療 所等の時価評価も全部含めた上での料率がわかるようなものを、つくっていただきたい とお願いしておきたいのですが。 ○岩村座長  今の御趣旨は、今日出ているのは、船員保険制度の中での職務上年金部門だけについ てのシミュレーションということですが、それだけではなくて医療部門等も含めた全体 のシミュレーションを、先ほどの被保険者数が10年後で30,000人と35,000人のケースと いうことについて御用意いただきたい、そういう御趣旨でございますか。医療保険課 長、どうぞ。 ○武田医療保険課長  昨年お出しをしましたように、年金の方は長期推計ということで出させていただきま したが、ほかの給付につきまして長い推計がなかなか難しい。例えば医療費でいいます と、医療費の長期推計がどうなるかということでございました。例えば失業給付でいい ますと、失業率の推移がどうなるのかということを見通さなければいけませんので、な かなか難しい作業になりますが、改めてどこまでできるか検討はさせていただきたいと 思います。 ○岩村座長  ちょっと長期的には難しいということは、確かにそのとおりだと思いますので、そこ はできる範囲でということで御理解をいただければと思います。  あと、せっかく30,000人と35,000人という数字をお出しいただいたところに、こうい うことを申し上げるのはちょっと申しわけない気もするのですが、先ほどの松井委員の 御指摘には私もかなり賛成するところがありまして、余り甘い見通しで考えますと、後 でかえってもっとひどいことになるということがございますので、そういう意味ではや はり厳しめの数字で将来の見通しを考えた上で、それを前提にある程度制度設計を考え るということが必要かと思います。その辺もまた労使の方々で、もし可能であればある 程度お話しいただければというようにも思います。  今日30,000人、35,000人という、平成27年度の被保険者予測をそういうふうに立てて シミュレーションするというお話が出て、議論してきたわけですが、この将来推計の問 題につきまして、ほかに何か御発言がございますでしょうか。はい、松井委員、どう ぞ。 ○松井委員  次回以降に詳しいシミュレーションをやっていただくのは、それはそれでいいのです が、30,000人とか35,000人くらいということで、今後細かいものがあるということを前 提に、では今例えば【ケース6】みたいなものについてどう考えるのか、あるいは10ペ ージのケースをどう考えるのかというような議論は、今日しなくてよろしいのでしょう か。 ○岩村座長  どうでしょうか。【ケース6】のところはあれですけれども。 ○松井委員   どれでもいいんですけれども、そうしないと事務局がどういう形でやるのかという作 業ができないんじゃないかなという気が、私はちょっとするのですが。 ○岩村座長  それではもし松井委員、あるいはほかの委員の方で、【ケース6】とか、あるいはこ の場合ですと10ページの【参考ケースB】などが、恐らく上と下のところに比較的近い のだと思いますが、今日の時点で何かこの点について御意見等があれば伺えればと思い ます。  ちょっと確認ですが、すいません、事務局にお伺いしたいのですが、例えば6ページ の【ケース6】ですが、保険料率44‰で固定ということになっていて、10ページの【参 考ケースB】ですと、保険料率だけを見ますと48‰で固定ということになっていて、た だ48‰というのは8ページを見ると、過去期間債務:20年償却というのが前提になって いるという理解ですから、44‰になるか48‰になるかというのは、この債務償却の差が 出るという、そういう理解でよろしいんですね。はい、事務局の方、お願いします。 ○事務局  8ページは20年で償却するという考え方で、48‰という数字をお出ししたものです。 次の【ケース7】は償却するということではなくて、償却にはかなり先の方まで、50年 ぐらいかかるような計算になりまして、考え方としては48‰という、前回お出しした推 計の中では、例えばほかの部門から料率の部分を捻出して、48‰をこの年金部門にする とか、そういったことも想定をしながら、実現可能性が全くないわけではない数字、一 番近い数字として48‰というものを使ってみると、【ケース7】のような考え方でやれ ば、23,100人で下げ止まればもちますというような考え方で推計を出させていただきま した。 ○岩村座長  そうすると、もろもろのほかの要因もあるのですが、20年償却というと、大体一般制 度の労災の償却と合わせている感じになるんですかね。たしか今のペースで、労災の一 般制度の過去債務の分は、30年ぐらいの償却でやっているんでしたか。 ○樋野労災管理課室長補佐  35年ですね。 ○岩村座長  35年で償却でしたか。それよりは速いペースで償却するという、そういう前提になっ ています。どうぞ、松井委員。 ○松井委員  質問ですが、20年償却をするというケースと、現在一般制度の労災は35年償却でやっ ているそうですが、素人的な考え方をすると、要するに被保険者が減っているときに は、早めに償却しないとうまくできないということで20年というようになっている。余 り変わらないだろうという前提だと長くてもいいと。こういう年金数理的には、本来ど ういう考え方をしたらいいものなのでしょうか。ちょっと教えていただきたいんですけ れども。というのは、今後シミュレーションしていくに当たっても、では、何年くらい で償却するということを、やはり組み込んでいかなくてはいけないのではないかと思い まして、その点の質問をさせていただきました。 ○岩村座長  ちょっと私の記憶もはっきりしていないのですが、労災は一回償却期間を延ばさなか ったでしたか。 ○樋野労災管理課室長補佐  延ばしましたですね。 ○岩村座長  延ばしたですね。当初はもうちょっと早い償却のはずだったのを、たしか料率等の関 係で償却期間を延ばしたという経緯があります。ですから、35年というのが直ちに適正 な償却期間であるかどうかは、すぐにはちょっと申し上げられないかなというようにも 思います。  それから、20年かどうかということについて、社会保険庁の方で何か御説明があれば と思いますが、いかがでしょうか。 ○事務局  的確なお答えかどうかはわかりませんが、前回は15年償却と20年償却で、人数が下げ 止まるか下げ止まらないかという形で出させていただいておりまして、一番高い15年で 償却する場合で、被保険者数がどんどん減っていくという場合ですと、62‰という前提 になったものですから、そうしますとなかなか実現可能性という意味では難しいだろ う、これまでの議論の中で保険料率を引き上げることは難しいのではないかという御意 見もあったことから、一応一番低いことで20年、少し長目にとって20年というようなこ とでやらせていただきました。ちょっと不十分かもしれませんが。 ○岩村座長  よろしゅうございましょうか。そのほか。どうぞ、山口委員。 ○山口委員  先ほどの失権率の話ですが、前提条件としていろいろな数字を使ったこのシミュレー ションで、いろいろなケースがあるのですが、例えば6ページの【ケース6】と7ペー ジの【参考ケースA】、この2つの違いというのは要するに失権率の違いと。人数も、 例えば【ケース6】の方は40,000人からさらに人数が減少していく、【参考ケースA】 の方は一応40,300人で下げ止まるという前提でやっていますが、いずれにしても失権率 というのをもう少しわかりやすく説明していただけたらなと。例えば労災保険準拠スタ イルというのが1であるとすると、厚年保険準拠スタイルというのは0.幾つであると か、1.5であるとか、そういう何となくわかるような比較の数字的なものを御説明い ただけませんか。 ○岩村座長  お願いできますでしょうか。 ○事務局  諸支出金というところが、基本的には失権率で転がして計算しているだけなんです ね。ですので、ここで【参考ケースA】とその前の【ケース6】を比較すると、平成37 年で【ケース6】が42億円になっていて、【参考ケースA】が55億円になっていますの で、平成37年度の時点では大体このくらいの差になってしまいますよというような感じ かなと。