(資料1)

第5回研究会における主な議論の概要
( 未定稿 )

(横須賀市の取り組みについて)

 虐待事業は、当初は母子保健事業の中に位置づけられていた。平成6、7年ころから従来の手法では解決しない虐待の事例が多くなり、児童相談所と連絡をとっていくが、児童相談所はかなり重いケースに対応しているので、軽いケースや疑われるケースについてケース会議を開くのは難しい。また、市町村の職員にスーパーバイズしてくれる機能をつくらないと、混乱してしまうことから、平成12年に「虐待防止事業」を立ち上げた。

 ケース会議を市が立ち上げられるようにとネットワーク会議(ネットワークミーティング)を起こし、親同士のMCGといわれる気持ちを吐露する場(ラベンダー)を設けたりした。

 虐待防止事業を立ち上げることにより、相談件数がかなり増加した。一時保護所がいっぱいであるなど低年齢児への対応が困難なことから、親子分離しないまでも短時間分けて、子どもの安全を守ったり、親のレスパイトをできる政策が欲しいとして、平成14年に子ども虐待に対応する専従のチームとして、子育て支援課の中に、子ども虐待予防相談センター(YCAP)を立ち上げた。

 YCAPと児童相談所、市内4箇所の健康福祉センター、主任児童委員さんを中心とした保育園を含んだ地域を見守る人との役割分担をつくったが、重複しているところもあり、そのケースごと議論をするなどして経過している。

 虐待予防相談センター(YCAP)の事業は、一般相談として、随時電話や面接で市民から要望があったとき保育士・保健師・心理相談員が対応。心理相談員による心理相談。メンタルヘルス相談として、市内の総合病院の精神科医による予約相談。ラベンダーは平成12年から行っているグループミーティング。ネットワークミーティングは今まで全体会と各ケースへの対応の部会との二層構造で行っている。緊急一時保護と緊急一時入院は、乳幼児の対応策の一つとして事業立てし、虐待予防のために原則6日間、利用者負担なく使える。啓発活動は病院に対しては毎年順番で医師会や看護協会とタイアップしてやっている。学校に対しては、啓発活動の成果が出てきている。

 児童福祉法が変わって児童相談の一時的な相談が市町村になったので、今はYCAPが虐待問題を担当し、青少年センターが青少年非行の問題を担当したり、色々な相談の場所が市役所の中に点在しているので、一本化する必要があると考えている。また、子育て支援課の中に相談窓口を体制づける準備をしている。

 夜間休日に対応するため、平成18年1月から24時間相談に対応できる準備を進めている。非常勤職員で心理職員をあてることを予定している。

 今まで虐待のネットワーク会議を持っていたが、児童家庭相談ネットワーク(子ども家庭地域対策ネットワーク会議)として7月に再構築する準備をしている。  また、18年4月に市の児童相談所を持つ準備をしている。

 児童虐待の状況は、15年度から倍以上に増えている。その中でもネグレクトが急激に伸びている。

 YCAPという看板を掲げることによって、本人も悩んでいることが見え、本人からの相談が増えてきたり、関係機関からの情報が増えてきている。その中で、見守り機関として保育園・幼稚園はかなり期待されているが、、職員はかなり悩みながらやっている。その職員をサポートするため精神科医や心理相談員に保育園・幼稚園に出向いてもらって事例検討をやったり、相談にのってもらったりしている。  虐待者本人へのサポートでYCAPはMCGであるラベンダーや個別相談を実施している。啓発活動の効果としてネグレクトの把握がかなり増えてきている。

 様々な相談が市町村へ降りてきているが、学校に行ってからの問題は非行とのからみがあったり、重症化しているケースが多く、誰が担っていくのかまだ整理仕切れてない。

 児童相談所との役割の明確化が必要となるが、いかに隙間を無くしていくかの一番のキーは人間関係。非行へのケースワークはほとんど経験がなく、どうやって対応していくか課題。また、職員の人材にも限界があるので、職員をどうスキルアップしていくか大きな課題。

 横須賀市は福祉事務所が独立してはない。福祉部門の中で措置権をもっているところに併任という形で福祉事務所がかかっている。子育て支援課全部が福祉事務所という位置づけになったので、YCAPも福祉事務所の一環という形。家庭児童相談室は持っていない。

 横須賀市は、来年4月に児童相談所を設置するので、県の児童相談所へ職員の研修を受け入れてもらったり、市内のいろいろなところに派遣研修という形で出ている。一番の課題は職員の経験のなさ。18年4月に児童相談所を立ち上げて、一時保護所は2年後の20年。保護所を持たないでやる大変さや、ワーカーの業務量の増加を考えると非常に重い。また、乳児院がない。市で児童相談所を持つ事のメリットは、児童福祉の政策と母子保健の政策等、連動していける。


(相模原市の取り組みについて)

