雇用均等分科会における主な意見
(第46回までの議論)


 男女双方に対する差別の禁止について

【男女双方差別の禁止と均等法第9条の特例措置の在り方について】
 ○  従前から主張してきたように、均等法は男女双方に対する差別を禁止すべき。
 ○  女性の職域拡大があまり進まない中、第9条の措置により積極的に男性の進出を促進することまでは時期尚早。
 ○  男女双方に対する差別を禁止するか否かは、第9条を現行の形で残すのか、又は男女双方に規定を適用するのかという問題と連動しており、実態に即した規定となるよう、慎重に議論すべき。

【均等法の目的について】
 ○  男女平等というとき、男性の仕事中心の生活に女性を合わせるべきではなく、均等法を男女双方差別の禁止とするのであれば、良質な労働条件や人間らしい生活の観点から、「仕事と生活の調和」を均等法の目的に規定すべき。
 ○  男女の均等を実現する様々な手段やルールを作る際の基本軸として、仕事と生活の調和を打ち出すべき。
 ○  両立は重要だが、育介法や男女共同参画社会基本法、時短法等もある。「仕事と生活の調和」を、労働権を男女平等に確保するための法律である均等法に入れると法の目的が曖昧になる。目的は特化して絞ったほうが機能しやすい。
 ○  「仕事と生活の調和」を均等法の目的に規定する場合、それを実現するための規定が均等法にはないため均等法を育介法と統合するなど内容を大幅に変える必要が生じる。しかし、差別を禁止する均等法と、仕事と生活の調和のため多様な選択肢を認めるための法律とは、法律の性格も大きく異なってくるもので一つにするのに無理がある。
 ○  仕事と生活の調和には労働時間の問題など均等法以外の法律が重なり合って実現するもので「生活」の概念があいまいなだけに、実効につながるか疑問。
 ○  「仕事と生活の調和」については、男女の性差別の問題ではなく働き方が多様化した今日の実態にそぐわないため、理念に入れるべきではない。


 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止

【不利益取扱いの禁止について】
 ○  育休の申出・取得を理由とした不利益取扱いの禁止と併せて妊娠・出産に係る不利益取扱いを禁止することが実効性を高める。
 ○  不利益取扱いとは何かという事例を社会に示し、事前に防止することが必要。
 ○  妊娠・出産を理由とした不利益取扱いを性差別禁止の枠組で捉えるか、妊娠・出産を理由とした不利益取扱い自体として禁止するかは規制の枠組の相違にすぎず、違法となった場合の法律的な効果は異ならない。
 ○  妊娠したこと自体、又は、法律上の権利を行使しようとし又はしたこと自体を理由とする不利益取扱いは許されないという前提を確認した上で、具体的な問題について議論をしていくべき。
 ○  妊娠したこと自体を理由とする不利益取扱いについても、「職務の遂行に何ら影響を及ぼしていない」かどうかは、本人の主観と周囲の認識とで異なるなど判断が難しく、引き続き慎重に議論すべき。

【不利益取扱いの内容等について】
(不就労期間の評価一般)
 ○  妊娠・出産に伴う症状で労働能力が低下した場合は、まさに妊娠・出産そのものと考えるべきであり、妊娠・出産に伴う不就労に応じてマイナス評価とされることを当然視して良いのか疑問。
 ○  能率低下、労働不能、復職時の問題などは、公正性の概念が重要であり、慎重に議論すべき。
 ○  本来、能力のみで判断すべき部分を、社会性の観点から、より保護をするために平等ではない部分を作る枠組である。その範囲をどうするかという議論の際には、当然、企業経営の側面も考慮すべき。
 ○  保護の範囲の検討に際しては、不利益の性質や内容、権利を抑制する効果等の総合的な判断が必要。
 ○  能率低下や不就労は育児・介護の場合にもあるがすべて働いた者と同様に扱えというのは企業では担いきれないであろう。
 ○  (1)育休の不利益取扱いと同様に考えることができる部分と(2)能率低下など妊娠・出産に固有の部分とに分け、(1)については基本的に育休と合わせる方がよい。
 ○  育児・介護休業は男女双方を対象としているが、産休は女性のみの権利であり、少子化の中で、我が国の社会政策として同じ扱いで良いのか(むしろ手厚くする必要があるのではないか)、議論が必要。

(不就労期間の賃金の取扱い)
 ○  配偶者出産休暇や比較的長期の私傷病休暇等を有給とする一方、産休は無給とする例が多く、同じ不就労でも差があるのは不当。
 ○  ノーワークノーペイも強制休業である産後休業については、産前休業や育児休業と少し区別して考えるべきではないか。
 ○  不就労期間の取扱いについては、ノーワークノーペイの原則を適用すべき。
 ○  強制休業期間であっても「ノーワーク」であることに変わりはないため、賃金保障が必要であれば、企業に負担を求めるのではなく、別の方法を考えるべき。