一応この資料で説明するとそんな感じです。 ○岩村座長  ですから言いかえると、厚生年金の失権率などで試算をした方が、この諸支出金の部 分については額がより多目に出てくると。 ○事務局  多目になっていますので、労災の方がちょっと失権しやすい感じになっていると。そ の割合が大体42億円と55億円ぐらい、平成37年度の時点でこのくらいの差であらわれて いるという感じです。 ○岩村座長  どうぞ、山口委員。 ○山口委員  2つ並べて、確かに失権率を用いて過去に発生した人に対して、いわゆる補給という か、支出をしていくというところでは理解はできるのですが、例えばの話ですが、【ケ ース6】と【参考ケースA】を比較すると、単年度収支、ここは人数との関係もあるの かもしれませんが、年度末の積立金の額の減り方が大幅に違う。これは全体でパターン がいっぱいあったもので、それと似たようなカテゴリーを集めて、それぞれ比較は一応 してみたのですが、どうも前提条件がちょっと変わっただけで相当エンドの数字も違っ てくるなと。もちろん人数のこともあるんですけれども、失権率というのもかなり大き なウエートを占めていると見ているんですよ。では、先ほどの質問にありましたよう に、船員保険の場合はサンプル数が少ないからデータ的にはなかなか出せないと。それ で、無難なところと言ったかどうかちょっとわかりませんが、労災保険の失権率を適用 する方がこういったシミュレーションには適していると、そういう理解でいいのでしょ うか。 ○岩村座長  事務局の方でお答えをお願いできればと思います。どうぞ。 ○事務局  労災を使ったのは、やはり一般制度と統合するかどうかという議論の中で、労災制度 並に計算したら積立不足が1,400億円ありますというところが出発点になったので、労 災の失権率を使って、それをどう償却していくかという議論をさせていただいたので、 労災の失権率を使っているというように御理解いただければと思います。 ○岩村座長  よろしゅうございますか。ほかはいかがでございましょうか。はい、どうぞ、谷口委 員。 ○谷口委員  少し議論を絞った方がいいのではないかなと思いますが。このシミュレーション結果 を見ましても、ページ3の60,000人というような数字がありますが、この辺はもう5年 で既に単年度収支尻が赤字になっているんですね。ということは、そのままいけばこれ は数年間で積立金はなくなってしまうというような結果になるわけですね。単年度収支 赤ということは大体見えるわけです。単年度収支を減らす、マイナスを小さくするとい うことは、保険料率を上げるか、それともその給付率を抑えるか、これしかないわけで あって、それは今想定できないような話なので、現状の条件のままいけば近い将来どう いうふうになっていくかというのは、このシミュレーションでもおおよその想像がつく わけで、そういう認識の中で一体どうすればいいかというように、少し議論を絞ってい かないといかんのかなと、ちょっと私は個人的には思っておるのですが、いかがでござ いますか。 ○岩村座長  ありがとうございます。ただ、先ほど労使の方でお話しいただいた数字で30,000人と 35,000人というので、仮に、今日はそれを前提としていないので、近いところで見ると ということで、今日資料1で見ると6ページと10ページが近いですねという話になっ て、ただ、どちらも前提が違うので単純には比較できないですが、いずれにしても6ペ ージと10ページでやや同じなのは、積立金がマイナスにならないという前提で議論をし て、シミュレーションを組み立てているところもありますので、その前提で見たときに どういう数字になるかというところだと思います。  そこが他方で、もちろんそういう前提を置かなければどうなるかという話もあります ので、その辺はいずれにしても今日のところはお出しいただいた資料では見えておりま せんから、次回以降、申しわけないですが、事務局で再度御検討いただいてシミュレー ションをお出しいただくと。そうしますと、今、谷口委員がおっしゃったような点につ いても、それぞれのケースについてより明確になるのだろうと思っているところであり ます。  次回などで出していただくシミュレーションの資料について、事務局に今の段階で何 か御希望等がありましたらと思いますが、お気づきの点はございますでしょうか。ある いはまたこの後お考えいただいて、もし御要望等があれば、別途事務局の方へお伝えい ただければというようにも存じますので、よろしくお願いをしたいと思います。特にほ かに何か議論がなければ、この資料の機械的試算、シミュレーションについての点はこ のくらいにさせていただいて、先に進みたいと思いますがよろしゅうございましょう か。  それでは、やはり前回の検討会におきまして、船員保険制度の枠組みのシミュレーシ ョンについても御意見がありました。それにつきまして、事務局の方で関連する資料を 作成していただいております。これが資料2からになりますが、「船員に対する保険制 度の仕組みについて(イメージ)」ということになりますので、これにつきまして事務 局から説明をお願いしたいと思います。 ○事務局  それでは、まず資料2をお願いいたします。資料2は、実際船員保険制度を見直すと したら、どんな形になるのかイメージがわきにくいという御指摘を踏まえまして、その 形を事務局で整理してみたものでございます。  まず1ページ目のポンチ絵をごらんいただきますと、ここでは3つのケースに整理さ せていただいております。まず一番左のケースAでございますが、現行船員保険制度は 職務外、職務上、失業、3部門を持つ総合保険制度でございまして、この形を基本的に は維持していくというようなことの絵でございます。ただ、この場合には、その下の枠 に文字で書いてございますが、職務上及び失業部門は国が実施主体であるということで ございますので、この全体の制度の保険者も国ということになろうかと思います。  次のケースBでございますが、これは職務外疾病部門のみを一般制度に統合するとい う整理でございます。そして右側の職務上部門、失業部門につきましては、船員保険の 体系を残すという形でございます。左側の健康保険の部分の上半分には政管健保、健保 組合、下半分に船員保険組合と書いてございますが、これは後ほど詳細に御説明申し上 げますが、上の政管健保あるいは健康保険組合というのは、健康保険制度に全くそのま ま溶け込む形で統合するようなイメージ。それから、下の船員保険組合、仮称でござい ますが、こちらの方は船員独自の給付などを維持する形として、その集団が特別の体系 を持つというようなことの例として提案させていただいております。  一番右のケースCでございますが、こちらの方は職務外疾病部門に加えまして、職務 上疾病・年金部門は労災保険制度の一般制度に、失業部門は雇用保険制度の一般制度 に、全ての部門を統合するというパターン分けでございます。  おめくりいただきまして2ページ以降、それぞれのケースにつきまして論点となる点 を、その2ページの表でいきますと左側の欄にありますが、基本的な考え方、独自・上 乗せ給付の取り扱い、社会保険庁改革との関係、財政の安定性、留意事項という点につ きまして整理をさせていただきました。  まず2ページの「ケースA(現行制度を基本とするケース)」につきましては、基本 的な考え方は先ほど申し上げましたように、総合保険の形で現行の形を存続していくも のでございます。  独自・上乗せ給付の関係の欄は、ILO条約等との関係から上乗せ給付なども現行の 形を基本ということ。  社会保険庁改革との関係の欄でありますが、一番上の○は、社会保険庁の組織の見直 しが行われるということでありますので、船員保険の実施組織をどうするのかという大 きな論点がございます。その場合にありましては、先ほど申し上げましたように、職務 上部門、失業部門は国が実施しなければならない業務でございますので、国が保険者で あろうということ。この船員保険制度の実施組織が、ケースAの最大の問題点であろう かと思っております。