05/07/26 第24回社会保障審議会児童部会議事録              第24回社会保障審議会児童部会              厚生労働省雇用均等・児童家庭局 第24回社会保障審議会児童部会 議事録 日時:2005年7月26日(火) 10:00〜12:00 場所:霞ヶ関東京會舘 シルバースタールーム 出席者:  委員   岩男部会長、網野委員、小笠原委員、柏女委員、中村委員   堀委員、前田委員、無藤委員、吉田委員、渡辺委員、  事務局   伍藤雇用均等・児童家庭局長、北井審議官、高井総務課長、山田家庭福祉課長、   東育成環境課長、尾崎保育課長、佐藤母子保健課長、田中児童福祉調査官、   山本虐待防止対策室長、平野育児・介護休業推進室長、大塚児童手当管理室長   八神企画官 議事:  1. 開会  2. 児童福祉をめぐる最近の動向について  3. 次世代育成支援対策推進法に基づく取組状況について  4. 児童相談所における児童虐待相談処理件数について  5. 「児童自立支援施設のあり方に関する研究会」について  6. 「小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究会」報告書について  7. 閉会 配布資料:  資料1 児童福祉をめぐる最近の動向について  資料2 次世代育成支援対策推進法に基づく取組状況について  資料3 児童相談所における児童虐待相談処理件数  資料4 児童自立支援施設のあり方に関する研究会について  資料5 「小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究会」報告書の公表について 参考資料:  ・「児童部会における今後の主要な論点」(平成15年4月8日部会提出)の対応状況            第23回社会保障審議会児童部会(平成17年5月31日)提出資料 ○岩男部会長  おはようございます。定刻となりましたので、まだお見えになってない方もございま すけれども、始めさせていただきたいと思います。  ただいまより第24回社会保障審議会の児童部会を開催いたします。本日はご多忙の 中、また大変お足元の悪い中をおいでいただきましてありがとうございました。  まず本日の出席状況について事務局からご報告をお願いいたします。 ○高井総務課長  本日は欠席が阿藤委員、遠藤委員、大日向委員、津崎委員、服部委員、松原委員、山 縣委員、山崎委員が所用により欠席となっております。無藤委員と前田委員は遅れるそ うでございます。 ○岩男部会長  それでは早速議事に移りたいと思います。  まず初めの議題といたしまして、前回の児童部会でご了承いただきました当面の児童 部会の進め方において、次世代育成支援のより一層の推進の観点から今後の子育て支援 策のあり方に関連する動き等を事務局より随時ご報告を受けながら幅広い観点から議論 をしていくと、このように致しました。  本日はその進め方に基づきまして、児童福祉をめぐる最近の動向について事務局から ご報告をお願いいたします。 ○高井総務課長  まず資料の1でございます。「児童福祉をめぐる最近の動向について」ということで ございまして、その最初のページにございますように、前回の部会以降、いろいろな関 係のところから決定がなされたりとか論点整理がされておりますので、その紹介をさせ ていただきたいと思います。  1ページをおめくりいただきまして、これが「経済財政運営と構造改革に関する基本 方針2005」いわゆる「骨太2005」といわれるものでございまして、6月21日の閣議決定 がなされているところでございます。  この「骨太2005」につきましては、政府全体の大きな方針が色々と書かれているわけ でございますけれども、その第3章、新しい躍動の時代を実現するための取り組み、少 子高齢化とグローバル化を乗り切るというところで、6点書かれておりまして、その4点 目に次世代の育成ということが書かれております。  その少子化対策のところをご覧いただきますと、少し読ませていただきますが、「人 口減少社会を目前に控え、家庭・家族、地域の役割を重んじ、その連携を通じて、国民 が安心して子どもを生み、育てることができる社会を構築するため、国の基本政策とし て少子化の流れを変えるための施策を強力に推進する」と書かれてあります。  特に、ということで、仕事と家庭・子育ての両立等仕事と生活のバランスを取りつ つ、多様な働き方ができるようにということで国民的な運動を取り組むというようなこ と。  それから次のパラグラフで、女性の再就職・起業等についての支援策を検討するため の、「女性の再チャレンジ支援策検討会議」を設置すると。それから17年度中に「女性 の再チャレンジ応援プラン」を取りまとめる、ということが書かれてあります。  また、国家公務員がモデルになるようにということで、短時間勤務制度の早期検討を 掲げております。  下の方で、こうした取り組みを進めるために(1)は閣僚・有識者等が連携して取り組 む体制を整備して、「少子化社会対策大綱」及び「子ども・子育て応援プラン」のフォ ローアップ等を行って、その着実な実施を図るとともに、プランに掲げられた課題の検 討を進めると書かれております。また、(2)で社会保障の一体的見直しの中で、高齢関 係給付の比重が高い現在の社会保障制度の姿を見直すとともに、社会保障の枠にとらわ れることなく少子化対策を図ると。(3)は、「次世代育成支援対策推進法」等に基づく 企業の取組状況の開示を進めるということであります。  後の方に飛んで恐縮でございますけれども、12ページをお開きいただきたいと思いま す。12ページの前の11ページが「子ども・子育て応援プランの概要」でございますが、 12ページに「子ども・子育て応援プラン」の検討課題の抜粋を載せております。プラン の最後に、検討課題としてパラグラフが二つございますけれども、一つは社会保障給付 について、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直して、若い世代及び将来世代の負 担増を抑えると社会保障の枠にとらわれることなく、次世代育成支援の推進を図るとい うことと、次のパラグラフで人口が転換期を迎える5年間が重要な時期であるとの認識 のもと、次世代の育成を効果的に支援していくため、地域や家族の多様な子育て支援、 働き方に関わる施策、児童手当等の経済的支援など多岐にわたる次世代育成支援施策に ついて、総合的かつ効率的な視点に立って、そのあり方等を幅広く検討する、というこ とが書かれているところでございますが、こうした検討課題も含めて、先ほどご覧いた だきました「骨太2005」にありますように、政府全体で検討体制を組んでいこう、とい うことが書かれているわけであります。  これはまだこれから立ち上がるという状況でございますけれども、この児童部会にも 多く関係いたしますので、逐次、ご報告をし、いろいろご議論いただければと思ってお ります。  それから資料の2ページでございます。次の資料といたしまして、政府の税制調査会 の資料を掲げております。2ページの「個人所得課税に関する論点整理」、6月21日に出 されたものでございまして、表題にございますように、「個人所得課税に関する論点整 理」がなされたということでございます。  ここには掲げてありませんけれども、最初に18年度以降の税制体制の検討を控えて論 点整理を行うという位置づけが記されているわけでありまして、税について、所得課税 について論点整理がなされていますが、その3番目に「世帯構成と税負担のあり方」と いうところがございます。子育て支援の関係が記されているところであります。  資料の3の「世帯構成と税負担のあり方」のパラグラフの4行目以降をご覧いただきま すと、「こうした中」というところで、配偶者の存在と納税者本人の担税力との関係を どう考えるか、また、子育てについて、子どもの扶養を担税力の減殺要因と見て対応す べきか、財政支援の対象と見るべきか議論が分かれるところであろうということで、税 で行うのか財政支援を行うのかという問題意識が書かれております。  その上で、下の方の(2)以降でございますけれども、「子育て支援との関係」、税 と子育て支援の関係が記されておりまして、イ)のところが基本的な論点整理かなと受 け取っておりますけれども、ご覧いただきますと、少子化の急速な進展を踏まえ、子ど もを生み育てることについての政策的支援の要請が高まっており、税制面でもそれにど のように応えていくのかが重要な課題となっている。これまで個人所得課税では子ども の扶養を担税力の減殺要因ととらえて所得控除によって対処してきた。政策的に子育て を支援するという見地からは、税制において、財政的支援という意味合いが強い税額控 除という形態を採ることも考えられる。この問題については、今後、少子化対策全体の 議論の中で、他の政策手段との関係、諸外国の事例も踏まえ、引き続き検討を深めてい く必要があるということが書かれておりまして、税制の中でも検討する、あるいは他の 政策手段と書かれておりますけれども、それとの関係も視野に入れて検討していくとい うことが書かれているところでございます。  関係するところといたしましては、ロ)の扶養控除について。現在、年齢の如何に関 わらず、扶養控除の対象になっているわけでありますけれども、下線の引いてあるとこ ろにありますように、対象者に年齢制限を導入することを検討すべきであるというよう な指摘が書かれてあります。  それから3ページのハ)でございますが、子育てと税制に関連して、N分N乗方式を採 用してはどうかとの議論があるということも紹介されております。  下の方に(注)がありますけれども、N分N乗方式、世帯単位課税、世帯で課税を考え ていくという考え方に基づいて、夫婦及び扶養子女の所得を合算して、それを家族の人 数に応じて、Nで割ると。そこに税率を適用するということで、世帯全体で納めるべき 税額を算出するという方式でございまして、フランスでこういう方式が導入されている ということであります。  上のハ)でいろいろ記述されておりますけれども、アンダーラインのところに、この 税制調査会では少子化社会に対応した税制をいかに構築するかといった観点から、財産 制度との関連も踏まえつつ、子育てと課税単位の問題について引き続き検討していく必 要があろう、と書いてあります。その上の方に、税制調査会の結論・考え方が少し出て いるところがございます。線を引いておりませんが「一方」というところでございま す。「一方、わが国においては」というところでございますが、わが国では、先ほどか らご紹介しております扶養控除制度が設けられている、ということでございます。  そういう中で、日本では個人単位課税が課税の基本としてなされてきているというこ とで、結果的には個人単位課税の中で扶養控除を適用するということで、N分N乗方式と 同様の効果を持ち得る、というようなことが書かれてあって、基本的にはこの日本の制 度が適当ではないかということが書かれているところであります。  それからニ)のところで、16歳以上23歳未満の特定扶養控除について教育費の負担が 大変多いということで、平成元年に導入されたということが書いてありますが、この論 点整理の中ではアンダーラインを引いた2行上のところから、仮に教育に要する費用と いう面でとらえてみても、子どもの教育に、いつどの程度の費用をかけるかについては 個々の家庭によってその事情は様々である。