第17回社会保障審議会医療保険部会 資料2
平成17年7月29日


保険給付の在り方についてI



高額療養費制度の在り方について

医療保険における食費・居住費の在り方について

現金給付の在り方について



高額療養費制度の在り方について

 高額療養費制度における自己負担限度額の基準について、昭和48年の制度創設時に月収の50%であったことを踏まえ、平成14年改正において、月収の22%から25%に3%引き上げたこと、及び平成15年度から総報酬制が導入されたことを勘案し、現行の基準をどう考えるか

(参考) 政管健保平均報酬月額 284,544円
政管健保平均賞与月数 1.62ヶ月分
 ※いずれも平成15年度決算

 高額な医療費について、医療サービスを受ける者と受けない者の負担の公平を図る観点から、低所得者を除いて、定額の限度額を超える部分について求めている医療費の1%の負担をどう考えるか



高額療養費の自己負担限度額表

一般医療対象者 (70歳
未満
の者)
上位所得者
(月収56万円以上)
139,800円+(医療費−466,000円)×1%
(77,700円)
一般 72,300円+(医療費−241,000円)×1%
(40,200円)
低所得者
(住民税非課税)
35,400円
(24,600円)

70歳以上の高齢者

    自己負担限度額
外来
(個人ごと)
一定以上所得者 40,200円 72,300円+(医療費−361,500円)×1%
(40,200円)
一般 12,000円 40,200円
低所得者
(住民税非課税)
II


8,000円
24,600円
I 15,000円
(備考) 金額は1月当たりの限度額。
( )内の額は、多数該当の場合(4月目以降)。



高額療養費制度の主な経緯

(1)  昭和48年−被扶養者を対象として創設 【自己負担限度額 30,000円
 ○  当時定額負担であった被保険者本人と異なり、定率負担の被扶養者の負担軽減措置として、月収の50%程度の自己負担限度額で創設

(2)  昭和59年−被保険者本人についても対象とし、世帯合算、多数該当等を制度化
【自己負担限度額 一般 51,000円 低所得者 30,000円】
 ○  被保険者本人に定率1割負担が導入されたことに伴い、本人についても対象とし、世帯合算、多数該当、高額長期疾病(1万円特例)を創設

(3)  平成12年−上位所得者区分、医療費連動の1%負担を創設
【自己負担限度額 上位所得者 121,800円+1% 一般 63,600円+1% 低所得者 35,400円】
 ○  所得が高い者ほど所得に占める医療費の実質的な負担率が低いため、負担の均てん化を図る観点から、自己負担限度額の高い上位所得者区分を創設
 ○  医療を受けた者とこれを支える者の負担の公平やコスト意識の喚起の観点から、医療費連動の1%負担を創設

(4)  平成14年−自己負担限度額を引上げ
【自己負担限度額 上位所得者 139,800円+1% 一般 72,300円+1% 低所得者 35,400円】
 ○  所得水準の上昇に見合った引上げが行われず、14年改正前の時点で、自己負担限度額が月収の22%程度であったため、負担のバランスを図る観点から、制度創設当初は50%程度であったことを踏まえ、月収の4分の1(25%)程度に引上げ



自己負担限度額(定額部分)の改定年度の政管健保の平均標準報酬月額に占める割合について

改定年度 自己負担限度額
(A)
標準報酬月額の平均値
(B)
割合(A/B)
S48 30,000 59,241 51%
S51 39,000 105,832 37%
S59 51,000 189,548 27%
S61 54,000 207,362 26%
H元 57,000 224,360 25%
H3 60,000 244,616 24%
H5 63,000 270,214 23%
H8 63,600 289,694 22%
H12 63,600+1% 290,701 22%
H14 72,300+1% 289,700 25%

標準報酬月額の平均値は、原則として改定年度の前年度の数値



高額療養費にかかる自己負担額(1%負担分含む)の例

(1)  胃がん(医療費約150万円・30日入院)の場合の自己負担額(一般)

  72,300円 (1,500,000円−241,000円)×1%
12,590円
 84,890円


(2)  大動脈解離(医療費約3,000万円・15年度最高月額)の場合の自己負担額(一般)

  72,300円 (30,000,000円−241,000円)×1%
297,590円
 369,890円


(3)  入院レセの平均医療費(約39万円・16日入院)の場合の自己負担額(一般)

