第19回中央最低賃金審議会議事録


1 日時  平成17年7月26日(火)10:00〜10:20

2 場所  経済産業省別館第1111号会議室

 出席者
【委員】公益委員 今野委員長、石岡委員、鬼丸委員、勝委員、中窪委員、樋口委員
労働者委員 弥富委員、加藤委員、久保委員、須賀委員、中野委員、横山委員
使用者委員 池田委員、内海委員、川本委員、杉山委員、東條委員、原川委員
【事務局】厚生労働省 青木労働基準局長、松井審議官、前田賃金時間課長、
 名須川主任中央賃金指導官、山口副主任中央賃金指導官、
 梶野課長補佐

 議事次第

(1) 中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について
(2) 平成17年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)

 配付資料

 中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告 (PDF:131KB)

7 議事内容

○今野会長
 ただ今から、第19回中央最低賃金審議会を開催します。本日の議題は、平成17年度地域別最低賃金額改定の目安についてです。平成17年度の地域別最低賃金額改定の目安については、去る5月13日に厚生労働大臣から当審議会に対し、諮問が行われていましたが、その後目安に関する小委員会において、熱心に検討いただきました結果、先日の小委員会において、報告が取りまとめられましたので、小委員長を務めました私から報告をさせていただきます。
 本年度の目安審議については、去る5月13日の総会において諮問があり、目安に関する小委員会に付託されました。 その後、小委員会においては、6月24日、7月14日、7月21日に会議を開催し、委員の皆様に熱心にご議論をいただきました。特に第3回の小委員会においては、小委員会報告を取りまとめるべく、公益委員と労使各側委員との個別打合せを数回にわたり開催し、夜遅くまでご議論をいただきました。しかし、労使の意見の一致を得ることができませんでした。しかしながら、結果として公益委員見解を本審議会に報告することについて、労使各側にご了解をいただき、お手元に配付してあります報告を取りまとめた次第です。 では、小委員会報告を事務局に朗読していただきます。

○山口副主任中央賃金指導官
 中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告、平成17年7月21日。
 1、はじめに。平成17年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
 2、労働者側見解。労働者側委員は、景気は着実に回復を続け、企業業績も全体として改善が進んでおり、収益力はこの10年間でもっとも高いレベルにある一方、労働者生活は置き去りにされ、低所得層の生活苦が深刻化しており、そこに目をむけた政策対応が必要であると主張した。
 2005年5月の完全失業率は4.4%、有効求人倍率は0.94倍で人員不足気味の職場も増え、足下では時間当たり賃金の上昇がみられるが、雇用形態の多様化が低所得・不安定雇用の増加を伴って進んでおり、雇用者に占める非典型労働者の比率は3割を上回っていると指摘し、持続可能な安心して暮らせる社会であるために、社会的な職業能力開発や就職支援などの雇用政策と同時に、「生活できる賃金」をナショナルミニマムとして担保することが求められていると主張した。
 加えて、現在の最低賃金時間額の全国加重平均は665円であり、月額に換算しても連合が2003年にマーケットバスケット方式によって試算した若年単身労働者の必要最低生活費の月額146,000円を大きく下回っており、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の一般労働者の所定内賃金の36.6%の水準にすぎないことなどから、生計費や実勢賃金に比べて低すぎるとともに、諸外国の最低賃金水準と比べても見劣りすることを主張した。また、この数年間の影響率は、極めて低く、最低賃金の存在感が希薄になっており、せめて単身でも最低限の生活ができる水準を実現すべく、明確な水準改善を図ってこそ、最低賃金の存在感を社会にアピールしていくことができると主張した。
 以上の点を踏まえれば、今年の目安決定に当たっては、過去3年間と明らかに異なる対応が必要であり、最低生計費を満たすに足る最低賃金水準をめざして、各種賃金指標の現行水準や環境変化の動向を踏まえつつ、明確な水準の改善に結びつく目安を提示すべきであると最後まで強く主張した。
 3、使用者側見解。使用者側委員は、日本の景気は「緩やかに回復し、踊り場から脱却しつつある」とされているが、地域間、業種間、大企業と中小・零細企業との間には、景況感に大きな温度差があると主張した。各種調査報告において、地域の景況や雇用情勢の改善の度合いの格差が指摘されており、有効求人倍率や完全失業率をみても地域間の格差が明確になっているとし、また、資金繰り判断は中小企業、特に非製造業において厳しく、業況判断DIにおいても中小企業ではマイナス幅が前期比で再び拡大に転じていると指摘した。
 日本経済全体についても、アメリカや中国の経済状況、為替や株の動向、原油をはじめとする原材料費の高騰など、先行きの不透明感が増す中、手放しで楽観できず、大企業や大都市など、限られた部分の情勢は良くなっているものの、バラツキが大きくなっていることを強く認識する必要があると主張した。
 加えて、賃金改定状況調査の第4表の賃金上昇率をみても、Aランクの0.6%に対して、Dランクは0.0%と差がついているだけでなく、平均の0.4%を上回っているのはAランクのみであること、製造業の賃金上昇率が0.0%であることも重く受け止めるべきであると主張した。また同調査の第1表では、賃金改定を実施しない事業所の割合が54.2%と4年連続して50%を超えていると指摘した。さらに賃金交渉結果については、妥結額、アップ率ともほぼ横ばいで推移するとともに、大手企業では初任給のアップ率は2003年以降、ほぼゼロで推移していると指摘した。
 以上の点を踏まえれば、景気は全体としては回復してきてはいるものの、地域間や企業規模間のバラツキが大きく、特に最低賃金の影響を大きく受ける中小・零細企業は依然として先行きが不透明・不安定かつ厳しい状況にあることから、中小・零細企業の存続と従業員の雇用の維持を最優先に考えるとともに、最低賃金という性格にかんがみると、賃金改定状況調査の第4表で最も数値の低かったDランク及び製造業の賃金上昇率である「ゼロ」を今年度の目安とすべきであると最後まで強く主張した。
 4、意見の不一致。本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
 5、公益委員見解及びこれに対する労使の意見。公益委員としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、賃金改定状況調査結果を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え方を基本としつつ、上記の労使の小規模企業の経営実態等の配慮及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表われた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまとめ、本小委員会としては、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。
 また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。
 なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容となっているとし、不満の意を表明した。
 記、平成17年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員会見解。
 1、平成17年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。
 平成17年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。
 Aランク、東京、神奈川、愛知、大阪、千葉、3円。
 Bランク、滋賀、兵庫、静岡、埼玉、京都、長野、富山、三重、広島、栃木、3円。
 Cランク、茨城、山梨、群馬、香川、石川、奈良、山口、岡山、福井、宮城、福岡、北海道、新潟、岐阜、福島、和歌山、3円。
 Dランク、徳島、大分、島根、山形、愛媛、鳥取、岩手、佐賀、高知、鹿児島、熊本、秋田、宮崎、長崎、青森、沖縄、2円。
 2(1)、目安小委員会は本年の目安の審議に当たっては、平成16年12月15日に中央最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基に審議してきたところである。
 目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては最低賃金の審議に際し、上記資料を活用されることを希望する。
 (2)、目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が本年度の地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。 以上です。

