05/07/07 労働政策審議会雇用均等分科会第47回議事録            第47回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成17年7月7日(木)14:00〜16:00 2 場所: 厚生労働省専用第21会議室 3 出席者:    労側委員:吉宮委員、篠原委員、片岡委員    使側委員:川本委員、吉川委員、前田委員、山崎委員、渡邊委員    公益委員:横溝会長、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員、林委員 ○横溝分科会長  ただいまから「第47回労働政策審議会雇用均等分科会」を開催いたします。本日のご 欠席は岡本委員、佐藤孝司委員、樋口委員の3名です。議事に入る前に、傍聴の皆様に お願いがございます。傍聴に当たりましては、事務局より既にお配りしております「傍 聴される皆様へ」の留意事項に記載されている事項を是非遵守していただき、円滑な審 議の進行にご協力をお願いいたします。  本日の議題は「男女雇用機会均等対策について」です。本日は、まず論点のうち「女 性保護・母性保護」についてご議論いただきたいと思います。その後、これまでに取り 上げた論点項目全体について、追加のご意見等があればご発言をいただきたいと思いま す。まず、女性保護、母性保護について、事務局より資料についての説明をお願いいた します。 ○石井雇用均等政策課長  それでは女性保護、母性保護の関係の資料についてご説明いたします。昨年10月の第 37回雇用均等分科会で、「女性の坑内労働に係る専門家会合」、「母性保護に係る専門 家会合」の開催、及びそれぞれについて平成17年の夏ごろまでに取りまとめをするとい う説明をしたところです。先般、それぞれの報告書が7月4日に取りまとまりまして公 表をしたところですので、報告させていただきます。私からは資料1に基づき、「坑内 労働に係る専門家会合報告書」についてご説明いたします。  資料1の本報告書、報告書本体の最後の頁に「参集者名簿」が付いております。ここ にあるように、この専門家会合では櫻井治彦中央労働災害防止協会労働衛生調査分析セ ンター所長に座長をお願いしております。その前の頁ですが、右のほうに「女性土木技 術者数」、左には「女性の坑内労働に係る要望」が掲載してあります。このところ女性 の土木技術者数が非常に増えてきているというのが見られると思います。女性の坑内労 働に係る要望は、全国規模の規制改革要望に挙がってきたもので、政府としての対応が 求められていることについて、昨年10月にも申し上げました。その時点においては、東 京都からの要望であったのですが、その後日本経済団体連合会からの要望が付け加わっ ております。ほぼ同趣旨ですが、女性技術者に対しての規制緩和についての要望です。  内容に移りますが、時間の関係がございますので、以後は報告書の概要の3枚のほう でご説明いたします。報告書の概要の、「1 はじめに」をご覧ください。この専門家 会合については、現在の坑内労働の作業環境、作業態様と、坑内労働が女性の健康等に 与える影響等について、専門的な見地から検討したものです。「2」として、坑内労働 の概況と特徴を並べております。坑内労働はタイプとして2種類に分かれております。 1つが鉱山におけるもの、もう1つがずい道工事など鉱山以外、いわゆるトンネル工事 が典型かと思いますが、そうしたもの2種類あるわけですが、現在において、その大半 は鉱山以外のものとなっております。また、いずれについても技術の向上、機械化の進 展などによって、従前多かった筋肉労働の比率は低下しているという共通点がありま す。  鉱山における坑内労働ですが、鉱山の数、鉱山で働く労働者の数、そのうち坑内で働 く労働者の数、いずれも大きく減少しております。現在稼行中の主な坑内掘りの鉱山は 19カ所で、そこで働く坑内労働者数は約1,000人となっております。また、ずい道工事 など、鉱山以外における坑内労働ですが、工事の約8割以上が道路、鉄道、下水道で占 められております。こちらの分野については、今後とも一定数の労働者の従事が見込ま れるところで、施工方法としては山岳工法、シールド工法、推進工法、開削工法などに よるものであり、最も多いのが山岳工法で44%、シールド工法が28%といった比率にな っております。これは報告書本体のほうに記載してあるものです。  2(2)は坑内労働の特徴と労働災害の状況です。まず坑内労働の特徴ですが、この 専門家会合では鉱山3カ所、ずい道工事4カ所の現地調査を行っており、その上で特徴 点を整理しております。ちなみに、ずい道工事については山岳工法、シールド工法それ ぞれについて、大きい断面の工事、小さい断面の工事それぞれについて現地調査をして おります。特徴点としては、掘削する地層によってガスや地下水の流出、落石・落盤等 の可能性を持っているということがあります。もう1つは掘削断面の大小、あるいは工 法の相違によって坑内環境、機械化が可能な範囲が異なってくる。重機作業がほとんど ですが、小規模断面においては、人力による筋肉労働が一定程度必要となっている、こ のような状況です。(2)の労働災害の状況ですが、近年、鉱業及びずい道新設事業にお ける労働災害の発生は大幅に減少しており、現在においては、必ずしも常に産業平均よ り労働災害が多く発生しているというものではありません。  「3」は坑内労働に係る規制についてまとめております。我が国の坑内労働の規制の うち、女性特有の規制について(1)(1)で整理しております。坑内労働についての女 性の規制は、労働基準法第64条の2に規定されており、女性一般の坑内労働は、現状で は原則禁止となっております。ただ、昭和60年の改正以降は、例外的に、ここにあるよ うな「医師・看護師の業務」「取材の業務」などについて臨時的に入坑が許容、となっ ております。ただし、妊産婦については規制があるということです。  2頁で、こうした規制が設けられた理由について記していますが、この規定は昭和22 年の労基法制定に遡るわけですが、当時の理由としては肉体的、生理的に特殊性を持つ 女性にとって、適当な労働とは言えないということで、全面的に禁止がなされたもので す。当時はこの理由に加えて、風紀上の理由も挙げられておりました。その後、この規 定を基礎にして、昭和31年ILOの第45号条約、これはすべての種類の鉱山の坑内作業 における女子の使用に関する条約ですが、我が国はこれを批准しております。また、そ の後の変化として昭和59年の婦人少年問題審議会、現在ではこの分科会に相当します が、そこでまとめられた建議を受けまして、母性保護規定以外の女子保護措置である坑 内労働規制が見直されて、いまあるような臨時的な業務について規制が緩和されたとい う経過があります。当時の建議においては、一時的に入坑するなど、我が国が既に批准 をしているILO第45号条約において入坑が認められている者については、その規制を 解除することといった形ですが、実際に認められたものは、特に要請が強かったものに ついて、ということになっております。  (2)は坑内労働に係る男女共通の規制です。昭和22年の労基法においても労働時間規 制などがあったわけですが、その後、ここにあるように鉱山保安法、じん肺法、労働安 全衛生法が制定され、その後規定の追加、さらには強化というのがなされてきた結果、 男女双方に対する規制については強化がされてきたところです。そのことに伴いまし て、落盤等による危険の防止、粉じん対策、坑内ガスの管理などの安全性対策について 一定の水準が確保されているというのが現状です。さらに、(3)で坑内労働以外の女性 に係る特有の規制についても触れております。母性保護の見地から、労働基準法第64条 の3において、妊産婦、妊娠出産に係る機能に有害な業務として規制がかかっておりま す。これについては、坑内労働にも等しく適用がなされていることをここで記載してお ります。  3(2)では諸外国における坑内労働に係る規制をまとめております。専門家会合で はILO、EU、イギリス、オランダ、フィンランド、フランス、ドイツ、アメリカに ついて調査を実施しました。その結果も踏まえて整理していますが、まず我が国が批准 しているILO第45号条約です。この条約は、先ほども申し上げましたが、鉱山におけ る坑内労働についての規制をしている条約で、鉱山以外の坑内労働は対象外となってお ります。この条約自体は、そうした労働における著しく過酷な条件から、女性を保護す ることを目的として制定されたものです。したがって、管理の地位にあって筋肉労働を しない場合などについては例外を設けております。調査の対象となった国のうち、この 条約を現在批准している国はフランス、ドイツです。イギリス、オランダ、フィンラン ドについては、もともと批准をしておりましたが、ここに記載のある年において廃棄し ております。アメリカについては批准をしていないという状況です。  諸外国における規制の概況ですが、調査を行った国の中では、女性の鉱山以外におけ る坑内労働を規制している国はありませんでした。したがって、ずい道等建設工事につ いての規制を設けている国は、調査対象の中ではなかったということです。しかし、I LO第45号条約を批准しているわけですから、当然と言えば当然ですが、鉱山の坑内労 働についてはフランス、ドイツが女性の就業を規制しております。1975年の国際婦人年 以降、先進国を中心にILO第45号条約を廃棄する動きがあり、現在、先進国を中心に 10を超える国が廃棄をしているところです。そうした調査対象国のうち、廃棄した国の 理由というものも把握をしたわけですが、3つほど理由として挙がっております。1つ が男女の機会均等、2つ目は安全技術の向上や労働環境の改善、坑内労働のリスクは男 女共通であるといったことをそれぞれの国は挙げてきているところです。ただし、こう した国も妊娠中や授乳期の女性労働者については、その保護のための規制を設けている というところです。  3頁は国際機関の動向です。ILOとEUと、ここではそれぞれ記載をしておりま す。