次の○で、実施組織が変わるとすれば、事務の引き継ぎとか、あ るいは利用者の利便を低下させないということが必要であろうと。次の○でございます が、適用・徴収業務については、現在も船員保険と厚生年金と一体的に行っているもの ですから、そういうことが効率的であろうということから、また政管健保の公法人化に おきましても、厚生年金と一体的に適用・徴収を行うというような考え方に現在立って おりまして、そういう意味で年金の実施組織において実施してはどうかということでご ざいます。  財政の欄でございますが、この場合、保険集団は基本的に現在のままということでご ざいますので、被保険者数の減少に歯止めがかからなければ、将来的に安定した事業運 営に課題があるということでございます。  おめくりください。3ページでございます。続きまして、先ほどの真ん中の絵の「ケ ースB(職務外疾病部門を一般制度に統合するケース)」ということでございまして、 この場合の基本的な考え方は、職務外疾病部門については、保険者機能の発揮、あるい は自主・自律の保険者とする観点から、船員保険法の体系から切り離して健康保険に統 合と。その際、職務上及び失業部門につきましては、独自の給付体系を維持する観点か ら、現行の制度体系を基本としていくという考え方でございます。  次の独自・上乗せ給付の欄でございますが、一般制度に統合する職務外疾病部門につ きましては、統合ということは一般制度と各種給付につきましても並んでいくというこ とが、やはり基本になるのではないかと考えております。ただ、職務外疾病部門の独自 ・上乗せ給付は、この場合は下船後3月の療養給付も含めて想定しておりますが、こう いったものを実施するのであれば、一般の被保険者と同じ形ということではなくて、別 の体系により事業を実施する形も考えられるのではないかというように書かせていただ いております。一つ飛びまして、社会保険庁改革の一番上の○ですが、その具体的なイ メージといたしましては、現行の船員保険と同様の加入義務を課した公法人(「船員保 険組合」(仮称))を保険者とする形も考えられるのではないか。若干解説しますと、 やはり特別の給付をするのであれば特別の保険料の設定、あるいはその中で特にILO との関係で義務的に給付をするということであれば、強制加入の制度が要るのではない かという発想から、このような船員保険組合という形もあるのではないかという提案を させていただいているところでございます。  前後しますが、一つ上に戻っていただいて、職務上と失業部門の独自・上乗せ給付に つきましては、これは現行の形を基本と。  それから、一つ飛ばしていただきまして、「職務上及び失業部門については」という 真ん中の○でございますが、これはやはり国が保険者ということでございますので、先 ほどのケースAと同じように、実施組織をどうするのかという課題があるということ。 それから、組織が変われば、また先ほどのように事務の引き継ぎなどの課題もあるとい うことでございます。  財政の欄でございますが、今の保険集団を維持する職務上と失業部門については、先 ほどと同じように将来の課題があると。  留意事項の欄でございますが、職務外疾病部門において、政管健保の被保険者となる 船員については、都道府県単位での保険料率が適用されるということで、政管全体が都 道府県単位になるという方向で議論をしておりますので、そういうことが想定されると いうことでございます。  おめくりいただきまして4ページ、「ケースC(全ての部門を一般制度に統合するケ ース)」ということでございます。職務外疾病については先ほどと同じでありますの で、職務上あるいは失業部門について説明させていただきます。  独自・上乗せ給付の欄の3つ目の○でございます。職務上及び失業部門の独自・上乗 せ給付についても、ILO条約等の内容と一般制度の給付水準を踏まえて、その取り扱 いを議論・整理する必要があるのではないか。また、独自・上乗せ給付を実施する場合 には、一般制度法に特例を定める必要があるのではないかということで、違いの部分を きちっと議論して、本当に必要がある部分については、法律上特例を定めることが必要 ではないかということでございます。  社会保険庁改革の欄はBと同じですので省略をさせていただいて、財政の安定性の欄 でございますが、こちらの方は全て一般制度に統合ということでございますので、現在 よりも長期的には安定した財政運営が期待できるのではないか。  留意事項の欄の一番上でございますが、船員に対する災害補償は船員法が根拠でござ います。また、労災の保険制度は、労働基準法に基づく災害補償ということを受けてや っている仕組みでございまして、それぞれ根拠となる災害補償の概念があり、また、保 険給付の内容にも相違があるということを整理する必要があるのではないかということ でございます。次の○は、職務上年金部門を統合する場合は、積立金と積立不足をどう 償却していくかということの取り扱いについて、整理が必要になるのではないかという ことでございます。  資料2は以上でございます。  続きまして資料3でございますが、「船員保険の福祉事業の今後の在り方に関する論 点について」ということで、前回の検討会では、福祉事業を大幅に見直すとしたらどう なるのかということが示せないか、という御意見でございました。今回はとりあえず論 点の提示ということをさせていただきまして、また次回に向けて提案がありましたら御 指摘をいただければと思いますが、そこに書いてございますような論点があります。  一番上が、廃止・縮小を検討すべき事業はないか。2つ目が、福祉事業の枠組みを離 れて実施することが適当な事業はないのか。これは関係者の方で自主的に拠出、あるい は実施をしていただくこととしたことが適当というものがないかどうかというようなこ とでございます。次に、一般制度に統合する場合、一般制度における事業との整理が必 要ということで、一般制度に全くないものを統合した場合にやれるのかどうかという論 点でございます。次の2つは福祉施設の関係でございますが、年金の福祉施設なりは国 ではもう持たないということでやっておりますので、船員保険制度はどうするかという こと。それから、整理するときはどういう整理方針でやるのかという課題があるという ことでございます。一番下ですが、福祉事業に係る費用負担の在り方をどのように考え るのか。若干補足しますと、現在船員保険制度の福祉事業は、船舶所有者側の負担とい うことでやっておりますが、健康保険制度におきましては労使折半の保険料の中でやっ ているということでございますので、職務外疾病部門を統合することになれば、この部 分の費用負担の違いも整理をする必要があるだろうということでございます。  おめくりいただきまして、次のページは、前回平成17年度の予算額を福祉事業につい て資料でつけさせていただきましたが、それを料率換算したという点と、それから仮に 一般制度に統合することになりますと、この福祉事業につきましてもそれぞれの性格に よって、右側の職務外疾病部門か職務上疾病・年金部門か失業部門か、それぞれ分けて いく必要があるのではないかということで、それぞれとの関係性、福祉事業がどの部門 に属するかということを整理してみた絵でございます。この中で2番目の「保養施設等 の運営」という部分が、3つの各部門にわたっています。これは部門ごとの整理という のがなかなか難しくて、とりあえず全部門に矢印を引いてみました。あと、一番下の9 番の「広報活動」につきましても、それぞれの部門があるだろうということで、この2 つにつきましては3つの部門にわたっています。あとはそれぞれ線を引いた先に対応す るのではないかということで、これも議論の素材にしていただければと思っておりま す。  続きまして資料4をお願いいたします。「船員保険の事務処理の流れ(現行)」とい うことで、将来どういう事務フローになるのであろうかという御意見を、前回いただい たところでございますが、将来像は本日資料2の方で皆様に御議論いただければと思っ ておりまして、とりあえず本日の段階では、現行の事務処理を整理した絵をつけさせて いただきました。  