《目次》
1 | はじめに |
2 | 坑内労働の概況と特徴 |
(1) | 坑内労働の概況
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(2) | 坑内労働の特徴と労働災害の状況
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3 | 坑内労働に係る規制について |
(1) | 我が国における坑内労働に係る規制について
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(2) | 諸外国における坑内労働に係る規制について
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4 | 現在の坑内労働の作業環境、作業態様と坑内労働が女性の健康等に与える影響について |
5 | 坑内労働に係る規制の課題 |
1 | はじめに 働く女性を取り巻く環境は、ここ四半世紀の間、大きな変化を遂げている。経済社会構造や女性自身の意識も変わり、女性が様々な分野で活躍するようになってきている。かつては女性が就業することが殆どなかった分野への進出を希望する女性も増えつつあり、人口減少社会を迎えようとする今日、我が国の経済社会が引き続き活力を持ち続けるためにも、ますます女性の活躍が拡がることが期待されているところである。 こうした中、女性に対する特別の保護措置については、かえって女性の能力発揮や職業選択の幅を狭める結果をもたらす場合があることから、昭和60年の男女雇用機会均等法制定以降、雇用における男女の機会均等の確保のための法制整備の一環として、その必要性について順次検討の上、見直しが図られてきたところである。 女性の坑内労働については、昭和22年に制定された労働基準法において全面的禁止の規定が設けられていたが、その後、昭和59年の婦人少年問題審議会の建議を受け、これまでに若干の規制緩和がなされてきた。しかし、なお現在においても、一部の例外を除き、原則として女性の坑内労働は禁止されている。 昨年9月から、労働政策審議会雇用均等分科会において、男女が共にその持てる力を十分に発揮できるような社会の実現に向け、男女雇用機会均等の更なる推進について幅広い検討が行われている。また、女性の坑内労働については、女性技術者の増加等を背景に、女性技術者が監督業務等に従事できるようにするべき等の規制の見直しが要望されている。 こうしたことを踏まえ、当専門家会合は、女性の坑内労働の規制の在り方について、現在の坑内労働の作業環境、作業態様と坑内労働が女性の健康等に与える影響等について、専門的見地から検討を行った。 |
2 | 坑内労働の概況と特徴 |
(2) | 坑内労働の特徴と労働災害の状況
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3 | 坑内労働に係る規制について |
(1) | 我が国における坑内労働に係る規制について
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(2) | 諸外国における坑内労働に係る規制について 諸外国における女性の坑内労働に係る規制に関して、国際労働機関(ILO)、欧州連合(EU)、イギリス、オランダ、フィンランド、フランス、ドイツ及びアメリカについて、文献調査及び各国政府に対するヒアリングを行った。それぞれの状況は以下のとおりである。(資料No.10)
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4 | 現在の坑内労働の作業環境、作業態様と坑内労働が女性の健康等に与える影響について 当専門家会合においては、以上を踏まえ、現在の坑内労働の作業環境、作業態様と坑内労働が女性の健康等に与える影響について専門的見地から検討を加えたところ、以下のような結論が得られた。 まず、坑内労働における主なリスク要因として、典型的には落石、落盤、出水、ガス爆発等が挙げられるが、これらは男女双方が等しく遭遇し得るリスクであり、その防止のための措置が法令等において規定された結果、労働災害が減少している。 次に、坑内労働におけるその他のリスク要因が女性の健康等に与える影響について、現在の坑内労働の作業環境、作業態様を踏まえつつ、(1)有害化学物質による影響、(2)高温や気圧、粉じんや筋肉労働等による影響、に分けて検討する。 