まずILOですが、その理事会においてより新しい条約、これは1995年に採択され ておりますが、鉱山における安全及び健康に関する条約の批准を推進し、併せて、古い 条約である第45号条約の廃棄を勧めることを1996年に決議しております。一方、EUで すが、欧州委員会が女性の鉱山坑内労働を原則禁止しているオーストリアがEU指令に 違反しているということで、2003年に欧州司法裁判所に提訴しております。2005年にそ の判決が出ており、オーストリアは実質敗訴をしているところです。  「4」が結論になるわけですが、現在の坑内労働の作業環境、作業態様と、坑内労働 が女性の健康等に与える影響についてです。ここで大きく3つに分けて整理をしており ます。まず、坑内労働における典型的、主なリスク要因である落石、落盤、出水、ガス 爆発などについては、男女双方が等しく遭遇し得るリスクであり、防止措置が法令に規 定された結果、労働災害も減少しているということで、特段の考慮というのはいかがな ものかということで整理をしております。  2つ目のその他のリスク要因のうち、有害化学物質による影響ですが、先ほども触れ たように、労基法第64条の3によりまして、妊産婦と妊娠出産機能の保護の観点から規 制がなされており、坑内・坑外問わずの規制です。したがって、坑内労働に特有の問題 として考慮する必要はないのではないかということです。3つ目は、その他のリスク要 因のうち、高温、気圧、粉じんや筋肉労働等による影響です。この点については、坑内 労働規制を設けた当時と比べて、作業環境、作業態様が変化してきていることがありま す。  まず作業環境について見ると、労働安全衛生法令等によって、管理水準が確保されて いるということがあります。風管の設置、あるいはクーラーの設置、防じんマスクの装 着義務など、いろいろな規制が現在なされているところです。その結果、作業環境がよ くなってきていることを報告書では記載しております。また、作業態様ですが、機械化 ・工法の進展によりまして、従前は人力による作業、つるはしを使ってといった作業で あったものが、現在では重機操作あるいは監視業務が主な作業となり、従前のような筋 肉労働は存在しておりません。結局、高温や異常気圧などの下での業務をいま考えたと きに、妊産婦以外の女性について、坑内労働以外では、現在就労が認められてきたとい うことがあります。しかし、そうした女性において、健康面や安全面で、男性と比較し て特別に問題が生じるとの明らかな知見は得られていない状況にあります。  こうしたことを受けて、結論として(4)に記載しておりますが、「以上から、総じて 坑内労働については、作業環境及び作業態様の双方において、格段に高い安全衛生の確 保が図られるようになっており、このような安全衛生の水準が保たれていることを前提 とすれば、現在では女性の坑内での就労を一律に排除しなければならない事情は乏しく なってきていると考えられる」としております。ただし、妊産婦については、「母性保 護の観点から十分な配慮が必要と考えられる」としております。  5の規制の課題として、ここで一言触れているのが、ILO第45号条約との整合性で す。今後の検討によっては、この第45号条約との整合性が問題になる、その場合、IL O第176号条約、新しい条約が求める安全衛生管理の水準にも留意が必要と締め括って いるところでございます。資料1については以上です。 ○麻田職業家庭両立課長  続きまして、母性保護に係る専門家会合の報告書について説明いたします。資料は No.2、これが本文と参考資料の合体したもので、その下に2枚物の報告書の概要を付 けてあります。資料2の中身の構成を申し上げますと、報告書の本文が1〜8頁、その 後に参考資料が1〜15頁として一緒に付いております。専門家会合のメンバーですが、 参考資料の1頁目にあるように、総合母子保健センター愛育病院院長の中林正雄先生に 座長をお願いし、ご覧の方々に参集いただいております。  母性保護に関する専門家会合について、最初に経緯的なことを若干申し上げたいと思 います。資料2の本文1頁ですが、母性保護については、ご案内のように労働基準法、 男女雇用機会均等法の中に母性健康管理の措置ということが規定されておりまして、さ まざまな措置があるわけですが、その中で妊産婦以外の女性に対しても就業が禁止され ている措置について、いままでも均等対策の検討を行うごとに、母性保護全体の見直し を行ってきたわけですが、従来の専門家による会合の中での宿題事項というのがありま す。真ん中より少し下ですが、平成8年の母性保護に関する専門家会議において、重量 物の取扱業務における規定の必要性について、今後の課題として引き続き検討すること が必要とされてきたことが1つあります。また、同じ研究会の報告ですが、有害物の発 散する場所における業務について具体的な物質の有害性について、今後とも新たな医学 的知見を踏まえ、継続的に検討していくことが必要とされていたというところです。こ の2点については、過去からの宿題事項という背景を持って検討を開始したわけです。  今回の専門家会合においては、3点のテーマについて検討を行っております。1点目 が「産前産後休業について」、2点目がいま申し上げました「重量物取扱業務について 」、3点目が「有害物の発散する場所における業務について」です。以下、それぞれ検 討の内容と結果について説明したいと思います。  本文2頁ですが、最初のテーマが産前産後休業です。産前と産後をそれぞれ分けて検 討を行いました。産前休業ですが、現行の産前休業は単胎妊娠の場合に産前6週、多胎 妊娠の場合は産前14週、本人の請求に基づく休業ということで労働基準法に規定されて いるところです。現在の制度が見直しを要するものか、あるいは現行のままでいいかと いうことについて、専門的な見地から検討が行われたわけですが、その内容を掻い摘ん で申し上げますと、妊娠末期については、例えば子宮容積の増大等によって血液量の増 加や体重の増加が起こって、母体への負担が増加する。正常の動作でも、例えば疲れや すい、心拍数の上昇等の症状が出やすくなるので、労働による負担を軽減するととも に、日常生活においても十分な休養を取ることが求められるということです。  片や、いつごろ出産が起こるかという分娩週数ですが、最近のデータを見ると、妊娠 36週からが目立って多くなっている。この2つを踏まえて、現在妊娠36週の2週間前で ある妊娠34週に相当する、産前6週間前から休業できるということになっております が、このような制度の基準は適切であり、変更する必要性はないと述べております。こ のことは国際的な動向と比べても、遜色のない水準にあると述べております。従来妊娠 中毒症と言っていた妊娠高血圧症候群重症や、早産のおそれ等のために産前休業より前 の段階で休業が必要になるという場合もありますが、このような場合については個々の 労働者の状況に応じて、均等法第23条の母性健康管理の措置を適切に実施することによ って対応することが適当と述べております。  以上が産前休業ですが、次に産後休業のあり方です。現行の産後休業については、単 胎妊娠、多胎妊娠を問わず、原則8週間となっておりまして、そのうち産後の6週間に ついては強制休業期間、残りの2週間は本人の請求と医師が認めることを条件に、就業 ができる期間となっております。いまこのようになっている考え方ですが、産褥期間が 産後6〜8週間であることを考慮して、このように定められているものです。今回、専 門的な見地から検討を行ったところ、これを否定する知見はなく、国際的な水準を見て も特に問題はないと述べております。産前の場合と同じく、妊娠高血圧症候群重症の場 合には、産褥期間がもう少し長くかかる場合もありますが、これについても全体から見 れば例外的な状態ですので、母性健康管理の措置を個別に講じることが適当であると述 べております。以上が産前産後休業ですが、短く申し上げますと、いまの制度を変える 必要はないという結論です。  次に、重量物の取扱業務についてです。現行の法制度ですが、重量物の取扱業務につ いては、女性の妊娠または出産に係る機能に有害であることから、妊産婦以外の女性一 般も含めて、一定の就業が制限されております。制限の内容ですが、断続作業、これは 労働時間の30%以上ということですが、30Kgのものを取り扱う。継続作業は50%以上で すが、20Kg以上の重量物を取り扱う業務の就業が禁止されております。取り扱うという のは、重量物を担うとか担ぐといった場合を言うという考え方で、昭和22年の労働基準 法制定当時からこのような規制となってきております。従来の検討結果ですが、昭和60 年と平成8年の2回にわたり、専門家による検討がなされておりますが、2回とも重量 物の取扱いが、女性の妊娠または出産に係る機能に影響があることを否定する十分な知 見は見当たらないということで、このような規制が維持されてきているところです。  次に、重量物の取扱業務の現状です。重量物の取扱が比較的多いと思われる業界にヒ アリングをいたしましたが、実態は、現在では重量物を担いで運搬するといった業務に ついては、機械化が進みまして、ほとんど行われなくなっております。機械化されてい ない業務についても、取り扱う重量が30Kg未満であったり、あるいは積込み・積み卸し が主体となっているという状況です。結論的には、労働基準法制定時に重量物取扱作業 として想定していたような、何十キロにもなるようなものを人の力で担いで運搬するよ うな業務は、過去のものとなりつつあるということです。一方で、新たなサービスが展 開しており、例えば女性の宅配ドライバーが登場するとか、引越しを女性スタッフだけ でやるといった女性の引越サービスといった業務が出現しております。重量物取扱業務 そのものには当たりませんが、重量による負荷の大きい業務として、介護労働に従事す る女性労働者が増加している、このようなことが現状です。  次に、国際的な動向ですが、(4)にあるように、母性保護の観点からの重量物の取 扱については、各国それぞれ違ったタイプがあります。我が国と同様に、女性一般とい うことについて就業禁止をしているのがフランスです。