平成17年度第3回目安に関する小委員会議事録


1 日時  平成17年7月21日(木)13:30〜

2 場所  厚生労働省第二共済組合宿泊所茜荘

 出席者
【委員】公益委員 今野委員長、石岡委員、中窪委員、樋口委員
労働者委員 加藤委員、久保委員、須賀委員、中野委員
使用者委員 池田委員、川本委員、杉山委員、原川委員
【事務局】厚生労働省 松井審議官、前田賃金時間課長、名須川主任中央賃金指導官、
 山口副主任中央賃金指導官、梶野課長補佐

 配布資料

  欧米における最低賃金制度等について (PDF:297KB)

5 議事内容
(第1回全体会議)

○今野委員長
 ただ今から第3回の目安小委員会を開催します。まず、前回の宿題の説明をお願いします。

○前田賃金時間課長
 それでは、資料としてお配りしている「欧米における最低賃金制度等について」という資料をご覧いただきたいと思います。まず、アメリカ・イギリス・フランスの最低賃金と消費者物価等の推移を整理したものです。1ページがアメリカでございますが、左側が最低賃金額の改定の状況、右側が消費者物価指数ということです。アメリカはそもそも公正労働基準法の中に最低賃金の金額を定めておりますので、金額改定する場合には法律の改正になるということです。ですので、当然議会で通らないといけないということになります。そういったこともあって、連邦最低賃金の改定が、しばしば大統領選挙の争点になるというような形で、政治的なシンボルという意味合いというものも強くなっているというところです。例えば、改定の状況をみていただくと、1980年代はほとんど改定されなかったということで、当時は共和党のレーガン政権の下で、新自由主義ということで、労働組合に対する圧力を加えるということもあり、最低賃金の改定が凍結されていたということです。一方、88年に大統領選があったわけですが、そのときに民主党が引上げを主張し、ブッシュも最低賃金の引上げに最終的にはのったということです。ただ、そのときに引上げ幅を下げるということ、あるいは若年者について、低いレートの最低賃金を導入するといった形で、ブッシュ政権のときに、一応4.25$まで上がったというような経過です。さらにクリントンの時代では、クリントン大統領選では最低賃金引上げを言っておったのですが、当初は医療改革の方でかなり力を入れており、それがなかなかうまくいかないということもあって、途中から最低賃金引上げを提案した。一方、使用者団体、共和党等は、それに対して否定的であったというようなところもあります。それで、96年の大統領選をめぐって、かなり政治的な駆け引きがあったりしましたが、そのときにカードアンドクルーガーなどの最低賃金の引上げは雇用に影響を与えないとの主張もあり、最低賃金引上げは必要であるということになったんですが、最終的に議会で、中小企業対策ということで、中小企業減税との抱き合わせということで、取引が成立して、引き上げられたという経過もあります。こういうことでアメリカでは一定の期間ごとに見直すというような形にはなっていないという形です。ただ4ページに、一方、州ごとの最低賃金があるところが多いということです。連邦最低賃金は公正労働基準法ですので、州際通商といいますか、州を越えた取引、あるいはそれに関連あるような一定の売上げということで、50万ドル以上という売上高があるようなところに適用されるということになっておりまして、その連邦最低賃金が適用されないようなもの、あるいは連邦最低賃金より高い最低賃金を州ごとに独自に決めているような例がかなりあるということです。アメリカの労働省のホームページで現在の州ごとの最低賃金額をとっておりまして、それをベースに書いておりまして、後、改定の状況については、各州のホームページから拾えたものを載せております。州によってかなり頻繁に改定されているところもあるというような状況です。それから元に戻っていただいて、2ページですが、イギリスではそもそも全国一律の最低賃金が1999年からできたということです。それ以前、昔は賃金審議会ということで、産業ごとに審議会で決めておったことがありましたが、それがサッチャー政権以降縮小廃止されたと。その後、労働党政権になって、全国一律の最低賃金が設けられたということでございます。最低賃金については、低賃金委員会で、一種の審議会方式になっておりまして、その低賃金委員会で賃金動向等をみつつ、労使からのヒアリングなど等も行いながら、勧告を出す。それを受けて、国務大臣が決定する。これは規則を改正するという形で、決定するという形になっております。最近の傾向をみると、毎年少しずつ上がっているというような状況です。それからフランスにつきましても、全国の一律のSMICという法定最低賃金がありまして、これについては毎年7月に改定が行われる。そのときに一般賃金の動向とか、物価などの実質の賃金上昇率をみて改定しているということでございます。それとともに、物価スライドというようなものがございまして、前回の改定から消費者物価指数が2%上がった場合には、自動的に改定するという形で、一定のインデクゼーションの引上げもあるということです。毎年7月には定期的に改定するということです。その際にやはり審議会のような形でCNNCで、審議が行われて、それをもとに改定を行うという。それから、10ページのところにリビングウェイジということで、これはアメリカで特に地方自治体と取引のある企業について、その労働者に対して最低賃金とは別に、生活賃金という形で一定の賃金を支払うことが強制されるというものであります。最初はボルチモアで1994年にそういう形のリビングウェイジというものができたということで、ここにあるように5千ドル以上のサービス契約を、市とするような企業について、生活賃金として一定の金額以上の賃金を支払うということが求められています。このEconomic Policy Institutesの資料によると、2001年10月現在で71の自治体でそういった形のリビングウェイジというものが導入されているということです。それから、前回中窪先生からご質問があった未満率と影響率の関係ですが、特に資料は用意しておりませんが、第1回の資料No2の16ページのところで地域別最低賃金の未満率、影響率が平成16年度はともに1.5%ということになっているのですが、このもとになっている最低賃金基礎調査というのは毎年6月で調査しておりまして、そのときの賃金分布をもとに未満率・影響率を計算しているわけですが、未満率はその時点で最低賃金を下回っているものの割合で、それが1.5%、影響率はその後最低賃金を改定した場合に、改定後の最低賃金を下回ることとなる労働者の割合がどれくらいかということ、それが16年度1.5%で同じになっているということです。16年度の場合に、地域別最低賃金が1円ないし2円引き上げられたところが多かったわけで、加重平均でみても、1円上がっているわけですが、未満率、影響率同じということになっているのですが、端的には四捨五入の影響ということで、さらに細かく小数点以下をみると、未満率は1.45%で、影響率は1.53%であったということで、影響率の方が当然高くはなっているんですが、たまたま四捨五入の結果両方1.5になったということでございます。説明は以上です。