 保健福祉部と保健所、教育委員会が中心となって児童虐待防止に対応している。今年4月からの組織改正で、児童手当の関係を担当するこども育成課と、子どもセンターや児童クラブなどを担当する子ども施設課に分かれた。さらに子ども育成課内の課内室で、子どもとその家庭に関する相談体制の充実や、児童福祉法、児童虐待防止法の改正に対応するため、子ども家庭支援センターを設置した。

 平成12年11月の児童虐待防止法の施行をうけて、平成13年5月に相模原市児童虐待防止ネットワークを設置。ネットワークは、児童虐待防止協議会と児童虐待防止連絡会議で構成。協議会は、児童虐待への取り組みに関する情報交換・協議・連携などに係る事項を所管。連絡会議は全体会議とケース会議に分かれている。全体会議は市における児童虐待防止対策事業の方向性の検討や、庁内関係機関のスムーズな連携などの事項を所管。ケース会議は、個々の事例に対する情報の共有や具体的な対応方法、役割分担を検討する児童虐待対応の中心となる会議という位置づけ。この他にも、昨年までのネットワークの中心機関であった子育て支援課、福祉事務所、保健所、教育委員会が出席して、各ケースについて個別に対応方法を検討していく定例ケース会議を年2回開催している。また、児童相談所とは、市が対応しているケースのうち、児童相談所と連携して対応しているものについて、随時のケース会議とは別に年1回児童相談所と対応方法の確認を行っている。

 4月に立ち上がった「こども家庭支援センター」は、これまで各機関で児童虐待対応に当たっていた職員を集約する形で、保健師・福祉職・保育士などの専門職を中心とした8人の正規職員及び心理相談員・家庭児童相談員・育児支援家庭訪問相談員などの非常勤職員を配置している。主な業務内容は、子どもとその家庭にかかわる相談および児童虐待防止対策事業と位置づけ。

 児童虐待防止対策事業は、児童虐待の相談通告の受け付け、児童虐待防止ネットワークの運営や個別ケースの進行管理、育児支援教室(MCG)。新規事業として育児支援家庭訪問事業は、現在実施に向けて調整している。

 こども家庭支援センターではすべての相談をうけることはできないので、継続的な関わりや専門的な指導が必要なものについては、適切な相談窓口に引き継ぐ役割を担っている。

 児童虐待防止対策事業について、児童福祉法・児童虐待防止法の改正に伴い、市町村の役割が強化されたことから、こども家庭支援センターは児童虐待対応の中心的な機関として、各機関と連携するとともに、市民や各機関からの虐待に関する相談通告窓口と位置づけ。

 市独自の取り組みの一つ目として、乳幼児のケースについて、市の現状にあったチェックリストを作成。記入の手引きを作成し、評価頻度や重症度による基本的な対応を明確にし、記入にあたってばらつきのないようにした。項目数を通常の約3分の2に整理したので、記入時間が短縮された。重症度自動計算式により客観的な重症度の判定が可能になった。記入の手引きを作成したので、共通の認識で記入できる。ただ、こども家庭支援センターと保健所でのみ使用。

 二つ目として、通常の一般的なケース会議を含めた会議で共通の認識でケースの検討をするためのツールとして、育児困難家庭のための支援評価シートを作成している。支援の計画・実施・評価・改善を繰り返し行うことは効果的なケースの状況把握と支援の評価が可能になった。リスク要因の有無から支援の効果までが視覚的に把握できるようになり、支援が不足しているリスク要因を効果的に把握できるようになった。リスク要因の新旧を把握できることで、これまでの経過を深めた継続的な支援評価ができるようになった。

 こども家庭支援センター設置の効果としては、子どもと家庭に関する相談窓口や児童虐待に関する通告窓口が明確になった。また、中心機関が一つになったことから、支援方針を組織的に決定することが容易になった。さらに、担当者が一つの部署に集約されることで、複数職員による現場対応や、困難事例について相談できる体制が整った。こども家庭支援センターが、児童虐待対応の専属機関ということで庁内に位置づけられたので、市役所内の他の機関との役割分担や、他の機関の児童虐待に対する意識の低下などの問題がすでに出てきている。

 相模原市は、昨年までは福祉事務所が通告機関で、ネットワークに中心的に関わっていた。今年になって、通告機関は福祉事務所からこども家庭支援センターに移った。家庭児童相談員はこども家庭支援センターへ配置換えした。


(水巻町の取り組みについて)

 児童少年相談センター(ほっとステーション)は、平成13年4月にあらゆる問題・相談に対応できる相談機関として教育委員会の生涯学習課の中に設置。0歳から19歳までの本人および家族、関係機関の相談にあたっている。児童虐待防止に関する業務、いじめ・不登校・ひきこもり・非行等の防止に関する業務やその他未成年の健全育成に関する業務の3つを行っている。

 センターの機能は、相談機能、ネットワーク機能、居場所機能の3つがあるが、中核的なものは、事務局機能があり、かなり大きなウェイトを占めている。

 職員体制は、現在5名体制。所長1名と相談員3名、臨時職員1名。それぞれ産業カウンセラや社会福祉士、精神保健福祉士など資格を持っている。カウンセリング理論やスキルを取得して、本人や家族のあらゆる相談に対応できる。