その他の国は、妊産婦について の一定の制限をしているところがありまして、妊産婦について一律の就業制限をしてい るのがドイツ。妊産婦について一律就業制限ではなく、リスク評価とその結果に応じた 措置の実施を義務づけているタイプとしてイギリス、EUがございます。  ILO第183号条約(母性保護条約)については、重量物だけではなくいろいろな業 務についてですが、母子の健康により有害であると認められた業務等について、妊娠中 及び哺育中の女性がそのような業務に就く、行うということの義務を負わないことを確 保するための適当な措置を加盟国は取ることとされております。国際的には以上のよう な状況ですが、関連する仕組みとして、母性保護以外の重量物取扱に関連する労働安全 衛生対策というのを見ると、重量物取扱作業や介護作業については、腰痛の要因になる ということで、防止するための指針が定められているところです。  諸外国及び安全衛生対策は以上ですが、この点についての結論は5頁の上にありま す。重量物の運搬と妊娠出産機能の関係ですが、「重量物の運搬は出産、加齢等の他の 要因とともに、子宮下垂・脱を起こす要因の1つとされており、現段階においても重量 物取扱業務の将来の妊娠分娩への影響を否定する十分な知見は見当たらず、保護が不要 であり、直ちに現行の制限をなくすべきとまで言うことはできない」としております。 今後も医学的な知見を踏まえ、引き続き検討していくことが必要と結論づけておりま す。  次に、「また」として規制のあり方についてのまとめですが、「女性一般に対して、 一律に就業制限を設けることについては慎重であるべきであり、今後重量物取扱業務に 関する規制のあり方について検討するに際しては、作業の実態、事業場における労働安 全衛生対策の状況や国際的な動向も踏まえ、一律に一定の重量の水準を定め、就業を制 限するという方法が適切かどうかについて検討されるべきである」と結んでおります。  次に、3点目の有害物について申し上げたいと思います。有害物の発散する場所にお ける業務ですが、現行の法制度は重量物の取扱業務と同様、女性の妊娠または出産に係 る機能に有害であるということから、妊産婦以外の女性も含め、女性一般について一定 の就業が制限されております。この制限は一定の化学物質を列挙して、これらが通達で 示している一定の濃度以上になっているものが発散されている場所での一切の就業を禁 止するものです。その際、防毒マスク等の保護具を用いたとしても、女性は就業を強制 されないといった絶対的な就業制限となっており、これについても昭和22年から変更が ないものです。有害物の発散する場所における業務についても、昭和60年、平成8年と 専門的な見地から検討が行われてきており、先ほど申しましたように、どのような物質 が本当に母性に有害であるかについて、今後とも新たな医学的知見を踏まえ、継続的に 検討していくことが必要と平成8年の報告では結ばれているところです。  次に、このような関係の業務の現状ですが、労働環境調査によると、このような作業 が比較的多いと思われる産業の女性労働者のうち、鉛業務、有機溶剤業務、特定化学物 質を製造し取り扱う業務に従事される方がそれぞれ3.2%、9.6%、0.9%いるという結 果になっております。ただ、ここにある鉛業務や有機溶剤業務という括りが、必ずしも 基準法で就業制限されている業務と一致するものではないので、法違反がこれだけある ということではありません。その他、化学物質というのは常に新しく生み出されてい る、また産業界で広く使用されているということがあり、これらの業務以外にも女性労 働者にいろいろな物質のばく露があるということも予想されるところです。  次に、国際的な動向ですが、諸外国については重量物と全く同じような色分けになっ ており、女性一般の就業禁止をしている国はフランスがあります。妊産婦についての一 律禁止がドイツ。一律禁止ではないが、事業主にリスク評価をして、その結果に応じた 措置を取れと言っている国にEU、イギリスがあります。ILO第183号条約について も、危険有害業務に関して重量物取扱と全く同じような形の規定がございます。  7頁の(5)の生殖毒性を有する化学物質の分類をご覧ください。どのような物質が 妊娠出産機能に有害かということを特定していくことが、規制のためには必要なわけで すが、これは各国あるいは外国の学会等においていろいろな分類がなされております。 代表的なものとして、EUの分類、アメリカの専門家の団体であるACGIHの分類と いうのがありますが、現在、日本の法制で妊娠出産機能に有害ということで規制対象と なっている物質と、EUの分類で生殖毒性ありとされているもの、ACGIHの許容濃 度の勧告値の設定に当たって、生殖毒性が考慮されている物質というのは必ずしも一致 を見ていない状況になっております。  次に、安全衛生対策の関係で新しい動きがあり、少し説明したい事項があります。そ れが(6)の「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム」に関する国連勧告へ の対応です。8頁ですが、平成15年(2003年)に、人の健康の確保、化学品の国際取引 を促進するという観点から、国連から「化学品の分類及び表示に関する世界調和システ ム」というものを導入することが勧告として公表されております。この内容ですが、世 の中にある化学物質について、危険有害性ごとにその程度を分類する。ですから、これ これの物質にはこうこうこういう、例えば危険性がある、発がん性がある、生殖毒性が ある、爆発性があるなどの危険有害性があるといったことを分類し、また危険性のレベ ルを分類して、それに応じた絵表示を付けるというシステムを導入することなどを内容 とする勧告が出ております。  我が国はこの勧告への対応として、平成18年12月までに、これに対応した仕組みをつ くることにしておりまして、その前提となる化学物質の分類作業というのを、いま政府 全体で進めております。この分類作業の中には、発がん性、生殖毒性の分類も当然入っ ており、妊娠出産機能に有害な物質に関する情報も、この作業が終われば、かなり系統 的に明らかになるという状況です。  以上を踏まえて、(7)で報告書の結論を述べております。女性一般に対する有害物 を発散する場所における業務の就業制限の枠組みについてですが、鉛のように、現に妊 娠出産機能に対して有害であると考えられる物質が存在しているということに鑑みる と、直ちにこの枠組みをなくすことはできない、その制限をなくすべきということはで きないとしております。しかし、就業制限の対象となっている化学物質というのは、現 在の知見に照らせば、妊娠出産機能について明確に有害性を有するとは必ずしも言えな い状況にある。先ほどの諸外国の分類結果との整合性の問題です。  一方で、「労働の場においてさまざまな化学物質が使用され、また科学技術の進歩に 伴い、新たな化学物質が使用されていることへの対応も必要である」としており、もし かすると、新しく規制対象に加えなければいけない物質もあるかもしれないという趣旨 です。以上のような事情を踏まえ、「基本的には規制対象となる化学物質の範囲につい ては、新たな知見を踏まえて見直すことが適当である」としております。その際、先ほ ど申しました国連勧告への対応としての生殖毒性への程度の分類作業というのは、「実 質的には女性の妊娠出産機能に有害な化学物質の検討と重なるものであることから、同 作業の結論を踏まえ、母性保護の観点から、規制対象となる化学物質を検討することが 適当である」としております。規制の手法についてですが、一定の水準を定めて、一律 に就業を禁止するという保護の手法が適切かどうかについても、「労働安全衛生政策 や、国際的な動向等を踏まえ、今後の課題として引き続き検討することが必要である」 と述べております。  最後に、「事業場において、妊娠出産機能の保護が適切に行われるためには事業主、 労働者、産業保健スタッフ等が化学物質の有害性等についての十分な情報を、適切な方 法により得られるようにしていくことが重要である」ということで、これは運用上の留 意事項ということですが、このことを述べて終わっております。大変長くなり、申し訳 ございません。以上です。 ○横溝分科会長  それではご議論をお願いいたします。 ○川本委員  いま2つ報告されたわけですが、坑内労働について一言意見を述べたいと思います。 先ほど事務局から説明がありましたが、資料1に本報告書があって、後ろから1頁目に メンバーの方々、後ろから3頁目に要望の関係がありました。実は私が所属しておりま す日本経団連からの要望が入っているのですが、これは女性技術者が坑内の労働、特に 監督や監理、施工管理に関わる業務ということで坑内に入ることを認めるようにしても らいたいという要望です。したがって、実際の現場監督から設計関係など、チェックを する方、監理をする方、あるいは指示をする人間を是非トンネル内の工事場に入らせて いただきたいということを要望したものです。  私どもの女性技術者からも、このようなことを是非認めてもらいたいという要望があ ったところです。したがって、女性の職域拡大という意味からも、是非このようなとこ ろに門戸を開いていただきたいと思っております。報告書自体はもっと全体的な見地か ら検討されており、かなり幅広の坑内労働について認めていくような形のものになって おります。是非この方向で、幅広く坑内労働に携われるようにすることができれば、女 性にとっても大変有意義ではないかと思っております。是非その方向でご検討いただき たいと思います。以上です。 ○吉宮委員  私どもも昨年10月にこの問題について議論をいたしました。3、4年前からでしょう か、大阪の交通局の女性労働者が、組合を通じて、いま川本委員が言われた高校を出て 技術の資格を持っていて、当然地下トンネルの仕事に従事すると思って採用されたとこ ろ、労働基準法があって制限がかかっていると。彼女たちは日ごろは一般事務として仕 事をしていることが耐えられないということもあって、基準法の規制緩和はできないの かという要望がありました。  