健康安全確保総合研究分野は、「医療技術評価総合」、「労働安全衛生総合」、「食品医薬品等リスク分析」、「地域健康危機管理」の各事業から構成されている(表5参照)。
表5.「健康安全確保総合研究分野」の概要
研究事業 | 研究領域 |
14)医療安全・医療技術評価総合 | |
15)労働安全衛生総合 | |
16)食品医薬品等リスク分析 | 17−1)食品の安心・安全確保推進 |
17−2)医薬品・医療機器等RS総合 | |
17−3)化学物質リスク | |
17)地域健康危機管理 |
14)医療安全・医療技術評価総合研究事業
事務事業名 | 医療安全・医療技術評価総合研究事業研究経費(仮称) |
担当部局・課主管課 | 医政局 総務課 |
関係課 | 指導課、医事課、歯科保健課、看護課、経済課、研究開発振興課、国立病院課 |
(1)基本理念、施策目標、実現目標
基本理念 | 健康安全の確保 |
施策目標 | 医療等の安全確保 |
実現目標 |
(2)事務事業の概要
事業内容(新規・一部新規)
ア.医療安全・医療技術評価総合研究費 【医療安全の推進に関する研究】
|
予算額(単位:百万円)
H14 | H15 | H16 | H17 | H18 |
1,895 | 1,668 | 1,718 | 1,432 | (未確定値) |
(1)これまでの研究事業の成果 良質な医療を合理的・効率的に提供する観点から、医療技術や医療システムを評価し、医療資源の適切な配分を行うなど、時代の要請に速やかに対応できるよう、既存医療システム等の評価研究を実施するとともに、医療の質と患者サービスの向上のために必要不可欠な医療安全体制の確保に関する研究、根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine:EBM)に関する研究を実施し、様々な有効な成果を得ている。
平成15年8月に取りまとめられた医療提供制度の改革のビジョンに示された将来像のイメージが実現されるよう、また、社会保障審議会医療部会で論点となっている点について研究課題を公募し採択する必要がある。 【全般的な課題】
本研究事業の成果は今後の制度設計に資する基礎資料の収集・分析(医療安全、救急・災害医療、EBM、院内感染)、良質な医療提供を推進する具体的なマニュアルや基準の作成、体制の構築(医療安全、医療機関の質の評価、看護技術、遠隔医療、EBM等)などを通じて、医療政策への反映が期待される。 (4)前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み 行政施策的な面が強く競争的資金として実施する必要性が不明であり、公募のあり方などを含めて検討が必要との指摘(総合科学技術会議)に対して、平成18年度においては、医療提供体制の改革ビジョン(平成15年8月)で示された医療提供体制の将来像のイメージが実現されるよう、また、社会保障審議会医療部会における「医療提供体制に関する意見中間まとめ(案)」において個別論点となっている研究課題を公募し、採択する方針であるため、一部研究課題を組み替えを行うことにより、より体系的に位置付けられた研究を推進することとしている。 |
2.評価結果
(1)必要性(行政的意義<厚生労働省として実施する意義、緊急性等>、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
本研究事業において実施される研究はいずれも、医療技術、医療システム等を評価し、良質な医療の合理的かつ効率的な提供に資することを目的した研究であり、厚生労働省として実施する意義が極めて大きい。 研究の成果は、今後の制度設計に資する基礎資料の収集・分析(医療安全、救急・災害医療、EBM)、良質な医療提供を推進する具体的なマニュアルや基準の作成(EBM、医療安全、遠隔医療、看護技術)などを通じて、着実に医療政策に反映されている。 また、最近、現代西洋医学に含まれない医療領域への関心が高まっており、これらは統合医療と総称され、漢方、鍼灸からアロマテラピーやいわゆる健康食品、その他の伝統療法を含んでいるか、科学的評価や社会的評価が未だ不十分であるため、国内外における統合医療の現状調査や、その内容、実施規模、経済学的評価等、及び現代西洋医学との併用により、効果の有効性や新たな効果について、統合医療の開発研究を行う必要がある。 |
これまで、限られた予算の中で、公募された研究課題から、必要性、緊急性の高い課題が採択されている。公募される研究課題は、医療政策の推進状況を踏まえて見直されており、本研究は効率的に実施されるものと考えられる。 |