(その他)
 ○  ILOの母性保護条約を批准するためにも、出産手当金の給付率を引き上げるべき。
 ○  妊娠起因の症状は期間が限られるのに対し、出産起因の症状は断続的に生じる場合もある等因果関係の認定が困難であり、慎重に検討すべき。
 ○  採用面接で妊娠しているか否かを問うことも、不利益取扱いとして検討すべき場面ではないか。


 間接差別の禁止

【間接差別の禁止について】
 ○  間接差別は使用者にも抗弁の機会があり、結果の平等を求めるものではない概念である。形を変えた差別に対応するのに有効な概念であり、均等法に規定すべき。
 ○  間接差別概念はまだ浸透しておらず、合理性の有無の判断に幅があり、対象が無制限に広がりかねないことから現場が混乱する。判例等の蓄積により概念化が進み、法制化に至るのが本来の流れであり、間接差別の検討自体、時期尚早。現段階では、ポジティブ・アクションで進めていくべき。概念が浸透したら、間接差別の禁止というやり方もあり得るのではないか。
 ○  中小企業の現場では、間接差別の概念は分かりにくく、まずは認識を高めることが必要。
 ○  前回改正での議論を踏まえ、間接差別の概念は明確にできており、間接差別の概念が不明確だから議論するのが難しいという時期は過ぎている。また、間接差別の法理も機会の均等の実質的確保が目的。
 ○  「相当程度の不利益」や「合理性・正当性」の内容についてはさらに検討が必要。これらの判断基準が明確になれば、予測可能性を高めることが可能になるのではないか。
 ○  間接差別の例と考えられる事項についてもポジティブ・アクションで対応すべきというのであれば、現行均等法の規定を強化することが必要なのではないか。
 ○  法治国家では法文化しないと社会の規範にならない。

【ポジティブリスト方式・ネガティブリスト方式】
 ○  間接差別については、家族手当や年功賃金など合理性・正当性の判断が難しいものもあるため、原則禁止し例外的に合理性・正当性が立証された場合のみ差別とはならないとするポジティブリスト方式の規制方法以外に、禁止される事項を限定列挙するネガティブリスト方式を採用することも考えられるのではないか。
 ○  間接差別法理の対象は、原則としてどのような事案でも俎上に載り、例外的に、他の法律との関係等により、俎上に載らないこととされるものがある、というものと考えており、最初からネガティブリスト方式とすることは適当ではない。

【間接差別の内容について】
 ○  転勤要件や世帯主要件も、合理性・正当性が立証されれば、当然間接差別には当たらないと考える。一方、コース別雇用管理制度の導入経緯を見れば、転勤要件が男女別雇用管理につながっている側面もあると考えられ、こうしたものについて間接差別法理により合理性を問い、スクリーニングしていくべき。
 ○  コース別雇用管理制度全てが差別とは認識していないが、なぜ募集・採用という入り口段階で分けなければならないのかという問題意識がある。
 ○  パートの女性と正社員の男性を比較したとき、パートの女性に諸手当や定期昇給制度が適用されないのは間接差別として問題ではないか。
 ○  結果の平等の追求から話がスタートしているように思え、転勤の有無や世帯主の問題も理解できない。
 ○  処遇と働き方との整合性を図り、職群を認定し直し職群ごとの賃金制度とする動きもある中、職群やコース別の雇用管理を一律差別とするような議論であれば受け入れられない。
 ○  コース別について募集・採用段階から分けるのは、要員管理の必要性からは当然。
 ○  我が国における性別役割分担意識が強いため、男性が子育てに参加しないことから、女性が総合職を選べないとしても、そのことから直ちに企業がコース別雇用管理をやめるべきとはいえない。
 ○  間接差別は何かという議論とどのようなものを射程に入れて解決していくかは別の問題。


 差別禁止の内容等

 ○  第5条の「均等な機会を与えなければならない」について、「差別的取扱いをしてはならない」とすべき。
 ○  第5条の規定は現行のままとすべき。

 ○  現行法のステージごとの規制から漏れる問題もあることから、「仕事の与え方」も含め、雇用ステージ全般の包括的な規制とすべき。
 ○  合理的な理由なく男女別に偏った仕事が与えられる実態が、能力差、賃金差につながっており、巧妙な差別となっている。
 ○  「仕事の与え方」については、男女の問題ではなく、能力や契約内容の問題なので、規制すべきではない。

 ○  「雇用管理区分」が異なっても同じような仕事をする場合は多々あり、指針が差別認定を狭めている。見直しを検討すべき。
 ○  指針の「雇用管理区分」は、企業において長期的な視点から人事制度が設計されていることを踏まえており見直す必要はない。