私どもも都市交通という組合だけではなくて、ここで言うずい道工事というのは電 力、ガス、水道、他の業種もありますので、もちろん建設関係もあり、それぞれ関係組 合にお聞きし、検討したところ、事務局としては女性の職域拡大という観点から、この 報告書にあるように、さまざまな規制された当時の要件が、現在からいくとクリアでき るのではないかということで、規制緩和の方向を打ち出しました。  意見の中には賛成という意見と、反対という意見と、もう少し慎重に、慎重にという のは、技術職の女性が管理、監督等でトンネル工事に入るということはわかるが、規制 緩和することによって、一般の女性も入れということを強制される可能性がなきにしも あらずだと。これは前回の改正で深夜労働の規制緩和をしたときにも同じような心配事 がありまして、深夜労働が解禁になったのだから、一般の女性は全部深夜労働に付き合 えということを言われるのではないかということがあったのです。それと同様の意見が ありますので、現状の取扱は、連合事務局としては引き続き規制緩和の方向ということ でご理解いただくようにしますが、厚生労働省の研究会の報告も見ながら、私どもなり に慎重に審議していきたいということでいま取り扱っております。したがって、そのよ うな方向で内部論議を深めていきたいと思っています。  2つ目は、石井課長からも報告がありましたように、ILO第45号条約との関係で す。我が国は批准しておりまして、批准している、あるいは女子のあらゆる鉱山におけ る労働規制というのは、言うところの鉱山、かねへんの鉱山で、ずい道工事等が含まれ ていないILO条約なわけです。日本の場合は逆に言うと規制強化、条約以上に強化し ているという理解からすると、その部分だけ取り除いて、ILO条約の基準に従って、 つまり日本でいうと石炭、非鉄金属の鉱山はILOの言うとおり女性を規制するが、ず い道工事等を例外的に認めることは、選択肢としてあり得るのかどうか。加えて、IL O条約を批准し、かつ廃棄している国もあるということで、日本の場合はどのような手 続なのか、廃棄の手続について、もしわかればお聞きしたいということ。新しいILO 第176号条約の水準に留意してと言っていますが、この条約は発効したのは1998年で数 年経っていますから、我が国の批准する場合の条件というか、ILO第176号条約を批 准するということであれば、セットで対応できると思うのですが、その辺はどのように なるのかお聞きしたいと思います。 ○石井雇用均等政策課長  質問が出ましたので、2点それぞれお答したいと思います。まずILO第45号条約 を、仮に廃棄することになったときにどのような手続かということですが、日本はまだ ILO条約を廃棄したことがありませんので、初めての例になるわけです。そのような 意味では、大変大きな話ですので、当然、政府として何らかの対応、アクションが必要 になってくる、意思決定が必要になってくるということであると思います。具体的にど のような手続が必要になるかについては、関係省庁と慎重に相談していくことになるか なと思っております。現時点でまだ確定はしておりません。それが1つでございます。  もう1つ、ILO第176号条約についてですが、おっしゃるとおり、これは比較的新 しい条約、とは言え、1995年に採択されて、もう10年近く経過しているという状況で す。批准した国の数は多くないと承知しておりますが、この条約の中で、いわゆる鉱山 における安全、健康に関する規定が種々ありまして、条約の内容は全体的には我が国に おいて概ね実施されていると解されているところです。  しかしなお問題点もありまして、慎重な検討を要するということです。例えば、問題 になってくるのが、条約の第13条の中で、労働者及びその代表者の権利について、広範 な規定があります。ただ、我が国の法令、関連する法令は鉱山保安法とか労働安全衛生 法などになるわけですが、こうした法令においては、使用者に対して必要な措置を義務 づけて、使用者がこれを履行し、なおかつ、権限ある機関が使用者に対して検査あるい は監督をするということで法令の内容を担保する、確保するという体系になっておりま すが、条約では、労働者が使用者に直接権利を行使するといった規定ぶりになっており まして、書き方、規定の構成が違っているといった辺りが問題になるのではないか。ま だ問題があるということで批准ということは難しいのではないか、いま慎重な検討を要 するという状態だと聞いております。 ○吉川委員  ここだけという一定の所のことではないのですが、少子化が問題になっていて、その ときにご懐妊がしにくいという部分も出ております。そのときに、例えばここで有害物 質で限定されたものに対してのみ、妊産婦だけではなくて女性全般にとか、重いものを 持つということでの制限はされておりますが、それ以外でもまだわからない部分のとこ ろにもその原因になっているものがあるかもしれませんので、あくまでも妊娠してい る、出産しているというだけの枠組みから、妊娠する可能性がある若い年代のところに までいろいろと広い意味で考慮した上で、このようなことをトータルで決めていただけ たらと感じますので、一言提案として申し上げたいと思いました。 ○吉宮委員  2点ほど申し上げます。1つは母性保護と絡んでいるのですが、以前から述べている ように、健康保険からの出産手当金のことです。母性保護条約第183号条約との関連で、 我が国は批准できない1つの理由に、3分の2以上という条約規定があり、これをクリ アするためにも、いま60%給付を70%以上に均等法の改正と併せて、担当部局は違うと 聞いてはいますが、当審議会の総意として、使用者側からも妊娠出産の不利益取扱いの 禁止の議論の中では、個別企業より政府全体としてもう少し給付金のあり方を検討しろ という意見もあったようですので、その点についても検討いただきたいと思います。  2つ目に、今日の母性保護に関わる資料に出ているのですが、6頁の「妊産婦等に係 る就業制限業務の範囲」のところで、産後1年を経過しない産婦について、13号です が、「土砂が崩壊するおそれのある場所または深さが5m以上の地穴における業務」、 14号の「高さが5m以上の場所で」云々という高所作業については産婦はできるわけで すが、私どもとしては産婦が申し出たら就業制限ができるように変えるべきだという意 見です。その理由は、産後1年というのは、もちろん母体の関係もありますが、もう1 つ、子どもが夜中泣いたりして体力的に非常に消耗しているということで、これが就労 可能だとなると、かなり労働災害等の影響も出てきますので、そのような観点からも高 所作業等における産婦の要件を変えて一定的に制限するということを意見として述べた いと思います。 ○川本委員  いまのは6頁の13号、14号の表で、丸印が付いている産婦のことだと思います。1つ 質問ですが、現在までこの丸印ということできているかと思うのですが、何か問題が起 きたとか、支障があったということがあったのでしょうか。 ○吉宮委員  データ的にはないのですが、いわば要望として、産後1年経過しない女性が、子ども の保育との関係で肉体的にかなり不安定な状況にあると。それは高所作業を強いたとき の業務上の災害と危険性を指摘する声もありまして、そう言われればそうだなというこ とで意見として述べたのです。 ○麻田職業家庭両立課長  産婦に就かせても差し支えない業務として、高所作業等がいまこのような取扱になっ ていることについてご意見がありましたので、なぜこのようになっているかを説明させ ていただきます。母性保護の関係、累次の見直しを行ってきておりますが、昭和60年に 専門家の会合がありまして、名前は「医学的・専門的観点からみた女子の危険有害業務 の就業制限に関する研究会」というものです。そこで産婦の保護について次のように述 べられておりますので、ちょっと長くなりますが引用させていただきます。  「分娩後1年以内は全身的な回復過程がなおも進行していると考えられるとともに、 授乳、育児という負担が加わることから、子宮脱垂の原因となるような著しく腹内圧を 高める作業や、母乳分泌に影響を与えるような著しく寒冷な場所における作業について は就業を避けることが望ましく、また代謝循環系への影響が考えられる著しく暑熱の場 所や異常気圧下での作業は好ましくない。振動工具の使用により分娩後の母体の回復及 び母乳分泌にどのような影響があるかについては今後検討することが適当であろう」、 以上が引用です。このような報告が出ましたので、それを受けて5種類の業務につい て、就業を制限するという考え方で、関係審議会の意見も聞いた上で昭和61年に現在の 女性則、当時は女子労働基準規則ですが、定められております。  5種類というのは、先ほどの研究会報告を踏まえており、1つ目が著しく腹内圧を高 める業務、2つ目が著しく寒冷な場所における業務、3つ目が著しく暑熱な場所におけ る業務、4つ目が異常気圧下における業務、5つ目が振動工具を使用する業務というこ とです。高所作業と14号の業務については、いま述べた産婦について保護すべきとされ た業務のいずれにも該当しておりませんし、高所であることに伴うリスクというものに ついては、労働安全衛生関係法令において、例えば高所作業を行わせる場合には、囲 い、手すり、覆い、網などをきちんと措置するということで、墜落防止の措置を講じる ことが義務づけられております。そのようなことから、産婦について就業を制限する必 要はないという考え方で、現在このような規制としているものです。 ○吉宮委員  △にしなかったということですね。 ○麻田職業家庭両立課長  まずは医学的な見地からの判断があった上で、このような規制ということでやってき ておりますので、このような作業については産婦の就業制限をすべきだという医学的知 見が指摘されていないということです。 ○横溝分科会長  女性保護、母性保護についての議論は、いまの段階では挙手がありませんので、これ までに取り上げた論点項目全体について、追加の意見があれば伺いたいと思います。 ○石井雇用均等政策課長  まず事務局から、用意しました資料について簡単にご説明させていただきたいと思い ます。