  72,300円 (390,000円−241,000円)×1%
1,490円
 73,790円



医療保険における食費・居住費の扱いについて


(1) 食費

  ○  医療保険における食費については、「入院時食事療養費」として評価されており、被保険者等は、所得等に応じて、平均的な家計における食費を勘案した標準負担額を負担

   ※  標準負担額は、食材費相当額を踏まえ、所得に応じて1日につき780円・650円・500円・300円となっており、基準額(1日につき1,920円)から標準負担額を控除した額が入院時食事療養費として給付


(2) 居住費

  ○  医療保険における居住費については、療養の給付として入院基本料において包括的に評価されており、これに伴う定率負担

   ※  病院の療養病棟に入院した場合には、療養病棟入院基本料として、1日につき1,209点(=12,090円)を評価



介護保険における食費・居住費の見直しについて

 介護保険給付と年金給付との調整、在宅と施設の給付と負担の公平性の観点から、介護保険3施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)における食費及び居住費について、以下のとおり、保険給付外・利用者負担とする。(平成17年10月施行)

(1) 食費

 <現行>
  ○  介護保険における食費については、「基本食事サービス費」として評価されており、被保険者等は、所得に応じて、平均的な家計における食費を勘案した標準負担額を負担

 <見直し後>
  ○  基本食事サービス費を廃止(栄養管理については、施設サービス費の加算として評価)
  ○  調理コスト及び材料コスト相当を利用者負担(4.2万円〔1人当たり月額モデル負担額〕)

(2) 居住費

 <現行>
  ○  介護保険における居住費については、施設介護サービスとして包括的に評価されており、これに伴う定率を負担

 <見直し後>
  ○  施設介護サービス費から、多床室については光熱水費相当(1.0万円〔1人当たり月額モデル負担額〕)を、個室については減価償却費及び光熱水費相当(6.0万円〔1人当たり月額モデル負担額〕)を保険給付外・利用者負担



介護保険における施設給付の見直しについて−全体概要
利用者負担に関する主な論点



(1) 居住費に係る利用者負担の水準
(2) 食費に係る利用者負担の水準
(3) 低所得者に対する負担軽減対策

介護保険における施設給付の見直しについて−全体概要の図



介護療養型医療施設の入所者(要介護5・甲地)における利用者負担の変化
(モデル 万円/月)

介護保険における施設給付の見直しについて−全体概要の図



現金給付の在り方について


 疾病又は負傷に関する療養の給付等のほか、休業補償や実費補償として行われている以下の現金給付についてどう考えるか

  ・  出産育児一時金
  ・  出産手当金
  ・  傷病手当金
  ・  埋葬料



(1)  出産育児一時金について

  ○  出産費用の負担の軽減を図るため、医療機関における分娩料の状況等を踏まえ、現在30万円(*)を支給
  * 30万円の根拠
 旧国立病院における分娩料の全国57病院の平均31.7万円 (平成14年3月)

(参考1)
   保険財政への影響を考慮し、出産育児一時金は分娩料を補填するものとして位置付けている。
 一方、妊産婦健診の費用の負担の軽減については、母子保健施策として、各地域ごとに地域の実情に応じた取組として行われている(妊産婦健診の国庫補助事業については、平成10年度に一般財源化)。

(参考2)出産育児一時金の財源

 ・  政管健保− 保険料(※出産育児一時金は国庫補助の対象外)
 ・  組合健保− 保険料
 ・  市町村国保− 保険料及び一般財源(※市町村の出産育児一時金については、交付税措置が行われている。)
 ・  国保組合− 保険料及び国庫補助金(※国保組合の出産育児一時金の支給に要する費用の一部を補助)



出産育児一時金(分娩費及び育児手当金)の変遷※1

  分娩費 育児手当金
〔本人・配偶者とも〕
本人 配偶者
昭和36.6.15
標準報酬月額の半額
(6,000円)※2
3,000円 2,000円
昭和44.9.1
標準報酬月額の半額
(20,000円)
10,000円
昭和48.10.1
標準報酬月額の半額
(60,000円)
60,000円
昭和51.7.1
標準報酬月額の半額
(100,000円)
100,000円
昭和56.4.1
標準報酬月額の半額
(150,000円)
150,000円
昭和60.4.1
標準報酬月額の半額
(200,000円)
200,000円
平成4.4.1
標準報酬月額の半額
(240,000円)
240,000円
平成6.10.1 300,000円〔本人・配偶者とも定額〕
〔分娩費及び育児手当金を統合し、「出産育児一時金」を創設〕
平成14.10.1 対象者を本人又は配偶者から、全被扶養者に拡大