○今野委員長
 今の点について何かご質問ございますか。よろしゅうございますか。それでは、次に進みたいと思います。前回の小委員会で労使各側から本年度の目安について、基本的な考え方を代表して言っていただいたのですが、さらに強調したいところや追加して主張されたいこと、あるいはその他意見がございましたらお願いしたいと思います。使用者側いかがですか。

○原川委員
 ちょっと資料をひとつ用意したんですけれども、お配りしてもよろしいでしょうか。前回私の方から、赤と黄色のカラーのコピー、棒グラフをお配りして、中小企業の景況についてご説明をしたわけでありますけれども、前回は5月末日時点での調査でございまして、昨日6月の末日時点での調査結果がまとまりましたので、一番新しいデータということで用意いたしました。これは前回申し上げましたように、全国3,000人の情報連絡員という景気のモニターを指名いたしまして、毎月定期的に報告をしていただくというシステムで調査しているものでございますけれども、1枚目をみていただきますと、真ん中にグラフがございますけれども、これは平成8年から平成17年まで各6月の刻みをいれながら、景況、売上高、収益状況、この3つについて推移をみたものでございます。去年の平成16年6月というのは、右から2番目の縦の線になるわけですけれども、ややずっと上ってまいりまして、ちょうど若干上がったり、下がったりというような足踏み状態を続けておりますけれども、やや回復がみえるというようなところでございます。それが、2枚目をめくっていただきますと、それを表にしたものが表1でございますけれども、平成16年6月、たとえば景況で申し上げますと、マイナス26.9、DI値がマイナス26.9。で、今年度6月末日時点では、マイナス33.1ということで、去年のDI値の水準よりやや下がってきています。5月から6月の変化は0.4。若干良くなっておりますけれども、1年前の水準と比べると、マイナス33.1ということでやや悪化しています。それから、収益状況をみますと、同じく昨年6月はマイナス32.8、これは、この6月はマイナス35.2とこれも昨年の6月と比べて下がっています。前月比では、5月、6月を比べますと、マイナス1.1ということで収益はさらに悪くなっているということでございます。3ページ目をみていただきますと、この1年のDI値の推移をグラフ化したものでございます。一番上は景況でございます。景況の全体をみていただきますと、あるいは製造業、非製造業とありますが、全体的に昨年の6月から徐々に下がっております。若干ここ数ヶ月は足踏み状態ということになっておりますが、景気の回復ということには遠く及ばないという状況にあるということ。それから、表4の方の収益状況をみますと、これも同じような傾向でございますけれども、去年の6月よりは下がり、足踏み、閉塞状況というような状況で、良くなって、悪くなって、小刻みな足踏み状態が続きながら、この1年推移しているということでございます。こういうことで、中小企業としては、景気は新しいデータをみてもなかなか回復というような傾向はみられない。厳しい状況が続いているということでございます。それから資料はお配りしてございませんが、もう一つ言わせていただきますと、私共の方で協力をいたしまして、経済産業省と資源エネルギー庁、中小企業庁といったところでこの17年の5月に原油価格上昇の我が国産業への影響に関する追加調査というのをやりまして、原油価格上昇の中小企業への影響というデータが公表されております。それをみますと、これは調査対象ですね、製造業、建設業、運輸・サービス業に属する中央会傘下の団体に加盟する企業、404社ということでございます。4月中旬ということでございますけれども、収益に与える原油、石油製品の価格上昇の収益に与える影響というところをみますと、収益が大きく圧迫しているという回答が19.3%、収益をやや圧迫しているというのが34.4%、収益への影響が小さいというのが28.5%、ほとんど影響がないというのが7.4%でございまして、収益を大きく圧迫しているという19.3%と、収益をやや圧迫しているという34.4%を足しますと、約半数の中小企業が原油・石油製品価格上昇によって、収益を圧迫されているということでございます。それからもう一つ、収益を大きく圧迫、またはですね、今の収益をやや圧迫されているという企業について、原油石油製品に係るコスト上昇分の店頭価格への転嫁状況をみますと、転嫁0、全く転嫁できていないというのは61.8%でございまして、転嫁1〜20%というのが19.8%ございます。従いまして、約8割の企業で転嫁が困難という状況の結果が出ております。景況がここ1年やや下がりつつあると、若干最近は低下傾向は少し収まっておりますけれども、横ばいで推移しているということでございますけれども、この新たに収益の圧迫要因として、こういった原油価格の上昇ということで、これがこの前の使用者側の意見にもありましたけれども、収益の圧迫要因になっているということでございます。こういったことで、昨年と比べまして、中小企業の景況、あるいは収益といった経営の状況というのは大きく変化することなく、むしろ昨年度よりは若干悪目に出ているということはあり得ると思います。そのようなことで、中小企業の経営の現状というものを配慮していただきたいということでございます。以上です。