今回、資料3と資料4をお配りしております。資料3は、雇用均等分科会におけ る主な意見ということで、前回も似たようなものを提出しておりますが、今回は追加さ れた意見を加えた改訂版です。前回提出した資料に、前回第46回までの議論を加えてい るものです。  追加したところだけ、簡単に紹介いたします。1の「男女双方に対する差別の禁止に ついて」ですが、「男女双方差別の禁止と均等法第9条の特例措置のあり方について」 では、3つ目の○の所を追加しております。9条の扱いについては慎重に議論すべきと いう意見がありましたので、それを追加しております。  次の「均等法の目的について」は、大変活発な議論があったところですが、2番目、 4番目、5番目の○が追加したところです。双方の観点から非常に活発な議論があった と思っています。  それから、「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止」です。2頁の上から3 つ目と4つ目の所を追加しております。妊娠したこと自体、または法律上の権利を行使 しようとしたこと自体を理由とする不利益取扱いは許されないという前提を確認した上 で、具体的な問題について議論していくべきという議論と、引き続き慎重に議論すべ き、という2つの観点でご意見があったと思います。  「不利益取扱いの内容等について」では、括弧を1つ追加しております。2頁の下の 「不就労期間の賃金の取扱い」が前回非常に議論のあったところで、この項目全体が追 加です。働いていない期間の賃金の取扱いについて、違うサイドからご意見があったか と思っております。  3頁の「その他」については、2つ目と3つ目の○を追加しております。妊娠の症状 の関係と採用面接の話が新しいご意見だったと思っております。  3頁の「間接差別の禁止」については、「間接差別の禁止について」の2つ目の○の 所は、最後の行の辺りを若干追加しております。それから、5つ目と6つ目の○を追加 しております。相当程度の不利益や合理性、正当性の内容についてはさらに検討が必要 ですが、これらの判断基準が明確になれば、予測可能性を高めることが可能になるので はないかといったご意見があったと思います。また、ポジティブ・アクションについて のご発言もありました。  3頁の下の「ポジティブリスト方式、ネガティブリスト方式」についても、新しいご 意見だったと思います。2点、追加しております。  4頁の「間接差別の内容について」は、最初の○を追加しております。5番目の○の 「処遇と働き方の整合性を図る」と始まっている所も、追加しております。「差別禁止 の内容等」は、従前、一方のこういう措置をすべきというご意見だけでしたが、それに 対応する意見が新たに付け加わっております。2番目と4番目と5番目の○が追加をし た点です。  5頁の最初の○の「指針の雇用管理区分」についても追加をしている点です。 「ポジティブ・アクションの効果的推進方策」は、義務化について、ポジティブ・アク ションの奨励措置、いずれも追加はしておりません。6頁の「セクシュアルハラスメン ト対策」についても、前回と同様になっております。  7の「男女雇用機会均等の実効性の確保について」は、新しく全体を追加しておりま す。実効性の確保について、具体的な実効性のある差別救済システムについての提案、 意見があったのでそれを書き、またそれに対するものとして、現行の制度で十分である といった意見がありましたので、それを記載しております。  資料No.4として、「セクシュアルハラスメントに係る女性労働者の相談とその後の 状況」も、同じ資料で恐縮ですが、お配りしております。セクシュアルハラスメントの 被害の内容の状況はどうか、被害者が希望する解決を得ているのか、事業主の対応がど うなっているかといったことについて、何か資料を、ということでしたので、この資料 を再度提出しております。資料の説明は以上です。 ○横溝分科会長  ご意見とご議論をお願いしたいと思います。 ○吉宮委員  全般的に意見はあるのですが、これまでの経過を踏まえて足りない部分だけ、私から 意見を述べたいと思います。1つはセクシュアルハラスメントの問題ですが、事務局か ら示されたいろいろなデータを含めて、均等室による指導が多いということもあるので す。とはいえ、まだまだ事業主および我々労働者の中でも、セクシュアルハラスメント に関する理解が不十分だという認識を持っています。とはいうもののセクシュアルハラ スメントは重大な人権侵害で、政府が用意しようとしている人権擁護法案の中でも、こ れまで見るとセクシュアルハラスメントも人権侵害の項目に入っているわけです。雇用 の分野は他の分野より圧倒的に重要な位置を示していますので、均等法の扱う性差別禁 止というか、男性も含めたセクシュアルハラスメント禁止は当然対象になるわけですか ら、私どもは重大な人権侵害という認識を持つべきだと思います。  現状から見ると、厚生労働省の対応も紛争の解決の援助、つまり法13条を使うのでは なくて、いま報告等のところを使って、助言・指導・勧告をやっていますね。理由は結 局、紛争の解決・援助というのは、いわば募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚 生、定年退職解雇という条文に沿って義務化されているがゆえに、13条が使われている わけです。本来、私はこの13条にセクシュアルハラスメントも入るべき事案だと思って おります。前回の改正の経過から見ても、当時はセクシュアルハラスメントは不法行為 で、雇用の分野だけではないのではないか。したがって、もう少し広い法律でやるべき だというご意見もあったのですが、私は国民一般に普及する意味で配慮義務に終わった のかという認識を持っております。あれから数年以上経ちますし、そういう重大な人権 侵害と考えると、セクシュアルハラスメントを禁止するというのを義務化する、明記す るという時期に来ているのではないかと私は思うわけです。  その法律的効果というのは何かというと、当然それは企業規模にかかわらず、すべて の事業所においてセクハラをなくすということですので、就業規則での明記、未然防止 のための対応措置を行う。加えて、被害が起きた場合の問題、発生要因を改善する職場 環境の改善、被害者の精神的な苦痛等も含めた留意措置など、義務化することによって 2次被害をなくすという法律的効果が出てくるのではないか。加えて、いま厚生労働省 は指針でもそういう指導をしているわけで、それを法律上格上げして、均等法改正の中 では、やはり重大な人権侵害はなくす決意を示すべきではないか、というのがセクハラ にかかわる内容です。  2つ目にポジティブ・アクションで、これも現状、大企業を中心にかなり活発に取り 組んでいるという認識は持っています。とはいうものの取り組んでいる企業は29.5%、 3割以下というのが現状です。その29.5%が取り組んでいる内容を見ると、64.1%が 「性別により評価することがないよう、人事考課基準を明確に定める」と多いわけです が、これは当然といえば当然で、そういう意味ではこれらをもう少し強めていくという か、積極的に取り組むことが必要だと思います。「いまのところ取り組む予定がない」 という企業が28.7%で、その理由は「既に十分に女性が能力発揮し活躍しているため」 というのが半数以上を占めているのです。その企業でどれだけ管理職に女性がいるかと いうと、9.7%で平均の値よりも多いのですが、それでも9.7%という現状です。  そういう現状に対して、国連の女子差別撤廃委員会は日本政府の報告への最終コメン トに、女子差別撤廃条約第4条第1項に沿った暫定措置を用いて、やりなさいというこ とを委員会は言っているわけです。私どもはそういうことを踏まえて、今回見直しをす べきではないかと。現在国が行っている援助措置は、1つは雇用に関する状況の分析、 女性労働者の配置その他、雇用に関する状況の分析、計画の作成、計画で定める措置の 実施、必要な体制の整備というのをやっていますね。これもきちんとした法律を強化す ることによって、公正・透明な行政指導ということが、いま私どもは求められているの ではないか。  そこで、研究会報告は規制の方法を提示して、規制を強めた場合にコストがかかる。 そこも留意しなければならないと言っていますね。それはアメリカの場合の例やフラン スなどの例を挙げて、スタッフを揃えなければいけない、あるいは届け出を課すことに よって手間ひまがかかる。それがコストになるのではないかということなのですが、一 方で女性の活躍の場が広がるということは、中長期に見たら企業にとっても非常にプラ スになるというデータも示された中で、そろそろある一定規模以上の企業に対しては、 いま行政指導で国が援助している報告の義務付け、計画づくり、必要な体制整備につい て、やはり法律できちんとさせたほうがいいのではないか。もちろん、実際の男女間差 別をなくす意味で、方法はありますが、ポジティブ・アクションも有効な措置です。イ ギリスやアメリカなどの民間団体の活動もありますが、どちらを選択するかということ ではなくて、法律上の評価と民間団体の活動を両方合わせてやるような方向で、このポ ジティブ・アクションについては考えるべきではないかと思います。  3つ目は救済制度です。これもやはり実効面でかなり劣っているのではないか。13条 を使っての援助の申し出状況も100件台に終わっている。これはなぜなのか。昔は均等 室は独立した機関だったのですが、いまは労働局の中に入ってしまって見えにくくなっ たのが影響しているのかなどと考えるのですが、まだ100件台です。それから、25条の 報告の徴収並びに助言、指導および勧告について、是正指導なども5,000件台になって いる。これもほとんどセクハラ防止が中心だと聞いているのです。  それから、5条、6条、7条、8条の関係だと、募集・採用が253件でいちばん多い のです。文書指導は4年間で見ると59件で、文書勧告は1件です。