若干説明させていただきますと、船員保険の事務処理は真ん中にございます地方社会 保険事務局、社会保険事務所と、船員保険を取り扱う全国58カ所の事務所で、基本的に は事務を処理しているということでございます。船舶所有者との関係でいきますと、資 格取得届なりをその事務所、事務局にしていただく。あるいは被保険者証を受け取って いただく。この場合、資格取得などの届け出は、厚生年金と一体の様式でやっていると ころでございます。それから、この船員保険の事務を取り扱う事務局、事務所におきま しては、真ん中に3つ枠で囲ってございますが、一番上の太い枠が適用事務、報酬月額 の決定、保険料収納事務、こういったことをやっていて、これはシステム上で管理をし ておるところでございます。それから真ん中の四角で、現金給付(職務上・外)の決定 ・支給につきましては、これを台帳で管理しながらやっています。それから、次の角が 取れた丸のところはレセプト点検で、こちらの方も政管健保のレセプトと一体的に事務 局、事務所でやっているところでございます。それから、先ほどシステム上で被保険者 資格などを管理していると申し上げましたが、このシステムはオンラインで、右側の社 会保険庁の欄にございます業務センターとつながっておりまして、この三鷹の業務セン ターで被保険者資格の管理、あるいは船舶所有者情報の管理を行っているということで ございます。それから、下の方に高井戸の業務センターがございますが、こちらの方で 職務上年金給付の決定・支給、年金額に加算をします第2種特別支給金の決定・支給と いう事務を行っております。また、社会保険庁の医療保険課で、第1種特別支給金の決 定・支給などは行っているところでございます。  もう一点説明させていただきますと、この事務フローの中で左の真ん中の方にござい ますが、地方運輸局さんの方でも事務をやっていただいておりまして、そこの枠の中に ございます失業認定、失業部門の支給決定ということにつきましては、運輸局の方でや っていただいております。それから、職を陸上に求められる場合には、そのちょっと上 にございますが、公共職業安定所で失業の認定をやっていただいているというのが、現 在の事務処理の流れでございます。  資料5は、後ほど国土交通省さんの方から御説明がございます。  資料6で、これは御報告でございますが、「基本方針2005」が6月21日に閣議決定さ れました。その中で特別会計の改革ということで、「基本方針2004」に基づいた改革方 針を着実に実施する、あるいは財務省は関係府省とともに、少し飛ばして、事務事業の 存廃などに踏み込んだ見直しを継続して、経済財政諮問会議に報告する、というような ことが決定されております。  あわせて社会保険庁改革につきましては、下の方、(1)のところで、政管健保につい て全国単位の公法人を設立する。あるいは(3)でございまして、新組織の名称、位置付 け等、具体的な姿を平成17年度中――ごめんなさい、これは誤植でございまして、「度 」というのを取っていただきたいと思います。平成17年中に決定し、関連法案を次期通 常国会に提出、というようなことが閣議で決定されたという状況でございます。  以上でございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは引き続きまして、やはり前回の検討会で船員保険 法と船員法の関係について、御意見がございましたところです。これにつきましては、 国土交通省さんの方で資料5という形で御用意をいただいておりますので、引き続き御 説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○後藤船員労働環境課長  資料5、2枚紙でございます。1枚目の方は、船員の行政と船員保険の制度が、全般 的に密接に結びついているということを御説明しておるわけでございますが、この中で 特に災害補償の部分について、2枚目の紙を見ていただけますでしょうか。  災害補償につきましては、陸上の労災に加えまして、独自・上乗せ給付というのがご ざいます。例えば、雇入契約の期間中であれば、職務外であっても疾病について補償が なされるといったようなことが一つの例でございます。これは海上労働の特殊性といっ たようなことで、ここに3つほど例がございますが、仕事と生活の場が一体である、長 い間家から離れなければならない、海上でずっと作業をしなければいけない、といった ようなことがあることに起因しておるわけでございます。そういったことでございます ので、ILOの国際条約に対応した形となっておるということでございます。そういう 意味では、グローバルスタンダードに対応した制度であるということでございまして、 実態面を見ましても、今も災害発生率が陸上の平均の5倍に達しているということで、 引き続きこの上乗せ給付は必要であると考えておりますし、前回の検討会で野川先生か ら御紹介がございました、来年2月採択予定のILO海事統合条約でも、そういった方 向で進んでいくということでございます。  以上でございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは、ただいま社会保険庁の事務局、国土交通省の事 務局、それぞれから御説明をいただきました点につきまして、御意見あるいは御質問等 がありましたらお伺いしたいと思います。どうぞお願いをいたします。松井委員、どう ぞ。 ○松井委員  国土交通省にお聞きしたいのですが、最後の資料は海上労働の特殊性があるから云々 という一般的な御説明がありましたが、社保庁からケースA〜Cと3種類出ていると思 いますが、正式な見解については難しいかと思いますが、この国交省の資料はケースA でないとだめだとおっしゃりたいのか。ケースCでもいろいろ御説明の中では、一般制 度に特例というものを設けてあれば、ILO条約は破棄しないのでも私はそれなりにや っていけるのではないかと思いますが、この国交省が出された資料の意味合いは何なの でしょうかというのが一点。  それから、来年採択される海事統合条約になると、まだ採択されていないわけですか ら、中身が確定していないということがあると思いますが、確定していないものに向け て、では、何をどうしたいのかという国交省としての意思があるのか、ないのか。  そして、さらにこのILO条約の採択に当たっては、一般のケースと海員のケースと は少し違うというような御説明がありましたが、私は前回の説明がひとつよく理解でき なかったということを今思い出したので、3点目はどんな手続が行われて、採択され、 条約が有効になるのか。前回批准していない国の船舶でも、それを守らないと運航がで きないというような御説明があったような気がするんですけれども、その3点質問した いので、よろしくお願いします。 ○岩村座長  それでは、国土交通省の方でお願いいたします。 ○後藤船員労働環境課長  1点目はちょっとこの場でお答えにならないと思いますが、私どもとしてはこの独自 ・上乗せ給付というのは、日本の法体系だけでやっているものではなくて、世界水準に 対応してやっているものだと。そういうことなので、今後ともこれは引き続き必要だと 考えております。ケースA、ケースB、ケースCというのは、私は昨日今日初めて見た ばかりで何とも申し上げられませんので、そこはここで議論をしていただくのがいいと 思っております。  それから、2点目のILO海事統合条約の……。ちょっと2点目はもう一度言ってい ただけますか。  3点目の手続論は今後どうなるかという話でございますが、2006年2月に採択予定で あると。それから各国が批准をいたしまして、その批准国数、あるいはその各国の持っ ております船舶のトン数が世界のトン数の何割というあるレベルに達した場合のどちら か、あるいは両方になった場合から1年後に、この条約が効力を有するというのが手続 論でございます。  2点目は、日本が批准しなかったらどうなるのかというような御質問でございます ね。前回御説明したのはポートステートコントロールのことだったと思います。これは 日本が批准しない場合は、日本は日本の港に入ってくる船に対して、船員労働環境の視 点からの検査を行うことはできなくなります。