改正 保健師助産師看護師の行政処分の考え方について


 平成17年7月22日開催された、医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会において、別添のとおりとりまとめられましたので、お知らせいたします。

問い合わせ先:厚生労働省医政局看護課
担当:岩澤(内2599)
電話:03−5253−1111(代)



(別添)

 平成14年11月26日
改正 平成17年 7月22日

保健師助産師看護師行政処分の考え方

医道審議会保健師助産師看護師分科会
看護倫理部会

 当部会は、保健師助産師看護師(以下「看護師等」という。)の行政処分に関する意見の決定に当たり、過去における当部会の議論等を踏まえつつ、昨今の社会情勢や社会通念の変化に対応して、当面、以下の考え方により審議することとする。

 行政処分の考え方
 保健師助産師看護師法第14条に規定する行政処分については、看護師等が、罰金以上の刑に処せられた場合等に際し、看護倫理の観点からその適正等を問い、厚生労働大臣がその免許を取り消し、又は期間を定めてその業務の停止を命ずるものである。
 処分内容の決定においては、司法処分の量刑を参考にしつつ、その事案の重大性、看護師等に求められる倫理、国民に与える影響等の観点から、個別に判断されるべきものであり、かつ、公正に行われなければならないと考える。
 このため、当部会における行政処分に関する意見の決定に当たっては、生命の尊重に関する視点、身体及び精神の不可侵性を保証する視点、看護師等が有する知識や技術を適正に用いること及び患者への情報提供に対する責任性の視点、専門職としての道徳と品位の視点を重視して審議していくこととする。


 事案別の考え方

(1)身分法(保健師助産師看護師法、医師法等)違反
 保健師助産師看護師法、医師法等の医療従事者に関する身分法は、医療が国民の健康に直結する極めて重要なものであるとの考え方から、定められた教育課程を修了し免許を取得した者が医療に従事すること及び免許を取得していない者が不法に医療行為を行うことのないよう規定している。また、不法に医療行為を行った際の罰則についても、国民の健康に及ぼす害の大きさを考慮して量刑が規定されているところである。
 行政処分に当たっては、司法処分の量刑の程度に関わらず、他者の心身の安全を守り国民の健康な生活を支援する任務を負う看護師等が、自らに課せられた基本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらすような法令違反を犯したことを重く見るべきである。

(2)麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反及び大麻取締法違反
 麻薬等の違法行為に対する司法処分は基本的には懲役刑(情状により懲役及び罰金)であり、その量刑は、不法譲渡、不法所持した麻薬等の量、施用期間の長さ等を勘案して決定されている。累犯者についても重い処分となっている。
 行政処分に当たっては、麻薬等の害の大きさを十分認識している看護師等が違法行為を行ったこと、麻薬等を施用して看護業務を行った場合には患者の安全性が脅かされること、さらに、他の不特定の者へ犯罪が伝播する危険があること等を重く見るべきである。

(3)殺人及び傷害
 本来、人の生命や身体の安全を守るべき看護師等が、殺人や傷害の罪を犯すことは、看護師等としての資質や基本姿勢が問われるだけではなく、専門職としての社会的な信用を大きく失墜させるものである。特に、殺人を犯した場合は基本的に免許取消の処分がなされるべきである。
 ただし、個々の事案では、その様態や原因も様々であり、行政処分に当たっては、それらを考慮に入れるのは当然である。

(4)業務上過失致死傷(医療過誤)
 看護師等の業務は人の生命及び健康を守るべきものであると同時に、その業務の性質から危険を伴うものである。従って看護師等に対しては、危険防止の為に必要とされる最善の注意義務を要求される。看護師等が国民の信頼に応えず、当然要求される注意義務を怠り、医療過誤を起こした事案については、専門職としての責任を問う処分がなされるべきである。
 ただし、医療過誤は、様々なレベルの複合的な管理体制上の問題の集積によることも多く、一人の看護師等の責任に帰することができない場合もある。看護師等の注意義務違反の程度を認定するに当たっては、当然のことながら、病院の管理体制や他の医療従事者における注意義務違反の程度等も勘案する必要がある。
 なお、再犯の場合は、看護師としての資質及び適性を欠くものでないかどうかを特に検討すべきである。

(5)業務上過失致死傷(交通事犯)
 交通事故による致死傷等に対する司法処分では、警察等への通報や被害者を救護せずそのまま逃走した事犯の場合、厳しく責任を問われている。
 元来、看護師等は人の心身の安全を守るべきであるにもかかわらず、適切な救護措置をとらなかったり、通報もしなかったということは悪質であり、行政処分に当たっては、看護師等としての資質及び適性を欠くものでないかどうかを十分に検討し、相当の処分を行うべきである。

(6)危険運転致死傷
 本来、人の生命や身体の安全を守るべき看護師等が危険運転(飲酒など正常な運転ができない状態での運転等)を行うことは、著しく生命尊重を欠く行為であり、看護師等としての資質や基本姿勢が問われるだけでなく、専門職としての社会的信用を大きく失墜させるものである。司法処分においては、危険運転による死傷事犯を故意犯として捉え、法定刑も大幅に引き上げられたことを当然考慮すべきである。

(7)わいせつ行為等(性犯罪)
 人の身体に接する機会が多く、身体の不可侵性を特に重んじるべき看護師等がわいせつ行為を行うことは、専門職としての品位を貶め、看護師等に対する社会的信用を失墜させるだけではなく、看護師等としての倫理性が欠落している、あるいは看護師等として不適格であると判断すべきである。
 特に、看護師等の立場を利用して行った事犯や、強姦・強制わいせつ等、被害者の人権を軽んじ、心身に危害を与えた事犯については、悪質であるとして相当に重い処分を行うべきである。

(8)詐欺・窃盗
 信頼関係を基にその業務を行う看護師等が詐欺・窃盗を行うことは、専門職としての品位を貶め、看護師等に対する社会的信用を失墜させるものである。
 特に、患者の信頼を裏切り、患者の金員を盗むなど看護師等の立場を利用して行った事犯(業務関連の事犯)については、看護師等としての倫理性が欠落していると判断され、重くみるべきである。

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