この辺を考えると、 差別救済という意味で、いまの調停制度というのは調査権限もなければ、差別を判定す る機能もなければ非常に弱いものなわけで、それが結果、他に広がらないというか、こ んなことをしたら差別になるのだということも広がらない面がありますので、明確に救 済委員会みたいなものを作って、そこで調査権を持ち、事業主の差別の立証責任も課し て判定もする。そういう仕組みに変えることによって、いわば差別救済を図っていく必 要があるのではないかという意味で、新たな強化策を今回盛り込むべきだと。その細か い内容は前々回申し上げていますが、そういう3点について私のほうから意見を申し上 げます。 ○片岡委員  セクシュアルハラスメントの防止に関して前回少し要望をいたしました。資料をご用 意いただき、ありがとうございました。改めて行政相談に寄せられた内容を見ると、そ の量が多いことは平成16年の相談件数からも非常に明らかになっている。行政指導の結 果、職場環境の改善や就業継続がかなった例もあることは、今日また示していただいた 資料からも承知をしております。でも、もう一方で審議会委員だけでなく、厚生労働省 にも同様の要望が出されていると思いますが、NGOからの要望や相談活動の結果をい ただいた資料で見ると、行政指導に応じた会社がその後被害者を解雇した例なども実は その中で示されていて、現在の均等法の配慮義務という規定を基に、現場でそれを有効 に使うには、私自身現行法は不十分だと思います。  もう1つ、相談活動をまとめていただいた結果の中に、早期に適切な対処があれば、 会社をやめなくて済むということも示されていたことから、現場で使うことを考えて、 不十分というのはその点からもそう思います。是非、被害者の就業継続を担保できる救 済に焦点を当てて、女性が躊躇なく相談ができ、被害を深刻化しないための体制づくり など、連合の要求でもある予防、事後の対応を強化できるものに現行法を改正して、現 場で使えるものにしたいと思います。  併せて、私が紹介するまでもないのですが、いただいたホットラインの結果を拝見し て、改めて深刻な事態を再認識しました。想定通りといえば想定通りですが、加害者の 過半数は企業のトップ、上司。そうした被害の結果、身体障害を訴える人が6割を占め る、あるいはそれぞれ相談をされた方は大変つらかっただろうと思いますが、そのホッ トラインの結果の中では強姦や強姦未遂が1割を占めていたり、猥褻な行為も行われて いる。職場でそうした性犯罪が放置されているという実態には、早急な対処が求められ るというように、改めて深刻な事態を再認識しております。  そうしたことなどを参考に、このような実態をどうするのか。セクシュアルハラスメ ント防止を規定する均等法の改正審議は、これをどう受け止めるのかということが、こ の審議会では問われているとも思います。このような実態が改善されない職場は安全と は言えませんし、被害に遭うだけでなく、意欲や能力発揮にもつながらないと思いま す。是非、配慮義務規定を先ほど申したような内容に強化をして、今回、現場で使える ものにすべきだと思います。  関連して1つ、厚生労働省に伺いたい点があります。男女共同参画会議で、女性に対 する暴力に関する専門調査会が行われて、その議事録を読んだのです。その中でも重要 な課題と指摘されている、あるいは議論の俎上に乗っていることの中に、被害者の救 済、加害者への対応、調査権限のある第三者機関の設置、二次被害が起きないような専 門家養成の必要などが議論されていると議事録を読みましたが、こういったところで検 討されていることと、こことの関係というか、これをきちんと均等法の改正審議でも受 け止める必要があると思うのです。そういう関係にこの議論がつながるのかどうか、も し加わっていらっしゃる奥山委員からご説明などいただければ、その点は参考になると 思うので、それは厚生労働省に質問させていただきます。 ○横溝分科会長  いつの議事録ですか。 ○片岡委員  私は第16回という回数しか控えていないのですけれども。 ○横溝分科会長  月日はわかりませんね。 ○片岡委員  はい。 ○石井雇用均等政策課長  男女共同参画会議でも、女性に対する暴力の関係で、いま全般的にさまざまな検討を なされているのは、もちろん承知をしているところです。ただ、雇用の場におけるセク シュアルハラスメントという問題を扱っているのは、まさにこの厚生労働省です。現に 1月に定めた論点の中にセクシュアルハラスメントも入っているわけで、このセクシュ アルハラスメントという問題をどう考えるか、この場で議論をしているわけです。殊更 どういう関係というように申し上げるまでもなく、まさにこの場で議論をしていただい ているということで、そのことを重く見ていただければよいのではないかと考えており ます。 ○奥山委員  今日提出された資料を読んでいたものですから、いまのご質問のほうを聞いていなく て申し訳ありません。もしよろしければ、簡単に言ってください。 ○片岡委員  まず、厚生労働省に、参画会議の専門調査会の議論経過との関係を質問しました。そ の議事録を読んだ中では、議論の中で専門的な見地でも被害者救済や調査権限のある第 三者機関の設置などが入っていたので、そういう議論がされていることについて、奥山 委員から補足いただければ助かりますということです。 ○奥山委員  私はこちらの委員と、併せてそちらの男女共同参画の女性に対する暴力に関する専門 調査会の委員でもあって、向こうでもいろいろ、私は労働法ですから、雇用の場での問 題を中心にお話しているのです。そういう点でもご承知のとおり、いま基本計画の見直 しの作業をやっており、秋口ぐらいから新しいものが出てくると思います。その中で も、やはりセクシュアルハラスメントの防止についての対策のさらなる前進のようなこ とについて項目が挙がっているのです。その点についてはこれからの課題で、少し進む かと思っているのです。いまご指摘のそういうものの解決のための機関ということにつ いては、特にセクシュアルハラスメントの防止についての強化を図るために救済の権限 を別途どこかの組織に与えるなどの議論は、そちらの参画会議の専門調査会のほうでは 必ずしもやっているわけではない。もっと全体に、いま石井さんがおっしゃいましたよ うに、セクシュアルハラスメントも女性に対する人権侵害ですし、暴力の一環だと位置 づけて議論しております。その中では全体として、そういうものに対するいわば規制と 救済の枠組みはそういう観点でも考えていくべきだということは、議論としては出てい るのですが、とりわけその中のセクシュアルハラスメントに対する救済や規制の強化と いうことの観点では、議論は出ていないというか、していないです。 ○吉川委員  セクシュアルハラスメントについてなのですが、むしろこれは組合の方にお願いする という発言とさせていただきたいのです。もちろん、ここに挙がっている例や現実に起 きている状況が、この方たちがそうだという意味でなくて、女性の服装について、間接 的にそういう影響もないとは言えない。いまの若い子たちの何分の1かわかりません が、裸同然のような格好をして通勤してきたり、職場にいるケースも多々見かけます し、そういう所において、その直接の被害に遭った人でなくても、ほかの周りの人がそ ういう環境を誘発してしまっているということも、これは悪いことをしている人を認め るわけではないのですが、そういうこともないわけではないのではないかと。だから、 そうしたトータル的な面で、もう少し人の前に出る、特別にどうのというものではない ですが、少なくとも職場で働く環境の中で、合う衣装があると思うのです。そのような ことを少し組合として啓蒙していただけると、このセクシュアルハラスメントの防止に 関することにつながってくるのではないかと思いますので、そうしたことをお願いした いと思います。 ○片岡委員  会社に来ても働く場合に着替えること、ユニホームの問題はまた別の意味であります が、そういうことから確かに非常に自由な服装で来てということはあるだろうと、そう いうことは現場でも目にしています。ただ、今日はセクシュアルハラスメントの防止と いいますか、問題でいまのお話を自分自身がどう受け止めたかということになるのです が、どうも裁判などでも被害に遭った人の落ち度というか、そのように仕向けられるこ との中に、あなたに隙があったというか、いわゆる相手を誘発するような態度や服装も あったかどうか、ちょっと記憶にないのですが、私はむしろ被害に遭った人に対する責 めに該当するような言い分にも今の話は聞こえて、それはちょっと違うのではないか と。 ○吉川委員  私の説明があれだったかもしれませんが、本人でなくて、周りの方がそういう格好を していることによって、精神的に誘発されてしまう。だから、中にはいるかもしれませ んが、その人が悪いという人でなくても、そういう周りの環境から、悪いことをする人 はそういう気になってしまうケースもあるのではないかと。だから、被害者が悪いと言 っているのではなくて、周りがそういう環境を作ってしまっているケースがあるのでは ないかということを心配して申し上げたいと思って、その人が悪いと言っているのでは ないのです。例えばこの中で、何人かがものすごい格好をしていたとしたら、何となく 精神が集中できなくなるなどというケースも、もしかしたら人間の心理というのはある かもしれませんから、そういう意味で申し上げているのです。この被害に遭った人が悪 いと言っているのではありません。ゼロではないかもしれませんけれども。言っている 意味はわかりますか。 ○横溝分科会長  ご意見として伺うということでよろしいですか。 ○吉川委員  はい。 ○篠原委員  いままでの全体的な論議ということなので、何点か意見を申し上げたいと思います。 組織の中でいろいろ調査をして、女性に「働いている理由は何ですか」と聞いてみる と、やはりいま経済的自立指向が非常に高まっていると。1990年に調査をしたときには 大体26%だったわけですが、それが2001年に調査をしたら32%ということで、これは女 性もやはりきちんとした自立をしたいということでの意識が非常に高まっているという 部分があります。仕事に対しての愛着、能力を発揮したいということでの指向が高まっ ているという調査が出ております。