特定の年齢に該当する扶養親族を対象に、 一律に所得控除の割増を認める現行制度のあり方には疑問がある。人的控除について簡 素化・集約化を進める観点から見直しが必要である、ということが書いてあります。  この税制調査会の論点整理の関係でいきますと、やはり児童手当の関係が焦点になっ てくるのかなということでございます。  先ほどの「子ども・子育て応援プラン」においても検討課題として書かれております けれども、資料、後の方の13ページから15ページまでご案内の通りでございますので詳 細は避けますけれども、13ページに現行児童手当制度の概要、第1子・2子が5000円、第 3子以降が10000円、の資料でございます。  それから、14ページが昭和47年に発足して以来の経緯を入れております。15ページに 諸外国の制度の紹介をさせていただいているところでございます。  次に進めさせていただきまして、5ページでございますが、三つ目の資料でございま す。「規制改革・民間開放推進会議の重点検討課題」ということで、規制改革・民間開 放推進会議が6月13日に重点検討課題を発表いたしておりまして、実は今週の金曜日に この中間的な整理をまとめて、出されると聞いておりますけれども、方向としては、5 ページに書かれているような点が出されるというように聞いております。  これまでも保育サービスについての制度については、規制改革・民間開放推進会議で 何年にもわたって議論がなされてきておりますが、5ページのアンダーラインのところ にございますように、今回、「利用者に対する直接補助方式の導入等による多様な保育 サービスの選択支援」ということで問題が提起されるというように聞いております。  「問題意識」のところにございますように、現在の児童福祉法の制度においては保育 所に対する委託方式をとっていると、保護者の自由な選択に基づく契約とはほど遠い状 況にあって、認可外保育所の利用者負担も生じているというようなことが書かれてあり ます。  また、次のパラグラフでは就業を希望しているが、子育ての制約のために働けないと する方が122万人いるようなことがご紹介されておりまして、現在の保育サービスの提 供体制については見直しが必要ではないかというようなことが書かれてあります。  直接契約と並んで、下のところに4点掲げてあります。直接補助方式の導入あるいは 直接補助方式の下の※印にございますけれども、財政中立を前提にすると書かれており ますが、給付と負担の関係を明確化するというようなこと、それから直接補助方式に当 たっては育児保険も含めた直接補助方式の導入についての提言・意見が書かれてありま す。  公費負担については財政中立を前提にして、給付と負担の関係を明確にする。それか ら、通所だけではなくて在宅も支援していくということが書かれてあります。  また、情報公開も進めると、幼保一元化の総合施設のフォローもするということでご ざいます。この関係では、16ページでございますけれども、政府としては16ページにあ ります「規制改革・民間開放推進3か年計画」というのを、この3月に閣議決定しており まして、16ページからずっと保育所を中心に措置事項がまとめられているわけでありま すが、16ページの二つ目の箱にございますが、直接契約や直接補助方式の導入につい て、今後の方針を決めているところでございます。  ご覧いただきますと、平成9年の児童福祉法の改正による現在の入所方式の実施状況、 三位一体による平成16年度からの公私立の財源措置の相違、待機児童の状況、平成17年 度からモデル事業が開始され、平成18年度から直接契約方式により本格実施される総合 施設の運営状況等を勘案しながら、保護者が直接保育を希望する保育所に申し込み、当 該保育所が審査・決定を行うこと(直接契約方式)ができないか、また、併せて、保育 所に対する補助ではなく、利用者への直接補助方式を導入できないか、その可否につい て検討する。なお、直接契約・直接補助方式の検討に当たっては、保育に欠ける児童を 適切に認定する仕組みや、必要に応じて保育ニーズの高い者を優先的に入所させる仕組 みの構築、低所得者への適切な配慮、保護者が保育所を選択できるための環境整備(第 三者評価や情報開示など)についても十分留意するということでございます。  右側の実施予定時期としては、可否について長期的に検討という位置づけがなされて いるところでございます。その位置づけの中で先ほどの規制改革の方からまた意見が出 てくるという状況でございます。  その他、17ページから19ページにずっとこれまでの規制改革の論点について書かれて おりまして、19ページには総合施設についての方針が示されているところでございま す。  それから4番目の資料といたしまして、7ページでございます。昨年もこの部会でご審 議いただきましたけれども、補助金や負担金の三位一体の関係でございます。地方六団 体からの提案ということで、今回六団体の意見と、今年度分について意見が取りまとめ られております。1兆円の補助負担金、税源移譲の対象が挙げられておりますけれども、 厚生労働省分が4,750億円です。この部会の関係に置きましては、(1)と(2)でございま して、(1)の施設整備費の関係、次世代交付金を含むというということで、整備費が対 象になっていると。それから(2)の関係では、児童福祉関係の事業費・運営費等が入っ ているという事でございます。次世代の交付金を含むということで対象になっておりま すが、昨年ございました民間保育所の運営費等は、今回は入っていないということであ ります。  次の8ページに少し内訳がございますけれども、施設整備関係では老人の関係ととも に次世代育成支援対策施設整備交付金が対象になっていると。運営費の関係では、三つ 目の○にあります延長保育やつどいの広場等の、これも次世代育成の交付金の関係でご ざいますけれども、それでありますとか、次の○の児童養護施設や乳児院の措置費、そ れから一つとんで、児童虐待対策やDV対策の、補助金が対象に取り上げられているとい うことであります。  この関係につきましては、また年末に向けまして、政府部内で検討するということに なりますけれども、二つ申し上げますと、10ページに昨年の暮れに三位一体の改革につ いて17年中の検討の方向というのが書かれてあって、一番下の3番ですけれども、17年 中に検討を行い、結論を得るということで、生活保護と児童扶養手当に関する負担金の 改革というものが検討対象になるということが昨年の暮れに決められているということ でございます。  それから23ページ、24ページは昨年の10月にこの部会で取りまとめていただいた意見 でございまして、ご説明するまでもありませんけれども、再度、掲げさせていただいた ところでございます。  資料説明は以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、何かご質問あるいはご意 見がございましたらご発言いただきたいと思います。はい、吉田委員お願いいたしま す。 ○吉田委員  今のお話にかなり関連すると思うのですが、総合施設がモデル事業に入っておりまし て、来年度中の本格実施ということですが、今のいろんな動きに絡んでくる気がいたし まして。モデル事業を中心とした総合施設の検討状況というか今後の見通しというか、 まだはっきりしないところも多いと思うのですが、可能な範囲でその辺の状況もお知ら せいただけると助かるのですが。 ○尾崎保育課長  今ご紹介がありましたように、今年度1年間だけですけれども、モデル事業は全国36 カ所ということで今スタートしてございます。そしてこの成果を検証しながら、閣議決 定のスケジュールによりますと、来年度からの本格実施の準備を進めるということで、 途中で成果を中間的に集約しながらまとめていかなければいけないというのが基本線だ と思っておりますけれども、まだ、今ここでご紹介できるような具体的な状況には至っ ておりません。今申し上げましたように、この夏〜秋の段階で、ある程度の成果を集約 していって、その中から基本的なものを汲み取りながら、また本格実施の制度設計の中 に生かしていくということになるのだろうと思います。 ○吉田委員  もう一つだけ。 ○岩男部会長  はい、どうぞ。 ○吉田委員  そういう状況だとは思いますが、その際に、この児童部会として総合施設の来年度本 格実施に向けて多少議論で関われる余地があるのか、何か勝手に動いていって報告だけ 受けるのか。  その辺のところがわからないものですから、教えていただけると助かるのですが。 ○尾崎保育課長  本格実施に至りますまでにモデル事業で検証をして、その成果を汲み取っていくとい う作業と、それと基本的にその制度の枠組みといたしまして、財政措置ですとか、基本 的な職員配置基準のあり方ですとか、利用料のあり方ですとか、そういうまさに財政問 題、モデル事業だけでは決め難いようなお話もございます。  これは同時進行で検討していかなければいけないということだと思いますけれども、 それを基本的にはその枠組みを制度設計していく過程で、折にふれて、この児童部会で も、当然の事ながら、ご紹介、ご意見を賜るというスケジュールになろうかと思ってお ります。 ○岩男部会長  はい、どうぞ堀委員。 ○堀委員  税制調査会の資料からは、今までの所得控除を税額控除にするというようなニュアン スが受け取れます。この問題は、財務省あるいは総務省所管の税プロパーの問題だけで はなく、厚生労働省の児童手当にも絡む問題で、こういった形で進められると大変問題 ではないかと思います。厚生労働省としてなかなか他省所管の問題に立ち入るのは難し いと思うのですが、結論としては、こういう税額控除よりも児童手当の拡充という形に 振り替えたほうが良いと思います。税額控除あるいは税制上の扶養控除というのは、育 児支援施策としては目に見えないのですね。それから、税を納めていない人は税額控除 が受けられない、そういった様々な問題もありますので、なかなか難しいとは思うので すが、できるだけ厚生労働省もこういった問題に積極的に発言をしていただきたいと思 っております。 ○岩男部会長  はい、どうぞ。 ○高井総務課長  今の問いに対する答えとしては私見に近くなるかもしれませんが、できるだけいろい ろと発言していく必要があると思います。その場として、最初に紹介させていただきま したが、1ページの「少子化社会対策大綱」あるいは「子ども・子育て応援プラン」の フォローアップ等を行う体制を組むということを紹介させていただきましたが、政府全 体でこれを持つという位置づけになっておりまして、ここにありますようにプランに掲 げられた課題の検討を進めるとも書いてあります。先ほどプランの検討課題を紹介させ ていただきましたけれども、児童手当等の経済的支援も課題として掲げられております ので、当然この場でも大きく議論される。それは堀先生が言われましたように、児童手 当と税の関係というのが、やはり省だけではなく、政府全体の中でどう位置づけられる かということを議論しないといけませんので、こういう場で全体を見て議論されていく のだろうなと。  これはまだ立ち上がっていませんので私の考えですが、そういうものを受けつつ、部 会でも児童手当なりをどう考えていくかということを、またご意見を賜る場が出てくる のではないかと思っています。  