○今野委員長
 他にございますでしょうか。池田委員どうぞ。

○池田委員
 後ほど、ちょっと資料を配らせてもらいます。はじめに、景気の現状につきまして2点申し上げたいと思います。使用者側のこれまでの発言と重複しますが、まず、1点目ですけれども、現在の景気状況ですけれども、全体として好転しているというのが多くなってきていますけれども、これまでの踊り場から脱却する気配をみせているという見方も一部に出ております。しかしながら、地域の経済、中小企業は未だ厳しい状況から脱していないというのが商工会議所の見方でありますけれども、大企業との格差も依然解消されておりません。日銀の短観の6月調査結果のうち業況判断DI、資本金10億以上の大企業は、足下が16、先行き16という予想でありますけれども、資本金2,000万以上1億円未満の中小企業が、足下がマイナス7、先行きもマイナス7ということで、数字自体は改善しているものの、いまだにマイナスのままです。また先行きにつきましても日銀短観6月調査結果は大企業と中小企業の変化幅は、ゼロと横ばい。中小企業はマイナス1と、わずかの悪化となっております。不透明感が続いていると思われます。中小企業が置かれている厳しい状況、今も説明がありました先行き不透明感は商工会議所内で調べております景気観測調査でも6月の調査結果で、商工会議所といたしましては全産業状況のDIが前年水準マイナス30.9ということでマイナス幅がマイナス2.3ポイントと拡大いたしまして、33.2と2ヶ月ぶりにマイナス幅が拡大しました。DIの値は昨年夏から悪化傾向が続いておりまして、今年1月にいったん改善したものの、その後改善と悪化を繰り返しているという一進一退の状況であります。中小企業を取り巻く景気の状況は未だに踊り場にいると認識しています。また、今後の先行き見通しも、昨年同時期の先行き見通しと比較して悲観的な見方が大きくなっております。長引く地域経済の不況、国内外企業との熾烈な競争、最近の原油価格高騰に伴う仕入コストの上昇、地域の中小零細企業を取り巻く状況は依然厳しい状況にある。そのような大変厳しい中でも、地域経済並びに雇用維持のため中小零細企業は雇用第一と考え、やむを得ず賃金の引下げ据置きを行っているわけでございます。これ以上の引上げは雇用の維持を圧迫し、地域経済の回復を阻害するものと私共は考えております。次に2点目でありますけれども、この間の賃金改定状況調査でありますが、皆さんもすでに認識していると思いますが、産業計の賃金上昇率は0.4%。昨年よりわずかに良くなっております。しかし、注視すべきことは、ランク別にみた場合Aランクは0.6%だし、最も低いDランクは0.0%。地域間でかなりの格差があることが浮き彫りになっていると思います。また2回目の委員会で杉山委員が申し上げましたが、全体の平均である0.4%を上回っているのはAランクのみでありまして、他のランクはすべて平均を下回っていることも重ねて申し上げたいと思います。調査結果を業種間で平均いたしますと医療福祉が1.3%、サービス業その他は0.6%で全体の平均である0.4%を上回っておりますが、その他の産業はいずれも平均を下回っております。賃金の改定状況調査でも業種間に格差がみられることに着目すべきだと私共は考えております。それから資料をお願いします。ただ今お配りしたのは、厚生労働省からいただきました調査表をもとに作ってもらった資料です。平成8年から平成16年の間の引上げ事業所の割合は、平成8年は引き上げたところが58.7%、それ以後59.2、52.1と推移いたしまして13年、14年を契機に引上げ事業所割合が32.6、28.8、31.2ということで40%を割るような状態になっております。同時に凍結事業所というのが、平成8年が28.3、一番低い状態の中から14年から55.5、59.8、58.0と今年度が54.2%と依然として50%以上が凍結をしているということが賃金改定の調査に出ております。そしてその次のページには、目安委員会で引上げ率がどのくらいだったかということでありますけれども、同じように13年を契機に14、15、16と50%以上凍結があった場合はすべてゼロということで基本的に目安をいただいている訳でございます。現在まで50%以上の時に引き上げた過去の例はない。今年でも4ランクの中でAランクのみが48.5%ということで、50%を切っておりますが、ランク別でもB、C、Dは53.0、57.0、56.1とすべて凍結事業所の割合が多いのでありまして、このデータからみてもAランクは48.5でありますが、実施したところは40%のみでありまして、それでも凍結しているところより下回っている状況であります。グラフにもはっきりと凍結事業所と、引上げの事業所が出ていますが、これらの状況が今までも数値からみましても非常にまだ中小企業、地域ごとに格差があるということで、凍結しているところが非常に多いのでございまして、単に上げたところのパーセンテージだけで第4表の数字を参考とするということは13年度までの引上げ事業所の割合が多かった状況と今とは状況が変わっているのではないかと我々は考えておりまして、このようなことをよくお考えいただいて、やはり凍結事業所が50%を上回っている時に目安を引き上げるということが全国の地域の業種が苦労しているところに関して、方向性としては正しくないと私は思っておりまして、まだまだこの時期としてはそういう時期ではないのではないかということが先程のデータの中からは出ているということだけ申し上げたい。

