05/07/22 国際協力事業評価検討会(第5回労働分野)議事録 国際協力事業評価検討会(第5回労働分野) 1.日時 平成17年7月22日(金)15:00〜 2.場所 経済産業省別館第1107会議室 3.出席者    【会員】吾郷眞一会員(九州大学大学院)              今野浩一郎会員(学習院大学)              末廣昭会員(東京大学)              中村正会員((財)日本ILO協会)              野見山眞之会員((財)国際労働財団)              小野修司会員代理((独)国際協力機構)        【専門会員】田中伸彦専門会員(厚生労働省)              小泉潤一専門会員(〃)              釜石英雄専門会員(〃)      【オブザーバー】田代治徳((独)雇用・能力開発機構)              篠部悠子((財)海外職業訓練協会)              横田裕子((独)労働政策研究・研修機構)              齋藤文昭(中央労働災害防止協会)              鍋島由美(ILO駐日事務所)              東園盛男((財)国際研修協力機構)              川上光信(中央職業能力開発協会)              山崎一雄(厚生労働省)              辻井憲一(〃)         【事務局】村木国際課長、搆補佐、今井補佐、細川専門官                                   〔敬称略〕 4.議事 ○搆補佐  それではただいまより国際協力事業評価検討会(第5回労働分野)を開催いたしま す。まず配布資料の確認をいたします。議事次第、出席者名簿に続いて、資料1が「第 1回分野合同検討会議事録」、資料2が「国際協力事業評価検討会(労働分野)中間報 告」です。資料3が1と2に分かれて、3−1が「労使関係・労働基準分野分科会にお ける評価の試行結果報告」、3−2が同じく分科会報告で、雇用・能開分野の分科会の ものです。資料4が「労働分野に係る最終報告書の取りまとめ方針(案)」です。不足 等がありましたらお知らせください。よろしければ、吾郷座長に進行をよろしくお願い します。 ○吾郷座長  検討会の開始に当たって、厚生労働省の村木国際課長からご挨拶をいただきます。 ○村木国際課長  委員の皆様には常日頃から大変お世話になっておりますことに対し改めて御礼申し上 げます。また、連日暑い日が続く中を、特に座長には九州からわざわざおいでいただき まして、誠にありがとうございます。  この検討会も5回目を数えまして、さまざまなご議論をいただいて参りましたが、こ れから、いよいよ全体の取りまとめに向けてご意見をいただきたいと考えているところ です。労働分野の評価は、これまでなかなか進んでいなかったことも事実ですが、今回 は、2つの分科会に分かれて、テーマ別に実際に評価の試行を行っていただきました。 「雇用・能開分野分科会」と、「労使関係・労働基準分科会」の両分科会におきまし て、具体的に私どもがやっております事業を俎上に載せて、それの評価を試みたわけで ございます。  精力的にご議論をいただいたおかげで、両分科会とも報告がまとまりましたので、本 日、中村、野見山両座長から説明いただいた上で、広く労働分野の評価をどのようにす べきか、どのような点に留意すべきかについて、さらにご議論いただきたいと思ってい ます。  さらにそれを踏まえまして、今後の労働分野の協力の進め方について、この年末まで のスケジュールで取りまとめていきたいと思っております。その第1段として、言わば 論点のようなものを後程、資料としてお出ししてございますので、それを元にして本日 は自由にご意見をいただき、それを踏まえて10月頃に叩き台を私どものほうで作成をし て、それを叩いていただき、さらに12月にそのご意見も踏まえた上での最終的な取りま とめをしたいと、このようなスケジュールを頭に描いております。  本日はその意味で、最終報告に向けての自由討論を、後半にお願いをしたいと考えて おりますので、どうかよろしくお願いいたします。座長、よろしくお願いいたします。 ○吾郷座長  ありがとうございました。第2議題に移ります。これは第1回の分野合同検討会につ いてですが、事務局からの報告をお願いいたします。 ○搆補佐  今年の3月8日に保健医療分野、労働分野、水道分野の3つの分野合同で、第1回合 同の検討会を開催しています。労働分野については、吾郷座長から、本検討会の検討状 況について取りまとめた中間報告の内容を発表いただいております。  また、議事録についても今日資料1としてお配りしていますが、これは事前に確認を いただいて、厚生労働省のホームページに載せているものです。以上を報告させていた だきます。 ○吾郷座長  これは報告ですから、特段のご質問がなければ次に進みます。議題3の「評価の改善 について」です。これに関しては、評価の試行結果について、労使関係・労働基準分野 分科会の検討結果について、そちらの分科会座長の中村会員から報告をいただきたいと 思います。 ○中村会員  7月1日に行われた第2回「労使関係・労働基準分科会」の検討結果について報告い たします。この分野の評価は困難で自信がないというのが正直なところですが、まさに 評価の試行ということで理解していただければと思います。  このプロジェクトは、発展途上にあるASEANが域内に不安定な労使関係を抱えて おり、我が国がどのように手助けしていくかということで始まったものです。まずは3 つのテーマを絞って、地域として政策レベルの議論を行い、その結果を各国に持ち帰り 再び議論します。こうしたプロセスを通して、関係者の意識、知識を高めながら、結果 としては労使関係の健全化を図ることを意図しています。  議論は地域と各国の二段階で行われるという構成をとっています。国別のセミナーに ついては、10カ国すべてにおいて必要という考えですが、我が国ODAを拠出する必要 性、優先度を考慮し、CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の4ヶ 国を支援対象としました。もう1点として、プロジェクト全体を運営するため、次官級 の会合を開催し、プロジェクトの進行について協議をしながら進めたことがあります。 今年の3月までに3年間の第1フェーズが終了したところです。  そこで、その評価手法について議論してきたわけですが、こうした量的把握の困難な 活動を評価に結びつけることはあまりに難しく、かつ時間が限られていたため、評価結 果そのものについては議論の余地があります。あくまでも評価手法を開発するための検 討、すなわち評価の試行だという考え方です。特に、労使関係については、目標設定が 難しいという点があります。例えば、究極の目標が健全な労使関係を作ることだとわか っても、それに至る過程で指標をどのように設定できるかが問題です。ストライキがな いなど表面上の事象でとらえてしまうと、見かけ上は平穏でも裏で不満がたまって大き な紛争につながることもあるし、ストライキ発生数のみではあらわせない規模や原因の 深刻さなどがあります。  労使関係の健全化をわかりやすく分析してみると、その具体的な手段は当事者間の対 話の積み重ねであること、やがて当事者間に信頼関係ができるとともにその過程で関係 者の知識が高まっていき、対話に結びつくというサイクルであることがわかります。た だ、それを指標化する段階においては、対話の回数が多ければよいか、質的な重みをど のように表せるか、高度な知識が必要なときにその知識の有無を確認する指標も難しい ことも考慮しなければなりません。たとえ指標化できても効果が現れてくるまでには長 期間を要するということもあります。