それから国会の中でも、今年に入りまして、各政党がこの児童手当について意見を取 りまとめられておりまして、どれを見ても児童手当の拡充というのが書かれているとこ ろでございます。我々としては、そういうことも受けて議論をしていきたいと思ってお ります。 ○岩男部会長  はい、網野委員どうぞ。 ○網野委員  今の堀委員と課長のお話と正に関連するのですが、その流れとして所得控除からいわ ゆる税額控除的な方向も検討するということで、さらにその税源を直接子育て家庭に支 援する形で還元していくという、そこまで今の議論は関連してくるかと思うのですが。 そのまま児童手当とか税制もからむ育児保険もそうでしょうし、さらには先ほどご説明 ありました、利用者への直接補助方式といいますか、このようないわゆる子育て家庭に 直接さまざまな形で税が還元されるような方式については、当然児童部会で検討する必 要があるかと思いますし、社会保障審議会の中で関連の部会と合同して、というそんな 方向はあるのでしょうか。 ○高井総務課長  今すぐにお答えできませんが、その必要があればまたそういうことも考えなければい けないと思います。これまでですと、おそらく各部会がまとめたものを、親の審議会で 議論するという、そういうやり方ではなかったかと思います。合同というのはやったこ とがないのですが、必要があれば検討しなければいけないかと思います。 ○岩男部会長  他にいかがでございましょう。よろしゅうございますか。  それでは次の議題に進ませていただきます。  次の次世代育成支援対策推進法に基づく取組状況についてご説明をお願いいたしま す。 ○平野育児介護休業推進室長  育児介護休業推進室長でございます。まず私の方から次世代育成支援対策推進法に基 づきます、一般事業主行動計画の策定届での、届出状況についてご説明をさせていただ きます。資料の2番目でございまして、一枚めくっていただきまして、これが、6月末現 在での届け出状況を取りまとめたものでございます。下の四角の部分でございますが、 6月末現在で全国の一般事業主行動計画の策定届が全体で8,264社から出ております。そ のうちこの届け出が義務づけられております、301人以上の企業が7,453、300人以下が 811となっておりまして301人以上の届け出率は59.5%と約6割でございます。4月末現在 の値が36.2%でございまして、そのあと2ヵ月がたちまして60%程度まで来ているとい う状況です。  この届け出企業のうち、将来計画が終わったあと、次世代法に基づく認定申請を予定 している企業が301人以上の企業で24.3%、300人以下の企業では32.3%。そういう企業 が次世代法に基づく認定申請の予定があると届け出ております。  次に地域別の状況でございますが、次の2ページの表と合わせてご覧になっていただ きたいのですが、1番右の端が、いわゆる各県別の301人以上の企業のうち、届け出てい る企業、いわゆる届け出率の値を示したものでございまして、これを見ていただきます とわかりますように、地域によっていろいろばらつきがあると。最高で96.9%とこれは 福島県ですが、一方で1番低いところでは東京と埼玉が42.6%というふうにばらつきが 見られます。ただ、16の道府県ですでに届け出率が80%を越えているという状況でござ いまして、一方で先ほど申し上げましたように、東京、埼玉、神奈川という首都圏など 一部の地域で低いというふうな状況が見られております。  次に、3ページの方をご覧になっていただきたいのですけれども、これは届け出の内 容につきましてその企業規模別、あるいは産業別、そしてどういう行動計画の内容かと いうものを、若干サンプル的に分析したものでございます。一番届け出件数が多い、東 京労働局の方に届け出られた内容について分析したものでございます。  まず企業規模別でございますが、3ページの第1図でございますが、見ていただけまし たらわかりますように企業規模が大きいほど提出率がいいという形が非常にきれいに表 れています。10,001人以上ですと88%。一方301人から500人ですとまだ28%という状況 になっております。  次に、第2図は業種別の状況でございまして、業種別に見てみますと、電気・ガス・ 水道事業、金融・保険業、そういうところが非常に高くなっていると。続いては、製造 業、情報通信業、建設業、教育、学習支援業、そういうところが高い割合になっている 状況でございます。  次に4ページ、5ページでございますけれども、これは計画の内容について分析したも のでございます。まず4ページの方は計画の期間、どういう期間で各企業が計画を立て ているかを分析したものでございまして、一番多いのが2年計画で計画を立てていると いうところで35.9%。続きまして3年、5年とほとんど同じでございまして、それぞれ30 %です。ですからざっと言いますと、三分されていると言えるかもしれませんが、2年、 3年、5年という形で各企業が計画を作って、取り組まれているという状況になっており ます。  最後に5ページでございますけれども、計画に基づいて企業がどういう点について、 どういう事項について取り組もうとしているかということを分析したものでございま す。一番多いのが育児休業を取得しやすく、職場復帰しやすい環境の整備。例えば育児 休業制度を充実させるとかそういう内容であります。続いて、育児休業や時間外労働の 制限などの諸制度を労働者に周知をするという取り組みであります。続いて、時間外労 働・年次有給休暇という労働時間関係の取り組みが多くなっています。さらに働きなが ら子育てのできるようにと、小学校就学以前の子どもを育てる労働者が利用できる、短 時間勤務制ですとか、フレックスタイム制度、そういうものを実施していこう。男性の 育児への関わりという観点で子どもが生まれる際の父親の休暇の取得促進。さらに看護 休暇制度の導入と。こういう取り組みをしている企業が多いという結果になっておりま す。以上です。 ○岩男部会長  ありがとうございます。 ○高井総務課長  7ページ補足させていただきます。7ページ以降でございます。7ページが国と地方公 共団体が特定事業主ということで、職員に対して行動計画を作っておりますけれども、 その状況でございます。7ページのところで都道府県の状況は46都道府県、前回報告し たときには43でございましたので、3県増えているということで、未策定が兵庫県とい うことであります。  次の8ページが市町村の方でございまして、市区町村でございまして、策定済みが 1,565、未策定が(2)で810ということであります。前回報告したときには、策定が1,310 でありましたので、255増加しており、未策定が1,108だったのが、今回810ということ で、減っているわけであります。前回ご報告させていただいたように、下の方に(3)で 書いてございますように、未策定の理由として市町村合併があると、あるいは関係者と の協議が必要であるというようなこと。地域行動計画の後にするというようなことで遅 れているという報告があります。引き続き早急に策定が行われるように要請をしていき たいと思っております。  9ページが市区町村、都道府県の住民向けの行動計画という方でございまして、都道 府県においては46都道府県がつくられていて、富山県が残っていると。市区町村の方に いきまして、策定済みが2,314、7月1日までの策定済みが74で、残っているのが30市区 町村でございます。74は前回報告したところから74市町村策定済みになって、残ってい るのが30という状況です。以上です。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それではただいまのご説明につきまして何かご質問あるいはご意見がございました ら、お願い致します。  前田委員の方から何か、あるいは横浜について補足のご説明があれば。 ○前田委員  すみません。ありません。 ○岩男部会長  はい。どうぞ堀委員お願いします。 ○堀委員  前に言ったかどうか忘れてしまったのですが、こういう計画を立てたというだけでは あまり意味がないので、それがどれだけ実施されているかということが問題です。この 実施に関する統計は、取れるような仕組みになっているのでしたでしょうか。 ○高井総務課長  市町村の住民向けの行動計画ですと、毎年進捗状況を出してフォローしたいと思って おります。しかも予算を用意いたしまして、支援策も組んでいるところでございます。 予算面においても進捗状況を把握できますし、計画の進捗状況は把握したいと思ってお ります。企業の方は、先ほど室長が申し上げましたように、認定という行動で、達成し たかどうかというのが、認定という形で表れていくのかなと思います。 ○岩男部会長  ほかに何か、ございませんでしょうか。  認定を受けるため各企業で、自分のところは何を達成するかということを書いておら れますね。例えば男性の育児休業何人、というような形で出しておられますが、もし実 際に希望者がいなかったりするときに達成するためには、かなり難しくなる場合もある かと思います。ですから、育児休業も非常に弾力的に考えればいいわけで、期間はそれ ぞれ、柔軟に考えればいいということだろうと思います。なかなか達成目標というの と、その実現には難しいこともあるのかなという気がしながら、いくつか見ていたので すけれど。  はいどうぞ。 ○平野育児介護休業推進室長  認定を受けるための一つの条件として目標に掲げなくても、男性の育児休業者が出る ということが、認定の基準に盛り込まれております。その際に今部会長がおっしゃいま したように、育児休業自体は、期間がいくらまでないと、例えば1歳まで休まないと育 児休業ではないとなっておりませんので、何カ月という形でもかまいませんし、男性の 場合、基本的に1人でも出れば、認定の必要条件の一つは満たすということになってお りますので、私どもとしては、できるだけそれをクリアして認定を受ける企業が増えて いってほしいと考えております。 ○岩男部会長  いかがでしょう。何か他にご質問あるいはご意見ございませんでしょうか。  それでは次の議題に移らせていただきたいと思います。  児童相談所における児童虐待処理件数についてというのが次の議題になっておりま す。先月開催されました、全国児童相談所長会議において報告された、平成16年度の児 童相談所における児童虐待処理件数が出ておりますので、これについて事務局からご説 明をお願いします。 ○高井総務課長  資料の3でございます。「児童相談所における児童虐待相談処理件数」と表題を打っ ておりますが、速報ベースで毎年、前年度の児童虐待相談処理件数をまとめておりま す。それを6月に集計をしているというものでありまして、平成16年度の児童相談所で 処理した児童虐待相談件数は32,979件であります。下の方に受付件数と、処理件数の5 年間の分が載っていますけれども、次の2ページをお開きいただければと思います。統 計をとっております、平成2年度以降の数字でございます。平成2年度が1,101という数 字でございましたので、平成16年度までその30倍近くなっているという状況でありま す。上の説明にも書いてございますが、児童虐待防止法が平成12年に施行されておりま すので、その直前の11年度と比べますと平成16年では3倍という数字になっております。  平成16年度が少しまた対前年で増えておりますが、3ページにその要因とを考えられ るものを3点あげさせていただいております。