※1  育児手当金創設(昭和36年6月15日)以後の変遷
※2  ( )内は最低保障額



出産育児一時金の支給の推移(過去5年分)

出産育児一時金

  合計 うち政管健保分 うち組合健保分
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
平成10年度 220,106 66,031,168 125,227 37,567,214 94,879 28,463,954
平成11年度 217,135 65,140,690 122,886 36,865,800 94,249 28,274,890
平成12年度 218,888 65,666,400 124,691 37,407,300 94,197 28,259,100
平成13年度 219,875 65,961,658 126,778 38,033,478 93,097 27,928,180
平成14年度 218,931 65,679,352 125,584 37,675,252 93,347 28,004,100


家族出産育児一時金

  合計 うち政管健保分 うち組合健保分
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
平成10年度 638,984 191,695,418 315,464 94,639,200 323,520 97,056,218
平成11年度 619,277 185,783,400 304,186 91,256,100 315,091 94,527,300
平成12年度 614,535 184,360,518 305,607 91,682,118 308,928 92,678,400
平成13年度 606,127 181,834,645 305,477 91,643,334 300,650 90,191,311
平成14年度 584,843 175,453,018 294,235 88,270,618 290,608 87,182,400

出典「事業年報(平成14年度)社会保険庁」



(2)  出産手当金について

 ○  出産のため労務に服さなかったことによる所得の喪失または減少を補うため、産休中(出産日以前42日から出産日後56日まで)の間、1日につき標準報酬日額の6割相当額を健康保険から支給

 ○  1年以上被保険者であった者が被保険者の資格喪失日後6ヶ月以内に出産した場合にも支給

 ○  任意継続被保険者に対しても支給

(参考)資格喪失日後6ヶ月以内に出産した場合の支給の意義について

   一般に妊娠4ヶ月程度(出産まで6ヶ月)になると、妊娠の事実が外部より察知され解雇のおそれがあることから、解雇による被保険者資格喪失日後6ヶ月以内に出産した者を保護する意義を有していたもの。
 現在は、労働基準法により、産前産後休暇の期間及びその後の30日間は解雇が禁止され、また、男女雇用機会均等法により、妊娠を理由とした解雇自体が禁止されているなど、法的に整備されている。



出産手当金の支給の推移(過去5年分)

  合計 うち政管健保分 うち組合健保分
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
平成10年度 220,096 76,960,485 124,350 41,633,891 95,746 35,326,594
平成11年度 214,586 77,241,551 121,414 42,381,931 93,172 34,859,620
平成12年度 215,388 78,463,482 123,811 43,577,131 91,577 34,886,351
平成13年度 215,567 79,720,589 126,037 44,997,427 89,530 34,723,162
平成14年度 214,785 80,533,070 125,298 45,332,775 89,487 35,200,295

出典「事業年報(平成14年度)社会保険庁」



(3)  傷病手当金について

 ○  被保険者が業務外の事由による療養のため労務不能となった場合、労務不能の期間中、最長で1年6ヶ月間、1日につき標準報酬日額の6割相当額を健康保険から支給

 ○  任意継続被保険者に対しても支給

 (参考1)
  ・  制度創設当時(大正12年)の家計調査により、報酬の60%程度が家計の生活必需品(衣食住)に充てられているものと推定された。
  ・  直近(平成14年)の家計調査では、報酬の41.6%が衣食住に充てられている。

 (参考2)
  ・  休業中等の各種給付について(別添)