 ○  労基法3条に「性別」を追加し、かつ労基法4条の賃金差別禁止を機能的に担保するため、均等法にも賃金差別禁止を規定すべき。
 ○  均等法に賃金差別を規定した場合、労基法では刑事罰で担保し、均等法では刑事罰は付かないこととなり、理論的整合性がとれない問題が生じる。
 ○  均等法は配置や教育訓練の差別的取扱いを禁止し、配置差別等の結果としての賃金格差を生じさせない仕組みになっており、既に賃金差別の禁止を機能的に担保している。


 ポジティブ・アクションの効果的推進方策

【義務化について】
 ○  均等法に事業主のポジティブ・アクションの行動計画の作成と実行の義務を明文化すべき。ただし、法施行後3年間は、常時使用される労働者が100人未満の事業主については、行動計画の作成は努力義務とする。
 ○  行政側のコストは理解できるが、企業のコストについては、企業は労務構成の把握・分析を当然行っており、計画にすることにどれほどのコストがかかるのか疑問。
 ○  ポジティブ・アクションに取り組む意義は否定しないし、奨励は良いが、事業主の自主的取組を尊重すべきであって、義務化は反対。
 ○  中小企業では言葉の定義自体理解されていない。まずは周知や行政の取組を進めることが必要。
 ○  国が進めるポジティブ・アクションの内容は大企業を想定しており、中小企業の実態に合っていない可能性がある。中小企業でも、実際には男女関係なく機会を与え、登用している企業は相当数あるが、それをポジティブ・アクションだとは認識していないのではないか。

【ポジティブ・アクションの奨励措置】
 ○  企業へのインセンティブとして、次世代育成支援法の認定マークのような目に見える形の奨励策や、中小企業の取組を促進するため、税制上の優遇措置、助成金の支給なども検討すべき。
 ○  均等推進企業表彰よりも、認定マークという形の方が企業に積極的なインセンティブを与えることができる。
 ○  認定マークについては、均等の問題は次世代育成と異なり、結果の数字を求めるものではないため、基準の作り方が技術的に難しい。
 ○  PRの強化を考えて欲しい。
 ○  均等推進企業表彰をポジティブ・アクション積極取組企業表彰と変えた方がアピール効果があるのではないか。


 セクシュアルハラスメント対策

【規定の強化について】
 ○  現行法では助言・指導・勧告の対象とされているが、抑止力を強めるため、配慮規定から義務規定(予防義務、事後対応義務)とすべき。
 ○  セクシュアルハラスメントがあってはならないのは当然であるが、現実問題として会社がどこまで深く関われるか困難な場合も多く、現行指針のPRに努めることが重要。

【セクシュアルハラスメントの定義について】
 ○  セクシュアルハラスメントの定義にジェンダーハラスメント(性別役割分担意識に基づく言動)も含めるべき。
 ○  ジェンダーハラスメントを含めると、本来のセクシュルハラスメント自体が不明確になってしまうため、反対。
 ○  性別役割分担意識を変えることはセクシュアルハラスメントの場面に限らず、女性の活躍の場を広げるために不可欠であり、ポジティブ・アクションの中でやっていくべきことではないか。

【その他】
 ○  男性もセクシュアルハラスメントの救済の対象とするとともに、セクシュアルハラスメント申出を理由とする不利益取扱いの禁止やプライバシー保護も法律に規定すべき。


 男女雇用機会均等の実効性の確保について

 ○  訴訟は、労働者には敷居が高いため、実効性のある差別救済システムを均等法の中で措置すべき。
 具体的には、(1)政府から独立した性差別救済委員会を都道府県単位で設置する、(2)救済対象を募集・採用、配置、昇進、教育訓練、福利厚生、定年、退職、解雇、賃金、その他の労働条件に関する性差別の他、セクシュアルハラスメントとする、(3)救済申立てを理由とする不利益取扱いを禁止する、(4)差別の合理的根拠を示す証拠及びその裏付け資料の提出義務を事業主に課す、(5)資料の提出がない場合、又は提出があっても合理的根拠がない場合、差別を認定し、是正勧告をすることができる(事業主がこの勧告に従わない場合は刑罰を科す。)、(6)差別是正命令を発することができる(事業主がこの命令を履行しない場合は刑罰を科す。)、(7)救済のため必要な場合は緊急命令を発することができる、とすること。
 ○  救済の選択肢が複数あるのは良いが、雇用機会均等に関しては、均等法の中で完結させることが分かりやすさの点からも重要。
 ○  紛争解決については近年様々な制度が整備され、行政指導についても既に企業名公表の仕組みがあるため、実効性確保は現行制度で十分。むしろ、労使協力による企業内苦情処理制度の充実が重要。

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