一つはこれまでも出ておりますが核家族 化の進行や、地域の変化を背景とした養育力の不足。それから二つめ、三つめが今回さ らに伸びている原因かということでございますが、二つめの◯にあります、平成16年10 月に改正児童虐待防止法が施行されて、虐待通告の対象範囲が虐待を受けた子どもか ら、虐待を受けたと思われる子どもに拡大された、というようなことで、住民の方への 普及啓発、あるいは関係者の認識が高まっているという点が二つめです。三つめが平成 16年1月に大阪で発生した、岸和田事件というものが影響して、学校からの通告が増え たという自治体の声が多く聞かれます。この関係も多いのかなということでありまし て、4ページをお開きいただければと思います。  4ページがその各月の相談処理件数の推移であります。真ん中辺のこの四角でプロッ トしてあるところが1月から2月にかけて、15年度ですけれど、16年1月ですから15年度 の1月以降、2月、3月にかけて急に増えていると。それからその後16年度はひし形にな っている線でございますけれど、高い相談処理件数で推移しているということで、自治 体からのお話では、学校からの通告が増えているというのが三つめの原因という報告 を受けているところであります。  5ページが関連するということでございますが、児童相談所におきます、児童福祉司 の配置状況を参考に入れております。今年の4月1日時点で集計をしたものでございます けれども、下のところに、児童福祉司が、左から4つめの欄でございますが、2,003人と 書いてありまして、対前年でいきますと、右の方に1年前の数字1,813人と書かれてあり ますので、190人の増ということで児童福祉司が増員されているという状況が見受けら れます。各自治体ともそれぞれ努力をされているのかということであります。少し詳し く見ますと、その三角がついているようなところがございまして、例えば静岡県のよう に静岡市が児童相談所を作ったということで、県の児童福祉司が減ったというところも ありますが、一方その他のところでは、例の児童福祉司の資格要件が、今年から1年以 上の実務経験が必要になったということで、職員は配置されているのだけれども、児童 福祉司としてはまだ資格を満たさないということで三角がついている、いくつかの県が あると。こんなことを聞いているところでございます。  それから6ページ以降が、前回報告させていただきました児童相談所の実情調査の結 果の概要でございます。前回報告させていただきましたので、詳細は避けますが、その 後、見直しといいますか、さらに追加すべき事項を検討いたしまして、分量的には半 分以上付け加えがあったようなところがあります。詳細は避けますが、例えば8ページ の(6)職員研修の取り組みとか、(7)児童相談所職員に対するメンタルヘルスの関係。そ ういうものも付け加えさせていただきました。9ページの去年の取り組みの(10)のとこ ろも大きく付け加えさせていただいております。また12ページの加害ケースについて、 (3)でございますけれども、加害等受けたケースについて、件数を掲げておりましたけ れども、具体的な報告について、3つほど◯を付け加えさせていただいたり、次の13ペ ージの(4)、児童福祉司が対応するケースについてこれは新たに付け加えております。 (7)の研修体制、(9)の情報の伝達についての体制などについても付け加えております。 15ページの(14)についても書き加えておりますし、16ページの最後の(18)についても加 えたところであります。以上です。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それではただいまのご説明につきまして何かご質問、ご意見があればご発言いただき たいと思います。はい、どうぞ柏女委員。 ○柏女委員  この4月以降の、例えば児童相談所が182ヵ所から187ヵ所になっているというご報告 がありましたけれども、この4月からの児童福祉法の改正に伴う、市町村の取り組みの 実態とか、あるいは中核市等における児童相談所の設置についての検討状況とか、要保 護児童対策地域協議会の設置の検討状況とか、そういうところ、もし現段階でおわかり でしたら、教えていただければありがたいのですが。 ○山本虐待防止対策室長  虐待防止対策室長でございます。市町村の相談体制につきましては、この4月から順 次体制整備をしていただいているところでございまして、市町村の相談体制について、 どのような窓口で、職員を配置して実施をしているかや、県の児童相談所の後方支援体 制はどうなっているか、さらに要保護児童対策地域協議会やネットワークの整備状況に つきまして、6月1日現在で各自治体に調査をかけているところでございます。これにつ きましては遅くとも秋口ぐらいまでにはまとめまして、ご報告をさせていただきたいと 考えております。 ○岩男部会長  はいどうぞ、無藤委員お願いします。 ○無藤委員  知りたいことなのですが、児童虐待相談件数が急増しているわけですが、その中の適 当な分類によってどのあたりが増えたとかの統計はあるのでしょうか。虐待の種類と か、深刻さとか、何か適当な分類ですが。 ○山本虐待防止対策室長  児童虐待の相談処理件数につきましては、現時点では、前年度の速報値ということで 処理件数がいくらだったかということのみ公表させていただいております。具体的な相 談受付の相談種別でありますとか、虐待のうち身体的虐待、心理的虐待などの状況はど うなっているか、主たる虐待者は誰かなどにつきましてはもう少し先にまとめさせてい ただいております。  ちなみに14年度の状況について申し上げますと、虐待の経路別相談件数を見ていきま すと、岸和田事件の影響がありましたので、学校からの通告の割合が12%から15%と3 ポイントほど増えるという特徴が見られています。主たる虐待者は、実母が6割という ことで大変多いということですとか、虐待相談を受けた後でどういった処理をしている かを見ますと施設入所、里親等委託、その他在宅支援なのかということでいきますと、 在宅支援が80%で大変多いという結果が出ております。このような詳細な結果は後ほど まとめて公表させていただくということになっております。 ○岩男部会長  他にいかがでしょう。  時間があるようですので、前回児童相談所の職員が虐待者の家庭を、例えば夜遅く行 かなければいけないというようなことで、場合によってはその相手が泥酔していて、非 常に身の危険を感じられるというような実態があることを踏まえてそのいろいろ議論が あったように記憶しております。その時に、私が地域の他の機関との連携、特に警察を もっと巻き込んだらどうかというようなことを申し上げたときに、警察が入ると信頼感 が崩れる恐れがあるからというご意見がございました。一方警察の方は、24時間体制で 活動しているわけですけれども、警察も児童虐待が増加しているということを踏まえ て、女性の警察官を増やしたり、警察は警察でこの事態に対する取り組みを強化してお られます。そういうことを考えますと、それなりの訓練を受けている警察官を、私は巻 き込むのは必ずしも、最初から信頼関係を崩すというような形で考えない方がいいので はないか。警察の方も今ソフト化を図って、いろんな努力をされておりますので、もう 少しそのところは連携があっていいのではないかと思っております。  たまたま、前回以降国家公安委員長から資料をちょうだいする機会があったものです から、そういうことも含めて、こちら側の対応も考えるということであっていいように 思いましたので、少し付け加えさせていただきます。  他に何か。どうぞ渡辺委員。 ○渡辺委員  虐待の問題がやはり現場では手一杯ということだと思います。そして現実に日々小児 科の中に要保護児童が、身体症状などの理由で入院してみたら、実は虐待されている子 どもであって、その場合は私どもが病院の中で、医療的にケアしながら、いろいろとケ ースワークができますからいいのです。ふたを開けてみたら、在宅支援という形しかで きないために、もうすでに数年間、一生懸命に児童相談所の児童福祉司の方たちが家庭 訪問しながら、家庭支援センターの方たちと取り組んでいて、もうすでに数年たってい て、そしてどんどん家族病理がひどくなって、悪循環になって、ついには小学校の先生 が学校で危険だから、窓から飛び降りようとするし、というところで動いたケースなど が来ているのですけれども、今は岩男先生がおっしゃったように、児童相談所が中心に なってやる場合でも、周辺の病院、小児科それから地域のいろんなネットワークが絶対 に必要で、特に毎回申し上げますけれども、その児童相談所に押しかけているケースが 大変多くございまして、そしてたまたま私どもが関与したときに、すぐに児童相談所の 方たちが来ていただいて、これは明らかに児童精神医学的に重度の反応性愛着障害だか ら、このまま在宅支援では、何をやってもよくなる見通しがないから、思い切っていい 養護施設で保護しつつ、そういった一つの権限を、児童相談所が持ちつつですね。子ど もと面会して親と親子関係をやっていくプログラムなどを作っていったらいいじゃない のかと個々に思惟しているのですが、最後の時に、例えば本当に権限を発動する時に、 児童相談所と親子が喧嘩になったりする時に、私どもが一緒にお母さんやお父さんたち に最後の断念をさせて本当に納得してもらう時に言うのは、「お父さん、このままね、 あと1ヶ月おいたら、あなたが逮捕されますよ。」と。「地域の住民が皆、これはひど い虐待だというふうに思っていて、あなたはあなたなりのしつけであっても、申し訳な いけれども、私どもの範疇からいけば、これは逮捕ですよ。だからもう一回考え直し て、そしておまわりさんはあなたを逮捕したくないと思うから、ぜひ今の時点で、一度 子どもさんをお預けください。それがお父さん、お母さんへの応援ですよ。」という話 などしていくのですね。  1ケース、1ケース、ものすごく時間がかかり、それからものすごく親の敵意を浴びて いかなくてはならない。その時にどれほど児童福祉司の方たちが疲労困憊するか。その 疲労困憊する時に、そのバーンアウトを防ぐひとつの大事な要素としては、複数の機関 が児童相談所の言う通りにいたします、と。児童相談所の先生が頑張るのではない、私 たちがバックになってやりますというチームが組めるかどうかなんですね。  今現在施設に入らなくてはいけない子どもたちがあちこちにいても、施設はいっぱ い、そして一時保護所でとりあえず1ヶ月、2ヶ月やるとしましても、一時保護所はいっ ぱい。  そうしますと、一時保護所で職員がちゃんと子どもたちを把握できているか、あるい は子どももスタッフも危険がないかということを、第三者がモニターをしてあげる必要 がある。そのモニターというのは、今岩男先生がおっしゃったように、地域社会も子ど もを大事にするという視点からソフトな形でモニターする。  となりますと、私はぜひ一時保護所に、一時保護所の子どもたちがどう思っているか ということを、児童相談所でない第三者がモニターをして、そしてそれをちゃんと記録 して、いつでも例えば私ども専門機関が、「お願いしたケースはどうなっていますか? 」と言った時に、「ちゃんと担当者が見て、いるのを確認しました。」とか、そういう 形をとっていただきたい。  そのかわりに婦警さんなどは「こんばんは。頑張っているね。