ところが、日本の船は批准しておる国に 入っていた場合はバンバン検査をされる、こういったことが起こるということでござい ます。そういったことが細かくいろいろございますが、この条約を世界の主要国が今一 生懸命つくっておる背景というのは、もちろん一つには船員の労働環境が総じて悪いの で、これを上げようという話もございます。ただ、そのまたさらに背景には、いわゆる サブスタンダード船という概念がございまして、要は船員をろくに乗せずに、あるいは 船員のコストを切り下げるだけ切り下げて、それで安い運賃を提供して事故を起こして いる、あるいは海運のマーケットを荒らしている、こういった船をやはり排除していか なければいけないだろうと。海運における競争条件を適切なものにしていかなければい けないだろうという発想がございまして、それでILOの場でも我々官に加えまして労 使の皆様方が、この3者が協力をして、この統合条約の採択を進めているということを ちょっと御説明させていただきたいと思います。 ○岩村座長  松井委員、よろしゅうございましょうか。 ○松井委員  そうすると、統合条約になったときに、今の第55号条約等と中身は、いわゆる社会保 障としての給付のレベルについては変わるのでしょうか、変わらないのでしょうか。そ れもまだ採択されていないので決まっていないということはわかって質問をしているん ですけど。 ○岩村座長  よろしゅうございますか。国土交通省、お願いします。 ○後藤船員労働環境課長  私どもは、実はこの統合条約の作業チームの副議長国を務めておりまして、そういう ことでございますので、極力我が国の現行の制度を変えなくていいような、そういうベ ースでやっております。したがって、大々的に何かを変えないといけないといったよう なことはございませんが、多少そのでこぼこで変更が要るところはございます。そうい う意味では、私が御説明しました資料のILO海事統合条約の欄に「充実強化」と書い てございますが、これは世界水準を上げるということであって、そういう理解をしてい ただければと思います。 ○岩村座長  ありがとうございました。そのほか、いかがでございましょうか。  例えばこの資料2の制度の仕組みのA、B、Cというイメージを、今日事務局の方で 御用意いただいて御提示いただいているわけですが、これについて何かコメントなりご ざいましたらと思いますが。松井委員、どうぞ。 ○松井委員  社会保険庁に質問したいのですが、今の社保庁改革が行われている中で、正直言って 船員保険について十分議論がされてきてなかったと思うのです。それで予測でも結構で すが、仮にこのケースAという形になったときに、社保庁としてこの形は引き受けてい かれるのかどうか。というのは、国が保険者という形でと書いてあるんですけれども、 大体そういうことは可能性としてあるのか。それはここで決めればいいというものにな るのか。その辺をちょっと教えていただきたいのですが。 ○岩村座長  よろしいでしょうか。では、医療保険課長、お願いします。 ○武田医療保険課長  申し上げにくいところも多々ございますが、例えば今日の資料6の中でも骨太の中 で、現行の社会保険庁を存続することなく、政管健保についてはこれこれ、公的年金に ついてはこれこれということで、現在社会保険庁が担っております機能につきまして、 医療は医療にふさわしい組織に、年金は年金にふさわしい組織に、というような方向性 が出されているわけでございます。その中で船員保険の扱いにつきましては、有識者会 議の中では、船員保険の検討会で別途検討されているのでというような扱いになってお りますが、そういう意味では船員保険を引き取ってはだめだとか、引き取るべきだと か、どちらも書いてはございませんけれども、基本的な考え方でいう年金に純化したと いいますか、特化した組織にしていくという方向性からすると、それ以外の業務をどの ように位置付けるかというのは、非常に難しい問題になっているのではないかと思いま す。  そういう意味で、今日も資料2としてお出しいたしましたものに、先ほどの財政収支 だけではなく、制度の維持可能性、特会の問題だけではなくて、社会保険庁改革との関 係という欄を設けましたのは、制度を仮に維持するとしてもどこで運営するかというの は、一つ大きな論点として御議論の中で議論していただきたい点ということでございま す。それはケースBという場合につきましても、医療を切り離しまして職務上疾病、職 務上年金、それから失業部門となりますと、またどこが実施をするのかというのはかな り難しい論点かというふうに認識しております。  ちょっと歯切れが悪くて恐縮ですが。 ○岩村座長  そのほか、ございますでしょうか。江口委員、どうぞ。 ○江口委員  ケースBとケースCの中でそういう形も考えられるのではというふうに書かれてはい るのですが、特に職務外疾病部門について一般被保険者と別の体系になるから、また別 の組織の公法人をつくらなければというお考えが示されているんですけれども、こうい うことをすると、またコスト面で非効率な面が出てくるのではないかというのを危惧し ております。一つの組織の中でこういうものを担当する部門というような形では、おさ まりにくいものなのでしょうか。 ○岩村座長  なかなか今の時点で確定的なお答えというのは難しいかもしれませんが、何か。で は、お願いいたします。 ○事務局  このBでこういう集団を考えましたのは、自主・自律の保険者という形で出ますと。 そのときに、実際は自主・自律という形で決めていくことをどの集団でやるかというこ とで、上乗せ給付との関係から、こういう公法人というふうにして仮に置かせていただ いたものです。どこかでやってもらえないかということにつきましては、もしそれが独 自の形でいい組織があればそれはそれで、そこまで検討はしておりませんが、ただ、例 えば政管健保の方の公法人につきましては、この場合にもしそういう形であれば都道府 県別の保険料率とか、これを一般制度に完全に統合するのであれば、そういうことが一 つは考えられると。もし都道府県別保険料率でないような独自の形ということであれ ば、それは政管の公法人でこの船員保険組合の事務をやるというイメージではなくて、 むしろ政管の被保険者の中で特別な取り扱いをするというような形になるのではないか と。  ちょっとグチャグチャ言いましたが、そういう意味でここで船員保険組合というもの をもし想定をするのであれば、これはやはり独立した一定の形というのを念頭に、今の 時点ではここは書かせていただいております。 ○岩村座長  江口委員、よろしゅうございましょうか。そのほか。どうぞ、山口委員。 ○山口委員  これはイメージということで、はっきり言ってケースAというのは現状維持のスタイ ル、ケースCというのがそれぞれ3つの部門を全部分解して統合すると。真ん中のケー スBは、この形でいけばいずれにしても職務上疾病と年金、失業部門は船員保険という カテゴリーに残って、職務外疾病だけを公法人という書き方をしていますが、現行の船 員保険と同様の加入義務を課した公法人を保険者とする形も考えられるのではないか と、こういう書き方をされているのですが、このケースBの健康保険の四角の中という のは、法律の適用からいくと健康保険法の適用になろうかと思います。その中で、現在 の船員法並びに船員保険法に基づく強制加入の義務要件というのがあるんですけれど も、いわゆる一般健康保険法に基づく事業者の集団になるのかどうかわかりませんが、 強制加入の義務というのは法的にも裏づけられているのでしょうか。この辺をちょっと お聞きしたいのですが。 ○岩村座長  では、事務局の方でお願いします。 ○事務局  加入義務との関係で申し上げますと、まず一般制度にそのまま単純に統合という形で あれば、そこの事業所が健保組合ということであれば、その事業所の方は健保組合の組 合員になり、そうでないところは政管健保で、政管健保は加入義務を課しますので、そ ういう意味では全体の加入義務というのは課されます。ただその場合に、船員さんだけ の加入義務ということにするのであれば、やはり特別な仕組みが要る。