1(5)事業の概要図に示されているとおり、いずれの研究においても研究課題の目標の達成度は高く、政策の形成・推進の観点からも有効性の高い研究が実施されていると考えられる。 例えば、これまでの研究により、医療事故やヒヤリ・ハット事例の実態把握が進んでおり、これらを分析することにより、予防対策等をふくめたマニュアルやガイドラインの作成を推進し、新たな課題となっている事故後の原因究明、ADR等に関する基礎資料を作成さけることにより、今後、個別領域の医療安全対策や事故後の対応方策が明確にされることによって、事故発生前の防止対策から発生後までの一貫した医療安全対策が構築され、医療の安全性の確保につながりひいては国民が安心して医療を受けるための体制整備が進むものと思われる。 また、標準的電子カルテの開発に関する研究事業の成果は、「標準的電子カルテ推進委員会」の最終報告にも反映され、医療安全確保という医療の根幹を支える機能の実装とそのための課題等が明確化されたところであり、こうした提言を臨床の場で具体化するために、情報技術の進展を踏まえた先進的研究の実施が必要不可欠である。 根拠に基づいた医療(EBM)の分野においては、23疾患の作成支援が終了、がん対策の推進等にも寄与する診療ガイドラインの適用と評価に関する研究事業を推進する見込みである。 |
1(5)事業の概要図に示されているとおり、いずれの研究においても、研究課題の目標の達成度は高く、研究課題の最終的な目標の達成に向けて、計画的かつ着実に実施されていると考えられる。 例えば、医療安全対策の確立に向けて、医療安全管理体制整備やヒヤリ・ハット事例等の報告・分析・情報提供等基礎的な研究は最終段階に入っており、次の段階として、ハイリスク領域等における具体的な医療安全対策に関する研究、医療事故発生後の対応に関する研究、医療の安全の評価を行うなど、医療安全対策を推進することが必要である。 また、医療情報技術等(電子カルテ)の開発については、グランドデザイン(特に電子カルテの普及)の実現に向け、政府のIT戦略本部、規制改革会議等から求められていることから、より一層の医療情報技術等の開発を推進することが必要である。 |
社会保障審議会医療部会における「医療提供体制に関する意見中間まとめ(案)」において個別の論点となっている検討課題について、公募し採択する等、積極的に取り組むことが必要である。 |
3.総合評価
医療技術評価総合研究事業の成果は、今後の制度設計に資する基礎資料の収集・分析(医療安全、救急医療)、良質な医療提供を推進する具体的なマニュアルや基準の作成(EBM、医療安全、医療情報技術、看護技術)などを通じて、着実に医療政策に反映されている。 良質な医療提供体制の整備については、既存の医療体制の評価研究や新たな課題(医療安全等)の解決を図る研究などを推進する医療技術評価総合研究事業の充実が不可欠である。 |
(5) 事業の概略図(概算要求時に求められます) |
15)労働安全衛生総合研究事業
1.労働安全衛生総合研究経費
事務事業名 | 労働安全衛生総合研究経費 |
担当部局・課主管課 | 労働基準局安全衛生部計画課 |
関係課 |
(1)基本理念、施策目標、実現目標
基本理念 | 健康安全の確保 |
施策目標 | 医療等の安全確保 |
実現目標 | 事業場における安全衛生水準の向上 |
(2)事務事業の概要
事業内容(新規・一部新規)
安全衛生総合研究事業は、職場における労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成等を図ることを目的として調査研究を実施しており、研究成果は事業場における安全衛生活動等に活用されている。
平成18年度においては、新たに以下の研究を実施することとしている。
|
予算額(単位:百万円)
H14 | H15 | H16 | H17 | H18 |
378 | 333 | 308 | 283 | (未確定値) |
(3)趣旨
労働災害で年間54万人が被災し、約1,600人が命を奪われている。また、近年、重大な災害が増加傾向にある。さらに、一昨年夏以降、我が国を代表する企業において災害が頻発し、昨年は、製造業において一度に多数の労働者が被災する災害が大幅に増加したところである。 製造業における災害の主な原因を見ると、機械によるはさまれ・巻き込まれ、高所からの墜落等の災害が多いが、その背景として、作業手順から逸脱した作業を行ったことによるもの、作業者間の連絡・調整を十分に行っていれば防止できたと考えられるものが見受けられる。こうした中、特に、製造業においては、熟練労働者から若手労働者への安全に係るノウハウの継承も懸念されており、作業者がミスを犯しても安全が確保される本質安全化技術の普及、ヒューマンエラー防止のための対策が必要となっている。 