お父さん、お母さんか ら切り離されて大変だけども、お父さん、お母さんも頑張っているから、もうひとつ先 生の言うことを聞いて、もう2週間いようね。」とか言ってくださる第三者がいますと、 児童福祉司さんたちがすごくやりやすくなるのですね。  ですから児童相談所がパンク状態の時に事故が起きたり、二次障害が起きたり、つま り子どもたちが児童相談所の中で劣悪な状態にどんどん入っていくということをコント ロールするためにも、今おっしゃったような市民の側の代表としての婦警さんとか、そ ういうものをぜひ積極的にやっていただきたいと思います。 ○岩男部会長  他に何かご発言は?はい、網野委員お願いします。 ○網野委員  先ほど三位一体改革で税源移譲の新たな方向性が出ているというお話がありまして、 今も虐待対応と関連して考えていきますと、先ほど紹介いただいた児童相談所実情調査 結果概要で、児童相談体制が非常にいろいろなことで努力して見直しをしていることが よく分かります。  7ページにありますように(3)の二つ目の丸で、虐待対応班を設置しているというとこ ろが自治体で多くなってきていますし、初期介入班、分離班、家庭復帰班、このように 対応をどうしたらよいか、そうとう努力している方向がいろいろ出てきていますし、さ らに今日新しく紹介されましたところで、9ページの(10)で、いろいろな独自の取り組 みということも模索しているのがよく分かります。  虐待対応のための専従組織を設置するこの方向は、今の渡辺委員の話とも関連するの ですが、やはり相当なエネルギーと配慮を必要とするこの仕事の中で、私はここまでは まだ極論としては言えないのかもしれませんが、やはり現行の児童相談所体制の枠組み の中であくまでこれを維持するのか、それとも例えば「子ども権利擁護センター」とか 「人権擁護センター」というふうなものを自治体が設置し取り組む体制で、むしろ児童 相談所はそれに相当な協力をするという体制で、例えば、初期介入とか分離という点で はそのようなものをいろいろ検討してみたらどうか、というふうに思います。  そのようなことが例えば、税源移譲の問題で、児童養護施設とか乳児院その他さまざ まな措置という業務に絡む内容が、地方自治体の主体性といいますか、そういう方向で みられる部分も確かにあるとは思うのですが、以前からいろいろ議論され、またこの児 童部会でも意見が示されているように、本当に子どもの権利が侵されている、侵害され ている、ということに対する責任を、自治体の責任とともに国の責任ということを考え た場合、いわゆる公的責任の議論はいろいろあるかと思いますが、自治体が裁量し、判 断し、スタッフを抱えて、経費を考えると、おのずから当然格差が出てくると思います し、その点で次なる方向がこの面での制度的な見直しと言いますか、それを考えた場合 に、例えば、一時保護についてもそのような仮に「子ども権利擁護センター」というよ うな機構と機能としても考え、当然それは特に都道府県中心の自治体が設置して進める ことになると思うのですが、そのような点で一方的な税源移譲ということではない、い わゆる本来的なセーフティネットといいますか、そういうことに関しては、特に虐待対 応と言うことで、次なる対応策、あるいは政策なり施策を展開することも検討してはい かがかなというふうに思います。 ○岩男部会長  三位一体の議論では、金額の話に議論が集約していくような感じがいたしますが、問 題はその中身だと思います。今網野委員がおっしゃったようなもっと前向きな中身で、 必要なことをいかにやっていくかという、そこを中心にして、どこが責任をどういう形 で持つかということを考えなければいけないということなのだろうと思うのですね。  他に何かご発言はございませんでしょうか?はい、前田委員、どうぞ。 ○前田委員  網野先生が今おっしゃったところと少し問題意識が似ているのですが、児童相談所で すべて抱え込むのは非常に難しい状況になっています。横浜市は三つ児童相談所がある のですが、四つ目を今作ろうとしているのですが、児童相談所で全部抱え込むのは無理 です。やはり市町村も行政改革や公務員の定数削減という波をかぶっているわけなので すが、一方でこの虐待に関しては、まだ案の段階なのですけれども、できれば各区に虐 待の予防できるような専門員の人を配置できないかと考えています。特に横浜市は大き いので児相が三つあっても四つあっても、実際に今度は家族の再統合がうまくいって地 域に戻す時も、地域の情報や地域のネットワークがそれほどあるわけではないのです ね。  ですから、児相と地域をつなげるような虐待の予防、もしくはそれからの再統合です ね。それらを支える地域のネットワークを手配できるような人を配置しなければならな いのではないかなと思っています。  しかし経験のある児童福祉司は少ないので、例えば経験の豊かな、子ども家庭支援セ ンターなどで経験を積んだ、保育園の園長先生の経験者がいいのではないかと、今いろ いろ模索している段階ですが、いずれにおいても、網野先生がおっしゃった通り三位一 体改革にかかわらず、今公的部門は非常に財政難なのです。  そういう中で児童関係の予算が横浜市は非常に増えていますが、それは実はほとんど 保育所にとられておりまして、虐待関係はまだまだ少ないので、その中でどう割り振っ ていくことかということが問題です。  それからもうひとつ、直接この児相の問題、虐待の問題にかかわらないのですが、渡 辺先生が言っていた通り、一時保護所が非常に満杯なのは、親子分離をはかって、養護 施設なり措置しなくてはならない子たちを、今度は養護施設が満杯で措置できないので すね。  養護施設は、ここにおられる先生方は皆さんご存知だと思うのですが、一時的な事情 で親子一緒に暮らせない場合に保護するようなことだったと思うのですが、今はほとん ど養護施設に来た子どもたちの大多数は18になるまで施設に滞在します。1人の子を措 置しますと、ずっとその子が何年もおりますので、空かないということもあります。  この前も私は改めてもう一度養護施設を回ったのですが、特に乳児院に措置される子 どもたちのかなりの割合が、10代の妊娠によって、親の養育放棄で来ています。  10代の妊娠・結婚が必ずしも破綻に到るのではなくて、非常に素晴らしい若いお父さ ん、お母さんもいっぱいおられるのですが、結婚に至らないまでの交際の中で妊娠して しまって、親にも言えなくて、出産に至るような場合が見られます。そういう意味では 非常に時間がかかるのですが、性教育の充実も必要です。それから高卒の子たちの定職 がないので、結婚しても安定した家計を担えないということもあります。  家庭崩壊に安易につながるということで、厚生労働省は雇用のほうのニート対策やフ リーター対策もしていると思うのですが、非常に根深い社会現象的なものが出てきてい ます。定職がなく経済力もない10代の子たちが、男女交際の時間があるので、その過程 で満足な避妊の知識もなく妊娠してしまって、結局養育する力がないので、乳児院に来 てしまう。ところが育てる気はないのに親権放棄はしなかったりする。それで結局、里 親に養子として出すこともできなくて、施設にずっといる子どもたちが増えておりま す。  これは非常に時間がかかることなのですが、あらためて、今「命の教育」とかいろい ろありますが、思春期の子にかけての性教育みたいなものが非常に重要かなと思ってい ます。  横浜市の場合、学校現場でどこまで性教育をするかということに非常に賛否両論あり まして、学校現場を離れた、社会教育的な部分で性教育をできないかということも委員 会を立ち上げて検討しています。ぜひ厚生労働省のほうでも力を入れてやっていただけ ればと思います。  文部科学省サイドの学校サイドでするのは、なかなか子どもたちの発達段階に差があ りますので、限界があるのですね。  しかし深刻な問題を抱えている人もおりますので、むしろ学校現場に押し付けずに、 保健所や地域で何かできることをしたほうがいいのではないかなと、今考え直していま す。ここに母子保健課長もおられますが、ぜひよろしくお願いします。 ○岩男部会長  今のお話をうかがっていて、一昔前のアメリカのような状況になってきたという感想 をもちました。アメリカは最近になって10代の妊娠がようやく減ってきたというふうに 聞いておりますが。  ただいまの前田委員からのお話にいくつか申し上げたいと思うのですけれど、実は今 日の新聞で報道されておりますけれども、昨日男女共同参画会議で「男女共同参画基本 計画に関する検討結果」の報告があり、官房長官から総理に答申がありましたが、基本 計画の中で、性教育のことに触れております。  実はここのところを大変に問題になさった方が自民党の議員におられまして、いわゆ る「過激な性教育」ということで、私も性教育にはこれまでまったくかかわってきてお りませんし、直接的には何もしていないので、どういうものが過激なのか正直言ってよ くわからないですが、現場の先生方の話を伺いますと、特に知的障害を持ったお子さん が性的な被害に遭うケースがあって、そういうところでかなり具体的な教材を使わない と、わかっていただけないというようなことで非常に苦労してやっている。それを過激 な性教育の方で非常にセンセーショナルな形で問題にされるというような場面もあるよ うなのですね。  もし現在の教材がふさわしくないのであれば、他にこういう形のやり方がいいのでは ないかというような代案を出していただけるといいのですけど、そういうものはなし に、性教育はいけないと、こういうような決めつけかたであったように思うのですね。  そういうご批判を踏まえて、その基本計画の検討では「発達段階を踏まえて」という ことを明記し、そして「指導要領の範囲の中で行う」、また、「性教育の好事例を集め て現場に配布する」というようなことも書きました。  ただどうしても教育現場がかなり中心的な役割を担っておられるのも現実だと思うの で、そちらの方をいろんな形で応援していかないといけないのだと思うのですね。  最近産婦人科のお医者様から伺ったところでは、年間人工中絶は日本で30万件なのだ そうですね。この少子化の時代にいろんな対策をして、不妊治療に多額の補助を使っ て、年間1万人ぐらい生まれるのでしょうか?ちょっと正確な数字は分かりませんけれ ども、30万件は本当にもったいないというか、ちゃんと子どもを生み育てられるような 形で妊娠し、子どもを育てることができればいいのにと、思いますけれども、今おっし ゃったような経済的な基盤がないと子どもを育てられない。  それでも親権は維持していたいとか、子どもを育てたいというのは、本当にかつてア メリカでもあったことで、人形ではない子どもを高校に通いながら育てるというのは容 易なことではないわけで、結局、子どもにも被害がおよぶということで、性教育という のは非常に大事だと思います。  また特に最近性感染症が非常に増えているというようなことを伺います。いろいろな 問題を踏まえて性教育を、もっと進めなければいけないのだろうというふうに痛感して おります。  長々としゃべってしまいましたが、何か他にご意見がなければ次の議題に移ります。  次は、このたび設置されることになりました「児童自立支援施設のあり方に関する研 究会」について、事務局からご説明をいただきます。 ○山田家庭福祉課長  家庭福祉課長の山田でございます。  資料の4でございます。  まず関連することからでございますが、以前この部会でも、2回にわたって少年法の 改正につきましてご議論をいただきました。  