すなわち特別の 給付と特別の保険料という形にするのであれば、特別な位置付けを与える必要があるの ではないかということで考えています。もしそういう船員保険組合みたいなものをつく るのであれば、そこで下船後3月のような義務的な部分を強制加入の集団としてやると いうことになるのでしょうが、もし一般制度に完全に溶け込むということであれば、こ ういう下船後3月の療養給付は、むしろ職務上部門として給付をするような、そういう 組み合わせも考えられるのではないかと思っております。 ○岩村座長  はい、龍井委員、どうぞ。 ○龍井委員  2点あるんですが、そうなると当然一般の健保はこれをつくること自体も任意になり ますので、こういう形にする以上は別の法律が必要ということになるのでしょうか、と いう単純な質問です。  もう一点はちょっと話が外れるんですが、労災保険の方ですけれども、ケースCの場 合にもちろんこれは一般に統合できないという特殊性からもともとあったものをやるわ けですから、ここも例えば料率を設定していく場合に、どういう分類でやっていくのか なというのは、ちょっと私はイメージがわきにくいところがあるんですけれども、そこ の問題点についてもし何か今の時点でお考えがあればお聞きしたいと思います。 ○岩村座長  よろしいですか。では、事務局の方でお願いします。 ○事務局  別の法律が必要かということでございますが、健康保険に職務外を統合した場合に、 給付、あるいは保険料の設定という面で特別な取り扱いをする場合には、その健康保険 の制度の中で法律上きちっと書く必要があると。もし特別な取り扱いを一切しないとい う形であれば、これはその加入の対象者を一緒にしてしまうということに、健康保険の 分野ではなろうかと思います。 ○龍井委員  加入義務の扱いもそうですか。 ○岩村座長  多分加入義務について言えば、特別な扱いを全くしないのであれば、健康保険の仕切 りで全部やるという話になりますので、特別の規定は要らないということになります が、例えば今の船員保険のように船員法の適用のある船員については、何か特別な扱い をするという仕切りにするのであれば、加入義務についても別途法律上書き込むという ことが、必要になるのではないかと予想はされますね。そうしないと、仮に船員保険組 合というような公法人的なものをつくっても、そこへの強制加入という仕組みが出てき ませんので、何か別途仕組みを考える必要はあると。それを単独法にするのか健保法の 中に特則という形で、例えば今の日雇い被保険者のような形で入れるのか、そういう議 論なのだろうと思います。  それから、労災の方はちょっと御質問の趣旨がわからなかったのですが、御承知のよ うに労災の場合は業種別の保険料になっていますから、ケースCで仮に考えるとする と、船員の部門について業種別で保険料を考えるということになろうと思います。 ○龍井委員  いや、聞きたかったのは、一括の業種になり得るのかなというイメージがわかなかっ たのです。 ○岩村座長  それは多分また別途の御議論なのだと思います。もしそれぞれの海運の中で、例えば 水運と漁業と何とかで災害発生率が非常に違うということであれば、ひょっとすると分 ける可能性もありますが、ただそうするとまさにこの前まで労災保険料率で検討してい たところなのですが、余り保険集団を小さくするとリスク分散ができなくなってしまう ので、その兼ね合いだろうというようには思います。松井委員、どうぞ。 ○松井委員  ちょっと非常に細かいところですが、まず今の船員保険で下船後3月が職務上疾病の 取り扱いになっているということは、一般制度でいうと労災保険による保障になるのだ と思いますが、仮に一般制度に統合し、下船後3月の疾病に対する給付をするときに、 労災の事故になったとした場合、労災ですとメリット料率の上下がありますが、船員保 険では恐らくそういうのはやっていないのではないかと思います。それはまずやってい るのか、いないのか。あるいは仮に一般制度に移したときには、そういうのはどんなふ うに考えるべきなのか。ちょっとテクニカルで細かいところですが、わかる範囲内で教 えていただきたいんですけれども。 ○岩村座長  事務局の方はいかがでしょうか。 ○事務局  メリット料率に相当するのものが若干あるのですが、それがこれに該当するか今確認 をしますので、ちょっとお時間をください。 ○松井委員  ではほかのところで。雇用保険課長がお見えなので雇用保険課に質問したいのです が、特に外航の人なんかはある時期はずっと働いていて、下船後何カ月も休んでいる と。そういう場合の雇用保険というのは特別な仕組み、ほかの一般制度で吸収するよう なことも可能なのでしょうか。その点をちょっと確認したいと思います。 ○岩村座長  では、雇用保険課長、お願いします。 ○生田雇用保険課長  すいません。下船後何カ月も休んでいるという、休んでいる状態はどんな状態なのか というのがちょっとよくわからないので、賃金が払われていない状態なのでしょうか。 ○松井委員  ちょっと御説明をお願いします。 ○岩村座長  ではすいません、補足的に御説明いただければと思います。 ○堀委員  外航船員の場合、例えば労働協約の8カ月を乗船した場合に、あとの4カ月、これは 賃金は払われています。下船中の賃金という形で払われています。さもないと保険金の 出しようがありませんから、給料は払われています。 ○松井委員  そのときの基準は、金額は違うのでしょうか。どうですか。 ○堀委員  そのときの基準というのは、もう当初からPUで職によって保険が決まっております から、下船中も乗船中も保険料は変わらないと私は思っていますけれども。 ○生田雇用保険課長  下船中も賃金が支払われているのでしたら、被保険者として取り扱われて、失業給付 を仮に算定するときも、そのやめる前の賃金の6カ月分を180で割って平均賃金を出し て、それに給付率を掛けるというやり方ですので、適用に何の問題もないのではないか と思います。 ○岩村座長  では、社会保険庁の方、お願いいたします。 ○事務局  下船後3月とメリット保険料率の関係でございますが、今船員保険制度の職務上部門 では指定災害というものに該当すれば、そのうちの料率について増減させるというふう になっておりまして、その対象となる保険給付が障害年金とか障害手当金とか決めてお りますが、その中には下船後3月の給付は入れておりませんので、現行の仕組みでいけ ば対象になっていないということでございます。 ○岩村座長  よろしゅうございましょうか。そのほかの点、いかがでございましょう。山口委員、 どうぞ。 ○山口委員  先ほどと同じくケースBのところで、職務外疾病の部門だけを切り離して政管健保ま たは健保組合方式、または仮称・船員保険組合と、こういうイメージが出されているの ですが、私の知っている限りでいえば、健康保険組合というのは例えば同業種といいま すか、同じような業種の人たちがなおかつグループ、地域、そういったところで、全国 ネットの会社もあるでしょうけれども、そういったいわゆる大手の企業グループの集団 で成立しているというふうに理解しているんですけれども、これは仮の話ですが、船員 保険の今の適用者はいろいろ業種がいっぱいある、さまざまな事業所があるという中 で、健康保険組合方式というのが果たして船員保険の職務外疾病部門だけをとらえてな じむのかなと。私はなじまないと思うんですけれども、その辺について何か御見解があ ればお聞きしたいのですが。 ○岩村座長  何かお答えはございますでしょうか。では、厚生労働省保険課長、お願いします。 ○今別府保険課長  今日の資料を改めて見まして、ケースB、ケースCで健康保険のところだけやや踏み 込んだ書き方をしておりますので、ちょっと労災保険とか雇用保険と書いているのとバ ランスを欠いているような印象がありますが、これは前回座長から、例えばこういうこ とも考えたらどうだろうという御示唆をいただいたので書いてございます。  それで、結局付加給付の部分をどう考えるかで、付加給付の部分を制度的に取り込ん でやろうとすると、それからその全体を一つの集団でまとめたままやろうとすると、先 ほど御説明しましたが、船員保険組合というような特別な仕組みを法律に入れていかな いといけない。