○今野委員長
 分かりました。他にございますか。今追加の資料でご説明いただきましたが、使用者側としては中小企業や地域については厳しい状況にあるので、これは最後に私の確認なのですが、前回、杉山委員がおっしゃられたことですが、目安についてはDランクの賃金上昇率や製造業の賃金上昇率などをみて、ゼロを今年度の目安とすべきであるという結論として主張されたということは変わらないということで考えてよろしいですいか。それでは今度は労働者側から何かございましたらお願いします。追加主張はございませんか。

○加藤委員
 前回ですべて代表して見解を述べておりまして、その時にも資料を若干配布しております。資料の内容までは前回説明できませんでしたけれども。少し、考え方が変わるということではないが、追加的というか、少し補足的ということとして申し上げたいと思います。いくつかありまして、1つは雇用環境でありますが、総務省の5月の完全失業率が出ておりましたけれども、地方ブロック別にみるとまだまだ格差が大きいのではないか、ばらつきが大きいのではないかというご指摘がありましたが、地域間の格差が大きいということは事実ですが、前年同期と比べてすべての地方ブロックにおいて雇用環境が良くなってきている、完全失業率も低下してきているということがいえるのではないかと思います。北海道などにおいて完全失業率の低下幅がブロックの中でも最も大きく示されている。また、日銀短観のお話もありましたが、景況感については全体としてプラス18で、前回3月調査よりも4ポイント改善しています。企業規模間、業種間で差はあるけれども非製造業や中小企業でも指数が上向いてきているというのが私共の見方でありまして、全体としてばらつきはあるものの改善傾向をみせているというトレンドを重視すべきだと思っております。もう一つは賃金の関係でありますが、私共は特に賃金の水準、絶対額を重視しております。と申し上げますのは、現在の最低賃金の水準が適正な水準なのかどうかという議論が最も大切なのではないかなと思っております。前回も資料をいくつかお示ししておりますけれども、例えば高卒初任給をすべて時間あたり賃金に換算してみますと、921円。それから賃金構造基本統計調査の平均時間額は1,800円台でありますけれども、特性値でみて、例えば第一・十分位でみると、私共の計算では992円ということで、1,000円近い数字になっている。そうした実態が果たして地域別最賃の全国加重平均665円というのが果たして適正な水準なのかということについては、疑問を持っておりまして、この際結論的に労側の側で申し上げたとおり水準自体を改善していくという足取りを付けていくということが今求められているのではないかと思っております。今のは絶対額でありますが、賃金水準について賃金の上昇、賃金の変化率などをみても、いくつか指摘できるのではないかと思いますが、例えば賃金構造基本統計調査のパート、これは前年の数字ではありますが2003年から2004年にかけて11円アップしている。893円から904円へ11円アップ。それから、あまり使われないデータだとは思いますが、学生援護会調べのアルバイトの賃金でありますが、これは地方ブロックごとに集計がされていますが、すべてのブロックでかなり上昇しています。関東は前年比24円アップ。1,009円。もっとも水準の低い北海道でも、773円で前年比6円アップという状況であります。また毎月労働統計調査、5月も出ておりましたけれども、所定内給与レベルで0.5%アップということでありますので、こうした賃金の実勢値なり変化の動向なども踏まえた適切な目安審議ということが望まれるのではないかと思っております。また、もう一点だけ付け加えさせていただきますのは、影響率のお話がございましたけれども、1.53%ですか、事実上目安は引上げ額の目安を昨年示すことができなかったのでありますが、結果として、ほとんどの県でDランクも含めて1円ないし2円の引上げを行った。事実上1円ないし2円の引上げが行われたのが昨年の地域別最賃だと考えれば良いのかなと思っているのでありますが、1円2円引き上げた中で、こういう認識が合うのかということでありますが、未満率と影響率の差が事実上1円2円の引上げが与えた実質的な影響ということになるのだろうと思うのですが、わずか0.08ですか。1円2円上げてもほとんど影響がないようなのが現行の地域別最低賃金の水準ではないかと思っておりまして、そうした点からもやはりしっかりとした改善が必要なのではないかと思います。

○今野委員長
 他にございますか。前回は須賀委員から最後のまとめをしていただいたと思うのですが、「明確な水準の改善に結びつく目安」を提起すべきだと最後整理されてございますけれども、それでよろしいですか。