ここでいただいたご議論につきましては、法制審議会の方にもいろいろ申し上げまし て、3月3日付けで委員の方々には送付させていただいておりますが、ある程度意見が盛 り込まれたような形で閣議決定されているということでございます。  今、国会の方ではまだ審議の見通しがたっていません。今国会中に審議されるかどう か微妙な情勢でございます。  そのこととも若干関連するのでありますが、今回の少年法の改正の中に、14歳未満の 少年の少年院送致といったことが盛り込まれているということでございます。  これはあくまでも厳罰化という文脈の中ではなくて、その少年の育ち直しに有効であ るという場合にこういった選択肢を設けるという趣旨でございますけれども、ここの趣 旨のところにも書いてございますように、児童自立支援施設と少年院との役割なり機能 分担についての議論というものも焦点になってまいります。  法制審議会の議論の中でも、ある意味競争関係におかれるという中で、それぞれの施 設がどう磨きをかけていくかということが重要である、という指摘をいただいていま す。  そういった状況を踏まえまして、児童自立支援施設における育て直し等の支援援助機 能についても、全般的な検証を行って今後のあり方を検討していくことが必要ではない かということで、今回研究会を設置するということを考えているわけでございます。  検討の視点ですが、三つぐらいを挙げてございますが、ひとつは、児童自立支援施設 の場合、県立の施設が非常に多いということで、そうしますと特に交代制の場合がそう なのですが、県の人事システムの中でその自立支援施設の職員が異動していくというこ とになりますと、大変技術を要する仕事であるわけでございまして、そういった技術が きちんと確保されるような体制が作れるかどうかというところが、こういった人事シス テムとの関係でどうなのかということも、ひとつの論点であろうかというふうに考えて います。  このあたりのところをどういうふうに実際の人事システムとの間でなじませていくの か、ということがあろうかと思います。  もうひとつは、少年院の場合は国がすべて管理をしているということで、それぞれの 施設が処遇技術等々を共有化している仕組みが作られているのですが、これも自立支援 施設の場合は県ごとにそれぞれが施設を運営しているというところがございまして、な かなか児童自立支援施設全体としての処遇技術というものを、向上なり底上げしていく という仕組みが十分ではないというところがございます。  特に、従来、夫婦小舎制という形が典型的な児童自立支援施設の運営の仕方でござい ましたけれども、時代の流れの中で交代制の処遇というのが増えてきている中で、処遇 技術について、全国的にそのノウハウを享受していく仕組みをどう作っていくのかとい うことが、非常に大きな課題になっているということでございます。  三点目ですが、ご案内のように児童自立支援施設を長期的にみまして、入所児童がか なり減少してきております。  我々としては、決して非行等の問題に対する対応について社会的なニーズが低下して いるとは思えないわけでございますが、そういう状況の中でどうしてこういった現象が 起こっているのか、社会的ニーズを十分に捉えていないとすれば、そこはどのような事 を考えていったらいいのかというようなことも論点のひとつであろうと考えています。  このような視点に基づきまして、2ページのような検討課題を掲げてございますけれど も、一点だけ申し上げますと、一番最後の関係機関等々の連携機関についてということ で、少年院・法務省との連携のあり方と、法務省の方も少年院で年少者の処遇をすると いうことについては、やはりいろいろとあらたに考えないといけないことがあるもので すから、自立支援施設からいろいろノウハウを学びたいということもおっしゃっており まして、我々も少年院のいろいろなやり方についても学ぶところがあるだろうというこ とで、現在、少年院、法務省、それから児童自立支援施設、厚労省の間で勉強会を持ち まして、いろいろお互いのノウハウについて学びあうということをやっているというこ とでございます。  こういったことも含めまして、今後も「児童自立支援施設のあり方」について検討を していきたいということでございます。  4ページに研究会の名簿が掲げてありますけれども、児童部会の方から津崎委員に座 長という形でお入りいただいて、児童自立支援施設の実務者も入れて、有識者の方々も 入れた形で議論をしていただこうということを考えております。  また、この研究会の検討の経過の中で、児童部会の方にもいろいろとご報告なりご相 談をしたいと考えているところでございます。 ○岩男部会長  ただいまの件について、何かご質問、あるいはご意見がございましたらお願いいたし ます。  はい、どうぞ、柏女委員。 ○柏女委員  児童自立支援施設のあり方について、国のほうで研究会が開催されることはとても期 待をしています。  その議論の際に、これから始めるのであると思いますので、感じていることをちょっ と申し上げさせていただきたいのですが、1点目は児童自立支援施設の充実方策につい て検討する時に、二つの視点を忘れてはならないなと思っています。  ひとつは、児童自立支援施設の固有性の問題です。  その固有性の方に着目をし過ぎますと、もうひとつは社会福祉施設、児童福祉施設と しての普遍性の問題、あるいは県の組織であるということの普遍性の問題、ここがなお ざりになってしまうのではないかという危惧を持ちます。  つまり児童自立支援施設の固有性を追求すればするほど、他の社会児童福祉施設、児 童養護施設や情短施設や、乳児院はちょっと違いますが、そうした社会的養護の体系 と、今同じようにユニットケア化とか地域小規模児童養護とか、自立支援とか、そうし た同じ歩調で動き始めていますが、その歩調とこの児童自立支援施設の今後の見直しに ついての視点を、できるだけ合わせていくという視点が私は必要ではないかなと思って います。これが一点目です。  もうひとつは、これはほとんどが県立ですので、県の組織、つまり県の人事システム との関係で普遍性を追求していかないと、また福祉職の人事が固定化してしまうことに よって、それでなくても児童自立支援施設の人事は固定化をしている問題を抱えていま すので、いたずらにここで専門性を高めてしまうとまたさらに人事が固定してしまうと いったような問題も生じるので、固有性の追及ということは大切だと思いますが、二つ の面での普遍性の視点というものをぜひ忘れないような検討をお願いができればと思い ます。  これが一点目です。  もう一点は児童自立支援施設の利用のあり方についての検討もこの中に入っていない ようですけれども、考えていただくといいのかなと思います。  一定数家庭裁判所で保護処分による入所があると思いますが、この動向がどうなって いるのか。  この動向とそれから児童相談所の入所決定、家裁決定方式とそれから県の行政処分に よる入所と二つあるわけですけれども、それはどう考えていったらいいのか。  例えばそれによって入所してきた子どもたちの権利の問題とか、そうした点をどう考 えていったらいいのか。  こうした視点も併せて考えていただけるといいかなと思いました。  例えば今回の児童福祉法の改正では家裁決定方式による施設入所の場合は、虐待の事 例ですと2年を限度として更新制を取るということにしたわけですけれども、非行の場 合にそうした方法を取る必要が本当にないのかどうか、入ったら入りっぱなしというの が児童自立支援施設の大きな他の少年院との違いということになると思いますので、こ うした入り口と出口の問題についてと利用方法についても併せて検討していただけると 有難いと思います。  3点目は幅広にということで、民間委託の可能性は本当にないのかどうかと。  今、民間は2箇所ありますけれども、民間委託の可能性は本当にないのだろうか、と いうことも併せて幅広にご検討いただければと思います。 ○岩男部会長  他にいかがでしょう。これからの検討に向けて何か今のようなご提案・・・。どう ぞ、渡辺委員お願いします。 ○渡辺委員  おそらくこれからの時代家庭機能が崩壊しているというのが日本全国の状況である場 合に、児童自立支援施設の果たす役割はやはりますます重くなると思うのですが、ここ に主旨のところに明記されてある「育て直し」という機能を発揮しますとこれは例えば 小児精神保健の側からいいますと、いわゆる治療的な思春期精神科病棟のもう少し生活 場みたいな機能を持たざるを得なくなるので、そうしますとやはりこの施設の中にもう 少し思春期精神科医の方がどなたかお入りになった方がいいのではではないかというふ うに思います。  つまりその「育て直し」というものがその子の神経の精神病理が出てきて、破壊的に 手首を切ったり、自分を傷めつけたりということの意味を施設の職員が生活しながら子 どもたちにもう一度それが何を意味するのかを体験し直しながら、治療ではなくても治 療的に関わるかと。  それから非行の子どもたちのとても大事なことはまだリストラクチャリングがすごく 可能な時期の10歳から15歳ぐらいの時にやはりいい構造、治療的な構造のところでもう 一度家族体験に近いものを体験し直すことによって、それがうまくいきますと将来です ね、過去のことはともかくとして、新しく社会人として、それから親機能を持った親に も育て直っていく可能性が高い、つまり病理の世代間伝達などをそこで断ち切ることが 可能ではないかと思うんですね。ですからそこを情短施設でやっておりますし、する私 共も病棟でやっておりますけれども、やはり「育て直し」というものが的確にその子固 有の問題にちゃんと葛藤や家族病理に取り組みながらやっていくような機関というもの は、今の段階で皆が広く児童精神科医や成人精神科医や小児精神保健医が本気で考え始 めていますので、ぜひ福祉や司法に加えてそういう人たちが応援団として加わるように 考えていただければと思いますけれども。 ○岩男部会長  他に何かございます。よろしいでしょうか。  検討課題の中に保護者の指導支援のあり方というのも入ってますが、これがやはりこ れから非常に大事なことで、それはコミュニティを巻き込んでしかうまくいかないとい うような面もあるように思いますので、少し幅広く考えてご検討いただければ有難いと 思っております。  確かに今渡辺委員のご指摘のように、委員の名簿を拝見しますと思春期精神医学のご 専門の方はお入りになってないようですけれども、またヒアリングその他でそこを補う というようなことができるかと思いますので、その点もぜひよろしくお願い致します。  それでは最後の議題でございますけれども、先月公表されました「小児科産科若手医 師の確保育成に関する研究」の報告書について事務局よりご説明をお願いします。 ○佐藤母子保健課長  母子保健課長佐藤でございます。  これまでお話ございました内容と少し視点と申しますか、毛色が違った内容かと思い ます。  ただいまお話ありました6月28日に「小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究」 の報告書が公表されましたので簡単に説明させていただきます。  報告書の中身に入る前にこの報告書といいますか、研究が行われるに至った背景につ いて2、3点触れておきたいと思います。  