 平成14年2月16日に設置した「いきいき子どもネット」は、平成16年度の児童福祉法で設置が求められている要保護児童対策地域協議会に、ほぼ一致している。委員構成は保健・医療機関代表者の医師が会長で、教育関係から小中学校・幼稚園、福祉関係から児童相談所・福祉事務所・町内の私立の保育所、司法の関係から保護司・弁護士・警察官、議会から3人。

 連携による関係機関の変化は、センターは相談者が来談しないことには業務が始まらない。全く地域の機関の認識がなかった。各機関を訪問し、センターの理解を深めたり、相談事例があったらセンターに相談してもらえるよう働きかけを常時行った。事例について、共通理解が進み、機関の役割が明確になって、関係機関が安心してかかわれるようになった。

 居場所の確保。児童虐待防止に関して子育て不安を抱える親などが、子どもを抱えてきて、しばらくセンターDえ過ごす場所になっている。不登校児童・生徒に対しては親や学校からの依頼を受けて預かっている。相談センターへの通所については、登校扱いとしてカウントしている。 ○ 相談件数の推移について、毎年ごとの受付件数は60件台で推移している。平成16年度は76件。延べ件数では、開設時からだいたい2倍程度の増加。不登校の相談件数は減少傾向にある。

 健全育成の一環として、勤労体験支援事業を行っている。不登校や非行により、中学校を卒業後進学または就職していない者に対して、勤労体験を通じて自尊感情を醸成し、社会性の向上を図る目的。3ヶ月間勤労体験を行っている。3ヶ月という期間が短く、直接就労につなぐというのはなかなか難しいが、何か働くということを通じて、いろんな気づきや得るものが多いということを聞いている。

 外部の養成機関と職員のスキルの向上の研修を委託したり、専門の団体と連携をとりながら職員の派遣などの体制づくりをしていくなど、相談体制を今後どのように維持向上させていくか課題。


(関係機関との連携)

 児童家庭支援センターは当初県全体の社会養護のところをフォローアップするように作られたが、実際は市の地域の相談、緊急の対応で利用されている。

 相談の窓口として市が位置づけられたが、その後の支援のメニューがないため、問題の抱え方が非常に深刻になっている。

 ケースをマネジメントしていくのが児童相談所が中心にまだやっているので、直接児童相談所と関係機関が連携するしたほうがやりやすい。市町村が地域連絡協議会とか、相談をうける体制が整ってくれば、そちらへ移行するのでは。

 警察との関係で、児童相談所はかなり日常的に連携をとっている。また、市町村でも、体制ができているところは、これから警察との連携も多くなってくるのではないか。非行の関係もそうだが、虐待のケースについても、これから警察を絡めてやっていくケースは相当多くなる。

 警察との連携で、一番多いのは緊急時の対応。虐待の関係で、警察と連携がいる部分とあまり頼りすぎてはいけない部分があり、ガイドラインをつくることが必要。非行の問題も含めて、要保護児童対策協議会でやっていくという議論がでると、むしろ逆に今まで警察だけが主体で対応していた非行対応が、市町村とか福祉部門も一緒に取り組んで、警察と一定のガイドラインを意識しながら協力し合いながらやっていくという新しい形がでてきている。

 警察との関係で、福祉と警察とではとらえ方が違う。児童相談所は人の心の内側から事例を見ていく。警察は外側の行動に表れていることをポイントにする機関が連携するのには、同じ言葉なのに感じ方が違うなどギクシャクする。

 子どもの相談は結局相談の後の受け皿の問題が大きい。相談の部分が市町村に移った場合、市町村が相談を受けた子どもの受け皿というのがどのように利用できるのか、あるいは利用できないのか、一緒に議論する必要がある。

 自分が市民として町を歩いていて、通告するなら警察。児童相談所というイメージはあっても、すぐに対応してくれそうなのはやはり警察という気がする。通告の段階での連携とかその後の連携で重要な連携先は警察である。市町村に移っていくとき、イメージとして市町村だと定着するまでは警察が重要。

 警察が、初期だけは緊急や大変だからとりあえず対応し、その後、すぐに福祉の機関につなぐ流れになるのか、ガイドラインが必要。

 通告をもらったとき、そのネットワークの中にキーパーソンがいる。その人に連絡をとって、その人がいろいろな所の情報を集めて、そこと意見交換しながらアセスメントするのが仕事の流れ。虐待事例だが、児童相談一般となると、児童相談所と市町村がそれほど情報交換しなければならないことはなくなる。虐待とそれ以外の相談とは、違う流れのシステムがいる。

 児童相談所が主で持っているケースと市が主でもっているケースがある中で、市が立ち上げた地域協議会の中に、児童相談所にどのように入ってきてもらうか気をつけて調整する必要がある。

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