○今野会長
 今回は景気が回復基調にある中で、小規模企業の経営実態やそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性をどのように考えるか、といった点を巡って、労使の主張が相反する中で目安審議を行うことになりました。しかし、関係者の御努力により、ただ今ご報告しました小委員会報告を取りまとめることができました。改めて、関係者の皆様に御礼を申し上げます。なお、最後に付け加えたい点があります。これまでの目安額の決定において、各ランク同率の改定率となる慣行が定着してまいりましたが、今回の審議の過程において、地域ごとの経済実態の違い等から、各ランクごとの改定率に差をつけるべきではないかという議論がなされました。こういった議論については、地域ごとの最低賃金の機能の適切な発揮という観点に立って、今後検討する必要があるのではないかと考えています。以上が私からの報告です。ただ今の小委員会の報告、説明について何かありますでしょうか。

○東條委員
 長時間にわたって小委員会でご審議していただいた結果を受け止めています。今私は地方から出てきています。地方の現状をちょっとここでお伝えします。地方には中小・零細企業といいますと、この表に出ていない50人未満、10人未満の中小企業が圧倒的に多く、先日も銀行の理事長とお話ししましたが、やっと東條さん、踊り場に出てきたけれども、その1つのものが企業に仕事があったら取り合いをしてなかなか思うようにいかないのが現状だと、またまだ中小企業が低迷していて、思うようなところまで行かないと言っていました。過去3年間の経過がありましたが、そのとおりの状況でいま推移していることを、ここで報告しておきます。以上です。

○今野会長
 他にありますでしょうか。よろしいですか。それでは、特にないようでしたらこの小委員会報告をもとに当審議会としての答申を取りまとめます。いかがでしょうか。よろしいですか。

(異議なし)


○今野会長
 事務局から答申案を配付願います。

(答申案配付)


○今野会長
 それでは、事務局から朗読お願いします。

○山口副主任中央賃金指導官
 平成17年7月26日、厚生労働大臣尾辻秀久殿、中央最低賃金審議会会長今野浩一郎。平成17年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)(案)。平成17年5月13日に諮問のあった平成17年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。 記。1、平成17年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し、意見の一致をみるに至らなかった。 2、地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。 3、地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
 なお、別紙1、2は、先ほど読み上げたものと同じですので、省略させていただきます。

○今野会長
 ただ今の答申案について、何かありますでしょうか。よろしいですか。それでは、この答申案のとおり答申を取りまとめたいと思いますが、いかがでしょうか。

(異議なし)


○今野会長
 全会一致でこの答申案どおり答申することが了承されたものとします。次に、ただ今の答申を青木局長にお渡しします。

(答申案手交)


○今野会長
 局長からご挨拶をお願いします。

○青木労働基準局長
 大臣が所用により欠席となっていますので、代わりに私からご挨拶をさせていただきます。平成17年度の地域別最低賃金額の改定の目安につきまして、ただ今ご答申をいただきまして、誠にありがとうございました。今後、この答申を各都道府県労働局に伝達いたしまして、それぞれの地方最低賃金審議会における地域別最低賃金額の改定審議が円滑に進められるように対応してまいります。本日はどうもありがとうございました。

○今野会長
 ありがとうございました。ほかに何かありますでしょうか。よろしいですか。それでは、これで第19回中央最低賃金審議会を終了します。本日の議事録の署名は、東條委員と横山委員にお願いします。ありがとうございました。


(照会先)
労働基準局勤労者生活部勤労者生活課最低賃金係(内線5532)



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