また、生活習慣病対策が国を挙げて取り組む課題となる中、一般健康診断の結果、脳・心臓疾患につながる所見をはじめとして何らかの所見を有する労働者の割合が増加しつづけるとともに、脳・心臓疾患に労災認定件数が増加しているほか、厳しい経営環境を背景として職場の健康づくりの取り組みに後退が見られており、職場における生活習慣病防止のための取り組みの充実・強化が喫緊の課題となっている。 これらの課題に対応するため、18年度においては、(1)製造業における労働災害防止に関する研究、(2)職場における生活習慣病の防止に関する研究を重点として労働安全衛生総合研究を推進することとする。 |
2.評価結果
(1)必要性
製造業における重大災害は大幅に増加しており、また、職場における健康づくりの取り組みは後退しているなど、この研究の必要性は高く、成果がもたらす社会的意義は大きい。 |
労働者の安全の確保、労働者の健康の保持増進を図ることは、国民が安全で健康な生活を送るために必須のものであり、この研究の社会的・経済的貢献度は高い。 |
労働災害はヒューマンエラーを間接的要因とするものが多く、本研究を基礎とする行政施策の展開は、これらを要因とする災害の減少に有効である。また、生活習慣病に関する研究は、生活習慣病と職場の健康づくり活動との間に科学的根拠をもたらすものであり、企業の健康づくり活動の促進に有効である。 |
成果の活用と効果について十分な検討がなされており、適正に実施することができると認められる。 |
特になし |
3.総合評価
安心して健康に暮らせる社会の実現は国民的課題である。労働安全衛生研究事業は、国民的課題の解決に向けて、職場に焦点をあて、労働者の安全と健康の確保を図るものであり、引き続き実施することが必要である。また、来年度実施予定の「製造業における労働災害の防止に関する研究」、「職場における生活習慣病の防止に関する研究」は、いずれもその必要性、社会的意義が高く、着実に実施することが必要である。 |
4.参考(概要図)
16)食品医薬品等リスク分析研究事業
16−1)食品の安心・安全確保推進研究経費
1.食品の安心・安全確保推進研究経費
事務事業名 | 食品医薬品等リスク分析研究経費(食品の安心・安全確保推進研究) |
担当部局・課主管課 | 食品安全部 企画情報課 |
関係課 | 食品安全部 基準審査課、新開発食品保健対策室、監視安全課 |
(1)基本理念、施策目標、実現目標
基本理念 | 健康安全の確保 |
施策目標 | 食の安全の確保 |
実現目標 | 食品による健康被害事例の低減 |
(2)事務事業の概要
事業内容(一部新規)
厚生労働省の食品安全行政は、国民が製造・加工・流通・消費の各段階での安全性を確保するための施策を実施していることから、今後はそれを念頭に置いた課題を重点的に推進させる。研究方針としては、「レギュラトリーサイエンスの推進」と「健康危機管理の強化」を基本とした目的志向型研究 (Mission-Oriented Research)とする。 具体的課題としては、BSEなど食品安全行政の中でも国民の関心が高い案件について重点的に研究を推進させるとともに、科学技術進展により開発された新しい食品の安全性や家畜等への抗生物質投与による薬剤耐性食中毒菌の問題、テロ対策など、新しい課題についても研究を実施させる。 |
予算額(単位:百万円)
H14 | H15 | H16 | H17 | H18 |
2,753 | 1,380 | 1,430 | 1,307 | (未確定値) |
(3)趣旨
これまで当該研究事業では、例えばBSEに関する研究において、非定型BSEの発見、BSEプリオンの迅速・高感度検出法および新規検出法の開発、肉への中枢神経組織汚染評価法の開発等の成果が得られ、これにより、我が国のBSE確認検査法の樹立(マニュアルの作成)、日本初のBSE迅速キットへの応用が行われるとともに、BSEの国際基準を策定する国際獣疫事務局(OIE)へ日本のBSE調査データ等の研究成果を提供し、国際基準の策定に寄与される等、国内外に広く研究成果が反映されている。 今後は、科学に基づいた食品安全を確保するため、新しい課題(例えば遺伝子組み換え食品の安全性など)や国際的に問題になっている課題(乳幼児用食品の安全性等)に対して、迅速に研究を行っていく必要がある。 |
2.評価結果
(1)必要性