さらに、労使関係に関するある時点での現象をと りあげると、必ず経済的、社会的、文化的、政治的な背景と切り離すことができないと いった困難さがあり、分科会出席者の議論においては明確な指標にたどりつくことはで きませんでした。ただし、評価しなくてよいということでなく、指標化、目標の設定に はこうした限界があることを理解しながら正しい評価に向けて努力していくということ になりました。  したがって、本来は具体的な提案に踏み込むべきところですが、時間的な制約、及び 先ほど申し上げた複雑さゆえに、評価の試行結果そのものにとどまってしまったという ところです。このため、今回の結果報告をもって十分であるかどうか自信がないという のが正直なところです。ただそういう中でも、人々の考え方に影響を与えるべきソフト 的なプロジェクトに対する評価をどう進めるかという点を整理したところであり、皆さ んのご意見、ご批判、ご示唆をいただきながら議論を続ける必要があるというのが、私 の報告です。 ○吾郷座長  苦悩に満ちたご報告をいただいたので、また後ほど議論をさせていただくことにしま す。引き続いて、雇用・能開分野分科会の野見山座長からご報告をいただきたいと思い ます。 ○野見山会員  それでは分科会の議論の状況等も含めて、ご報告をいたします。いま中村会員から評 価が難しいというお話がありましたが、私どもも同感です。たまたま取り上げたのが中 国の雇用促進プロジェクトだったこともありますが、プロジェクトが仕組みづくりであ りその評価の仕方がなかなか難しいという感じがしました。会員の皆様方からいろいろ とご意見をいただいたので、それを含めてご報告をいたします。  昨年の第1回分科会で、評価の試行として取り上げた材料が、中国雇用促進プロジェ クトです。これは資料3−2にありますので繰り返しご説明することもないと思います が、日本の財政支援によりILOが実施した、起業訓練支援のプロジェクトで、2004年 度で事業が終了しています。評価はPCM手法で行うこととし、分科会としては、評価そ のものを得ることではなく試行により評価手法の確立をはかることが課題でした。  資料3−2の2ページ目以降に、PDM、調査結果表、実績表、評価まとめ表などに ついて事務局が取りまとめた資料があり、プロジェクトの妥当性から自立発展性までの 評価をしたものについて紹介しています。  分科会での意見としては、プロジェクトは雇用創出という失業者支援事業の実施その ものにあるのではなく、起業を希望する者に対して訓練をして、それに対するさまざま な信用保証ローンを供与するという、起業家支援の仕組みが中国で自立的に発展してい くことを目的にしているわけです。そういう意味で、評価の仕方は慎重にしなければな らないということがまず議論になりました。その制度が本当に普及していったのか、訓 練の指導者の質がどう上がっていったか、そういう評価をしなければ、このプロジェク ト全体の正しい評価は難しいのではないかという議論が出てきました。  まず、このプロジェクトに年間9,000万円の投入についての評価方法を議論しました。 これには起業家支援という仕組みづくりのための設計開発から、訓練指導者の育成、信 用保証基金の設立といった、投資的な経費が含まれます。加えて訓練事業の実施そのも のも含まれますが、それら3つの性格の異なる投入について、協力期間中に効率的に行 われたかどうかをそれぞれ評価すべきという議論になりました。  その結果、雇用・能開分野の仕組みづくりということですので、評価はなかなか難し いという意見がいろいろ出たわけです。その際、仕組みづくりに関する評価の仕方につ いて考えるべきポイントは3つあるのではないかというのが、およその当日のご意見で した。  1つは、「評価する場合に、仕組みづくりの目標をどこに置くのか」です。目標は単 に雇用創出ではなく仕組みづくりであれば、その仕組みが定着したかどうかということ になります。一方、仕組みの定着により雇用機会の増大につながることを期待している わけですが、雇用の改善に至るまでには様々な要素が影響するので、このような究極の 目標をもって評価に用いることはできません。今回の試行では、目標設定が言わば後づ けでありますが、いずれにせよ仕組み作りの場合は、目標の設定の仕方がポイントにな るということです。  2つ目のポイントは「投入の評価」です。先ほど申しましたが、3つに分けるとそれ ぞれ裨益する期間が異なり、例えば事業実施費用のように計画期間中に結果を出さなけ ればいけないものと、投資的経費のように協力期間を超えて現れる効果も含むべきもの とがあり、効果の現れる裨益期間を長く見ていくなど、評価の仕方を工夫しなければな らないということです。  もう1つは、仕組みづくりですから、単に計画期間中の事業がうまく行われたかどう かだけではなく、その後事業が自立的に発展し、仕組みが定着したかどうかにも着目す るという意味で、「モニタリング」、「事後評価」を充実させていかなければいけな い、といったご意見が出ました。私自身、タイで失業保険制度導入期の総合雇用政策を 手がけましたが、単に制度が導入されたというだけでなく、それがタイの雇用の近代 化、労働市場の近代化にどうつながっていったかというところまで見通さないと、本当 に成功しているのかどうかの評価はできないと、全く同じような考えを持ちました。以 上、試行の結果についての、会員の皆様方のさまざまな意見をご紹介しました。  なお、分科会では評価手法についての検証も求められていましたが、PCM手法を用い ることの妥当性については特段の異論はなかったと考えているところです。 ○吾郷座長  ただいまの2つの分科会における評価の試行結果概要についてですが、補足すべき事 柄、ご意見、ご質問があればいただきたいと思います。いかがでしょうか。なければこ れに限らず自由にご意見を出していただければと思います。 ○吾郷座長  ご参考までに申しますが、法律学の分野で、「結果の義務」と「態様の義務」と2つ あって、義務の中にも、具体的な結果を求める権利義務関係があると同様に、結果は必 ずしも出なくてもよくて、それに向かっている姿勢が示されればいいという義務、この 2つがあるのだという分類をするのです。特に私の専門の国際法の場合によくそう言わ れ、後者は特に宣言的、推進的な義務と言われます。これを労使関係の分科会における 議論に適用すれば、数値目標をなかなか出しにくいというのは、結果の義務については そのとおりですが、態様の義務と考えれば、数値目標が得られなくても履行されている という判断は出てくるかも知れないわけです。  ただし、もう1つ加えてよく議論される点として、態様の義務は単に努力していると 言っておけばいいのかというとそうではなく、実際に進んでいなかったり、逆方向を向 いているという場合には態様の義務に反することになることがあります。評価の議論に 取り上げられるかどうかはわかりませんが、導入として申し上げます。 ○中村会員  吾郷座長のご教示を理解できたか自信がありませんが、簡単に言うと、労使関係はリ ザルトでなくプロセスであってアクティブ・アプローチであるといえます。更には、ダ イアログが進んでいると言えるには、単に何らかのアプローチがあればよいのではな く、その背景に、ワンステップでもツーステップでも高い知識を持って、真摯に臨む態 度が必要なのです。  真摯な態度でアプローチしているかどうか、すなわち一定レベルの知識をもって対話 が進んでいるかについての評価は困難です。一見進んでいるように見えてもある1つの 出来事により崩壊してしまうことがあり、成果があったかどうかわからなくなることさ えあります。  日本の労使関係の歴史を見る限り、対話の失敗が次の成功への足掛りになっていると も言えます。セミナーを漫然と実施したというのではダメで、議論を通じて人間関係が でき、高い知識を持って対話を行うことができたということを評価していかないといけ ないわけです。 ○小野会員代理  評価の議論に戻りますが、今の吾郷座長の話とかなり合致するところとして、教育に 関する援助における評価は、近年、2つの成果を見なければいけないとされていること があります。1つは、教育を受けた子どもたちが、その知識レベルを上げたのか、つま り100点満点の試験で80点なのか、70点なのか、プロジェクト実施により何点あ がったのかという評価があります。  もう1つは、そもそも個々の子どもの到達度は違うという視点に立って、プロセスを 指標としてみようという考え方も広まりつつあります。つまり、先生が教室の中で生徒 と対話をする際のコミュニケーションについて言えば、コミュニケーションの量、先生 の説明と生徒の発言のバランス、生徒の手を挙げる数、態度の評価などを指標として採 用する方法が用いられているということです。  したがって、吾郷座長の言われたところと合致する点があると思います。必ずしも数 値化できないというのではなくて、その2つの傾向性を指標として持つと、相関関係が 出てくるのです。質問しやすさや、知識を得られる吸収度は、ある程度プロセス評価に よって上がってくると、最終の評価も上がるという実証的な研究があります。労使関係 の分野ではないですが、教育分野における評価として起こっている状況を紹介しまし た。 ○搆補佐  いまのお話を聞きまして、労働分野においても指標を作っていく努力をしていかない といけないと感じています。吾郷座長が言われたように、結果だけではなく態様によっ ても示す努力をしていくことこそ、国際協力事業を進めていく行政に課された義務だと 思っています。その中で、指標を客観的に示すことは非常に難しいのですが、何とか努 力しなければならず、こういうものはどうかとアイディアを出していくのは、実際に事 業を進めていく行政や、事業に参加している参加者であるべきです。  そのアイディアを外部の方からも見てもらって、こういう指標では駄目だ、もっと別 のものはないのかというようなご意見をいただきながら、別の案を出していくようなプ ロセスを進めていくべき時期にきているように思います。  その際に懸案となるのは、中村会員が言われたように、指標としては不完全で努力す る過程であるにもかかわらず、評価結果が一人歩きして引っ張られるために、事業が別 の方向に向かってしまうことです。これは事業をよりよくしようと思っている関係者が 誰ひとり望むところではありません。少し猶予をいただき、試行段階として引き続き開 発したいというのが中村会員の言われたことと思いますが、いかがでしょういか。 ○村木国際課長  3点ほど教えていただきたいことがあります。1点目は、いま小野会員代理にご披露 いただいた中で、後者の評価というのはおそらく全部やるわけにはいかないはずです が、何らかのサンプリングをしているのかどうかという点について教えていただければ と思います。  2つ目は吾郷座長、中村会員への質問です。いまのお話を聞いていると、もう少しベ ンチマーキングを導入すればよかったという気がしています。要するに、他の分野では どのようにしているのかの勉強をもう少しすべきだったかと思います。その意味で、日 本の労使関係、特に戦後の労使関係の研究をし、それを評価するに当たって、事実の積 み重ねではなく、労使関係がどのように質的に変化、改善してきたかを表わす何らかの 指標は、今までの研究の蓄積に何かないかというのが、歴史的な立場からのベンチマー キングの質問です。  3つ目は末廣会員への質問で、まさにベンチマーキングとして使えるような曖昧で、 数量的な指標を作りにくいような分野にどのような協力分野があって、先ほど紹介され た教育分野以外にも参考になるものがあれば教えていただきたいという質問です。 ○小野会員代理  おっしゃるとおりサンプリングでやっております。基礎教育の場合だと、1つの学校 でそのようなプロジェクトをやっても、サンプリングというのは、1つのクラスの中に 例を求めます。具体的にどのようなことをやるかというと、教室の中に30人の生徒が いるとして、その生徒たちの発話、又は手を挙げる回数などをカウントするのです。も ちろん1人ではできませんので、何人かの人が教室の中にいて、先生の質問と、生徒た ちが手を挙げる回数、または先生のしゃべる時間をモニタリングして、数値をカウンタ ーで数えるように記録します。  それで一連のデータを作り、データとともに、後で先生の授業の進め方がよかったか どうか、その効果により手が多く挙がったのか、生徒がどのようなことを考えたのかな どを分析して学術的に検討していこうというのが現場の教育における例です。  また、サンプリングに先立つベンチマーキングも大事です。到達度を計るために、あ らかじめ算数の計算能力など個々の生徒の学力を測っておいてから比べるため、時間や 労力が必要です。 ○中村会員  日本の労使関係が成功したかどうか、何か足掛りとなるベンチマークといってもなか なかないです。ストライキ件数も該当しないので、組合の組織率はということになりま すが、日本の歴史でいけば、戦後の52%から減少して今は19%弱であるものの、労 使関係が悪くなったと言うこともできません  労使のコンタクトの回数というのはベンチマークになり得ます。団体交渉、労使協議 の別や制度上の関わりもあります。日本の場合は法的制度として団体交渉はあるけれど も、労使協議はありませんが、法的にはないというだけで、自発的な協議であるといえ ます。  こうしたことを踏まえながら、以前よりも労使の当事者が理解が進んでいるかどうか という、先ほどの学校の教室での反応のようなことを行うことは、できるような気がし ます。ただし、我が国ではよくても、例えばラオスでは直ちに進められるかと言えば、 更なる検討が必要です。 ○末廣会員  資料3−2の3頁目の事業概要を見てください。先ほど野見山会員からご説明のあっ たとおりですが、仮にこの「中国雇用促進プロジェクト」を国民に説明するときに、こ のような表を出されるとどのように理解されるかというと、4億円のお金を注ぎ込ん で、7,711人の起業訓練修了者と雇用創出が4,300人であったとなり、単純に割り算をし てしまいますと、4億円も使って成果はこれだけですかという判断になりかねません。  しかし、実際には、野見山会員が言われたように、このプロジェクトの目的は4,000 人の失業者に対して、雇用を4,000人つくったということではないわけです。つまり失 業者に対する失業対策事業ではなく、失業者を起業に導き、さらに、設立された会社に より間接的に雇用機会も生み出すという「仕組み」そのものをつくることにあったわけ であり、その説明なくしては、投入した資金に対してあまりにも成果が少ないと誤解さ れてしまう恐れがあると思います。  この点では、おそらく中村会員が説明された労使関係プロジェクトに比べて、中国雇 用促進事業のほうが、もう少し明確に評価できるのではないかと思います。先ほどご紹 介のあった3つのレベルに資金内容を分けるのは、投入する資金の性格が違うためであ り、したがって、性格の異なる資金から期待される効果もおのずから違いがあります。  まず、制度設計に対しては、その制度がどこまで定着して、自立的な発展を遂げたか を評価することです。2番目は、より投資目的をもった資金、インベストメントとして の資金投入で、これは生まれてくる起業家がさらに新しい事業を通して新たな雇用を創 出していくこととなるため、中長期的に見ないとリターンがわかりません。最後は、よ り日常的な運営資金の投入で、これは短期的に、その運営資金で何ができたかが評価で きます。このため、わたしどもの分科会では、今野会員とともに、4億円の中身の性格 を整理分類した上で、評価をしてみるよう事務局にお願いしてきたところです。  先ほどの村木課長の3番目の質問については、現在、日本政府、あるいはJICAが 進めようとしている制度設計や知的支援は、全てここに入ると思います。