○須賀委員
 今、加藤の方からいくつか主張させていただきましたが、私共は前回も申し上げましたが、また今、加藤の方からも申し述べましたように、地域別最低賃金の水準そのものに問題意識を持っていまして、ここ数年の目安を示さなかったことに対して一部問題意識は持っているのですが、それ以前に水準そのものに問題意識を持っております。したがって、その水準を確実にこれからは引き上げていかなければならないというふうに、これは従来から一貫して主張していることですが、それに答え得るような結果が出る、そうした目安を示して、確実な水準の引上げを図っていく足掛かりにしたいと思っております。これでまず一つです。全体として。もう一つの点はランクごとにいつものことなんですけど、こんなに上がり幅に、ゼロに近い状態の中で上がり幅に差が出る。わずか上が0.6、平均で0.4、一番下がゼロという、数字でみたら大した数字じゃないんですけど、コンマ以下の数字でみるとものすごく大きいような響きを受けますけど、これも先ほど加藤の方から申し上げましたが、1円2円がそんなに大きな影響を未満率あるいは影響率にも与えないような、そういう状況の中で、意義のある水準改定ということになってきますとかなり大きな水準改定が必要ではないかと考えております。少なからず昨年の先ほど加藤が紹介したパートの水準の引上げ状況だとか、あるいは毎勤における上がり幅、こういったものも参考の指標となるのではないかと考えておりまして、こういうことを念頭に置いた対応が必要になるのではないかと考えております。もう一つの点は、ランクでこれだけばらついてきますと、Dランクがゼロだからという、この主張に対しては私共といたしましては受け入れる訳にはいきませんし、だったらじゃあAランクは0.6以上上げるのかということも一方では言えるのだと思います。全体に影響のある目安をどうやって示すのかということがこの小委員会の基本だと考えておりますので、そういった意味では経営側の主張には異論を唱えたいと考えております。以上3つであります。

○今野委員長
 分かりました。それでは労使からご意見を伺いましたので、質疑あるいは意見交換をしていただきたいと思います。ご自由にどうぞ。今のところ、使側としてはゼロ、労側としてはいっぱいということで。

○樋口委員
 初めてなので表の見方を教えていただきたいのですが、先ほど使用者側から賃金改定状況の事業所割合ですが、事務局にお尋ねしたいのですが、ここでの引上げ状況というのは、これは一般労働者の引上げ状況と考えてよろしいのでしょうか。先ほど労働者側はパートの方がだいぶ上がっているような話をしていた訳ですし、あるいはその後ろの方はパートも一般労働者も含んだ数字に2枚目はなっているわけですね。どうも何となく1枚目と2枚目の間に乖離があるように感じまして、この点はどう考えればよろしいのでしょうか。もしついでの質問で、今まで例えばこの間いただいた第4表ですと、男女計、男女別に出ているわけですが、例えば一般労働者とパート労働者についての賃金改定の状況についてA、B、C、Dランクごとに数字がたぶん出せるものだと思うんですね。この間から集計方法変えたわけですね。ラスパイレスに変えている以上はそれぞれ計算してベースの数字があって、それにウェイトを乗せてやっていると思うんですね。そういう数字があれば教えていただきたい。

○今野委員長
 私もちょっと意見としては、なぜ男女別が残っているのかという気持ちはあるんですけど。今回は計算方法を変えたわけだから、男女別の集計というのは過去、慣行としては分かりますが、あまり意味がないと私は思います。それよりは一般・パートがあった方がいいのではないか。

○前田賃金時間課長
 第4表から申し上げると、以前は男女構成比の影響を除去した方式ということをやっていたという経過があって、それを影響をなくしたわけですが、その後も男女別の集計で賃金改定状況調査は集計をしていたわけで、それについて今回一般とパートの影響を除去する方式に変えたということからすると、男女という形で出すのが適切かという議論はあろうかと思います。今までの集計がそうだったという、今年の第2回の目安小委員会はそういう形で今までどおりの集計表を出させていただいたということになります。一般とパートの数字は、集計表は資料を配ります。

○今野委員長
 そういうのはここで決めるんですかね。今回はこうなりましたが、来年以降は、男女は入れず、こっちの方がずっと実質の意味があるんじゃないかと。そういうのを変えるというのはどうすれば。

○前田賃金時間課長
 今回の小委員会で来年以降そういう集計にするということで皆さんで決めていただければ、そういう形で集計させていただきますが。

○今野委員長 ということはここで私としては労使に合意をいただければ、来 年以降そうしていただけるというのでよいのか。

○前田賃金時間課長
 はい。

○今野委員長
 どうでしょうか。論理的にいうとこれじゃなければ意味がないのではないかと思うのですが。資料としては。男女別に固執される理由はございますか。

○労働者側
 一切ありません。

○今野委員長
 使用者側はいかがですか。

○杉山委員
 5年ごとの見直しがありまして、こういう表のあり方も含めて論議しているわけですね。ですから去年論議をした結果依然として生き残ったので、去年のそのメンバーがミスをしたのか、それとも意味があってやったのか、それは去年のことなんですね。ですから5年ごとに見直して、それで5年間は原則として縛られる訳ですから、その年ごとにこういう表のあり方や何かを見直しは原則としてしないというのがルールだと。そうしないと5年ごとの見直しに意味がない。毎年毎年変えればいいのだから。