昨今、食品安全を脅かす様々な問題(例:牛海綿状脳症(BSE)、食中毒 等)の発生や「食育基本法」の制定などにより、国民の「食」に対する関心が高く、安心・安全な社会の構築を実現するため必須の課題である。 このようなことから、厚生労働省において食品安全行政における「リクス管理」を実施し、国民に対し「安全」な食品を提供するためにも、それに必要な課題を設定し研究を推進させることは大変意義が高いと考えられる。 |
当研究事業においては、行政施策に反映させることが目的となっていることから、それに対しての研究が推進されている。例えば、昨年度の終了課題(7課題)においても、国の公定検査法の開発、マニュアルの作成等、施策に反映された件数は21件ある。また、若手研究者の育成や海外研究協力等など人材育成も含めた研究基盤の強化も併せて行われている。さらに、関係府省(農林水産省・内閣府食品安全委員会)と連絡会議を設置し、研究課題の重複をさけるなど、非常に効率性に高い研究事業であると考えられる。 |
当該事業については、行政施策に直結する研究課題が設定されていることもあり、その研究成果は食の安全のため非常に役立っている。さらには、これら研究結果から、知的財産の開発、国際貢献等の成果も挙げられており、非常に有効性が高いと考える。 |
政策に直結する研究課題を設定していることもあり、それぞれの個別研究課題において、研究が計画的に立案されている。 |
「食品の安全」については、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 (骨太方針2005)(平成17年6月21日閣議決定)」においても、「BSEへの対策、食品表示基準の見直し、輸入食品安全対策の強化等、科学に基づいた食の安全と消費者の信頼確保に努める。」とされているところであり、政府全体としても重点事項に上げられている。 また、内閣府「科学技術に関する特別調査」でも、国民からは、「安全な社会の実現(食の安全を含む)のため科学技術に政府が支援すべき」との意見が多いという結果が出ている。さらに総合科学技術会議「平成18年度資源配分方針」においても、重点4分野「ライフサイエンス」のなかで、「国民の暮らしの安全確保に向けて、・・・食品の安全・安心及び消費者の信頼の確保のための研究を推進」とされているところである。 |
3.総合評価
当該研究事業は、行政的意義や行政への貢献度が極めて高く、さらに研究事業自体においても、非常に有効性、計画性が高いことから、平成18年度については、引き続き研究を進めるとともに、これからの食品安全問題に迅速に対応できるような体制の拡充を図るべきであると考える。 |
4.参考(概要図)
16−2)医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究経費
1.医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究経費
事務事業名 | 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究経費 |
担当部局・課主管課 | 医薬食品局総務課 |
関係課 | 医薬食品局審査管理課、医療機器審査管理室、安全対策課、監視指導・麻薬対策課、血液対策課 |
(1)基本理念、施策目標、実現目標
基本理念 | 健康安全の確保 |
施策目標 | 医療等の安全確保 |
実現目標 | 医薬品・医療機器・薬物等の安全確保のためのレギュレーション整備 |
(2)事務事業の概要
事業内容(
国民の保健衛生の向上に資する医薬品・医療機器等については、使用する国民にとってできるだけ安全を確保しつつ、できるだけの有効性をもたらすことが求められており、それらは、国際的に調和された、科学的でかつ国民的動向を踏まえたレギュレーション(規制)により確保されている。 本事業では、臨床上有用な新薬や新医療機器を国民に迅速かつ安全に提供するために必要な安全性、有効性及び品質を確認するための評価手法や基準・ガイドラインの策定等や、麻薬・向精神薬・脱法ドラッグ等の対策に資する調査研究、及びワクチン・血液の安全な供給・開発、新薬開発等のための治験の円滑な実施等のために必要なレギュレーション(規制)の整備等を行う。これらにより、国民の健康安全を確保する。 |
予算額(単位:百万円)
H14 | H15 | H16 | H17 | H18 |
− | 1,410 | 1,455 | 1,278 | (未確定値) |
(3)趣旨