つまり、制度 設計や知的支援をしたいということだけが一人歩きし、お金をどのように使って、どの ような成果を期待しているかが明確になっていません。  この点、IMFや世界銀行の考え方は非常に単純かつ明快で、制度設計が定着すると いうことは、法律が当該国の国会で通ることを意味します。しかし、最大の問題は、こ うした国際機関は法律が通った後の法律や制度の現地での定着や適用可能性について責 任を持たないことです。例えば、タイにおいては、IMFが指示した12の経済危機関 連法案は国会で成立したにもかかわらず、タクシン政権の下で実質的に形骸化されてし まいましたが、国際機関としては何も言いませんし、すでにIMFへの借入返済は完了し ていますので、もはや彼らは監督することもできないわけです。  こうした点を解消するためには、先ほど野見山会員が言われたように、制度定着の事 後的な評価を行い、定着しなかった場合には、その原因究明にお金を使っても、私はよ いと思います。成果があった、そこそこできたというポジティブな評価だけでなく、そ うでない場合の原因究明も協力の1つの形であって、この点にお金を惜しんではならな いというのが私の考えです。 ○搆補佐  ただいまのご意見に関連し、事務局から結論について補足させていただきます。先般 の分科会で、そのように制度設計型のプロジェクトについて、研究開発費、投資のため の費用、事業運営費の3つに分けてほしいという宿題をいただきました。何とか数字を という趣旨を踏まえ、時間的な制約、事後的な調査であるため精度は低く粗いデータで あることを承知の上で、資料3−2の5頁の右側、投入の欄に数を入れてみました。  設計開発費は、概して専門家の人件費、各種調査費用といえますが、いずれも投入す ること自体は、直接の雇用につながらない、ある意味でアウトプットがゼロの部分です が、制度の定着には欠くことのできないものです。積み上げでなく、他の事業を引いて 出したところ77%となりました。これは非常に高額といえますが、我々としては、こ れは制度が定着して、先方の政府がこの制度を自国のものとして進めてくれれば、広い 意味で考えてペイするものと考えています。  次は、投資のための費用です。このプロジェクトは訓練と、信用の保証のローンの二 つに分かれています。訓練事業ではトレーナーの養成ととらえて、8%程度、貸付事業 をするために必要な信用保証基金及び関連費用を合わせて10%超、この2つを投資と して扱うと、2割強が投資のための費用となります。投資というのは、例えばトレーナ ーについて言えば、養成に大きなお金はかかりますが、養成されたトレーナーが活動す ることによって、数年間であったり、10年間であったり、彼らが活動することによっ て、事業終了後も成果が出てくるなど、中長期的な波及効果も見る必要があります。ロ ーンについても同様に考えられます。  それに対して、いわゆる失業対策事業のような形態は、事業運営費となります。起業 訓練を行った場合に、その訓練にかかった費用、例えば会場の費用、講師の謝金といっ たものは、数パーセント程度で、人数で大雑把に割ると1人数ドル程度となりました。 資料中実績が合わないのは、データを収集した時期がことなるためです。特に、この事 業では、自費で受益者が費用負担をしたり、中国政府が補填したりしているので、プロ ジェクトからの出費はより少なくて済みました。 ○今野会員  そうすると、いちばん最初の研究開発費は別にして、投資的な経費は全体で20%で す。これを10年で回収するとすれば、毎年コストとして2%ずつ付加してあげればいい わけですよね。そうすると、直接費が2%だから、実際には4%しか投入していないこ とになります。設備投資のほうは、人材投資も含めて10年で回収すればよく、減価償却 みたいなものです。年単位でいくと、2%だけが経費として計上されることになりま す。  そうすると、直接的といえるコストは4%ぐらいしかかかっていない。その4%のお 金を使って、トライアルで養成したら4,000人が出てきたということであり、効率は計 算し直すことができます。  問題は、研究開発費70数パーセントについてですが、こちらは特に制限があるわけ ではありません。一種の特許のようなもので、ルールさえ決めればよいわけです。企業 において、研究開発で新しい技術ができたときに、その費用を製品コストに反映する方 法を決めておけばよいのと同じです。  もう1つは、個々の費用を投資のための費用とするのか、研究開発費とみるかは明確 に分けられないものもたくさんあるが、一定のルールで割り切ってしまうことです。大 事なことは、そのルールが安定していることであり、そのような前提を理解すれば、制 度設計型のプロジェクトの評価は可能だと思います。その場合、例えば4,300人の雇用 創出があったというのは、あくまでもトライアルの事業だということです。トライアル の事業として4,300人を養成したときに、どれだけの1人当たりのコストがかかってい て、そのコストで4,300人というのは多いと考えるのか、少ないと考えるのか、そのよ うに考えたほうがいいのではないかと思います。先ほど末廣会員がおっしゃったよう に、研究開発に使われた70何パーセントの費用を単純に4,300人に対して費用を配布 したら、ゴチャ混ぜになり不正確な判断になってしまいます。 ○末廣会員  同様に、これが中国のほかの地域に適用されたり、他の国に適用された場合に、当然 この費用は減ってくるはずです。減らないとすると無駄なことを繰り返しているわけ で、協力のやり方に問題があることになります。  また、研究開発費が70数パーセントと明らかになれば、これは多分大半が人件費だ と思いますが、そこを現地との協力で節約できないのか、という議論が可能になりま す。したがって、投資資金の性格に対応して評価基準をもう少しはっきりさせたほう が、今後の適用可能性を考えてもメリットがあると思います。 ○今野会員  人材育成の分野では、訓練センターをつくることがありますが、訓練センターの基本 設計に係る検討は、研究開発にあたります。検討結果をベースに建物をつくり、設備を 入れるなどの投資をします。その投資をした設備、建物を使って実際に訓練をします。 日本の援助でやっている訓練センターであって、基本設計を日本から持って行くと仮定 すれば、基本設計のための研究開発費はゼロになるわけです。そうすると、投資的な経 費として建物・設備の費用が該当するので、20年償却として20年で割って1年分の 費用を出し、維持費用を含めた年間費用について養成した人数と比較すればよいわけで す。事前のフィージビリティ調査については、研究開発費のほうに入れると決めておき ます。  このように、中国の起業支援と建物の建設では、やり方は違いますが、人材開発とい う意味では同じであり、村木課長のおっしゃられたようにベンチマーキングができま す。その結果として、本来直接比較ができない2つのプロジェクト、すなわち建物の建 設と企業支援とを投入や成果の面から比較することができるわけです。 ○村木国際課長  最後のお話について、研究開発費の部分の比率なり、金額についての評価はどうすれ ばいいのですか。 ○今野会員  企業の場合には、たとえばベンチマーキングの方法がとられています。通常、他社が 行った実績があったり、業界全体の平均がわかっているため、自社のポジションを理解 した上で戦略変数を入れて多め、少なめとしていくわけです。  したがって、こうした評価を積み上げることにより、一種のベンチマーキングができ るのかもしれません。重要なことは、普遍的な解よりも、そのプロジェクトで投入して いる研究開発費が、これまでの同種プロジェクトの中でどの位置にあるかという、ポジ ショニングをつかむことです。 ○末廣会員  その意味では、比較する相手がなく投下資金の分類にグレーの部分もある中国の雇用 促進事業の場合、研究開発費の77%は必ずしも高いとは言えないのですが、ふつうの 人から見て、制度設計にこれほどのお金がかかっているのかという感想を持つだろうと 感じました。