別添
休業中等の給付について

  傷病手当金 出産手当金 休業補償給付 育児休業給付 介護休業給付 失業保険給付
内容 業務外の事由による療養中、賃金日額の60%相当額を、最長1年6ヶ月支給 出産による休業中、賃金日額の60%相当額を、出産日以前42日から出産日後56日までの期間支給 業務上の事由による療養中、賃金日額の60%相当額を、休業期間中支給 育児休業中の賃金日額の40%相当額を、育児休業期間中支給 介護休業中の賃金日額の40%相当額を、最長3ヶ月間支給 離職時の賃金日額の50%〜80%(賃金日額の額に応じて設定)相当額を、失業期間中の雇用保険加入期間及び失業事由に応じた期間(90日〜330日)支給
支給割合の考え方 大正12年の重要工業地域における労働者家計調査で、報酬の60%程度が生活必需費に充てられているものと推定されたため 傷病手当金に準じて設定 「業務災害の場合における給付に関する条約」(第3号)により60%以上と定められており、また、旧工場法における60%を踏襲 出産期の女性が失業した場合の、失業給付の給付率(50%以上)との均衡や、育児休業中の者は社会保険料が免除されていること(約10%相当)を考慮して40%に設定 育児休業給付に準じて設定 失業者の再就職を支援するための失業期間中の一時的な期間の保障するため(最低基準を60%よりも低く設定)
我が国が批准したILO条約における支給基準 45%(※1)
(社会保障の最低基準に関する条約)
【1976年批准】
45%(※2)
(社会保障の最低基準に関する条約)
【1976年批准】
60%
(上記参照)
【1974年批准】
なし
(家族的責任を有する労働者条約)
【1995年批准】
なし
(家族的責任を有する労働者条約)
【1995年批准】
45%(※3)
(社会保障の最低基準に関する条約)
【1976年批准】
※1  医療及び疾病給付に関する条約においては、60%の水準を求めているが、予防医療への保険給付について求めているため未批准
※2  母性保護条約においては、3分の2の水準を求めている等のため未批准
※3  雇用の促進及び失業に対する保護条約においては、年齢に基づく給付差別の禁止等を求めているため未批准

 (参考) 厚生年金給付・・・ 現役の賃金の一定割合を保障するという考え方に立って給付額を設定
標準的な高齢者夫婦のモデル年金額は、現役の賃金の59.3%(平成16年度)、50.2%(平成35年度)
(参考) 国際条約(障害、老齢及び遺族給付条約)【未批准】における支給基準は45%



傷病手当金の支給の推移(過去5年分)

  合計 うち政管健保分 うち組合健保分
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
平成10年度 1,535,013 260,533,005 1,134,548 186,369,268 400,465 74,163,737
平成11年度 1,444,298 248,753,970 1,067,181 177,254,044 377,117 71,499,926
平成12年度 1,375,805 237,366,625 1,008,618 167,193,989 367,187 70,172,636
平成13年度 1,289,088 219,679,747 929,560 151,058,121 359,528 68,621,626
平成14年度 1,217,872 208,945,334 865,943 140,894,137 351,929 68,051,197

出典「事業年報(平成14年度)社会保険庁」



(4)  埋葬料について

 ○  被保険者が死亡した場合、死亡した被保険者の収入により生計を維持していた者で葬儀を行うべきもの等に対し、被保険者の標準報酬月額相当額(最低保障10万円)を健康保険から支給

 ○  また、被扶養者が死亡した場合、被保険者に対し、定額10万円の家族埋葬料を支給

  (参考) 被保険者本人の最低保障額(被扶養者は定額)は、最低葬儀費用については保障すべきとの考え方から設けられているもの。



埋葬料の変遷※1

  本人 被扶養者
昭和48.10.1
標準報酬月額の1月分
(30,000円)
※2
30,000円
昭和51.7.1
標準報酬月額の1月分
(50,000円)
50,000円
昭和56.4.1
標準報酬月額の1月分
(70,000円)
70,000円
昭和60.4.1
標準報酬月額の1月分
(100,000円)
100,000円

※1  最低保障制再開(昭和48年10月1日)以後の変遷
※2  ( )内は最低保障額



埋葬料(費)の支給の推移(過去5年分)

埋葬料(費)

  合計 うち政管健保分 うち組合健保分
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
平成10年度 71,964 24,844,328 48,319 15,294,899 23,645 9,549,429
平成11年度 69,884 23,986,880 46,693 14,693,152 23,191 9,293,728
平成12年度 66,138 22,499,409 44,319 13,734,243 21,819 8,765,166
平成13年度 64,114 21,624,641 42,949 13,197,763 21,165 8,426,878
平成14年度 62,234 20,652,849 41,615 12,552,028 20,619 8,100,821


家族埋葬料

  合計 うち政管健保分 うち組合健保分
件数 金額(千円) 件数 金額(千円) 件数 金額(千円)
平成10年度 154,944 15,495,390 97,714 9,771,350 57,230 5,724,040
平成11年度 147,575 14,757,677 94,958 9,495,725 52,617 5,261,952
平成12年度 143,837 14,383,645 95,941 9,594,045 47,896 4,789,600
平成13年度 134,464 13,446,400 86,062 8,606,200 48,402 4,840,200
平成14年度 128,694 12,869,408 84,150 8,415,008 44,544 4,454,400

出典「事業年報(平成14年度)社会保険庁」

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