1)これまでの研究事業の成果(継続の場合) 本事業では、臨床上有用な新薬や新医療機器を国民に迅速かつ安全に提供するために必要な安全性、有効性及び品質を確認するための評価手法や基準・ガイドラインの策定等や、麻薬・向精神薬等の対策に資する調査研究や血液等の安全な供給等に関する研究を実施することにより、薬事に関する法改正を含む制度の整備に結びついており、臨床使用されている医薬品・医療機器の有効性を確認(評価)するための各種基準や、安全かつ適正に使用するための患者・国民等への情報提供手法などが整備されてきている。 2)残されている課題 科学技術の進展等により切れ味の鋭い医薬品・医療機器が増加するとともに、医療の高度化により患者の遺伝的背景の違い等により有効性・安全性等に個人差が示唆される医薬品等も開発されてきている。そのため、これら多様化した医薬品・医療機器等を評価するための手法・基準等の開発及び生体機能に特徴をもつ対象患者(高齢者・小児等)に焦点をあてた課題に取り組む必要がある。また、感染被害防止のための血液に関する研究、ウイルス変異に対応した改良型ワクチンを迅速に開発するための研究、及び社会問題化している脱法ドラッグの乱用防止のための有害性評価手法等に関する研究に取り組む。 3)今後この事業で見込まれる成果 医薬品・医療機器等の有効性、安全性及び品質に関する評価手法の確立等により、有用な新薬・新医療機器等の迅速な承認及び臨床使用につながる。また、ワクチン・血液へのアプローチについては国民を悩ます感染症対策の一翼を担う。さらには、麻薬・脱法ドラッグ対策の整備により青少年の薬物乱用問題の解決につながる等、本事業は社会的に大きな貢献が期待できる。 |
2.評価結果
(1)必要性
我が国の医療において、医薬品や医療機器の使用は疾病の治療・診断等の分野を中心に重要な役割を果たしており、患者・国民サイドからは有効でかつ安全な医薬品・医療機器が迅速に提供されることが望まれている。このような状況の下、医薬品・医療機器等の有効性、安全性及び品質を確保するための適正なレギュレーションの整備は不可欠であり、それらに資する研究を推進する意義は大きい。 |
本事業の事業計画は、基本目標及び施策目標に照らして、必要な調査・研究を推進するものとなっており、本事業により導き出された成果は直接国内外の医薬品・医療機器の対策に活用される。また、研究課題の評価委員会において最新の知見に基づく第三者評価がなされており、限られた予算の中で緊急性・必要性の高い課題が取り上げられている。 |
本事業の実施を通じて導き出された成果は、我が国のみならず国際的に調和されたレギュレーション(医薬品に関する各種ガイドライン、ハイリスク医療機器の承認審査ガイドライン等)として活用され、その結果、臨床上有用な医薬品・医療機器等を迅速かつ安全に患者・国民に提供することに貢献している。 |
本事業において実施する研究課題(公募形式)については、現状の医薬品・医療機器が抱える有効性、安全性及び品質に関する緊急的課題のみならず、今後、科学技術の進展を踏まえて開発される医薬品・医療機器等に対応するレギュレーションの整備等も念頭に設定されている。 |
医薬品・医療機器を安全に臨床使用することは、国民が安心して医療を受けることに大きく貢献するものであり、治療効果の高い高度な医薬品・医療機器ほど副作用等の有害事象のリスクも大きいことから、それらの発現をできるだけ回避して使用することが国民から求められている。また、平成14年7月の衆議院厚生労働委員会における決議として、生物由来製品に関し、「常に最先端の科学的知見をもって市販後安全対策を推進すること」とされ、人工血液についても「その有効性及び安全性が確保されたものの製品化が促進されるよう、研究開発の促進を図ること」とされている。 |
3.総合評価
本事業は全体として研究課題が着実に有用な成果を上げており、その研究過程による科学技術への貢献、行政施策としての国民生活の向上に貢献している。 今後もバイオ・ゲノム等の科学技術の進展や社会的要請等を見据えるとともに、国際的動向も踏まえつつ、先端的かつ国民にとって有益な医薬品・医療機器等の安全性、有効性及び品質を確保する必要がある。また、副作用の発現を未然に防ぎ拡大を防止する体制の構築、薬物乱用対策として麻薬等の既存薬物のみならず脱法ドラッグ等の時代に対応した薬物の対策、及び血液・ワクチン対策等、常に国民的視点に立った貢献を視野に入れた総合的な研究の展開が期待できる。 |
4.参考(概要図)
16−3)化学物質リスク分析研究経費
事務事業名 | 食品医薬品等リスク分析研究経費 ○化学物質リスク研究経費 |
担当部局・課主管課 | 医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室 |
関係課 | 大臣官房厚生科学課 |
(1)基本理念、施策目標、実現目標
基本理念 | 健康安全の確保 |
施策目標 | 医療等の安全確保 |