○川本委員
 まさしく今杉山委員から言ったとおりでありまして、私共一応個人名で出ていますが、それぞれ背景を持っております。これは労働者側の委員も同じでありまして、そういう中で資料のあり方ひとつも、意見を仰ぎながら私共ご意見を申し上げているのであって、したがって、この5年間ということで昨年いろんな話の中でどういったデータを作るかというご意見も頂き、バックに聞きながら、今回はやり方も変えさせていただきましたし。目安審議をする最中の中で資料のあり方についても言われましても、これは対応に苦しみます。

○中窪委員
 去年の目安の後に全員協議会の中で色々議論してきたと思います。そのときにパートの比率をどうするかということを決めたわけで、その中で、私が自分で発言したのを覚えていますから、男女で出すのは意味がないからパートと正社員でやるべきだと申しましたし、あるいは両方あって見比べていいと思ったんですけど。あとその点についてはどういった確認をしたかというと資料の出し方の問題については覚えていないものですから。少なくともこの小委員会で議論する問題ではなくて、全員協議会の方で、来年度以降どのような資料の出し方をするか議論するべきだと思います。

○今野委員長
 それでは、今日は特別な要請があったので出てきたということで、じゃあこれは議事録に残しておいていただいて、全体の会議の宿題ということで。それでは、よろしいですか。

○樋口委員
 その前に確認を。先ほどの第4表の提出していただいた事業所割合は一般労働者の賃金改定状況だと理解してよろしいでしょうか。

○前田賃金時間課長
 第1表の賃金改定実施状況については常用労働者ということで聞いていまして、一般・パートは必ずしもどちらかということまでは明確にはわからない。第4表の一般・パートの別に集計したものについてでございますが、産業計では一般0.3、パート0.6ということになっております。一般についてランク別ではAが0.4、Bが0.2、Cが0.3、Dが0.1、パートがAが1.6、Bが0.3、Cが0.1、Dがマイナス0.5というような賃金上昇率です。

○杉山委員
 私共の認識としては、16と17年の間に変化があった。要は17年の数字というのはパートを含めた新しい数字になっておると。16年までの数字はパートを含めないものになっているだろうと私は考えていた。ただ今の御説明でいくと、第1表と第4表は違っておって、第4表の方は私の言ったとおりであるけれども、第1表の方は、依然としてパートは含んでいるかどうかよくわからないということだったので、そんなことを感想として言おうかと思っただけで。

○今野委員長
 ちょっとあれですね、ないということではなくて、誤差が入りやすいという可能性はある。

○前田賃金時間課長
 事業場の大部分なり全部の労働者の賃金改定を行ったというのを改定実施と言っているので、事業場の方で常用労働者について大部分上げたかどうかのアンケート的な調査が第1表。第4表はそれぞれ各労働者について個々人ごとに昨年の賃金と今年の賃金を書いていただいて、一般・パートの区別も含めて書いていただいているので、それでかなり厳密に一般・パートを含めて、さらにはそれぞれごと、あるいはラスパイレスということで集計できる。いずれにせよ第1表は事業場が全体で答えているのでそこのところは全体としての答となっている。常用労働者全体について大部分上げたかどうかという事業場の判断。

○川本委員
 パートも入っているかもしれないし、ということですね。

○前田賃金時間課長
 常用労働者ということであるので、事業場が答える際にどこまで入れて考えて答えているかということ。

○川本委員
 たとえば、1ヶ月くらいアルバイトで来てくれ、というので来た人は入っていないだろうが、1年契約だとかまたは6ヶ月だけど基本的には更新しますというような人は多分常用として捉えて入っているだろうということ。

○樋口委員
 ただ質問項目をみると「あなたの企業では賃上げ、改定しましたかどうか」ということを聞いているんですよね。だから個別にパートはしましたかとかは聞いていないのですね。

○松井審議官
 そういう聞き方はしていないので。そういう分析手法はとっていませんということで、申し訳ないけど厳密な比較はできない。

○今野委員長
 それは大部分でしょ。

○前田賃金時間課長
 労働者の大部分。

○池田委員
 一つ質問したいのはこの4表の0.4%というのは35.9%の上げたところのでは。

○前田賃金時間課長
 そうではなくて全体です。引上げしていないところや凍結事業所も含めて。そこの全部の平均です。

○池田委員
 平成13年以前はデータがなかったんですね。

○前田賃金時間課長
 引下げという回答、選択肢がなかったのでデータがないんですけど。

○池田委員
 少なくとも13年以前というのは44%上げた人たちは、これだけありましたよと。ゼロなんかは全然影響しないわけだから。

○前田賃金時間課長
 その第4表の上昇率は引上げした事業所だけではなくて、すべての事業場のトータルの賃金上昇率。引上げたところだけの平均ではありません。凍結とか基礎上げしたところの平均です。

○川本委員
 一ついいですか質問。そうすると例えば、先ほど紙を配っていただきましたけど、一番右端に例えばサービス業とあると、サービス業は前回私がご質問した時に何人くらいいるんですかと言ったら、4500人くらいというお答えだったと思うのですが、その中で例えば一般が何人くらいでパートが何人なんていうのはお分かりになるんでしょうか。

○今野委員長
 じゃあ、それはまた調べておいてもらって。

○川本委員
 何が言いたかったかといいますと、大企業をイメージすると、どうしてもパートさんは少ないというイメージがありますけど、こういう規模の小さい所になると案外かなりの比率を業種によっては占めている可能性があるので。一概に第4表にはパートさんがほとんど入っていないのではないかと思ってしまうと、それはまた違うのかなと思ったものですからちょっとお聞きしたんです。別にすぐ数字が欲しいとかこだわりませんので。ちょっとみる角度を申し上げたのです。

