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労働法規の遵守の影響
夜間の当直の後も通常どおり勤務しなければならないなど、医師の重労働の実態については多くの指摘があった。このような医師の献身的労働によって現場の医療が支えられていたことは事実であるが、医師も労働者である以上、このような労働形態は改められなければならない。一方で、労働法規を遵守することが医療提供の在り方にどのような影響を及ぼすのか、検証していく必要がある。
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女性医師の就業のマルチトラック化
臨床医に占める女性医師の割合は約15%であるが、国家試験合格者では女性の占める割合は3分の1となっており、今後女性医師の割合は増加していくと予想される。女性医師は出産や育児により労働時間が短くなる傾向があると考えられ、女性医師の割合の増加による、医師の需給への影響を検証するとともに、パートタイム勤務など、女性医師がライフステージに応じて働くことのできる柔軟な勤務形態の促進を図る必要がある。
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医療関連職種等との連携
医師とその他の医療関連職種等の者が、それぞれの専門性を発揮しつつ、協力してチーム医療を行うことにより、医師の業務の効率化や患者が受ける医療の質の向上につながると考えられる。
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医師養成の在り方
国民が「医師が不足している」と感じる原因の一つに、国民の初期段階からの専門医受診志向が進み、医師も専門分野以外の診療を厭い、一人の患者に多数の専門分野の医師が診療にあたる状態になっていることがあるのではないかと考えられる。一方、初期段階から、細分化した専門分野の医師が患者の医療にあたるのは、決して効率的とはいえないのみならず、高齢化により複数の疾患を抱える者が増加している昨今、適切な診断・治療が確保しにくくなる恐れもある。医療資源の有効活用及び、社会のニーズに適した医療の確保のためにも、幅広くプライマリーケアのできる医師を養成していくことが必要である。これに関し、全体的にプライマリーケアができるということそれ自体も専門性であり、そういう専門性を国として認定していくことも必要ではないかとの意見があった。
また、必修化された医師臨床研修修了後に一定の専門性を持ちつつ、さらに臨床能力を向上させるため、いわゆる後期臨床研修の在り方を検討する必要がある。その基本として、特定の診療領域において、関連領域を含めた経験症例数、手技などの到達目標や期間を設定した研修プログラムを作成し、その情報を公開した上で、それに基づいた臨床研修を行う必要がある。
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国民の理解の促進
医療についての国民の理解と協力を促進することは、例えば救急でなければできるだけ夜間ではなく昼間に診療を受けるようになったり、初期段階ではまずプライマリーケアを行う医師の診療を受けるようになるなど、患者の受療行動の変化を促し、特定の診療分野の負担の軽減や医療資源の有効活用につながるのではないか。また、医療体制の整備とそのコストは表裏一体であることを国民に情報発信していく必要がある。
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医療連携体制の推進
医師不足が問題となっている地域や診療科において、医師の充足が即時に見込めないからには、既存の地域の医療資源を最大限活用した医療連携体制の一層の推進を図る必要がある。
なお、この課題の解決には、小児救急、救急医療、麻酔科、産科など特定の診療科・部門の集約化も必要であるとの意見があった。
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将来の医師需給
最終報告書に向けての将来の医師需給の推計は、この中間報告書で述べてきたような、医療の質と量の変化をはじめとした医師の需要側の変化、労働法規の遵守、女性医師の増加などの供給側の変化を十分考慮に入れたものとすべきである。また、総量としての医師の数だけではなく、診療科別、地域別に需給の推計を行うことにより、現在医療の場で起こっている変化やその対策が明らかになると考えられる。併せて、医師需給を取り巻く変化の定量的な分析や将来推計に必要なデータを得るための基盤整備を進めていく必要がある。 |