実現目標 | ・化学物質のヒト健康影響に関する効率的な新評価手法の開発 ・ナノ物質のヒト健康影響に関する体系的な評価手法の開発 |
(2)事務事業の概要
事業内容(
<事業内容を具体的に記載ください>
我々の身の回りに数万種存在するといわれる化学物質は生活の利便性や衛生の向上に寄与する一方、ヒトの健康等に悪影響を及ぼす場合もある。化学物質について、その悪影響を最低限に抑えつつ利用するために、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションの実施が必要である。 化学物質リスク研究経費では、ヒト健康影響の観点からこれらリスク評価等の手法開発等にかかる研究を実施する。特に数万種類の既存化学物質の安全点検の必要性から、迅速かつ効率的な有害性評価手法の開発や、リスク評価に不可欠な暴露情報の評価手法開発を推進する。また、近年開発が著しいナノマテリアルの健康影響評価手法の開発を推進する。 |
予算額(単位:百万円)
H14 | H15 | H16 | H17 | H18 |
2,049 | 2,049 | 1,866 | (未確定値) |
(3)趣旨
<前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価を参考にしてください> 1)これまでの研究事業の成果(継続の場合) 化学物質リスク研究事業は、緊急に政策的な取組みが必要とされた課題について、その施策の根拠となる科学的知見の集積機能を担ってきた。特に、シックハウス関連化学物質については、室内濃度指針値の策定、内分泌かく乱化学物質問題については、平成17年3月の「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書追補その2」取りまとめなどの成果が上がっている。 2)残されている課題 数万種の既存化学物質の安全点検推進の必要性から、有害性評価手法の迅速化、高度化を協力に進める必要がある。さらに適切なリスク評価の観点から、これまで未着手であった暴露評価法の開発に着手する必要がある。 また、特に緊急の課題として総合科学技術会議(「平成18年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」)でも重点事項とされているナノマテリアルのヒト健康に及ぼす影響の評価手法の開発について、評価手法の開発を加速化させる必要がある。 3)今後この事業で見込まれる成果 開発された評価手法は、国内のみならず、OECDのテストガイドラインへの採用などにより国際的な化学物質管理体制の充実に貢献する。さらに、身の回りにある膨大な種類の化学物質のリスク評価が加速的に実施可能となり、その結果を生かした適切な管理に基づく安全な生活の確保が可能となる。 ナノマテリアルについても開発された評価手法に基づく試験結果の活用により、新たに開発されるナノマテリアルの社会的受容を促進させることになる。 |
2.評価結果
(1)必要性
化学物質リスクの適切な評価・管理により、安全な社会を構築することは重要な政策課題となっている。特に、国民の健康確保の観点から、厚生労働省が毒性学等の専門知識に基づいた最先端の研究を推進し、国内のみならず国際的にも貢献することが必要である。 |
研究計画は、政策課題に対して、効率的な解決法を提示するものとなっている。また、開発された評価手法が、直接、国内外の化学物質管理体制において活用されることとなる。 |
評価手法に開発に当たっては、従来の化学物質管理における科学的知見を基礎とし、最新の科学技術を適用することとなり、実行可能なリスク評価・管理体制の構築が可能となる。 |
公募に当たっては、国内外の化学物質管理の現状、課題等を踏まえつつ、緊急性、必要性の高い政策課題に即した研究課題の設定を行っている。 |
<個別項目に関するご指摘・評価意見等><下記特記事項があれば記載ください> (1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項、(2)各種政府決定との関係及び遵守状況、(3)総務省による行政評価・監視等の状況、(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)、(5)会計検査院による指摘 特になし |
3.総合評価
<当該事業を推進すべきかどうかが明確に分かるように、また、事業推進の際の注意事項がわかるように記述してください。> 身の回りの数万種類の化学物質の安全点検の推進は、安全な社会の構築に不可欠であり、当該安全点検の効率的な実施を目指した当該研究事業を積極的に推進する必要がある。また、事業の実施に当たっては、国際的な動向を踏まえつつ、国内外の化学物質管理体制の構築に資する成果の創出に努める必要がある。 |