○今野委員長
 すぐ分からなければ後でも結構ですよ。

○中野委員
 私は第3表をみて疑問に思っているところがあるんですが、第3表は引上げの特性値なんですけど、例えば第3・四分位のところを見ますと、産業計でも3%。それから飲食店、宿泊業のBランクは5.1%、Cランクは4.9%というように、今の状況から考えますと、非常に高い数字が出ておりまして、私の今の経験では、だいたい凍結をしたりしますと、2年分翌年にあげたりですね、小さいところですとそういう所もあるわけですね。そうしますと、第1表の見方を素直に賃金の引上げを実施しなかったということでこの数字をポンとみるのはいかがなものかと。2年分やっぱりやっていれば、その分カウントが下がるのではないかと思ったりするわけです。例えばこういうことです。去年はやってなかったけれども今年は去年の分2回分やったところが引上げの所にあるというふうなことが起こった時に、今年はやらなかったけれども来年は2年分やるというようなところが出てくる場合があるわけですから、そうしますと、賃金改定を実施しない事業所の比率もこのまますぐには読めないなと思いまして、そういう観点からもこの数字はみなければならないのかなということだけ申し上げたいと思います。

○今野委員長
 まあ言ってみれば2年に一回やっているというのが恒常化した場合は数字の意味がちょっと違ってきますよね。

○中野委員
 恒常的にしなくてもそういうことは起こり得るわけです。

○前田賃金時間課長
 先ほどの数字ですが、全体でいくと、一般が24、392人、パート7,090人ということです。産業別の数字が手元にはないのですが、ランク別にいくと、Aランクは一般4,647人、パート1,484人、Bランクは一般5,199人、パート1,870人、Cランクは一般8,216人、パート2,143人、Dランクは一般5,333人、パート1,587人ということであります。

○今野委員長
 他にございますでしょうか。労使から追加的な主張なり、ご意見いただきまして、私、先ほど申しましたように、使用者側の場合はゼロという目安の考えである。労働者側の方はかなりの引上げということで、基本的に主張にかなり隔たりがございます。従いまして今後は公労、公使、個別にご意見を伺って詰めていきたいという考えであります。という進め方でいきたいと思うのですがよろしいでしょうか。それでは最初に公労の会議を行いたいと思います。それでは、ここはいったん解散ということにさせていただきます。 (第2回全体会議)

○今野委員長
 それでは第2回全体会議を開催いたします。これから公益委員見解を提示いたします。では事務局より読み上げて下さい。

○山口副主任賃金指導官
 平成17年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解。
 1、平成17年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。Aランク3円、Bランク3円、Cランク3円、Dランク2円。
 2(1)、目安小委員会は本年の目安の審議に当たっては、平成16年12月15日に中央最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基に審議してきたところである。目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては最低賃金の審議に際し、上記資料を活用されることを希望する。
 (2)、目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が本年度の地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
 以上でございます。