まず、(1)については、労働基準法第64条の3により、妊産婦の妊娠・出産・哺育等及び女性の妊娠・出産機能の保護のため、有害物のガス、蒸気、粉じんが発散している場所における業務は、坑内・坑外を問わず規制されており、当該リスク要因について坑内労働に固有の問題として考慮する必要はないと考えられる。 次に、(2)についてであるが、これは、ILOが第45号条約を採択する際の理由となった過酷な労働条件を構成するものと考えられる。しかし、今日の我が国における坑内労働は、ILO第45号条約が採択され、労働基準法に規制が設けられた当時のような作業環境にはなく、作業態様も変化している。 すなわち、作業環境については、労働安全衛生法令や鉱山保安法令等の規制を受け、高温についてはクーラー、風管の設置等により、また、粉じんについても散水、風管の設置、マスクの装着等により、管理水準が保たれているところである。実際、ずい道工事におけるじん肺の新規有所見者数は大きく減少し、年間数件程度となっている。これらの管理が適切になされていれば、通常、女性が高温による健康障害やじん肺を発症することは想定されない。気圧についても、最近のずい道工事において、圧気工法は一部を除きほとんど採用されておらず、また、鉱山についても、現在では立坑により降下するケースはほとんどないため、リスク要因自体が格段に少なくなってきている。 また、作業態様についても機械化・工法の進展により、坑内労働の作業内容は重機操作や監視業務が主要なものとなり、坑内労働禁止の規制が設けられた当時のような筋肉労働はもはや存在せず、若干あり得る筋肉労働にしても坑内労働のみに特殊とはいえないものになっている。 ところで、労働基準法第64条の3では、一定の重量以上の重量物を取り扱う業務は妊産婦も含め女性一般に対して規制されているが、高温や異常気圧等の下での業務が規制されているのは妊産婦のみであって女性一般への規制は設けられていない。また、粉じんについては鉛等の有害物の粉じんを除き、妊産婦も含め女性一般に対する規制は設けられていない。 その結果、一定の重量以上の重量物を取り扱う業務を除き、これまでも坑内労働以外の業務については、労働安全衛生法令、じん肺法令及び鉱山保安法令による規制の下で、高温や異常気圧等の作業環境下における妊産婦以外の女性の就労や、有害物の粉じんを除く粉じん作業への女性の就労は認められてきた。しかし、これまで坑内労働以外の業務で、高温や異常気圧等の下での作業や、粉じんが発生する場所における作業について、妊産婦以外の女性に、健康面や安全面で男性と比較して特別に問題が生じるとの明らかな知見は得られていないところである。 以上から、総じて坑内労働については、地質等の自然条件に左右され、落石、落盤等男女双方が等しく遭遇し得るリスクはあるものの、施工技術の進歩、法規制の充実等に伴い、作業環境及び作業態様の双方において格段に高い安全衛生の確保が図られるようになってきており、このような安全衛生の水準が保たれていることを前提とすれば、現在では、女性の坑内での就労を一律に排除しなければならない事情は乏しくなってきていると考えられる。 ただし、妊産婦については、坑内労働の動作、姿勢又は環境条件等が妊娠及び産後の母体の変化や経過により影響を与える可能性があり、授乳中の母体にも一層の負荷がかかりやすいこと、さらに、坑内においては緊急時の迅速な対応が困難なこと等、妊産婦の安全・衛生にとっては好ましくないとみられる条件があることから、母性保護の観点から、十分な配慮が必要であると考えられる。 |
5 | 坑内労働に係る規制の課題 男女雇用機会均等法が施行されてから20年目となり、女性が様々な職域に進出している。従来、女性労働者があまり多いとはいえなかったいわゆる技術系の職場にも、女性が進出している。 女性が意欲、能力に応じて幅広い職業分野に進出しようとする際、合理的理由のなくなった特別措置を存続させることは、女性の保護というより、むしろ女性の職業選択の幅を狭める結果となり得る。 女性の坑内労働に係る規制の在り方については、今般の取りまとめ結果を踏まえ、適切な対応、措置を講じるための検討を行うことが望まれる。 なお、今後の検討によっては、我が国が批准しているILO第45号条約との整合性が問題になるが、その場合は、併せて、より新しい条約であるILO第176号条約が求める安全衛生管理の水準にも留意することが必要であろう。 |