労働契約法の基本的性格について


 民事法規としての性格

 労働契約法は、労働契約に関して労使当事者の自主的な決定を促進する公正・透明な民事ルールを定めるものであり、労働契約に関する民法の特別法と位置づけられる。
 同様の性格を持つ民法の特別法として借地借家法や消費者契約法が、商法・有限会社法の特別法として労働契約承継法がある。

 労働基準法との関係

 労働条件の最低基準を定め罰則と労働基準監督官の臨検等による監督指導により履行を確保する法律として労働基準法があり、また、労働基準法から派生し同様の性格を有する法律として労働安全衛生法と最低賃金法がある。労働契約法を制定するに当たっては、その基本的性格及び役割がこれら労働基準関係法令とは異なることを明確にするために、労働基準法とは別の法律として定めることが適当と考えられる。
 したがって、労働契約法の制定は、労働条件に関する基本法としての労働基準法の重要性にいささかの変更を加えるものではない。

 その他の労働関係法令との性格の異同

 2の労働基準関係法令のほか、労働関係においても、民事的な効果を有する規定を含む法律がいくつか成立している。
 例えば、育児・介護休業法においては、労働者の育児休業等の権利を定めており、事業主は原則として労働者の申出を拒むことができないとされている。
 また、労働契約承継法は、労働契約のうち特定の局面である会社の分割の際の労働契約の承継等に関して、商法及び有限会社法の特例となる民事上のルールを定めている。
 これらの法律は、労働者に対する権利付与の規定について、罰則や臨検等による監督指導を背景とすることなく民事的な効果を有するものとされているが、労働契約法もこのような性格を有する法律に属することになると考えられる。

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