4.参考(概要図)
17)地域健康危機管理研究事業
事務事業名 | 地域健康危機管理研究経費(仮称) |
担当部局・課主管課 | 健康局総務課地域保健室 |
関係課 | 健康局総務課地域保健室 健康局生活衛生課 健康局水道課 |
(1)基本理念、施策目標、実現目標
基本理念 | 健康安全の確保 |
施策目標 | 健康危機管理対策の充実 |
実現目標 | 安心・安全な社会の形成にむけた地域健康危機管理の基盤形成、安全な水の安定供給確保、安全な生活環境の形成に資する研究の推進 |
(2)事務事業の概要
事業内容(新規・一部新規)
「地域健康危機管理の基盤形成に関する研究」、「水安全対策研究」、「生活衛生安全対策研究」の3分野の研究を行い、(1)地域における健康危機管理体制の基盤を強化・推進、(2)水道等による水供給における原水水質事故、災害、テロ等に対してもより安全で安定的な水提供、(3)建築物や生活衛生関係営業等の生活環境に起因する健康危機の未然防止及び適切な対応等に資する研究を実施し、国民の安全、安心を確保することを目的とする。 |
予算額(単位:百万円)(※すべて当初予算額。H15はがん予防除く)
H14 | H15 | H16 | H17 | H18 |
1,032 | 1,135 | 1,062 | 1,114 | (未確定値) |
(3)趣旨
1)これまでの研究の成果 従来の健康科学総合研究では、(1)保健所及び地方衛生研究所の有する健康危機管理能力等の知見の整理及び集積、地域保健対策検討会等の科学的知見として活用、(2)水道水質基準の見直し検討での活用、(3)建築衛生法で規定する維持管理基準等に反映、レジオネラ感染症・シックハウス症候群の具体的対応等に関する知見の整理及び集積等が行われた。 2)残されている課題 今後、ますます多様化・高度化・複雑化する健康危機に対して、適宜適切な対応を図るために、研究成果を問題解決の具体的施策あるいは対応策につなげていく必要がある。 3)今後この事業で見込まれる成果 (1)公衆衛生の新たな課題である初動時に原因が特定できない健康危機事例への対応等、(2)水供給の安全確保のための予防的措置や浄水処理機能の強化等、(3)建築物や生活衛生関係営業等における管理手法の見直し、シックハウス症候群等の診断・相談等に活用できるマニュアル作成等の成果等が見込まれ、これらによって一層、国民の安全・安心の確保が図られることとなる。 |
2.評価結果
(1)必要性
健康危機管理対策は行政が中心となって推進していくべき課題であり、地域における健康危機管理の基盤を強化・推進させる必要がある。また、不適切な水供給や、不衛生な生活環境は、多くの者と関連して、大規模な健康危機に直結する可能性があることから、その適切な確保及び保持が必要となっている。 |
(1)地域における健康危機管理体制の基盤、(2)水道等による水供給、(3)建築物、生活衛生関係営業等を対象とした研究を行い、新たな知見の集積が効率的に行われ、目標に対する達成度は高い。 大規模な健康危機が発生すれば社会経済的損失は莫大なものとなるため、本研究による裨益効果は極めて高い。 |
政策決定の科学的根拠として活用されており研究結果の有効性は高い。 また、「平成18年度の厚生労働省の科学技術研究の推進の基本的考え方」において「健康危機管理対策」が、また、「平成18年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」において「健康危機管理への対応」が提言されており研究の妥当性は高い。 |
従来の健康科学総合研究から健康危機管理に重点をおいた研究へと組み替えを行った。今後、健康危機管理に関する長期的視野にたった課題の抽出を行い、その結果を施策に反映させていくことが必要である。 |
健康危機管理に関する事項は「平成18年度の厚生労働省の科学技術研究の推進の基本的考え方」、「平成18年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」において提言されている。 シックハウス対策に関しては、議連、関係省庁連絡会議等が設置されている。 |
3.総合評価
これまでの研究成果については、施策等に一定の反映がなされるとともに、今後も施策や対応策として活用される予定となっており、有効な活用が行われているものである。 しかし、健康危機は多様化・高度化・複雑化しており、これらに対応し、国民の安全、安心を確保するため、引き続き研究の推進を図ることが必要である。 |
4.参考(概要図)