まず第1点目は子どもが健やかに育つ環境という中で医療というものがやはり重要で あるということは間違いないであろうと思います。安全安心にお産ができるというこ と、それから生まれた後に病気や怪我をした場合であっても身近なお医者さんに診てい ただけるということが非常に重要なことであろうと思われるわけですが、その根幹に当 たる部分が少し今ぐらついているというところでございます。  それからポイントの2点目でございますけれども、医師の不足、小児科・産科医の不 足という視点で研究が進められているんですが、実は長期的に見ますと、我が国の医師 の数というのは、先進国の中でも最高水準のレベルにまで到達すると、こう予測されて おります。  ちなみに申しますと、人口10万単位で多いと言われるフランスやドイツが人口10万単 位で350、つまり10万人の人口で350人ぐらいのお医者さんがいるわけですけれども、こ のままのスピードで類推しますと20年後、30年後に人口10万単位で500を超えるだろう と推定されておりまして、長期的には相当の過剰になるということが見込まれておりま す。  これが2点目でございます。じゃあなぜ、今不足とか不足感と呼ばれるものが出てき ているかということですが、これが3点目になりますが、まず一つは、幾つかの要素が 同時に起こってきたということであります。  かつていわゆる第二次大戦前後に軍医さんと申しますか、軍医さんを養成するために できた医学専門学校等々があったのですが、こうしたところの卒業の方が大体80歳かそ れを超えるくらいの年齢になってらっしゃって、社会的にリタイアされる年齢であると いうこと。  それから二つ目はおそらくは臨床研修制度というのが平成16年度からスタートいたし まして、一時的に市中病院に医者が流れ込んだんですが、このことがかえって大学本体 のお医者さん不足を招く結果となって、そのために少なくなったお医者さんを補充する ために、市中病院からかなり年次の高い(指導医クラスと呼んでいますけれども)お医 者さんを大学に呼び返すということが起こっているということであります。  一方、大学本体の話としましては、研究重視と申しますかCOE構想みたいなものが併 せて出たり、あるいは大学院重視政策がとられましたために、一部の大学では、大学院 の定数を相当に増やしまして、臨床よりも研究重視というような施策をとられたという ことがあります。  それから細かい話を致しますと、関西医科大学研修医訴訟というのがありまして研修 医は労働者であるか否か、研修医に労働基準が適用されるのか否かというようなことが ありまして、医師といえども労働基準をきちっと守るべきだという動きがにわかにでて まいりました観点から、いままでのように連続32時間労働とか40時間労働というものが 許されない雰囲気が出てきております。  これ以外にも、名義貸し問題ですとか、僻地派遣に伴います大学医局の謝礼問題、こ ういったことが一時に起こってまいりまして、医師の確保というのが一時的だろうと私 どもは類推しますけれども、そういうものが起こっている。  それで、こうしたこと以外にも小児科・産科固有の問題があるということでご議論い ただいたのがこの研究になります。  1枚めくっていただきまして、2ページ3ページ目は研究の体制でございまして、詳細 は省略いたしますが、大きく4つの分野に分かれてご議論いただいたということです。  その概要でございますが、4ページ以降からスタートいたします。  まず現状で小児科と産科について分けて書いております。  詳しく説明している時間がありませんが、ポイントだけ申しますと小児科医そのもの の不足があるかどうかという点につきましては、実は医師はこの5年、6年、或いは10年 というスパンで見てみますと、小児科医自身はそれほど減っているとかということでは なく、むしろそれなりに増えているということにあるようです。  但し、医師の偏在とか役割分担の不明確さというのはあるようです。  もう少し説明しておきますと地域によって非常に偏在がある。例えば都市部と地方。 それから地方の中でも県庁所在地や医学部所在地とそれ以外、例えば沿岸部であるとか 山間僻地だとか、そういったところで著しい偏在があります。  ざっと申しおきますと人口10万台で見たときに100倍とかですね、50倍とかそういう レベルで分布の偏りがあるということです。  それから役割分担の明確さについて申しますと、開業医がやや近年増える傾向にあり ます。  これは、勤務医がかなり厳しいといいますか、労働条件も非常に厳しいというところ から開業する方も増えてきている。  しかし実際に開業なさっている方が夜間の診療をして下さっている割合は非常に少な いということになりまして、数少ない勤務医の先生方に過重な労働が集中すると、こう いう状況にあるということがいわれています。  それからその下の産科ですけれども、産科は小児科以上に厳しい状況にありまして、 入局者は明らかに減少していると。  高齢化と合わせまして最近女性医師が急増しております。これはある意味いいことな のかしれません。  一部の女性雑誌等で男性医師にお産をみてもらうのは嫌だというような声もあったよ うなこともありまして、明らかに女性医師が急増しております。  しかしこのことを併せて女性医師の継続就労ということをしていかなければならない のですが、今は過渡期にありまして、女性の産科医が産科当直という特殊な当直がある のですが、そういう当直をしながら時には帝王切開のような緊急手術もこなしながらと いうことが実際にはなかなか難しいということが言われております。  また、分娩というのはそもそも病気ではなくて、自然な人生の営みの一つなのだとい うことで安全安心に生まれて当たり前という風潮があるようですが、少し20年前とか30 年前を振り返りますと、若い女性の死因の第一位はお産だったわけで、お産というのは 相変わらず危険な作業であることは間違いないわけですけれども、どちらかというと、 安全に安心に生まれて当たり前という状況になりましたために、訴訟が非常に多いとい う状況が増えていまして、そういったことも言葉が適当かどうかわかりませんけれど も、お医者さんの中に嫌気がさすと申しますか、こういう労働に嫌気がさすという方も 増えているようです。  それから5ページ目からいよいよ提言になるわけですけれども、今申し上げましたよ うなことの裏返しがすべて提言になっておりまして、一つは勤務条件を改善して欲し い。多様な勤務形態にしてくれ。あるいは労働基準法等関係法令等を遵守できるような 常識的な勤務時間にできないか、とか。  それから二つ目は女性医師が増えているのであれば、女性のお医者さんが仕事と家庭 を両立できるような就労環境はできないか。  それから3)はなかなか難しいかもしれませんが、小児科・産科医師バンクというよ うな人材バンクのようなものはつくれないか。  それから少し飛びまして、5)6)は大学の問題ですけれども、大学病院の充実、ある いは大学の教育体制の充実、こういったようなことが提言されています。  以下小児科・産科を目指す方に対して特別な奨学金を出してはどうか。  東北の数県ではこういうことを既にやっているわけですけれども、奨学金制度をだす とか。  あるいはよく言われる話ですが、小児科・産科は不採算なのでないかと言われている ので、診療報酬上に、やっぱり手厚い評価をして小児科・産科という診療科が撤退をし ないようにしてあげるということが非常に重要であろうかと思います。  それからここまでお医者さんが減ってまいりますと、コメディカルと言われる医師で ない人の活用もしないと、短期的には乗り切れないじゃないかと、やや危機的な話があ りまして、それが11)ですけれども、看護師とか助産師の一部による応援も今後は重要 になってくるのだろうと言われております。  7ページは小児科固有の問題でして、今日は詳しく説明致しませんけれども、ある程 度小児科医をバラけてと申しますか、薄く広く分散するよりも、一定程度集約をして、 例えば5人の小児科医がいたときに、5人が大きな五つの病院に分散して勤務するより も、二つとか一つとかの病院に集中して分散をした方がいいのではないか、そうでない とバーンアウトしてしまうのではないかということが提言をされております。  少しめくっていただきまして、産科もほぼ同様でして、NHKの報道とかいろんなとこ ろでも国民の皆さんの声を聞きますと、身近なところでお産をしたいという声が強く て、理想的にはそうなのですけれども、東北や北海道の一部ではそういった理想を許さ ない状況になっておりまして、そうした中でやはりさっきの小児科医と一緒ですけれど も、一人産科医とか二人産科医ということになりますと、例えば緊急の手術になったと きに、協力をして手術をするとか、協力をしてお産を介助するということできなくなっ てまいりますので、これは一部の地域では身近な場所でお産をできないことがあって も、やはり分娩の場所を集中化してお医者さんにも気持ちよく働いていただいて、しか もの安全も確保するというような方向しか現時点ではとれないのではないかといわれて おります。  こうしたことが8ページから9ページに書いてあります。  以上、前語りが多くなりまして、報告の部分が短くなりましたけれども、提言の部分 の中には今ご覧いただきますように短期的に実施できるもの、それからなかなか難しく て中長期的な課題となるもの、それから膨大な予算や診療報酬上の対応を必要とするも の、あるいは必要としないもの、あるいは制度的に抜本的にも直さなければいけないも の、さまざまですけれども、今後この中でできるものできないものを取捨選択しながら 着手できるものから着手をしていきたいと考えております。 ○岩男部会長  ありがとうございました。ただいまのご説明についてご質問あるいはご意見がござい ましたら。はい、前田委員どうぞ。 ○前田委員  今言っていただいた小児救急の課題は私も日々悩んでおりまして、一応横浜市には市 大の医学部がありますので、そこのお医者さんたちにご意見を聞いています。専門の先 生からご意見をいただいているので私が付け加えるようなことはないですが、1、2点お 願いといいますか、こういう視点があると思いました。  まず小児救急ですが、小児救急も一次二次三次救急と組んでいますが、色々議論があ りまして、一部の小児科医の先生は、親が救急と言えば救急だと。  そこもケアするのが小児科医の役割だというふうに述べられる方もおられます。  親御さんはやはり安全を取りますので、プライマリケアの休日診療所があっても万が 一のことを考えて、入院設備がある二次三次救急に行きます。  ですから医療の人たちが仕分けしているプライマリケアや一次救急二次救急三次救急 と判断がユーザー側もできれば働くのですが、ユーザー側がやっぱりできないのです。 電話相談もとっていますけれども。  現実に医療側でこういう仕組みがいいのではないかということと、医療知識を持たな いユーザーがそれを使えるかどうかということも、ダブルの検証が必要かと思っていま す。  それから実態としては、子どもを預かってもらえる人がいない複数の小さい子を持っ ているお母さんが、お父さんが帰ってくるのを待って車で行くわけなので、夜間の救急 が便利な夜間診療所になっていることも確かです。  それはやっぱり開業医の先生の診療時間をシフトしてもらうとか、ビルの診療所の問 題もありますけれども、そういう面での対応も必要と思います。