あと、「いつまでぐらい働くか、どのぐらいまで働 きたいか」と聞くと、やはりできれば定年まで働きたいというデータもあって、一時期 とはまた違った形で、女性としての働こうという意気込みが非常に感じられるというの があると思っております。  その中で、特にポジティブ・アクションというところを見ると、残念ながらポジティ ブ・アクションということは、日本の社会の中でと言ったほうがいいのかもしれません が、会社全体の中ではまだまだ浸透していないところがあるのか。これは組合としても ちょっと力不足というところがありますが、この部分は労使できちんとやっていかない といけないところだと思っております。お互いに何らかの形できちんと、組合としても 義務を設けますし、会社という部分でもきちんと義務を持っていただきたいと思う点が 1点です。  セクハラの部分について、今日も被害状況ということで資料を用意していただきまし たが、先ほど吉宮委員からもありましたように、人権侵害ということが非常に多いと思 いますし、さらには本当に人として許されない行為が非常に多いというところもありま す。これからそのようなことがないようにということで、これからの話につながってい くわけですが、差別の救済委員会をきちんと設置すべきではないかと思います。来年4 月から労働審判制度が設置されるということで期待はしているわけですが、残念ながら これから始まるものということで、まだまだ中身がどのようになっていくかわからない という状況もあります。労働審判の中でも、セクハラという部分も含めて今後取り扱う ことにはなっておりますが、その中で男女比というところにもなりますが、その構成が どのようになるのかというところも心配の1点に挙げられるのではないかと思います。 そういった部分では、やはり目的がはっきりした差別救済委員会というものを、きちん と設置して取り組むべきではないかということを、意見として申し上げたいと思いま す。 ○前田委員  いまの救済の面ですが、確かにいま篠原委員がおっしゃったように、来年の4月から 労働審判制度も発足するというので、私もセクハラの被害などの救済というので、一定 の役割を果たしてくれるのではないかという期待をしているわけです。別の組織を作る というよりは、私は労働審判の働きぶりを見てからでもいいのではないかと思っており ます。労働審判制度というのはまだ始まっていないわけで、これをどう動かしていくか というのは、やはり人が動かしていくことであり、すべてそれでは足りないというのを 最初から言ってしまう必要もないのではないか。  そして、いまおっしゃったような構成員などについては、たぶん国のほうもいろいろ な面で、例えばこういう会議でも女性をある程度入れるなどということをしているわけ です。こういった問題についても、ある程度というか、結構専門的な知識を持っている 人が必ずそういう委員につくはずだろうと思いますので、そういった動きを見てからで もいいのではないかと。  どこに訴えに行けばいいのかわからない。いろいろなものができると、被害者という か、そういう人たちも、会社のほうでもどういう所から言ってこられるのか、どういう 所の人とよく相談すればいいのか、そういうのがわかりにくくなってしまうことがある と思います。いまはそういう部分は結構、厚生労働省の機関がやっているわけですの で、あまりいろいろなものを増やすということではなくて、少なくとも労働審判が発足 した経緯を見てからでも、ここの部分は遅くないのではないかと考えます。 ○吉宮委員  私どもの考え方は、救済委員会という言葉を使っていますから、新しい組織かという 印象を持つと思いますが、最近の行政改革の流れからすると、新しい機関ができるとい うのは非常に難題だと。しかし、諸外国の場合は、EEOCなど差別救済のための委員 会を設けているので、それを参考にしているのですが、例えば行政から独立した機関と いうと、労働委員会があります。労働委員会は、集団的労使関係を扱う機関で、これを 再編強化というのですか、そういうものも視野に入れて個別紛争も扱うというか、そう いうものに変えていってもいいのかという認識を、一方では持っているのです。  ですから、そこは現実的な判断で、いわば救済委員会ということで、差別調査権もき ちんとして、判定機能を持つというのは、一般社会に普及するために、ものすごく大事 だと思うのです。労働審判制度は3回で終わる、迅速で簡易なものという目的がありま すね。そういう意味で、もちろん否定はしません。これから重要な役割を果たすと思い つつも、殊性差別の問題についてはちょっと違うのかなと。使ってもいいのですが、そ れも同時にありながらも、新しい判定委員会的な機能を持つ委員会を持ったほうが、労 使とも健全な社会を作る意味でもいいのかと思って、私どもは考えております。 ○前田委員  いま使ってもいいとおっしゃいましたが、私は是非、使ったらいいのではないかと思 うのです。企業も非常に責められますが、一方では企業も随分一生懸命やっている部分 もあるのだと思うのです。それで、こういう男女機会均等を広めていくというのでは、 法律だけで終わるということはあり得ないと私は思っております。確かに均等法などは 女性の労働にものすごい役割を果たしてくれたというのはあると思いますが、例えばい ま企業価値は、どこの会社にとっても非常に重大なこととして捉えられているわけで す。その企業価値を測る1つのツールとして、均等の度合がどのぐらい進んでいるのだ ろうかということに、一般の人も注意をしてみるなどということで、例えばいろいろな 新聞がいろいろな企業のランク付けなどをやっていますね。ああいうところに、そうい う項目がどんどん入っていくようなPR活動のようなことを、もっと一生懸命やってい けば、また随分違ってくると思うのです。  法律だけ変えても、例えばこれは女性だけの法律だというようになってしまったとし たら、これは進展度合は少ないものだと思います。今回こういうものが改正をされて、 それの周りのいろいろなものがもっと高まっていくというようにすることのほうが、む しろ私は大事なことなのではないかと思うのです。そういう意味では、労働審判などの 制度を大いに活用するように動かすことをまずやって、それで思うようにいかなけれ ば、救済の委員会を作るなどということを考えることでもよいのではないかと考えてお ります。 ○渡邊委員  いま労働審判という機能についてお話になっていますが、特にセクハラは社会的に言 っても犯罪ということが相当認知をされ、日常でも電車の中でも、見つけたらとか、あ るいは駅員にどうこうというのはアナウンスするぐらい、セクハラ対策というのはある と思います。これは雇用均等という意味での差別として取り扱うとしても、いまの審判 辺りで、特にセクハラについてはむしろ使用者側というか、経営側でも本来ならクビに したくてもなかなかできないというケースがすごくあるのです。セクハラを起こした社 員をクビにしたい。本当は就業規則で即解雇という措置をとりたくても、なかなかとれ ないという面がたくさんあるのです。したがって、これは私の私見ですが、何かの意味 でセクハラだけについては義務化というか、ある意味では差別の観点から見ても、犯罪 として対応するということをしてもいいのではないか。そうしたほうが、使用者側もか えって扱いよいと思う面があるのです。本当に困っています。  セクハラそのものは、必ずしも上司だけがやるのでもないし、同僚同士でもやるし、 いろいろあるのですが、会社としてもなかなか解雇にもできない。本当は就業規則では 解雇は即できるはずではあるのですが、双方の言い分を聞いていると難しい面もたくさ んある。したがって、雇用均等という面でセクハラ対策としては何か義務化をしたほう が、使用者側もやりやすい面もあるのではないかと思うことは私の個人的な意見です。 ○林委員  労働審判制度は、簡易に紛争解決するという形で出ているわけですが、いま予定され ている形としては、セクハラなどについては被害者と加害者、その場合は加害者が会社 ということもあり得るわけですが、そこについてある一定の解決を考えるということ で、セクハラ問題を会社の中でどのように防止し、根付かせていくかというところに直 接その力が及ぼしていけるのかというところについては、むしろ紛争解決という機能の ほうが強いだけに、そこまでを期待するのは疑問を感じざるを得ないという面がありま す。  セクハラぐらい表と裏があるものもないのではないかと思うのですが、この相談事例 からでも元の職場に戻ったというのがあったとしても、私どもとしてはそのあと本当に 活き活きとした仕事ができたのか、そのあとを追跡したいぐらいの気持があります。や はり救済機関をそこに設けることについて、難しさなどはあるのだと思いますが、規定 の強化をして、人権侵害ということを根づかせていく、その意識を根づかせていくこと について、何らかの強化をできないのかという気持を持っております。 ○山崎委員  吉宮委員、その義務化をしたときに、企業名の公表までをするようなお考えなのです か。 ○吉宮委員  いまの法律の仕組みでもありますよね。公表というのがありますね。企業名公表とい うのは何条でしたか。 ○山崎委員  いまは勧告ぐらいまでですよね。 ○吉宮委員  いや、公表もありますから、5条、6条、7条、8条は、義務化しているので。セク ハラも努力義務になっていますから今はできませんが、義務化すれば当然。 ○山崎委員  そういうことまでですか。 ○吉宮委員  はい。それで、今後期待できるのは、いま13条は配慮義務だから使いきれないわけで すよ。林委員がおっしゃったように、職場で起きましたと。行政が主導権をとって報告 を求めて、やっているわけでしょう。13条を使うことによって、未然にというか、行政 主導型ですが、もう少し調整レベルで解決する機能が逆に出てくるのではないかという 意味もあります。それで駄目だったら、いまは調停は入っていませんが、調停委員会、 私は救済委員会と言っていますが、そういう機関にもできます。それで駄目だったら公 表という順番ですね。 ○山崎委員  セクハラというのは、当然やってはいけないことですよね。 ○吉宮委員  当然です。 ○山崎委員  防止ということはやるべきですが、やってはいけないことを、法律にそれ以前の問題 を掲げるというのはどうかという気がするのです。 ○吉宮委員  その場合、事前にあるのです。勧告したり、指導しても聞かない。加害者もはっきり して認知されたにもかかわらず、全然従わないという場合に、悪質な企業として。悪質 というのはあるのでしょうけれども。 ○山崎委員  例えば、その企業が地域において雇用にもすごく貢献して、経済にも貢献している と。それで社長が従業員の組合の方とも非常にうまくいっていて、ちゃんと指針通りに 守っているし、管理者もいて、本当にモデル的な企業だったとしますね。男性か女性か わかりませんが、たまたま悪いのがいて、そういう行為をして、いろいろなことをやっ て、こじれて公表のような形になっていった。そうしたときに、その企業の立場という のは、その地域においてありますね。それと従業員の。 ○吉宮委員  行政側がいま、助言、指導、勧告をどういう基準でやっているのか、そこにかかわっ てくるのです。そこは私はわかりませんが、行政側はどういう基準で助言し、どういう 基準で指導し、どういう基準で勧告を出し、どういう基準で公表するかというのはたぶ んある。 ○山崎委員  例えば公表があったときに、その会社に勤めているということで、従業員にとって不 幸なことだし。 ○吉宮委員  そこはあまり関係ない。悪質な。 ○山崎委員  いや、それはわかりません。公表になるとね。 ○吉宮委員  人権侵害を受けたほうの立場を考えたら。 ○山崎委員  そうですけれども、ほかの従業員にとっても、そういう企業に勤めているということ で、経営者も従業員も、お互いに不幸なことにならないかというのはね。 ○吉宮委員  でも、三菱自動車のアメリカの例だってあるではないですか。 ○石井雇用均等政策課長  いまの均等法のセクハラの体系について、改めて申し上げます。セクシュアルハラス メントについて、現在、事業主に対して配慮義務がかかっております。この義務の履行 をしていない場合、行政指導の対象になるわけで、その行政指導としては均等法25条に 基づき、助言、指導、勧告という手続を踏んでおります。現にセクハラについて勧告ま で行った例はあります。それは指針に書いてあるような周知がなされていない、方針が 明確でない、相談窓口がない等のことで対象になってきているものです。そうした勧告 に対しても、なお従わない場合に、行政指導の実効性確保の観点から、企業名公表とい うのは一応法律上規定はありますが、セクハラについては現在、そこの対象にはなって おりません。均等取扱いのところに限られております。  もう1つ、実際に個別紛争ということで、労使で意見が対立した状態になったときの 調整機能として、均等法の13条、14条があります。ここについては、まさに均等取扱 い、性差別禁止のものがかかってくる形で、それもいま吉宮委員がおっしゃったよう に、現在セクシュアルハラスメントはその対象とはなっておりません。しかし、個別労 働関係紛争解決促進法という法律ができており、労働局長の調整機能はあるわけです。 またそこは調停ではありませんが、斡旋はできることとなっており、昨年度なども現に セクシュアルハラスメントについて200件を超える斡旋が実施されているところです。 まさに調整的な個別紛争の話、行政指導の話の2つの系統があるということで、交通整 理をさせていただきました。 ○川本委員  私は前にも発言したかと思いますが、セクハラについては当然あってはならないもの だということを、まず申し上げたと思います。いまの議論を聞いていて思ったのです が、すごく悪質で明確な例というのは、会社側のほうだって、従業員がすれば、それが ものすごく明確な話だったら苦労はしないわけで、実は事案としてはかなり複雑な場合 が多いということから、ものごとの解決に大変時間がかかったり、複雑になる場合が多 いと。したがって、前に私は現実問題としては会社としてどこまでかかわれるのかとい うのは非常に難しい話だ、ということをたしか申し上げたと思います。したがって、こ のセクハラについても2つの側面があって、1つはどうやって予防していくのかという 側面の話と、それから問題が起きてしまったからという、あとの話があるのだと思うの です。予防の面は、会社として対応することについては教育・啓蒙が中心でしょうから わかりやすいわけですが、起きてしまった話は本当に複雑怪奇で、会社として実際そん な中身は証明できるか、どちらが悪いのか、どういう事実があったのかと。したがっ て、こういうのは本当にもめれば裁判になっていくような話かと思います。  例えば労働審判制度の話が出ておりましたが、審判員の制度にかかわったとしても、 あれは3回ですから、3回で簡単にわかるような事例もあるでしょうし、そうではなく て、それからそこを通して裁判へという問題だって出てくるでしょうし、いま個別紛争 解決促進法で片付ける事案が出ておりますが、そういうところで対応していくものも出 てくるのかと思っております。  いずれにしても、簡単にあってはいけないのだから、これは会社の責任だとかいうよ うに割り切れないところに、この難しさがあるのだということは申し上げておきたいと 思います。したがって、あくまでも起きてしまった話と起きる前の防止の話というの は、分けて論じたほうがいいのではないかと思います。もう1回言っておきます。別に セクハラがいいなんて思っているわけではありませんから、絶対なくしたほうがいいと 思います。それは思っております。 ○前田委員  いまのことについて、私も林委員がおっしゃったように、なくするということについ て、例えば均等室にカウンセラーの方をたくさん置くとか、もっと事後のケアができる 体制を強化するといったことを何もしなくて、いまのままでいいと申し上げているわけ ではないので、それは念のため申し添えたいと思います。いまある機能がもっと有効に 機能するように、それはすることだと思いますが、新しく救済委員会というものを作る ことについてはどうかと、個人的には思っているということです。 ○佐藤(博)委員  もしかしたらここに入れなくてもいいのかもしれなくて、当たり前のことだからかと いう気もするのですが、均等法というのは企業に雇用されている男女について、不合理 な差別を禁止するわけです。当然、正社員だけではなくて、パート等で働いている方も 全部カバーされる法律です。いま出たセクハラも当然そうですし、ポジティブ・アクシ ョンもそうですし、育児休業の不利益取扱いも育休も、有期の人の一部に適用されるよ うになりましたから、現状でも育児休業等の不利益取扱いもそうです。今度、妊娠・出 産もどうなるかわかりませんが、変われば当然パートの人たちも適用されることになる と思います。ややもすると、例えばポジティブ・アクションなどはそうだと思うのです が、いわゆる正社員だけという感じも無きにしも非ずなので、基本的にこの均等法とい うのは雇用される人が全員カバーされるということを、法律という意味ではなくて、そ ういうことをもう一度明確にするということは結構大事かと思っています。ですから、 法律でどうこうということではなくて、ただそういうことを事業主に理解していただく ことは大事かということです。当たり前のことだから言う必要もないのかもしれません が、7の「実効性確保」という所に書いておいていただくといいかな。書かなくてもい いのかもわかりませんが、ということです。 ○吉宮委員  適用されるのは、労基法上の労働者ですよね。 ○佐藤(博)委員  そうです。そういう意味で当たり前のことなのです。 ○横溝分科会長  ちょっと私が言うのも変なのですが、正規社員・非正規社員という言葉が、かなり定 着してしまっていますよね。だけど、その言葉が果たしていいのかどうか。非正規とい うと、何だかアウトローのような感じなので、もうちょっと何か良い言葉はないのでし ょうか。これは私がいま言わないほうがよかったのかもしれません。非正規社員という と、ちょっと引っかかるところがあるのです。世の中でそういう言葉というので行き渡 っていて、それでいいというのならそれでいいと思いますが、ちょっと余計なことを申 し上げました。時間がまいりましたので、本日はこのぐらいにさせていただきたいと思 います。 ○片岡委員  1点だけ確認したいのは、妊産婦にかかる就業制限の範囲で資料が出ていて、「女性 を就かせても差し支えない業務」で○印になっていますが、就かせても差し支えがない という判断は何かあるのですか。 ○麻田職業家庭両立課長  就かせても差し支えがないというのは、要は法律上、就業についての制限がないとい うことです。個別のケースについて、判断が一つひとつあるということではなくて、要 はそういう業務に女性が就くことについて、法律上の制限がないという趣旨です。 ○片岡委員  使用者が一方的に判断するとか、そういうことではなくですか。 ○麻田職業家庭両立課長  そういう趣旨ではありません。 ○片岡委員  吉宮委員のおっしゃった意見と同様で、医学的な見知で分類されていることは承知し ているのですが、働く側からそういう不安や危険があるということで、産婦の扱いを産 婦の請求に基づいて就労制限するということは、この項目も必要ではないかというよう に同じ意見があって、いまその関連で質問させていただきました。 ○横溝分科会長  いまのは回答はいいですか。本日の署名委員は、労側は片岡委員、使用者側は前田委 員にお願いします。最後に事務局から、次回の予定について説明があります。 ○石井雇用均等政策課長  次回は7月13日(水)午後2時から、場所は厚生労働省専用第21会議室で開催しま す。本日までに男女雇用機会均等対策について、論点項目を順次ご議論いただいてきた ところですが、次回については今後の議論に資するために、これまでの議論の状況につ いて、中間的な取りまとめを行っていただきたいと思っております。また、これが取り まとめられた段階で公表し、ご意見を募集するということを考えているところです。 ○横溝分科会長  本日はこれで終わりといたします。ありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)