これは健康保険法の中に入るのか別の法律になるのかは別にして、とい うことが一つ。  それから、今の健康保険法の制度の中でおっしゃる同種同業というのは、具体的にど の範囲でどうくくられるのか。必ずしも一つの健保組合でないかもしれませんので、そ こは個別に御議論をさせていただかなければいけないと思いますが、健保組合という形 を使う手はあるだろう。ただしその場合に、これは自主的な組織ですから、必ずしも船 員の方全員を束ねることができなくなって、残った人が政管健保になってしまうという ところまでの議論しか我々もまだしておりませんので、そのレベルでやや踏み込んで書 かせていただいておりますが、個別にこれをさらに具体化するというのは、また今後引 き続き検討させていただきたいと思います。今は今申し上げたような程度のことしかち ょっと申し上げられません。 ○岩村座長  よろしゅうございましょうか。大企業だけではなくて、最近の例ですと派遣業界が、 同種で集まって総合型で健保をつくったという例はあるんですね。ですから、例えば海 運さんのところで総合型の健保をつくるという考え方もないではないですが、今保険課 長から御説明があったように、加入自体は任意なので、そこに入ってこない船員の部分 があると、それは結局政管健保の方にいってしまう。そういうところがどうしても出て くるかなということになろうかと思います。  それともう一つは、やはりこの枠組みだと、健保組合にしても政管にしても独自給付 をちょっと乗せにくいということは、工夫がないわけではないかもしれませんが、やり にくいというのはあろうかと思います。はい、どうぞ、龍井委員。 ○龍井委員  そうなりますと、さっき日雇いの例も出されていたのですが、つまり一般化すれば特 定被保険者としてその付加給付のところを扱っていくということになりますか。その資 格を定めるということ、特定被保険者の要件を定めるということと、必ずしもここで言 われている組合という形をとらなくても、何かそういう手だてというのはあり得るとい うふうに考えていいのでしょうか。ちょっとそこの関連がよくわからないのですが。 ○岩村座長  どうでしょうね。そこまではちょっとまだ詰めて考えていないので、今の御意見も踏 まえてまたこの場で検討するということなのだろうと思いますが。医療保険課長、どう ぞ。 ○武田医療保険課長  今の御質問の直接答えになりませんが、今日お示しをしましたイメージの背後にある 考え方として、ちょっと中で議論したものを一つ御紹介いたしますと、先ほど御紹介し ましたように社会保険庁改革の関係で、医療と年金と2つに分けて組織を考えるという 考え方が出されております。それは医療と年金という仕事の種類によって分けるという ことが一つですが、それぞれによってそれに最適な組織に分かれるだろうという議論で ございます。これは、医療に関しては、政府管掌健康保険という一つのまとまりがござ います。全国民ということではなくて、政管の被保険者のグループということになりま す。医療保険については、そのグループグループごとに自分たちで保険の運営を考えて いくことが適切ではないのか。そういう考え方に立つと、国という組織は非常に使いに くいといいますか、国以外の組織の方がよりなじむのではないかという議論でございま す。それから年金につきましては、むしろ全国民を対象にするものであって、画一的な 運用といったものが必要になってくることもございまして、これは国の組織で国の責任 で運営をすべきだというような議論になったわけでございます。  船員保険に関連してみますと、同じような考え方でいえば政管の並びの議論で、医療 保険については自主・自律の運営、自分たちでグループをつくってまとまって運営の仕 方を考えていくということが、一つ議論としてはあり得る。その場合は、やはり船員独 自でのグループでつくった方がより望ましいのだろうと思いまして、そうしますと船員 保険組合のような組合組織。ほかの保険では組合をつくるという構成が労災も雇用保険 もございませんが、健康保険の中では同一グループが組合をつくりまして自主運営をす るという仕組みがございますし、政管もその流れに近い形で位置付けを考え直していく ということでありましたので、そういう形で考え直してみたらどうなるのかというの が、今日の資料の背後に一つございます。  例えばどういうところに違いが出てくるかといいますと、国ということでやります と、意思決定が最終的には被保険者、事業主というところではなかなかできないという 問題。それから、福祉施設につきましても、福祉事業、保険事業につきましても、国で 行っている場合には特別会計ということになりまして、その特別会計の中では公的施設 を持つことに大変厳しい近年の批判がございます。逆に同一グループの自主・自律の組 織ということになりますと、そこはむしろ個々のそのグループ内でどう話し合いをする かということが、比較的認めやすくなる点もあろうかとは思います。なかなかそこまで の議論がしにくいのかもしれませんが、船員についても船員保険というもの、それから それぞれの部門の一番望ましい運営形態といいますか、運営責任といいますか、そうい うものをどう考えていくのかというのも、組織論に一つ絡むところもあろうかと思いま す。  ちょっと今の答えに全然なっていないと思いますが、参考までに申し上げました。 ○岩村座長  ありがとうございました。差し当たりさっきの龍井委員のお話との関係でいうと、日 雇い特例のような形でいくと、今回の改革との関係でいうと公法人の方にくっついてし まうので、そこでの問題が出てきてしまうということだと思います。それが今の医療保 険課長のお話とつながっていくということで、御理解いただければと思います。  時間もそろそろ押してまいりましたので、またいずれにしろこのイメージの議論とい うのは、次回以降シミュレーションとあわせて具体的にさせていただきたいと思いま す。大変恐縮でございますが、今日はあとアスベストに関しまして、船員についても被 害が出ていると伺っております。その点につきまして、「石綿による健康被害への対応 について」ということで、国土交通省から御説明をいただけるということですので、お 願いをしたいと思います。 ○後藤船員労働環境課長  資料7の冊子でございます。内容は2点ございまして、先日社会保険庁さんと私ども が共同で、船員の関係の団体に出させていただきました、「石綿による健康被害への対 応について」の通達でございます。  内容を簡単に御説明いたしますと、2ページでございますが、船内でのアスベストの 使用状況でございます。平成14年に制度ができまして、船舶にアスベストを使用するこ とは原則禁止ということでございますが、過去に建造された船舶等にはまだ使用されて いるものがあるということでございまして、船内の特に機関関係の部分でございます が、そういったところで作業する場合には注意が必要であるということであります。特 にアスベストは防熱や防音にすぐれておるということで、いろいろな材料にまじって、 エンジンの周りの配管のところに張ってあるといったようなことが多ございまして、そ れを多くは造船所で整備するわけでございますが、なかには船内で張りかえをすると か、そういったときに特に注意が必要であるということでございます。  2のところでございますが、このアスベストにつきましては、船員法に基づく船員労 働安全衛生規則の第60条にその取り扱いの措置が書いてございます。粉じんを発散する ような場所では保護具をつけるとか、あるいはその周りを水でぬらして粉じんが飛ばな いようにするといったようなことでございますが、そういった制度があるのでそれの周 知徹底をお願いしております。  3がいわゆる職務上災害でございまして、これはそういった方がもう既に出ておりま すので、労災制度があるという旨の御案内でございます。  3ページに入っておりますが、4といたしまして健康診断の実施でございます。