次の作業では、投下資金の性格をブレークダウンしていく中で、費用対効 果も明確になるはずです。これまでのように、総費用の金額に対する効果で単純によい か悪いかを評価するのではなく、先ほど今野会員が言われたように、投資のための費用 と維持費用だけをみるとかなり効率的に事業を実施していたことがわかります。一方 で、なぜ研究開発費にこれだけかかったかを説明する必要が生じます。  制度設計や人材育成というと「言葉」の受けはいいのですが、そこに投入している日 本側の人材が相手に必要か、今後の事業の定着に貢献したのかという評価を厳しく行わ なければなりません。その中で、投入した人数が適正であったか、現地からの人材調達 により人件費を節約することはできなかったかという、より生産的な議論に発展させる 可能性がでてくると思います。 ○搆補佐  まず、正直申し上げて、今回お示しした研究開発費の数字は非常に粗いものであるこ と、すなわち個々に積み上げたわけではなく総費用から投資や維持費用を差し引いて算 出した金額であることにつきご了解いただきたいと思います。ただ、その中で人件費や 調査費が多くを占めることは事実であり今後検討の余地があります。もっとも、我々が 努力しつつも末廣会員が言われたようには簡単に進まない問題もあり、例えば、ITの プログラミングなどと同様に、費用を下げると技術者のランクを下げるという話にな り、クオリティーが下がることにも目を光らせたり、調査などせずに実行してしまえと いう乱暴な議論も出てきます。  なお、国際協力事業を行っていく場合には、我が国や委託先機関の持つノウハウが、 対象地域、分野においてどれほどあるのかが大きなポイントであると考えています。ノ ウハウが全くない分野、手法であれば、事業の成功のためには節約でなくて、逆により ランクの高い人材が必要ということもあるし、これまでの実績を応用したり予想できる 分野であれば、人材のランクを下げたり、作業をブレークダウンして熟練度が低くても よいものを現地に任せるなどが必要になります。しかし、実際にはこれまでの実績を使 うことが難しく、研究開発費が高くなってしまう原因となっています。というのも、費 用を抑えるために実績がある分野、手法ばかりを選んでしまうと、我が国の国際協力と しての方向性からはずれてしまうおそれがあるからです。 ○今野会員  援助事業に管理会計の考え方はないのでしょうか。先ほど私が説明したのは一種の管 理会計です。総額4億円、4,300人に対して1人当たりいくらというのでは管理会 計のセンスがなく、設備償却、維持費を踏まえて年費用を算出すべき話です。 ○野見山会員  先ほど私も内訳を聞いて疑問に思ったのですが、1つはこの起業家訓練というのは職 安の中で、15日ぐらいと書いてあるので、2週間ぐらい研修したら卒業してしまうわけ です。そうであればもともとそれほど経費がかかる訓練ではなく、やはりいちばんの決 め手は、Start Your Businessというのか、SYB訓練、この内容が本当に中国の経済 社会状況に適合した訓練であったかどうかを確認しなければならないわけです。その場 合、ILOが事業委託先として適切だったかどうかという問題が出てきます。ILOの専門家 について詳しくは知りませんが、いわゆる欧米的な視点でとらえた訓練指導者、コーデ ィネーターが中国の実態にあった訓練プログラムを作ったかどうかということです。自 立発展性を検討するにはこうした議論も欠かせないと思います。  東南アジアでは、起業向けのいろいろな指導などは、行政自体が行っていることも多 く、アジア的な起業指導に対してまでILOを通じたマルチバイ協力が適当だったかとい うことも含めて評価してみたらどうかと感じました。実際、私がタイにいたときの経験 では、職安局に起業指導課というのがあり、被雇用者だけでなく、一本立ちして屋台を 作る、いわゆる零細企業経営者になることも職安の行政対象としていました。 ○中村会員  議論がだいぶ技術的なところに集中し、煮詰まってきている中で、それを壊すような 話なのですが、このプロジェクトは、当初フィリピンとタイで実施し、バングラデシュ とパキスタン、最後に中国で行ったものです。それぞれに目的はありますが、中国につ いては、沿岸部と奥地との格差が過度の人口流動を作り出しており、均衡を取らせる手 だてが必要と言うことが課題でした。奥地に資本を持って行くのも現実的でないので、 人を資源として何か雇用機会を創出するためのパイロットプロジェクトを実施し、中国 政府なり省政府が自発的な一村一品的な運動を行うきっかけになればということでし た。したがって、訓練実績が多いか少ないかということは問題ではありません。  むしろ、パイロットプロジェクトで効果が上がり、中国が政府の方針、省の方針とし て取り上げればそれが成果だと言うことで、上位目標になっています。その結果、中国 は一村一品運動をやろうと政府の方針として決めており、評価は難しいかも知れないが 大成功であるといえます。余談ですが、タイでは定着せず失敗かと思っていましたが、 タクシン首相が一村一品をとりあげています。パキスタン、フィリピンではうまく定着 していないが、バングラデシュではブラミン銀行をうまく使い、そのまま定着しまし た。 ○今野会員  確かに評価は難しいものですが、例えば、会社のような組織で、課として実績を上げ たことが会社全体の業績向上にどれだけつながったかということは難しいが、それでも 課としてはその範囲で目標を設定して業務を行っていかなければならないわけです。中 国のプロジェクトでも、スーパーゴールはありますが、それをブレークダウンしたゴー ルの中で評価していくことが必要です。ゴールとスーパーゴールをごちゃ混ぜにしてし まうわけにはいきません。 ○搆補佐  中村会員が言われた中国政府がどのように取り上げていくか、どのようにあとは波及 していくかは、おそらく末廣会員が言われた事後評価の話なのだろうと思います。時間 的にも早すぎ、データを精査しないといけませんが、ILO北京事務所や日本大使館から 非公式に入手した情報では、中国政府が100カ所規模で国の施策として取り上げ、進 めているとともに、中国の国民や民間企業にもSYBという考え方が定着しているといえ ます。これらを今後事後評価していけば、意味があるように思います。 ○今野会員  それに関して思うのですが、中国のプロジェクトを例にとれば、中国全体にどれだけ 影響を及ぼすかということは、プロジェクト実施者の責任ではなく、設定する側の責任 です。やはりプロジェクト実施者は、与えられた範囲の目標に対して貢献すればいいの であって、その結果が中国全体に及ぼす影響についてはプロジェクトを設定した人の責 任です。このように考えるとプロジェクト評価の対象とする範囲がわかってきます。先 ほどの会社の例で言えば、課としてがんばって業績を上げたが、会社の業績が悪かった 場合、責任は課にあるわけではなく、課に対して目標設定をした社長にあります。特 に、スーパーゴールに関連づけるかどうかはプロジェクトの評価ではなく日本政府の問 題といえます。 ○搆補佐  確かにドナーである日本政府の問題といえます。野見山会員が言われたように、ILO を通じて実施することが適切かという議論では、ドナーとしてはバイラテラルで、直接 中国政府に実施したり、他の機関を通じて実施するという選択肢があったのだろうと思 います。手元に過去の資料がないので推測の域を出ませんが、バイの協力をすればパイ ロットプロジェクトでドナー国日本の顔がよく見えますが、それを中国政府が取り上げ て、政府の事業として波及させてくれるかどうかという読みもあったのだと思います。 ILOを通じた中国への働きかけを行えば、ドナー国の雰囲気が薄まるだけでなく、事業 設計の段階でILOと中国とのつながりによる取り決めをすることができるわけです。