○今野委員長
 公益委員としては、これを審議会総会に示したいと思います。よろしいでしょうか。

○杉山委員
 やむを得ません。

○今野委員長
 それでは引き続き、本小委員会の報告を取りまとめたいと思いますので、事務局から案の朗読をしてください。

○山口副主任賃金指導官
 中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。平成17年7月21日。
 1、 はじめに。平成17年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
 2、労働者側見解。労働者側委員は、景気は着実に回復を続け、企業業績も全体として改善が進んでおり、収益力はこの10年間でもっとも高いレベルにある一方、労働者生活は置き去りにされ、低所得層の生活苦が深刻化しており、そこに目をむけた政策対応が必要であると主張した。
 2005年5月の完全失業率は4.4%、有効求人倍率は0.94倍で人員不足気味の職場も増え、足下では時間当たり賃金の上昇がみられるが、雇用形態の多様化が低所得・不安定雇用の増加を伴って進んでおり、雇用者に占める非典型労働者の比率は3割を上回っていると指摘し、持続可能な安心して暮らせる社会であるために、社会的な職業能力開発や就職支援などの雇用政策と同時に、「生活できる賃金」をナショナルミニマムとして担保することが求められていると主張した。
 加えて、現在の最低賃金時間額の全国加重平均は665円であり、月額に換算しても連合が2003年にマーケットバスケット方式によって試算した若年単身労働者の必要最低生活費の月額146,000円を大きく下回っており、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の一般労働者の所定内賃金の36.6%の水準にすぎないことなどから、生計費や実勢賃金と比べて低すぎるとともに、諸外国の最低賃金水準と比べても見劣りすることを主張した。また、この数年間の影響率は、極めて低く、最低賃金の存在感が希薄になっており、せめて単身でも最低限の生活ができる水準を実現すべく、明確な水準改善を図ってこそ、最低賃金の存在感を社会にアピールしていくことができると主張した。
 以上の点を踏まえれば、今年の目安決定に当たっては、過去3年間と明らかに異なる対応が必要であり、最低生計費を満たすに足る最低賃金水準をめざして、各種賃金指標の現行水準や環境変化の動向を踏まえつつ、明確な水準の改善に結びつく目安を提示すべきであると最後まで強く主張した。
 3、使用者側見解。使用者側委員は、日本の景気は「緩やかに回復し、踊り場から脱却しつつある」とされているが、地域間、業種間、大企業と中小・零細企業との間には、景況感に大きな温度差があると主張した。各種調査報告において、地域の景況や雇用情勢の改善の度合いの格差が指摘されており、有効求人倍率や完全失業率をみても地域間の格差が明確になっているとし、また、資金繰り判断は中小企業、特に非製造業において厳しく、業況判断DIにおいても中小企業ではマイナス幅が前期比で再び拡大に転じていると指摘した。
 日本経済全体についても、アメリカや中国の経済状況、為替や株の動向、原油をはじめとする原材料費の高騰など、先行きの不透明感が増す中、手放しで楽観できず、大企業や大都市など、限られた部分の情勢は良くなっているものの、バラツキが大きくなっていることを強く認識する必要があると主張した。
 加えて、賃金改定状況調査の第4表の賃金上昇率をみても、Aランクの0.6%に対して、Dランクは0.0%と差がついているだけでなく、平均の0.4%を上回っているのはAランクのみであること、製造業の賃金上昇率が0.0%であることも重く受け止めるべきであると主張した。また同調査の第1表では、賃金改定を実施しない事業所の割合が54.2%と4年連続して50%を超えていると指摘した。さらに賃金交渉結果については、妥結額、アップ率ともほぼ横ばいで推移するとともに、大手企業では初任給のアップ率は2003年以降、ほぼゼロで推移していると指摘した。
 以上の点を踏まえれば、景気は全体としては回復してきてはいるものの、地域間や企業規模間のバラツキが大きく、特に最低賃金の影響を大きく受ける中小・零細企業は依然として先行きが不透明・不安定かつ厳しい状況にあることから、中小・零細企業の存続と従業員の雇用の維持を最優先に考えるとともに、最低賃金という性格にかんがみると、賃金改定状況調査の第4表で最も数値の低かったDランク及び製造業の賃金上昇率である「ゼロ」を今年度の目安とすべきであると最後まで強く主張した。
 4、意見の不一致。本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
 5、公益委員見解及びこれに対する労使の意見。公益委員としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、賃金改定状況調査結果を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え方を基本としつつ、上記の労使の小規模企業の経営実態等の配慮及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表われた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまとめ、本小委員会としては、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。
 また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。
 なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容となっているとし、不満の意を表明した。(記以下 略)

○今野委員長
 この案を報告としてよろしいでしょうか。それでは、26日の総会に私から報告することとしたいと思います。また、目安審議に用いた資料については事務局より地方最低賃金審議会において活用できるよう送付していただいているとは思いますが、それは大丈夫ですか。

○山口副主任賃金指導官
 この小委員会で使用した資料は、すべて地方局に送付しております。

○今野委員長
 分かりました。他に何かございますか。

○須賀委員
 去年も結構遅くまでかかりましたし、今年もあまり変わらないくらいの時間を要しました。特に労働側の主張に対しまして相当な歩み寄りをみせていただいた使用者側の皆様方に感謝を申し上げたいと思います。また、それぞれ不満のある中で、大いに汗をかいていただきました公益の皆様にもこの場をお借りして深く感謝を申し上げたいと思います。本日の小委員会の内容については逐次私共も地方に報告したいと考えておりますし、また、地方での審議に際しましては、この目安として公益側から出される見解の重みを受け止めながら真摯な議論ができるように努めて参りたいと思っております。長い時間をかけましたが、この時間のかかったことを三者三様それぞれに重く受け止めながら今後は対応してまいりたいと考えております。なお、それぞれの話合いの段階で指摘のありました地域ごとの違いあるいは目安の示し方におけるルール、まあ運用と言ったらいいのでしょうか、そうしたことにつきましてもこれから有意義な議論ができるように労働者側といたしましても努力して参りたいということも申し添えて労働者側の見解と代えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

○今野委員長
 使用者側から何かありますか。

○杉山委員
 正直に申し上げまして、去年、一昨年、一昨昨年と引き続く景気回復の低迷、多少上向いているとはいえ、まだ足下非常におぼつかない中で、今年の最低賃金を論議いたしまして、結果として例年にない高額な額で決まったということにつきましては、使用者側として必ずしも納得できるものではない訳であります。特にやはり、はっきり地域間において大きな差がある訳でありまして、それらを踏まえた地域での交渉、これは当然あってしかるべしと我々も考えておりますので、今労働者側からもお話がありましたように、我々としてもこの会議で論議した状況は逐一伝えまして、地方で適切なる最低賃金の決定ができますように努力していきたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。ただ、このように長時間をかけてまとめられました公益委員、事務局、労働者側の皆様方のご努力に対しましては深甚なる敬意を表したいと思います。ありがとうございました。

○今野委員長
 それでは以上をもちまして本当に長い、小委員会を終了したいと思います。議事録の署名は、中野委員と原川委員にお願いします。それではこれで終わります。


(照会先)
   厚生労働省労働基準局賃金時間課最低賃金係(内線5532)
【平成17年10月1日〜】
労働基準局勤労者生活部勤労者生活課最低賃金係(内線5532)



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