特 に、古い船にこのアスベストが使われているケースが多いということで、昔船員さんだ ったような方に対して注意喚起が必要であるということで、船舶所有者の皆様方に、特 に昔船員だったような退職者の方々に対して健康診断を行うように要請をしていただ く、あるいはいろいろな相談事、心配事にも企業として積極的に対応していただくよう お願いをしております。  2番目でございますが、現在雇用されている船員は船員法に基づきまして、船舶所有 者の費用で年1回の健康診断の制度がございます。これはアスベストをチェックすると いうことも含めた総合的な健康診断制度がございますので、これを確実に実施していた だくようお願いをしております。  5といたしまして、いろいろな相談窓口の御紹介をいたしております。  別紙はいろいろとついてございますが、省略をさせていただきまして、最後の11ペー ジでございます。「陸上労働者に対する石綿に係る健康管理制度について」という紙で ございますが、制度の前提といたしまして、事業主は雇用されている労働者に対して、 健康診断を受けさせる義務というのがございます。こういった制度を前提といたしまし て、まず目的のところでございますが、もう既にやめてしまった労働者が、例えば肺が んであるとか中皮腫であるといったような重い病気になるおそれがあると。そういった ことを早期発見するために、健康診断をやるという制度がございます。これは陸上の場 合の御紹介でありますが、石綿を取り扱っていたような皆様方について、最初みずから 健康診断を受けていただいて、一定の所見が出てしまったような方々を対象といたしま して、無料の健康診断を受けられる制度がございまして、これが健康管理制度でござい ます。  手続としては、ここに書いておりますとおりで、健康管理手帳がそういった方々に交 付されて、年2回の無料健康診断が受けられると。これは陸上の例でございますが、労 災の特会で予算が措置されておるということでございます。  大変残念ながら船員にはこういった制度がございませんでした。労災で中皮腫の方等 が残念ながら出たということでございますので、現在社会保険庁と私どもで、この船員 に係る石綿の健康管理制度をできる限り早く導入するということで、連携して調整をし ておるところでございます。  以上でございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは、医療保険課長、どうぞ。 ○武田医療保険課長  医療保険課長でございます。ただいま国土交通省さんの方から概括的な説明がござい ましたが、陸上労働者に対しましては、労働安全衛生法による一定の事業主に対する義 務づけ措置及び離職後の健康管理手帳という制度が規定されておりまして、一方労働災 害補償保険、いわゆる労災保険の方で、健康管理手帳が交付された人が健診を受けた場 合の費用につきまして、無料健康診断ということで、特別会計の方で福祉事業といたし まして実施をされているということでございます。今日の資料の11ページの、特会にお いて予算措置というのはそういう趣旨でございます。  それで、ただいまお話がありましたように、陸上労働者の場合の並びといいますか、 同様の措置といたしまして、元船員に関する健康管理制度につきまして、国土交通省で 導入の検討ということでございますので、それを受けてもし本日委員の皆様方に御異論 がなければ、船員保険制度といたしましても労災保険制度と同様の形で、福祉事業とい たしまして、健康診断の無料というところにつきまして実施する方向で検討を進めてま いりたいと、私どもとしては考えているところでございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。ただいまの国土交通省及び社会保険庁の御説明につきまし て、御質問あるいは御意見がありましたら伺いたいと思います。三尾委員、どうぞ。 ○三尾委員  ただいま国土交通省と社会保険庁の方から、アスベストに関して健康管理手帳、この ことについてお話がありました。ぜひ早急に実現できるようにお願いしたいと思いま す。  実は、私自身も30年以上前から船に乗ってきました。そちら側に座っている皆さんも そうだと思いますが、当時の船にはエンジンを蒸気で回す船もあり、大きなボイラーを 装備していて、ものすごく高熱の状態になるということから、ここにも書かれています ように断熱材としてアスベストが使われてきたということで、特に古い船員の人たちは そういう環境の中で働いてきた。しかも、アスベストがはがれたりしたときには、補修 等もやってきたということでございますので、今現在、元船員の方でアスベストで中皮 腫あるいは最近ではじん肺に認定されたと、いわゆる労災として認定された方もいる し、残念ながら認定されて幾月もたたないうちに亡くなられたという事例も承知してお ります。そういったことから、アスベストの性格的には吸い込んでから30年、40年後に 発症するというような、「静かな時限爆弾」とも言われているようなものでございま す。退職された船員の方からも私どもにいろいろな相談の連絡がございますし、健康管 理手帳がなぜ船員に適用されないんだというような声もございまして、先ほどのお話も ありましたので、ぜひこれは早期に実現できるようにお願いしたいということを申して おきたいと思います。 ○岩村座長  小坂委員、どうぞ。 ○小坂委員  私も趣旨は三尾委員と一緒ですが、その前に一つ質問があります。というのは、資料 2で陸上労働者に関する部分の管理制度というのがはっきり出ておるのですが、この陸 上労働者にはいつからこういう形の制度がはっきり出ておるのか。もしこれが10年も15 年も前からこんなことになっているのであれば、行政の怠慢というか手違いか、それか らもしくは私どものOBを含めて前任者ともども今まで何をしておったのかと。特に、 最初に2ページ目のところで説明していただいたように、少なくとも平成14年からはこ の辺がはっきり記録としても出てきておるという中で、例えばそれからしても3年間放 っておったということであって、こういうところがかなり問題があるのではないか。当 然私どもの方も、もっと声を上げなかったという部分はあるんですけれども。ですか ら、健康管理手帳といいますか、こういう制度については一日も早く、すぐにでも、明 日からでもやっていただきたい、そういうふうに思います。  以上です。 ○岩村座長  ありがとうございました。ほかにはございますでしょうか。よろしゅうございましょ うか。江口委員、どうぞ。 ○江口委員  日本船主協会です。私どももやはり陸上と並びのこういった健康被害に対する制度 を、早急に導入していただきたい、促進していただきたいと考えておりますが、現在新 しい船員保険制度の検討にも当たっておりまして、これは船員保険の負担贈にもつなが る部分ですので、この場においてそういう点も考慮して検討していただきたいと考えて おります。  それから、今、陸上で何人ぐらいの方がこの管理手帳をお持ちなのでしょうか。おわ かりになりますでしょうか。 ○岩村座長  元船員の方に限ってですか。 ○江口委員  いや、陸上で管理手帳をお持ちの方というのは。 ○岩村座長  陸上全部ということですか。今日把握していらっしゃる関係省庁の方はいらっしゃい ますか。ちょっと労災でも把握されておられないようですので、後でもしあれでしたら 情報提供を担当部局の方でお願いしたいと思います。  ほかはよろしゅうございましょうか。それでは、特に御発言がないようでしたら、時 間も過ぎておりますので、本日の検討会はこれで閉会とさせていただきたいと思いま す。次回の検討会でございますが、これについては既に事務局から御案内が行っている と思いますけれども、8月26日、午後3:30からで、場所は厚生労働省会議室を予定し ております。詳細はまた事務局から皆様に御連絡がいくと思いますので、どうぞよろし くお願いをしたいと思います。  それでは、今日はどうもありがとうございました。これで閉会といたします。                                     <了> 照会先:厚生労働省保険局保険課企画法令第2係     (代)03−5253−1111(内線)3250