更 に、ILOからも、いい人材を出すので必ず成功するといった説明があったはずです。 ○村木国際課長  今野会員が言われた中村会員に対する反論は、今回の評価がプレーヤーに対する評価 だけでなく、プランナーに対する評価も含まれており、誰に、あるいは何に対する評価 かを整理しておくべきということでした。  中村会員がおっしゃったことはそのとおりで、最終的にはまさにモデルプロジェクト としてどう普及していくかなのですが、何も目標はスーパーゴール1つだけである必要 はないわけです。中間的な目標として、このプログラムが試行段階としてどの程度の効 率的な事業であったのかをチェックする意味で、管理会計的な手法は必要なのだろうと 思います。いくつかの並行的な目標が体系化されていますから、対応した評価があって しかるべきと思います。 ○中村会員  私の反論も77%の開発費に関連しており、開発費を訓練修了者で割ってしまうとい う議論があったので、むしろスーパーゴールから見ればよいと言ったのです。スーパー ゴールが達成されれば内容はどうでもよいという趣旨ではありません。労使関係も同様 で、短期的な目標、中間的な成果について具体的でなければならないが、それにのみと らわれてスーパーゴールを忘れてしまってはいけない、ということが悩みなのです。 ○今野会員  例えば、私がプロジェクト実施責任者で、効率的にやり、とてもうまくいったが、中 国全体に普及しなかったとします。これが終了時に失敗という評価になるのかというこ とです。プロジェクトに汎用性があり普及するかどうかは、そのように判断して実施を 決定した側の問題であり、プロジェクトを実施した現場の人の問題でないことは明らか にしなければいけないと思います。 ○末廣会員  話が自分の経験になって申し訳ないのですが、ひとつの事例を紹介させていただきま す。明後日から行くタイでは、7年間続けているある財団の人材育成基金、一定のお金 で毎年東北タイの30校の学校に、教材を提供するプロジェクトに関わっています。それ 以外に奨学金の給付もあります。日本の財団、企業、個人の支援は、ともすれば奨学金 やモノをあげると、あげっぱなしの場合が多く、事後的なことを何も行わない。ときた ま相手国を訪れても、授与式や歓迎パーティに出席する程度です。こうした状況を変え るため、事業の2年目からは大体1週間、車で走って教材を支給した学校をできるだけ 訪れ、そこの先生や生徒、教育委員会、保護者たちと会って、支給された物に対する感 想も含めていろいろと意見を交換してきました。訪問した学校はすでに50校を超える状 況です。  物をあげるといっても消耗品ですから、2、3年でサッカーボールでもバレーボール でも駄目になります。ですので短期的には、バレーボールだけではなくネットや空気入 れ、競技用の黒板などといった相手のニーズに応じた支給を心がけてきましたが、それ でも支給校とは1回限りの関係で終わってしまいます。3年前から始めているのは、教 材を受け取った学校を中心に、自主的な競技大会を組織することです。競技大会や支給 するユニフォームに財団の名前を付けたりして、開催費用のほとんどを財団が負担する のですが、1割でも2割でも学校側、保護者側の負担を増やしていき、相互の協力体制を 組むように努力しています。  この7年間の経験により、いろいろなレベルで、人に支援、協力するときに起こりえ る問題が具体的に見えてくるようになりました。私は現在、外務省の対タイ経済協力計 画に参加しておりますが、日本政府のタイ向け経済協力、ODAについての議論をする際 に役立ています。たとえば、JBIC、JICA、日本大使館に対してモニタリングの重要性を 説いたり、7年間の経験で私が気づいたこと、感じたことなどを現地の政府協力機関や、 NGOのひとびとに伝えながら議論しています。こうした議論を目に見える形で、あるい は文書として残すことにより、そのときの経験なり教訓が今後の日本側の協力計画の中 で生かされることを目指しています。失礼な言い方になりますが、今の日本の経済・技 術協力は、3年ぐらいで担当者が代わり、なかなかノウハウが蓄積されません。  先ほどの中村会員が言われた一村一品、OTOPについても、まちがったイメージがある ように思います。最近の動きだけを見て、タイで「一村一品運動」が広がっていると言 いますが、3年前にタイ政府が設置した国家委員会は結局、会合は開催されず、今現在 はタイ政府がOTOPに対して特別に財政的支援をやっているわけでもありません。そうい う状況ですが、実は、日本の協力で昔から農村での生産活動や雇用創出に関する取り組 みがなされていたところへ、タイ側がOTOP、つまりワン・タンボン(村)・ワン・プロ ダクトというキャッチコピーに飛びついたわけで、これまでの協力の流れが大きく変わ ったわけではありません。日本政府は、OTOPに共通するアイディアや事業をすでに随分 と前から提案し支援してきたにもかかわらず、そうした流れが整理ができないまま、現 在のOTOPのみに目が向いているわけです。  先ほどの地域における雇用創出がタイで根付かなかったとすれば、やはり日本の中 で、過去の協力に対する経験やノウハウを蓄積し、あるいはモニタリングする仕組みが いまだないといわざるをえません。 ○吾郷座長  議論が百出しておりますが、時間が気になります。かなり技術的な側面からの議論、 かなり大がかりな評価全体、それこそ大目標に向けての評価をどうしたらいいかまで含 めて議論が出ています。この検討会で独自の評価手法を開発することが課題ですから、 そういう議論をたくさんしていただくことは誠に結構です。議題4に進む前に、今まで の議論を踏まえ、評価の取りまとめ方について、事務局で何か考えていることがあれば お願いします。 ○搆補佐  最終報告書に盛り込む際には、今までの分科会の活動、本日の議論は、議題の4にお ける「評価の改善」に該当することになろうかと思います。本日の議論を踏まえたとり まとめの方向性について提案させていただきます。まず、国際協力事業については、評 価が非常に難しいことはありますが、これまでの経緯を踏まえると、国民からは客観的 な評価が求められているところ、既存の評価手法では限界があるということを承知の上 で、この分野に適した評価手法を開発していかなければいけないということです。今回 はPCM手法に基づき試行してきましたが、これを基本骨格として評価の試行を続けて拡大 しながら、改善していきたいと考えています。  評価の試行については、先ほども限界について強いご指摘がありましたが、開発に特 に重点を置くこととし、評価そのものについて一定の精度が得られることが確認できる までは、あくまでも試行として取扱い、事業の方向づけに縛りをかけないことで進めた いと思います。投入のとらえ方について議論もありましたが、事業実施自体が目的の事 業と、制度の定着、あるいは間接的な裨益を期待する事業とに分けて、目的に応じた評 価手法を開発することは必要です。  また、評価にあたっては、評価すべき範囲を明確化し、案件の目標や上位目標は事業 の実施により直接に到達可能なものとしつつ、スーパーゴールのように評価の枠外とす べきものとの関係も整理します。労使関係では目標設定が難しいというご意見があった ところ、雇用、安全衛生、人材育成、それぞれについて適切な設定目標を例示できない かも含め、事務局から提案してみたいと考えております。 ○吾郷座長  その辺は事務局の腕の見せどころかもしれませんが、今日もいただいたいろいろなご 意見を集約する形、収斂させた形の方法を開発していただければと思います。ご質問は ありますか。なければ次の4に移ります。厚生労働省の労働分野の援助方針について事 務局から説明をお願いします。 ○搆補佐  資料4は、中間報告書本文の最終ページを基本としておりますが、今年度は、これを 前提に最終報告書を取りまとめていくこととしております。