繰り返しになります が、医療のプロの視点と医療知識を持たないユーザーの視点をダブルでチェックしない と小児救急の円滑は難しいかと思っています。  それから二番目の産科ですが、やはり産科にかかわらず、外科とか産科とか救急と か、きわどい命に関わる現場ほど逆に訴訟のリスクも抱えて、お医者さんたちがものす ごい心理的プレッシャーがかかりながら命を救う厳しいお仕事になっているわけです。  もちろん、医療過誤を起こす能力の足りないお医者さんというのは、厳しく責任を問 われるべきだと思うのですが、ここにも書かれていますけれど、医療の安全確保に向け ての訴訟問題の解決も必要です。現状では人の生き死に関わる現場ほど、訴訟のリスク がありますので、医師がそこをやっぱり避ける傾向があります。  若いお医者さんたちは皆さんご立派ですけれども、一人前になるまで厳しい勉強と時 間を投資しますので、それを安全に回収できる展望がある診療科にいきたい、というの が本音です。そういう意味で能力あるお医者さんが厳しい現場で安心して働けるシステ ムをどうするか、ということが医療訴訟システムの改革の絡みで必要だと思っておりま す。  それから三つ目ですが、ここにもでておりますが、NICUですけれども、ご存知のよう に医療の発達で極小未熟児の命が助かりますので、一定の割合で重症心身障害児が生ま れることは確率的に避けられないわけです。ここにも書かれてますが、重症心身障害で もある程度の子たちは医療設備のある通院施設のような自宅で最期まで過ごす事ができ るのですが、本当に超重症の場合はですね、NICUを退院した以降、医療的なケアができ るところでずっと長期入院せざるを得ないのが現状ですので、現在の医療のシステムの 中で超重症の子たちをどう扱っていうことか難しいですね。  新たな医療の発展の中で出てきた超重症児用の入院ベッドをどう確保するか、それは 医療の中でどう費用をケアしていくか、ということをぜひ今回これを機にご検討いただ ければと思っております。 ○岩男部会長  今前田委員が言われたことに関連して産科の医療訴訟が非常に増えているということ は、やはり最近高齢出産が増えていることが関係しているのではないでしょうか。  ですから、どうしてもリスクが高くなるというそういう現状があります。  それからもう一つ先ほどの利用者というか親御さんの方の判断を助けるような仕組み が必要だということなのですけど、日本でちょっとどうなっているのかよくわからない のですが、私の経験でアメリカに居たときに、電話でのやりとりでは親としても非常に 不安な時にいわゆる訪問看護師、ビジティングナースが来て下さって、その方がその場 で医者に電話をしたうえですぐにこういうお医者さんに連れて行きなさいとか、まだ大 丈夫ですよとか、専門的なアドバイスで医師との間をちゃんと繋いでくださいました。 そのような仕組みが考えられるといいいのかもしれないな、とお話を伺いながら思った ところです。はい、どうぞ小笠原委員。 ○小笠原委員  質問ですが、私は一ヶ月ほど前に医科大学の若手医師4、5人で話す機会がありまし た。  心臓外科とかそちらの方面の若手医師だったのですが、そのとき、なぜ小児科医に成 り手が少ないのか、ということを聞きましたところ、小児科医の仕事は、ただいま、課 長さんからのご説明にありましたが、産婦人科医は、周産期訴訟が多いことが書いてあ りますが、彼らが言うにも小児科医の現場で働いてらっしゃる人たちの多くは、小児科 医の方にも産婦人科医同様に苦情や訴訟、脅しのようなものが多くて開業しても間尺に 合わないと。  少子化になって、子どもをいっそう大事にする気持ちはわかるのですが、結局小児科 医も親の言う通りにして診療していく方がいいということになってしまうようです。  保育所に病気になっても子どもを連れてくる家庭がいて、他の子どもと同じ病気であ っても、なぜこんなに診断が違うのかと、素朴な質問として尋ねましたら、本当は医師 の診断どおりの指導をした方がいいのだが、最近は保護者が大変強くなっていて、かな りわがままといいますか、親自身が最初から病気に対する知識や答えを持ってきて、こ ういう治療をしろとか言って、非常にやりにくくなってきており、間尺に合わなくなっ たということだそうです。  医師でも我々の仕事でも国家公務員でも同じことだと思いますが、「よくやってくだ さった」という感謝や激励などが少なく、従事する側としては、人様のお役に立ってい るという実感が次第に希薄になってきました。そのような原因が、この「小児科産科若 手医師の確保・育成に関する研究会」では出ておりませんでしたが、そういうことはな かったのでしょうか。どうなんでしょうか? ○岩男部会長  はい、どうぞ。 ○佐藤母子保健課長  結論から言うと、産科との比較で小児科はそれほどでもなかったというだけで、診療 科の中では小児科とか産科というのは比較的訴訟や苦情の多い科だと聞いております。 産科の場合は小児科に較べるとお産の契機にお亡くなりになるケースがかなり多いの で、そういうことで大きくなっておりますけれども、小さいトラブルというと怒られま すけれども小さい問題からいうと、小児科も相当に問題が起こっているというふうに理 解されます。 ○岩男部会長  他に。はい、どうぞ網野委員お願いします。 ○網野委員  このテーマに関してなぜこういう研究会が開かれたかというお話が最初にありました が、それとどこまでぴったり結びつくかわからないんですが、コメディカルによるサポ ート体制という中で、実は私共日々ソーシャルワーカーの育成にと教育に励んでおりま す。  MSW(メディカルソーシャルワーカー)の役割というのは、恐らくこの中でほとんど 議論されなかったのではないかと思いますが、かなり家族との関係とかそういうふうな 面でのいろいろな関わり方としては、十分検討してもいい部分が今生じてきていると思 います。  それはすぐ訴訟どうのこうのということとは結びつかないかもしれませんが、MSWを 大病院はほとんど抱えていますが、病院ごとの差や地域差もあります。むしろ私たちソ ーシャルワーカーを養成する側の力がまだ弱いのかもしれませんが、サポート体制とい うよりもむしろ連携体制としてかなりこれから考えた方がいい面があるかと思いまし た。  それから特に小児科に関しては、入院した場合の医師の大変さということの中で、例 えば入院している間に学校が遅れてしまうとか勉強がどうのとか、それは当然医師もか かわらないし、看護師もかかわりにくいという時にいわゆるチャイルドライフスペシャ リストという分野が広がってきまして、教育とか保育とかですね。  あるいはもう子どもそのものと生活を一緒にするという、時には家族も一緒に入って 宿泊も含めてという体制で、小児科のあり方は第二の家族とまではいわなくても、第二 の学校あるいは第二の保育とまではいわなくても、そのような機能もやはり小児科を持 っているところでは、今後検討する部分が広がるのかなというふうに思いますが。 ○岩男部会長  他に何かご意見あるいはご質問がありますでしょうか。よろしいでしょうか。どう ぞ、中村委員。 ○中村委員  地方の方ではやはり産科医の不足がものすごく深刻な問題になっておりまして、本当 に隣の町とか市に行かないと、妊娠してもケアしていただけないという現状が、特に私 岩手県ですけれども、多くの市町村でそれが目立ってきております。  やっぱり少子化対策の第一歩は健全に子どもを産むことにあると思いますので、早急 にこの問題を解決していただけるようにあまり時間をかけないで進めていただけたらい いかなと思ってよろしくお願いいたします。 ○岩男部会長  この検討のご報告の中にも入っておりますけれども、女性医師が、せっかく資格を持 って技術がおありになるにもかかわらず、子育てと両立しないからということで、外れ られる方がかなりあるように聞いておりますので、ここをぜひ両立可能なような形で男 女共同参画を進めていただきたいと思っております。  それではこの児童部会いろんなことをこれから議論していかないといけないわけです けれども、次回以降の日程などについて。どうぞ、柏女委員。 ○柏女委員  一つ質問を事務局の方にさせていただきたいのと、それから一つは申し上げたいと思 うのですが、一点は例の障害者自立支援法案が衆議院通過をいたしましたけれども、こ の中で障害児のサービス利用のあり方が職権保護と直接契約の二本立てになるというこ とになっているわけですけれども、これについても、国会での論議と、この点だけで結 構なのですが、論議とか局内での今後の障害保健福祉部と雇用均等・児童家庭局との検 討とか、そうしたことについて今現在で何かあれば教えていただきたいというのが一点 です。もし、担当が整理をしていないということであれば、次回でも良いので、検討課 題等教えていただければありがたいと思います。これ一点質問です。 ○高井総務課長  今の時点ではご報告することは持ち合わせていませんので、国会での審議、どのよう なものがあるのか、障害部のほうにも聞きまして、次回報告できるものがあればご報告 させていただきます。 ○柏女委員  ありがとうございます。その件で、今日も議論が出ていたのは、保育・子育て支援関 係はいわゆる保険制度を検討したらどうかとか直接契約を考えたらどうかとか、いわゆ るサービスを普遍化していくような論点で全体が進もうとしているわけです。その一方 では、虐待や非行については、専門性を強化するとかあるいは権利擁護のしくみを強化 すべきだといったような、いわば固有性を求めていくという視点で論議が進もうとして いるわけですが、現在の問題点は、それが両方共ばらばらに進んでいるということが最 も大きな問題でそこが要保護児童対策とそれから保育・子育て支援対策を分離させてし まうのではないかというふうに思っています。  先ほど岩男部会長が、非行の問題の時に地域で社会資源の活用をというお話でした が、現状ではほとんどそれが県と市町村とのキャッチボールになってしまって使われて いないという問題が出てきているわけですが、この辺のぜひそれぞれの検討をしていく ときに、視野に入れていただければありがたいと思っています。  例えば、保育・子育て支援のしくみを検討するときに、育児保険のしくみ、あるいは 直接契約のしくみといったことが検討される場合には、それが児童養護施設だとかある いは児童自立支援施設には直接契約のしくみが本当にあり得ないのかどうか、あるいは その直接契約のしくみを保育や子育て支援のところで検討する場合には、今度はその職 権保護のしくみを担保しておくことが必要ではないかといった、相互乗り入れのことを ぜひ視点に置いていただいて検討していただけると嬉しいなと思います。 これが意見です。よろしくお願いいたします。 ○岩男部会長  ありがとうございました。非常に大事な点をご指摘いただきました。  それでは、ほかに特にご意見・ご発言がございませんでしたら、事務局の方から今後 の日程についてご説明をお願いしたいと思います。 ○高井総務課長  次回の開催でございますが、まだ決まっておりません。追ってご連絡させていただき ますので、よろしくお願いいたします。 ○岩男部会長  それでは、特にご発言がなければ本日の会合はこれで終了させていただきたいと思い ます。どうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課企画法令係 03-5253-1111(内線7825)