この中で、(1)厚生労働 省の労働分野の援助方針についてご議論いただきたいと思います。(2)評価の改善 は、先ほどご議論いただいたところを今後集約して、手法等の開発についてつなげてい くという報告スタイルになるかと思います。(3)は国際協力事業を担っていく人材の 育成についてですが、今後の協力に大きな影響を与えるものであり、今後数ヶ月の議論 で結論づけることは困難と考えています。中間報告で示された内容にとどめ、必要に応 じて来年度以降も議論を続けていきたいと思います。(4)調査研究についても、目出 しがしてありますが、JILPT(労働政策研究研修機構)で調査研究を行っており、 これをもし可能であれば次回の検討会に間に合わせて反映したいと思います。今のとこ ろ労働分野での他ドナーの動向を中心に調べており、特に英米、国際機関等の動きで す。ただし、労働分野とは我が国でとらえた切り口であって、海外ドナーはこのように はとらえにくいことがわかってきました。そこで、調査範囲をあまり縛らず、我が国の 労働分野との関わりが非常に緊密であるものについては、深く掘り下げて調べ、そうで もないが少し今後のこともあるので、関心を持って見ていこうという分野については全 体像のみを調べるという形で進めております。  したがって、本日は、(1)厚生労働省の労働分野の援助方針についてご議論いただ ければと思います。あらかじめ内容を絞り込むようなものではないのですが、事務局と して論点をいくつか例示させていただきます。まずは、我が国が行ってきた労働分野の 国際協力は分野横断的であり、外務省、JICA等の枠組みで行う産業分野別、協力分野別 の整理ではどの分野にも含まれるが、どの分野にも項目立てがされにくいことがありま す。次の、発展段階に応じた協力のあり方とは、これまでの労働分野の協力実績を関係 機関で共有する観点から、手法別、発展段階別に類型化し、データベース化しようとい うものです。1つ例を挙げると、JICAの技術協力である国に対して協力をしたあと でその国が発展し、協力が不要となることはよくあることですが、それを整理しておく ことにより一般化して活用ができる可能性があります。ある発展段階にある国に対する 協力の手法は、同様の段階にある別の国に対して有効な場合が少なくないのです。関係 部局レベルでは実施してきましたが、もっと体系的に、これまでの協力実績を手法別、 先方政府の発展段階別に類型化して、データベースのような見やすい形にすべきとの指 摘があります。当然我々も活用しますが、関係機関に見ていただき、労働分野が必ずし も詳しくない関係機関にも活用いただけるような形にしていくことが必要だと考えてい ます。事務局からは以上です。 ○吾郷座長  私が前回の合同会議に出席したときの感触では、ほかの水道分野、医療分野の検討会 は、専らこちらをやっている感じでした。評価の手法についても、我々は1年以上かけ てやってきましたが、他の分野ではそれを飛び越して方向性に関する提案ばかり出てい た感じがします。その意味では我々はようやく到達したと思います。評価手法の検討だ けでも困難な点が出てくるわけですから、今後は議論百出で大変なことになる可能性は あります。中村会員の報告ではありませんが、議論を尽くしても結論は明確に見えな い、しかしその中から将来に向けての方向性が見えてくるわけです。最終年度というこ とで検討にあまり時間をかけられないのですが、今日は頭出しということでご意見をい ただければと思います。 ○末廣会員  1つ気になる点があります。国際協力の前提となる基本方針としての新ODA大綱と 去年の新ODA大綱に基づく中期実行政策の内容が、どうも小泉首相のバンドン会議で の発言により、アジアからアフリカへとシフトが始まって、JBIC、JICAなどがそれに合 わせて再調整を始めている点がそれです。我が国の中期政策は、ODA総合戦略会議で長 期目標を決めたときに、成長支援と貧困撲滅を切り離すのではなく、「成長を通じた貧 困削減」を重視するということだったと理解していますが、今回、アフリカが重点地域 に入ったことにより、インフラ整備など成長目的は「成長支援」で、貧困目的は「貧困 撲滅」でというように、二元的に捉える方向が強まってきているように感じられます。 こうした日本政府の軌道修正に対して、労働分野は当初の方針のままでよろしいのでし ょうか。つまりアフリカにおける労働協力は考えなくてもよいのだろうかということで す。 ○村木国際課長  これは中村会員や野見山会員が詳しいですが、昔は例えばケニアなどで職業訓練セン ターをつくってということをやっていて、最近のほうがアジアにほとんど重点を置いて いる状況だろうと思います。いま末廣会員がおっしゃったところは、我々も少し悩んで いるところなのです。まだ全体の整合性の中での位置付けをきちんと整理していないの ですが、我々の何となくの思いとしては、我々の分野はやはりアジアが大事であり、い まおっしゃったことで言えば、成長と貧困とをまさに一緒にするところが労働分野だと いう思いがあります。しかし、そこは我々としてもきちんと整理し切れていないところ です。 ○吾郷座長  表向きは我々の検討会は、アジアに特化しなければいけないことはないですね。 ○村木国際課長  はい。そういうことはありません。 ○吾郷座長  だから一般的に評価方法を検討してきたわけです。 ○搆補佐  実際の議論の材料は、例えば評価の試行では中国やASEANであるなど、中程度の発展 段階にある国を念頭においていると言うことはあります。 ○中村会員  会員にアジアに詳しい人が多いとの意見もありますが、むしろ違いすぎてアフリカ協 力がよくわからないということです。 ○吾郷座長  どういたしますか。あとは議題5、6を残すだけですが、議題4でまだ議論をいたし ますか。10分や15分では終わりそうにありません。 ○搆補佐  最終報告書案の項目の立て方についても、入れておくべきものがあるなら、あらかじ め提案いただいておいた方がありがたく存じます。 ○末廣会員  発展段階に応じた協力に関連しますが、タイは中進国入りが目前なので、ODAという 表現をやめて、新しいパートナーシップの構築を目指す「経済協力計画」を策定すると いうことで、8月3日の総合戦略会議で承認される見込みです。こうしたタイのやりか たをモデルとして他の国に適用できるかどうかについては、わたしどもはかなり慎重な 見方をしています。先ほどのアフリカの話に戻りますと、アジアの成功をモデルにして アフリカに適用したいという議論があるわけです。  私は現在、アグロインダストリーを通じた成長、特に地方における雇用創出に貢献す るアグロインダストリーの発展を実現してきたタイの経験をアフリカに伝えるJBICのプ ロジェクトに参加しています。この3カ月の議論の感触では、アジアの経験をアフリカ に直接適用するのはとても難しいように感じております。ある国のモデルは簡単にほか の地域には適用できないということです。したがって、最初から適用可能という形で設 定せずに、どうすれば適用できるかという検討レベルにとどめておいた方がよいと思い ます。日本政府としては、アジアモデルをアフリカへという期待がきわめて高いは思い ますが・・・。 ○吾郷座長  質問があります。2の(1)の最初の行で、「協力基本方針、地域別方針、国別方針 」とありますが、「テーマ別方針」というのはあり得ないのですか。つまり例えばSY Bでもいいし、別の方針を立てるというのもあり得るのかなと思います。 ○搆補佐  例えば、雇用、人材養成といったものでしょうか。 ○吾郷座長  はい。例えば確かUNDP、ESCAPなど国連が最初に国別方針でやり始めたが、限界があ るとしてその後一時期テーマ別方針に代わり、また議論となったのです。私も専門でな いのでよくわかりませんが、両方やってもよいように思うのです。 ○野見山会員  この議題について白紙から我々が意見を言うよりも、少なくとも厚生労働省としてど う考えているかを示していただいたらよい。特に末廣会員のお話のとおり、政府全体の 国際協力方針と労働分野の協力分野というのは、果たして独立性を持てるのかどうか、 あるいは持たせるべきなのか、一致してやるべきなのかといった考え方が私にもわかり ません。例えば、政府が貧困対策を行うこととし、労働分野も貧困対策に重点を置くと いうならば国別方針、分野別方針も似通ったものになります。  貧困というとアフリカがすぐ思い出されるので、貧困対策が重点ならば、もうアフリ カ重点だと思います。アジアの貧困もありますが、貧困の性格が全然違うわけです。で すから貧困というイメージを頭に描いたときには、もうアフリカだということにどうも なってしまいます。アジアの貧困は雇用機会をやる、あるいは能力開発、安全衛生、そ ういういわばもう少しレベルの高い意味の中産化と言うか、そういうことを狙った貧困 のレベルの高いものを狙っていくことになると思います。その辺のスタート時点を行政 側としてどう考えているかを教えていただければ、少しはアクセントの付けようもある かなと思います。 ○釜石専門会員  すみません、専門会員としてではなく、元事務局としての発言ですが、政府としての ODAの方針は、もうODA大綱で決まっているわけで、それとは独立して労働分野の 方針を考えようとはしていなかったのです。その下にもっと詳しいものができればとい う考え方でした。と言うのもODA大綱には、労働分野のことはほとんど書いていませ んし、中期政策にもあまり書いていません。また国別援助計画にもあまり書かれていな いということで、各段階の援助方針に労働としての考え方を段階的に整理しておく必要 があろうと考えておりました。そういうことで政府の全体方針に一致した形でというの は、変わらないと思います。 ○搆補佐  労働分野がODA大綱、中期政策の枠内で動くということは間違いないです。末廣会 員が言われたように、政府がこの時期に打ち出していく方針の中で基本的に進めていく ことになるのだと思います。次回までにそういうところを整理しておきたいと思いま す。もちろん、労働分野も政府の施策の一分野ですので、逆に労働分野として打ち出し ていき、政府の政策全体の方針を引っ張っていくことは可能です。 ○吾郷座長  それでは最後に今後の活動計画についてご説明いただきたいと思います。 ○搆補佐  資料4の最後にありますが、今年度で最終報告になるので、早速いまご提案いただい た方針に沿って、事務局で素案を作りたいと思います。可能であれば10月の半ばぐらい には、次回の検討会を開きたいと思います。逆に言えば、それまでに素案を作成するよ うにします。議論の結果大きな手直しも必要になるかと思いますので、これを踏まえて 12月ごろにもう一度検討会を開催し、報告書を取りまとめたいと考えています。その 次の回はまらなかった場合の予備日として設定しています。 ○吾郷座長  いかがでしょうか。特にご意見がなければ、私からひとつお願いと相談ですが、実は 10月から半年間タマサート大学大学院で授業をします。「アジアの視点から見た国際経 済法学」というテーマです。基本的には九州大学をその間の6カ月離れることになりま した。事務局とは相談したのですが、座長を仰せつかり、最後に投げ出すのも心苦し く、どなたかに代わっていただこうと思いましたが、そのうち少なくとも3回日本に帰 って来なければいけないことがいま決まっています。それをうまく絡み合わせると、も しかしたら全部出られるかもしれませんし、最悪の場合でも1回欠けるだけで済むかも しれません。いざというときに今野会員に座長をしていただくということで、切り抜け られないかと思っています。 ○今野会員  1回だけですか。 ○吾郷座長  10月の半ばに福岡で用事がありますから、10月中旬とされている第6回検討会 を、例えば17日、20日、21日辺りに設定されれば出席可能です。ほかの会員の方 々の予定もあることですが、私としては20日、21日辺りがいちばんよろしいのですが、 皆様のご予定を伺えればと思います。 ○吾郷座長  それでは、次回は10月21日午後3時から5時までということでお願いします。 12月の予定はわかりません。場合によっては、12月は今野会員に座長をお願いする ことになるかも知れません。  これで議事は一通り終了したと思いますが、ご質問はないでしょうか。 ○今野会員  意見ですが、中村会員から説明のあった労使関係のようなプロジェクトについても評 価の仕方を考えていかねばなりません。 ○中村会員  私は一面ではプロジェクトに関わっている当事者なので、よく知りすぎていて客観的 に評価できるのか問題です。今野会員がおっしゃったように、スーパーゴールと極めて プロジェクトそのものの現実的な評価の2つに分けて行う方法が適切と思います。 ○今野会員  あるいは何か目標を作ってもらい、「労働組合リーダー1,000人養成」などとして、 インプットを測る以外はなさそうです。 ○中村会員  そのとおりです。あるいは、彼らのアンケート調査で判断することでしょうか。 ○末廣会員  事業の評価はセミナーが中心のようですから、セミナーの開催回数ではなく、セミナ ーによって参加者の意識が変わったことなどを評価していく必要があるのではないでし ょうか。 ○搆補佐  中間及び最終的な評価では、まさにセミナーの参加者に対するアンケート調査をやっ ています。調査の内容については議論のあるところで、今後も大いに改善していかない といけないと思います。 ○吾郷座長  一種の教育ですから、先ほどの小野会員代理の学校の教育の評価の方法と通じるとこ ろがあり、それこそ何回手を挙げたかというのは、確かに指標化して数字に現われます が、本当に生徒が育っているのかどうかは、それだけではわからないのです。一応数字 化できているだけであり、そういう意味ではセミナーをやり、本当に労使関係がよくな ったかは、そこまではわからないわけです。何かそういう手を挙げる回数のようなもの を作れれば、一応いいのではないかという感じはします。 ○搆補佐  今日来られていませんが、前回分科会において、松岡会員から、横への広がりという のは、セミナー参加者そのものではなく、彼らが帰った後どのようにしたかをしっかり 見ないといけないというお話をいただきました。これを全部やるということになれば大 変なのですが、ちょうど小野会員代理からいただいたサンプリングということで見てい くことであれば、何らかの形でフィードバック、評価の材料を集めることは今後できる かなと考えております。 ○末廣会員  1つのいいケースとして、「ASEAN」があります。当初、ASEAN加盟諸国の首脳はもち ろんのこと、経済大臣、外務大臣が一堂に会することはなかったわけですが、10年、 20年に及ぶ定期的な会合の積み重ねにより首脳会談にまで発展したということです。 最初の15年間は集まるだけでしたが、本来は顔を合わせることのない国々のひとびと が定期的に集まる場を設定したことが、ASEAN成功の背景として高く評価されています。 労使関係においても、このようなものは今までなかったはずですから、こうした場を新 たに設定したことを評価として、その効用をもっと全面に出してもよいという気がしま す。 ○吾郷座長  ありがとうございます。ちょうどそろそろ時間です。いろいろ貴重なご意見を出して いただき、有意義な検討会だったと思います。それでは、今後、事務局に今までの議論 をまとめて整理していただき、次回会合を10月21日(金)午後3時にお願いしたい と思います。詳しいことは別途御連絡いただくこととします。今日はどうもありがとう ございました。                                      (了) (照会先) 厚生労働省国際課国際協力室 国際協力室長補佐 搆 03-5253-1111 内線7303